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元スレ勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」
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ー 十五年前、とある村 ー
少女A「」エグッ、エグッ
少年B「とうとうお別れの日が来ちまったか……」ゴシゴシ
少女C「勇者! 向こうに行っても元気でやるのよ!」グスッ
少年D「僕たちの事、絶対忘れないでね!」グスッ
少女E「約束だからね! 十五年後の今日、またこの木の下に来て、それでみんなで魔王を倒しに行くんだから!」
子供勇者「わかってる! 俺、その時は絶対勇者になってるから! 絶対に! 絶対に!」ポロポロ
少女A「わたしは立派な……僧侶に……」グシュッ
少年B「俺は戦士だ!」グスッ
少女C「あたしは武闘家に!」エグッ
少年D「僕は魔法使いに……!」グスッ
少女E「私は商人に……!」グシュッ
全員「十五年後に、またこの木の下で!!」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1455599085
少女A「」エグッ、エグッ
少年B「とうとうお別れの日が来ちまったか……」ゴシゴシ
少女C「勇者! 向こうに行っても元気でやるのよ!」グスッ
少年D「僕たちの事、絶対忘れないでね!」グスッ
少女E「約束だからね! 十五年後の今日、またこの木の下に来て、それでみんなで魔王を倒しに行くんだから!」
子供勇者「わかってる! 俺、その時は絶対勇者になってるから! 絶対に! 絶対に!」ポロポロ
少女A「わたしは立派な……僧侶に……」グシュッ
少年B「俺は戦士だ!」グスッ
少女C「あたしは武闘家に!」エグッ
少年D「僕は魔法使いに……!」グスッ
少女E「私は商人に……!」グシュッ
全員「十五年後に、またこの木の下で!!」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1455599085
ー 十五年後、王宮 ー
国王「騎士隊長、いや、今や女神の加護を受けた勇者よ」
勇者「はっ」
国王「女神の神託通り、そなたを魔王討伐の旅へと出す事をここに宣言する」
勇者「ははっ。慎んでその任、お受け致します」
国王「思えば、そなたは一介の兵士から、最年少で騎士団の一員となり、そして更にまた最年少で騎士隊長へと就いた男」
国王「その素晴らしき剣と魔法の才能には驚いておったが、勇者となれば納得だ。そなたを失うのは魔王軍との戦いにおいて不安が残るが、しかし、勇者の旅立ちを妨げる様な事を余がする訳にはならぬ」
国王「こちらの事は気にせず、自由に旅するが良い。そなたが選び進む道こそが、それ即ち勇者の道だ」
国王「迷わず進め。そして、必ずや魔王を倒し、この世界を救うのだ」
国王「魔王を倒した暁には、我が娘である姫との婚姻をも認めよう。そなたの進む道に女神の加護があらん事を」
勇者「もったいないお言葉、ありがとうございます。不肖、この勇者、魔王討伐に全力を尽くす所存です!」
国王「騎士隊長、いや、今や女神の加護を受けた勇者よ」
勇者「はっ」
国王「女神の神託通り、そなたを魔王討伐の旅へと出す事をここに宣言する」
勇者「ははっ。慎んでその任、お受け致します」
国王「思えば、そなたは一介の兵士から、最年少で騎士団の一員となり、そして更にまた最年少で騎士隊長へと就いた男」
国王「その素晴らしき剣と魔法の才能には驚いておったが、勇者となれば納得だ。そなたを失うのは魔王軍との戦いにおいて不安が残るが、しかし、勇者の旅立ちを妨げる様な事を余がする訳にはならぬ」
国王「こちらの事は気にせず、自由に旅するが良い。そなたが選び進む道こそが、それ即ち勇者の道だ」
国王「迷わず進め。そして、必ずや魔王を倒し、この世界を救うのだ」
国王「魔王を倒した暁には、我が娘である姫との婚姻をも認めよう。そなたの進む道に女神の加護があらん事を」
勇者「もったいないお言葉、ありがとうございます。不肖、この勇者、魔王討伐に全力を尽くす所存です!」
ー 訓練所 ー
