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    元スレ女戦士「元・勇者を探す旅へ」

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    301 = 232 :

    戦士「相思相愛ってなんですか?!」

    青年「熱い夜も過ごしたじゃないかぁ!!!マイハニー!!!」

    戦士「過ごしてない!!!」

    兵士長「くっ……。わが子のように育ててきて……大切に大切に成長を見守ってきたが……とうとうこの日が来てしまったか……」

    戦士「義父さん、違うから!!」

    兵士長「勇者殿に見初められるとは……。勇者殿」

    青年「はい」

    兵士長「真剣なのですね?」

    青年「はぁい」

    戦士「嘘だ!!側室にするって言っていたでしょ!?」

    兵士長「側室?……どういうことだ?」

    青年「僕は勇者ですよ?女の10人ぐらい手篭めにできないで、どうするというのですか?勇者の価値は女の数で決まるんですよぉ。常識でしょう」

    兵士長「ぐぐ……しかし、娘がそれで幸せになるのか……?!」

    青年「なりますよ。もう、僕のテクニックなら毎晩のように昇天ですし。顔も幸せそうな感じに歪むこと請け合い」

    戦士「何を言っているんですか!!義父さんの前で!!!」

    302 = 232 :

    兵士長「お前はそれでいいのか?」

    戦士「側室なる気なんて更々ないから!!」

    青年「嘘ばっかり。でも体は正直ですね。その洗練されたプロポーションは僕と添い遂げるために用意したのでしょう?」

    戦士「違う!!」

    「―――騒々しいですね。大切なお客様もいるのですから、城内では静粛に」

    兵士長「お、王女様!!失礼いたしました!!」

    戦士「王女様。ただいま戻りました」

    「あら、貴女……。勇者は見つかったようですね」

    戦士「は、はい」

    「初めまして」

    青年「……どうも。噂に違わぬ、美貌ですね。ペロペロしたいです」

    「ふふ。噂通り面白い方ですね。後ほど大切なお話があります。私の部屋まで来ていただけますか?」

    青年「仰せの通りに」

    「王女様。私はそろそろ―――あ」

    青年「やぁ」

    303 = 232 :

    兵士「姫様、お時間です」

    「……っ」プイッ

    青年「お」

    「参りましょう」

    兵士「はっ」

    エルフ「無視されたけど、良かったの?」

    青年「公務中ですからね」

    「本日は我が城まで足を運んでいただき、ありがとうございます」

    「いえ。永続同盟の話をどうしても聞いていただきたかったので」

    「私としましても争いのない世界は是非とも実現させたいので、前向きに検討させていただきます」

    「感謝いたします。それでは、ごきげんよう」

    「はい。道中、お気をつけて」

    戦士(あの姫君も側室……?それにしては一瞥もなかったけど。みんながみんなが慕っているわけでもないのかな)

    「貴女も勇者様と一緒に私の部屋まできてください。お礼もしなければなりませんからね」

    戦士「そんな。私は王女様の命に従ったまでのことです」

    304 = 232 :

    「労いは必要でしょう」

    戦士「身に余る光栄です」

    「では、勇者様。後ほど」

    青年「はい」

    兵士長「俺も鼻が高いなぁ……うぅ……王女様から労いを賜るなんて……くくぅ……」

    戦士「義父さん、大げさなんだから」

    兵士長「大げさなものか。兵士としてこの上ない褒美だぞ。よくやったな」

    戦士「……ありがとう」

    エルフ「ボクはどこに居たらいいかな?流石にボクまで一緒にはいけないだろうし」

    青年「その辺でも見ていてくださいよ。見学ぐらいはいいですよね?」

    兵士長「ええ。構いません。ご自由にどうぞ。ただ、王族と側近以外入れない場所もありますのでその点はご了承ください」

    エルフ「うん。わかった」

    青年「それでは散歩しながら行きましょうか」

    戦士「散歩って……」

    エルフ「いってらっしゃい」

    305 = 232 :

    ―――通路

    青年「実はあまり城内を散策などしたことがなくて」

    戦士「国選ばれた勇者ならば自由に出入りできるでしょう?」

    青年「昔は訓練場と宿舎の往復でしたね。任務といえば近場の魔物を狩りに行ったり、城門の見張りとかそういうのだけでした」

    戦士「……」

    青年「あまり、城には良い思い出がありません。ですが、今日は貴女と一緒に城内デート。これは一生の思い出になるでしょうね」

    戦士「それはどうも」

    青年「嬉しいですか?」

    戦士「別に」

    青年「僕は君のことが大好きだぁ!!!!だから嬉しいです!!」

    戦士「な?!」

    ザワザワ……

    青年「うおー!!」

    戦士「何をいきなり叫んでるんですか!!」

    青年「こうして既成事実を作ってしまえば、貴女は側室にならざるを得ないでしょう?」

    306 = 232 :

    戦士「馬鹿ですか?!」

    青年「馬鹿です」

    戦士(この人、嫌い……)

    兵士「勇者さま」テテテッ

    青年「え?」

    戦士「貴女は……?」

    兵士「私です」

    青年「な?!なんて恰好を!!」

    戦士「姫様ですか!?」

    兵士「しーっ。側近のかたに頼んでお忍びでここまできたので」

    青年「兵士の鎧を着て、警備の目を盗んだんですか?」

    兵士「だって、勇者さまが居たんですもの。公務でなければ先ほど飛びついていたところですよ」

    戦士(すごい惚れよう……。この人が一番、彼のことを好きなんじゃ……?)

