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    元スレ咲「リンシャンロンパ」 洋榎「希望の雀卓と絶望の高校生雀士」

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    701 = 700 :


    胡桃「…………ッ!」

    那岐「え、なに、どーいうこと……?」

    「……愛宕洋榎の死体にすがりついていたのは、皆見てる」

    「それで血がついたんだろうって思ってたけど――」

    智葉「あの中には返り血も含まれていた、ということだ」

    那岐「……」 ウーン

    那岐「そ、そうか、アイツ、返り血を浴びたまま処分せず、堂々と今ここにいるのか……!」

    「だからそう言ってるでしょ……」

    ちゃちゃのん「な、なに言うちょるんじゃ!」

    ちゃちゃのん「い、今までだって、犯人候補かと思ってた人が犯人じゃないなんていっぱいあったじゃろ!」

    誓子「……それは、そうだけど……」

    「もし、胡桃先輩では不可能な証拠があったり……」

    「他に犯行が可能な人がいるなら、遠慮せず言ってください」

    「私だって……」

    「そのほうが、いいんです……」

    703 = 700 :


    ちゃちゃのん「だ、大体、2人の関係はちゃちゃのんが傍で見ちょったけえ!」

    ちゃちゃのん「胡桃ちゃんが、ヒロちゃんを殺すわけなんて……!」

    「でも逆に、そんだけ仲良かったんだから、刺されてなお密室作ってあげたってのにしっくりくるじゃない」

    誓子「確かに……」

    透華「鹿倉胡桃を庇って――確かに他の方よりしっくりきやすくはありますね」

    胡桃「……」

    胡桃「庇って……か……」 ポツリ

    ちゃちゃのん「だ、大体そんなの言いがかりじゃ!」

    ちゃちゃのん「ヒロちゃんなら、他の誰を庇ったっておかしくないけえ!」

    ちゃちゃのん「それこそ新免さんだって庇うような人じゃ!」

    那岐「……ん? ひょっとして今馬鹿にされた?」

    「そーいうのだけは鋭いんですね……」

    「ま、なんにせよ……」

    「誰が何と言おうと、容疑者が認めたらソレで終わり」

    「……胡桃自身は、何か反論ある?」

    胡桃「反論……」

    胡桃「……」 ギリッ

    胡桃「……あるよ」

    胡桃「あるある!!」




    704 = 700 :


    「ありゃ、まだ足掻くか……」

    智葉「……ま、聞いてみようじゃないか」

    胡桃「洋榎の分まで生きなきゃいけないんだ……」

    胡桃「間違った推理に殺されるわけにはいかない……!」 ギリッ

    「また分かりやすい追い込まれ方だこと」

    「まるで金田一に追い込まれた時の真犯人だけど……」

    胡桃「うるさいそこ!」

    胡桃「さっきもドヤ顔で犯人間違えたでしょ!!」

    胡桃「黙ってて!」

    「んなっ……!」

    胡桃「今回も……」

    胡桃「今回も間違いだって証明する……!」

    「胡桃先輩……」

    (勿論、胡桃先輩の反論が妥当なら、それが一番いい)

    (でも――)

    (でももし、それが矛盾のある発言だったら……)

    (何も、言わないわけには……っ!)

    705 :

    ちゃちゃのんが本人以上に胡桃ちゃんのことを庇ってくれるの、見ててほんと胸が痛む

    706 :

    ダンガンとの違いは苗木くんと違って咲ちゃんがかなり空気なこと
    でも面白いし、かなり雰囲気でてるね

    707 :


    胡桃「そもそもさ……」

    胡桃「私は《ちゃちゃちゃんと一緒に洋榎に呼び出されてた》んだよ」

    誓子「え、そーなの!?」

    胡桃「そう」

    胡桃「さっき取り調べの時にそう言ったよね!?」

    透華「確かに……」

    透華「《愛宕洋榎に呼び出されたと証言している》のを私も聞いていますわ」

    胡桃「先に言っておくけど……」

    胡桃「確かに私は細かいことを気にするし、早めに待ち合わせに行くこともあるよ」

    胡桃「でもせいぜいが5分かそこら」

    胡桃「つまり、《1時に呼び出された場合、武器庫についた時点で洋榎はすでに武器庫に来ている》んだよ……!」

    透華「確かに、愛宕洋榎は45分からの担当……」

    ちゃちゃのん「ほ、ほうじゃ!」

    ちゃちゃのん「ヒロちゃんより先に犯人が来てて、ナイフ取ったっちゅーさっきまでの大前提と矛盾するけぇ!」

    ちゃちゃのん「じゃけん、胡桃ちゃんは犯人じゃなか!」

    「胡桃だったら洋榎も心許しただろうし、一緒に武器庫に居てナイフ取ることは出来たでしょ」

    胡桃「計画殺人だったらそうかもしれないけど……」

    胡桃「でも、後からちゃちゃちゃんが来ると分かってるのに、そもそもナイフなんて手にするわけないじゃん……!」

    胡桃「計画殺人なら、尚更もっと上手くやるんじゃないかな?」

    胡桃「だって《辻垣内さんとかが窓より私の体に注目してたら終わりだった》んだよ!?」

    胡桃「ランドリーにいた安河内さんがあまりに危険な賭けすぎるからほぼシロって言うなら……」

    胡桃「私だって同じ理屈でシロのはずだよ!!」

    708 = 707 :


