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    元スレ咲「リンシャンロンパ」 洋榎「希望の雀卓と絶望の高校生雀士」

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    901 = 893 :


    「他になにか気になった?」

    「……扉に、やはり覗き窓があったこと、でしょうか」

    「……ま、そうよね」

    「多分、シーツとか、そういうもんを持ってく姿を隠しにくくするバランス調整だとは思うけど」

    誠子「まあ、考えても仕方ないんじゃない?」

    誠子「深い意味なんてないかもしれないし……」

    「……」

    誠子「で、こっち側の廊下には……と」 ガラッ

    誠子「うわ、また談話室?」

    「そうみたい」

    「あ、どうも……」 ペコリ

    美子「でも、ここには――」 チラッ

    誠子「うわ、冷蔵庫だ! 透明タイプの!!」

    「中には……ビン牛乳?」

    「そっちの扉が脱衣所と繋がってるみたい」

    ガチャ

    華菜「ありゃ、なんかいっぱいいるし」

    「どーも」

    華菜「どもーっす」

    華菜「なーんか『ドリンクはこちら』って張り紙見たんだけど……」

    美子「これのことみたい」

    華菜「よっしゃもーらい!!」

    「ビン牛乳自体は、厨房の冷蔵庫にもあったんだけどね」

    「そうなんですか?」

    誠子「まあ、メニューに合わないから朝食とかには出さなかったんだけど」

    (いつも誰かに作って貰うかカップ麺だから知らなかったよ……)

    「そんなに日持ちするものでもないし、これ、こまめに私達が補充しなきゃダメなのかしら」

    誠子「かもねえ」

    902 = 893 :


    誠子「ここにも特に何もなさそうだね」

    「そうホイホイ色々あっても困るけどね」

    美子「……皆は、もう地下は?」

    「は、まだなのよね」

    「これからです」

    美子「そう……」

    「……ちょっと、アレだけど、使い方によっては良い施設が解放されてるから」

    「?」

    「……ああ、そうだ」

    「明日の麻雀なんですけど、三人は誰と打ちたいとかってある?」

    華菜「何だ突然」

    「ほら、前真面目に打ってないからって毒ガス騒動になったじゃない」

    「だから少しでもまじめにやれるよう、卓のセッティングとかしておいた方がいいかなって」

    華菜「あー、確かに」

    「あんまりよく考えてなかったなあ」

    華菜「んじゃ折角だから、ここの四人で打つか?」

    「あ、ごめん、アタシは咲達と打ちたくてさ」

    「え?」

    「言ってなかったけど、いいよね?」

    「ええ、まあ」

    誠子「私も問題ないよ」

    華菜「んー、じゃあ残り一人かあ、誰も言いっちゃいいんだけど……」

    華菜「せっかくなら普段当たらない人とやっておくべきなのかもなー」 ウーン

    「じゃあ奈良県代表の晩成高校のエース様なんてどう?」

    「麻雀どころじゃないっぽいし、入れてあげてよ」

    華菜「そうだな、あんまりやる機会はないし」

    「じゃ、この四人の卓で決まりね」 ニィ

    「アタシらは誰入れよっかなあ」

    誠子「もー、それは明日でもいいじゃん、ほら、行こうよ」

    誠子「時間もそんなにないしさ」

    「はいはい」

    903 = 893 :


    <地下>

    誠子「ここ、って……」

    「……テープの封鎖が溶けて出てきたは小窓付きの扉、ね」

    「これ……」

    誠子「何って言えばいいんだろう、薬局?」

    「お金払うことはないけどね」

    「すごい、薬ばっかり……」

    誠子「風邪薬にロキソニンに……」

    「よく分からない薬まで……」

    「……ま、それよりも問題は……」

    誠子「この正面の棚だよね……」

    「正確にいうと、堂々と置かれたドクロマークのボトルね」

    904 = 893 :


    誠子「これ……毒、だよね……」

    「舐めてみたら分かるんじゃない」

    「毒って文字も書いてあるし、やめた方がいいんじゃ……」

    「ま、あのペンギンがこんなとこで嘘つくとは思えないけど」

    「ロキソニンにもラベルで『痛み止め』って書いてましたし、薬の効果が嘘なく書かれてるみたい……」

    誠子「うーん」

    誠子「となりのボトルは栄養剤だったりビタミン剤だったり……」

    「なるほど、確かにこのあたりは上手く使えば密室でも体調管理に役立てられる、か」

    「あれ、これ……」

    「栄養剤のボトルだけ一個少ない……」

    誠子「誰かが持っていったんじゃない?」

    「毒ならともかく、栄養剤を?」

    誠子「いやいや、むしろ毒より栄養剤の方が必要でしょ、いつまで出られないかわからないんだから」

    「ふうん……」

    「っと、そろそろ約束の時間ですよ」

    905 :

    どんな状態

    ドンナ経歴

    勝者には京様モラエルの?

    906 = 893 :


    「行って、とりあえず皆の見つけた情報と差異がないかを確かめないと」

    「……ま、ほとんどないと思うけどね」

    「栄養剤の数以外」

    誠子「やけに気にするね」

    「まーね」

    「一応、犯人誰か問いただしておかないと」

    誠子「そんな大げさな……」

    「……」

    「今までは、凶器を見張るだけでよかったかもしれない」

    「でもここからは、毒物が混ざってくる」

    「誰も傍にいないとしても、信用出来ない日々が始まるのよ」

    「……あんまり楽天的だと、死ぬわよ」

    誠子「な……っ!」

    907 = 893 :


    「……」

    (その言葉で……押し込めてた不安が、再度顔を覗かせた……)

    (疑心暗鬼は、確かに、もう、始まっているのかもしれない)

    (多分、栄養剤を持って行った人に、悪意なんてないんだろうけど)

    (でも……)

    (でもきっと、この行為の奥には――)

    (毒が開封される前に持ちだしておかないと怖いという想いが)

    (……誰も信用出来ないという気持ちが、あるのだから……)