騎士団長「……そうか。遂に、勇者として旅立つのか」
勇者「はい。明日、出発します。それで最後の御挨拶に伺いました」
勇者「騎士団長様には、幼い頃から目をかけて頂き、言葉では表せない程感謝しております。長い間、本当にお世話になりました」ペコッ
騎士団長「よしてくれ。そんな堅苦しい挨拶は私は苦手だ」
騎士団長「それに、これで最後と言う訳でもあるまい。魔王を倒せば、君もここに戻ってくるのだろう? 私はその時をずっと待っているよ」ニコッ
勇者「……っ、ありがとうございます」グスッ
騎士団長「ふふっ。旅立ちの前に涙は縁起が良くない。これで拭きたまえ」スッ
勇者「はい……」ゴシゴシ
騎士団長「……そうか。遂に、勇者として旅立つのか」
勇者「はい。明日、出発します。それで最後の御挨拶に伺いました」
勇者「騎士団長様には、幼い頃から目をかけて頂き、言葉では表せない程感謝しております。長い間、本当にお世話になりました」ペコッ
騎士団長「よしてくれ。そんな堅苦しい挨拶は私は苦手だ」
騎士団長「それに、これで最後と言う訳でもあるまい。魔王を倒せば、君もここに戻ってくるのだろう? 私はその時をずっと待っているよ」ニコッ
勇者「……っ、ありがとうございます」グスッ
騎士団長「ふふっ。旅立ちの前に涙は縁起が良くない。これで拭きたまえ」スッ
勇者「はい……」ゴシゴシ
騎士団長「……もっとも、次に帰って来た時には、君は次期国王様という事になるのか。こうして気安く語り合える事もなくなるのだな。それだけが少し残念だ」
勇者「いえ、それは……ないです。俺が次期国王とか、想像もつかないですし。それに姫だって俺と結婚など……」
騎士団長「したくはないと?」
勇者「はい。姫はあれだけお美しい方ですから……」
騎士団長「君も、十分美男子だよ。自信と誇りを持ちたまえ」ニコッ
勇者「そんな……。やめて下さい」
騎士団長「やれやれ。これまで何人も女を泣かしている男の台詞ではないな。まったく、お前というやつは……」(軽く頭に手を置く)
勇者「団長……」
勇者「いえ、それは……ないです。俺が次期国王とか、想像もつかないですし。それに姫だって俺と結婚など……」
騎士団長「したくはないと?」
勇者「はい。姫はあれだけお美しい方ですから……」
騎士団長「君も、十分美男子だよ。自信と誇りを持ちたまえ」ニコッ
勇者「そんな……。やめて下さい」
騎士団長「やれやれ。これまで何人も女を泣かしている男の台詞ではないな。まったく、お前というやつは……」(軽く頭に手を置く)
勇者「団長……」
騎士団長「昔からずっと世話してるんだ。お前の考えてる事は何となくわかる。政略結婚だから嫌だと言うのだろう。姫が可哀想だと」
勇者「…………」
騎士団長「だが、私からすれば、貴族のボンクラ息子や、他所の国のバカ王子の元に嫁がされるよりは、お前の方が遥かに良いと思うぞ」
勇者「誰かに聞かれたら、不敬罪で捕まりますよ……」
騎士団長「まあ、それはいつも通り秘密だ。とにかく、今はあまり深く考えるなという事だ」
勇者「ですが、それは……」
騎士団長「魔王討伐の旅がどれだけかかるかは私にはわからない。だが、どれだけ少なく見積もっても一年か二年ぐらいはかかるだろう」
騎士団長「その間に、お前はお前で様々な体験をするはずだ。その体験が、きっと帰って来たお前に色々と教えてくれるだろう」
騎士団長「これからどうすればいいのか、何が正しい選択なのか、という事をな」
騎士団長「世界を見て、そして一回りも二回りも大きな男になって、無事にここに帰ってこい」
騎士団長「考えるのは、それからでも遅くはないぞ。未来の事に今思いを馳せるよりも、今やらなければならない事に対して精一杯努力しろ」
騎士団長「これが、私からの最後のアドバイスだ。頑張れよ」
勇者「……団長。……ありがとうございます!」
勇者「…………」
騎士団長「だが、私からすれば、貴族のボンクラ息子や、他所の国のバカ王子の元に嫁がされるよりは、お前の方が遥かに良いと思うぞ」
勇者「誰かに聞かれたら、不敬罪で捕まりますよ……」
騎士団長「まあ、それはいつも通り秘密だ。とにかく、今はあまり深く考えるなという事だ」
勇者「ですが、それは……」
騎士団長「魔王討伐の旅がどれだけかかるかは私にはわからない。だが、どれだけ少なく見積もっても一年か二年ぐらいはかかるだろう」