    《ちゃちゃちゃんと一緒に洋榎に呼び出されてた》 ← 【佐々野いちごの証言】



    「それは違うと思います……」

    胡桃「……ッ!」

    「確かに――ささのん先輩は呼びだされた、と証言してました」

    「でも――」

    回想ちゃちゃのん『1時に武器庫来てくれーって』

    回想胡桃『……え?』

    回想誠子『ん? どうかしたの?』

    回想胡桃『ううん……ただ、私も洋榎に呼ばれてたから……』

    「あの時、胡桃先輩、ささのん先輩も呼び出されてること、知りませんでしたよね」

    胡桃「……!」

    「確かに、2人とも呼びだされていたのかもしれません」

    「けど――」

    「少なくとも、“一緒に声をかけられた”わけじゃありませんよね」

    胡桃「こ、言葉のアヤみたいなものだし……」

    「……そういう意味の“一緒に”じゃなかった、とは言わないんですね……」

    胡桃「……っ!」 ギリッ

    ちゃちゃのん「だ、大体2人ともが呼び出されたのが事実なら、そこに大きな違いは……」

    「ありますよ……」

    「だって、今の胡桃先輩の反論は、後からささのん先輩が来るとわかっている前提だったんですから……」

    709 = 707 :


    胡桃「だ、だとしても!」

    胡桃「私が犯人で、なおかつ他に呼び出されてる人がいなかった場合……」

    胡桃「普通、武器庫に入って用件は何か切りだすよね?」

    胡桃「そうじゃなくても、いきなりナイフに近づくことなんてないし、したらさすがに洋榎も止めるよ」

    胡桃「それに、用件聞いたら、多分ちゃちゃちゃん来ること洋榎の口から聞けるよね!?」

    胡桃「じゃあやっぱり、私の犯行も相当難しいって言えない!?」

    ちゃちゃのん「ほ、ほうじゃほうじゃ!!」

    ちゃちゃのん「そんなギリギリで難しいことするなんて、ありえんけぇ!」

    「……」

    (確かに、二人とも1時に呼び出されてた場合、犯行するのは無理があるかもしれない)

    (でも、なんだろう……)

    (もうちょっとで、何かをひらめきそうな気がする……)



    う じ む し が ち か ん

    ○○○が○○○

    710 :

    ひどいアナグラムだなぁwwww

    711 :

    めっちゃシリアスなとこなのに蛆虫wwww

    712 :

    一度「蛆虫が痴漢」に見えるとそれ以外の単語が出てこなくなるwwww

    713 :

    じかんがちがう

    714 = 707 :


    じかんがちがう



    (これだ……!)

    「確かに、お二人の言う通り……」

    「2人が1時に呼び出されてたら、犯行は厳しいと思います」

    ちゃちゃのん「じゃ、じゃろ!?」

    「でも……」

    「本当に、お二人が呼び出された時間って、同じだったんでしょうか」

    胡桃「ッ!!」

    ちゃちゃのん「な、なにを……」

    「……」

    「洋榎先輩は、落ち込んでいるお二人を慰めようとしてたんだとは思います」

    「でも……」

    「付き合いが長く、参ってる胡桃先輩の方に、ちょっとだけ多く力を割いたんじゃないでしょうか」

    「ささのん先輩は友達がいれば安心するんじゃないか、と考えたとしたら」

    「先に胡桃先輩を励まして、そのまま2人で励ます方がささのん先輩には効果があると思ったのかもしれませんし」

    ちゃちゃのん「そ、そんなの全部言いがかりじゃ……」

    透華「ああ、それで、45分に交代だったんですのね」

    「……はい」

    「1時交代にせず、45分交代で押し通した理由」

    「それは、45分には胡桃先輩が来ると分かっていたからじゃないですか?」

    胡桃「う、ぐぐっ……!」

    715 = 707 :


    「もし45分に呼び出されていたのだとしたら、5分前行動として武器庫につくのは12時40分」

    智葉「愛宕洋榎が時間ギリギリに来たと仮定すると、単身武器庫に居る時間がある」

    智葉「……当初の推理にも反しないな」

    胡桃「~~~~っ……!」

    ちゃちゃのん「そ、そんなの言いがかりじゃ!!」

    ちゃちゃのん「た、確かにヒロちゃんにとっちゃ、ちゃちゃのんより胡桃ちゃんの方がウエイトは大きいかもしれん……」

    ちゃちゃのん「でもだからこそ、そんなヒロちゃんを胡桃ちゃんが殺すなんてこと、ありえないんじゃ!!!」

    ちゃちゃのん「大体、胡桃ちゃんだけ先に呼び出したっちゅーのも、咲ちゃんの思い込み、言いがかりじゃ!!」

    胡桃「……そ、そうだよ!」

    胡桃「根拠はあるの、根拠は!?」

    「根拠は……」

    (ある……)

    (おそらくあれが、根拠になるはず――――)

    716 = 707 :


    【割れたガラス片と一輪の薔薇】



    (これだ……!)

    「ポケットに入ってた、割れたガラス片と一輪の薔薇ですよ……」

    胡桃「……!?」

    「多分……胡桃先輩も気付いてないんじゃないですか……?」

    やえ「確かに、ポケットで割れていた……」

    やえ「密室トリックに使ったわけでもなく、最初から愛宕洋榎が持ち込んでいたものなら気づかないのも無理はない」

    智葉「……おそらく、無理矢理扉を開ける際に死体が倒れ、そこで割れたんだろう」

    竜華「あれ、結局なんやったん?」

    竜華「指切ったし……何であないに危ないもんを……」

    「……桧森先輩は……」

    「これが何かわかりますよね?」

    誓子「この写真……」

    誓子「あ!!」

    誓子「洋榎に売った、ビトロ・イン・ローズ!?」

    「イン・ビトロ・ローズだったような……」

    葉子「どっちゃでもいーんだよ!」

    葉子「何なんだそりゃ!」

    誓子「ええっと、ガチャから出てくるアイテムで……」

    誓子「試験官に入った綺麗な薔薇の贈り物よ」

    誓子「すごくプレゼントに喜ばれるみたい」

    「……そしてそれを、洋榎先輩に売ったんですよね」

    誓子「うん」

    誓子「咲ちゃんにも売って、残り1つしかなかったけど、どーしてもって言うから」

    誓子「コンプからは遠ざかっちゃうけど、売ってあげたの」

    717 = 707 :


