元スレ祥鳳「ここは、はずれの鎮守府ですから・・・」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
851 :
ほんまじゃ
一周年(と2日)おめでとうございます
852 :
どうも、一周年に遅刻してきました、>>1でございます
やりましたよ皆さん、ニューマシンです。艦これも再開でき、原稿データもしっかり残っててくれました。こんなにうれしいことはない……
さて、たいへん長らくお待たせしてしまいました。今回は(たぶん)増量してお届けしたいと思います。
では、少し投下していきましょう……
853 = 1 :
再度放った水偵を見送って、提督は腕からカタパルトを外した。限られた戦力でいかに損害を出さずに切り抜けるか……今回はそこに集約される。肝はいかに航空攻撃をしのぐかにあるだろう。
提督「古鷹、加古。砲弾切り替えの方は慣れたか?」
古鷹「はい、なんとか!」
加古「うん、装填する時にちょっと考えれば何とかなるよ」
提督「切り替えのタイミングは前もって指示するからそこは気にしなくていい。それよりも三式弾は角度と炸裂タイミングが非常に難しい弾だ。そこのところの練習はまださせてないのに、すまないな」
古鷹「と、とんでもない!」
加古「うちがどうにかなるかならないかの瀬戸際だよ? がんばるって!」
提督「うむ、頼もしいな……さて、祥鳳。敵航空隊の動きはどうだ?」
祥鳳「はい、依然大きな動きは……いえ、まってください!」
じっと集中すると少し青ざめた顔で報告を始めた。
祥鳳「敵の第一次攻撃隊は、艦爆を軸に構成された爆撃隊です……数、60機超!」
長良「さ、さすが正規空母……」
提督「一隻80前後とみて、3分の1を出してきたか……」
少し考えて提督はさっと見回して指示を出し始める。
854 = 1 :
提督「祥鳳は艦戦で応戦の準備を、艦爆隊なら上から来る…古鷹と加古は三式弾装填後仰角最大で待機、軽巡隊は艦攻隊を警戒して機銃を、駆逐艦は高角砲の用意を!」
重巡組の砲頭がスムーズに回頭し、ぴたりと止まる。ギアの回る音ともに砲身が上を向く。これも迅速かつ正確な動きだ。よく整備が行き届いているようだ、帰ったら主任妖精にしっかり礼をしなくてならないと思いつつ指示を飛ばした。
提督「弾種三式弾用意!」
古鷹「加古、時限信管の設定任せるよ?」
加古「おーし、んじゃあね……うん、3秒ともう少しくらい!」
古鷹「もう少し、と……うん、オッケーだよ!」
提督「射撃タイミングも加古が決めてくれ」
加古「へへっ…任せといてぇ!」
嬉しそうな加古の様子にうなずくと、提督はさらに指示を飛ばす。
提督「数は少ない上小型だが魚雷は魚雷だ、当たれば大きなダメージになる。軽巡隊もしっかり頼むぞ」
名取「う、機銃ですかぁ……」
鬼怒「主砲よりは音小っちゃいからどうにかなるよ!」
由良「うーん、単装砲……」
長良「由良は単装砲好きだね……」
855 = 1 :
提督「初春、初霜、若葉……ここが正念場だ、いいな?」
初春「心得ておる、子日には指一本触れさせはせんぞ?」
初霜「傷ついても、私が助けます!」
若葉「大丈夫……誰もやらせはしない」
提督「祥鳳……航空戦の要は君だ。第一波はわからないが君の力が必要になる……頼むぞ」
祥鳳「…………はい」
各々の反応をかみしめ、前を見据える。不安がないとは言い難い。だが、やるしかない。
敵機の群れが見えた。青い空に点々と浮かぶ黒点がこちらに向かってくる。二手に分かれ始めればもう猶予はない。提督はじっと見据え、命じた。
提督「総員、対空戦闘用意!」
緊張と闘志と覚悟と恐怖が織り混ざった冴えた空気が満たされる。徐々に近づいてくる低いエンジン音。異形の戦闘機たちが獲物を見つけたとばかりにまっすぐ向かってくる。
す、と。衣擦れの音を残して提督が腕を掲げ、そして、
