私的良スレ書庫
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元スレ許嫁「……聞いていない?」
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>>901
はーい、じゃあ切っちゃいましょうねー
はーい、じゃあ切っちゃいましょうねー
>>902
きりゅー!
きりゅー!
……
教室
男「……分かったよ。アイツが文化祭を一緒に周る、例の相手が」
転校生「何? 誰だ?」
男「お前もよく知ってる奴だ」
転校生「僕も? 誰だ? このクラスの人間か?」
男「……、少し。俺の口からは言いにくいんだが……」
転校生「君が躊躇する人? なんだ、ちょっと怖いな」
男「……いや、やっぱり……。すまん、今のは忘れてくれ。じゃあな」
転校生「っ。おい、何だよ。そこまで言って止めてくれるな。僕も知る必要があるんだ……頼むっ」
男「……。お前が、そこまで言うんだったら……」
転校生「いったい、誰と……?」
転校生「……」ゴクリ
男「……生まれは、この近所でな。長男として生を受けた、たまのような愛らしい子だったという……」
転校生「え?」
男「ん?」
転校生「いや待て。生まれ? 何でその人の生まれから言う必要がある?」
男「大事なことなんだ、いいから聞けよ」
転校生「それが大事なことなのか? ……分かった。近所で生まれたんだな。それで?」
男「……幼少期は眠ることが大好きで、両親の手をあまりかけさせない子だったそうだ」
転校生「は?」
男「というか、やたら眠りすぎでちょっと心配してたらしい。『眠り王子』なんてあだ名をつけられていたとかなんとか」
転校生「……もしかして、君。ふざけてない?」
男「!! ふざけ……!? お前……、そんなこと、言うのか?」
転校生「っ」
男「だったら。この話はここで終わりだ……」
転校生「あ……、いや、僕は……」
男「本当だったら俺だって……俺だって!! こんな話、言いたくはないんだっ……!」
転校生「! ……すまない。そうとも知らずに僕は……。頼む、続けてくれ」
男「それから彼は……優しい両親と、少しだけ我が侭な妹に囲まれ、すくすくと育ちましたっ……!」
転校生「とはいえやっぱりおかしくない?」
男「幼い頃から妹の面倒を良く見る、ひょうきんなお兄ちゃんだったそうですっ……!」
転校生「誰なのか名前言えば良いだけの話なのに」
男「小学校の頃は、テーブルクロス引きに熱中っ……!」
転校生「妙に力が入ってるのだけは確かなんだが」
男「後ほど持つことになる、掃除という生涯の趣味に通ずるものがあったのかもしれませんねっ……!」
転校生「……趣味が掃除? おい、それって。もしかして」
男「次は、中学っ……! 小学校の次っ……! 圧倒的中学っ……!」
転校生「もういい、止めろ」
男「そういえばっ……! 今思い出したんだけどっ……! 中学のとき、すげー笑える話があってさっ……!」
転校生「おい止めろ、聞こえてるのか、止めろおっ!!」
男「何だよ。まだ波乱!入学編や戦慄!ファミレス編が残ってるって言うのに」
転校生「誰が君に自伝を話してくれと言った? というか、『っ……!』てどうやって話してるんだ君は?」
男「偉大なる先人に聞け」
転校生「よく分からないが……やれやれ。あの人と一緒に周るのは結局君だったか。心配して損したじゃないか」
男「心配?」
転校生「あ、いや……。しかし、君も可愛いところがあるな?」
男「あん?」
転校生「先に質問したとき、正直に答えなかったのは照れていたってことだろう?」
男「いや、ちげーよ。あのときには、そういうことになるとは知らなかった。本当だ」
転校生「しかし、彼女は先約があると言っていた……それは君のことだな?」
男「む……」
男(あらためて言われると確かに)
男(俺を誘う前から先約がある、なんて言ってたはずだな、アイツ)
男(おいおい、何だよ。誘えば俺は必ずOKするとでも思ってたのか?)
男(……。何か、そう思われてるのも癪だな……)
男(……)
男(……)
男(なーんて、流石に思えないよなー……あのとき確か、『成功例』なんて口走ってたし……)
男(だとすると『失敗例』もあった……)
男(……)
男(先約ってのは。約束というより、アイツの中だけの決意っていうような意味あいで――)
男(……う)
転校生「……? どうした君、様子が変じゃないか?」
男「いいえ? そんなことはありませんがが?」
男「事実だけを言う。あのときは知らなかった」
転校生「本当か?」
男「好きにとってくれて構わないぜ。にしても、お前も飽きないね? この話」
転校生「ふふ、それか? その理由だが……君をからかうためさ。僕はいつも君にからかわれてばかりだからね」
男「反応が可愛いからな」
転校生「……ふっ。君が僕をからかう、お決まりの台詞だな? 残念だが、僕はもう慣れたよ」
転校生「君から言われたところでもう僕はドキドキしないぞ?」フフン
男「……ん?」
転校生「そういう訳だから、これからは君をからかうことを楽しませてもらう。ぜひ期待しておいてくれ、フフフ」
男「そうか、分かったよ。だけどさ、あんまり無理だけはしないでくれよな?」
転校生「ああ、ありがとう……ってそれ君が言う台詞か?」
……
教室
放課後
委員長「これもよし、これも大丈夫だから……うん! これで全部OKです! 文化祭の準備、完璧です!!」
「「「おお……」」」
「委員長のOK貰いましたー!」
「疲れたねー」
「久しぶりに……本気……出した……」
委員長「ふふ。皆さん、今日まで準備、お疲れ様でした! でも本番は明日ですよ?」
委員長「いろいろ計画を張り巡らしている人も、そうでない人も!」
委員長「明日は! 思いっきり楽しんじゃいましょう!」
委員長「ではでは! また明日、皆に会えることを楽しみにして! 散!!!」
ザッ
男(をを、あの委員長がテンション高い……!)