    胡桃「……」

    ちゃちゃのん「そ、それが一体なんじゃって言うんじゃ!」

    「……」

    「本来、ダブってないものは売るつもりなかったんですよね」

    誓子「うん」

    「ってことは、部屋まで取りに戻ったんですか?」

    誓子「そーだけど……」

    ちゃちゃのん「じゃ、じゃあ、その間にトラッシュルームを掃除当番が……!」

    誓子「ああ、それはないって」

    誓子「だって洋榎に売ったの、犯行よりも結構前の時間だし」

    「ですよね」

    「さすがに桧森先輩でも、犯行時間とされる間に離席してたなら言うはずです」

    「大事なのはそこでなく、むしろ売ったのは随分前ということにあります」

    ちゃちゃのん「そ、それは一体どういうことじゃ!?」

    誓子「私にもさっぱり……説明して咲ちゃん!」

    「つまり……洋榎先輩は、武器庫に行く前に、自分の部屋にイン・ビトロ・ローズを置く暇があったんです」

    「割れたら危ないし、結構な料のメダルをかけたものですよ」

    「普通は、部屋に置いておきますよね」

    那岐「確かに、割れて危ないようなものは持ち歩きたくないよな」 ウンウン

    葉子「腰からもっと直接的にアブねーもんをぶら下げてるだろ……!」

    「持ち歩くとしたら、理由は一つ」

    「それを、使う予定が――」

    「つまり、渡す予定があったからじゃないんですか」

    718 = 707 :


    胡桃「洋榎が……?」

    「はい」

    「生憎、私が買ってしまったせいで、あのプレゼントは一種類しか手に入らなかった……」

    「メダルの有用性を思うと全部使うわけにもいかないと考えたのかもしれませんし……」

    「とにかく、洋榎先輩は一つしか用意できなかった」

    「プレゼントが一つしかない状況で、2人を同時に呼び出すと思いますか?」

    胡桃「……」

    「胡桃先輩!」

    胡桃「……」

    「洋榎先輩は……」

    「最期に、胡桃先輩を思っていたんだと想います」

    「だから、密室をつくった……」

    「でも決して、胡桃先輩に他の皆を殺してほしいなんて思ってるわけがありません!」

    「きっと、自分で最後に――って、思ったはずです」

    「私だって……」

    「和ちゃんに手なんて染めてほしくないから」

    胡桃「う、うううう……」

    「……」

    「最後に……」

    「今回の事件を振り返って、まとめて――」

    「終わらせましょう……この、辛い裁判を……」

    719 = 707 :


    「最初から、事件を振り返ります」



    <Act1>

    「まず、洋榎先輩は桧森先輩からイン・ビトロ・ローズを買いました」

    「その後、洋榎先輩は2人の人物を武器庫に誘った」

    「でも、プレゼントは1つしかない」

    「だから時間をズラして、見張り交代する予定の12時45分に犯人を、そして1時にささのん先輩を呼び出したんです」


    <Act2>

    「45分に呼び出された犯人は、洋榎先輩より先に武器庫に来ていた」

    「そして……待っている間に、ナイフを手にした」

    「ナイフ盗難騒動もあったし、多分、色々怖くて手にとっちゃった、程度じゃないかと思います」

    「そして――ナイフを手にしているときに、洋榎先輩がやってきてしまった」


    <Act3>

    「そこでどんなやり取りがあったのかまで、私にはわからないけど……とにかく悲劇は起こってしまった……」

    「スペツナズナイフの刃が、洋榎先輩に向かって射出されてしまったんです」

    「死を前にして洋榎先輩が想ったのは……今目の前で自分を刺してしまった犯人のことでした」

    「事件後の犯人の様子からすると、洋榎先輩が力を振り絞って、犯人を部屋から追い出したのかもしれません」

    「そして、犯人から奪ったスペツナズナイフの柄を握り、扉を背に座り込むことで、密室を作り上げた」

    「全ては、犯人をこの狂った合宿から出してあげるために」


    <Act4>

    「一方部屋を追い出された犯人は、必死でドアに縋り付き、洋榎先輩の名を叫んだ」

    「きっと犯人は、部屋を追い出されてから、自分がしてしまったことにようやく実感が沸いたんだと思います」

    「そしてその必死な声を聞いて人が集まり、密室だったドアは開け放たれた」

    「犯人は必死に縋り付いたけど……残念ながら、死体発見アナウンスが鳴ったんです」

    「犯人は亡骸を抱きしめて、ずっと泣いていた……」

    「だから、服に付いた血はその時のものであると、皆信じて疑わなかったんです」

    「誰一人、ランドリーやトラッシュルームを使えない状況だったのに……」



    「そうですよね――――胡桃先輩!」

    720 = 707 :


    胡桃「う、うううううう……!」

    胡桃「洋榎……」 ペタン

    胡桃「洋……榎……」 ポロポロ

    「……」

    智葉「……終わったな」

    ちゃちゃのん「……」

    ちゃちゃのん「終わった……?」

    ちゃちゃのん「何が……何が終わったんじゃっ!」 クワッ

    「え……」

    誓子「そりゃあ、学級裁判が……」

    ちゃちゃのん「認めん!」

    ちゃちゃのん「そんなのは認めんけぇ!」

    ちゃちゃのん「大体……そんなの全部推測に過ぎないけぇ!!」

    「ま、そりゃそーだけど、せめて推理って言ってあげたら」

    智葉「……例え推測でも、説得力があり多数決で勝てばそこがクロになる」

    智葉「そういうルールだ、この裁判は」

    721 = 707 :