提督「撃ちかた、始めッ!!」
号令と共に、振り下ろした。
加古「古鷹っ!」
古鷹「うんっ、三式弾射ぇっ!!」
856 = 1 :
20.3cm砲の轟音が開戦を告げる号砲だった。真っ直ぐに上空へと弾き出された赤い砲弾が高速で敵機の編隊に迫る。風を切り、敵が反応して散開するその直前。
パッ、と奴等の鼻先で弾けた。飛び散る閃光と炎が敵機を飲み込む。3基6門が2隻分で都合12発の花火が綺麗に編隊を包み込んだ。
花火の後の黒煙の中から断続的に響く爆発音。その黒煙を突き抜けてくるのはどれも自らが抱える爆弾によって吹き飛んだ敵機の残骸だった。辛うじて炎を免れた他の敵機もバランスを崩してふらふらと起動を乱している。
鬼怒「いっくよぉ!」
名取「当たってくださあああああい!!」
そこに襲いかかる弾幕。機銃や高角砲の弾丸の雨が次々と残りの敵を蹴散らしていく。さすがに突入は無理だと判断したのか爆弾を離して逃げていく機体もあった。
一方の艦攻隊は高度を下げて迫り来る。が、そこはすでに弾幕の嵐の中だった。背面に鎮守府を置き海はなく、背後からの攻撃を警戒する必要はない。初春型たちと軽巡たちの鬼の集中砲火が艦攻隊を次々と叩き落としていく。
若葉「子日がいなくとも、大丈夫」
初霜「1機たりとも、通したりしません!」
敵の戦闘機隊も黙ってはいなかった。が、こちらの航空戦力を知ってか直掩はすくない。
祥鳳「私だって、航空母艦です!」
祥鳳の零戦の前にあえなく蹴散らされていた。
一か八かで魚雷を落としてく艦攻もいたが、如何せん距離が遠かった。
857 = 1 :
提督「魚雷は知っての通り直進しか出来ん、冷静に回避だ」
由良「よく知ってるもんね!」
す、と最低限の動きでやり過ごし陣形は乱さない。
こうして、いくつかの幸運に守られていたものの最初の航空攻撃はほぼ損傷なしに凌ぎきった。せいぜい戦闘機たちが放った破れかぶれの機関銃が少し掠めたくらいだろうか。
初春「ふむ、帰っていくようじゃ」
提督「よくやった。最初の攻防はこちらに軍配が上がったらしい」
加古「いよっしゃぁ! あたしらだって、やるときゃやるんだよ!」
長良「すごい……ほとんど落としちゃった」
提督「だが気を抜くのは早い。第二波がくるか、もしくは砲撃戦を仕掛けてくるかもしれん。軽巡は機銃から主砲への換装がすぐ出来るよう留意しろ」
名取「は、はいぃ!」
提督「祥鳳、敵の動きは?」
祥鳳「まだ何も……いえ、待ってください」
じっと偵察機の情報に耳を傾けている。
祥鳳「敵艦隊の接近を確認しました。砲撃戦に出るようです」
提督「来たか……」
858 = 1 :
祥鳳「空母を後方に残しつつ重巡、軽巡、駆逐2隻が接近しています」
由良「それは、後方からの航空支援が飛んでくるね……」
古鷹「さっきの航空隊、戦闘機少なかったから……たくさん飛んでくるよね、今度は」
若葉「だ、大丈夫だ、問題ない……」
初春「それはダメな〝ふらぐ″じゃの」
提督「ともかく長良と由良は機銃を単装砲に切り替えだ。名取と鬼怒はそのまま」
長良「了解!」
由良「うふふ、単装砲♪」
提督「初霜、若葉は機銃を減らして魚雷を増設だ」
初霜「ぎょ、魚雷ですか?」
若葉「策が、あるのか?」
提督「ああ……初春は逆に装備に機銃を増やすんだ」
初春「こ、心得たのじゃ」
提督「よし……それでは、陣形を変えようか……」
祥鳳を中心にして両翼に名取と鬼怒、前方に初春、後方に初霜と若葉を配置。その前方、加古、古鷹、由良、長良を前衛として配置した。
古鷹「あれ?」
859 = 1 :
と、ここで古鷹が気づく。
加古「どしたの、古鷹?」
古鷹「この前衛の陣形……真ん中空いてない?」
左翼から長良、加古、古鷹、由良の順番に並んでいるわけだが、真ん中は1隻分ほどのスペースが空いている。
提督「あぁ、そうだ。それは……」