騎士団長「その間に、お前はお前で様々な体験をするはずだ。その体験が、きっと帰って来たお前に色々と教えてくれるだろう」
騎士団長「これからどうすればいいのか、何が正しい選択なのか、という事をな」
騎士団長「世界を見て、そして一回りも二回りも大きな男になって、無事にここに帰ってこい」
騎士団長「考えるのは、それからでも遅くはないぞ。未来の事に今思いを馳せるよりも、今やらなければならない事に対して精一杯努力しろ」
騎士団長「これが、私からの最後のアドバイスだ。頑張れよ」
勇者「……団長。……ありがとうございます!」
ー 酒場 ー
隊員A「それでは、隊長殿の栄誉ある旅立ちを祝って……」
隊員A「かんぱーい!!」
「かんぱーい!!」カチンッ、カチンッ
隊員B「いやー、しっかし、本当に隊長殿が勇者様とは!」グビッ
隊員C「子供の時から、散々聞かされてきた伝説! いつか女神様からの神託が降りて、魔王を倒す勇者様が現れるとは聞いておりましたが!」
隊員D「この国から勇者様が出るなら、多分、隊長か騎士団長様なんじゃないかって俺たち噂してたんすよ! でも、本当にそれが当たるとはなあ!」グビビッ
隊員E「…………」グビッ
隊員A「もう何回も言いましたが、おめでとうございます、隊長殿!」
勇者「ああ、ありがとう。俺も子供の時からの夢が叶って嬉しいよ」グビッ
隊員B「あ、あまり飲みすぎないで下さいよ、隊長。明日は旅立ちの日だってのに、二日酔いじゃ洒落にならないんで」
勇者「わかってる。この一杯だけにしとくから」
隊員E「」グビッ
隊員A「それでは、隊長殿の栄誉ある旅立ちを祝って……」
隊員A「かんぱーい!!」
「かんぱーい!!」カチンッ、カチンッ
隊員B「いやー、しっかし、本当に隊長殿が勇者様とは!」グビッ
隊員C「子供の時から、散々聞かされてきた伝説! いつか女神様からの神託が降りて、魔王を倒す勇者様が現れるとは聞いておりましたが!」
隊員D「この国から勇者様が出るなら、多分、隊長か騎士団長様なんじゃないかって俺たち噂してたんすよ! でも、本当にそれが当たるとはなあ!」グビビッ
隊員E「…………」グビッ
隊員A「もう何回も言いましたが、おめでとうございます、隊長殿!」
勇者「ああ、ありがとう。俺も子供の時からの夢が叶って嬉しいよ」グビッ
隊員B「あ、あまり飲みすぎないで下さいよ、隊長。明日は旅立ちの日だってのに、二日酔いじゃ洒落にならないんで」
勇者「わかってる。この一杯だけにしとくから」
隊員E「」グビッ
ー 一時間後 ー
隊員A「それにしても、俺らが一緒に旅に行けないのが、本当に残念です」グビッ
隊員B「だよな。団長様も残念がってたからな」グビッ
勇者「仕方ないさ。最近は比較的平和とは言え、防衛を疎かにする訳にはいかない。首都のここから、兵士を割く余裕はないよ」
隊員C「だからといって、隊長殿お一人で旅に出るってのもきつい話だと思うんですけど」グビッ
隊員D「せめて、直属の俺らだけでもついて行きたかったですよ」
勇者「今はどこの都市も兵士数に余裕がないんだよ。人員補充して調整したとしても、旅立ちが三ヶ月近くは延びる事になるし」
隊員A「っても、一人はねーっすよ、一人は。中隊全部とは言わないですけど、小隊の一つぐらいお供につけてもいいと思うのに」グビッ
勇者「危険な旅だし、何よりその間、給料が出ないからな。希望を募っても、どうせ誰も立候補しないさ」
隊員B「見損なわないで下さいよ、隊長殿! 自分はそれでも立候補しましたとも!」グビッ
隊員C「そうっす! それに、上手く無事で帰ってくりゃ、英雄扱いでしょうし!」グビッ
勇者「酔いすぎだぞ、お前ら」ハハッ
隊員E「ちっ……」グビッ
勇者「……?」
隊員A「それにしても、俺らが一緒に旅に行けないのが、本当に残念です」グビッ
隊員B「だよな。団長様も残念がってたからな」グビッ
勇者「仕方ないさ。最近は比較的平和とは言え、防衛を疎かにする訳にはいかない。首都のここから、兵士を割く余裕はないよ」
隊員C「だからといって、隊長殿お一人で旅に出るってのもきつい話だと思うんですけど」グビッ
隊員D「せめて、直属の俺らだけでもついて行きたかったですよ」