    ちゃちゃのん「そんなのおかしいじゃろ!!」

    ちゃちゃのん「証拠……証拠は!?」

    ちゃちゃのん「証拠がなきゃちゃちゃのんは認めんけぇ!!」

    竜華「せやけど他に実行可能な奴がおらん以上は……」

    ちゃちゃのん「そんなの……そんなのもっと考えたら浮かぶかもしれへんじゃろ!」

    ちゃちゃのん「それに、ほら……」

    ちゃちゃのん「ヒロちゃんの血なら、ちゃちゃのんにだって!!」

    「せやけど……おしりの部分と袖口やんなあ……」

    透華「腰を抜かしたように座り込んでいたから、そこにだけ付いたのでしょう」

    透華「……返り血のつくような位置ではありませんわ」

    ちゃちゃのん「誰か……誰か他になにかない!?」

    ちゃちゃのん「こ、このままじゃ、答え間違えて皆死刑じゃ!!」

    ちゃちゃのん「誰でも良い……」

    ちゃちゃのん「思考を止めないで、誰か――」

    「ささのん先輩……」

    722 = 710 :

    あぁちゃちゃのん……

    723 :

    ああこの辛さ1の2章を思い出すわ…

    724 = 707 :


    葉子「んなこと言ったってなァ……」

    華菜「これ以上説得力ありそうな推理なんて何も――」

    那岐「私くらいにしか出せぬだろうな」

    誓子「悪いこと言わないから、多分黙っていた方が……」

    ちゃちゃのん「な、なんじゃ!?」

    ちゃちゃのん「何でもいいから、言ってみて――!」

    那岐「いや、さっき真剣に嘆いたからって発言の時、思い至った推理なのだが……」

    那岐「例えば真剣に嘆き大量の涙を流したとしよう」

    那岐「その涙を使えば、ランドリーどころか水道を使わずとも返り血を洗い流せるのではないか!?」

    葉子「ま、マジで言ってんのか、お前……」

    ちゃちゃのん「あ、あはっ!」

    ちゃちゃのん「ほ、ほら、他にも方法はあったけぇ!」

    ちゃちゃのん「これだけで胡桃ちゃんを犯人呼ばわりするわけには――」

    誓子「いい!?」

    葉子「あ、あの馬鹿の話を真に受けるって……!」

    「……」

    (駄目だ……ささのん先輩は、今話が通じない状態……)

    (でも……受け入れてもらわなきゃいけない……)

    (何でもいい……ささのん先輩に、胡桃先輩しかないと思わせる何かがあれば……)

    (洋榎先輩と胡桃先輩、そしてささのん先輩――)

    (三人が仲良くしてるのを見てたから、信じたくない気持ちはわかるけど)

    (だからこそ――このまま逃避して最後のお別れをするなんて、絶対にだめ……!)

    (辛いけど……向き合ってもらわないと……)

    (そして、それは……)

    (洋榎先輩達と朝食を共にし、良くしてもらった私の役目……!)

    725 = 707 :


    ちゃちゃのん「証拠は……証拠はあるんか!?」

    ちゃちゃのん「胡桃ちゃんがヒロちゃんを殺すわけが……!」

    ちゃちゃのん「そんなの絶対おかしいよ……!」

    ちゃちゃのん「その推理は決定的に間違っちょる!!」

    ちゃちゃのん「信じないけぇ!」

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは胡桃ちゃんのお友達じゃ! 胡桃ちゃんを信じる!」

    ちゃちゃのん「全部でっち上げに決まっちょろう!!」

    ちゃちゃのん「嘘じゃッ!!」

    ちゃちゃのん「認めないけぇ!」

    ちゃちゃのん「大体可能性なら、ランドリーにいた安河内さんにだって……」

    ちゃちゃのん「そもそも! 証拠不十分じゃ!」

    ちゃちゃのん「証拠はあるんかいのう!?」

    ちゃちゃのん「《胡桃ちゃん以外ありえへんっちゅー証拠は!?》」

    726 = 707 :


    《胡桃ちゃん以外ありえへんっちゅー証拠は!?》 ← 【武器庫の小窓】



    「胡桃先輩しかないっていう、根拠ならあります」

    ちゃちゃのん「…………は?」

    「正確には、胡桃先輩がクロじゃないと説明がつかないこと、ですけど」

    誓子「それって……」

    「さっき、身長の話が出た時に、引っかかったんです」

    那岐「身長の話……」

    那岐「むっ、もしや私がMVP……!?」

    葉子「ちょっと黙ってろって」

    「あの小窓……顔の、結構高い位置についてますよね」

    「男子ならともかく……女子には少し、中が覗きにくい位置に」

    智葉「ああ、確かに」

    智葉「死体を見るには、小窓の上から覗きこまねばいけなかったから苦労した」

    智葉「体の一部ならまだ見やすいが、きちんと全体像を把握しようと思うと伸びもしなくちゃいけない」

    竜華「確かに……ガラスや扉の厚みがあるし、実際窓から壁際見ようとしても、なかなか直下の部分って見えへんもんな」

    誓子「私はまだ160あるから何とか見れたけど、他の2人は大変だったんじゃ……」

    「……確かに、ささのん先輩は大変だったと思います」

    「辻垣内先輩の身長で、ようやく窓の上から覗き込める程の高さですから」

    「じゃあ一体辻垣内先輩よりも30センチ以上小さい胡桃先輩は、どうやってここを覗き込み、倒れているのが洋榎先輩だと知ったんですか?」

    727 = 707 :