由良「そ、それは……?」
提督「私が出る」
加古「…………へ?」
―――――
―――
―
860 = 1 :
背中に背負った機関部から左右に伸びた土台が可動式のアームのように動く。土台の上には主砲を4基乗せ、足元には魚雷発射管が装備されている。アームについた操作用の操縦桿を握り感触を確かめるように動かす艤装の主は、提督その人であった。
提督「よし、動く……さすがは主任妖精だ、使われてなかった艤装も問題なく動かせる」
満足げにうなずく提督に、さすがの艦娘たちも唖然とせざるを得なかった。
水に浮けて、艦娘の兵装を使いこなせるうえ、まさか艤装まで装着できたとは……祥鳳もこれにはただただ驚くばかりだ。
鬼怒「あ、あの……大丈夫なの、それ」
提督「あぁ、問題ない」
初霜「て、提督さんは艦娘なのですか……?」
提督「いや、れっきとした人間だ」
加古「……人間は、艤装は装着できないと思うんだけど」
提督「気にするな」
古鷹「いえ、あの……」
提督「今は気にするな、い・ま・は」
名取「は、はい……」
提督「ほら、持ち場に戻れ」
長良「……気になる」
861 = 1 :
宥めすかして納得させられるのは人徳なのかそれとも今までのとんでもない行動の積み重ねなのか、ふと祥鳳は考えた。
提督「では、作戦を確認する」
後者だと判断した。
提督「今回は本格的な砲雷撃戦だ。つまり、正面きっての殴り合いになる。ただ、敵の後方には正規空母が構えている。先の第一次攻撃で約3分の1を損失させたため打撃力は下がっているもののその戦力は侮れない――」
しかし、敵の前衛を退けなければ、こちらの航空戦力が不足している以上空母へダメージを与えることは難しいだろう。ならば素直に前衛を叩くしかない。
提督「私が率いる前衛艦隊が敵の前衛をたたく。その間やってくるであろう敵航空隊を祥鳳が足止めすんだ。直掩は最低限とする」
そうなると祥鳳の守りが手薄になる。敵が祥鳳を叩きに来るのは目に見えているのだから、それはまずい。
提督「そこで、祥鳳の守りとして初春、名取、鬼怒を対空戦闘装備で展開させる。そしてさらにその後方に初霜と若葉だ」
祥鳳の後方警戒を担当するとともに最後の切り札として温存する。
提督「万が一前衛を仕留めきれない場合は撤退しておびき寄せる。十分距離を詰めたところで後方から飛び出し、一気に雷撃で片付ける」
なお前衛艦隊を撃破できた場合は、空母に対しての止めを担当することになる
862 = 1 :
提督「さて、これで本当に最後ならいいが……だが、我々に後を気にする余裕はないだろう。ゆえに、この一戦に掛けて戦い抜く」
提督は艦隊の面々を振り返る。
みな、どこか覚悟を決めたような顔だ。不安はあれど少なくとも怯え竦む様子は見られない。提督はそれを見てゆっくりうなずいた。
提督「端野鎮守府全艦隊、これより敵艦隊の撃破を行う。総員、砲雷撃戦用意――出撃!!」
艦娘たち「「「了解!!」」」
前衛艦隊がゆっくり波の軌跡を残して前進する。形としては単横陣だ。艦隊は足並みをそろえてまっすぐ進む。
と、後方の祥鳳たちがだいぶん小さくなったあたりで古鷹が気づいた。
古鷹「上空、敵航空隊です!」
雲の合間を大量の黒点が移動している。その数はおよそ80、前方斜め上をきれいな編隊を組んで飛行していた。うち何機がこちらに飛んでくるかはわからない。が、
提督「敵艦載機は祥鳳に任せる。が、降りかかる火の粉は自分で払わなければならないことを忘れるなよ」
由良「うん、大事だもんね!」
由良がぐっとこぶしを握る。どちらかといえば温厚な部類の彼女も、戦いを前に興奮が入っているのかもしれない。
提督「ああそうだ……、と。我、敵艦見ゆ――お出ましだ」
863 = 1 :
水平線の上、ぽつりぽつりと小さく見える4つの影。
報告にあった前衛艦隊だろう。