    青年「姫様。あまり側近を困らせるようなことはしないでください。怒られるのは結局、自分ですから」

    兵士「でも、私だって好きな人の傍に居たいのです。分かってください」

    307 = 238 :

    姫様、言動が抱きしめたくなるほど可愛いな

    308 = 232 :

    青年「姫……」

    兵士「勇者さま……」

    戦士「あの。いくらその恰好でも、ここでは目立ちますから」

    兵士「あ、申し訳ありません。勇者さま、以前のお話は考えてくれましたか?」

    青年「まだやるべきことがあるので。答えはすぐに出せません。ですが、必ず貴女を側室に」

    兵士「待ってます。絶対に迎えに来てくださいね。ペガサスとかそういうのに乗ってきてくれるんですよね?」

    青年「ええ。ペガサスの馬車にのって、ハネムーンです」

    兵士「ふふ、楽しみです」

    戦士「……」

    兵士「では、そろそろ戻りますね。私も勇者さまが迎えに来てくれるまでは、自分にできることをします」

    青年「ええ。貴女ならできますよ。永続同盟もきっと」

    兵士「勇者さま、愛しています」

    青年「はい」

    兵士「それではっ」テテテッ

    戦士「あそこまで言われているのに、側室扱いなんですか?」

    309 = 232 :

    青年「姫様が側室でもいいというので」

    戦士「正妻にしてあげては如何ですか?」

    青年「確かに姫様の執念というか、僕への愛は凄まじいんですよね」

    戦士「何かあったんですか?」

    青年「世界でただ一人、勇者を自力で探し出した人ですからね」

    戦士「え?」

    青年「貴女も王女様に探すように言われるまでは海賊艦隊が魔王を討ったと信じていたでしょう?」

    戦士「ええ……。当時からそのように報道されていましたし」

    青年「そのあと僕は最後の側室を探しながら脱走したキマイラを追うために各地を点々としました。まぁ、僕の顔を知っている人は限られていたので、普通に過ごしても指をさされることもありませんでしたけど」

    戦士「世間一般の英雄は海賊のほうですからね」

    青年「勇者でなくても魔王を倒せるそう世界に伝えることに意味がありましたから」

    戦士「……それで貴方は隠居を?」

    青年「隠居ではないですよ。素性を隠して側室を探し、魔物の調査も行っていました。故に僕の居場所を知っているなんて、姫様を除く可愛い側室たちぐらいでした」

    戦士「姫君に教えなかったんですか」

    青年「彼女も魔王は滅びたと信じていた人です。キマイラという不安要素を伝えないための措置だったんですよ。ですが、僕は姫様を甘く見ていた」

    310 = 232 :

    青年「兵力の過半数を僕の捜索のためだけに使ったのです。兵士たちも姫のためならばと躍起になっていたというのもあるのですが。当時はキャプテンのところにすごい数の兵士が来たとか」

    戦士(ああ。それでキャプテンは私と会ったとき、私みたいなやつがよく居たって言ってたのか……)

    青年「今から1年前ぐらいですか。小さな山村に居た僕を見つけた姫様は、こういいました」

    青年「『勇者さま。お怪我はないですか?』と。涙を流していましたね」

    戦士「……」

    青年「流石に心配をかけすぎたなと反省しました。それからは定期的に連絡を入れています。無論、僕の存在は世間には伏せてもらっています」

    戦士「結婚してあげてください。お願いですから」

    青年「でも、今から王女様との縁談がありますからねえ」

    戦士「それはそうですけど……でも……」

    青年「……それに聞きたいこともあります」

    戦士「え?」

    青年「貴女が僕のところへ来たときから、王女様にはどうしても質問したいことが一つだけありました」

    戦士「それは……?」

    青年「行きましょう」

    戦士(顔つきが変わった……。あんな真剣な顔もできるんだ……)

    311 :

    ―――王女の部屋

    「遅かったですね。城内の散策でもしていたのですか?」

    青年「ええ。とても美しい城ですね。王女様の前には霞んでしまいますが」

    「ふふ。お上手ですね、勇者様。それにやはり私に相応しいほどの美をお持ちです」

    青年「何を言いますか」

    「それから、貴女も。大変でしたでしょう?」

    戦士「いえ。そんなことはありません」

    「そうなのですか?」

    戦士「はい」

    「そう……」

    青年「王女様。自分を夫にしたいというお話ですが……」

    「ええ。私の美しさに釣り合う殿方は、勇者様以外いませんからね」

    青年「ほほぅ。光栄の極みですね」

    「異論はないでしょう。さぁ、私と契を……」

    青年「その前に関白宣言をさせて頂きたいのですが。よろしいでしょうか?」

    312 = 311 :