    ちゃちゃのん「そ、それは……」

    ちゃちゃのん「そ、そうじゃ、ジャンプとかすれば余裕で……!」

    ちゃちゃのん「そうじゃ、胡桃ちゃん、ああ見えて身体能力は高いかもしれへんじゃろ!」

    「……確かにそうですね」

    「ジャンプで小窓を覗くことについては、すでに胡桃先輩自身が言ってくれてます」

    「最初にチームを分けて探索して、結果を報告し合った時に――」

    洋榎『どこぞのオチビさんが上手く覗かれへんやったやつやな』

    回想胡桃『うるさいそこ!!』

    回想胡桃『ジャンプしたら覗けるから!!』

    「胡桃先輩は、ジャンプしてようやく小窓を覗けるレベルだったんじゃないですか」

    「もし余裕で上から覗き込める跳躍力を誇るなら、多分そこを広げてもうちょっと洋榎先輩と漫談してましたから」

    「それは、私よりささのん先輩の方が詳しく知ってますよね……」

    「だってあの探索に、中堅として同行してたんですから……」

    「確かに、ひょろっちい体格相当のジャンプだったし、中見るだけで精一杯って感じだったかな」

    「しかも、胡桃先輩は、他の人とは違います」

    「他の人は、すでに胡桃先輩が騒いでるのを聞いていた」

    「だから洋榎先輩が倒れている、という事実を確認するだけでよかった」

    「でも胡桃先輩は、誰か分からない“ドアを塞いでいるもの”の正体を確認しなくちゃいけない」

    「血を目撃して“何かが起きてる”ことは確認できても、それが“洋榎先輩の流したもの”と理解するのは難しいんですよ」

    ちゃちゃのん「そ、それは、呼び出した人物が中に倒れちょるんじゃないかって心配するのは当然のことで……」

    「もし本当に1時に呼び出されてるとしたら、中にいるのは龍門渕さんか小走先輩の可能性が頭を掠めるはずなんです」

    「だって……いつも武器庫で番をしてるのは龍門渕さんだし、そのお手伝いをしているのは小走先輩だったんだから」

    「ついでに言うと、先に洋榎が来てるって考えるのも不自然よね」

    「だって相手を待たせないために早めに行動してた、ってことでしょ」

    「普通は交代するとしても1時間単位だと思うし、ここで洋榎一人が見張りをしてるって事前に聞いてない限りは、中に居る人の候補は複数いるはず」

    智葉「そもそも、あれだけの嘆きの声を演技で出せるとは思わんな」

    智葉「……死んでいるか、死にそうだという確信はあったのだろう」

    「……もし仮に胡桃先輩が犯人じゃない場合、扉を塞いでいるのが出血した洋榎先輩の体と知るのは無理があるんですよ」

    728 = 707 :


    ちゃちゃのん「う、ぐ……」

    ちゃちゃのん「で、でも、120%不可能というわけじゃ……」

    胡桃「……もう、いいよ」

    ちゃちゃのん「……胡桃ちゃん……?」

    胡桃「……ごめんね、ちゃちゃちゃん……」

    ちゃちゃのん「な、何を……」

    ちゃちゃのん「な、なんで謝るんじゃ……」

    ちゃちゃのん「そういうのは、裁判を一緒に乗り越えたあとで……」

    ちゃちゃのん「それも、ごめんじゃなくて、ありがとうって――――」

    胡桃「……ごめんね、咲ちゃん、皆」

    ちゃちゃのん「な、なにを……」

    胡桃「もう……言い逃れも出来そうにないし」

    胡桃「……投票、始めよっか」

    729 :

    >>723
    それはおかしい
    アポは滑稽だったしバターも自業自得感があるから、犯人庇うちゃちゃのんとは違うだろ

    730 = 707 :


    ちゃちゃのん「ま、待って……」 グスッ

    モノペン「うぷぷぷぷ」

    モノペン「それじゃあ、建設的議論も終了したみたいですので」

    モノペン「お待ちかねの、投票タイム~!!」

    ちゃちゃのん「待ってってば!」

    モノペン「お手元のスイッチが反応するようになってますので、クロだと思う人に投票してください」

    那岐「あ、ランプ光った」 ポチ

    モノペン「ちなみに光った瞬間から有効になりますから気をつけてね」

    那岐「え!?」

    那岐「間違えて門松に投票しちゃったんだけど!?」

    葉子「あぁ!?」

    那岐「きゃ、キャンセルは……」

    モノペン「キャンセルなんてありませんよ」

    モノペン「投票も、処分も、一度決まったら絶対に覆せません!」

    モノペン「皆さんは注意して投票しましょう!」

    ちゃちゃのん「お願い……待って……お願いじゃけぇ……」 ポロポロ

    モノペン「ちなみに誰にも投票しないとおしおきされちゃうからね」

    モノペン「人狼ゲームみたいなもんかなそこは!」

    モノペン「そんな突然死、皆冷めちゃうだろうからやめてよね!」 ウププププププ

    ちゃちゃのん「お願い……何でもするから……」 ポロポロ

    胡桃「ごめんね、洋榎……」 ポロポロ

    胡桃「私……あんなことしちゃったうえに、ちゃちゃちゃん達まで、手に掛けようとした……」 ポロポロ

    胡桃「折角助けようとしてくれたのに……私も、そっちに行くことになるよ……」 グスッ

    ちゃちゃのん「やめて……やめてよ……」

    胡桃「ごめんね……」

    モノペン「結果が出ましたァ!」

    モノペン「それでは、集計結果を発表いたしまーーーーす!!」

    ちゃちゃのん「やめてええええええええええええええ!!」

    731 :

    ちゃちゃのんめちゃくちゃ擁護してるけどネキ殺されたのに妙だな
    もしや胡桃に惚れてたのか?