提督「しつこいようだが、数で勝るとはいえ相手の頭上には航空隊がいる。気を抜くな?」
加古「わかってるって! よーしやるよぉ!」
敵艦隊とぐんぐん距離が詰まる。そして、ついに20.3cm連装砲の射程に入った。
提督「撃ちかた始めッ」
遠く、敵の重巡も砲を構えたように動く。いかな艦船が艦娘となって艦隊戦の様相が変わったからと言ってその基本は射程内に近づきながらの撃ち合いであることに変わりはない。違うことといえば、
長良「っ、撃ってきた!」
さっと、素早い反応で横にずれる長良。そう、人型であるがゆえに回避方法が艦船のそれとは全く異なるのだ。
長良の後方で水柱が立つ。敵の少し見込みが甘かったようだ。
加古「へへっ、それじゃああたしが……うわわっ!」
加古が応戦するとばかりに砲を構えるも、慌てて身をひねる。そこを通り過ぎる、ぱぱぱ、と連続した小さな水柱。その後ろから飛んでいったのは敵の黒い艦載機。あとから祥鳳の零戦が追いすがり機銃で叩き落とした。
頭上を確認すればおよそ30を超える艦載機が飛び回り、祥鳳の艦載機が対応に追われている。祥鳳の搭載機数は30、うち24機をこちらの防空に回しているから数の上では若干の不利と言える。しかし艦戦の数だけ見れば上回っているようにも見える。
提督「長良、由良は加古、古鷹の後方について上空の警戒を」
864 = 1 :
由良「任せて!」
長良「古鷹さん敵機接近!!」
古鷹「くっ、まともに狙いが……」
古鷹のすぐ横を艦爆の爆弾が掠めて炸裂する。いかな艦戦が多くとも性能と数の不利には勝てないらしい。提督も側面からの航空魚雷を回避した。
提督「ひるむな、上空のことは祥鳳と長良、由良に任せて砲撃を続けるんだ!」
加古「そろそろ軽巡の射程に入るよ!」
提督「よし、では私も」
手元の操縦桿を操作する。答えるように動くのは主砲として積んできた15.2cm連装砲。まばらに飛んでくる砲弾の軌道は見えている。構わず提督はトリガーを引いた。
腹に響く爆発音とともに撃ちだされた砲弾が弧を描いて敵重巡に向かい、そして、
提督「近、か……」
手前に着弾した。さ、と艦爆の爆撃を避けつつ角度を修正しつつ砲撃を続ける。が、
由良「痛った!」
長良「由良!」
由良「大丈夫! ちょっと機銃がかすっただけ」
加古「あーうっとおしい!!」
提督「くっ、思った以上に航空隊が厄介だな……」
祥鳳の零戦を掻い潜った敵艦載機の猛攻の前に前衛艦隊の足が鈍る。
加古「て、提督……どうすんだよぉ」
提督「回避に専念する、総員輪形陣をとれ!」
古鷹「りょ、了解!」
敵前衛の攻撃がまばらなのを幸いに守りに入った。この調子で後衛はどうなっているだろうか……
―――――
―――
―
865 = 1 :
一方そのころ、祥鳳たちは前衛艦隊と同様、航空隊の猛攻にさらされていた。
初春「そ、空が黒いのじゃ……!」
名取「ふぇぇええ!! こ、来ないでくださああい!!」
周囲の空を取り囲む無数の艦載機に機銃を撃ち掛けてはどうにかしのいでいる状態だ。
祥鳳「く、前衛艦隊が突破するまでの辛抱ですよ!」
6機の零戦をやりくりしては敵機に食らいつくもけん制程度にしかなっていない。艦攻を防ぐので手一杯なのが正直なところであった。
祥鳳「艦攻は私が押えます、皆さんは艦爆に注意してください!」
頭上で爆発、寸でのところで若葉が艦爆を落としたようだ。
初霜「敵が多すぎですよぅ!」
鬼怒「でも、向こうが突破すれば!」
初春「突破できるとは誰も言っておらん! 退却してくる場合もありうるのじゃぞ!」
初春の機銃さばきが目覚ましく敵機を追い払う。
名取「そ、その場合どうなるんですか……?」
祥鳳「……敵艦載機が集中して襲い掛かってきます」
866 = 1 :
どの程度の数かはわからないが、おそらく80は行くであろうその数を想像し、祥鳳は思わず身震いした。敵正規空母の集中砲火を受けるのは……"あの時"とよく似ている。