    戦士「何を言っているのですか!?」

    「聞きましょうか」

    戦士「王女様!?」

    「勇者様ですもの。それぐらいの発言権は与えても構いません」

    青年「それはどうも。では、言いますよ?メモの準備はいいですか?」

    「メモ、お願いできますね?」

    戦士「は、はい!!」

    青年「一つ、俺よりも先に寝てはいけない。一つ、俺より後に起きてもいけない」

    戦士「……」メモメモ

    青年「一つ、メシはうまく作れ。一つ、いつも綺麗でいろ」

    戦士「えっと……メシは……って、王女様に料理をさせる気ですか!?」

    青年「一つ、つまらない嫉妬はするな。一つ、浮気はする。覚悟しておけ」

    戦士「あ、えっと……嫉妬はするな……って、何を言っているんですか!?!王女様になんて無礼な!!!」

    青年「貴女も。俺の側室になるなら、これぐらいは守れ!!!いいな!!!」

    戦士「はい!?どうして?!」

    313 :

    これにはさだまさしもビックリ

    314 = 311 :

    青年「あーん?当然のことだべ?」

    戦士「私は関係ないでしょう?!」

    青年「あれですよ。もう、貴女を椅子に縛り付けて、目の前で他の側室とイチャイチャとかしますからね」

    戦士「それに何の意味が?!」

    青年「それぐらいで嫉妬されては困るので、訓練です」

    戦士「なんの訓練にもならないでしょう?!」

    青年「なりますよ。その内、私も旦那様とチュッチュしたのですぅ~、っていいながら僕に迫ってくるんですよ」

    戦士「どういう過程を辿ればそうなるんですかぁ?!」

    「……勇者様?」

    青年「なんですか?」

    「その発言は、私との婚姻はない。そう解釈してよろしいのですか?」

    青年「いえいえ。貴方ほどの美しいかたとなら即座に子作りに励み、この国を勇者の子孫で埋め尽くしてもいいと思っていますよ」

    「なら、貴方のいうことは却下です。何故、私がそのような制約を課せられねばならないのですか」

    戦士「その通りです。いくら勇者だからと言っていいことと悪いことが……」

    青年「そうですか。では、これだけは守ってもらえますか?―――僕のことを誰から聞いたのか、教えてください」

    315 = 311 :

    戦士「え……」

    「……」

    青年「僕が勇者であることも初めから知っていたようですが。どこかでお会いしましたか?」

    「何を言っているのですか?」

    青年「先ほど、貴方は迷いなく僕に挨拶しました。あれは顔見知りで無いと起こらないでしょう。彼女の後ろには僕ともう一人、美人な女性がいたんですから」

    戦士(なに……どういうこと……)

    「貴方のことは本日来られていた姫様から聞いていました」

    青年「残念ながら、姫様は僕の側室です。そして僕が魔王を討伐したことをずっと伏せていた。それは僕の考えを察してくれていたからです。今更誰かにしゃべるようなことはないでしょうね」

    青年「魔王と倒した英雄とは無関係の、勇者の話を振らない限りは」

    「……」

    青年「どこからの噂ですか?」

    「そのようなことどうでも良いではないですか」

    青年「そうは行きません。魔王の一件は意図があって隠していたことです。誰かに教えてもらったのなら、その誰かを教えてください。噂で聞いたというならどこでその噂を聞いたのか教えてください」

    青年「でなければ、非常に残念ですが、貴方と婚姻を結ぶことはないです。とても恐ろしいので」

    戦士「もうやめてください!!不敬罪になりますよ?!」

    316 :

    なるほど

    317 = 311 :

    青年「どうなのですか?」

    「……」

    戦士「やめろといっている!!」

    青年「……」

    戦士「……やめてください……私は……ここの兵士なんです……」

    青年「……では、もう一つ。各地で増加の一途を辿っている行方不明者のこと。王女様はご存知でしょうか?」

    「ええ。当然です」

    青年「何か対策は?」

    「無論、とっていてます。貴方に言われるまでもなく」

    青年「効果が出ているようには思えませんが」

    「……貴女」

    戦士「は、はい」

    「勇者様はおかえりになられるそうです。お見送りを」

    戦士「しかし……」

    青年「……失礼しました。では、お元気で」

    318 = 311 :

    ―――廊下

    青年「ふむ……」

    戦士「なんてことを言うのですか?!」

    青年「申し訳ありません。ずっと気になっていました」

    戦士「ああいうことは事前に話しておいてください!!」

    青年「前もって貴女に告げていれば、僕を王女様に会わしてくれましたか?」

    戦士「……!」

    青年「貴女がとても真面目なのは知っています。きっと謁見の場すら設けてはくれなかったでしょう」

    戦士「貴方は何を疑っているんですか……」

    青年「王女様の後ろには何かがあるのでしょう。勇者のことを知っている誰か、あるいは組織が」

    戦士「それで……?」

    青年「その組織は誘拐を―――」

    戦士「それ以上、言うなら……私は貴方を斬らないといけなくなります……」

    青年「でしょうね。だから、今まで言えませんでした。本当に申し訳ありません」

    戦士「……」

    319 = 311 :

