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    元スレ灼「個人戦は見学して行くから……」

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    901 = 1 :


    『あ、灼……改めて、誕生日おめでとう。 今日は勝ててよかった』

    「ありがと……試合、カッコよかった。 咲もよろこんでた」

    『……そう? 灼に迷惑かけちゃったから……咲にも連絡しづらくて……』

    「だいじょぶ……咲、照さんが活躍してすごくうれしそうだったから、早く連絡してあげてください」

    『……ん、わかった。 ありがと』

    やえ『……おめでと。 悪いわね、たいしたもの用意できなくって』

    「そんな、試合に招待してくれただけでも充分……しかも、憧たちの分まで」

    「やっぱり、プロの試合は違いますね……空気を肌で感じるとまたちょっと違う感じがしました」

    やえ『そう? ……それなら、よかったけど』

    「……やえさんは、いつ頃出番来そう?」

    やえ『ん……今回照がよかったかんね。 新人試していきたいみたいだし、今日みたいに瑞原プロや野依プロみたいなのと当たらない日ならすぐにでも使ってくれるんじゃないかしら』

    「ああ……そこらのプロなら三尋木プロが蹴散らしちゃいますもんね」

    やえ『たぶん、次鋒で起用されると思うわ……三尋木プロが点差つければ多少コケても後ろで取り返せるし、ね』

    「……もっと自信持ちなよ」

    やえ『通用する自信はあるわよ……ただ、客観的に見るとどうやっても私は実力的に照に劣るかんね……チーム的にもそういう試し方するだろうなって話』

    『……たとえコケても心配はいらない』

    やえ『……私は、新人だからコケても仕方ないとか、そういう言い訳したくないの』

    『それはわかってる。 そうじゃなくって……』

    やえ『なによ?』

    『私の面倒を見れるのはやえだけ。 チームも放り出したりしない』

    やえ『…………』

    「…………」

    「…………」

    『……?』

    やえ『なに不思議そうな顔してんのよ! このアホッ!』

    902 = 1 :


    そのままやえさんのお説教が始まり、当分まともに話もできなそうだったし、降車駅も近づいてきたので別れを告げて電話を切った

    「……照さんってさ、なんかもう……なんなのかしらね?」

    「ふふ……ほんと、普段はあんな感じだからね。 試合中とは大違い……かわいいと思うし、好きだけど」

    「……私とどっちが好き?」

    「恋人か」

    ぺちっ

    「あたっ……もう、冗談じゃん」

    「別に、痛くないでしょ」

    「そうだけどさー……私、大好きな先輩にぶたれて傷つきましたー」

    「はいはい……ごめんね」

    「……また撫でてー」

    「よしよし」

    「……んふふ」

    「ふぁ……んん……なにしてるの? 灼ちゃん、憧ちゃん」

    「ふきゅ」

    「あ、玄……おはよ」

    「んー……おはよ……朝?」

    「夜だよ……そろそろ吉野着くよ」

    「ん……あ、そっかぁ……試合……憧ちゃん、そんなに離れてどうしたの?」

    「べ、別に!? なんもないわよ!? ちょっと暑いから離れてただけだし!?」

    「……そうなの? まだ夜は冷えると思うけど……えへへ、穏乃ちゃん、体温高くてあったかーい……」

    「玄、まだ寝ぼけてる?」

    「んー……ちょっと……」

    903 = 1 :


    疲れてるのもわかるし、眠いのもわかる

    でも、さすがに人ひとりおぶる力は私たちにはないんだよなぁ……

    「……穏乃、ほら、そろそろ着くよ……起きて」

    穏乃「んむぅ……だっこぉ……」

    「それはさすがに無理……」

    「し、しず! ほら、早く起きなさいよ! 寝るのは帰ってからにしなさいって!」

    「憧ちゃん? どうしたの? さっきからなんか変だよ?」

    「き、気のせいよ! 別に、変とかじゃないし!」

    ……憧も見られて照れるぐらいならやらなきゃいいのに

    「……ほら、穏乃」

    穏乃「ふぁい……んん、おはようございます……」

    「動ける?」

    穏乃「……はい! 大丈夫です! ちょっと寝て完全回復です!」

    「ふぁ……穏乃ちゃんは寝起きいいねぇ……」

    穏乃「はい! 元気一杯ですよ!」

    「この時間に元気一杯になってどうすんのよ……」

    穏乃「大丈夫! 私、寝つきもいいから!」

    「それはよく知ってるわよ……」

    「ほら、元気なのはいいことだけど……夜だから、少し声落として……」

    穏乃「あ……えへへ、すみません……」

    904 = 1 :


    ――――――

    公子「おかえりなさい」

    「ただいま、おばあちゃん……」

    公子「今日は楽しかったかい?」

    「うん……すごかったよ」

    公子「そうかい……よかったねえ。 ああ、灼に荷物来てたから、部屋に置いといたよ」

    「ん、ありがと……シャワー浴びるね」

    穏乃と、憧と、玄と別れてやっと帰宅……やっぱりプロの対局を直に見て、なんだかんだみんなテンションが高くなってて……コンビニの前で長いこと話し込んでしまった

    もう、夜中の11時を回ってしまった。 早く寝ないと明日に響く……久しぶりに会う友だちとも会えたし、興奮しっぱなしだったからかなり疲れを感じる

    今日はもうサッとシャワーを浴びて、寝ることにしよう

    「……あ、これ、荷物…………」

    北海道? あ、揺杏だ……

    寝ようと思ってたけれど、たぶん誕生日に物を贈ってくれたんだろう。 さすがにこれは明日に回すわけにはいかないか

    段ボールを開けると、物の上に、一枚の手紙が……『開ける時に電話して!』……もう、ちょっと遅い時間だけど大丈夫かな?

