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元スレモバP「新しくアイドルプロダクションを作った」
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そのキャラとのエンドの時点でこのSSを読むのをやめれば、
一応結ばれたという風に自己完結できるのが、せめてもの救いだな
智絵里が、文香ルートに進むとこんなことになったから、
次のルートだと文香もタダじゃすまないことになってそうなのが、怖くもあり見たくもあり・・・やっぱ面白いわ
一応結ばれたという風に自己完結できるのが、せめてもの救いだな
智絵里が、文香ルートに進むとこんなことになったから、
次のルートだと文香もタダじゃすまないことになってそうなのが、怖くもあり見たくもあり・・・やっぱ面白いわ
まぁでもガチで取り合いになったらこうなる可能性は高そうだよなぁ
★
監禁されて二週間ほどが経った。智絵里は説得に応じる気配はない。
こうなったらもう自力で脱出するしかないと、俺はひたすらに足首から繋がっている鎖に攻撃を加えた。
結論から言うと、厳しい。素手はおろか道具を使っても厳しそうな頑丈さだった。
アーニャはきっと心配しているだろうし、仕事先にもさっさと謝罪しなければいけない。早く脱出したいのにこれじゃあどうしようもない。
もどかしかった。何かしたくても何もできない。智絵里は、俺がいくら怒鳴ろうとも罵倒しようともどこ吹く風で相手にしない。
不本意ながら暴力で脅そうとしても全て受け入れようとする始末。打つ手が本格的にないのだ。
壁に寄りかかり、読みかけだった小説を手に取る。智絵里が戻ってくるまで時間があるが、結局何をしても鎖にはダメージを与えることができない。
唯一破壊に使えそうなテレビは頑丈に張り付いていて動かせない。万が一テレビを壊すようなことがあったら智絵里は脱出を警戒してもっと拘束してくる可能性もある。
「…………?」
小説を読んでいると、外から車の音が聞こえてきた。智絵里が忘れ物でもしたのだろうか。
呑気に構えていると、突然ガラスの割れる音が盛大に鳴り響いた。
「何だ?!」
まさか、強盗が目をつけたのか? 智絵里はこの家が人通りの少ない山奥にあると言っていた。逆を言い返せば場所を特定しやすい上に、事件が起きてもすぐには気づかれない。
これはチャンスかもしれない。良心が残った強盗だったら、もしかしたら俺を助けてくれるかもしれないからだ。
不安、期待、恐怖……さまざまな感情が複雑に絡み合いながらも、俺は大人しく来訪者がこの部屋に来るのを待った。
廊下の歩く音が聞こえる。その音は徐々に近づき、遂にはこの部屋の前までやって来た。ガチャリとドアノブが動き、扉が開く。
「ここにいたのね……プロデューサー……」
「千秋!?」
千秋は驚く俺を意に介さず、足首についている鉄の輪と鎖に視線を移した。
「……鍵は、智絵里が持っているのかしら?」
「いや……智絵里は持っていない……多分、他の部屋のどこかにあるはず」
智絵里は、私から鍵を奪おうとしても無駄だと言っていた。持っていないから。
「分かったわ……すぐに探してくるから、待ってて、プロデューサー」
「頼んだ。千秋」
数分後、千秋が鍵を見つけ、それをこちらへと持ってきた。流石に人が助けに来るとは思わず用心していなかったのか、机の引き出しに普通に入っていたらしい。
「ありがとう、千秋。助かった……」
「お礼は後でいいわ。早く逃げましょう」
千秋に手を引かれながら、俺達は智絵里の家を後にする。
家の前には黒塗りの高そうな車が待機していた。二人で後部座席に乗り込み、千秋が運転手に帰るよう告げている。
車が発進し、でこぼこした砂利道を駆け下りる。
「どうしてここが分かったんだ?」
「女の勘よ……家の者に張らせたら案の定、智絵里が犯人だったわ。尾行されている前提で動いていたようだったから、だいぶ苦労したらしいわ」
「なんにせよ助かった……本当にありがとう」
助かって安堵したためか、ほんの少しだけ眠くなった。口数が徐々に少なくなり、車内に無言の空間が広がっていく。
眠気を吹き飛ばすような発言が千秋は唐突に告げた。