    青年「気になるとすれば、見知らぬ相手は何故この状況を作りたかったのか。ということですね」

    戦士「……」

    青年「僕と王女様が会うことで事態が発覚することを想定していなかったとは思えませんし。王女様で僕を篭絡できるとか思っていたのでしょうか……?」

    戦士「もうやめて……」

    青年「……」

    戦士「王女様を侮辱するのなら……」

    青年「そうですね。貴方の立場ではそうするしかない」

    戦士「……帰ってください」

    青年「彼が居れば、王女様が何を想っていたのか分かるんですけどね」

    戦士「二度は言いません」

    青年「すいません。……では、失礼いたします」

    戦士「……」

    戦士(聞いてみないと……王女様に……)

    戦士「……!!」

    戦士(何を考えてるの……私……。王女様を疑うなんて……馬鹿げてる……)

    320 = 311 :

    兵士長「おう。どうだった?」

    戦士「義父さん……」

    兵士長「どうした?顔色が悪いぞ?」

    戦士「義父さん、あの……」

    兵士長「なんだ?」

    戦士(違う……そんなわけない……。あんないい加減な人が言ったことを真に受けるほうがどうかしてる……)

    戦士「な、なんでもない。王女様から褒めて貰ったから」

    兵士長「そうか!いやぁ、自慢の娘だ。うんうん」

    戦士「私……長旅で疲れたから休むね……」

    兵士長「そうか。ゆっくり休めよ。3日ぐらいは休暇でいいからな」

    戦士「ありがとう。それじゃあ」

    兵士長「ああ」

    戦士(勇者は自分かわいさに私の故郷を見捨てるような人だもの……)

    戦士(魔物と仲良くしているやつの言うことなんて……信じない……)

    戦士(信じられるわけ……ない……)

    321 :

    いい作品だ・・・

    322 = 311 :

    ―――民家

    戦士「……」

    戦士(何で、こんなところに。用なんてないのに……)

    賢者「―――おーぅ。お嬢ちゃん。どしたぁ?」

    戦士「……!」

    賢者「そうか……。ま、中に入れよ」

    戦士「結構です」

    賢者「お酌ぐらいしてくてもいいだろぉ?」

    戦士「……違う……」

    賢者「年取ってからよぉ、肩がよくこるんだ。肩たたきしてくれると助かるなぁ」

    戦士「私は……」

    賢者「一緒に酒でも飲もうぜぇ」

    戦士「貴方はどこまで知っているんですか?」

    賢者「少なくともお嬢ちゃんよりは、色々しってるぜぇ?無駄に歳食ってるし、賢いからなぁ、俺ぁ」グビグビ

    戦士「お邪魔します……」

    323 = 311 :

    戦士「……」

    賢者「信じてきたものが一気に裏返る……。それほどつれぇもんなねえ」

    戦士「私は……」

    賢者「俺もよぉ、そういう経験がある」

    戦士「経験……?」

    賢者「兄ちゃんから聞いただろぉ?俺の呪いことはよぉ」

    戦士「心の声が聞こえてしまうんでしたよね」

    賢者「ああ、そうだぁ。お嬢ちゃんくらいの歳の頃は血気盛んでなぁ。色んなやつに期待された。なんていっても、俺ぁ賢者だからなぁ。だから、そんな呪いも逆に利用してやってた。しばらくはな」

    戦士「心が読めるなら、戦闘でも有利になるでしょうからね」

    賢者「ああ。つっても、この呪いの恐ろしさはすぐに理解していたぜぇ。羨望や賞賛の裏では、妬み嫉みしかねえことたぁ、城に戻れば嫌でもわかった。それでも中には心から俺を応援してくれている奴もいた」

    戦士「……」

    賢者「そう言う奴がいたから、俺ぁやれた。人助けもした。街一つ救ったことだってある。だけど、たった一度の失敗で全員が手の平を返した。心の中でな」

    戦士「失敗?」

    賢者「救えなかったんだよ。助けを乞う連中をな……。信頼していた連中も評価をあっさり変えやがった。まさに今のお嬢ちゃんと同じ状態だ。信じていたものが覆った瞬間だったなぁ……」

    戦士「貴方は……」

    324 = 311 :

    賢者「信じられるものは酒と自分だけ……。それが俺の行き着いた答えだ。笑えるだろぉ?」

    戦士「……」

    賢者「つまんなかったか?」

    戦士「私を勇気付けようとしてくれたんですか?」

    賢者「年取るとなぁ、昔話を若い奴らに話したくなるんだよぉ」グビグビ

    戦士「私も酒に溺れろと?」

    賢者「ちげえよ。俺みたいに腐るなってことだ。後悔するぜぇ?」

    戦士「貴方は後悔をしているのですか?」

    賢者「俺ぁ、逃げちまったからな。お嬢ちゃんが一番嫌いな人種だ。期待されることから逃げちまった男だ。逃げなかったらよかったと、今では想うね」

    戦士「何故ですか?」

    賢者「お嬢ちゃんみたいな別嬪に、尊敬されるだろぉ?それっていいことじゃねえか」

    戦士「貴方は違うでしょう。期待から逃げたのではなく、誹謗中傷が耐えられなくなって……」

    賢者「ちがうなぁ。期待されて、失敗した後のことが俺ぁ怖かったんだ」

    戦士「あ……」

    賢者「お嬢ちゃんもそうだろ?尊敬する親父に期待されているから、そうやって迷っているんだぁ。嫌だよなぁ……期待されるってよぉ……いっそ、期待なんて持たないで欲しいぜぇ……」

    325 :

    続きが気になって眠れないじゃないかよぉー!!