勇者「今はどこの都市も兵士数に余裕がないんだよ。人員補充して調整したとしても、旅立ちが三ヶ月近くは延びる事になるし」
隊員A「っても、一人はねーっすよ、一人は。中隊全部とは言わないですけど、小隊の一つぐらいお供につけてもいいと思うのに」グビッ
勇者「危険な旅だし、何よりその間、給料が出ないからな。希望を募っても、どうせ誰も立候補しないさ」
隊員B「見損なわないで下さいよ、隊長殿! 自分はそれでも立候補しましたとも!」グビッ
隊員C「そうっす! それに、上手く無事で帰ってくりゃ、英雄扱いでしょうし!」グビッ
勇者「酔いすぎだぞ、お前ら」ハハッ
隊員E「ちっ……」グビッ
勇者「……?」
隊員E「隊長さんよ……。いい加減、その白々しい嘘やめてくれませんか」グビッ
勇者「…………」
隊員A「ちょっ、隊員Eさん、また酔ってんすか。今日は絡むのはなしにしましょーよ」
隊員B「そうそう。今日は穏便にいきましょうって。壮行会ですし……」
隊員E「うっさい。あんな適当な事言われて黙ってられっかよ!」ダンッ
隊員C「落ち着いて下さいって。まあまあ」
隊員E「お前らだって嘘つかれてんだぞ!」
隊員D「嘘?」
隊員E「隊長さん、あんた、本当は陛下から兵士を一緒に連れていけって言われたのを断ったそうじゃないか」
隊員A「え!」
隊員B「隊長……!?」
隊員C「そうなんですか!?」
勇者「…………ああ」グビッ
隊員E「なのに、こいつらときたら簡単に騙されて。情けないったらありゃしねえ」ヒック
隊員A「隊長……どうして?」
隊員B「何で断ったんすか! 味方は多い方がいいのに!」
勇者「…………」
勇者「…………」
隊員A「ちょっ、隊員Eさん、また酔ってんすか。今日は絡むのはなしにしましょーよ」
隊員B「そうそう。今日は穏便にいきましょうって。壮行会ですし……」
隊員E「うっさい。あんな適当な事言われて黙ってられっかよ!」ダンッ
隊員C「落ち着いて下さいって。まあまあ」
隊員E「お前らだって嘘つかれてんだぞ!」
隊員D「嘘?」
隊員E「隊長さん、あんた、本当は陛下から兵士を一緒に連れていけって言われたのを断ったそうじゃないか」
隊員A「え!」
隊員B「隊長……!?」
隊員C「そうなんですか!?」
勇者「…………ああ」グビッ
隊員E「なのに、こいつらときたら簡単に騙されて。情けないったらありゃしねえ」ヒック
隊員A「隊長……どうして?」
隊員B「何で断ったんすか! 味方は多い方がいいのに!」
勇者「…………」
勇者「……理由は幾つかあったんだけどな」
勇者「一つは、武装した兵士を何百人も引き連れて行ったら旅に支障が出る」
勇者「行くのはこの国だけじゃないからな。兵士を引き連れて旅してたら国際問題になる。それに宿や食費がその分加算されるから、戦争と同じぐらいの負担がかかる。国としても養いきれない」
勇者「だから、三十名程の少数精鋭でって事を陛下は言われたんだが、それも断った」
勇者「本当に今は兵士の数に余裕がないからな。うちの国は貧しい国だ。軍隊も他国に比べて多いわけじゃない」
勇者「陛下は新たにその分、兵士を募って補充すると仰ってたが、そこから精鋭を何人も引き抜いたらその補充した新兵の訓練を誰がするかって話になる」
勇者「兵士が使い物になるまで最低でも二年はかかる。精鋭となると年数や人数の問題じゃなくなる。数は同じでも内部が弱体化したら、結局、同じ事だ。この国を危うくするような事は避けたかった」
勇者「それと、さっきも言ったけど、危険な上に給料も出ないんだ。一度旅に出たら、もうそれっきりなんだぞ。魔王を討伐するまで何年かかるかもわからないしな」
勇者「そんな危険で得にもならない目に、他の誰かを無理矢理遇わしたくはなかったんだよ。それなら、一人の方がよっぽど気が楽だし、旅しやすい」
勇者「そして、最後の理由。俺にはもう仲間がいる」
勇者「昔、約束した仲間がいるんだ。だから、他の仲間を連れてく訳にはいかない。それだけだよ」グビッ
隊員たち「…………」
勇者「一つは、武装した兵士を何百人も引き連れて行ったら旅に支障が出る」
勇者「行くのはこの国だけじゃないからな。兵士を引き連れて旅してたら国際問題になる。それに宿や食費がその分加算されるから、戦争と同じぐらいの負担がかかる。国としても養いきれない」