「プロデューサー。私、アイドルをやめたの」
「え?」
「プロデューサーのせいよ……もう、仕事中も家にいても、ずっとプロデューサーのことしか浮かばないもの」
千秋は、どうしてそこまで執念深く俺を想い続けるのだろう。
「アイドルをやめたら……千秋は……」
「別にいいの……もう十分、外の世界を楽しんだわ。それに、どんな不自由な生活でも、プロデューサーがいてくれるだけで違うものよ」
千秋が、俺の手に手を重ねる。
「プロデューサー……私のこと、今は好きでなくてもいい……好きになってもらえるように、努力するから……!」
最後の方は声が震え、重ねられた手は小さく震えていた。
「だから、お願い、プロデューサー……私と、恋人になって……」
今にも消え入りそうな声で、千秋はそう言った。千秋は俺の方へと寄りかかり、肩に頭を預ける。
小さく鼻をすする音が聞こえた。泣いているのか。
俺の答えは、僅か数秒で決まった。
「こちらからお願いするよ……千秋、俺と恋人になって欲しい」
隣で小さく咽び泣いている千秋が、愛おしかった。恋人を作れば、皆が想いを諦めてくれるだろうという打算的な理由も少しはあるが。
千秋の両親は許してはくれなさそうだが、そこら辺は後々考えるようにしよう。
「ほ、本当……プロデューサー? 本当に結婚してくれるの?」
「結婚、できるといいな」
認められるように努力しよう。
「嬉しい……嬉しいわ、プロデューサー……!」
千秋が抱きついてきたかと思うと大声で泣きだした。バックミラー越しに運転手と目が合い、非常に気まずい十数分を過ごすことになる。
色々危なかったしいところもあるけれど、アイドルを辞めるぐらい俺を執念深く想ってくれた女性だから、幸せにしないといけないなこれは。
千秋の温もりを右腕に感じながら、自分の事務所まで送り届けられる。
一時の別れを名残惜しそうにしている千秋の頭を撫でながら、また後で、と再び会うことを約束した。
千秋と別れ、俺は事務所へと向かう。
「アーニャ、大丈夫かな」
事務所にはいないだろうから、後で自宅まで様子を見に行こう。
入口の戸を開けながら、謝罪しなくてはいけない仕事先のリストを思い浮かべる。
「ただいま」
「プロデューサー……?!」
奥から聞こえてくる、聞き覚えのある声。まさかアーニャが中にいるとは思わず、驚いた。
「アーニャ、いたのか。ごめんな、何日も帰ってこなくて」
アーニャには心配かけたり迷惑かけたり、本当に申し訳ないと思う。全て不可抗力ではあるが。
「……無事でよかった、プロデューサー……!」
アーニャが目に涙を浮かべながら、俺に抱きつく。千秋と恋人になるといった手前こういうのはよくないが、今回ばかりは見逃してもらおう。
相変わらず女の子の髪はふわふわしてて触り心地がいい。
「プロデューサー……」
「アーニャ、悪いんだが俺は色んな所に謝りに行かなきゃ行けないんだ。それが終わったら、少し話したいことがある」
「ダー……分かりました、プロデューサー。私はここで待っています」
アーニャとの短い会話を終え、俺は早速迷惑をかけた人達の所へと車を回す。
全てを終えたのは、事務所を出てから六時間ほど経った時だった。目的の人物が不在だったり、長時間怒鳴られたりと散々な目にあったが、一通り回り終えた。後は後日、不在だった人のところへ謝罪に行くのみだ。
許してくれたところもあったが、怒鳴られたり、相手にされなかったところもあった。本当なら原因である智絵里を責めるべきなんだろうが、不思議とそういう気持ちになることはなかった。
責めたところでどうにもならないというのもある。
日も暮れてきた所で、事務所へと帰ってくる。宣言どおりアーニャはずっと待っていたらしい。
「おかえりなさい、プロデューサー」
「ただいま……」
アーニャとも決着をつけようと決意したが、どう切り出したらいいものかと悩む。
「アーニャ……その、聞いて欲しい話があるんだ」
「…………」
俺の真剣な表情を見て何かを感じたのか、アーニャは無表情になって少し俯いた。
「俺が一週間いなくなる前にさ……その、告白してくれたよな?」
「ダー……私は、プロデューサーのことが好きです」