    326 = 311 :

    戦士「……」

    賢者「どうすんだ?」

    戦士「私は……」

    賢者「兄ちゃんのことを信頼しているなら、兄ちゃんのところに行け。親父の期待に応えたいなら残ればいい」

    戦士「そんなの選べません!!!」

    賢者「俺みたいにだけは絶対になるな、お嬢ちゃん。絶対にだ」

    戦士「どうしたら……」

    賢者「信じていなかったものを信じるのもいいと思うぜ。少なくとも、兄ちゃんは信頼できる」

    戦士「そんなことは……!!」

    賢者「そう。お嬢ちゃんはもう毒されてんだよ、とっくの昔になぁ」

    戦士「……っ」

    賢者「あれだけ多くの奴から慕われる男だ。言動が多少おかしくても、その行動には惹かれるものはあらぁね。俺だって兄ちゃんのことはたった数日で気にいったぜぇ。お嬢ちゃんもだろぉ?」

    戦士「……王女様は何をしようとしているのですか?」

    賢者「それを聞けば兄ちゃんのところに行くっていうなら、言ってやる。ただし、親父の期待に応えるっていうなら俺ぁ絶対に言わないぜぇ?賢いからなぁ。お嬢ちゃんを無駄死にさせたくねえしなぁ」

    戦士「くっ……!」

    327 = 316 :

    ただの酒好きじゃなかった…!!

    328 = 311 :

    賢者「どうする、お嬢ちゃん?」

    戦士「このまま城を離れたら……」

    賢者「そらぁ、あれだ。最悪、親父とも戦うことになる。城に残るっていうなら兄ちゃんと戦うことになるかもな」

    戦士「……!!」

    賢者「酷な選択だぁ。……酒に逃げるっていう手もあるけどよ。俺ぁオススメしねえ」

    戦士「……」

    賢者「アル中のおっさんから言えるのは、これぐらいだな……わりいけどよ」

    戦士「貴方なら……」

    賢者「俺を期待するなって……魔法も使えないんだぜ?」

    戦士「うっ……」

    賢者「でも、俺ぁ、救いてぇよ。お嬢ちゃんみてえな若い奴らを」

    戦士「どうしたら……いいんですか……」

    賢者「けど、敗残兵にそれだけの資格も度胸もねえときた。ハハッ。なけるぜぇ」グビグビッ

    戦士「あの―――」

    賢者「そらぁ駄目だ。俺が真実を叫んだって、無意味だ。こんな飲んだくれの話なんざぁ、誰も耳をかしてくんねえって。国家反逆罪で死刑になるなぁ」

    329 = 311 :

    戦士「……」

    賢者「お嬢ちゃん。兄ちゃんのとこにいきてぇんだろ?」

    戦士「でも……!!そうしたらまた私は……家族を……失っちゃう……!!」

    賢者「おぅ……そうだな……」

    戦士「義父さんは……私を……今まで育ててくれて……だから……」

    賢者「期待は裏切れねえか……」

    戦士「……!」ガタッ

    賢者「お嬢ちゃん、早まるな」

    戦士「私は義父さんとは戦いたくない!!」

    賢者「やめろ……」

    戦士「そして……あの人たちとも……!!」

    賢者「わかった……わかったから、落ち着け」

    戦士「私は……逃げません。王女様は非人道的なことをしている。そうなのでしょう?それが分かれば十分です」

    賢者「そらぁ勇気じゃねえよ、お嬢ちゃん。とりあえず、俺の肩でも揉んでくれよ。頼むからよぉ」

    戦士「こうするしかないじゃないですか……!!戦わないようにするには……こうするしかっ!!」

    330 = 311 :

    ―――城内 謁見の間

    「……なんですか?」

    戦士「王女様。国民に対して隠していることがあるのでは……?」

    「勇者様から何を聞いたかは知りませんが……」

    戦士「私は何も知りません。誰も教えてくれませんでしたから」

    「ほう……」

    戦士「だから、私は貴女に直接訊きます。何をされているのかを」

    「知ってどうするのですか?」

    戦士「償えることならば償いましょう、王女様」

    「フフフ……フフフ……」

    戦士「王女様……?」

    「勇者様とあの馬鹿なお姫様が恋仲だったとは予想外でしたね。勇者のことはあの子から聞いたことにすれば納得すると聞いていたのですけどね」

    戦士「……」

    「さて、貴女はこう言いましたね。償えるなら償いましょうと。奉仕活動でもするのですか?」

    戦士「それは王女様の罪によります……」

    331 = 311 :

    「私は美しい」

    戦士「……は?」

    「私の美貌はどうやって保たれているか、ご存知?」

    戦士「いえ……」

    「血です」

    戦士「血?」

    「人間の血ですよ……フフフ……」

    戦士「王女様!!あなたはぁ!!!」

    「人の生命力を吸出し、己の体に取り込むと永遠の美が約束される。そう教えていただきました。吸血鬼のように美女には拘らなくていいそうですが……」

    戦士「貴方が……人を……!!」

    「誤解しないでください。私は人の血を浴びるだけ。掴まえてくるのは、魔族です」

    戦士「……!!」

    「いずれはこの玉座に座る魔の王。全ては彼らがしたこと。私はその甘い蜜を吸っているだけです」

    戦士「なんて……ことを……」

    「さぁ、どのようにして罪を償いましょうか……?私にはいい案が浮かびません」

    332 :