    905 = 1 :


    揺杏『灼! 遅かったじゃんかよー……フラれたかと思ったわー』

    「……揺杏、遅くなってごめん」

    揺杏『ん? 全然いいって、電話くれたし! 誕生日おめでとうな!』

    「……ふふ、ありがと」

    揺杏『こんな時間までなにやってたんだよーこの不良娘め……世間は大変なことになってるぞ?』

    「今日は、麻雀の試合見に行ってて……世間?」

    揺杏『ぶはっ! じゃあ、もしかして現場にいたの!? 照ちゃんの試合! ってか、ヒロイン!』

    「……ん、いたよ」

    揺杏『あっはっは! アレ、なんなの!? マジやべぇ! 灼、もう特定されてるぞー?』

    「うぇ……マジですか?」

    揺杏『マジマジ! マジっすよ鷺森さん……そもそもインハイの時期に『ケーキをドカ食いする宮永照と座敷わらし』みたいな画像が少し出回ってたし!』

    「え……なにそれは……」

    揺杏『照ちゃん有名人だし? つーかアレだけケーキ食ってりゃそりゃ目立つっしょー』

    「……それはそうだね」

    制服のことも多かったし、そりゃあバレるか……SNSで勝手にそういう画像バラまくのはどうかと思うけど

    揺杏『それに、アラタって珍しい名前だし、誕生日までわれてりゃそりゃあねー』

    ……船久保さんもおんなじこと言ってたな

    …………まあ、いいや。 気にしても仕方ないし、もしかしたら宮永照のファンの女の子とかが麻雀部に来てくれるかもしれないし……うん、そう思おう。 そう思わないとやってられない

    906 = 1 :


    揺杏『まあ、その事はとりあえず置いといてさ! 私の送った荷物、見た!? 超自信作なんだけど!』

    「ん……これから。 自信作? 楽しみ……」

    揺杏『へへ、これはすごいぞー……パジャマに使えるから是非今日から使ってほしいね!』

    「開けるよ…………こ、これは……!」

    雪のように真っ白な布地。 長袖の先の方は手袋のようになっており、フードには耳。 おしりの部分にはふわふわのしっぽがくっついている

    「まさか……これ、これは……揺杏!」

    揺杏『そう! ウサギドラちゃんパジャマだ!』

    「!!!!!!」

    お風呂あがりに着たパジャマをパッと脱ぎ捨て、急いで着替える。 フードをかぶり、手の先まできっちり着こんで両腕を上に伸ばすと完全にウサギドラちゃんだ

    「おお……おお……!」

    揺杏『どうだ!? 完璧だろ!? ちゃんとフードと両腕、全部の顔の表情までしっかりこだわったんだぜ!』

    「ゆ、揺杏……! これ、これ、すごっ……! かわいい! ベリーキュート……! パーフェクト……!」

    揺杏『へへっ……よろこんでもらえてよかったぜ! 私の全身全霊と愛をたっぷり込めたんだぞー?』

    「愛してる! 揺杏最高!」

    揺杏『よっしゃ! 相思相愛だなー? んっふっふ……灼のテンション上がりすぎて怖いくらいだわー』

    「私もちょっと自分が怖い……! そして揺杏の才能が怖い……揺杏、恐ろしい子……!」

    揺杏『白眼剥いてない? 大丈夫? ……あっ! 写メ! 写メ送ってね! 私の最高傑作を身にまとった灼のキュートな姿を!』

    「わかった……! 送る! すぐにでも……!」

    揺杏『へへへ……今日は私や照ちゃんの愛を存分に感じただろー? どうだった、18の誕生日はさ?』

    「ふふっ……揺杏、そんなの、わかってるくせに」



    「今までで、一番……!」


    カン!

    907 = 1 :

    改めてあらたんイェイ~
    ギリギリ当日セーフだと言い張る所存
    人数増えると長くなるけど仕方ない…よね?

    次回は前回の宣言通りジャージ組予定です

    908 :


    人の輪っていいなぁ

    909 :


    照のケーキ仲間だと玉子も相当目立ってると思うけどそっちの画像は出回ってないのかな

    910 :


    あらたそおめ~

    911 :

    乙です
    ウサギドラパジャマあらたその画像うpよろ

    913 :

    おつー、あらたそおめ!

    914 :

    乙~&昨日だけどあらたんイェイ~

    915 :

    あらたそイェイ~わず
    しかしまあ安定のテルーと愉快な仲間たち
    おつ

    916 :

    乙です
    そのうち宥姉と怜ののほほん大学生活なんかも読みたいです
    あらたそは今度のインターハイは違う意味でも注目されそうだなw

    917 :

    阿知賀は二年連続で晩成たおしてインターハイ出れるのか
    まあ王者がいなくなったし部員集まれば余裕か

    918 :

    余裕かどうかは分からない
    小走先輩はいなくなるけど、晩成が名門なのは変わりないだろうし

    919 :

    >>907
    灼ちゃーの誕生日SP乙です♪
    ジャージ論争に大人組や憩ちゃんと愉快な仲間達with姫松&千里山の人達(監督付き)が加わるのは何時に成りますかね?
    特にすこやん(ジャージ連合に加入希望)とはやりん(非ジャージ連合に加入希望)には是非!
    あ…憩ちゃんと揺杏ちゃんによる服飾談義も見たいです♪

    920 :

    >>917-918阿知賀VS晩成の構図だと一年経つことで阿知賀の有利な状況って実は結構消えますよね。それぞれの打ち筋が割れてる上に稼ぎ頭の宥ねえは卒業、ハルちゃんがプロ入りすれば指揮官もいなくなりますし…
    ただ、奈良の地区予選は参加校数が変わらなければシード校がいないっていうのはポイントですね。早い段階で当たる可能性もあり基本晩成一強の環境だから、互いに勝てなそうだと思えば別の二校から稼いでしまえばいいという…
    原作年度でも晩成は先鋒戦から大将戦までで点差詰めてるし名門の層の厚さもあるだろうからなんだかんだいい勝負になりそうなイメージです。結局玄が仕事するかどうかで決まりそう

    投下しますー

    921 = 1 :



    運命の出会い(数日ぶり、二度目)


    922 = 1 :


    穏乃「そう! これは運命なんですよ! とうとう巡りあったんですよ!」

    恭子「え? え? なに? 意味わからんのやけど……」

    穏乃「ですからね、運命なんですよ! 国広さんや薄墨さんと出会った時にも感じたんですけど!」

    恭子「はぁ……? いや、もうちょっとわかるように……」

    洋榎「わかったで!」

    恭子「主将!?」

    穏乃「わかりましたか! さすがです洋榎さん!」

    洋榎「ふっふーん……これくらい当然や! つまり、超天才的スーパー美少女雀士洋榎さんに会いに来たんやろ?」

    穏乃「あっ、全然違います。 すみません」

    洋榎「……あ、そう…………」

    「おはようございまーす……あれ? 高鴨やん。 いらっしゃい、なにしに来たん?」

    洋榎「……漫! なに笑とるんや! デコ出せデコ!」

    「へ!? ちょ、いったい何事……あっ! ちょ、やめ、やめーや! なんですか急に!?」

    洋榎「逃げんなや! アホ漫! 待てぇや!」

    恭子「はぁ…………なにやってんや、あのアホどもは……騒がしくってごめんな?」

    穏乃「……いえ、その、こちらこそ急に……個人戦の準備もあるのにお邪魔してしまって……」

    恭子「そんなん気にせんでもええって……たまには息抜きもせななー……で、今日はどうしたん?」

    穏乃「その、どうしても末原さんにお会いしたくて!」

    恭子「私に? なんでまた……」

    923 = 1 :