勇者「だから、三十名程の少数精鋭でって事を陛下は言われたんだが、それも断った」
勇者「本当に今は兵士の数に余裕がないからな。うちの国は貧しい国だ。軍隊も他国に比べて多いわけじゃない」
勇者「陛下は新たにその分、兵士を募って補充すると仰ってたが、そこから精鋭を何人も引き抜いたらその補充した新兵の訓練を誰がするかって話になる」
勇者「兵士が使い物になるまで最低でも二年はかかる。精鋭となると年数や人数の問題じゃなくなる。数は同じでも内部が弱体化したら、結局、同じ事だ。この国を危うくするような事は避けたかった」
勇者「それと、さっきも言ったけど、危険な上に給料も出ないんだ。一度旅に出たら、もうそれっきりなんだぞ。魔王を討伐するまで何年かかるかもわからないしな」
勇者「そんな危険で得にもならない目に、他の誰かを無理矢理遇わしたくはなかったんだよ。それなら、一人の方がよっぽど気が楽だし、旅しやすい」
勇者「そして、最後の理由。俺にはもう仲間がいる」
勇者「昔、約束した仲間がいるんだ。だから、他の仲間を連れてく訳にはいかない。それだけだよ」グビッ
隊員たち「…………」
隊員A「……でも、俺らだって同じ隊の仲間じゃないですか」
隊員B「いや……やめとけ。お前、この前、結婚したばかりだろ……? 隊長の気持ち、考えろよ」
隊員A「う……」
隊員C「俺も……子供いるな……」
隊員D「だけど、こうして騎士団でいる以上、死ぬ事も覚悟してるぞ……!」
隊員C「それは全員がそうだろ……。それもわかった上で、隊長は一人で行く事を選んだって話だ。……そういう事ですよね?」
勇者「……悪いな。だけど、俺だって本音を言えば少しは怖いし、こんな何年かかるかもわからないような旅をしたくないって気持ちもあるんだよ」
勇者「勇者として選ばれた以上、断れないし断ってはいけない種類の話だから、やらなきゃならないって義務感もあるしな」
勇者「だけど、魔王を倒して平和な世界にしたいって気持ちもあるんだ。俺しかやれないってんなら尚更そう思う」
勇者「だから、俺が自分から行くのはいいさ。自分のしたい事をやってるんだから」
勇者「でも、その為に無理矢理誰かを巻き込むってのは嫌なんだ。わかってくれ」
隊員A「…………」
隊員B「…………」
隊員C「…………」
隊員D「…………」
隊員E「…………」グビッ
隊員B「いや……やめとけ。お前、この前、結婚したばかりだろ……? 隊長の気持ち、考えろよ」
隊員A「う……」
隊員C「俺も……子供いるな……」
隊員D「だけど、こうして騎士団でいる以上、死ぬ事も覚悟してるぞ……!」
隊員C「それは全員がそうだろ……。それもわかった上で、隊長は一人で行く事を選んだって話だ。……そういう事ですよね?」
勇者「……悪いな。だけど、俺だって本音を言えば少しは怖いし、こんな何年かかるかもわからないような旅をしたくないって気持ちもあるんだよ」
勇者「勇者として選ばれた以上、断れないし断ってはいけない種類の話だから、やらなきゃならないって義務感もあるしな」
勇者「だけど、魔王を倒して平和な世界にしたいって気持ちもあるんだ。俺しかやれないってんなら尚更そう思う」
勇者「だから、俺が自分から行くのはいいさ。自分のしたい事をやってるんだから」
勇者「でも、その為に無理矢理誰かを巻き込むってのは嫌なんだ。わかってくれ」
隊員A「…………」
隊員B「…………」
隊員C「…………」
隊員D「…………」
隊員E「…………」グビッ
隊員E「……精鋭を勝手に選ぶってんなら、家族持ちのやつらも中に入るかもしれないからな」グビッ
隊員E「志願者だけにするってんなら、数がどれだけ集まるかわからんし、何より腕のバラツキが出る」
隊員E「役立たずが志願してきたり、何も考えてないお調子者が来たら、今度はそいつらを守らなきゃならないから逆に迷惑だ」グビッ
隊員E「……なら、確かに一人の方がマシかもな。なにせ、あんたは剣も魔法も一流の腕前だ。あんたと近いレベルのが少ないぐらいにな」
隊員E「十歳上の俺をあっさり抜かして、一気に隊長になっただけはある。将来は騎士団長間違いなしとまで言われてたしな」グビッ
隊員E「誠にご立派だよ。生まれながらの天才と周りから言われて、人望も厚いしな」
隊員A「隊員Eさん……。そんな話しなくても」
