元スレ勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
651 :
これ、勇者は姫と結婚するしか無いな
王道だと幼馴染と、だけどこいつらと結婚しても子供出来る気しないってかその前段階で勇者の勇者が死にそう
まあプラトニックな関係ならいけるか
652 :
聖女や女闘神、女大富豪を幼馴染みと言ってるのかもしらんが
団長の娘ちゃんの方がよっぽど(表記的にも)幼馴染みだから
653 :
しかしこれでも勇者は後世に残るほどの英雄になったわけだ
某漫画でもいってただろ勇者とは勇気のあるもの真の勇気は打算なきものって
654 :
>>648
ステータスを見る限り、一般的なスライムよりは遥かに強かろう
しかし9999億パワーの仲間たちにとっては100と10の違いなんて比べようにも比べられない
相対的にみると自分(四人とゴーレム一体)の力を1としたら
勇者が0.0000000001、スライムが0.0000000001だからな
655 :
最後の最後まで誰も気づかない可能性もあるし
5人の力を勇者一つに束ねたスーパー勇者人神(ゴッド)の可能性も(ry
656 :
聖女が力分けただけで結構強めの女が魔王・女神以上になっちゃう連中だからな
勇者の心が折れないと良いけど
657 :
女神の悩みがもう魔王どころではなかった
658 :
やはり空気を読んでの神託だったか、つまり勇者は元々勇者ではなかったと言うことか……何とも言えんこの……煮え切らない何だ?
659 :
勇者「僕が勇者になれたのはみんなのおかげだ」
女神「あなたが勇者になれたのはみんなのおかげです」
660 :
突然の土砂崩れが両親を奪いさえしなければ、勇者も一緒に魔老師の教えを受けられたはずだ
つまり戦犯山肌
661 :
環境も師匠もなくあそこまで強い賢者がやっぱスゴい
過去だと勇者は才能ある五人に色々勝ててたみたいだし女神の加護付きとはいえ僧侶以外で回復魔法使えるようになったりと土台はありそうだが
さてどうなるか
662 :
こんな胃が痛くなるSS本当は読みたくないけどついつい読んでしまう…
663 :
これって五人がこんなに強くならなければ、てか師匠があの山にこなかったら、大賢者が神託受けてたパターンあるのかな?どう考えても素の人間なら最強だろうし。
664 :
>>650
ドラクエ以外の本来のスライムだろ
665 :
「実際」なんて言葉は自分も違和感だったわ
初出とかならまだ分かるけど物語的にはウィザードリィやハイドライドよろしく弱キャラなんやろ
666 :
まあ勇者も村人程度には強くなれるだろう
限界突破と覚醒繰り返せる位存在自体がぶっこわれてないとそれ以上は無理っぽいし
667 :
勇者って何なんだろうね。優しさって時に残酷なんだと実感させられたよ。
>>644 それをした場合聖女が天界に攻め入る可能性が……
668 :
>>294
もうここの女神の神託の台詞とか完全に魔王の事じゃない感がスゴいな
669 :
負けないで(魔王にとは言ってない)
670 :
魔王はついで
671 :
何で魔王討伐PTに真魔王がいるんですかね……
672 :
ドラクエ4やクロノトリガーのパーティにも魔王がいただろ
673 :
ピーちゃんは魔王じゃなくてピーちゃんだから
674 :
真魔王≠魔王
なにも問題はない
675 :
ー 山奥の村 ー
勇者「それじゃあ、みんな。今日はゆっくり休んで明日から冒険の旅に出ようか。みんなの話とかも聞きたいし」
聖女「そうだね。わたしたちも勇者の話を聞きたいから」
剣聖「ああ、じゃあ一旦村に戻るか」
真魔王「あ、待って。その前に先生に報告しに行こうよ。ここからすぐ近くだし」
女闘神「そうだな。勇者が来たって、師匠に報告しに行くか」
女大富豪「賛成!」
勇者「先生? 師匠?」
676 = 675 :
真魔王「うん。僕たち五人の先生だよ。勇者が王都に行ってから、しばらくしてからかな? 偶然会ってさ」
聖女「魔族だったから最初は驚いたんだけど、とってもいいお爺ちゃんだったの」
勇者「魔族!?」
女大富豪「あ、魔族って言っても、誤解しないでね! 先生は魔族の中でも特別で、優しくて穏やかな人だったから」