    穏乃「これです!」

    恭子「ん? スマホ……私の写真?」

    絹恵「あ! 私のイチオシショットやん!」

    恭子「うぉ!? き、絹ちゃん!? いつの間に……」

    絹恵「漫ちゃんのすぐ後ろにおったんですよー」

    穏乃「灼さんに見せてもらったんですよ! この、ジャージを羽織った末原さんの写真を!」

    恭子「えぇ……なんでそんなん流出しとるん……? つーかこないだみんなで散々ダサいダサい言うとったやんか……」

    絹恵「いやいや、大丈夫ですって! 全然いけますよ!」

    恭子「どこに行くんや……絹ちゃんにだっさい奴だと思われてたんがいっちゃんショックやったんやで……?」

    絹恵「ほら、私はそんな末原先輩が好きですから!」

    恭子「はぁ……最近絹ちゃんがようわからんわ……で? この写真がどう絡んでくるん?」

    穏乃「ふっふっふ……私の格好を見てなにか気づきませんか?」

    恭子「……? いつも通りやんな?」

    穏乃「そうです! いつも通りの……」

    恭子「……ジャージか?」

    穏乃「はい! 私、実はこう見えてジャージ愛好家なんですよ!」

    恭子「あ、うん。 それは知っとったわ」

    穏乃「本当ですか!? さすが姫松の参謀……!」

    恭子「さすがもなにも見たまんまやんか……」

    924 = 1 :


    穏乃「見てください! 末原さんの、この着こなし!」

    恭子「見てくださいもなにも……私やで?」

    穏乃「超カッコいいじゃないですか!」

    恭子「……んん?」

    穏乃「ですよね、絹恵さん!」

    絹恵「な! いやぁこの良さがわかるとは高鴨さんもなかなかやるなぁ」

    穏乃「ジャージに関しては専門家を自負していますからね、私は!」

    恭子「なんや、ジャージの専門家って……」

    穏乃「そりゃあ、ジャージの素材からデザイン、着こなしまで幅広くなんでもですよ!」

    恭子「どういうこっちゃ……」

    絹恵「でもでも、この末原先輩のジャージの着こなし! ホンマに完璧ですって!」

    穏乃「肩に羽織った風にたなびくジャージ! 鋭い眼差しに組んだ腕!」

    絹恵「凛々しい! 素敵やん!」

    恭子「な、なんや……急に褒めたりして……」

    穏乃「いえいえ! 前々から思ってたんですよね! 末原さんカッコいいなーって!」

    恭子「カッコよくないわ……私ダサいし……」

    絹恵「……もうっ! なに拗ねてんのもう! もう! 恭子ちゃんかわええなぁ!」

    恭子「こらっ! 絹ちゃん! どつくのはええけど恭子ちゃんはダメやって! 二年前までとは違うんやから……先輩後輩のケジメやで!」

    絹恵「あ……すんません! 末原先輩かわええからつい……」

    恭子「かわいくないし……私ダサいし……」

    絹恵「だから拗ねないでくださいって!」

    925 = 1 :


    由子「恭子はいちいち気にしすぎなのよー」

    恭子「ゆーこ……おったんか」

    由子「今来たとこなのよー? 高鴨さんいらっしゃーい」

    穏乃「こんにちは、真瀬さん! 」

    由子「ふふっ、高鴨さんはいっつも元気で花丸満点なのよー」

    穏乃「元気が私の取り柄ですっ!」

    由子「とっても素敵なところなのよー」

    絹恵「高鴨さんはメンタル強いもんなぁ」

    由子「それに比べて……恭子?」

    恭子「……なんや?」

    由子「恭子はダメダメよー?」

    恭子「そんなん知っとるわ……いちいち言わんでもええやん……」

    由子「だから、そういうのがダメなのよー? そうやっていじいじしたってどうにもならないのよー」

    絹恵「末原先輩、実力も人望もあるんやから……もっと堂々としてほしいです!」

    由子「そうそう! 赤阪監督も言ってたけど、恭子は本当は強いし、かわええんやからー」

    穏乃「そうですよ! 自信過剰はいけないかもしれませんけど、相応の自信は持たなきゃダメです! この写真の時のように堂々と!」

    恭子「……励ましてくれるのはありがたいんやけど、その写真恥ずかしいから消してくれんかな……?」

    穏乃「そんな! こんなにカッコいいのに!」

    絹恵「それを消すなんてとんでもない!」

    926 = 1 :


    恭子「……まあええ、で? そのジャージ専門家の高鴨が私になんの用なん?」

    穏乃「ジャージ愛好家の同志として末原さんとお話ししたいなーって!」

    恭子「なるほどなぁ……ひとつええか?」

    穏乃「はい! なんですか?」

    恭子「私、別に毎日ジャージ着とるわけじゃ……」

    由子「高鴨さん! とりあえず恭子連れ出してもらって構わないのよー」

    穏乃「本当ですか!? やったー!」

    恭子「えっ、ちょっとゆーこ! なに勝手に……」

    由子「監督には私からちゃんと言っとくのよー」

    恭子「そういう問題やなくって……」

    由子「ちょっと高鴨さんにたくさん褒められて自信つけてくるといいのよー! 身内の私たちに褒められても素直に自信にならないんでしょう?」

    恭子「……それは、まあ…………」

    絹恵「それじゃあ、私は待ってますかね……高鴨さん! 末原先輩のジャージ写真たくさん撮って送ってな!」

    穏乃「任せてください!」

    恭子「ジャージ写真って……体育祭とかでもないのに……意味わからへん……」

    由子「ま、息抜きだと思って楽しんでくるといいのよー」

    穏乃「末原さんっ! 行きましょう!」

    恭子「わかったから、そんなに引っ張らんで……すまん、じゃあちょっと出てくるわ」

    由子「いってらっしゃいなのよー」

    絹恵「頑張ってください!」

    927 = 1 :


