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    元スレ咲「リンシャンロンパ」 洋榎「希望の雀卓と絶望の高校生雀士」

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    501 :

    >>500
    正解

    502 :

    深夜どころかめざましテレビ始まってる時間になってしまった。
    なんてことだなんてことだ。


    とりあえず進められるだけ捜査パート進めます。

    503 = 502 :


    (しばらくの間……)

    (私達は、口を開こうともしなかった)

    (洋榎先輩や浅見先輩の死が、とてつもなくショックなのは当然だけど……)

    (でも、それだけじゃなかった……)

    (この中にいる誰かが……“人を殺した”という事実……)

    (しかも、その人物を突き止めなければ、他の全員が処刑されてしまう……)

    (互いが互いに、疑いの目を向けざるを得なかった)

    (先程まで一致団結してモノペンに立ち向かっていたのに……)

    (その結束は、浅見先輩の命と一緒に、容易く失われてしまった)

    (本当に、最悪の状況)

    (ただ、そんな常軌を逸した最悪の状況でも……)

    (動じた様子を見せてない人も、いた)

    智葉「落ち込んでいる場合じゃない」

    智葉「それに、奴も言っていた通り、まるっきり疑心暗鬼で信用出来ない、なんて状況も問題だ」

    智葉「盲信するのと同じくらい、疑心しか持たないことは悲劇を生む」

    「……ゼンツもアレだけど、常にベタオリしても勝てない――ってことね」

    智葉「時間は有限だ」

    智葉「誰を信じるかは各々に任せるとしても……協調して、捜査をする必要はある」

    「ま、確かに……」

    「自分の命がかかってるんだし、いつまでも死人のことを引きずっているわけにもいかないか」

    ちゃちゃのん「そ、そんな言い方……!」

    「アタシだって好き好んでそーするわけじゃないって」

    「でもしょうがないの」

    「そうしなきゃ……全員まとめて処刑されるだけ」

    「卓上でもそれ以外でも――状況に素早く適応できないと、痛い目見るわよ」

    504 = 502 :


    葉子「クソっ……クソクソクソクソクソ!!」

    葉子「やりゃいいんだろうが、やりゃ!!」

    「……死にたくは、ないですもんねえ」

    透華「どのみち、私達は逃げられませんわ」

    やえ「やるしかない、か……くそっ」

    「……うん。やるしかないのよね……」

    誓子「分かったわよ……」

    誓子「このまま死んだら、花子ちゃんにも申し訳、立たないもんね……」

    華菜「何が処刑だ……殺されてなんてたまるか……!」

    誠子「くそっ……やるしかない、やってやる!」

    (やるしかない)

    (皆が口々に、そう呟いていた)

    (自らを奮い立たせるように)

    (そう……やるしかないんだよね……)

    (やりたくなくても、やるしかないんだもん……)

    (それが生き残る唯一の道なら、やるしかない……)

    (それに……私は知らなくっちゃいけない……)

    (どうして、洋榎先輩が殺されたのか)

    (どうして、洋榎先輩が、殺されなくちゃいけなかったのか……)

    (知るのは怖いけど……)

    (でも、知らなくちゃいけないんだ)

    (そうじゃなきゃ……洋榎先輩の死に、きっと私は納得がいかない……)

    (だから……)

    「やるしか……ないんだ……ッ」 ゴッ

    505 = 502 :


    「捜査の前に……」

    「誰か見張りを立てるべきだと思うんだけど」

    やえ「見張り……?」

    「現場のよ」

    「各々が本当に好き勝手調べてたら、犯人に証拠隠滅されるかもしれないでしょ」

    「だから――見張りは必要じゃない?」

    やえ「そうだな……」

    やえ「では、見張りは私が引き受けよう」

    やえ「正直――今、冷静に思考が出来る自信はない」

    智葉「もう一人、必要だな」

    葉子「は? なんで?」

    葉子「わざわざ捜査人員減らす意味なくねー?」

    「馬鹿」

    「見張りが一人だったら、そいつが犯人の場合証拠隠滅され放題でしょ」

    葉子「誰が馬鹿だコラ!」

    「気が立ってますねえ……」 ギッヒ

    やえ「……なるほど」

    やえ「それじゃあ――一緒に見張りをしてもらおうか、新免那岐」

    那岐「え? 私?」

    「妥当ね。武力があって頭は弱そうな人を任命したいとこだし」

    智葉「だな」

    那岐「私は愚かではないし、そもそも戦闘になったら多分小学生にも負けるぞ!」

    葉子「威張んなよ……」

    506 :

    新免さんほんと良いキャラしてるな

    507 = 502 :


    「あとは……」

    「この、モノペンファイルだけど――」

    モノペンファイル『被害者は愛宕洋榎』

    モノペンファイル『死亡時刻は大体午後1時頃』

    モノペンファイル『死体発見現場となったのは、地下にある武器庫』

    モノペンファイル『致命傷は腹部に突き刺さったスペツナズナイフ』

    「いくつか気になることもあるし、解散前にいい?」

    葉子「気になるとこォ?」

    美子「……」

    美子「この死亡時刻……」

    「……そう」

    「これ、死体発見アナウンスとほぼ同時くらいなのよね」

    透華「と、いうことは……」

    竜華「洋榎は、刺されて放置されて、そんで死んだ直後に発見された……ってことか?」

    智葉「もしくは、“大体”や“頃”という表記によるトラップか、だな」

    「トラップ……?」

    智葉「あのペンギン、大事な部分を隠すようなところがある」

    智葉「だが、このファイルが丸っきりウソでは読み合いもクソもない」

    「それで、“大体”だったり“頃”だったりと曖昧な単語をチョイスした、か」

    「ウソにはならないように」

    智葉「前後30分くらいは見ておいた方が良いだろうな」

    透華「まあ、12時31分は、12時寄りか1時寄りかで言えば、1時寄りですもんね……」

    「ま、今回は1時30分はあんまり見なくていいと思うけどね」

    智葉「……と、なると、だ」

    智葉「アリバイは、死体発見からその30分前から常に誰かと行動していない限りは証明されないな」

    「刺されてから死ぬまでにラグがあったとしたら、もっと必要かもしれないわね」

    「んー……あんま詳しく見たわけやないけど……」

    「さすがにあの傷やと、そう長くは持たんと思うけど……」

    「じゃあ、まあ、死体発見から1時間前くらいまで常に誰かと行動してたらアリバイあり、でいいか」

    「この中に――誰か、アリバイがあるって人はいる?」

    508 = 502 :