    732 = 707 :


    モノペン「さあ、投票の結果、クロになるのは誰か!」

    モノペン「その答えは……正解なのか不正解なのか――ッ!?」

    モノペン「さあ、どうなんでしょーー!」 ガション

    「スロット……!?」

    華菜「ま、回り始めた!」


    ドゥルルルルルルルルル





    ━━━━━━□■━━━━━━
      MONO  □■   PEN  
    ━━━━━━□■━━━━━━

    ┏━━━━【 VOTE 】━━━━┓
    ┃     ┃     ┃     .┃
    ┃ 胡 桃..┃. 胡 桃 ┃. 胡 桃 .┃    チーーーーーン
    ┃     ┃     ┃     .┃
    ┗━━━━【GUILTY】━━━━┛    テーレッテレー

      ┏━━━━━━━━━┓
      ┃             ┃       ジャラジャラジャラジャラジャラ
      ┗━━━━━━━━━┛





    誓子「め、メダル……!?」

    「……つまり、大当たりってことでしょ……」

    モノペン「あらら、大正解っ!」 ウプププ

    モノペン「今回、愛宕洋榎サンを殺したクロは……」

    モノペン「……鹿倉胡桃サンでしたー!!」 イヤーッホウ!

    733 = 707 :


    「……」 ギリッ

    「分かっていたことだけど……」

    「ほんとに……そう、なんだ……」

    モノペン「そーだよ」

    モノペン「ちゃーんと、監視カメラで見てたからね!」

    モノペン「怯えた顔で無人の武器庫に入ってくる所も」

    モノペン「不用意にポンと肩を叩いて声をかける被害者のお馬鹿な行為も」

    モノペン「そして凶行の瞬間も、ばーっちりね!」 ウププププププ

    モノペン「それにしても人騒がせなおバカさんだよね」

    モノペン「自分を殺したクロのために、力を振り絞って部屋から追い出して密室つくり上げるなんてさ!」 ギャハハ

    「……ッ!」 ギリッ

    ちゃちゃのん「よくも……よくもそんなこと……!」

    「ちょ、落ち着きなさいって!」

    智葉「ここで歯向かって処刑されたいのか?」

    胡桃「……洋榎は、馬鹿なんかじゃないよ」

    胡桃「いつもどおり、分かったうえで、馬鹿やってくれてただけ」

    胡桃「私を励まそうと、いつもどおり、コミカルに……」

    胡桃「似合わない、小洒落たプレゼントなんて用意してさ……」

    胡桃「……」

    胡桃「馬鹿なのは……洋榎じゃないよ……」

    胡桃「馬鹿なのは――私、だけだから」

    734 = 707 :


    ちゃちゃのん「何で……」

    ちゃちゃのん「ヒロちゃんも胡桃ちゃんも、あんなに仲がよくって……」

    ちゃちゃのん「すごく、良い関係だったし……」

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも、そんな2人と仲良くなれて嬉しくて……」

    ちゃちゃのん「それなのに、何で……」

    胡桃「……ごめんね……」

    胡桃「怖かった……」

    胡桃「誰かがナイフを隠し持ってるって知って……」

    胡桃「武器庫に誰もいなくて、その状況で洋榎と二人っきりになるって分かって……」

    胡桃「……せめて何かあった時にって、ナイフを手にして……」

    胡桃「でもさっさと仕舞うほど割り切れなくて」

    胡桃「……ナイフを持ってる間に、声、かけられちゃって」

    胡桃「……」

    胡桃「ナイフ向けた後でも、すぐには発射されなかったのに」

    胡桃「すぐにナイフを下ろしていれば、こんなことにはならなかったのに」

    胡桃「ナイフを向けちゃった焦りで、洋榎の声もろくにきけなくて……」

    胡桃「それでも、刺すことまではできなかったのに」

    モノペン「そんなヘタレの背中を、助けようとした張本人が押してしまう」

    モノペン「まったく皮肉だよね!」 ウププププププ

    ちゃちゃのん「それって、どういう……」

    胡桃「……私が、洋榎の言葉を聞かず、部屋を出ようとして」

    胡桃「でもそうしたら私の暴走や疑心暗鬼は止まらないと想ったのか、それでも洋榎は説得をしてくれて」

    胡桃「ナイフをようやく、おろして――」

    モノペン「で、不用意にナイフを取り上げようとしちゃったんだよね」 ギャハハ

    胡桃「……奪うとか、取り上げるとか、そんな乱暴じゃなかった」

    胡桃「危ないから放しなよ、くらいの感じだった」

    胡桃「でも私は――反射的に、ナイフを構えて……」

    胡桃「そして、刃先が……」

    「それで、ああなった、と」

    智葉「一度腕をおろし、その後慌ててナイフだけ上に向け威嚇しようとしての誤射」

    智葉「それで、刃先がああも上向きだったのか」

    胡桃「……ごめんね」

    胡桃「引き返す場所は、いっぱいあったはずなのに」

    胡桃「結局、自分の心の内も、ごめんなさいの言葉も、喋れないまま――こんなことに、なっちゃった……」

    735 = 707 :


    モノペン「うぷぷぷぷぷ」

    モノペン「ほーんと、愚かな話だよねえ」

    モノペン「怖いとか、ゴメンとか、たった一言言えてれば、もっといい方向に向かっただろうにさ!」

    モノペン「こーんなとこでもダマにしちゃうなんて……」

    モノペン「まったく救いがたい座敷童……いや、疫病神だよ!」 ギャハハ

    胡桃「……ほんと、救いがたいや……」

    胡桃「ここまで来ないと……冷静になれなかったなんて……」

    胡桃「あの洋榎が、皆のこと、殺して逃げるような真似、喜ぶはずないのにね……」

    華菜「……」

    誓子「その……」

    胡桃「ごめんね、みんな……」

    胡桃「許してとは、言えないけどさ」

    「そんなっ……!」

    「悪いのは……悪いのは全部、モノペンじゃないですか!!」

    736 = 707 :