    ――――――

    恭子「……なあ、高鴨」

    穏乃「はいっ!」

    恭子「なんでジャージなん?」

    穏乃「なんで……?」

    恭子「いや、だって……ジャージって、女子高生が普段着にするようなもんでもないやろ?」

    穏乃「えっ」

    恭子「……えっ?」

    穏乃「いやいや、まさか」

    恭子「え……流行ってんの? 嘘やん……」

    穏乃「あ、いや……流行ってはいないですけど。 たぶん」

    恭子「え、たぶん?」

    穏乃「まあ、たしかに年中ジャージの女子高生は私以外に知らないですけど……」

    恭子「せやろな……安心したわ……」

    穏乃「……なんで自信なさげなんです?」

    恭子「いや、私、流行りとか疎くて……」

    穏乃「そうなんですか? ちなみに今流行ってるのはこういう……」

    恭子「ほー……いや、これ服やなくて布切れやろ!?」

    穏乃「はぁ……これが今の最先端なんですよ……やっぱり先を行きすぎて理解されないというか……」

    恭子「それ、ほんとに流行ってるんか……? っていうか、この子、どっかで見たような……えーと」

    穏乃「龍門渕の国広一さんです! 私の親友で同志で尊敬する素晴らしい人で……」

    恭子「……よくこんな格好してるやつを尊敬できるなぁ」

    穏乃「え? 超お洒落でかわいいじゃないですか?」

    恭子「…………マジで言うとるんか?」

    穏乃「え? わからないんですか?」

    恭子「えっ……?」

    穏乃「えっ」

    恭子「……やっぱり、私、ほら、センスないねん……ダサダサやねんな……」

    穏乃「いやいやいやいや! 末原さん超カッコいいですから!」

    恭子「ええんや、もう……そんな、慰めなんか……」

    928 = 1 :


    穏乃「さっき真瀬さんや絹恵さんにも言われたじゃないですか! 末原さん素敵ですから! 自信持ってくださいよ!」

    恭子「そんなん言われてもなぁ……」

    穏乃「少なくとも! 去年の段階でこの素敵ジャージファッションをしていた時点でセンス爆発的ですよ!」

    恭子「自爆した気分なんやけど……」

    穏乃「眠ってるんですよ! 潜在センスがもう吹っ切れてるというか!」

    恭子「やめて……なんか、もう辛いわ……」

    穏乃「……落ち着いてくださいよ、末原さん。 そんなに自分を貶めたって仕方ないじゃないですか」

    恭子「高鴨……」

    穏乃「まずは、私がジャージの素晴らしさについてしっかり教えてあげますから!」

    恭子「……はい?」

    穏乃「いいですか、ジャージというのは……」

    恭子「え、ちょっと待っ……」

    穏乃「まず、ジャージとは魂です! 半身です!」

    恭子「ちょっと待てって! これ絶対アカンやつ……」

    穏乃「だいたいジャージだって有名なスポーツ用品メーカーがお洒落なものも作って販売してますし……」

    恭子「あれ!? 普通にジャージファッションの真面目な話とかもするん!?」

    穏乃「ジャージってとっても機能的じゃないですか? 運動にも適してますし……」

    恭子「脈絡がない! ちょっとは話す順番とか考えとき!?」

    穏乃「私、この格好でよく山とか登りますし……」

    恭子「危ないからやめときや!?」

    929 = 1 :


    穏乃「っていうか、さっきも言いかけたんですけど……」

    恭子「……なんや?」

    穏乃「たしかに、ジャージを外出着にする女子高生は少ないかもしれませんけど! 普段着にしてる子はけっこういますよ!」

    恭子「それは……まあ、部屋着にするなら楽やしな」

    穏乃「あと、運動部の人とか!」

    恭子「それは運動するから着てるだけやろ!?」

    穏乃「あの、地上最強と言われる小鍛治健夜プロだってジャージ愛好者ですよ!?」

    恭子「え、そうなん?」

    穏乃「本人が言ってました! 実家でジャージじゃないと落ち着かないって!」

    恭子「あっ……」

    穏乃「う? どうしたんですか?」

    恭子「いや、小鍛治プロ……うん、なんでもないわ……」

    穏乃「? ……そうですか?」

    恭子「……というか、小鍛治プロと親交でもあるんか? そんな話したなんて聞いたことないで?」

    穏乃「……その、団体戦決勝の卓を見に行ったときに、小鍛治プロも見学に来てて、ちょっと……」

    恭子「なんでその状況でそんな話がでたのかまったくわからんのやけど……」

    穏乃「……つまり、ジャージってやっぱりすごいってことじゃないですかね!」

    恭子「……もうそれでええわ」

    930 = 1 :


    恭子「……高鴨、この短時間でだいぶイメージ変わったわ……」

    穏乃「え? そうですか?」

    恭子「だって、なぁ……?」

    穏乃「なぁ、と言われましても……」

    恭子「元気で礼儀正しい子やなーと思ってたんやけど……」

    穏乃「あ……私、なにか失礼なことしちゃいましたか……?」

    恭子「あ、いや! そういうことやなくて……その、思ってたよりも、あー……情熱的、なんやな……?」

    穏乃「情熱的……いいですね! そう、情熱的なんですよ! 燃えてるんです!」

    恭子「……高鴨は、熱いなぁ」

    穏乃「そりゃ、もう! 阿知賀の熱血担当ですよ、私は!」

    恭子「そういうもんか……まあ、阿知賀の面子なら高鴨が赤担当な感じもするわ」

    穏乃「あはは! 戦隊ヒーロー的なやつですか? 姫松もけっこうきれいに別れてますよねー……洋榎さんが赤で末原さんが青で……」

    恭子「んー……漫ちゃん緑で絹ちゃんが黄、ゆーこが桃やな」

    穏乃「でも、真瀬さんは桃というか白っぽいですよね」

    恭子「あー……たしかに、ゆーこは桃より白な感じするかもなぁ……阿知賀だと、新子が桃枠やな。 おしゃれやし、かわええし」

    穏乃「そうですねー……私、赤でいいんですかね? リーダーは灼さんですけど」

    恭子「まあ、鷺森が部長やんな」

    穏乃「けっこう熱いんですよ、灼さんも」

    恭子「へぇ……静かに燃えるタイプなんやね」

    穏乃「あ、でも宥さんもあったかいのが好きなんですよね。 赤色は宥さんかなぁ……」

    恭子「松実のお姉さんは、あんまりリーダータイプって感じはせんけど……」

    穏乃「……あっ! でも部室を守ってたのは玄さんなんですよね! 玄さんがいないとうちの麻雀部もなかったことだし、ここは赤を譲った方が……」

    恭子「随分と真っ赤なチームになったなぁ……」

    穏乃「あ、そこです! 私たちの泊まってるとこ! 案内しますね!」

    恭子「はあ!? ……よくこんな豪華な宿を…………さすがお嬢様学校……」

    931 = 1 :