    エリザベート・バートリーか

    333 = 311 :

    戦士「この場で……!!」

    「斬るのですか……?」

    戦士「貴女は私たちを裏切りながら生きていたのか?!」

    「勝手なことを。私はお前たちのことなど、知らない」

    戦士「なに……?」

    「私は確かに国を統べる者。ですが、その前に人間です。したいことをして何が悪いというのですか?」

    戦士「何を言っている!!人の上に立つのが王の務めでしょう?!」

    「都合の悪いことを押し付ける対象が欲しいだけのくせに」

    戦士「え……」

    「王は……いや、英雄に対してもたった一度の失敗すらお前たちは許さない。成功して当然だと思い込んでいるだけ」

    戦士「……王女様……あなたも……」

    「うんざりですよ。馬鹿な民を導くのが王の責務?そういうのなら、導きましょう。私の都合の良いように」

    戦士「やめ……て……くださ、い……」

    「貴方がいるということは勇者様もまだ街にいるのですね。では、貴方を始末してから勇者様を殺しましょう。勇者様は今、この世でもっとも危険な存在ですから……」

    戦士「やめろ!!!」

    334 = 311 :

    「ずっと探していたのですよ。勇者様を。美人になら食いつくと言われたので、貴女に頼んだのですが……正解でしたね」

    戦士「今、この場で貴方を斬る!!!!」

    「フフフ……」

    戦士「あぁぁぁぁぁ!!!」

    「炎よ」ゴォッ

    ドォォォン!!

    戦士「なっ……!?魔法……!!」

    「さて、もう貴女の負けですね。今ので来ますよ。憲兵たちが」

    戦士「まだ間に合う!!貴女を殺さないと!!私は戦わなくちゃならない!!」

    「人間の血を浴び、私は力を得ました。貴女の刃が私に届くことはありません」

    戦士「でぁぁぁぁ!!!!」

    「無駄ですよ」ゴォッ

    戦士「がっ……!?」

    「話になりませんね」

    戦士「そんな……いや……戦いたくない……私は……!!」

    335 = 311 :

    兵士長「何事ですか!?王女様!!」

    兵士「なにがあったのですか?!」

    戦士「あ……」

    「この者が私に刃を向けました。捕らえなさい」

    兵士長「……了解しました」

    戦士「義父さん……」

    兵士長「お前は重犯罪者だ……。私を父と呼ぶな」

    戦士(終わった……やっぱり……何もできなかった……)

    「すぐにこの者の刑を―――」

    青年「―――すいません」

    「?!」

    兵士長「勇者……どの……?」

    青年「この辺に僕の連れがいませんでしたか?探しているのですが見つからなくて」

    「……貴方からやってくるとは好都合です。怪しまれたので警戒されていると思ったのですが」

    青年「いいえ。貴方のことは随分と前から警戒していましたよ。だから、この地域に最強の側室を配置していたんですからね」

    336 = 311 :

    「なんですって?」

    青年「姫様が以前から言っていたんですよ。この国の王女様は私と同じ目をしていると」

    「目?」

    青年「気付きませんでしたか?姫様もまた、王族に縛られず自分勝手に生きたいと考えている駄目な人なんですよね」

    「それは気がつきませんでしたね……」

    青年「あの姫様がそういうので、失礼とは思いつつも貴方をマークしていました。行方不明者の多い地域でもありましたしね」

    「何を仰りたいのかわかりませんが、私を侮辱したことには違いありませんね」

    青年「そうなりますか」

    「あの不届き者を捕らえなさい」

    兵士長「はっ!!」

    戦士「やめて!!義父さん!!」

    兵士「大人しくしろ!!」グイッ

    戦士「がっ!?」

    青年「てめぇぇぇ!!!俺の側室になにしてくれんじゃぁぁぁ!!!!!うおぉー!!!!」ダダダダッ

    兵士「うわぁ?!」

    337 = 311 :

    青年「せいやぁ!!!」ドガァ

    兵士「ぐあぁ!?」

    青年「大丈夫ですか?」

    戦士「は、はい……」

    兵士長「お前は勇者ではないのか!!」

    青年「今はただの国賊ですね。どうぞよろしく」

    兵士長「ならば、容赦はしない」

    青年「こっちには人質もいるんですよ」グイッ

    戦士「私?!」

    兵士長「……どうせ二人とも死刑になる。ここで仕留めても問題はない」

    青年「中々の忠誠心ですね。感服します」

    兵士長「行くぞ!!」

    青年「ここに居れば兵士が集まってきますね……。ならば……逃げます!!」

    戦士「ま、まって!!」

    「あの者たちを必ず捕らえなさい!!」

    338 = 311 :