>>917長門みたいの居るな
……
家
男「ただいまーすとりひとじょうやく」ガチャ
リビング
男(準備はコレで終了。いよいよ明日が文化祭か……ん?)
男(見慣れたはずのリビングだが、何か妙だ?)
男「何だ……? 違和感があるぞ……?」
男(一見いつもの光景だが……)
男「何かが違う。それだけは間違いないんだが、はっきりしない……」
男(キャビネットは……うん。特に変わったところはないな)
男(テレビ台もいつも通り……ちょっとホコリ溜まってきたかな?)
男(本棚……以前よりタイトルが増えている気がするが、変なところはない)
男(テーブルの上には、誰かが飲みかけのココアに、誰かが読みかけの雑誌)
男(ソファには猫のクッションと、そしてそれを抱きかかえて)
男(さきほどから怪訝な表情でこっちを見ている俺の許婚)
男(うん。いつもの光景となんら変わりないが……)
男「む……ムムっ!?」
男「窓のそばに何かが吊り下がっている……?!」
男「な、何だコレは……!?」
男「カタチは……そうだな。例えるなら、てるてる坊主に近い」
男「頭の部分は丸く、身体はスカートのように広がっていて」
男「全体的に白いのも同じだ」
男「首のところには青いリボンが巻かれて、そこから別の紐が伸び、カーテンレールに結わえ付けられている」
男「顔。人でいう顔の部分には、簡略化された顔らしきものが書き込まれていて」
男「一見すると、まるで……そう。てるてる坊主のように見える」
男「……これは、いったい何だ?」
男「何かの符丁? それとも他に意味が……?」
男「それに、誰がこんなことを……っ。まさか!?」
男「………………天、狗…………?」
男「っ。…………天狗じゃあ! 天狗の仕業じゃあ!」ハワワワワ
許嫁「そのひとり芝居、いつまで続くの?」
男「何だ、いたのか」
許嫁「い、いたわよっ。というか目合ったでしょう?! もう。さっきから、あなた戯けたことばっかり」
許嫁「何か悪いものでも……あ、もう。道に落ちてるもの食べちゃ駄目っていつも言ってるでしょう?」
男「食わねーよ! わんわん! ……んで、この下がっているヤツはいったい?」
許嫁「? 何よ。てるてる坊主を見たことがない、とでも言いたいの?」
男「いや、そういうわけじゃないが……、お前が作ったのか?」
許嫁「勿論そうよ。それ以外に誰がいるのかしら」
男「へえ……」
男(意外と子供っぽいことするんだな)
男「コイツをねえ……」マジマジ
許嫁「? さっきから何か引っかかるわね。そんなに、その……私のってヘンって言いたいの?」
男「ヘン?」
許嫁「このコよ。今回は、特に上手くできたかなって、思ったんだけど」
男(このコ?)
男「いや、結構可愛くできてるんじゃないか?」
許嫁「そ、そう思う? あなたも?」
男「ああ、よくできてると思うぜ。……いやさ、てるてる坊主なんて久しぶりに見てさ。ちょっと懐かしくて」
許嫁「あら……。あなた、そうなの? もしかして、あまり作らない人?」
男「え? あ、ああ。そうだな。作ったことはあるはずだが、それがいつだったかももう思い出せないな」
許嫁「へえ、そうなの。随分、変わってるのね?」
男「え?」
許嫁「そういう人も、いるのね……」
男「……え?」
許嫁「あなたも変わっている人だとは分かっているつもりだったけど」
男(あれ?)
男(今まで俺は。てるてる坊主なんて、子供が遊びがてら作るものだと認識してたが)
男「……」
男「……ちなみに、だけど」
男「今もよく作ってるの?」
許嫁「? 勿論じゃない。明日がどうしても晴れてほしいときって、てるてる坊主作るのが常識でしょ?」
男「え……」
男(俺? 俺か? 少数派なのは俺のほうだったのか? みんなは当たり前のように作ってる!?)