    穏乃「どうぞ!」

    恭子「どうも、お邪魔しますー」

    「邪魔するんなら帰ってねー」

    恭子「ほな、失礼しますわ……ってなんでやねん!?」

    「意外とノリいい!?」

    恭子「え? むしろやらんの?」

    「いやあ……まさか末原さんがノッてくるとは……なんというか、真面目ちゃんですし」

    恭子「そら否定のしようもないけど……えぇ……? むしろこれ以外にどう反応するん……?」

    「え? 別に……」

    恭子「別に!? なんや別にって……そんなんやと生き残れんで……?」

    「生死に関わる!?」

    恭子「社会的に……」

    「社会的に!?」

    穏乃「……あれ、憧だけ? みんなは?」

    「玄と灼さんはふたりでどっか行ったわよ。 宥姉はいつものお散歩じゃない?」

    穏乃「え……憧は? まさか、置いてかれたの?」

    恭子「す、既に社会的に……」

    「違いますよ!? ハブとかじゃないし! 私は私で人と会う予定が……」

    恭子「無理せんでもええで? ほら……今は高鴨も、一応私もおるんやし……」

    穏乃「何があっても親友だよ、憧!」

    「だーかーらー!」

    932 = 1 :


    恭子「まあ冗談はこの辺にしといて……」

    穏乃「誰と会うの? 赤土先生は?」

    「むー……ハルエはお客さんが来るって言ってたけど、今は出てる。 私は、国広さんと……」

    穏乃「え、国広さん? 憧が? 井上さんじゃなくて?」

    「べべべ別に井上さんはかか、関係ないでしょ!?」

    穏乃「ああ、憧、緊張しちゃって誘えないもんね……」

    「はぁ!? べ、っつに、きき緊張とかしないし!? と、とも、友だちと遊びに行くのに緊張とかああありえないから!」

    恭子「なあ、気になることがあるんやけど……」

    「だだ、だから井上さんのことは別に特別気にしてないって言ってるじゃないですか!?」

    恭子「私なんも言っとらんやん……龍門渕からは今年個人戦出場選手おらんやろ? さっきから聞いとると東京来てるんか?」

    穏乃「清澄の応援で出てきてるんですよ。 私たちも前に練習試合したこともあって……かなり親密なんですよ!」

    「し、親密!? と、友だち以上恋人未満ぐらいかしら!?」

    恭子「……新子さっきから大丈夫か? 実はアホなんか?」

    穏乃「たまにこうなっちゃうんですよねー……それにしても、国広さん来るんだ! ちょうどよかった! 私も連絡しようと思ってたんですよ! 末原さんにも紹介しますね!」

    恭子「おう……それはありがたいわ。 長野の龍門渕……秋以降、それに来年も大会で出会う機会も多いやろし……」

    穏乃「国広さんのファッションセンスはずば抜けてますからね! この前岩館さんが服を作るって話をしてたらしいじゃないですか! 国広さんの服は参考になりますよ!」

    恭子「……ギャグやんな?」

    穏乃「えっ?」

    恭子「え、あ……いやいや、メゲたらアカン……落ち着け……」

    「だから落ち着いてますって!」

    恭子「あんたのこと言っとらんわ! ホンマに落ち着けや!」

    933 = 1 :


    恭子「なんやこの子ら……普通のしっかりした子たちやと思っとったのに……とんだ暴れん坊や……」

    穏乃「いやぁ、すみません……ちょっと、今日はテンションめっちゃ高くて!」

    「はぁ……はぁ……大丈夫です、もう落ち着いてますから……」

    恭子「新子……さっきから、そっちで光ってる携帯あんたのやないの?」

    「うぇ!? ……あ、国広さん! もう下に来てるって! ちょっと迎えに行ってきます!」

    恭子「……さっきから忙しい子やなぁ」

    穏乃「普段はああじゃないんですけどねー」

    恭子「この前会ったときは普通やったもんな……」

    穏乃「ま、いろいろあるんですよ。 あのくらいの年頃の娘にはね……」

    恭子「あんた同い年やろ! いくつや!」

    穏乃「16です!」

    恭子「知っとるわ! そういうことやないねん!」

    穏乃「じゃあどういうことですか?」

    恭子「どういうことって……えぇ……?」

    穏乃「あはは! 冗談ですよ、冗談!」

    恭子「……高鴨、今日マジでテンション高いな?」

    穏乃「そりゃあ、末原さんとご一緒できてうれしいですから!」

    恭子「……そ、そうか」

    穏乃「はい!」

    恭子「…………お、おう」

    穏乃「……あれ? 照れてます?」

    恭子「べ、べつに……そんなことあらへんで?」

    934 = 1 :


    「ただいまー」

    「お邪魔しまーす」

    恭子「邪魔するんなら帰ってやー」

    「それじゃあまたねー……ってどうしてさ!?」

    「!?」

    恭子「ほら! ノッてくるやん! 関西人でもないのに!」

    「えぇー……」

    穏乃「国広さんどこでそんな技術を……」

    「去年全国行くときにさ、透華が対関西人のマナーもちゃんと学ばないとダメだって言うから……」

    「……私、やっぱり龍門渕さんのことよくわかんない…………」

    恭子「……な、高鴨、ちょっと」

    穏乃「え? ……あ、すみません! 国広さん、こちら大阪の姫松で大将をやってらした末原恭子さんです! 末原さん、こちらは長野龍門渕の中堅の国広一さんです!」

    恭子「はじめまして、姫松の末原です」

    「あ、これはどうも……龍門渕の国広です。 よろしくお願いします」

    恭子「こちらこそよろしくお願いします……今日は運がええみたいやな。 あの龍門渕の国広さんと知り合えるとは……」

    「それはこっちの台詞ですよ。 あの末原さんと……試合もチェックしてましたよ? 特に、準決勝で宮永さんたち相手にあんな……」

    恭子「はは……負けたらどうにもならんわ。 結果が全てとは言わんし、漫ちゃんや絹ちゃんには大きかったけど……私にとっては最後のインハイやったしなぁ……」

    「……すみません、末原さん」

    恭子「ああ、いや……謝らんでよ、私が最近センチメンタルに過ぎるだけやから……ま、個人戦にそれ以降の大会やインカレ、プロだって…………団体の敗戦だって無駄にはならん……無駄にはせん……絶対に……!」

    935 = 1 :