剣聖「ああ、魔王の事も悲しんでた。元は魔王の師匠だったんだが、魔王がああなったのも自分の責任だって嘆いてたし」
勇者「魔王の……師匠!?」
女闘神「それぐらい強かったんだよ。だけど、本当に良い爺ちゃんだった。村の人たちとも仲良くなってさ! ホントだから!」
真魔王「うん。村長とか神父様とか他の人にも聞いてもらえばわかるよ。先生は特別だって絶対に言ってくれるから」
勇者「……そうなんだ。みんながそう言うなら、それを信じるけど……」
聖女「うん。お爺ちゃんはいい人。勇者もそこは信じて。魔族だからって偏見を持たないでね。良い魔族の人だっているんだから」
勇者「うん。わかった。大丈夫だよ。偏見は持たない。安心して」
女大富豪「良かった。勇者に誤解されたら困るから」
真魔王「うん、信じてもらえて良かったよ」
677 = 675 :
女闘神「それで、話を元に戻すけど、その師匠がメチャクチャ強かったんだよ。だから、あたしら全員弟子入りしたんだ」
聖女「わたしたちだけじゃなくて、村のみんなもだよ。護身術を教えてもらったの」
勇者「え!」
女大富豪「急にどうしたの、勇者?」
勇者「あ、いや、なんか村の人たち、メチャクチャ強くなってたから……。ひょっとしてって……」
剣聖「ああ、そういえば、前に比べればみんな強くなったよな」
真魔王「そうだね、特に『女村人B(名前)』さんとか、かなりのものじゃないかな? 先生も筋がいいって誉めてたし」
勇者「それで……。そうか……」
聖女「お爺ちゃん、教え方もスゴい上手だったんだよ」
剣聖「最初、レベルが違いすぎて何を言ってるのか全然わからなかったけどな」
ダヨネー、ホントダヨー、アハハッ
勇者(そんな強い人がこの山にいるんだ! なら、俺も教えを乞えば、きっと今より強くなれる! なんかやる気出てきたぞ!)
678 = 675 :
女闘神「ま、そういう事でさ。師匠には村のみんな感謝してるんだ」
剣聖「俺達が束になってかかっても、きっと全盛期の師匠には叶わなかっただろうな。それぐらい強かった」
勇者「みんな、いい先生に出会えて良かったね。それで、俺も是非会って、しばらくここで学びたいんだけど、いいかな? 俺にも紹介してくれないかな」
聖女「うん……。紹介はもちろんいいんだけど……」
勇者「?」
女大富豪「学ぶのはもう……ダメなの。だって……」
真魔王「二年以上前に、病気で亡くなっちゃってね……。だから、これから行くのは先生のお墓なんだよ」
勇者「あ……」
679 = 675 :
勇者「そっか……。そうなんだ……。ごめん」
剣聖「いや、元から長くない身だったんだ……。死期が近いって、師匠も悟ってたからな……」
女大富豪「会う度にどんどんやつれていってね……。あの頃は辛かったな……」
聖女「でも、死に顔は安らかだったよ……。お爺ちゃんも満足して冥界に行ったと思う……」
女闘神「ああ、あたしたちに魔王の事を託してな……。だから、師匠の為にも、あたしらは絶対に魔王を倒さなきゃいけないんだ!」
真魔王「うん。必ず」
女大富豪「争い事が嫌いな先生でさ……。魔王の事でずっと心を痛めてたからね……」
勇者「……そっか。本当に良い先生だったんだね。会えなくて残念だよ」
剣聖「ああ、最高の師匠だった。俺達の誇りだ」
聖女「うん……。お爺ちゃんにはスゴく感謝してる」
女大富豪「私達の今があるのも、全部、先生のおかげなの」
勇者「……そっか。……俺にとっての騎士団長みたいな存在なんだ」
真魔王「勇者も……良かったらお墓まで付き合ってくれないかな。先生に紹介したいんだ。先生も勇者に会ってみたいって言ってたからさ」
勇者「うん。付き合うよ。俺も一言、挨拶をしておきたいから」
女闘神「ありがとな、勇者。じゃあ、こっちに来てくれ。案内するよ」
勇者「うん」
680 = 675 :
ー 魔老師の墓 ー
剣聖「ここだ。墓は俺達で建てたんだ」
女闘神「師匠は、静かに生きて静かに死にたいって、そういう人だったからさ。だから、死んだら墓とか建てずにこの山のどこかにひっそり埋めてくれってそう言ってたんだけど、それじゃ、あまりにも寂しいからさ……」
そこは崖の上、周りには色とりどりの花が咲き、山全体を見渡せる景観素晴らしき場所