    ―――廊下

    兵士「その者を捕らえろ!!王女様を殺害しようとしたものだ!!!殺しても構わん!!!」

    青年「無茶苦茶ですね。何故、このような騒ぎに」

    戦士「私が時間を稼ぎます。貴方は逃げてください」

    青年「はい?」

    戦士「……貴方が王女様を止めてください」

    青年「何を言っているのか分かりません。この星では人語しか通じませんよ?」

    戦士「このままでは殺されますよ?!」

    青年「側室3号、おいでぇ」

    エルフ「―――よっと」スッ

    戦士「何もないところから……!?」

    エルフ「不可視の魔法。里を魔法で隠してるって言ったでしょ。ボクでも人一人を隠す魔法はできるからね。何かあるといけないからって待機させられてたんだ」

    戦士「エルフって……すごいんですね……」

    青年「ええ。すごいんですよ。僕の側室は。では、いっぱつでかいのお願いしますね」

    エルフ「それはいいんだけど……。このまま連れていっても良いの?」

    339 = 311 :

    青年「……どうしますか?」

    戦士「……私は……」

    兵士長「逃がすな!!」

    戦士「……連れて行ってください」

    青年「良かった」

    戦士「え?」

    青年「残ると言われたらどうしようかと思いました」

    戦士「どうして……?」

    青年「そんなの、貴女のことが好きだからに決まっているでしょう?」

    戦士「なにをこんなときに……!」

    青年「さあ、行きましょう!!」

    エルフ「よし。いくよ。―――大爆発!!!」

    兵士長「まてぇ!!」

    戦士「義父さん!!王女はもう人間じゃないの!!だから私はこの人たちと―――」

    兵士長「捕らえろ!!王族への侮蔑は万死に値する!!!」

    340 = 311 :

    ―――民家

    賢者「こっちだ。入れ」

    青年「はぁ……はぁ……。どうも」

    エルフ「あー、危なかった」

    賢者「すげえ、爆発音だったなぁ」

    青年「混乱の乗じて逃亡しました」

    エルフ「疲れた……」

    戦士「……」

    賢者「お嬢ちゃん、腹は決まったみたいだな」

    戦士「……いえ。こうするしかなかっただけです」

    青年「今から港に行きたいのですが……」

    賢者「そらぁ無理だな。ガチガチの包囲網をしかれてらぁ」

    青年「どこか抜け道は?」

    賢者「あるわけねえだろ。……ドラゴンを呼ぶのか」

    青年「そんなことをすれば完全に魔物の侵攻になります。3年前に逆戻りですね。今度は僕が魔王になっちゃうんでしょうけど」

    341 = 311 :

    戦士「逃走経路を一つも用意していなかったんですか……?」

    青年「面目ありません」

    戦士「……私の所為ですね。ごめんなさい」

    青年「そんなことはないですよ」

    エルフ「でも、どうするの?このままじゃ本当に危ない。ここだってすぐに見つかっちゃうだろうし」

    青年「角笛を使うしか……」

    戦士(やっぱり私が囮になって……)

    賢者「まてまて、どうしてそう若いやつらは、突っ走ろうとするのかねぇ。おっさんには眩しくてしかたねえよぉ」

    青年「何か策が?」

    賢者「おっさんの出番だろ。ここはよぉ」グビグビ

    青年「駄目です」

    賢者「……」

    戦士「え?」

    青年「誰の犠牲も許しません」

    賢者「兄ちゃんよぉ。なら、3年前みたいに魔物と人間がいがみ合う世界にするのか?おっさんと世界なんてよぉ、天秤にかけるまでもねえだろよ」

    342 :

    だめだ賢者がイケメンに脳内補正されていく

    343 = 311 :

    青年「俺にとっては平等だ」

    戦士(なに……この剣幕……)

    エルフ「ちょっと……」

    賢者「兄ちゃん。もうそんなことに拘るな」

    青年「何のために俺が強くなったのか、貴方にはわかるはずです」

    賢者「だから、もう拘るなって……」

    青年「俺は守る。手に届く範囲なら」

    賢者「調子にのるなよ、若造」

    青年「な……!」

    賢者「お前の考えは立派だが、今までもお前の見えないところでは犠牲はあったんだぜ?てめえに救えるのは、てめえ両手分だけだ。三人はちと多いだろうが」

    青年「待ってください!!貴方の力も必要なんです!!」

    賢者「俺ぁ老兵よ。てめえらの背中を見送ることぐらいしかできねえよ。気ぃなんてつかうな、兄ちゃん」

    青年「そんなことはない!!」

    賢者「ようやく見つけたんだぜぇ。俺の花道をよぉ。最後ぐらいいいだろ?かっこよく、歩かしてくれてもよ」

    戦士「待ってください!!私が余計なことをしたから状況が悪化したんですよね?!なら、私が囮になります!!その隙にみなさんは逃げてください!!」

    344 = 311 :