初春「……なれば、ここでできる限り落とすのが得策…というわけじゃな!」
暗い記憶を知ってか知らずか、初春が声を張り上げた。
若葉「そうだ……落とせば落とすほど楽になる……いいぞ」
鼓舞されるように若葉も高角砲を構えなおす。
鬼怒「よぉし! そうとなったらやるよっ!!」
名取「ふぇえ、も、もうやだようぅ!」
鬼怒も、何だかんだ言っても名取も空を見上げて機銃を構えた。
祥鳳「そう……そうね、えぇ。やりましょう、みんな!!」
艦娘たち「「おおお!!」」
一斉に砲火が空に舞う。合間を縫うように零戦が巧みに身を躍らせ食らいつく。飲まれた敵機が炎に包まれて煙を引きながら落ちていく。着実にその数を減らしていく、が、
鬼怒「きゃぁっ!」
名取「鬼怒ちゃん!!」
いかんせん数が多すぎた。艦爆の爆撃を受け鬼怒がよろける。
867 = 1 :
鬼怒「く、くぅ……まだまだぁ!」
初霜「サポートします! っくぅ…」
カバーに入った初霜に機銃が命中する。痛みに涙を浮かべながらも懸命に高角砲を撃ち続けた。
そうして、少しずつ傷が増えていく。一発撃てば三発帰ってくる機銃掃射、合間を縫って襲ってくる艦爆の爆撃。艦攻を抑えてくれているのがせめてもの救いだが、その零戦たちも徐々にその数を減らしていき、今ではもう4機だ。
名取「ふぇえっ、機銃がぁ!」
初春「この、このっ、しつこいぞおぬしら!!」
傷は増える一方で、艤装のところどころから黒煙が立っている。
祥鳳「く、前衛艦隊は……?」
鬼怒「連絡なんかないよぉ……!」
相変わらずやかましい艦載機のエンジン音に混ざって前衛艦隊たちの砲音が聞こえていた。健在らしいが戦闘も終わっていないということだ。
名取「うぅ、もうやだよぅ……」
初霜「くっ、ま、まだです…っ」
目に見えて士気が下がっている、祥鳳は感じるもどうしようもなかった。
――やはり、落ちこぼれには無理だったのだろうか?
868 = 1 :
寄せ集めで、少し頑張って普通に追いつくか追いつかないようなそんな自分たちには、どうにもできないのだろうか…? 自分たちよりも規模の小さな艦隊にすら勝てない、そんな情けないままなのだろうか……
目の前が暗くなる。
いけない、そう思っても止まらない。
寒気が、恐怖が、あきらめが、背筋を這って飲み込もうとしてくる。
身を任せたっていいじゃないか、艦娘が戦いの中で死ぬのは当然、むしろ落ちこぼれが闘って死ねるのなら本望じゃないか……
祥鳳の手から力が抜け、弓が滑り落ちようとする、その時。
鬼怒「っ!? な、なに!?」
若葉「光……?」
提督たちが闘っているであろうその水平線、そこから青い色の閃光が走った。
―――――
―――
―
869 = 1 :
本日は以上とさせていただきたく。お待たせした分大盤振る舞いさせてもらったつもりですがどうでしょうか……?
改めまして一周年ですね、>>850と>>851にはありがとうございます。しかし、一年ですか、早いですね……こんな亀SSにお付き合いいただいてありがとうございます。着地点をどこに置こうか迷い気味ですが、これからも見守っていただければ幸いです。
さて、みなさんもうすぐイベントでございます。七海域ですってね、MIと同等規模ですか……資材各5万前後の当鎮守府、乗り切れるか不安でいっぱいです。乙、丙おりまぜて頑張っていこうかと思います。
では、次回ですね。早めにお届けできればよいのですが、そこは予定は未定ですし……ともかく、頑張っていこうと思います。
書いてて思うんですよね、ああ、もう少し伏線捲いておくんだった、と…急展開気味になりそうですが、よろしければ待っていてください。
では、本日はこの辺で……
871 :
乙
ここまで長かった…
872 :
あ、別に>>1の自分語りとかは特に要らないです
874 :
乙!
待ってました!