隊員B「それに、実力は隊長のが遥かに上だってみんなわかってるじゃないですか……」
隊員E「ああ、そうだよ! わかってるよ、これは嫉妬だ! 当たり前だろ、悔しいじゃねーか! 誰よりも必死に努力してきたのに、結局は才能の差だってんのがな!」ダンッ
隊員B「隊員Eさん! やめましょう! 落ち着いて!」
隊員E「なのに、あんたは勇者に選ばれて! たった一人で旅に出るとか言って!」
隊員E「それで、空いた騎士隊長の座がどうなったかと言えば、俺にひょいと転がってきたんだ!」
隊員D「え」
隊員E「今日、団長から推薦を受けて内々で決まったって事を言われたよ! 俺は内心、嬉しいやら悔しいやら悲しいやら情けないやらで、ずっとずっと……」ポロポロ
勇者「隊員Eさん……」
隊員E「志願者だけにするってんなら、数がどれだけ集まるかわからんし、何より腕のバラツキが出る」
隊員E「役立たずが志願してきたり、何も考えてないお調子者が来たら、今度はそいつらを守らなきゃならないから逆に迷惑だ」グビッ
隊員E「……なら、確かに一人の方がマシかもな。なにせ、あんたは剣も魔法も一流の腕前だ。あんたと近いレベルのが少ないぐらいにな」
隊員E「十歳上の俺をあっさり抜かして、一気に隊長になっただけはある。将来は騎士団長間違いなしとまで言われてたしな」グビッ
隊員E「誠にご立派だよ。生まれながらの天才と周りから言われて、人望も厚いしな」
隊員A「隊員Eさん……。そんな話しなくても」
隊員B「それに、実力は隊長のが遥かに上だってみんなわかってるじゃないですか……」
隊員E「ああ、そうだよ! わかってるよ、これは嫉妬だ! 当たり前だろ、悔しいじゃねーか! 誰よりも必死に努力してきたのに、結局は才能の差だってんのがな!」ダンッ
隊員B「隊員Eさん! やめましょう! 落ち着いて!」
隊員E「なのに、あんたは勇者に選ばれて! たった一人で旅に出るとか言って!」
隊員E「それで、空いた騎士隊長の座がどうなったかと言えば、俺にひょいと転がってきたんだ!」
隊員D「え」
隊員E「今日、団長から推薦を受けて内々で決まったって事を言われたよ! 俺は内心、嬉しいやら悔しいやら悲しいやら情けないやらで、ずっとずっと……」ポロポロ
勇者「隊員Eさん……」
隊員E「」ゴシゴシ
隊員E「あんたの事は前から認めてた。だけど、それを自分で認めたくなかった」グスッ
隊員E「なのに、あんたが旅に出るってなって、自分に騎士隊長の座が転がってきたら、もうそれだけであっさりとあんたの実力を心の底から認めてる自分がいたんだよ」グスッ
隊員E「だから、こんな器の小さい男がこれから隊長をやっていくのかと思うと、それがもう情けなくてみっともなくてな」ポロポロ
隊員E「いっそ、辞退しようかと何度も考えたんだが、それも出来やしねえ」ポロポロ
隊員E「あんたがいなくなって欲しいような、欲しくないような、自分でもよくわかんない状態なんだよ。だから……」ポロポロ
勇者「…………」
隊員E「あんたの事は前から認めてた。だけど、それを自分で認めたくなかった」グスッ
隊員E「なのに、あんたが旅に出るってなって、自分に騎士隊長の座が転がってきたら、もうそれだけであっさりとあんたの実力を心の底から認めてる自分がいたんだよ」グスッ
隊員E「だから、こんな器の小さい男がこれから隊長をやっていくのかと思うと、それがもう情けなくてみっともなくてな」ポロポロ
隊員E「いっそ、辞退しようかと何度も考えたんだが、それも出来やしねえ」ポロポロ
隊員E「あんたがいなくなって欲しいような、欲しくないような、自分でもよくわかんない状態なんだよ。だから……」ポロポロ
勇者「…………」
隊員E「俺は本当に情けない……」ポロポロ
隊員A「……もう完全に出来上がってますね」
隊員B「……普段は取っつきにくいけど、根はいい人なんですけどね。酒癖悪いところがたまに傷ですから」
隊員C「隊長殿、ここは俺たちでなだめとくんで」
隊員D「もう時間も遅いですし、これでお開きにしましょう。後は任せといて下さい」
勇者「いや、だが……」
隊員A「ああなってから長いの、隊長殿も知ってるじゃないですか」
隊員B「俺ら慣れてますし、任せといて下さいよ。伊達にこの人と五年も過ごしてないですよ」