    誠子「あ、はいはい!」

    「それを証明する人は?」

    誠子「咲と――あと、その、浅見さんかな」

    誠子「1時間くらい、ずっと談話室で話してたんだ」

    誠子「だよね?」

    「はい……」

    葉子「なんだって談話室で……」

    「その、浅見先輩、ちょっと休憩しようとしてたみたいで……」

    「ふうん」

    「じゃあ、そこの2人はシロ、ね」

    智葉「クロが先程死んだ、ということもなさそうだな」

    509 = 502 :


    葉子「エラソーにしてっけど、そーいう自分はどーなんだよ」 ッツーカサ

    「アタシ?」

    「アタシもアリバイはあるわよ」

    竜華「ああ、一緒にホールで色々捜しとったで」

    「憧ちゃんから誘ってもらってなぁ~」

    「何かあった時にアリバイを証明できるだろうし……」

    「二人っきりほど殺される心配もないし」

    「一人で動かず誘っておいて正解だったわ」

    智葉「これで5人アリバイ成立、か」

    智葉「バラける前に、死体発見前に何をしていたか確認しておくか……」

    510 = 502 :


    葉子「私は……トイレで壁をぶっ壊そうとしてたよ」

    葉子「アンタも見てんだろ?」

    智葉「ああ」

    智葉「私は、一応全体を見て回っていた」

    智葉「異常事態にすぐ気づけるようにな」

    透華「それで、第一発見者になったんですのね」

    智葉「ああ」

    智葉「佐々野達が騒いでいるのが聞こえてな」

    智葉「無理矢理扉を開けたのは私だ」

    「無理矢理……?」

    誓子「あ、そっか、皆知らなかったんだっけ」

    誓子「あのね、最初、洋榎の体が扉にもたれかかっていて……」

    智葉「そのせいで、扉が開かなかったんだ」

    誓子「私達が開けてーって叫びながら扉を叩いても、全然起きる気配がなくて……」

    智葉「悪いと思ったが、体当たりで無理矢理開けさせてもらった」

    誓子「その際、洋榎の体がちょっと部屋の真ん中の方に転がっちゃったの」

    「……ちょっと待って」

    「それってつまり……」

    透華「愛宕洋榎の体で扉を閉じていた……いわば……」

    「密室殺人……!?」

    511 = 502 :


    「……その謎は、あとでまた現場を見るとして……」

    「混乱し切る前に、順序良く行動だけ言ってって」

    「とりあえず、密室を見てる智葉以外の2人は――」

    誓子「私は、ガチャルームでガチャをしてたけど……」

    誓子「それを証明する人は、いないわ……」

    誓子「さすがにあの状況で、ずっとガチャに付き合ってくれる人なんていなかったし」

    葉子「つーか、あんな切羽詰ってたのにンなことしてたんだ……」

    誓子「その、息抜きっていうか、ストレスでどーにかなっちゃいそうだったから……」 アハハ・・・

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも、アリバイはなしじゃ……」

    ちゃちゃのん「あと――2人じゃなくて、3人じゃよ」

    胡桃「……私も、アリバイはないよ……」

    ちゃちゃのん「……最初は、胡桃ちゃんが見つけたんじゃ」

    ちゃちゃのん「ドアに縋ってヒロちゃんの名前を呼んじょるから何かと思ったら……」

    誓子「で、思わず上げたちゃちゃのんの悲鳴に反応したのが私で、私のに反応したのが智葉ってわけ」

    「なるほどね」

    透華「詳しいことは、あとで気持ちの整理ができたら聞くとして……」

    透華「他の方はどうです?」

    透華「ちなみに私は、一応ありますわ」

    「ええ」

    「一緒に、トイレ以外で壊せる場所がないか探してもらってて……」

    「ナタを持って一人でウロウロするの、不安だったんで……」

    「これでアリバイ7人で死人は2人、か」

    「それでもまだ11人も容疑者がいる」

    「他の皆は?」

    512 = 502 :


    やえ「私は……」

    やえ「情けないことに、自室で頭を冷やしていた……」

    やえ「不安でしょうがなくて、一歩も出ていないし、誰とも会っていない」

    「私も……」

    「自分の昼食の片付けをして……」

    「あとは、お弁当でも作って配ろうかとしてたから……」

    「ふたりともアリバイはなし、か」

    桃子「私も自室に居たっす」

    桃子「……まあ、アリバイはなしっすね」

    美子「私は……ランドリーで洗濯を」

    透華「そういえば、壊せそうな場所を探している際にお見かけしましたわね」

    美子「その、隣で何やら騒がしかったから……」

    美子「ランドリーの中で、座って……」

    「それを証明する人は――」

    美子「……」 フルフル

    「なし、か……」

    513 = 502 :