    908 = 893 :

    用事があるのと、ここからまたちょっと長そうなので中断します
    とりあえず最速で再開出来ても火曜日になりそうです、申し訳ありません

    909 :

    おつーん

    912 :


    自由行動してないのにもう不穏に乗るのか……

    913 :

    予定が狂って遅くなりましたが投下します

    914 = 913 :


    <食堂>

    「おまたせ」

    「あ、おかえりなさい」

    誠子「どこ行ってたの」

    「ああ、明日打とうって話をちょっとね」

    「それと……」

    「はい、これ」

    「わあ、山盛りのお肉」

    誠子「ワイルドー……」

    「簡単な味付けだけどね」

    「小分けしてないから、3人で食べようと思って」

    「……毒が見つかった以上、誰かが用意して小分けにするってのは、もう現実的じゃないからね」

    「……」

    誠子「そう、だね……」

    「巴もさすがに自覚あったのか、勝手に作らず、料理いるか聞いてきたしね」

    誠子「ちょっと、申し訳ないよね……なんか信用してないってみたいで」

    「うん……」

    「……ま、しょうがないでしょ」

    「そのくらい割りきらないと、この先持たないわよ」 モグモグ

    915 = 913 :


    ガチャ

    桃子「あ、帰ってきた」

    華菜「集合を食堂にしたのはいいけど、まさか伝わってないとはなー」

    桃子「まあ、言ったかどうかなんて覚えてないし、向こうもそんな感じだろうからしょうがないっすよ」

    やえ「おまたせ」 スタスタ

    葉子「わりーわりー」 スタスタ

    誓子「集合ってホールじゃなくてこっちだったんだ」 スタスタ

    透華「……」

    透華「辻垣内智葉は……」

    やえ「それが、ホールには――」

    ガチャ

    智葉「……」

    透華「辻垣内智葉!」

    透華「よかった、来てくださったんですわね」

    智葉「……食事を取りに来ただけだ」

    智葉「特に喋る情報はない」

    「……」

    誠子「ツンケンしてるなー……」

    「まあ、無理もないっちゃないけど……あれ、情報仕入れるだけ仕入れて、自分は出さないってことよね……」

    916 = 913 :


    透華「まあ、いいでしょう」

    透華「正直無理矢理にでも参加して頂きたいところですが……」

    華菜「無理しすぎると揉めまくりそうだし」

    桃子「ただでさえ元は傲慢なんっすから、こっちが引かないと」

    やえ「意外と評価ボロクソなんだな……」

    透華「そんなわけで、情報交換ですわ」

    透華「……みなさん、当然全部屋周りはしましたよね?」

    華菜「あ、私は風呂入ってたからまだ」

    透華「……」

    華菜「玄関前のセミの死骸でも見るような目」

    917 = 913 :


    透華「まあ、池田華菜には後で私から全体図を教えるとして……」

    透華「誰か何か気付いた方はいらっしゃいます?」

    美子「そうはいっても……」

    「さほど大きな発見はなかったかなあ~って」

    「あ、モノペン出てきて教えてくれたけど、やっぱり大浴場横の談話室の牛乳はこっちで補充するみたい」

    華菜「げっ、そーなの」

    美子「そん代わり、夜時間も立ち入ることが可能ばい」

    透華「なるほど」

    透華「夜時間に立ち入り禁止にすることで、食堂や厨房に食材を補充してるんでしょうし」

    「補充しない代わりに立ち入りは自由、か……」

    「……わざわざ立ち入ることはない気もするけど」

    誠子「あ、でもお風呂夜に入れるのは大きいんじゃない?」

    「お水が止まるのは、多分大浴場もなんじゃ……」

    誠子「かけ湯くらいなら出来るんじゃない?」

    「……」

    「もしそうだとしたら、モノペンはお湯を張り替えてくれないし、私達で風呂掃除もしなきゃならないんじゃ……」

    誠子「……」

    誠子「うわっ、そうなるの!?」

    華菜「め、めんどうくさー……」

    918 = 913 :


    「……呼び出して聞いてみる?」

    「どうせカメラとマイクで聞いてるんだろうし、呼べば来るでしょ」

    モノペン「もう、ペンギン使いが荒いなあ」 ニュッ

    誠子「うわあ!?」

    華菜「わわっ、亦野の股間からペンギンが生えてきたしっ!」

    モノペン「やあ、ボクはモノペニs……って、こらー!」

    モノペン「そういう卑猥なジョークは厳禁だぞっ」 プンプン

    モノペン「ボクは健全なゆるキャラマスコットなんだからねっ!」 プリプリ

    竜華「マジで出てきおった……」

    モノペン「もうっ! 呼び出しておいてその反応はひどくない!?」

    「まだ呼ぶか決まっとらんかったし、決まるまで待っとってもよかったんとちゃいますぅー?」

    桃子「これでやっぱり呼ぶのやめようとかなったらどうするつもりなんっすか」

    モノペン「オマエラ、ちょっとボクに対して厳しいよね」

    「……まあ、ヘイト溜まってるからね」

    透華「あくまでさせたいのは殺し合い」

    透華「……貴女に直接手を出さなければ、処分されることはないのでしょう?」

    モノペン「まあね」

    モノペン「勿論、学級裁判の敗者は別枠だけどね」

    919 = 913 :


    透華「それで、大浴場の清掃はどうなってますの?」

    モノペン「しょうがないから、それはボクの方でやっておいてあげるよ」

    モノペン「適当な夜時間に、こっちで掃除しておいてあげるからさ」

    誠子「適当って……」

    モノペン「基本的に立ち入ってもいいけど、ボクが『清掃中』の札をかけてる時だけは、立ち入り禁止です」

    モノペン「ただし談話室や更衣室までならオーケーです」

    「更衣室も?」

    華菜「あ、そういえば、大浴場にあった鍵のかかった扉……」

    モノペン「はい」

    モノペン「ぶっちゃけ、ボクはあそこから入るからね」

    葉子「!?」 ガタッ

    モノペン「当然、あの辺りはトイレなんて比じゃないくらい頑丈だから、ぶっ壊せないと思うけどね」 ウププププ

    葉子「……チッ」

    「そもそも3階に穴をあけても、地上に降りれないから意味ないよーな……」

    葉子「うっせー!」

    920 = 913 :