数秒間で覚悟を決める。やはり、ここで彼女の想いを断ち切らなくては。
「……悪いアーニャ。俺には、恋人がいるんだ……だから、アーニャの想いには答えられない」
プロデューサーとアイドルだからと言った場合、千秋のようにアイドルを辞めると言い出しかねないから、千秋が恋人だったということにした。千秋には後で口裏を合わせるように言っておこう。
「そうですか……残念、です」
そう言ってアーニャは、俺の目の前で静かに泣き崩れた。
「ごめんなアーニャ」
床に座り込んだアーニャの頭をできる限り優しく撫でる。女の子を泣かせるというのはこんなにも罪悪感でいっぱいになるもののか。
智絵里も、泣いているのだろうか……。
文香はどうしているのだろう。届かないメールを今も送っているのかもしれない。
千秋はアイドルを辞めてまだ一週間も経っていないと言うのだから、文香の持つあの写真はまだ十分な効力を持つと言える。俺が返信しないことに怒って、あの写真を持ち込まれたら大変だ。
とは言っても打つ手はない。智絵里同様説得できないのだから。
アーニャを家まで送り届け自宅に戻ると、玄関の前には千秋が立っていた。千秋はこちらに気づくと明るい笑顔を浮かべ、駆け寄ってくる。ちょっと待て、何で自宅を知っている。
千秋は右手に、風呂敷に包まれた細長い物を持っていた。気になって尋ねても秘密と返されるだけだった。
「えっと、上がるか?」
「ねぇ、プロデューサー……少し、散歩したいわ。いいかしら?」
「あぁ、別に構わないけど」
今日は色々あって疲れたが、少しぐらい付き合うか。恋人だし。
静かな住宅街の中を二人で歩く。人気はなく、街は静まり返っていた。
なぜかこの辺の地理に詳しくないはずの千秋が半歩前を歩き、俺をどこかへ連れて行こうとしているようだった。
道は徐々に住宅が少なくなり、左手には山が見えるようになる。確かここをまっすぐ行くとそこそこ広い公園があったような。そこに行きたいのだろうか。
予想は的中し、千秋が向かっていた場所は公園だった。外灯の光は弱く、時折点滅している。遊具にもベンチにも人影はない。
千秋が俺の手を握り締め、空を見るように促した。
「綺麗な星空ね」
「あぁ、そうだな。とっても綺麗だ」
「そこは、君の方が綺麗だよ、とか、気の聞いた言葉が欲しかったわ」
何じゃそれと苦笑いを浮かべる。
雲はなく、空にはたくさんの星が瞬いている。もしかして千秋は二人きりでこれを見たかったのだろうか。そうだとしたら中々にロマンチストだなぁ。
ベンチに並んで腰掛け、黙って寄り添い合う。恋人というのは温かくていいものだな。寄り添う千秋の温もりを感じながらそんなことを思った。
ふと、遠くから足音が近づいてくるのが聞こえた。ゆっくりと顔を上げ、こちらに向かって歩いてくる人物へと視線を移す。
幽霊のようなフラフラした足取りに合わせるように、二つに結んだ髪がゆらゆらと揺れる。
「やっぱり……黒川さんの仕業だったんですね……」
そこにいたのは、智絵里だった。
シュシュは手首を覆い、可愛らしくてなおかつ大人しめの服に身を包んだ、いつもの智絵里。
だが、瞳は虚ろで光がない。千秋を見つめているようで見つめていないような、明らかに異様な雰囲気だ。
智絵里は何の躊躇いもなく腰から大振りの包丁を取り出し、構える。
――あの時、埋めればよかった。
ぼそりとうわ言のように言った智絵里の呟きは、聞き取れなかった。
「智絵里、落ち着けっ!!」
「下がって、プロデューサー」
身を乗り出した俺を、千秋が制す。
千秋はベンチから立ち上がり、ずっと横に抱えていた包みを開けた。中から現れたのは小さな剣。
「千秋……お前、それ……」
細長い刃に、見事な装飾の柄、手を覆う金属……武器に関してはあんまり詳しくはないが、多分レイピアだ。千秋の持つそれは模造であって欲しいが、模造に見えない。
「…………」
智絵里は据わった瞳で千秋を睨んでいるだけで、大したリアクションはない。
「……今度は、あなたが負ける番よ、智絵里」
千秋は腰を少し落とし、レイピアの切っ先を智絵里の喉へと向ける。
智絵里は剣を向けられているのにも関わらず、不敵な笑みを浮かべるだけだった。
……もはや彼女は、俺の知っている智絵里ではない。