    晴絵「お、いいねー熱いねー」

    恭子「おわぁ!?」

    穏乃「あ、赤土先生! お帰りなさい!」

    「ちょっと、入るならノックぐらいしてよねー」

    晴絵「はいはい、ごめんごめん」

    「お邪魔してます、赤土監督」

    恭子「お、お邪魔してます……」

    晴絵「いらっしゃい……ね、末原さん」

    恭子「は、はい!」

    晴絵「……その気持ちさ、絶対に忘れちゃダメだよ。 そこで折れたり、腐ったりしたら…………」

    恭子「…………」

    晴絵「……離れようと思っても、麻雀を忘れることなんてできないから……」

    恭子「…………」

    晴絵「……ああ、ごめん。 私もこの件についてはちょっとセンチメートルで……」

    恭子「……そこはセンチメンタルやろ」

    晴絵「はは、いいツッコミ……ね、小鍛治さん?」

    健夜「う、うん……その、ごめんなさい……」

    晴絵「それこそ謝らないでくださいよ……私が勝手に負けて勝手に潰れたんですから」

    健夜「いや、そうは言ってもやっぱりさぁ……」

    恭子「!?!?!?」

    「こ、小鍛治プロ!?」

    「え、ちょ……はぁ!? マジで!?」

    穏乃「小鍛治プロ!? うわ、え? すごいっ! なんでっ!?」

    936 = 1 :


    健夜「え、なんでと言われても……ちょっと暇だったから遊びに……」

    晴絵「ははっ! なんか学生時代を思い出しますねー……私もちょっと暇だと望のとこ行ったり……」

    「うわぁ……あ、あの小鍛治プロが遊びにくるんだ……」

    「っていうか小鍛治プロ暇なんだ……」

    恭子「はぁ……ホンマに暇なわけないやろ。 あの小鍛治プロやで?」

    穏乃「え……でも、嘘つく必要なんて……」

    恭子「……もしかして赤土監督、プロ行くんやないか?」

    穏乃「えっ!? な、なんでそれを……」

    恭子「やっぱりな……そんな感じの噂も耳にしとったんや……学生時代、小鍛治プロに唯一跳ね満以上のダメージを当てたのが赤土監督や言うやないか……スカウトに来たんやないの? 契約関係とかもあるし、そうそう漏らせる話じゃないんやろ……」

    穏乃「な、なるほど……!」

    「それじゃあ、高鴨さんも新子さんも大変だ……下手したら、赤土監督の評価下げちゃうかも……」

    「そ、そういうことに言われるとちょっと緊張するんですけど……」

    穏乃「ど、どうしよう……私、失礼なことしちゃってないかな……」

    恭子「失礼のないように気を付けないとアカンで……」

    健夜「……ねぇ、赤土さん……なんか、私さ……」

    晴絵「まあ、そういうことにしておきましょうよ……言わなきゃわかりませんし、夢を壊しちゃいけませんって……みんなプロを目指して純粋に頑張ってるんですから」

    937 = 1 :


    晴絵「っていうかうちのはしずと憧だけ? せっかくあの小鍛治プロが来てくれたのに……」

    健夜「ちょっと、やめてよ赤土さん……」

    「三人とも出かけちゃったわよ」

    穏乃「もったいなかったですね……あの小鍛治プロが来てるというのに……」

    「なんたってあの小鍛治プロだもんね……」

    恭子「あの小鍛治プロが来てくださってるのになぁ……」

    健夜「みんなで変に持ち上げるのやめて!?」

    恭子「いやいや……変にもなにも、あの小鍛治健夜ですよ?」

    晴絵「そうそう、その雷名は日本どころか世界に轟いてるじゃないですか」

    「そうですよね……世界ランク二位まで行ってるし、国内でも永世七冠保持ですし……」

    穏乃「世界戦でも魔王みたいな……じゃなくて、英雄的な大活躍で!」

    「化け物みたいな……じゃなくて、神様みたいなもんよね」

    健夜「奈良のふたりは私のことちょっと嫌いだよね!? 恨まれてるよね!?」

    穏乃「まさか! ほんと、すごいですし憧れてますよ! ね?」

    「ね! まあ、私は瑞原プロとかの方が好きだけど……」

    穏乃「あ、それを言ったら私も三尋木プロとかの方が……」

    健夜「やっぱり私のことどうでもいいよね!? そこまで興味ないよね!?」

    恭子「さ、さっそく失礼な感じに……」

    「ふふ……ふたりともけっこうマイペースなんですよ」

    938 = 1 :


    穏乃「と言うより、むしろ私は小鍛治プロに興味津々なんですけど! 少々お時間よろしいですか!?」

    健夜「え……うん、暇だし全然大丈夫だけど……」

    晴絵「お、積極的でいいぞーしず! 小鍛治さんレベルの雀士とお話しできる機会なんてそうそうないし、いろいろアドバイスもらっとけー」

    「新子さんももっと積極的にならないと……」

    「ななな、なんの話ですかね!?」

    恭子「……たしかになかなかない機会や…………うちはプロ雀士を呼んで指導してもらったりはけっこうあるけど、さすがに小鍛治プロレベルは……」

    穏乃「あの、小鍛治プロの普段着てるジャージってどこのメーカーのですか?」

    健夜「ああ、ジャージ……ジャージ!?」

    恭子「ここでジャージ!?」

    「ああ、小鍛治プロもジャージストだったんだ」

    晴絵「ジャージスト!?」

    「? ジャージ愛好家のことですけど……」

    「語感で意味はなんとなくわかったけどはじめて聞きましたよ!?」

    「末原さんも超上級ジャージストだって高鴨さんが」

    恭子「仲間にされとる!?」

    健夜「いや……高校の時の学校指定のやつだけど……」

    恭子「そして普通に答えとる!?」

    「物持ちいいなぁ……20年前なのに……」

    健夜「10年前だよ!? アラサーだよ!」

    「おお……生アラサーだよ! だぁ……」

    恭子「やっぱキレッキレやな……」

    健夜「持ちネタじゃないよ!?」

    晴絵「こーこちゃんと散々やってるしもう手遅れですって」

    健夜「手遅れの行き遅れ!?」

    晴絵「言ってませんよ!?」

    939 = 1 :


    ――――――

    穏乃「えー、それでは、改めて始めさせていただきますが……」

    恭子「おい……なんか、はじまったで?」

    「安心してください、末原さん……高鴨さんのジャージプレゼンが始まるだけですから」

    健夜「ジャージのプレゼン!?」

    晴絵「えー……せっかく小鍛治さん来てるのにそんな……」

    穏乃「小鍛治プロが来ているからですよ! それに、元々末原さんにするつもりでしたし!」

    恭子「高鴨は私をどうしたいんや……」

    「ああ……どうしよう……灼さんと揺杏呼んでもこの場じゃ頼りにならないし、巴さん呼んだら薄墨さんもついてきそうだし……」

    「あはは」

    「あははじゃ……っくぅ……国広さんを引き離す手はあるっちゃあるけど……むむむ……」

    穏乃「小鍛治プロも末原さんも高校指定のジャージを着用されているようですが……まずは手元の資料をご覧ください」

    「ふーん……っていつの間にこんなの用意してたのよ!?」

    穏乃「いやぁ、末原さんに会いに行くって決めてから用意を進めてて……」

    恭子「意外と周到やな!?」

    穏乃「あ、それに私物ですけど実物のジャージもいくつか……どうぞ、手に取っていただいて結構ですので……」

    健夜「あ、これ……かなりいいやつじゃない?」

    恭子「ん? ほぉ……これは、なかなか……」

    「なんで興味惹かれてんですか!? ……あ、でもたしかに……」

    「ふふふ……さすがのジャージマイスターだね」

    晴絵「こりゃあ……部屋着にするには値が張りそうだなぁ……」

    940 = 1 :