「青い色の閃光」の正体っていったい…
875 :
遂に提督に改二実装か
876 :
まだかな
877 :
まだかな
879 :
待ち
880 :
さんま待ち。
881 :
二ヶ月経ってるぞ…
落ちる~
882 :
結構好きだったんだけど…
883 :
>>881
保守ありがとうございます
僕もしっかりしなくては・・・
884 :
酉がないと認識されんぞー
885 :
三点リーダの使い方とかもう少し頑張れよ……
886 :
887 :
違う、そうじゃない
888 :
>>886
お前可愛いな
889 :
作者大丈夫か…
890 :
トリックオアトリートォォォォ!!()
お久しぶりでございます! >>1です! 私が>>1でございます!
保守していただいて本当にありがとうございます…ようやっと、ようやっと! 続きが書けたので投下していこうかと思います
戦闘描写なんかほぼ初めてなのでグダる部分も多いかと思いますが、読んでやってもらえるとありがたいです
(あと、かなり超展開です、本当に申し訳ない)
891 = 1 :
前衛艦隊たちも追いつめられていた。
後衛ほどではないとはいえ大量の艦載機に追い立てられ、加えて砲撃が飛んでくる。気を回すものが多い分、厄介だった。
加古「くっそぉ、上がいなけりゃ一撃でやれるのに!!」
古鷹「加古、三式弾は!?」
提督「この距離では気休めにもならん!」
砲撃は躱し、空を見上げて撃ち続けるが。
由良「こ、のっ…きゃっ!」
長良「し、しっかりっ」
すでに由良が機関部に若干の損傷を受け長良の肩を借りている状況だ。いや、それで済んでいるだけまだ運がいいかもしれない。
しかし、退路はすでになく、撤退する術はなかった。今後退すれば、後衛に攻撃をかける航空戦力と合流されて一気に袋叩きにあう羽目になる。まさに前門の虎後門の狼だ。
提督「くそ、さすがに厳しいか…っ」
じりじりと後退し続けるしかない状況に、提督は思わず舌を打つ。と、ここで出撃前に提げてきたカバンが目につく。
892 = 1 :
――やはり、やるしかないのだろうか
迷う。これは本当に最後の手段だ、あらゆる意味で。使えば後には引けないし、それ以上に身が持つかわからない。そうなった場合、艦娘たちはどうなる? 主任妖精は? 間宮は? カバンに手を添え一瞬止まる。が、
加古「っあああっ!?」
古鷹「加古ぉっ!!」
敵の艦爆が加古の艤装を吹き飛ばした。膝をつく彼女に古鷹が悲鳴を上げて寄り添う。
もはや、迷っている時間はなかった。
提督「……ッ!!」
意を決して、提督はカバンを開けた。中にあるのは何やら長い紙を丸めたものだ。迷わず引き抜く。
途端、青い光が周囲に迸った。
長良「なっ、何!?」
古鷹「きゃっ!?」
由良「まぶし…っ」
思わず艦娘たちが顔を反らす。そして、もう一度目を向けたときに見えたのは、
加古「て、いとく…?」
893 = 1 :
左手に長い巻物を携えた提督だった。先ほどまで装着していた艤装が傍らに半ば沈んでいる。じっと目を閉じた彼は右手を前へ伸ばした。
提督「…行クゾッ」
エコーのかかったような声とともに目を開く。その左目からあふれるのは、鬼火のような青い光。提督の右手に同じ色の光が宿り、火の玉のようになった。中には「勅命」の文字が見える。
提督「艦載機、発艦!!」
??『艦載機ノミンナ、オ仕事オ仕事!!』
提督の声に重ねるように何者かの声が響く。その右手で巻物を一撫ですれば、次々と飛び立っていくのは小さな紙片。それらは燐光を散らして飛行機へと姿を変えた。
古鷹「て、提督…空母の艤装まで…」
呆気にとられる艦娘たちをよそに、提督の艦載機が編隊を組んで周囲を飛び回る敵機に襲い掛かる。祥鳳の艦戦とは違い、暗緑色の目立つ艦載機だ。20数機のそれらは敵機の渦を食い破るように突き抜けその外からさらに仕掛けていった。
最初は戸惑っていた祥鳳の航空隊もそれに追随するように態勢を立て直すと、次々に敵機を落としていく。予想外の攻撃に敵機の攻撃は止まり、その動きも鈍り次々と叩き落とされていった。
提督「ヨシ、全艦攻撃用意! 混乱ニ乗ジテ前衛艦隊ヲ叩ク!」
894 = 1 :
古鷹「あっ、は、はいっ!」
加古「そ、そうだった…古鷹、肩貸して?」