俺の知っている智絵里は、臆病で、自分に自身がなさそうで、おどおどしてて、失敗が多く怒られては落ち込んで、失敗すると泣いて、それでも一生懸命レッスンに明け暮れて、仕事に成功したら喜んで、おいしいものを食べては幸せそうな表情を浮かべて、今ではもうトップアイドルの一人である、可愛い女の子だ。
傷つけるために大きな包丁を持ち、本物の剣を向けられても悲鳴一つどころか驚きもせず、怖がりもしない少女を俺は知らない。
――お前は一体誰なんだ……緒方智絵里……。
>>732
ワロタ、確かにこんな展開あそこならやりそうだな
ワロタ、確かにこんな展開あそこならやりそうだな
なんというか千秋√って感じではあるが、なんといっていいのか
初期Nからネタにしにくい異彩を放ってたのは確かなんだよなぁ
初期Nからネタにしにくい異彩を放ってたのは確かなんだよなぁ
二人は睨み合い、視線だけで牽制し合っているようだった。
先に動いたのは智絵里。レッスンで鍛えられた瞬発力で一気に千秋に接近。包丁を振りかぶり、千秋の頭めがけて勢いよくそれを振り下ろす。
千秋は襲いかかる刃を柄で殴りつけた。包丁の軌道は逸れ、虚空を切り裂く。
「……ッ?! 智絵里、やめろっ!!」
智絵里は左手で腰からもう一本の包丁を引き抜き、目にも止まらぬ早さで千秋の腹部めがけて突き出す。
思わず目を閉じるのと同時に、鋭い金属音が響いた。目を開いて確認すると、千秋は完全な奇襲であったもう一本の包丁を弾いたようだった。
千秋はもう一度レイピアを構え、智絵里は両手に包丁を持ちながら千秋の出方を伺っている。
千秋が智絵里の喉を狙ってレイピアを突き、避けた智絵里が包丁でレイピアの刃を弾いた後、もう一方の包丁を振るう。千秋は戻したレイピアの柄でそれを受け止め、半歩下がってもう一度突きを繰り出した。
>>739
(live)バトルする芸能人のことだろ?(すっとぼけ)
(live)バトルする芸能人のことだろ?(すっとぼけ)
接近戦での二人の足裁きは、トップアイドルを目指して必死に練習していたダンスのそれと、非常に似通っていた。二人の動きは機敏で、軽やかで、常人ではとても真似できそうにない。
あんな至近距離で、命を容易く奪う武器を思いっきり振るって、嫌な金属音を幾度となく鳴らせながら、ひたすらに肉迫を繰り返している。半歩下がっては一歩前に出て、押されたら押し返すの繰り返しだった。
二人が命を奪い合うことに恐怖しているようにはとてもじゃないが見えない。互いに相手の命を狩り取るために必死になっている。二人を見て感じたのはそれだけだった。
ずっと激しい動きをしていたせいか、二人に既に疲れの色が見えていた。
甲高い音と共に、智絵里の左手にあった包丁が遠くへと弾き飛ばされる。同時に智絵里の振るった包丁が千秋のレイピアを半分にへし折った。
「もうやめろ、こんなことして、何になる……? 頼むから、もうやめてくれ!」
俺の声に二人が耳を貸す気配は感じられない。二人は、本気で殺し合いをしていた。
智絵里と千秋はもはや肩で息をしている状態だった。己の残った体力を振り絞るように力を込め、二人は走る。智絵里と千秋が互いに接近し、思いっきり刃を振るった。
智絵里が千秋を狙っていたのに対し、千秋は明らかに包丁に狙いを定めて振っていた。結果、智絵里の最後の包丁が弾かれる。残ったレイピアも全身にヒビが入り、今にも砕けてしまいそうだ。
荒い呼吸を整えながら、千秋が口を開く。
「私の勝ちよ……もう諦めなさい。そして、認めなさい。プロデューサーは、私を選んだの」
智絵里は俯いた。直後、脱力したように膝を付き、体を支えるべく地に手をつける。
泣いているらしく、雫が何滴か地面に落ちるのが見えた。
「Pさん…………ごめんなさい」
「…………智絵里」
泣きじゃくる彼女に対して、かける言葉が何も思い浮かばなかい。ただただ、痛々しい姿の智絵里を見て、胸を痛めるだけだった。
「……Pさん……来世は、私と恋人になってくれますか……?」
質問の内容はとてもぶっ飛んでいたが、ここで承諾して多少なりとも気休めになるのだったら、千秋には悪いが喜んで了承させてもらおう。
「あぁ、分かった……約束だ……」
「……よかった、です……ありがとう……Pさん……」