    穏乃「甘いですよ、赤土先生……手元の資料からもわかる通り、ジャージも機能性だけでなくデザイン性も向上していてですね……」

    恭子「たしかに、お洒落やな……トレーニングウェアとしては」

    「トレーニングウェアとしては、ね……」

    穏乃「え、なに……その言い方、ちょっと引っ掛かるんだけど……?」

    「ジャージとしてオシャレでも外出着にはならないって言ってんの!」

    穏乃「……は?」

    「は? ってなによ! は? って!?」

    穏乃「え? なに言ってんの? ギャグ?」

    「新子さんにはちょっと早かったかな?」

    「なんで私がおかしいみたいになってんの!? おかしいのはそっちでしょ!?」

    穏乃「ははっ」

    「ふふふっ」

    「あぁ! もう! ムカツク!! なによ、なんなのよ、もう!!」

    恭子「新子、ちょっと落ち着けや……ほら、カッカしてもどうにもならんで?」

    健夜「さ、さすがに私もジャージで外出は……」

    晴絵「……逆にどこまでなら行けます? 近所のコンビニぐらいまでは行っちゃいます?」

    健夜「うーん……いや、さすがにコンビニまでは……あ、でも朝のゴミ出しぐらいならジャージで……」

    「それはそれでどうかと思いますけど、女として……特に有名人なんですから……」

    健夜「……お洒落な子に言われるとダメージ大きいね……なんか、ちょっと……ふふふ……」

    晴絵「小鍛治さんしっかり!? 」

    941 = 1 :


    恭子「……にしても、これけっこう着心地ええなぁ」

    穏乃「でしょう? こう、ジャージの素晴らしさというものをですね……あ、小鍛治プロもどうぞ!」

    健夜「え? ああ、じゃあせっかくだし……」

    「ってなんで試着とかしちゃってんですか!?」

    恭子「いや、ジャージのプレゼンとしては悪くないやろ……こっちの資料も良くできてるし……ほら、メーカーごとの違いとか傾向までしっかり……」

    健夜「貯金もけっこうあるし買ってみてもいいかもなぁ……」

    「……しず! こんなん作る暇あるならもっと他にすることあるでしょ!?」

    穏乃「こんなんって……良くできてるってみんな言ってくれてるじゃん。 ほら、憧もちゃんと読んでってば」

    「……まあ、たしかにいいかもしれないけど……絶対に普段着にはならないからね!? ジャージなんて着ても体育の時間ぐらいだし!」

    穏乃「はぁ……これだけ言ってもわからないなんて……」

    「まあ、ゆっくり時間をかけていけばいいよ」

    「どれだけ時間かけてもわからないからね!?」

    穏乃「だって、私なんてジャージ何着持ってると思ってるの? 普段着、外出着、運動着、おしゃれ着に一張羅にパジャマ用に……」

    恭子「え? それ全部ジャージなん?」

    「多い! 多すぎ! おかしいでしょ!?」

    健夜「フォーマルなジャージってどんなのか気になるなぁ……」

    晴絵「はははっ……そんなのあったら楽なんですけどねー」

    健夜「やっぱり楽なんだよね、ジャージ……」

    「好感触だよ、高鴨さん!」

    穏乃「はい! 頑張った甲斐がありました!」

    942 = 1 :


    「なんなの……なんなのよこれ……」

    恭子「……なんや、苦労してそうやな、新子……」

    「おかしいじゃないですか! なんでジャージが流行ってるみたいな感じに!?」

    恭子「いや、まあ、流行ってはないわな……でも、別にジャージ自体は悪くないやろ?」

    「いやでも……っ!」

    恭子「だから、普段町中をジャージで練り歩くのはおかしいけどな? それこそ授業でも使うし、いいジャージを使うこと自体は特に問題ないやろ?」

    「……言われてみれば、それはたしかに……」

    恭子「だから、なんとかしたいのならメゲたらアカン。 ジャージどうこうよりも、高鴨を変えなアカンのやからな……あんたが諦めたらそれで仕舞いやで?」

    「す、末原さん……!」

    健夜「ねぇ、高鴨さん……おすすめのジャージとか……」

    穏乃「ああ、部屋着用なんですよね? そしたら三ページ目の……これとか、これとか……外出着はいいですか?」

    健夜「さすがにジャージだとね……運動するならともかく……」

    穏乃「運動も大切ですよ! 麻雀も長い時間打つには体力も要りますし……体力作りのトレーニングとかもなんなら私がメニューを……」

    健夜「へぇ……そういうのも得意なんだ」

    穏乃「鍛えてますからね! 筋トレとか、なんならダイエット用の運動だって……」

    健夜「……最近、お腹回りが気にならないこともないような……」

    晴絵「……実は、私も……地元戻ってからごはん美味しくてつい食べ過ぎて……」

    「それに、着たい服を選ぶのにも体型とかは気になりますよね……」

    「国広さんめっちゃ細いじゃないですか……いや実は私も最近、ちょっと服きついような気がしなくも……」

    恭子「気のせいやないの? 新子もめっちゃ細いやん……それに、それだけかわいけりゃ男のひとりやふたりぐらいおるんやないの?」

    「ふきゅ」

    943 = 1 :