    「……深夜に風呂場で血のついたシャツを洗える可能性はある」

    「でも、モノペンが清掃中の可能性もある、か……」

    モノペン「入ってきたら、勿論おしおきだよ」

    モノペン「清掃中の札を外してもね」

    「……なるほど」

    「清掃中の札を外して誰かを放り込むのもダメ、ってことね」

    モノペン「そう」

    モノペン「ボクを凶器として使った殺人とみなすかとか、ややこしくなっちゃうでしょう?」

    「もうすでに色々とややこしいと思うけど」

    モノペン「ま、そーだけどさ」

    モノペン「その辺は臨機応変、必要になったらルールを追加するからいいの」

    智葉「……コロコロ訂正はしない、という認識でいいんだよな?」

    モノペン「うん、そこは勿論」

    モノペン「それを覆すと、ゲームにならないからね」

    透華「ゲーム、ね……腹立つ認識ですわね」

    モノペン「うぷぷぷぷ……」

    モノペン「他に質問がないなら、ボクはもう行くよ?」

    桃子「とりあえず、以上でいいっすよね?」

    華菜「他になんか必要になったらまた呼べばいいんじゃないか?」

    「ソレでええんちゃいますぅ~?」

    モノペン「オマエラ、ボクのことを居酒屋のバイトくんか何かだと勘違いしてない?」

    誓子「あ、それと唐揚げ1つ」

    モノペン「持ってこないし、仮に居酒屋だとしても今頼んだやつ持ってきた時に頼んでよね!」 プンプン

    ドヒューン

    美子「あ、帰った……」

    「……本当に唐揚げ持ってきてくれたらどうしよう……」

    921 = 913 :


    やえ「話を戻そう」

    やえ「大浴場の扉は気が付かなかったな……」

    「普通、そんなじっくり中に入らないしね」

    「まあ、床は濡れてるし、曇ってるし……」

    竜華「確かに実際使う時に見たらいいやってなってもうたな」

    透華「他に何か大浴場の情報で変わったことや他の人が気づいていなさそうなものはありまして?」

    華菜「うーん」

    華菜「一応、ボディソープやシャンプー、リンスは完備されてたし」

    華菜「それとドライヤーなんかも脱衣所にあったな」

    華菜「他にも化粧水とか櫛、歯ブラシに簡単なヘアワックスなんかが置いてあったし!」

    誠子「へえ、ちょっとしたホテルみたい」

    誓子「それも結構な金額がかかるやつね」

    華菜「あ、でもタオルとかは無いから、各自倉庫から持っていくしか無いし!」

    やえ「……なんか近所の銭湯凸報告みたいになってきたな」

    透華「貴重な情報ではありますが……」

    桃子「殺し合い云々で役立つ感じではないっすね」

    922 = 913 :


    透華「他に、誰か何かありまして?」

    透華「特に今話している3階について、まず聞きたいと思うのですが……」

    シーン・・・

    透華「……特にない、ですか」

    「他の談話室は特に普通だったし……」

    「向かいの保健室みたいなとこも、極々普通ではあったなあ~」

    竜華「シーツがあったし、数は把握しといた方がええかもな」

    竜華「ほら、やっぱり確実に洗濯できる機会って少ないやん」

    竜華「でもシーツで返り血を防げば……」

    誠子「そっか、自分自身は無事なんだ」

    「シーツだけなら最悪脱衣所のロッカーに隠せるし、見つかっても服と較べて証拠になり得る情報が少ないからね」

    竜華「ロッカー見て回るほど時間も人員もあらへんし、シーツの数くらい数えといた方がええかもしれんな」

    「でも部屋の掃除は自分達でだし、シーツも部屋のものと交換するかも」

    やえ「とりあえず、持って行った者に名前だけ書いてもらって、実際の数とズレるようなら名前書き忘れてないか聞いて回って……」

    透華「また地道で退屈な作業になりそうですわね……」 ハァ

    923 = 913 :


    桃子「他におかしな所と言えば、やっぱり薬が一個も保健室にはなかったってことっすかね……」

    透華「……」

    竜華「代わりに……薬局? 薬品室? 的な所に山程あってんけどな」

    誠子「あのラベル、本物だったのかな」

    「多分そうちゃいますぅー?」

    「少なくとも栄養剤や風邪薬の類は、成分表示見る限り、皆がよう飲む薬局のアレとちゃんと同じやったで~」

    モノペン「モチのロンだよ」 ニュッ

    葉子「おわっ!?」

    誠子「また出た?!」

    モノペン「失礼なヤツらだなあ、人を不審者みたいに」

    モノペン「ちゃあんと、表示通りのスペシャルなお薬を、ご用意しましたー!!」

    誠子「ってことは、ドクロのラベルが貼られた瓶には――」

    モノペン「勿論、舐めるだけで死ぬようなやっばいやつをご用意してます!」 イヤッホーーーウ

    924 = 913 :


    誓子「な、なめただけで……!?」

    モノペン「まあ、殺そうと思ったら、それなりの量を用意した方がいいとは思うけどね」

    モノペン「殺し損ねでもしたら大変でしょ」

    「……じゃああんな大きな瓶に入れてる必要ないんじゃ……」

    誠子「ちょっとした砂糖瓶とかのサイズだよね、あれ」

    モノペン「まあ、あれ全部なんて明らかにオーバースペックだよね」

    華菜「それを何瓶も用意するなんて、何でそんな無駄なことを……」

    「……」

    智葉「……」

    「……」

    (恐らく――何人かの人は、同じ考えに至ってる……)

    (“毒を盗んだのを気付きにくくするため”)