智絵里はゆっくりと立ち上がり、俺に向かって小さく笑みを浮かべた。さっきまでの狂気が微塵も感じられない、普通の笑顔。可愛らしくて、向日葵のように温かい笑顔だった。
どこかおぼつかない足取りで、智絵里はどこかへ歩いていく。少しの距離を進んだ後、智絵里は足を止めた。
街灯の光を反射し、小さく煌く何かが智絵里の足元に落ちていた。
「智絵里……やめろッ!!」
「智絵里!!」
考えるよりも先に体が動いた。千秋も気づいたらしく、彼女の名前を叫ぶ。
智絵里は落ちていた包丁を拾うと、シュシュを外した。その後、何の躊躇いもなく手首を切った。
手首の傷口からは血が溢れ出し、地面を黒く染め上げる。智絵里はずっと俺の名前を、うわ言のように呼びながら、座り込んだ。
駆け寄り、自分のワイシャツを脱いで彼女の傷口に押し当てた。これが正しい応急処置なのかどうかは分からない。とにかく止血のことだけしか頭には浮かばなかった。
「千秋、今のうちに家に帰るんだ……ここは俺に任せろ」
「分かったわ。また後で、プロデューサー」
とりあえずこのまま残っていると厄介なことになりそうな千秋を先に帰らせ、その後、智絵里の携帯を使って急いで救急車を呼んだ。
智絵里は小さな声でずっと俺の名前を呼び続けていたが、その内、気を失った。
駆けつけてきた救急車に智絵里を預けた後は、しばらく放心していた。
俺は待機するよう指示されていたので、そのまま後に来る警察を待った。思ったところでどうしようもない後悔を繰り返しながら。
★
ずっと、どうしてこの結果に行き着いてしまったのかを考えていた。
どうして俺は二人が争っている時、止めれなかったのだろう。止めようと思えば、身を挺してでも止められたはずなのに。
ただずっと、目の前の出来事をどこか遠い所で起きている他人事のような感覚で、それを見ているだけだった。
下手したらどちらかが死んでいてもおかしくない状況だった……。勝敗が偶然最善のものだっただけで、二人の様子から察するに、片方が死ぬというのは十分にありえた。
動けなかった理由が思いつかないのも自己嫌悪に拍車をかける。
俺はあの時どうして動かなかったのか、自分でも分からないのだ。
俺は、最低だ……。
「プロデューサー、そんなに自分を卑下しないで……プロデューサーは最低なんかじゃないわ……私の最愛の人で、最高のパートナーよ」
「千秋……」
「プロデューサー……もう、何もかも決着はついたの……だから、過ぎ去ったことにこれ以上心を痛めないで」
「…………」
「プロデューサー、私の手をとって……私が絶対に、あなた幸せにするから……」
「…………」
「プロデューサー……!」
差し出されたその手に、自分の手を重ねる。
とても温かくて、心地よかった。
ありがとう…………千秋。
★
千秋と恋人になって、早くも二年の月日が流れようとしていた。
アイドルを辞めた千秋は、父親の反対を乗り切って俺の事務所で事務員として働いてくれることになった。
アーニャは順調に実績を作り、今では全盛期の千秋達に遅れを取らないくらいのトップアイドルだ。コネやツテを駆使したとはいえ、トップアイドルになるには才能も必要だ。やはりアーニャにはそれがあったのだろう。彼女は今もアイドルをがんばっている。
最近はプロダクションの業績も良く、新しいプロデューサーや、事務員、アイドルも雇い、こっちも順調だ。
一つ問題があるとすれば、それは文香の存在だろう。
文香は事務所から枕を強制され、プロダクションを辞めたい。でもアイドルは続けたいから、どうか引き取って欲しいという話を俺にしてくれた。
流石に見過ごせず、文香を引き抜きたいという話を文香のプロダクションに伝えたところ、あっさりと承諾された。
文香も人気のあるアイドルで、清楚の塊で文学少女という中々いない逸材だというのに、なぜなのだろうと疑問しか浮かばなかった。
実は枕云々の話は全て文香の嘘で、俺は文香に騙されていたというのがオチだ。まぁ、ここまでなら別に問題でもない。文香はアイドルを続けてくれているし、基本的にいい子だから。
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