    華菜「華菜ちゃんも直接のアリバイはないけど……」

    華菜「桧森先輩に、いらないガチャアイテムを売ることを聞いたのって、いつでしたっけ」

    誓子「んー……」

    誓子「多分、12時ちょっとすぎくらいじゃないかとは思うんだけど」

    華菜「んで、それから色々売買して、部屋に戻ったんだ」

    華菜「私もそうやってメダル手に入れるかーって思ってさ」

    華菜「散らかってたアイテムをかき集めて――」

    華菜「いろんな中古品って、箱がないと価値下がるから、全部ガチャに詰めなおして」

    華菜「それからそれを抱えて階段降りてたら、亦野先輩達と遭遇したんだ」

    華菜「……」

    華菜「これ全部やって、ちゃんと2階から降りてきたって、実質アリバイには――」

    「ならないわよ」

    「そんなもの、最初から全部ガチャに詰めてれば殺人する時間くらい確保できるでしょ」

    華菜「……デスヨネー」

    那岐「じゃ、じゃあふんどしを作り、一発芸に備えていたというのはアリバイには……」

    葉子「なるわけねーっしょ……」

    誠子「いやー、擁護してあげたいっちゃあげたいけど、30分くらいしかいなかったし……」

    那岐「ぐ、ぐぐぐぐぐ……」

    那岐「服の下に別のもの着るって大変なんだぞっ!」

    那岐「ましてや下半身!」

    那岐「あれほんと短時間で出来る作業じゃ――」

    「いや、ふんどし談義はどーでもいいから」

    「……ま、とにかく……」

    智葉「11人はアリバイなし、か――」

    514 = 502 :


    「それじゃ、解散して捜査を始めよっか」

    やえ「……じゃあ、我々は武器庫で、現場の保全に努めるとしよう」

    やえ「ほら、いくぞ」

    那岐「うう……」

    那岐「死体のそばっていうのは、その~……」

    葉子「いいから行けよヘタレ武士」

    「……」

    「捜査だけど……」

    「基本2人以上でやった方がいいと思う」

    「証拠隠滅の危険性もだけど――」

    智葉「……」

    智葉「命そのものを消されることの防止、か」

    「そ」

    「これが連続殺人事件にならないとも限らないし」

    「証拠見つけたら後ろからボカ、なんて推理漫画のモブみたいな死に方はしたくないでしょ」

    智葉「常に二人以上で行動しておけば、そう易易と殺人には踏み切れまい」

    「正体がバレバレになるし、バレたら……おしおきなわけだからね」

    515 = 502 :


    「そんなわけだから――華菜」

    華菜「へ?」

    「捜査、行くわよ」

    華菜「年上には敬語使えー?」

    華菜「……っていうか、何でカナちゃん?」

    「……適度にアホで、でもアホの極みってわけじゃなさそうだからよ」

    華菜「敬語っつーか敬意。敬意が要る」

    「アホすぎたら捜査の役に立たないけど……」

    「役に立ちそうな人とは、別行動して情報収集させた方がよさそうだしね」 チラ

    智葉「……」

    「そんなわけで、アタシ達は行くから」

    「後は適当に二人組でも組んで、ちゃっちゃと捜査しちゃってよ」 スタスタスタ

    華菜「あ、ちょっと待てって!」 タタタタタ

    516 = 502 :


    誠子「咲」

    「亦野先輩……」

    誠子「あのさ、一緒に捜査しない?」

    「え?」

    誠子「お互いアリバイある者同士だし……」

    誠子「個人的に、ちょっと話しやすいしさ」

    誠子「……あ、私のことは、助手とでも思ってくれたらいいよ」

    誠子「ぶっちゃけ、そこまで推理力には自信ないし……」

    誠子「でも、身体能力にはそこそこ自信あるからさ!」

    誠子「気になることがあったら、なんでも言ってよ、調べるからさ」

    「えっと……じゃあ、よろしくお願いします」

    517 = 502 :


    「……」

    (胡桃先輩は……) チラッ

    胡桃「……」

    ちゃちゃのん「……」

    透華「……心の傷は、すぐには癒えないものですわ」

    透華「でも――前を向くことも、必要ですわ」

    透華「長い目で見れば、それこそ、彼女たちが前を向くことは私達全体のプラスに繋がる」

    透華「ですので……」

    透華「申し訳ありませんが、今回は私も捜査には不参加とさせていただきます」

    透華「今は――お二人の、ケアをしたいと思いますわ」

    智葉「……ま、それもいいだろう」

    智葉「龍門渕は確定シロだから、監視の役目を果たせない鹿倉達と組ませても隙を見て証拠を処分されることはあるまい」

    「ほんなら……」

    「捜査開始――ですね」

    (そして――ぞろぞろと、ホールを皆が後にした)

    (後に残ったのは、私と亦野先輩)

    (物言わなくなった浅見先輩と、そして――)

    518 = 502 :


    誓子「……」

    葉子「……行くしかねえって」

    「人数考えると、私らは3人一組ですね」 ギッヒ

    (桧森先輩達が、残っていた……)

    誓子「……そうだね」

    誓子「……」 スッ

    誠子「えっ、それって――」

    「た、タバコ……!?」

    葉子「ばっ、何で今――!」

    誓子「……」

    誓子「ごめん、悪いんだけどさ」

    誓子「これ――厨房のコンロで、火、つけてきてくれないかな」

    「え、でも――」

    誓子「……お願い」

    「……」

    「……」 コクリ

    「……」 スタスタスタ

    519 = 502 :