瞬く間に敵艦載機を蹴散らすと前衛艦隊はすぐそこだ。いかな損傷しているとはいえ完全に火力はこちらが上だ、敵艦隊も航空隊のやられように形勢の逆転を感じたのか転進を始めている。
が、それは加古にとっては的以外の何物でもなかった。
加古「そう、古鷹そのまま…いっけぇ!!」
狙いは一瞬、砲音が響き砲弾が弧を描いて飛び、そして――
古鷹「よし! 駆逐艦撃破!!」
由良「やっぱりすごいな…長良、私たちも負けられないね!」
長良「うん、やるよ、由良! 撃てぇ!」
腰だめに構えた長良の単装砲と腕に付けた由良の単装砲が一斉に火を噴く。加古のように一発必中とはいかないが、転進する敵艦を追い立てるように水柱が立つ。任せてよしと判断、提督は背後を振り向いた。
提督「ヨシ…祥鳳!!」
―――――
―――
―
895 = 1 :
初春「ぬ、敵機の様子が…」
最初に気づいたのは初春だった。泡を食った風に包囲網を形成していた敵機が連携を乱して離れていこうとしている。
初霜「何が、あったんでしょうか…?」
名取「さっきの光と、何か関係が…?」
困惑気味に見送る一同の前で、敵機が端から火を噴いて落ちていく。切り裂くように飛んでいくのは暗緑色の機体。
祥鳳「あれは?」
引き返していく散り散りの敵機を置き去りにして編隊を組んで飛んでくるそれは、
鬼怒「味方の、艦載機……?」
若葉「祥鳳さんの艦載機もいるぞ」
後方に祥鳳の零戦を引き連れたそれらは祥鳳の周りをぐるぐると旋回し始めた。
祥鳳「着艦を求めているのでしょうか…?」
飛んでいるのはおそらく零式艦戦52型だ、祥鳳の扱える艦載機ではない。発艦できないものを着艦させるのは……させるのは?
896 = 1 :
提督『祥鳳、聞コエルカ?』
祥鳳「提督? ど、どうされたのですか声がなんだか…」
無線越しに聞こえてくる提督の声は、どこかエコーのかかったような暗い声だ。
提督『ソンナコトハ今ハ気ニスルナ……イイカ、ソノ艦載機ヲ使エ』
祥鳳「え…いや、あの…私は…」
提督『着艦ハ試シタ事ガ無イダロウ? 何カガ掴メルカモシレナイ』
祥鳳「た、確かにそうですけど…」
戸惑う祥鳳に提督はさらに重ねる。
提督『君ハ私ノ前デ正確性ノ高イ爆撃、コノ敵機ノ嵐ノ中デ落チナイ艦戦ノ運用ヲ見セテクレタ……君ナラヤレル』
52型の後方にぴったりくっついて飛び続ける祥鳳の21型、性能の差を感じさせない飛行はその熟練ゆえだとでもいうのだろうか。
提督『私ハ君ヲ信ジル、私ハ君ノ腕ヲ……』
祥鳳「私の、腕…」
897 = 1 :
迷うように着艦の手はずを整える。本当に自分の腕が良いのだろうか、私は役に立てるのだろうか。
と、横から彼女の腕にそっと手を添えられる。若葉だ。
若葉「大丈夫だ」
祥鳳「若葉、さん…?」
じっと祥鳳を見上げて、表情変化の少ない顔で小さく笑って見せた。
若葉「祥鳳さんは、私たちの信頼する秘書艦だから」
祥鳳「…若葉さん…」
目を上げて周りを見回す。初霜が、鬼怒が、名取が。うなずいて見ていた。
祥鳳「私、なら…」
恐る恐る艦載機に手を伸ばそうとして、止める。
駄目だ、このままじゃ一緒だ。
祥鳳「…提督、私は…お役に立てますか…?」
無線機のマイクに、そう問いかける。
自分一人では覚悟もできない、そんな弱い艦娘だけれど。
大した能力のない艦娘だけれど。
それでも、
898 = 1 :
提督『アア、モチロンダ。役ニ立ッテイル…』
祥鳳「これからも、お役に立てますか…?」
提督が、背中を押してくれるのなら。
提督『ソコハ君次第ダナ』
祥鳳「ふふ……じゃあ、もっとお役に立てるように頑張りますっ!」
ちょっと意地悪な答えに笑みがこぼれる。でも、おかげで力が抜けた気がする。
き、と顔を上げて手を伸ばす。
正規空母のような立派な飛行甲板もなければ巻物の飛行甲板もない。だから祥鳳の着艦は手づかみだ。矢一本一小隊としてまとまり、矢の形となって減速、それをつかんで矢筒へしまうという方式だ。
高度を下ろして矢の形をとる零式艦戦52型。微かな燐光を纏って飛んでくるそれに、祥鳳は手を伸ばす。
いつも通りの新しい艦載機を扱えない彼女ならおそらくつかんでも落ちるだけだろう。だが、今は…
祥鳳(でも、今なら、きっと……!)