    (10の内の1盗まれたらパッと見で気づくけど、1000の内1が盗まれるとパッと見では気付きにくいから……)

    (簡単に凶器やらシーツやらは盗めなくはなってるし、薬品室もガラス窓がついてるし、犯行に必要なものを揃えるにはそれなりに工夫しなくちゃいけない)

    (でも――)

    (あの毒薬だけは、盗みやすいって印象にしてあるんだ)

    (そう思わせることで、疑心暗鬼が起こりやすくするために……)

    925 :

    おはよう

    926 = 913 :


    やえ「そ、そうだ、後で皆であの毒を捨てるというのだはどうだ!?」

    葉子「捨てるっつってもよォ……」

    誓子「どこに捨てるの?」

    「あ、焼却炉使う?」

    「まだ鍵は持ってるけど……」

    「いや、燃やして変な煙とか出たらヤバイっしょ……」

    やえ「うっ……た、確かにそうだな……」

    「それやったら、トイレに流したらええんとちゃいますう~?」

    竜華「ああ、それやったらええかもな」

    葉子「便所つまらねー?」

    透華「便器自体はたくさんありますから、仮に詰まっても問題はないでしょう」

    那岐「でもそれやると、便所の水が毒液になるんじゃ……!」

    葉子「いや、飲まないから問題ないっしょ、便所の水は……」

    誓子「でもそれをコップとかに盛られたら最悪よね」

    誓子「……便器の水を飲むって点でも」

    927 = 913 :


    透華「毒はなんとかしなくてはなりませんが……」

    透華「破棄するのは、あまり賛成できませんわね」

    華菜「にゅあ!?」

    やえ「ど、どういうことだ! 説明してくれ透華!」

    透華「まず第一に、毒を0にしてしまった状態で、モノペンが放置してくれるとは思えませんわ」

    「食料品とかも、なくなってる分を補充してるもんね……」

    「どーなの、モノペン」

    モノペン「しょうがないなあ」

    モノペン「お答えしましょう!」

    モノペン「基本的に、薬局の薬は補充されません!」

    華菜「おおっ!」

    「ってことは……」

    透華「……“基本的に”ですわよ」

    モノペン「あらら、目ざといなあ」

    モノペン「いや、この場合、耳ざとい、なのかな?」

    モノペン「確かに、薬はとっても貴重なので、基本的に補充はしませんが……」

    モノペン「さすがに0になったら困るでしょうから、手に入ったらちょーっとだけ、補充しておくよ!」

    「……ちょっとだけ、ね」

    竜華「……それも補充タイミングも不定、みたいな感じやな」

    透華「結局全て破棄しても、こっそり補充された毒を掠め取られないか不安になるだけ」

    透華「それよりも、瓶にテープでもして、取り出せないようにする方が建設的でしてよ」

    透華「……減っていなければ、補充のしようもありませんわよね?」

    モノペン「ぐむむむむむ……」

    モノペン「いいでしょう」

    モノペン「その機転に免じて、毒が0になるまでは、補充をやめておいてあげます」

    モノペン「ボクは優しいからね」

    928 :


    葉子「っつーことは、どうにか毒の瓶を封印すりゃいいのか」

    那岐「テープなら、結構たくさん倉庫にあったぞ!」

    那岐「ふんどしを作ろうとして色々探したから間違いない!」

    「……でも、すでに持って行かれてたら分からないよーな」

    透華「……」

    透華「まあ、当然そう思いますわよね」

    「テープで封じた後なら、テープ剥がされとらんか等で区別つくんやけどなあ」

    竜華「剥がした後で貼り直されたら分かるんちゃう?」

    透華「マジックで瓶とテープをつなぐ線なり絵なりを描けば、違うテープになれば気付けるでしょう」

    透華「綺麗に一発で上から書かれない限りは、ですが……」

    「まあ、失敗したら即バレるし、リスキーではあるわよね」

    透華「そのまま同じテープを貼り直したら粘着が弱まりますからね」

    透華「幸い武器庫も近いですし、定期見まわりでテープを剥がされていないかをチェックすれば、毒を持ちだされていないかは調べられるかと」

    「盲信は出来ないけどね」

    929 = 928 :


    那岐「じゃあ、これで一安心なんだな?」

    那岐「ビクビクしないで好きにモグモグ出来るようになるんだな!?」

    「……どうかしらね」

    那岐「へ?」

    透華「……」

    透華「さっきも行ったように、すでに持って行かれているかは不明ですからね」

    那岐「な、なんだってー!?」

    葉子「……何がどーいう理由でヤベえってなってるか、よくわかってないっしょ」

    那岐「……ばれた?」

    葉子「バレるわ」

    「……ふむ」

    「モノペン」

    モノペン「ん? なんだい?」

    モノペン「まだボクに質問あるの?」

    「……ええ」

    930 = 928 :


    「いくつかあるんだけど、いい?」

    モノペン「どーぞ」

    モノペン「ボクは優しいからね、答えられる分は全部答えてあげるよ」

    「これさ、例えば毒を使った料理を全員に食べさせるとするじゃん」

    「クロ以外が全員死んだらどーなるの?」

    モノペン「ふむ」

    モノペン「ボク達が望むのは、圧倒的な頭脳戦であって、ジェノサイドじゃありません」

    モノペン「なので、この合宿では、同時に殺せるのは2人までとします」

    モノペン「これ規則だから気をつけてね」

    「で、それが禁止されてるとして」

    「例えばうっかり全員殺しちゃった場合、やっぱりクロは処刑ってこと?」

    モノペン「はい、そーです」

    モノペン「校則違反の方が即時適用され、学級裁判を開く前に死亡となるので、終了となります」

    「例えば3人殺した、ってなった場合は?」

    「クロが処刑されて死体が4つの状況で裁判、なんて勘弁してほしいんだけど」

    モノペン「……ふむ」

    「先に校則違反が適用されるなら、裁判はなしにすべきじゃない?」

    「だって、あの法廷のモノペンの席、アタシ達とは違う位置だし」

    「校則違反で死んだ人間のクロがアタシ達にいない、っていうのは卑怯でしょ」

    モノペン「なるほど……」

    モノペン「いいでしょう」

    モノペン「先手を打って、この厄介さを潰そうとした勇気に免じて、その場合の裁判はなしにしてあげましょう!」

    931 = 928 :