    誓子「……驚かせちゃったかな」

    「……少し……」

    誓子「あれ、さ」

    誓子「揺杏が――後輩が、吸ってるやつなんだ」

    誓子「この前学校で吸ってたから、せめて家で吸え~なんて言って没収して……」

    誓子「それがどうやら、財布や携帯と違って没収されずにポッケに入り続けてたみたい」

    「そんなこと、あるんですね……」

    「ここにはタバコもないから、てっきり持ってても没収されるのかと」

    誠子「まあ……私物も持ち込めてるものあるみたいだしね」

    誠子「……刀とか」

    「ああ……」

    葉子「私はバッチリ没収されてたけどな」

    葉子「つーか、タバコ入れてたカバンごとどっか行ってるし」

    誓子「だからこうして、1本メダル1枚で販売していたの」

    葉子「足元見やがって」 ケッ

    誓子「でも助かってるわ」

    誓子「必死こいて隠されたメダルもかき集めてくれたしね」

    520 = 502 :


    誓子「……」

    誓子「花子ちゃんは……」

    誓子「あのナリだけど、タバコとかは、吸ってなかったみたい」

    葉子「……そーいや、私が美味そうに吸うのを見て、吸ってみたい、つってたっけ」

    誓子「……」

    誓子「揺杏のやつは結構キツイよって言ったら、じゃあやめとこう、なんて言ってたけど」

    ガチャ

    「……」

    「はい……タバコです」 スッ

    誓子「……ん、ありがと」

    誓子「……」

    誓子「私達……」

    誓子「やりたいことも、やってないことも、まだいっぱいあるのにね……」

    (そう言うと――桧森誓子は、タバコに軽く口付けた)

    521 = 502 :


    誓子「……ん」

    (桧森先輩が、煙草を黙って差し出す)

    (それを受け取り、門松先輩が、煙草を思いっきり吸い込む)

    (そして、とても美味しそうに、吐き出した)

    葉子「は~~~……美味いわ、やっぱ」

    葉子「一回ハマると、こんな状況でもやっぱり美味いよ」

    葉子「……一回くらい……試しときゃよかったのにさ」

    (今度は門松先輩の差し出した煙草を、上柿さんが受け取る)

    (そして、門松先輩のように思いっきり吸い込んで――)

    (盛大に、噎せ返っていた)

    「げっほ……」

    「あたしゃ、やっぱ向いてないですわ、煙草」

    葉子「……ま、でも、吸ってから嫌うのとじゃ、吸わなくて嫌うより、いいだろ」

    「……ま、そうですね」

    522 = 502 :


    葉子「ほれ」

    「……え?」

    葉子「あんたも」

    「あ、わ、私は……」

    「煙草は、ちょっと……」

    「それに……」

    「ここで浅見先輩と仲が良かったのって、やっぱり、門松先輩達だと思うから……」

    葉子「……」

    誓子「そっか」

    (そうとだけ言うと――)

    (桧森先輩は、門松先輩から受け取った煙草を、浅見先輩の口元へと持って行った)

    (半開きになり、口の端から血を垂れ流しているその口に、タバコが差し込まれる)

    523 = 502 :


    (もくもくと、煙がのぼる)

    (私も、皆も、いつしか黙祷をしていた)

    (きっと、これが、彼女たちなりのお焼香なのだろう)

    (あまり、話す機会はなかったし、そこまでいい印象があるわけじゃないけれど)

    (それでも、あの時話していて、悪い人じゃないことは分かったから)

    (目を開けた時、自然と、目尻に涙が溜まっていた)

    誓子「……」

    誓子「花子ちゃん……」

    誓子「これ、もらっていくね」

    (そう言うと、桧森先輩は、浅見先輩の帽子を脱がし、自らの頭にかぶせた)

    (ところどころに、まだ血のついた、その帽子を――)

    誓子「……」

    誓子「私、絶対、ここを出るから」

    誓子「一人でじゃなく、皆で出るから」

    誓子「だから――花子ちゃんも、一緒に出ようね」

    (桧森先輩が、帽子に触れる)

    (……皆で、生きて帰る)

    (胸の中に、黒幕には絶対に負けないという、決意の炎が灯るのを感じた)

    524 = 502 :


    誠子「……咲」

    「……はい」

    「やりたくはないけど……」

    「こんなところで、皆で死ぬわけには、いきませんもんね」

    誠子「ああ」

    葉子「……ああ、そうだ」

    葉子「部屋の鍵、持ってると思うんだけど……」

    葉子「それ貸してくんねえ?」

    「へ……?」

    誠子「なんで……?」

    葉子「いやさ、ナイフで殺害したってことは、返り値の問題とかあるっしょ」

    葉子「そういう工作の後とか、血が付いた服とか、部屋に隠してるかもしれないじゃん?」

    「おお、珍しくなんかまともな意見……」

    葉子「うっせ」

    葉子「まーとにかく、全員の部屋を片っ端から調べてやろうと思ってよ」

    葉子「拒否はさせねー」

    葉子「無実の証明になるかもしれないわけだし、徹底拒否する奴はクロってことになるしな」

    誠子「……」

    誠子「私達、アリバイあるから確定シロなんだけど」

    葉子「……」

    葉子「あっ!」

    (大丈夫なのかなこの人……)

    525 = 502 :


    誓子「でも、シロの人からも鍵貰ったって方が、他の人を説得しやすくない?」

    誓子「それならフェアだしさ」

    誓子「どーしてもって渋るなら、一緒に来てもらえばいいし」

    葉子「……それそれ! それだよ!」

    誠子「ははは……」

    「そういえば……」

    「桧森先輩、前もメダル尽きてたと思うんですけど……」

    「1時間もガチャルームにどうやって居座ったんですか?」

    誓子「あっはっは」

    誓子「実は1時間どころか、ほぼずーっと居たのよね」

    「えっ」

    誓子「だってほら、ガチャルームに来る人って、ガチャアイテムを求めてるわけじゃない?」

    誓子「ってことは、一番高値で売れる相手は、ガチャルームに訪れる人なのよ!」

    526 = 502 :