そこに大理石で作られた十字型の小さな墓が建っていた。墓碑には名前も没した年数も書かれておらず、代わりにたった一言
『偉大なる恩師、ここに眠る』
681 = 675 :
勇者「村の墓地じゃないけど……魔物とかに壊されたりしないの? 大丈夫?」
聖女「わたしと真魔王で結界を張ってるから平気だよ」
真魔王「先生、ここからの景色がお気に入りだったからさ。どうしてもここに建てたかったんだ」
勇者「……そっか」
勇者「でも、結界とか凄いね……。そんな事も出来るんだ、二人とも」
聖女「それも、全部お爺ちゃんが教えてくれたから……」
真魔王「先生は何でも知ってたからね。知らない事なんかなかったんじゃないかってぐらい、色々知ってたよ」
勇者「……みんな、きっとかなり強くなったんだろうね」
女闘神「ああ。子供の頃よりもずっとな……」
女闘神「……師匠、見えるか? 伝説の勇者が今ここにいるよ。子供の頃からの約束を果たしてくれたんだ。あたしら、とうとう魔王を倒す旅に出るんだよ」
女大富豪「どこまでやれるかわからないけど……。私達、頑張るから。だから、ずっと見守っていて」
剣聖「師匠から教わった事、その集大成を全部魔王にぶつけて来るからな」
真魔王「先生の教えが正しかった事を、魔王に会って伝えてきます。そして、みんなでそれを証明したいと思います」
聖女「勇者がきっと、みんなを導いてくれるから……。だから、お爺ちゃんはわたしたちの後押しをお願い。お爺ちゃんの望んでいた平和な世界を作れるように……」
勇者「……初めまして、勇者です」
勇者「……出来れば、貴方とは生きている時にお会いしたかった。俺も教えを乞いたかったし、何よりみんなからこれだけ信頼され、慕われている貴方を一目見たかった……」
勇者「まだまだ未熟者ですが、女神様に代わって魔王を必ず倒してきます。どうかそれをここから見守っていて下さい」
魔老師の墓「」……
682 = 675 :
剣聖「……それじゃあ」
女大富豪「うん……。報告も済んだしね。村まで戻ろうか」
聖女「歩きでいいよね? 折角だし、ゆっくり勇者の話を聞きながら行きたいな」
真魔王「そうだね。王都に移ったばかりの頃の話とか、あと、それからの話とか色々。教えてよ」
勇者「結構、長くなっちゃうけどいい?」
剣聖「もちろん! 勇者の波瀾万丈な英雄譚だしな!」
女闘神「楽しみにしてたんだぜ! 聞かせてくれよ!」
勇者「うん……。じゃあ、王都に行ったばかりの頃から……」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
683 = 675 :
ー 夕方、村の集会所 ー
村長「では、この村から伝説の勇者様が出た事に」
「カンパーイ!!」
カチンッ、カチンッ、カチンッ
村人A「十五年振りに帰ってきた『勇者(名前)』にー……」
「カンパーイ!!!」
カチンッ、カチンッ、カチンッ
女村人B「明日からの勇者パーティーの活躍にー……」
「カンパーイ!!!!」
カチンッ、カチンッ、カチンッ
神父「世界平和の、前祝いに」
「カンパーイ!!!!!」
カチンッ、カチンッ、カチンッ
女闘神「ははっ、すっかり全員出来上がっちまったな」
真魔王「主役もいないのに、大盛り上がりだね。村の全員が集まって来てるし」
684 = 675 :
聖女「あれ。そういえば、勇者は?」キョロキョロ
剣聖「勇者なら、挨拶に出掛けてるぞ。あいつの両親のところへな」
聖女「あ、そっか……。お墓に……」
女闘神「王都にもお墓は建ってるらしいけど、やっぱりこっちのは特別だろうからな……」
女大富豪「十五年振りに会うんだね……」
真魔王「うん……」
685 = 675 :
ー 村の墓地 ー
勇者「ただいま、父さん、母さん」ソッ (花を添える)
墓「」……
勇者「もう少し早く来るつもりだったんだけど、戻ったら村のみんなが総出で出迎えてくれてさ。改めて挨拶とかしてたら、かなり遅くなっちゃったんだ」
墓「」……
勇者「それと、これ、わかる? 王様から頂いた勇者の印だよ」スッ
墓「」……
勇者「子供の頃、父さんは無理だって言ってたけど、俺、本当に勇者になれたんだ……」
勇者「母さんは応援してくれてたよね。おかげで夢が叶ったよ……」
墓「」……
686 = 675 :