    「それはどーも」

    「で、他にもまだあるんだけど」

    モノペン「まだあるの?」

    「共犯についてなんだけど……」

    やえ「っ!」 ギョッ

    葉子「おいおい、ま、まさか……」

    「ンなわけないでしょ」

    「ただ、ルールは知っておかないと、対策も出来ないでしょ」

    モノペン「で、何を聞きたいの」

    「まず、共犯なんだけど……手を下した本人だけがクロになるのよね」

    モノペン「はい、その通りでございます」

    「例えば、2人が協力して、各々殺した場合はどうなるわけ?」

    モノペン「その場合は、それぞれが別の事件として、クロを当ててもらうことになります」

    「同じ事件のように見えてても?」

    モノペン「はい、そーです」

    「……その場合、順番はどーなるわけ?」

    「例えばAとBが手を組んで、先にAをCが、その後BをDが殺したとするじゃない」

    「で、仮にD→Cの順に死体が発見された場合、裁判の順番はどうなるの?」

    モノペン「うーん、そこはまだ考えてないけど……」

    モノペン「関係ある? 順番……」

    「例えば、AとBが手を組んでアリバイを証明し合い、Eをクロに仕立て上げたとするじゃない」

    「別個の裁判でクロは別って名言されてたら、片方はFに罪をかぶせた、でもいいわ」

    「とにかく先にC殺しの裁判があって、皆Eをクロと指摘して間違えたとする」

    「その場合は、Bも処刑されちゃうわけ?」

    「裁判してれば、Bも皆を騙しきっていたはずなのに」

    932 = 928 :


    モノペン「うーん、そうだね」

    モノペン「それだと確かに不公平だし、死んだのが確定したらやる気を出さないかもしれないのも問題だ」

    モノペン「だから、クロが複数いる場合も、裁判と議論自体は1回にします」

    誓子「つまり……どういうこと?」

    モノペン「議論や裁判は一回こっきり」

    モノペン「ただし、投票だけは、各死体ごとにやるってこと!」

    モノペン「勿論、投票をまとめてやるかどうかで複数犯か分かっちゃうのもオモシロくないので……」

    モノペン「死体が複数出た場合は、クロが何人であろうと、死体ごとに投票してもらいます」

    「ちなみに、1人が殺せる上限が2人までなのよね」

    モノペン「はい、そのとーりです」

    モノペン「なので、死体が3つ出てきた場合は、確実にクロが複数人いるとなるのです」

    「例えばさっき言ったケースに加えて、Aが更にFを殺してたとして……」

    「C殺しのクロをAと当てることが出来なかったけど、FはAが殺したと当てた場合は?」

    「その場合、当てられた犯人としてのAと当てられなかった犯人としてのBが同時に――」

    モノペン「ああ、もう、ややこしいなあ!」

    モノペン「そんなレアケースばっかり追い求めないでよね!」

    「その辺先に聞いておかないとなーって」

    モノペン「もう!」

    「ややこしいけど、後から揉めるのはそっちとしても本意じゃないでしょ?」

    「整備されたルールの元で、騙し合ってもらうのが目的だろうし」

    モノペン「もう!」 そりゃあそうだけどさ!

    モノペン「じゃあもう、シンプルに、『クロを完答出来なきゃクロになった人間以外全員おしおき』でいいよもう!」

    モノペン「人殺しをする側にもちょっとくらいアドバンテージをあげなきとね!」

    透華「なっ……」

    竜華「それはつまり、例えAが1つの罪を暴かれても、もう1つを誤魔化しきったらAの勝ちっちゅーことか……!?」

    モノペン「はいそーです」

    モノペン「何なら、その裁判で完答することが条件ですので――」

    モノペン「例えAが2つの罪を完全に当てられても、Bが逃れることができれば、AとBは揃って卒業できるのです!」

    モノペン「そうでもしないと、折角頑張ったBが、ヤケッパチになったAに告発されて興ざめするかもしれないからね」

    「それって、AとBが互いのアリバイを偽造するとか、そういう露骨な共犯関係じゃなくても成立するの?」

    モノペン「はい、そのとーりです」

    モノペン「その辺、カメラで見てるだけのこっちじゃ明確に共犯化までわかりませんから」

    モノペン「一律、裁判単位で、そういう判定を取ります」

    933 = 928 :


    那岐「……つまり、どーいうこと?」

    誓子「なんか良く分からないけど、これ、クロ側がとっても有利なんじゃあ……」

    モノペン「そーですよ」

    モノペン「バレなくするためのハードルは高めですから、このくらいのハンデはね」 ウププププ

    モノペン「ルールもシンプルになったでしょう?」

    「ちなみに、クロが被害者を兼ねてた場合って、どうなるの」

    モノペン「その場合も、投票対象に代わりありません」

    モノペン「例えば、兎さんを虎くんが殺して、その虎くんをドラゴンが殺した場合……」

    モノペン「兎殺しの裁判では虎に」

    モノペン「そして虎殺しの裁判でドラゴンに入れないと、完答失敗とみなされ、シロの皆さんはおしおきをされます」

    華菜「……その場合、死んだタイガーは……」

    モノペン「勿論、死にっぱなしですよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」

    モノペン「死んだ人間は生き返らない。生き返らないんだよ!」

    モノペン「魔法は奇跡じゃないんだよ!!」 ガオーッ

    モノペン「……ま、亡骸くらいはお家に帰れるけどね」

    誠子「あわわわわ……」

    葉子「ど、どーすんだよ!」

    葉子「めちゃくちゃ裁判で不利になるんじゃねーか!?」

    モノペン「さりげなく自分はクロにならないアピールがグッドですね、果物みたいなアタマしてるのに」

    モノペン「まあ、なので、次の裁判は、みなさん是非頑張ってクロの席に座りましょう!」

    竜華「共犯有利、か……」

    透華「これでますます、疑心暗鬼が加速しかねないですわね……」

    「でも、プラスの面もある」

    「え?」

    「……」

    「1人1殺」

    「ここに残ったのは17人」

    「各自1人を殺して、クロ全員が共犯になって、敢えて完答を失敗させれば――」

    「少なくとも、8人はここを出ることが出来る」

    「ッ!」

    華菜「な……!」

    美子「……」

    葉子「!!」

    透華「……ただそれは、確実に9人が命を落とすということを意味していますわ」

    「……まあね」

    「ただ――冷静に、一番多くの命が救われる方法は、それじゃないかって思っただけよ」

    934 = 928 :