    誓子「……まあ、あの状況で訪れる人なんて、ほとんど居なかったんだけどね」

    誠子「ほとんど……?」

    「ってことは……居はしたんですか?」

    誓子「うん」

    誓子「……洋榎がね」

    「…………」

    「えっ!?」

    誓子「何でも、誰かにプレゼントを贈ろうとしてたみたい」

    誓子「断腸の思いで、もう残り1個しかないビトロ・イン・ローズをメダル6枚で売ったわ……」

    「わ、私の時の3倍……」

    誓子「誰かにあげるつもりだったみたい」

    誓子「このバタバタが終わったら告白するんだ……ってとこだったのかしら」

    葉子「……それ、死亡フラグだったんじゃねーの……」

    誓子「……はっ!」

    527 = 502 :


    誓子「ちなみに、そのメダルではゴミしか出なかったわ」

    「うわあ……」

    誓子「で、ちょっと熱くなっちゃって……」

    誓子「ドアを開けっ放しにして、人が通り掛かるのを待ってたのよね」

    誠子「へ?」

    誓子「通り掛かる人を捕まえて、これらのアイテムいらんかね~って」

    葉子「タチの悪い露天商みたいだなオイ……」

    誠子「それで、誰か捕まったの?」

    誓子「まあ、捕まえたはいいけど、全然売れなかったのよね……」

    誓子「華菜ちゃんだけは興味示してくれたけど、メダル持ってなかったみたいだし……」

    誓子「辻垣内さんに至っては、侮蔑の眼差しだけ貰ったわ」

    葉子「そらそーなる」

    誓子「辻垣内さんだけはなんか近寄りがたいのよね……」

    誓子「気軽に智葉ちゃ~んって呼ぶのも親しげに智葉って呼ぶのも憚られるというか……」

    誓子「それでもずっと扉を開けて見てたのよね」

    誓子「そのおかげで、悲鳴に気づけたんだけどね」

    誠子「佐々野先輩や鹿倉先輩にも声ってかけたんです?」

    誓子「うーん、胡桃ちゃんはどうやら逆の階段から降りてきたみたいだから声かけてないのよね」

    誓子「いちごちゃんも、約束があるから~って商品見てもくれなかったし」

    (約束……?)

    (あとで本人に確認してみようかな……)

    528 = 502 :


    誠子「ってことは……」

    誠子「ガチャルームがある方の廊下から逃げようとしたら、目撃されてるわけか」

    誓子「あっちから来る人がいないわけじゃなかったけど……」

    誓子「誰も返り血は浴びてなかったわ」

    「どこかで途中着替えたとか……」

    誓子「なくはないだろうけど……」

    葉子「廊下に隠れる場所はねーし、リスキーすぎんだろ」

    「武器庫で着替えて、焼却炉で古い洋服は処分した……とか」

    誓子「それもないと思うわよ」

    誓子「ガチャルームから焼却炉見えるけど、誰もそっちには近づいてないもの」

    誠子「ふーん」

    葉子「っと、んじゃ尚更証拠の返り血探さなきゃならねーな」

    誓子「そうね」

    誓子「……それじゃ、私達は、部屋を探して回ってみるわ」

    「はい」

    「……あ、これ、私の部屋の鍵です」

    誠子「はい、これが私の」

    「あい、確かに」

    「それじゃ――」

    「また、学級裁判で」



    ▼コトダマ【モノペンファイル】が追加された!
    ▼コトダマ【桧森誓子の証言】が追加された!

    529 = 502 :


    誠子「それじゃ、捜査開始だね」

    「はい」

    誠子「どうする?」

    誠子「どっから行く?」

    「そうですね……」

    「……」

    「ささのん先輩たちに聞きたいこともあるので……」

    誠子「……そっか」

    (それに……)

    (まだ――落ち着いて、洋榎先輩の死体を見る自信はないから……)



    ――捜査開始――

    530 = 502 :

    なんと捜査開始までしか行けてませんが、眠いので一旦中断します申し訳ない。
    とりあえずなんちゃってロンパ的進行で行ってみて、テンポ悪いなと思ったら2章からやめます。

    531 :


    思いのほかダンロンで両方知ってる身としては面白いわ
    日常と非日常もいい按配だしな

    532 :

    乙です
    焼香のシーンすごい好き。なおネキの死体は特に弔われず放置されている模様

    533 = 496 :

    おつ。
    果たして誰がクロなのやら。

    534 :

    寝てました。
    やれる内に捜査パートだけでも進めておきます。

    535 = 534 :


    <食堂>

    「あ、ここにいたんですね」

    透華「あら……」

    透華「……事情聴取、ですの?」 コソ

    誠子「……まだ立ち直って無い所悪いんだけど、こっちも立ち直ってないからさ」

    誠子「死体いきなり調べさせるのも酷だから……」

    誠子「かんべんしてあげてよ」

    透華「それは構いませんが……」

    透華「ああ、そうだ」

    透華「そこに、おにぎりがありますわ」

    「ふえ?」

    透華「狩宿巴が作っていた途中のものみたいですわ」

    透華「毒物の類は心配いりませんし、空腹なら食べたらどうです」

    誠子「そうだね、腹が減っては戦はできない、って言うし」

    誠子「……カップラーメンも、口からは食べ損ねたからね」

    透華「?」

    透華「口以外から、どうやって食べると……」

    誠子「頭で食べたっつーか、浴びたというか……」

    誠子「それでも他の人達と比べたらダメージ全然少なかったけど」 アハハ・・・

    透華「???」

    536 = 534 :