勇者「王都での生活もさ、悪くなかったよ。最初はみなしごとか田舎者とか言われて散々からかわれたけど、でも、段々とみんなと仲良くなれてさ……」
墓「」……
勇者「それで、努力して……学校の成績も、剣術や魔法も一番になってさ……」
勇者「友達も沢山出来たよ。騎士団長の子供とも仲良くなったよ。色々な思い出が一杯出来たんだ」
勇者「騎士の試験にも受かってさ。それで手柄を立てて、騎士長に抜擢されて……。その後、騎士隊長にも昇進して……」
墓「」……
勇者「今は勇者だよ……。今なら、父さん母さんに誇りを持って言えるよ」
勇者「俺を生んでくれてありがとうって……。育ててくれてありがとうって……」
墓「」……
687 = 675 :
勇者「明日から、魔王を倒す旅に出るから……。また当分会えなくなるだろうけど、心配しないでね……」
墓「」……
勇者「俺には頼もしい仲間たちがいるから。みんな、この村で良い先生に出会えたらしくって、きっと凄く強くなってるんだ」
墓「」……
勇者「俺もしばらくは、旅をしながらみんなに特訓をつけてもらおうって思ってるしね……。俺はまだまだ強くなれると思う」
墓「」……
勇者「だから、次にここに来る時には、花じゃなくて……。この世界の平和を供えにくるよ……」
墓「」……
勇者「必ず魔王を倒して帰ってくるから。それまで待っていてね、父さん、母さん……」
墓「」……
688 :
ええ話や
689 :
勇者がパーティーの誰かに軽く小突かれる瞬間が訪れませんように……
690 :
女神は勇者(名前)にひどいことしたよね?
691 = 675 :
ー 村の集会所 ー
ワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ
剣聖「……そういえば、勇者だけでなく、牧場のおじさんの姿も見えないな」キョロキョロ
女大富豪「あ、うん……。誘ったんだけど、流石に遠慮するって言われたの。おじさん、ちょっと勇者に対して引け目があるからね」
聖女「勇者は別に気にしないと思うんだけど……。それでもって」
真魔王「『あの事』があるから会い辛いんだろうね。僕らに対しても、まだ秘密にしてくれって言ってたよ。魔王を倒して戻ってきたら、自分から話すつもりだからって」
女闘神「おっちゃん一人のせいじゃないとはいえ、辛い立場だろうからな……。気持ちはわかるけども……」
剣聖「まあ、こればっかりはな……。おじさんの気持ち次第だし、俺達じゃどうにもならないか……」
聖女「あ、あと、その時また『例のセリフ』言ってたよ。明日は旅立ちの日だから、こっちも魔王を倒してからになっちゃうけど」
女闘神「お、それ本当か? そりゃ気合い入れなきゃな」
真魔王「その前に、魔王を倒さないといけないんだけどね。全員無事に帰ってこられるといいんだけど……」
聖女「……大丈夫だよ、きっと」
女大富豪「そうね……。そう信じるしかないわね」
剣聖「こっちには伝説の勇者もいるしな」
女闘神「うん!」
692 = 675 :
ガチャッ
勇者「……ただいま」
聖女「あ、お帰り、勇者! もうお話は済んだの?」
勇者「……うん。終わった。伝えたい事は全部伝えてきたから」
剣聖「そうか……。なら、いいけどな」
村人C「おおっと! おーい、みんなー、伝説の勇者様が帰ってきたぞー!」
村人D「なら、乾杯すっかー! 勇者が戻ってきた事にー……」
「カンパーイ!!」
カチンッ、カチンッ、カチンッ
女村人E「勇者っ! 勇者っ!! もう一回っ!! それっ!!!」
「カンパーイ!!!」
カチンッ、カチンッ、カチンッ
勇者「えっと……」
女闘神「ま、見ての通り、村のみんなはもう完全に出来上がっちまってるからさ」
693 :
勇者が無事に帰って来れればいいけど
694 = 675 :
村人F「おーい、勇者ー! こっち来てくれ! お前も飲もうぜ、今日はしこたま飲み明かそうぜー!」フラフラ
女村人B「そうよー、勇者ー。こっち来て、こっち。おばさんにさー、色々と話聞かせてよー。ねえねえ」ヨロヨロ
真魔王「モテモテだね、流石は勇者」ニコッ
勇者「……性格悪くなった? 真魔王」
女大富豪「ま、今日はもう無理かな。おばさん、ああなるとなかなか止められないからね」
剣聖「諦めて、酒の肴になってきな。俺達とは明日も話せるからな」