    穏乃「ああ、憧はそっち方面全然ですよ? できるフリしてますけど」

    「な、なな、しず! ちょ、なに言ってんのよ!?」

    「実はボク、今日は恋愛相談で呼ばれたんですけどね……新子さん今片思い中で」

    「え、あ、いや! 別に、そ、そういうわけじゃないんですけどね!? ね!? す、す……き、とか、そういうんじゃ!」

    恭子「はぁ……新子みたいな子でもうまくいかないんやなぁ……」

    健夜「女子高生ってさ、羨ましいね……青春してるんだなぁ……」

    晴絵「私らは麻雀に青春捧げちゃいましたしね……」

    健夜「……やっぱりさ、ちょっとくらい努力しないとダメなのかな……」

    晴絵「麻雀麻雀でやって来て、これからプロ目指すとなると時間もないですけど……やっぱり結婚とかはひとつの……ね、アレですもんね……」

    健夜「アレだもんね……」

    穏乃「……アレ?」

    恭子「ほら、ふたりともなんかしら複雑なもんがあるんやろ……」

    「あまり触れない方向で……」

    穏乃「わかりました! ……それじゃあ、まずは努力してみましょう! トレーニングしてみましょうか!」

    晴絵「……まあ、なにか機会でもないと始めないし……」

    健夜「たしかに……ここで一回気持ちを切り替えてなにか始めてみないとズルズルとこのまま……」

    「おお……高鴨さんのプレゼンでやる気になってる……」

    恭子「意外と才能あるんやないの? 熱血系やしスポーツインストラクターなんかの道も……」

    「今は麻雀に集中してほしいんですけど……」

    恭子「新子も大変やな……麻雀に高鴨の軌道修正に恋に……」

    「ええ、ほんとに……って! ちが、最後のは、違いますから!」

    944 = 1 :


    健夜「んー……まあ、赤土さんも実際日本リーグで打ってたからわかると思うけど……けっこう体力要るよ。 まあ、私はそこまで疲れる相手と打ったことはないけど……」

    恭子「……相変わらずちょっと毒ありますね」

    健夜「え? どこが?」

    晴絵「まあ、体力はあるにこしたことないですね……長丁場の対局だって考えられますし……」

    健夜「それに、赤土さんが今後どうするのかわからないけど……はやりちゃんをはじめとしたアイドル系の売り方というか……グラビアの仕事とか来る可能性もあるし、身体は絞っといた方が……私はあまりやらないけど」

    「やらない? 仕事が来ないんじゃなくって?」

    健夜「やっぱり私のこと嫌いだよね!? グラビアって言っても水着とかばっかりじゃないから! ……私、自分で言うのもなんだけどそこそこ人気あるからね……? 仕事自体は来るんだよ……?」

    「そこそこって……人気すごい高いじゃないですか……」

    恭子「やっぱり圧倒的に強いですからね……世界戦で結果出しまくって日本麻雀の地位を上げましたし」

    穏乃「そうですね……そのあまりの強さに、うちの赤土先生も小鍛治プロにやられてトラウマ作って……」

    健夜「やっぱり恨んでるよね!?」

    晴絵「はは……恥ずかしいからほじくり返さないでくれよ」

    健夜「と、とにかく! 今はトレーニングの話だよ! 麻雀のためにも、その他諸々のためにも!」

    晴絵「そうですね……今後のためにも気合入れて! 雀力の基礎は体力から!」

    穏乃「おっ! いいですね! 熱意がないと運動は続かないですから! 習慣にしないとトレーニングの意味がないですからね!」

    恭子「それはそうやな。 麻雀だって毎日練習せなアカン……自分も、後輩にだって厳しく指導しとるしな」

    「継続は力なりって言いますしねー」

    「新子さんだってそっちのタイプでしょ? ボクも透華が毎日頑張ってるの見てるし……続けることは大事だよね」

    945 = 1 :


    健夜「それじゃあ、まずは……」

    晴絵「ええ、そうですね……」


    健夜「とりあえず、ジャージ買おう!」
    晴絵「とりあえず、ジャージ買おう!」


    「形から入った!? って言うかハモった!? 意外と仲いいなあんたら!?」

    「形も大事だよ? もちろん内実も伴わないとだけどね」

    恭子「部屋着にならなきゃええけどな……私も買っとくかな、お洒落なやつ」

    「買うんですか!? ジャージを!?」

    恭子「お洒落なやつな。 お洒落なやつ……デザイン性の高いジャージな」

    「ダサいって言われたの相当根に持ってますよね!? すみません!」

    穏乃「だから末原さんはカッコいいですって! ほら、今試着していただいてるジャージだって似合ってますよ!」

    恭子「ん? ……そ、そうか?」

    「騙されてますよ!? ジャージですから! ジャージ! ジャージの良さは認めても普段着にするのは絶対に認めませんよ!?」

    恭子「いや……でも、ほら……高鴨って素直やし……」

    「他人のいいところを素直に褒めれるのは高鴨さんの素敵なところですよね」

    「末原さんはいつも通りもっと警戒心持ってくださいよ!?」

    穏乃「あ、末原さんそのままちょっと腕組んでくでさい! 絹恵さんに写メ送るんで!」

    恭子「ん……こ、こうか?」

    穏乃「素敵ですよ! 末原さん!」

    946 = 1 :


    穏乃「よかったら、そのジャージこのまま差し上げますよ! 十分着れそうですし!」

    恭子「いや、さすがにそれは悪いやろ? ちゃんと買ってくるから……」

    穏乃「いえいえ、これも縁ですから! きっとそのジャージも末原さんに来てもらった方が喜びますよ!」

    恭子「しかしな……」

    「ほら、高鴨さんもこう言ってますし……友情の証なんです、ジャージが絆を紡ぐんですよ……ボクのこの手枷が絆であるように……」

    恭子「国広……」

    「なんかいい話みたいにするのやめてくれます!? 意味わかんないですからね!?」

    健夜「新子さん、学校やチームを越えた絆っていうのはね、後々絶対に自分を助けてくれるんだよ」

    晴絵「そう……私が今こうしてここにいるのも回りの人たちが助けてくれたからで……」

    「だからいい話風にすんなって言ってんでしょ!?」

    恭子「……そういうことなら、受け取らせてもらうわ」

    穏乃「はい! どうぞ!」

    恭子「……なあ、高鴨」

    穏乃「なんですか?」

    恭子「このジャージ……ほら、な?」

    穏乃「……? どこか変でしたか?」

    恭子「あ、いや……催促するみたいで悪いんやけど、ほらワンセットでもらえんと困るっちゅーかな……」

    穏乃「……?」

    947 = 1 :


    恭子「だから、その……下の方を」

    穏乃「した?」

    恭子「えっ?」

    穏乃「う?」

    「なんの話?」

    穏乃「???」

    恭子「???」

    「???」

    「うっ……ぐすっ……」

    恭子「泣いてる!?」

    「末原さんがまともな人でよかったよぉ……」

    恭子「……えっ?」

    穏乃「?」

    「?」

    「ひっく……ぐすっ……」

    恭子「えっ?」



    恭子「メゲるわ……」



    カン!

    948 = 1 :

    次回は…有珠山+はやりんか、すばら辺りかと
    週一で来るのが目標ですが五月の頭に染谷先輩とかこーすけとかあるし…できる限り頑張りたいなぁ

    949 :


    すこやんにも下はいらんな


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