    透華「まずは私から、話をさせて頂きます」

    透華「……私は、死体発見アナウンスが聞こえる1時間ほど前まで、武器庫にいました」

    透華「こんな時だからこそ、皆が武器を取ることを防ごう、と」

    誠子「その時点でなくなってたのって――」

    透華「斧が2本、ナタが2本、ハンマーが3本、そしてナイフが1本ですわ」

    透華「斧とナタ、ハンマーは門松葉子たちに渡していました」

    「そういえば、浅見先輩が……」

    誠子「持ってたね、斧とハンマー」

    誠子「あんなん持って現れたから、思わず体固まったなー」

    「……確か、サボりにきた、って言ってましたよね」

    透華「あら、そうなんですの」

    透華「門松葉子は脱出すると息巻いておりましたわね」

    透華「ずーっと壁を壊そうとしていたようですし」

    透華「斧、ナタ、ハンマーは1つずつ、彼女のいるトイレにあったようですわ」

    誠子「そんなに色々持ってても、使い切れない気がするけど」

    透華「床に置いて、色々試していたようです」

    透華「……傍に武器があることで、ナイフを持った人物が来ても大丈夫、と思いたかったのでしょう」

    537 = 534 :


    誠子「んー、じゃあ、こっそりトイレに行って斧とか持ち出す、ってのは無理っぽいね」

    透華「焦りの色も濃かったようなので、無理ではないでしょうが……」

    「相当リスキー、ですよね」

    透華「こっそり持ちだそうとした時点で、殺し合いになってもおかしくありませんからね」

    誠子「まあ、それだったら手伝うって嘯いて貰った方がいいか」

    透華「その場合、門松葉子が真っ先に襲われてそうですけどね」

    「ちなみに……」

    「残りのナタとハンマー、あとナイフは……」

    透華「……」

    透華「ナイフは相変わらず、誰が持って行ったか分からず、ですわ」

    誠子「……」

    誠子「まあ、行方は分かったけどね」

    誠子「……死体に刺さってたから」

    「……」

    透華「……それと……」

    透華「残ったナタとハンマーは、上柿恵が持ち歩いていました」

    透華「正確に言うと、上柿恵がナタ、私がハンマーですけど」

    誠子「ああ、そーいえば、二人して行動してたんだっけ」

    透華「ええ」

    透華「ナタを持って一人でうろついていると、ばったり会った際怯えられて襲われるかもしれない――」

    透華「そう相談されて、付きそうことになりました」

    538 = 534 :


    透華「……」

    透華「実は……」

    透華「今日は、12時45分から愛宕洋榎と交代予定だったんですの」

    「それって……」

    「死体発見アナウンスのちょっと前……ですよね」

    誠子「何でそんな中途半端な時間に?」

    透華「最初は12時半か12時、ということだったんですけれど……」

    透華「少々予定が立て込んでいるので、遅らせてくれと言われまして」

    透華「彼女も、色々と動いてくれてましたので、承諾しましたわ」

    誠子「それならいっそ1時に変わればよかったんじゃ」

    (き、聞きにくいことズバズバ聞いてる……)

    透華「……」

    透華「それについては、あとから説明しますわ」

    透華「とにかく――交代は12時45分予定でした」

    誠子「……」

    誠子「あれ?」

    透華「……そう」

    透華「12時は、本来、私がまだ見張りを続けねばならない時間帯でしたわ」

    透華「ですが――」

    透華「私は、上柿恵の懇願を聞き、共に行動してしまった」

    透華「結局これまで門松葉子達以外武器を持ちださなかったこと」

    透華「そして、今日も誰も訪れなかったことから――」

    透華「油断、していたのですわ」

    透華「辻垣内智葉も見回りをしていましたし、大丈夫だろうと、考えて……」

    透華「それよりも、ばったり遭遇し争いになりかねない、凶器を持った人物を一人でうろつかせない方を優先し……」

    透華「結果が――これ、ですわ……」

    透華「……誰も死なせない、なんて息巻いて……」

    透華「情けない、ですわね……」

    「そんな……」

    誠子「えと、よくやってると思うけどな、私は」

    539 = 534 :


    透華「……」

    誠子「あ、あーっと、あとあれ」

    誠子「アナウンスのあと、どー行動してたのか聞いてもいいかな!」 アセアセ

    透華「……ええ」

    透華「私と上柿恵は資料室にいました」

    透華「本棚をどければ、意外と薄い壁があるのではないか、と思いまして」

    透華「その最中、死体発見アナウンスが流れ出して……」

    透華「場所が分からなかったものの、とにかく行かなくては、と思い」

    透華「混乱する上柿恵の手をとって、あてもなく駆け出しました」

    誠子「あのアナウンス、確かに場所教えてくれないのが不便だよなあ」

    「私達も、偶然桧森先輩の悲鳴が聞こえて場所が地下って分かっただけですもんね」

    誠子「誓子だけに、地下ってね」

    「……」

    透華「……」

    誠子「……ごめん、続けて」

    透華「部屋にこもっている方もいるようでしたので、部屋で事件が起きたのでは、と階段を登って――」

    透華「途中、部屋から飛び出したという小走やえと会いましたわ」

    透華「それで2階では騒ぎになっていないということで、引き返しって地下に行き――」

    透華「武器庫に辿り着き、そして……」

    誠子「……そっか」

    誠子「とりあえず、小走先輩が死体発見アナウンスの時に2階にいたのは確かみたいだね」

    「……そうですね」


    ▼コトダマ【龍門渕透華の証言】が追加された!