    モノペン「おやおや、人のせいにするのはよくないなぁ」

    モノペン「君は、自ら危険牌で大三元に振り込んだ時に、中を1回鳴かせただけの他家に責任があるとでも言うのかい?」

    モノペン「これだから責任転嫁世代はこまるなあ」

    「……ッ」 ギリッ

    「責任払い、っていうのもあるにはあるけど?」

    モノペン「うぷぷぷぷ」

    モノペン「だとしても、ボクがやったのなんて、3日以内のルールを作ったくらいだよ」

    モノペン「精々が最初に1鳴きさせた程度」

    モノペン「その後ナイフを盗んで鳴かせた人にも責任はあるし……」

    モノペン「何より、最後の1鳴きは愛宕洋榎サンが軽率に二人っきりになったことにあるんだから!」

    モノペン「危険牌の回避方法だって山程あったはずなのに、ほんと絶望的なおバカさんだよ!」 ギャハハ

    モノペン「ま、それで自分が死んじゃったんだから、責任払いもクソもないよね」

    モノペン「だーって元々自分が振り込んだんだもーん!」

    737 = 707 :


    胡桃「……ごめんね咲ちゃん」

    「胡桃先輩……」

    「私、私っ……!」

    胡桃「……」

    胡桃「それと……かばってくれて、ありがとう」

    胡桃「気に、しないでね」

    胡桃「全部、あのモノペンのせいだから」

    胡桃「だから……」

    胡桃「謎を解いたことは、間違ってなんかないんだから」

    胡桃「むしろ、私に罪を重ねさせないでくれてありがとうだし……」

    胡桃「だから……」

    胡桃「だか、ら……」 カタカタ

    胡桃「わた、しに……投票……した、のも……」 カタカタ

    モノペン「うぷぷぷぷぷ」

    モノペン「よーやく、死の恐怖がやってまいりましたね!」 イヤーッホウ!

    モノペン「いやー、死にたくなくて手を染めたくせに、達観で覚悟決められて困ってたんですよね」

    モノペン「だーって、面白くないじゃーん!」 ギャハハ

    胡桃「う、ううううう……!」 ポロポロ

    胡桃「いや……死にたく、ない……!」 ポロポロ

    738 = 707 :


    胡桃「私、まだ、死にたくないよ……!」

    胡桃「約束だって……皆と、一緒に卒業するって、私……!」 

    モノペン「あーもう泣かないでよ、ばっちぃなあ」

    胡桃「卒業したらエイちゃんの故郷に卒業旅行しようねって……」

    胡桃「怠がるシロでも楽しめそうな場所を、まだまだ皆で探さないといけないし……」

    胡桃「塞と一緒にホテル探したり、豊音と旅行バッグ買いに行く約束も……」

    胡桃「やだ……やだよお……」

    胡桃「まだ皆に、お別れだって言ってないのに……!」

    モノペン「それは愛宕洋榎サンもそうだったんだよ」

    モノペン「それでもその生命を奪ったのは、他ならぬ自分なんだから」

    胡桃「嫌だ……」

    胡桃「まだ、やりたいこと、やってないこと、いっぱいあるのに……」

    胡桃「洋榎にも、言わなきゃいけない言葉が……」

    胡桃「咲ちゃんやちゃちゃちゃんと、外で遊んで、何もないところだけど、宮守に呼んだりだって……」

    胡桃「何で……何でこんなことにっ……!」

    モノペン「うぷぷぷぷぷ」

    モノペン「それを、もっと素直に全部吐き出せていれば、よかったのにねえ」

    モノペン「ぜーんぶ、手遅れなんだよ」

    モノペン「振り込んでから手元のイーシャン国士を嘆いたって手遅れだし、ツモったかもなんて未来は無いの!」

    モノペン「君にあるのは、処刑されるっていう未来だけ!」

    胡桃「う、うああああああ……!」

    739 :

    勘弁してくれ……

    740 = 707 :


    モノペン「ま、それじゃさっさとおしおき、始めちゃいましょうか!」

    モノペン「そろそろこの汚い涙にも飽きてきたしね!」

    「…………ッ!」 ギリッ

    智葉「落ち着け!」

    ちゃちゃのん「お、お願いじゃ!」

    ちゃちゃのん「殺されたヒロちゃんだって、胡桃ちゃんの死なんて望んどらんけぇ!」

    モノペン「こらこら、そーいう問題じゃないの」

    モノペン「秩序を乱したらおしおきされる」

    モノペン「それが社会の常識だよ」

    胡桃「ああ、あああああ……!」

    ちゃちゃのん「待って! 待ってって!」

    モノペン「今回は超高校級の麻雀打ちである鹿倉胡桃サンの為に」

    ちゃちゃのん「待てって言ってるじゃろ!!!」

    モノペン「スペシャルなおしおきを用意させましたぞっ!!」

    胡桃「ああ……洋榎……洋榎ぇ……」

    ちゃちゃのん「聞いてってば!!」

    「ばっ、ちょ、誰か取り押さえるの手伝って!」

    モノペン「それでは、張り切っていきましょう!」

    ちゃちゃのん「は、離して! 胡桃ちゃんが! 胡桃ちゃんがぁぁ!」

    胡桃「ああ……ああ……」

    胡桃「嫌だよ……ああ……」

    モノペン「おしおきターイム!」

    ちゃちゃのん「駄目! 駄目じゃ! 待って!」

    胡桃「イヤぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!」

    ちゃちゃのん「待ってぇぇぇぇええええええええええぇぇぇええ!!!」

    741 = 707 :