男(こ、こいつの冗談じゃ……)
許嫁「?」
男(なさそうだ……平然としているぞ)
男「う、うむむ」
男(俺の認識が間違っていた……? まさか……)
許嫁「作る習慣のない人から見たら、不思議に見えるのかしらね、このコ?」
男(やってることが子供っぽく見えるとは……言えないぞ)
男(それに、だ。コイツが一生懸命てるてる坊主を作ってる姿が想像しにくい……)
男(……)
(想像)
許嫁『明日の文化祭、晴れてほしいけれど、どうかしら……』
許嫁『……』
許嫁『よし、決めたわ。ここは、てるてる坊主の出番ねっ』
許嫁『……』ちくちく
許嫁『……』ちくちく
許嫁『……』ちくちく
許嫁『……うん。良いわ。なかなか可愛く出来たわね、このコ』
許嫁『あとは……そうね。あそこの窓際に下げて……』
許嫁『よし。これで良いわ』
許嫁『……』
許嫁『明日の文化祭。どうか、晴れますようにっ』
許嫁『……ふふふ。分かってるの、そんな顔して? あなた、お願いするわよ?』ツンツン
男(……なーんてな)
男(ハハハ。コイツこんないじらしい性格じゃないよな? 俺の想像力が足りてないぜ)
男(……)
男(いやでも、今までを振り返ると案外こいつ色々と容疑が……)
男(う、うーむ)ウムム
許嫁「可愛いのにねー」ツンツン
男「にしても。そんなに文化祭晴れになってほしいのか? コイツに頼むくらいに」
許嫁「え? え、ええ。まあ、それはね」
男「そうか。でも多少雨が降ったとしても、それはそれで乙なものだと思うぞ」
許嫁「……あ」
男「そりゃ、屋内へ移動する展示とか、催しの縮小とか。避けられないこともあるだろうが……」
男「それでも十分楽しいものだと思う。むしろ雨で風情が出るやもしれんな」
許嫁「……そう、かしらね」
男(……明日、雨天の可能性。割りとあるんだよな)
男(仮に雨だったときに、変にがっかりなんてしてほしくはないんだが……)
許嫁「でも、その……晴れたほうが、予定通りに動きやすいだろうし」
許嫁「お客さんも、たくさん来るでしょう? そっちのほうが」
男「まあ、そうだろうな」
許嫁「それに、う、嬉しいじゃない? 晴れたほうが、空、見渡せるし……。私は……そう、思うのよ」
男「……」
男(こいつこんな文化祭初めてだからか、ずいぶん楽しみにしてるのな)
男(準備も熱心にやってたみたいだし)
男(どうしても晴れてほしい、みたいだ。このぶら下がってるヤツに、願をかけるくらいには)
男(もしかして他に何か理由があるのかもしれないが……)
男(……)
男「そか、そうだな。分からんでもない。やっぱり、晴れたほうが良いか。どうせだからな」
許嫁「え、ええ……そうよね」
男「じゃあさ、折り入って一つお願いがあるんだが」
許嫁「? 何かしら?」
男「てるてる坊主の作り方、俺に教えてくれないか?」
許嫁「え?」
男「ひとりより二人のほうが、効果あるんじゃないか?」
許嫁「ぁ……」
許嫁「…………ぅ」
男「? どうした?」
許嫁「……あ。い、いいえ。何でもないわ……だったら、そうね。特別に――」
許嫁「私のとなりに下げること、許してあげるわ?」
男「はははっ。それは身に余る光栄です、お嬢様。さて、そうと決まれば早速製作に取り掛かりましょうかね」
許嫁「うんっ。それじゃ、私は必要なもの持ってくるわね? あなたはその間に……――」
……
文化祭当日
男(そして今朝。見事な秋晴れとなった)
男(予報でも、夜まで一日中晴天だとか)
男(俺の許婚は空を仰いで……)
許嫁「……」
男(安心したような表情を浮かべていた)
男(……)
男(てるてる坊主たちのおかげ……ということにしておこう)
なるほど、こだわるのってそういうことなのかな?
あーもうにやにやする
あーもうにやにやする
照る照る坊主ちくちく作ってるところとかカーテンにぶら下げているところ想像すると許嫁すごくかわいいな
話しかけているところもグッときた
乙
話しかけているところもグッときた
乙
……
教室
委員長「みんな、待たせたな!」
委員長「いよいよ今日こそ本番、待ちに待った文化祭だ!」
委員長「そんな今……。皆に聞きたいことがある……」
委員長「文化祭とは、結局のところ。何ぞや!?」
委員長「……そうだ、そうだ! その通り!! お祭りだー!!!」
委員長「ではでは! 皆さん、お祭りテンションで!! 思いっきり楽しんでいきましょう!!!」
男(委員長もお祭りテンション……!)
男(……)
男(何だお祭りテンションって)
男(クラスの喫茶店に俺が出ている時間は、午前と午後で一回ずつ)
男(それも初っ端とラストだ)
男(その間の自由時間に、模擬店やら色んなトコ見て周って)
男(んで、ラストの勤務が終わったそのあとが)
男(後夜祭)
男(長い一日になりそうだ)
男(……)
男(そういえば、一日中一緒か)
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