    540 = 534 :


    透華「それと……」

    透華「さっきのことですが……」

    誠子「さっきの?」

    「1時交代にしなかったことについて……ですよね」

    透華「ええ」

    透華「……愛宕洋榎は、どうやら1時丁度に、約束をしていたようですの」

    誠子「約束?」

    透華「……」 チラ

    ちゃちゃのん「……」

    ちゃちゃのん「うん」

    ちゃちゃのん「」ちゃちゃのん、ヒロちゃんに、呼ばれちょってん」

    ちゃちゃのん「1時に武器庫来てくれーって」

    胡桃「……え?」

    誠子「ん? どうかしたの?」

    胡桃「ううん……ただ、私も洋榎に呼ばれてたから……」

    透華「どうやら、2人を慰めようとしていたようですわね」

    透華「実際あの武器庫、あまり人が近寄らないので、ゆっくり話しやすいといえば話しやすいですし」

    誠子「まあ、小窓のおかげでオープンではあるし、外から見えない部屋の中よりは会いやすい……のかな」

    (周りが武器だらけって、あんまり怯えた人を呼ぶのに向いてないとは思うけど……)

    (他に適当な場所がないし、しょうがないか)

    541 = 534 :


    誠子「それで、第一発見者になっちゃったんだ」

    ちゃちゃのん「……うん」

    ちゃちゃのん「正確には、第一発見者は胡桃ちゃんじゃんけどね」

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは、ヒロちゃんに呼ばれても、やっぱりちょっと怖くって、なかなかお部屋出れへんかったし」

    胡桃「……私も不安で不安でしょうがなかったけど、むしろだから早く洋榎に会いたかったな」

    ちゃちゃのん「で、ちゃちゃのんが時間ギリギリで武器庫に向かう途中、ガチャルームで……」

    「あー……」

    誠子「声かけられたんだっけ」

    ちゃちゃのん「うん」

    ちゃちゃのん「じゃけど約束があったけえ、お話もろくにせんと武器庫に向かって……」

    ちゃちゃのん「扉にすがりついて、ヒロちゃんの名前を叫ぶ胡桃ちゃんに会ったんじゃ」

    ちゃちゃのん「ただならぬ空気じゃったし、小窓を覗き込むと――」

    ちゃちゃのん「真っ先に、血だまりが目に飛び込んできて……」 カタカタ

    ちゃちゃのん「視線を下ろすと……」 カタカタ

    ちゃちゃのん「ぐったりとしたヒロちゃんが、ドアにもたれかかっちょるようで……」 カタカタカタカタ

    胡桃「……」 ジワッ

    透華「……そして、愛宕洋榎の名を叫ぶ2人の声を聞きつけた辻垣内智葉が、死体を押しのけるようにして無理矢理扉を開けた」

    透華「そうですわよね」

    ちゃちゃのん「うん……」



    ▼コトダマ【佐々野いちごの証言】が追加された!

    542 = 534 :


    ちゃちゃのん「……」

    ちゃちゃのん「ちゃちゃのんが……」

    ちゃちゃのん「もっと早くに行けちょったら」

    ちゃちゃのん「ヒロちゃんは……死なずに済んだんかいのう……」

    透華「……それを言うなら、私がきちんと交代まであそこにいれば……」

    胡桃「……」

    胡桃「馬鹿だよ、洋榎……」

    ちゃちゃのん「え?」

    胡桃「待っててくれる妹がいて、外にもいっぱい友達がいて……」

    胡桃「泣いてくれる人も、いっぱいいて」

    胡桃「絶対……生きて帰らなきゃいけないはずだったのに」

    胡桃「私達になんて構わず……自分の安全だけを考えてればよかったのに」

    胡桃「馬鹿だよ……」 グズッ

    ちゃちゃのん「う、うう……」

    誠子「……」

    誠子「行こう、咲」 コソ

    「……はい」

    (悲しいけど……私まで塞ぎこむわけにはいかないもんね……)

    (洋榎先輩のためにも、絶対にクロを突き止めるんだ……!)

    543 = 534 :


    <武器庫>

    やえ「あ……」

    やえ「……」

    やえ「もう、ここに来て大丈夫なのか?」

    「……はい」

    (先に食堂に行って、よかったかもしれない)

    (おかげで……)

    (辛いけど、絶対に真相を明かさなくちゃって思えたし……)

    誠子「あれ?」

    誠子「この床……」

    誠子「部屋の奥の方から血が続いてない?」

    「本当だ……」

    誠子「でも死体はもっと手前にあるけど……」

    やえ「死体があそこにあるのは、無理矢理扉を開けた際に体が動かされたからだな」

    (ということは、奥の方で出血して、それからドアまで運ばれた……?)



    ▼コトダマ【床の血の跡】が追加された!

    544 = 534 :


    誠子「血の跡は、あっちの棚の方から続いてるのか」

    誠子「……あれ?」

    「どうかしたんですか?」

    誠子「これ――」

    誠子「ナイフ、2本なくなってない?」

    「え?」

    「あ――本当ですね……!」

    やえ「ああ」

    やえ「いつの間にか、もう一本なくなっていたんだ」

    やえ「……もしかすると、一本はまだ持っていかれたままで、残った一本が事件に使われたのかもしれないな」

    「……」



    ▼コトダマ【武器庫のスペツナズナイフ】が追加された!