    透華「そんな方法……!」

    「わかってるって」

    「アタシだって、積極的にそんなことするつもりはないし」

    「大体これだってある種の理想論」

    「誰か一人でも難色を示されたらおしまい、なし崩し的にバトル・ロワイアルになるもの」

    「そういえば……」

    「事件発生後に誰か殺して、便乗しようとする人とか出てきてまう可能性とかあるんちゃうかな~」

    竜華「さすがにそこまでされるとキリがないし、捜査に集中できへんで」

    透華「すでに十分クロ側有利」

    透華「捜査に集中できず頭脳戦にならないのは、そちらとしても不本意でしょう」

    透華「捜査開始から先の殺人事件は一切禁ずるルールの制定を要求しますわ!」

    モノペン「我儘だなァ、オマエラは……」

    モノペン「まあいいでしょう」

    モノペン「実際そんなことで捜査がグダっても困っちゃうしね」

    モノペン「死体発見アナウンス後の殺人事件は全面禁止!」

    やえ「よし!」

    やえ「共犯有利とは言え、これでぐっと心配事は減るな!」

    モノペン「このルールを破ったらやっぱりおしおきで、その人が殺した被害者は全公開」

    モノペン「他にクロがいるときのみ、学級裁判が始まります」

    モノペン「ですから、殺すなら、その前にしてくださいね!」

    やえ「ちなみに死体が見つからなかったら?」

    「建物全体を手分けして探すんだし、そもそもそんなシチュエーションはまずないと思うけど」

    透華「確かに、アナウンスが鳴って一向に現場に来ないようなら探しますし、最悪全員の部屋くらいは調べますからね」

    那岐「つまり……どういうことなんだ……?」

    誓子「まあ、そんなに深く気にしなくていいんじゃない、多分」

    誠子「完全に推理担当じゃないこと自覚してる顔だ……」

    那岐「私はまだ裁判のMVPを諦めてないぞ!」

    誓子「無理ね」

    葉子「無理だろ」

    誠子「無理だと思うな」

    那岐「えっ、即答?」

    「私も無理かと……」

    「満場一致でしょ」

    智葉「だな」

    那岐「徹底して話に入ってこなかったのにわざわざ来てまで賛同された!!!」

    935 = 928 :


    「あー、あとまだ質問あるんだけど」

    モノペン「またあ?」

    モノペン「最大8人出られることが分かっただけで万々歳じゃなかったの?」

    「まあそれもあったんだけど、とりあえず……」

    「トドメを刺した人間だけがクロになる、って言ってたわよね」

    モノペン「はい」

    「じゃあ例えば、AがBを刺したとして、A逃走後まだ息があるBをCが殺したら、クロはCだけなのよね?」

    モノペン「そーですね」

    「例えばAがBを刺して、ほっといても死ぬ状況で、CがBに刺さってるナイフを更に押し込んで殺した場合は?」

    モノペン「その場合、Cさんがネトゲでいう経験値泥棒みたいな感じで、クロの座を掠め取ったとみなされます」

    「殺意がないCが、ナイフを引き抜いた結果死んじゃった場合は?」

    モノペン「検死の結果、ナイフを抜いたことで、抜かなかった時より死期が早まったとみなされたら、Cがクロになります」

    「あくまで、最後の一押しをした人になるんだ」

    モノペン「正確には、直接の死因に一番近い人物といったとこですかね」

    「でも、被害者本人は基本クロにならないのよね」

    「……例えば毒を飲んだ場合、最終的に毒を口に運ぶのは被害者本人になるけど」

    モノペン「そうですね」

    モノペン「明確な自殺でない限り、それはお膳立てした人間がクロになります」

    モノペン「内面を読み取ることはこっちでも出来ないですからね」

    モノペン「誰かが毒を持ったら、それに気づいて敢えて飲んでいようと、クロは毒を盛った人になります」

    「でも、毒を盛った人物以外が、その毒の入ったものを食べさせた場合、食べさせた人がクロになるってことよね?」

    「放っておけば飲んで死んだかもしれない毒入りのものを、早期に摂取させて殺したってことで」

    モノペン「……そうなりますね」

    誓子「でも、毒入りの物を第三者が食べさせる機会なんてそうそうないんじゃ……」

    那岐「はい、あ~ん、とか……」

    葉子「アホか。誰がやるんだそんなこと」

    「ううん。その『あ~ん』を、皆がやるのよ」

    葉子「…………は?」

    936 = 928 :