    青年「黙っててください」

    戦士「え?」

    賢者「お嬢ちゃんは生きろ」

    戦士「で、でも……」

    青年「とにかく全員で港へ行きます。絶対に」

    賢者「なら、もう一度戦乱をおこそうってんだな?兄ちゃんの努力は水の泡だぜ?兄ちゃんが救えなかった者たちも無駄死にだな」

    青年「……!」

    エルフ「そんな言い方しなくても!!!」

    賢者「エルフ族も無関係じゃねえだろう?もう一度、戦争になってみろぉ。今度は言い逃れはできねえだろ。人間と一緒に魔王をやっちまったんだからなぁ」

    エルフ「それは……」

    賢者「どきなぁ。酔いがさめねえうちにいってくるぁ」

    青年「……どうやって兵を止めるつもりですか?」

    賢者「俺ぁ賢者だぜぇ?賢いんだぁ。いくらでも方法はある」

    青年「魔法……使うんですね?」

    戦士「え……使えるんですか……?」

    345 = 311 :

    賢者「あーあ……いっちまったぁ……。最後の最後でびっくりさせようって思ってたのによぉ」

    戦士「使えるんですね!?どうして使えないフリを……!?」

    賢者「わりぃな、お嬢ちゃん。使えるのは人間に対してだけなんだぁ」

    戦士「え……」

    賢者「俺が最後に戦った魔物が呪いをかけやがった。魔封じの呪いだ……」

    エルフ「呪いが二つもかけられている状態なの……?」

    賢者「おうよ。すげえだろぉ?魔法が使えるのは人間にだけ。魔物に対しては俺の魔力が反応しちまって、でやがれねえ。困ったもんだろぉ?笑ってくれぇ」

    戦士「……どうして何も言ってくれないんですか」

    賢者「いやぁ、ほら、正直にいっちまうと契約切られちまうだろ?そうなると酒がのめなくるしよぉ」

    戦士「言ってくれれば、考えましたよ!!!」

    賢者「そうかい?」

    戦士「そうですよ……」

    賢者「信頼してなかったんだぁ、俺ぁ。お嬢ちゃんのことすらも……。ひでぇ男だろ?」

    戦士「そんなこと……」

    賢者「さぁてと、いってくるかぁ。あー、ケツが痒いぜぇ、まったくよぉ」

    346 = 311 :

    青年「……」

    エルフ「行っちゃったよ……?」

    戦士「あの……」

    青年「行きましょう」

    戦士「え?」

    青年「さぁ、彼の想いを無駄にしないために」

    エルフ「いやだ」

    青年「……」

    エルフ「ボクはいかない。助けたいなら、助けに行こうよ」

    青年「しかし」

    エルフ「ボクの大好きな勇者なら、絶対に助けに行く」

    青年「……そこまで言われたら行かないわけには行きませんね」キリッ

    戦士「ドラゴンを呼ぶのですか……?」

    青年「全員で生きてここから出るにはそれしかないです」

    エルフ「うん……。それしかないよ」

    347 = 311 :

    ―――城下町

    兵士「まだ町の中にいるはずだ!!探し出せ!!!」

    「「おぉー!!」」

    賢者「まちなぁ」グビグビ

    兵士長「お前……」

    賢者「よぉ。お嬢ちゃん、立派なになってんじゃねえかよぉ。いい女だ。あと20歳若けりゃ、手がでてたな」

    兵士長「どこにいる?」

    賢者「あぁ?なんのことだぁ?」

    兵士長「どこにいるのかと訊いた」

    賢者「おぅ、おぅ、おぅ。親しき中にも礼儀ありじゃねえかぁ?あぁ?」

    兵士長「逃がしたのか?」

    賢者「まだ、これからだ。みりゃあわかんだろぉ?」

    兵士長「逃がすのか……」

    賢者「お嬢ちゃんのためだ。俺ぁ死ねる。それは10年前から決めてんだよぉ。だからよぉ……邪魔すんなよぉ!!」

    兵士長「くっ!!この者を止めろ!!暴れさせるなぁ!!!」

    348 = 311 :

    ……ドォォォン……

    青年「始まったみたいですね……」

    エルフ「急がないと……」

    戦士「……本当にやるんですか?」

    青年「やるしかありません。あの人には生きてもらわないと」

    戦士「……」

    青年「では……」

    エルフ「……」

    青年「……」ピィィィ!!!!

    青年(これでやり直しか……。3年……もったほうか……)

    戦士「ごめんなさい……」

    青年「いずれはこうなったでしょう。魔物も力を蓄えていたみたいですし」

    戦士「どうして……そんなこというんですか……。貴方は人間と魔物の共存を願っていたんでしょう?!」

    青年「……」

    エルフ「あ。きたみたい……」

    349 = 311 :

    ―――砂漠地帯 オアシス

    竜娘「む?呼ばれたようだ。行ってくる」

    僧侶「勇者様にですか?」

    魔法使い「ふぅーん……」

    ドラゴン「すぐに戻ってくる」

    魔法使い「最初はグー!!」

    僧侶「じゃんけんぽん!!」

    魔法使い「よしっ!!」

    僧侶「まけた……」

    ドラゴン「なんだ、どうした?」

    魔法使い「ちょっと休憩よ。こんなところに居たら干上がっちゃうし」

    僧侶「ゆうしゃさまによろしく言っておいてくださいね……」

    ドラゴン「ここに来ることになるだろうから安心しろ」

    僧侶「本当ですか?!では、全速力でお願いします!!」

    ドラゴン「分かっている。―――いくぞ!!」ゴォォォ


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