    545 = 534 :


    誠子「……それじゃ、死体を……」

    「……」

    (手を合わせ、黙祷を済ませて――)

    (しっかりと、洋榎先輩を見据える)

    (まだ、弔ってあげることもできないけれど)

    (せめて事件を解決させて、洋榎先輩が守りたかった人達を守るんだ……)

    (それで――ここから出たら、お墓をつくってあげなくちゃ……)

    「……」

    誠子「……あれ?」

    誠子「これ……」

    「どうかしたんですか?」

    誠子「なんか、ナイフの刃だけが刺さってるんだけど……」

    那岐「スペツナズナイフだからな」

    「うわあ!」

    誠子「び、びっくりした……!」

    「い、いたんですね……」

    やえ「見張りは二人一組という話だっただろう?」

    「そうなんですけど……」

    誠子「全然喋ってなかったし……」

    「何でそんな部屋の隅っこに……」

    那岐「死体から遠ざかりすぎるわけにもいかないけど……」

    那岐「正直何かちょっと怖いからだ!」

    那岐「ここなら適当に距離を保てるし、なんかこう、不気味な捜査から一線置いてる感じがだな」

    誠子「ああ、そう……」

    546 = 534 :


    誠子「……っていうか、何でパジャマ?」

    那岐「うぐっ!」

    那岐「ま、まあ、さっき色々あって、着替えをだな……」

    やえ「本当なら止めたかったのだが、早めにホールを出たからと懇願されてな」

    やえ「……まあ、あれだけの悲劇が眼前で起きたんだ」

    やえ「着替えの理由は察してやってくれ」

    誠子「?」

    「あー……」

    やえ「ランドリーに衣類を放り込む間も、倉庫でズボンを調達する間も、廊下を見ていたが……」

    やえ「誰もまだホールから出てこなかったし、現場は荒らされていないはずだ」

    「……」

    (その順番で回ったってことは、ランドリーに服入れてから倉庫まで裸だったのかな……)

    547 = 534 :


    那岐「そ、それよりっ!」

    那岐「スペツナズナイフって、聞いたことないかな?」

    誠子「うわぁドヤ顔……」

    誠子「いやまあ、聞いたことないけど……」

    「モノペンファイルに載ってましたよね」

    「凶器の正式名称みたいで……」

    那岐「ふっふっふ」

    那岐「剣士として、教えてやろう」

    那岐「スペツナズナイフというのは、まあざっくり言うと、刀身が飛び出すナイフだな」

    那岐「勢いよく射出されて、そのナイフで刺殺する暗器の一種だ」

    誠子「へえ……」

    「意外と詳しいんですね……」

    やえ「まあ、全てさっき辻垣内智葉に教えられた知識だがな」

    那岐「あ、ちょ、バラさなくても!」

    やえ「どうでもいいことで裁判中ウソついた云々で揉めぬためだ」

    誠子「剣士キャラなのに、こういう武器は知らないんだ」 ニヤニヤ

    那岐「わ、私は誇り高い武士だから、そういう西洋の刀はだな……!」

    那岐「に、日本刀なら結構わかるし……」

    誠子「へえ、例えば?」

    那岐「と、トラテツとか……」

    「……」

    (コテツ……)

    548 = 534 :


    やえ「どうやら今回の凶器はそれらしい」

    やえ「そして――」

    やえ「どうやら武器庫のナイフの内、いくつかはスペツナズナイフのようだ」

    誠子「まさに暗器として使う用、か……」

    やえ「実際スイッチも相当わかりづらくてな」

    やえ「指でそーっとなぞってようやく分かったくらいだ」

    やえ「これがソレだ」

    「……グリップ部分についてるんですね」

    やえ「鍔に付いているものもあるらしいが、ここにあるのは全てグリップ部分だな」

    やえ「スイッチの出っ張りも目立たなくなっているし、色も同じ」

    やえ「他のナイフと同じと思わせるための迷彩だろうな」

    那岐「偉そうに語ってるけど、これも全部教えてもらった情報だからな」

    やえ「ああ」

    やえ「資料室の本に、詳しく書かれていたらしい」

    「勤勉に本を読んでいた者が有利になる……ということでしょうか」

    やえ「だろうな」

    やえ「あくまで名目は勤勉に麻雀に取り組ませることであり、真面目なものほど有利になるというわけだ」

    549 = 534 :


    那岐「ほーん」

    那岐「私にも見せてくれ」

    那岐「剣士として後学のためにな」

    誠子「武士の武器には卑怯な気がするけど」

    那岐「まあそう言わず――」 カチッ

    バシュッ

    ビイーーーーン・・・

    誠子「……」 パクパク

    「……」 ヘナヘナ

    やえ「ちょ、何やってんだ!」

    那岐「ち、違……」

    那岐「こ、こんな簡単にスイッチ押せるなんて思わないじゃないか!!」

    やえ「馬鹿者!」

    やえ「私達でも使えるようにカスタマイズされているに決まっているだろ!」

    誠子「うっわ、思ったよりえげつない射出速度……」

    誠子「壁に刺さってまだ揺れてるし……」

    誠子「……大丈夫?」

    「は、はい……」

    (か、掠った!? 今髪の毛掠った!?)

    (……うう、ちょっと漏れた……)

    550 = 534 :


    誠子「……」

    誠子「そーいえば、今刃が刺さってる壁といい……」

    誠子「武器の乗った棚がない壁もあるんだなあ」

    「……言われてみれば……」

    那岐「そんなに用意できなかったんじゃないか?」

    誠子「なるほど」

    やえ「いや……」

    やえ「そちらの壁に関しては、そこにあるとドアが開かなくなるからだろ」

    やえ「内開の扉が全て開けられるようにするには、障害物と成るものがあっては困るからな」

    「……」

    「死角になるから、とか」

    誠子「え?」

    「武器を取る姿を見られないよう工夫しろ、みたいなところがありますよね、小窓の存在と言い」

    やえ「ああ、そうだな」

    「……なので、小窓から見える範囲にしか、武器が置いていないとか……」

    誠子「あー、なるほど」

    やえ「武器のない壁も見えなくはないが、普通に扉の前に立って見やすい位置ではないもんな」

    誠子「廊下を歩いてる途中に小窓覗けば~ってレベルだしね」

    「……」

    誠子「ま、小窓については後で実際覗いてみるよ」


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