隊員C「あと、隊員Eさんの言葉は隊長も気にしないで下さいね。どうしようもない愚痴なんですよ。本当なら隊員Eさんの年齢で騎士隊長になるのも十分早い方ですし」
隊員D「騎士団長と騎士隊長のは特別で例外なんです。それと比べちゃう隊員Eさんのが駄目なんですよ。あの人も本当はそれがわかってるはずなんです」
隊員A「だから、気にしないで下さい」
勇者「……そうは言ってもな。隊員Eさんには毎回助言やら補佐で助けられたし……。このまま俺だけ帰るのは……」
隊員A「……もう完全に出来上がってますね」
隊員B「……普段は取っつきにくいけど、根はいい人なんですけどね。酒癖悪いところがたまに傷ですから」
隊員C「隊長殿、ここは俺たちでなだめとくんで」
隊員D「もう時間も遅いですし、これでお開きにしましょう。後は任せといて下さい」
勇者「いや、だが……」
隊員A「ああなってから長いの、隊長殿も知ってるじゃないですか」
隊員B「俺ら慣れてますし、任せといて下さいよ。伊達にこの人と五年も過ごしてないですよ」
隊員C「あと、隊員Eさんの言葉は隊長も気にしないで下さいね。どうしようもない愚痴なんですよ。本当なら隊員Eさんの年齢で騎士隊長になるのも十分早い方ですし」
隊員D「騎士団長と騎士隊長のは特別で例外なんです。それと比べちゃう隊員Eさんのが駄目なんですよ。あの人も本当はそれがわかってるはずなんです」
隊員A「だから、気にしないで下さい」
勇者「……そうは言ってもな。隊員Eさんには毎回助言やら補佐で助けられたし……。このまま俺だけ帰るのは……」
隊員A「まあ、気持ちはわかるんですけどね。俺らも正直言えば、最初はこんな若い隊長なんて、っていう抵抗ありましたし」
隊員B「でも、実力と指揮能力で毎回あれだけ差を見せつけられたらそんなの消し飛んでますよ」
隊員C「ずっと前に起きた魔物襲撃事件の時の事、覚えてますか? あの時、俺らは隊長の指揮下にいたからこうして無事に生きてるんですよ」
隊員D「別の隊は全滅したところもあるし、そうでなくてもかなりの殉職者を出したってのに……」
隊員A「隊長の率いていた隊だけが、生還率九割だったんです。一番長く戦場に留まって、一番最後に帰還したっていうのに」
隊員B「だから、死んでいったやつらの事を思うと、年下だってのに隊長の事は尊敬さえしてますよ」
隊員C「この人の下にいたら、俺らはずっと死なずに生き残れるんじゃないかって、そんな気になりました。それは隊員Eさんもきっと同じはずなんです」
隊員D「だから、隊長は気にせず胸を張って下さい。俺ら全員、感謝してるんですから。隊員Eさんも必ず感謝してます」
隊員A「ただ、最後に言わずにいられなかったんですよ、きっと。それだけです。明日になったら、全員何もなかった振りをして、それでおしまいにした方がいい話じゃないですか」
隊員B「隊員Eさんもそうして欲しいと思いますよ。だから……」
勇者「……わかった。ただ、この一言だけは伝えておいてくれ」
勇者「今までありがとうございます、って」
隊員C「わかりました……。必ず」ニコッ
隊員B「でも、実力と指揮能力で毎回あれだけ差を見せつけられたらそんなの消し飛んでますよ」
隊員C「ずっと前に起きた魔物襲撃事件の時の事、覚えてますか? あの時、俺らは隊長の指揮下にいたからこうして無事に生きてるんですよ」
隊員D「別の隊は全滅したところもあるし、そうでなくてもかなりの殉職者を出したってのに……」
隊員A「隊長の率いていた隊だけが、生還率九割だったんです。一番長く戦場に留まって、一番最後に帰還したっていうのに」
隊員B「だから、死んでいったやつらの事を思うと、年下だってのに隊長の事は尊敬さえしてますよ」
隊員C「この人の下にいたら、俺らはずっと死なずに生き残れるんじゃないかって、そんな気になりました。それは隊員Eさんもきっと同じはずなんです」
隊員D「だから、隊長は気にせず胸を張って下さい。俺ら全員、感謝してるんですから。隊員Eさんも必ず感謝してます」
隊員A「ただ、最後に言わずにいられなかったんですよ、きっと。それだけです。明日になったら、全員何もなかった振りをして、それでおしまいにした方がいい話じゃないですか」
隊員B「隊員Eさんもそうして欲しいと思いますよ。だから……」