    「胡桃が暴走するまで誰も人を殺さなかったし、ただ人を殺したいだけの人はいないわけじゃない?」

    やえ「当然だろう」

    「胡桃先輩にしたって、好きでやったわけじゃ……!」

    「そう」

    「……今後殺人が起きるとしたら、事故、もしくは生きて帰りたいという想いからくる故意の殺人の可能性が非常に高い」

    「事故で毒殺なんて起こるもんじゃないし、毒殺が起こるとすれば、その動機は十中八九生還のため」

    透華「まあ、そうでしょうね」

    竜華「今更ソレ以外の理由で人を殺すって、あんまり考えられへんもんな……」

    竜華「特に、手段が毒殺なんてことになれば、うっかりとか、正当防衛でとかは、考えにくいし」

    「そこで、全員が互いに『あ~ん』したらどう?」

    透華「……なるほど」

    透華「折角毒を仕込んでも、最後の一押しをしてクロになるのは、食べさせた者になる……」

    「これをされると、食べ物に毒を混ぜても、自分がバレずにクロとなり生還する手段にはならない」

    「人を減らす目的には使えてまうような~」

    「うん、だから勿論これだけで絶対安全ってわけじゃないんだけど」

    「でも人が減るってことは、クロ候補が減るってことなわけで、帰りたい人間にとって、無駄に減らすのは得策じゃないはずなのよ」

    透華「そうですわね。食べさせ合いっこ、見た目はアレですが、やる価値はありますわ」

    「まあ、それだけで危険性が減るのなら……」

    桃子「先輩以外とやりたくはないっすけど、命には換えられないっすもんね」

    那岐「よくわからないが、あーんした方がいいってことだな?」

    那岐「本来は孤高の戦士なのだが、仕方ない。食べさせ合いをしてやろう!」

    葉子「くそっ、こっちに入るつもりだぞあいつ!」

    「悪い人じゃないんでしょうけど、あんまり深入りしたくはないですよね……」

    誓子「あつあつおでんなら、あーんしてもいいんじゃない」

    葉子「あー、確かに」

    那岐「私のことをリアクション芸人か何かだと勘違いしてないか?」

    937 = 928 :


    智葉「茶番だな」

    「……」

    「言ってくれるじゃん」

    「こっちは結構色々な情報を引き出しながら、一番有益な毒への心配が減る方法をもたらしたんだけど?」

    「何もしない人に偉そうに言われたくはないかな」

    智葉「確かに、有益なルール詳細の制定は有り難かったな」

    智葉「素直に礼を言うよ、ありがとう」

    智葉「ついでに、お礼としていいことを教えてやる」

    智葉「そんなに毒殺が怖いなら、誰ともつるまないことだ」

    智葉「周りは全員敵」

    智葉「……最初からそう思っていれば、裏切られることもないし、油断して寝首をかかれることもない」

    「ご忠告どーも」

    「あんまり孤立して襲われなきゃいいけどね?」

    智葉「要らぬ心配だな」

    智葉「……この場の全員で襲いかかられても、切り抜けられるであろう技量はあるつもりだ」

    智葉「そう易易とやられはしないさ」 スタスタスタ

    ガチャ

    「……」 チッ

    「何あれ。感じ悪いし、どっかおかしいんじゃないの」

    「ま、まあまあ……」

    ちゃちゃのん「……」

    ちゃちゃのん「…………じゃ」

    「……え?」

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんに言わせれば、憧ちゃんも、辻垣内さんも、他の皆も、全員一緒じゃ」

    938 = 928 :


    「……なにそれ」 ムスッ

    ちゃちゃのん「何で、そんなに殺し合いのルールなんて詰めようとしちょるの」

    ちゃちゃのん「何で、こんなおかしなルールに適応しようとなんてしちょるの」

    ちゃちゃのん「おかしいじゃろ、そんなの!」

    ちゃちゃのん「こんな……こんなふざけたこと、納得したらいかんじゃろ!」

    ちゃちゃのん「ましてや、誰かが死ぬ前提で、裁判で生き残る前提で話すなんて!」

    「……あのね」

    「現に殺人事件は起きたし、裁判も起きた」

    「アタシだってこんなルール認めたくはないけど、現実として受け入れなきゃ死ぬだけなのよ」

    ちゃちゃのん「……」

    ちゃちゃのん「そんなの、分かっちょるよ……」

    ちゃちゃのん「でもやっぱり、こんなのちゃちゃのんはイヤじゃ……!」

    ちゃちゃのん「もう誰も、死んでほしくないし、殺しとうない!」

    透華「お、落ちついて下さいまし!」

    透華「もうあんなことが起こらないようにと、考えたくもないケースを想定させ、ルールを――」

    「……ん~?」

    「っていうか、殺したくない……って……」

    ちゃちゃのん「……殺したような、もんじゃけえ」

    「え?」

    ちゃちゃのん「胡桃ちゃんは、ちゃちゃのんや皆が殺したようなもんじゃけえ!!」

    939 = 928 :


    「……ッ!」

    「あ、あれは……しょうがないでしょ……!」

    「ああしなきゃ、アタシたちが死んでたんだから!」

    華菜「そ、そーだし!」

    やえ「……あれは、やむを得なかったんだ」

    誓子「そうよ……あんまり自分を責めちゃダメよ……」

    透華「ええ……あれは、誰のせいでもありません」

    透華「強いて言うなら、そこの忌々しいクソペンギンのせいですわ!」

    モノペン「うきゅ?」 キョトーン

    モノペン「なーに言ってんのさ!」

    モノペン「処刑投票を行ったのは、オマエラでしょ!」

    モノペン「ちゃあんとその責任は、オマエラ自身がとらないと!」

    モノペン「何でもかんでもボクのせいにしないでよね、もう!」 プンプン

    モノペン「いいかい、よーく覚えておけよ」

    モノペン「人が人を裁くっていうのは、大きな責任が伴う行為なんだ……!」

    「……っ」 ゴクリ

    940 = 928 :