    どこからともなく、スイッチが現れる。

    モノペンが、楽しそうにスイッチを押した。

    『GAME OVER』

    ディスプレイに、そんな単語が現れる。

    モニターには、懐かしいレトロゲームのようにデフォルメされた胡桃先輩が映し出されていた。

    『カクラさんがクロにきまりました』

    更に、文字が現れる。

    モニターの中の胡桃先輩が、やはりデフォルメされたモノペンに引きずられていった。

    『おしおきをかいしします』

    そして――同時に、現実の胡桃先輩の首にカチリと何かがはまる。

    それが鎖付きの首輪だと気付いた時には、胡桃先輩は鎖に引きずられすでに裁判場から姿を消していた。

    呆然としている私達を、ゴウンという機械音が現実世界に引き戻す。

    見ると、裁判場の壁が開き、通路ができていた。

    ……胡桃先輩に引きずられていった方向に。

    そして――促される。

    通路の奥に向かうよう。

    行きたくなんてなかった。

    誰だってそうだ。

    その先に何があるのか、予想なんてついているのだから。

    それでも――鋭い爪を射出され、脅され、皆が通路の奥に向かう。

    そこにあるのが、処刑場と理解しつつも。

    742 = 707 :







    【鹿倉胡桃おしおき : くるみ割り人形】






    743 = 707 :


    そこは、ちょっとしたホールのようだった。

    真っ赤な幕が、ブザーと共に上がっていく。

    糸で吊られた人形たちが、一列にラインを組んでいる。

    その人形の列の中央に、胡桃先輩は居た。

    人形に負けない蒼白な顔で、やはり糸で吊るされている。

    その表情は、人形よりも気迫だった。

    胡桃先輩の名を叫ぶささのん先輩の声をかき消し、BGMが流れ始める。

    音楽に乗り、人形達がタップダンスを踊り始めた。

    まるでちょっと上質な人形劇。

    その中央で、一人の少女が人形に混じり糸で踊らされている点を除いて。

    744 = 707 :


    次第に踊りは激しさを増してくる。

    その過程で、人形の肘が隣の人形にあたる。

    足も、どかどかと当たり始める。

    どんどん下手くそな人形芝居のようになってきた。

    それでも音楽は止まないし、踊りが止まることもない。

    例え胡桃先輩が、その顔中を腫らすほど、人形に殴られても。

    745 = 707 :


    最初は、脇腹。

    隣の人形が振った腕が直撃していた。

    きっと、固い素材で出来ているのだろう。

    胡桃先輩の顔が歪むのがよくわかった。

    それから、足。

    何度も蹴られるだけでなく、思い切り踏みつけられていた。

    そして、踏みつけられた状態で、更に糸により無理矢理踊りを踊らされる。

    足を軽快に上げようとしても、人形の足が強固にそれを拒み続けた。

    そうしたら、どうなるのか。

    簡単だ、踊りながら固定されるようになればいい。

    関節が外れようと、ちぎれかけようと、糸を操る処刑人には関係がない。

    そうして、踊りに扮した暴行は更に激しさを増していく。

    次第に全身、それも目に見えて痛そうなものが増えてきた。

    746 = 707 :


    派手な音を立て、腕が折れる。

    意外にも、胡桃先輩のものでなく、隣の人形の腕がだ。

    そちらはよく見ていなかったが、恐らく更に隣の人形と衝突をしたのだろう。

    頭上のモニターに映る操り人たるモノペンの顔にも、焦りの色が浮かんでいた。

    無理矢理〆ようとでもしたのか、大げさなターンが行われる。

    へし折れ、鋭利になった腕が、胡桃先輩の顔面めがけて繰り出された。

    胡桃先輩が、必死で避けようと顔を動かす。

    そして――モニターに映るモノペンの顔が、驚愕に染まった。

    本来糸に逆らえぬはずの胡桃先輩が、逆に糸を引っ張ったのだ。

    紙一重で、回避をした。

    胡桃先輩の顔に、僅かに安堵の色が浮かんでくる。

    そして、そして――――

    747 :

    >>729
    ちゃちゃのんが必死にかばう所が2章の石丸を思い出させるって事でしょ

    748 = 707 :


    嫌な音が、辺りに響いた。

    顔を動かし引っ張る形になった糸が、変な場所に引っかかっている。

    そのため固定された顔が、安堵と驚愕の入り混じった表情を作っていた。

    もっと端的に言うならば――絶望的な、表情。

    きっとその表情で、体でも見下そうとしたのだろう。

    けれどもそれは叶わぬ願い。

    糸は固定され、頭は微塵も動かない。

    例え、体は他の糸に従い一回転したとしても。

    その頭は――動かない。

    749 = 707 :


    頭部という主を残して華麗なターンを決めた胴体が、再び正面へと向く。

    私達はあまりの光景に誰も言葉を発してないのに、どこからか歓声が聞こえてきた。

    その歓声に応えるようにして、人形達がペコリと頭を下げる。

    同じく、頭部の糸を切られた胡桃先輩も、頭を下げた。

    ただしその擬音はペコリなんて可愛らしいものではなく、だらりと表現すべきものだったけれど。

    そして、人形達が体を起こす。

    手をつなぎ、人形達が歓声に応える光景のまま、舞台の幕が降りてきた。

    舞台の中央では、この舞台の主役を張った胡桃先輩が、糸に操られるままに両腕を上げている。

    本当に掴みたかったはずの人の手ではなく、冷たく無機質な人形の手を取らされて。

    その手を高々と上げさせられ、胡桃先輩の最期の舞台の幕が閉じる。

    他の人形と違い、その拗じれた顔は、二度と持ちあげられなかった。

    750 = 707 :

    思ったより頭が回らないので、とりあえずおしおき終わって切りがいいので中断します。
    裁判終了後のあれこれは夜にでも投下します。


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