見極めて、矢を掴む。勢いを殺すように腕を引いて弧を描くように動かすと矢筒に納めた。
そっと手を離す。からん、という乾いた音を立てて矢が落ち着く。
祥鳳「……とれ、た…」
少し呆然としたような声で言葉が漏れる。手さえ震えてくるが、今は感動に震えている場合ではない。
次々と降りてくる艦載機を矢に変えて矢筒に収める。くるりくるりと、舞うように収めていくさまを、鬼怒たちはじっと見入っていた。
899 = 1 :
そして、自分の零式艦戦21型も収めきって。
祥鳳「提督…私っ」
提督『ヤッタンダナ、祥鳳』
祥鳳「はいっ、私…嬉しい…っ!」
涙のにじんだ声に、無線越しに提督の笑う気配が伝わってくる。しかし、その気配はすぐに引き締められる。
提督『悪イガ、今ハ祝ッテヤル時間ハナイ』
祥鳳「……はいっ」
左袖で顔をぬぐうと、祥鳳も表情を引き締める。
提督『コチラノ追撃デ前衛艦隊ハ始末デキソウダガ、後方ノ空母ハ厳シソウダ』
祥鳳「わかりました…全力で排除しますっ」
若葉「祥鳳さん、これを」
若葉が矢筒を差し出す。予備の矢筒で、それぞれこの作戦のために艦攻と艦爆を分けて入れてあった。
祥鳳「ふふ、ありがとうございますね」
微笑んで矢を選ぶ。艦爆の矢を漁り、今なら飛ばせる気がするが貴重で強力な艦載機だ、こんなぶっつけ本番で使うわけにはいかない――彗星一二型甲は避けて、彗星。
艦攻も、流星を避けて天山を選び取る。合わせてさっきの零式艦戦52型を減らす。と、ここでふと目に留まったのは、
900 = 1 :
祥鳳(九九式艦爆…九七式艦攻…)
古ぼけた矢だった。きっちり整備もしているが、実戦の機会がなく落ちることもないので使い古すだけ古した、そんな矢たち。自分の矢筒に残る零式艦戦21型にふと触れる。
そして、迷った挙句に一本ずつを自分の矢筒に収めた。これで満タンだ。
祥鳳「では、軽空母祥鳳…空母艦隊の殲滅を行います」
初霜「……あっ、み、みなさん輪形陣を!」」
初霜の号令で、若葉たちがさっと位置につく。機関から煙が上がっていても、良い動きだった。これも提督の訓練のたまものなのか、それとも。
祥鳳「……航空隊、全機発艦してください!!」
きり、と弦を引き絞り、一瞬の溜めののち一息に放つ。彗星の矢だ、それは燐光を放つと姿を変えエンジン音高々響かせ飛び立った。聞き慣れぬ、しかし心地よいエンジン音に高鳴る鼓動を抑えて、文字通り矢継ぎ早に艦載機を発刊させていく。
そして、すべての艦載機が空へと解き放たれた。
祥鳳「あ……」
衝動に駆られて混ぜた旧型たちが遅れを見せている。仕方ない、どうあがいても新型にはかなうわけがない、そう思っていた。
が、
初春「なんぞ…?」
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