    透華「どれだけ何を言おうと無駄ですわ」

    透華「全ては貴女の責任」

    透華「私の中の全ての怒りは貴女単独で向いています」

    透華「鹿倉胡桃のことも、愛宕洋榎のことも」

    透華「裁判で私達が投票をするはめになったことも、こうして今争っていることも」

    透華「そしてもちろん、浅見花子のことも」

    透華「全ては貴女の責任ですし、私はそれら全ての怒りをただただ貴女に向けるだけですわッ!」

    モノペン「ふぅん」

    モノペン「噛ませ犬みたいな顔して、大した熱血漢だよ全く」

    モノペン「……ちなみに……」

    モノペン「そんな龍門渕サンや皆は知ってるのかな?」

    誓子「え?」

    モノペン「この前の学級裁判で、2人だけ、投票を間違えた人がいます!」

    那岐「あ、私だけじゃなかった! ほら! 私だけじゃなかった!」

    葉子「やかましい! はしゃぐなっての!」

    モノペン「まあ、一人はそこではしゃいでいるお笑い枠」

    那岐「言われてるぞ」

    葉子「オメーだよ!!!」

    モノペン「そしてもう一人はァ、そう、勿論佐々野いちごサンなのです!!」

    モノペン「何とカノジョは、自分に投票していたのでーす!」

    ちゃちゃのん「……」

    モノペン「大事な友だちを殺せないという、感動的な想いの現れですねえ……うっうっうっ」 ブワッ

    モノペン「……なーんて言うと思ったら大間違いだよ!!」 ガオーッ

    モノペン「皆さんは、自分の命押しさに、鹿倉胡桃サンを処刑台に送り殺しました」

    「……」

    モノペン「でも、佐々野いちごさんだけは、違ったのです」

    モノペン「オマエラ全員を殺してでも、鹿倉胡桃サンを助けようとした――」

    モノペン「それが、あの投票結果の真実だよ」

    941 = 928 :


    ちゃちゃのん「そ、そんな……つもりじゃ……」

    モノペン「うぷぷぷぷ」

    モノペン「本当にオマエラは我儘で言い訳ばっかりだよね」

    モノペン「いい加減認めちまいなよ」

    モノペン「可愛いのは自分と一部の人間だけ……ってさ!」

    透華「このっ……!」

    モノペン「ギャハハハハ!」

    モノペン「それじゃあもう質問もないみたいだし、ボクは帰るよ!」

    モノペン「それじゃ、まったねー!!」

    透華「くっ……!」

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは……もう、あんな……」

    ちゃちゃのん「誰も、殺したくなかっただけで……」 ブツブツ

    「……」

    (さっきまで、僅かに明るい空気を取り戻しつつあったというのに、すっかり空気は沈んでいた)

    (下手をすると、今日一じゃないかというくらいに、ずっしりと、重たい空気が流れている)

    942 = 928 :


    (それからしばらく、誰も何も口を開かなかった)

    (龍門渕さんや、あの新免先輩ですら、何と言葉を口にしていいか分からないでいた)

    「……ご飯食べ終わったし、行くわよ」

    透華「……どこに、ですの?」

    「……毒にテープ貼るんでしょ?」

    「人員は多いほうがいいだろうし、夜もふける前に、さ」

    (沈黙を破ったのは、建設的な意見だった)

    (最もソレは、決して気持ちのいい話題ではなかったけれども)

    (とにかく、龍門渕さん達につれられて、何人もの人が食堂を出て行く)

    (付いていこうとして――やめた)

    (ついていく気はあったのだが、どうしても足が動かなかった)

    (憂鬱だ)

    (特にささのん先輩を見ていると、悪夢でも見るんじゃないかってくらい、憂鬱な気持ちになれた)

    943 = 928 :


    <自室>

    (結局、手伝わずに戻ってきてしまった)

    (……こんなので、明日からも、やっていけるのかな……)

    「…………」

    (ささのん先輩の言葉が、アタマの中でぐるぐると回っている)

    (確かに、私達は、命押しさに胡桃先輩を死に追いやったのかもしれない)

    (皆の一票が胡桃先輩を処刑台送りにしたのだ)

    (でも――私だけは、少し違う)

    (真相を暴いて、処刑台に足をかけさせたのは、間違いなく――――)

    「……」

    (……今は、とにかく眠ろう)

    (よくない考えに、アタマが支配されないように――――)




    【Day6 END】

    944 = 928 :


    【Day7】

    キーン、コーン……カーン、コーン

    モノペン『オマエラ、おはようございます!』

    モノペン『朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

    モノペン『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』

    「ん……朝か……」

    (……もう、洋榎先輩達が迎えにきてくれることは……)

    「……」

    「いけないいけない」

    「ここで沈んでてもしょうがないもんね」

    「顔を洗って、準備をしなきゃ……」

    945 = 928 :


    「……」

    「今日から、あーんで朝食を取るんだよね……」

    「……」

    「朝ごはん、一応自分達で作るべきなのかな……」

    「毒だって絶対安全ではないし……」

    「……」

    「うう、一人でいると、なんだか落ち着かないよ……」

    「洋榎先輩達がそうしたように、誰かを迎えにいって、一緒に食堂にでも行こうかな……」


    食堂に誘う相手 >>947
    (なし・一人で行く等も可。安価で取れるのは1名のみ)

    946 :

    踏み台安価下

    947 :

    辻垣内智葉

    948 :

    誰かいるやろうと皮算用して投下します
    980くらいまでいったら次スレ立ててこようかなと思います

    949 = 948 :


    (辻垣内先輩……)

    (誘わないと、朝食会にも来てくれなさそうだもんね……)

    「……」

    「うう……緊張するよぉ……」

    (でも……)

    (洋榎先輩も胡桃先輩も、こんな緊張を乗り越えて、私に声をかけてくれたんだよね……)

    「……うん」

    「頑張らなくちゃ」

    「いってきます――!」

    こけし「ヴヴヴヴヴヴヴ」

    950 = 948 :


    <辻垣内の個室前>

    「……」

    ピンポーン

    「……」

    (まだちょっと早いよね……)

    (朝食会までも時間あるし、実際ほとんど皆廊下に出てきてないし……)

    (早い人はもっと遥かに早いんだろうけど……)

    ピンポーン

    ピンポーン

    (寝てたら申し訳ないけど、何度か押して見なくちゃ)

    (洋榎先輩の連打に慣れてるせいで、単発だとどうも違和感があるし……)

    (それに一回だと、身支度中ですぐ出られない時、相手がもう居なくなったかと思っちゃうだろうしね)

    ピンポーン

    ピンポーン

    ピンポーン

    ピンポーン


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