聖女「二日酔いに気を付けてね、勇者」
勇者「……だね。覚悟しとく。ある意味、魔王相手にするより怖いかも」
ハハハッ、イイスギダッテ、アハハッ
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
695 = 675 :
こうして、この日の夜はゆっくりと更けていく……。
故郷の温かさ、人々の希望、仲間からの信頼、そして絆、そんなものを勇者は感じ取りながら……。
心地好さと共に、時間も酒も通り過ぎていき、気が付けば深い眠りの中へと勇者は落ちていった……。
『勇者伝記』には、この夜の事がこう記されている。
勇者は仲間たちと共に笑い合い、それぞれの近況や過去の思い出話に花を咲かせ、大いにこの時間を楽しんだ。
故郷の温かさにも触れ、旅立ちの鋭気を養い、決意をより強く固めさせた。
後に勇者はこの様に述懐している。
『この夜は、自分の人生の中で二番目に最高の夜だった。仲間の頼もしさを次々と知り、ひたすら感激するばかりだった』
『良き友に、亡き父母に、生まれ故郷に、これほど感謝した日はなかった』と……。
696 :
酒の席……背中を叩いたりとか……。
697 = 693 :
酔って手加減できなかったり
698 = 675 :
だが……。
近年になって、南の国の地下遺跡から発見された一冊の書物。
勇者の自伝書とも、巧妙な偽書とも噂される『名もなき告白』には、こう記されている。
タロットカードの『愚者』同様、この時の私は何も知らない事で幸福でいられた。
私はこの夜、自分の過去を散々語りはしたものの、仲間の過去については機会を逃して聞けずにいたのだから。
また、幾つか推理の欠片となるものを与えられてはいたが、それは私の想像出来る範疇を遥かに越えるものであり、その少ない情報から真実に辿り着くのは恐らく誰でも不可能だっただろう。
聖女の名前を教会は公表していなかったし、女闘神は偽名を使っていた。真魔王は人間界では無名であったし、女大富豪は七つ星商会の方が有名過ぎて会長の名前はろくに巷に流布していなかった。
結局、私が知っていたのは、東の国の国王たる剣聖の名前だけだったが、それも同姓同名の別人だと私は初めから思い込んでいた。
この勘違いを誰が責められるだろうか。自分の幼馴染みが十五年の間に別の国の国王になっているなどと、誰が考えるだろうか。
(中略)
村人の強さから考えるに、この時点で、仲間が自分より強いであろう事は、ある程度、予想はしていた。
しかし、それはやはり『ある程度』であり、規格外な予想など私に出来るはずもなかった。
(中略)
この時点で、私の仲間達は、そうそうたる地位や肩書きを既に得ていた。
しかし、私が『伝説の勇者』という事もあり、それに比べれば大した事はないと考えていたらしく、誰もが自分からそれを言い出す事はなかった。
また、私の仲間達は、前述した師の教えにより、謙虚さを全員が身に付けており、自慢や見栄を張る様な真似は一切しなかった。
それも、私がこの事について気付くのが遅れた一つの要因となった。
(中略)
……そもそもの話をすれば、私はこの時、勇者に選ばれた事によって根本的な勘違いをしていた。
これは私が主役の物語だと心のどこかで思い込んでいたのだが、真実は一人の間抜けなピエロの話でしかなかった。
仲間と私とでは、太陽と蟻ほどの強さの差があったのだから……。
だが、この時の私はそれに全く気が付いていなかった……。
※注釈
タロットカードの『愚者』の絵柄は、上を向いてて先の崖に気付かず、幸せそうに歩いていく男という構図になっている。
699 = 675 :
記述に食い違いがある、この二つの書物……。
そのどちらが正しくて、どちらが間違っているのか。あるいは、何が真実で、何が嘘なのか。
それは、長い歴史の影に埋もれ、最早誰にも確かめようがない……。
だが、例えどちらであろうとも、『伝説の勇者』の冒険を記した書物には、ある一点のみ必ず共通している事がある。
それは、『伝説の勇者』の伝説は、この翌朝から始まるという事である……。
700 = 675 :
ここまで
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