勇者「……わかった。ただ、この一言だけは伝えておいてくれ」
勇者「今までありがとうございます、って」
隊員C「わかりました……。必ず」ニコッ
勇者「君たちも、ありがとうな。いや、もう俺は隊長じゃないか……悪かった」
勇者「先輩方、ありがとうございます」
隊員A「やめて下さい。俺らの中じゃ、隊長はいつまで経っても最強で最高の隊長ですよ」
隊員B「隊長なら必ず魔王を倒してこの国に帰って来るって、俺たち信じてますからね」
隊員C「伝説の勇者様として帰って来る日をずっと待ってますから」
隊員D「明日はきっと、ろくに話せないと思うんで今言っておきます。絶対に生きて帰ってきて下さい、隊長」
勇者「……ああ、必ず生きて帰ってくるよ。約束する」
「今まで、ありがとうございました、隊長!!」
勇者「こちらこそ……。みんなと会えて本当に良かったよ」
勇者「先輩方、ありがとうございます」
隊員A「やめて下さい。俺らの中じゃ、隊長はいつまで経っても最強で最高の隊長ですよ」
隊員B「隊長なら必ず魔王を倒してこの国に帰って来るって、俺たち信じてますからね」
隊員C「伝説の勇者様として帰って来る日をずっと待ってますから」
隊員D「明日はきっと、ろくに話せないと思うんで今言っておきます。絶対に生きて帰ってきて下さい、隊長」
勇者「……ああ、必ず生きて帰ってくるよ。約束する」
「今まで、ありがとうございました、隊長!!」
勇者「こちらこそ……。みんなと会えて本当に良かったよ」
こんなクッソ感動的な導入部なのにスレタイを見ると大体想像がつくから困る
だって15年の間に下手に怠けてたら仲間に合わせる顔ないやん?
……みんな真面目だなあ
……みんな真面目だなあ
>>24はチラシの裏にでも書いておけばいいんじゃね?マジ
>>24お前言っちゃいけないこと言ったな
(ハルヒのキョンSSのタイトルに似てるなーとか思ったが黙っておこう)
勇者「仲間TUEEEE」なら普通だけどE多目にして!つけたから被って見えるってことでしょ?
ー 夜、自宅 ー
勇者「色々考えさせられたけど、壮行会、行って良かったな」
勇者「昼間に挨拶回りに行った人たちも、みんな別れを惜しんでくれて……。励ましてくれて……」
勇者「……嬉しかった」
勇者「…………」
勇者「でも……」
勇者「本当に明日、この町とはお別れなんだな」
勇者「寮から出て、自宅をこの前買ったばかりだってのに、もうここには帰ってこれなくなるのか……」
勇者「騎士団のみんな、それに近所の人、馴染みの店の人たち、神父さん……。その全員ともお別れだ……」
勇者「そして、団長とも……」
勇者「必ず、魔王を倒して生きて帰ってくる……。そういう約束をした。だけど逆に言えば、それまではずっと会えないって事だ……」
勇者「……流石に寂しいな」
勇者「色々考えさせられたけど、壮行会、行って良かったな」
勇者「昼間に挨拶回りに行った人たちも、みんな別れを惜しんでくれて……。励ましてくれて……」
勇者「……嬉しかった」
勇者「…………」
勇者「でも……」
勇者「本当に明日、この町とはお別れなんだな」
勇者「寮から出て、自宅をこの前買ったばかりだってのに、もうここには帰ってこれなくなるのか……」
勇者「騎士団のみんな、それに近所の人、馴染みの店の人たち、神父さん……。その全員ともお別れだ……」
勇者「そして、団長とも……」
勇者「必ず、魔王を倒して生きて帰ってくる……。そういう約束をした。だけど逆に言えば、それまではずっと会えないって事だ……」
勇者「……流石に寂しいな」
ヒヒーン
勇者「あ」
勇者「いけない、相棒も腹が空いてるよな。すぐに用意しないと」
勇者「人参はと……」サッ
勇者「よし、今行くからな」タタッ
勇者「あ」
勇者「いけない、相棒も腹が空いてるよな。すぐに用意しないと」
勇者「人参はと……」サッ
勇者「よし、今行くからな」タタッ
ー 厩舎 ー
馬「」カキ、カキ
勇者「よしよし、ちょっと待ってろ。飼い葉を餌箱に入れてと」ザッ、ザッ
勇者「あと、明日からたっぷり走る事になるからな。これもたっぷり持ってきたぞ。食ってくれ」っ人参
馬「」ヒヒーン
勇者「ああ、嬉しいか。ふふっ」
馬「」モグモグ
勇者「これからは辛く厳しい旅になると思うけど、頑張ってくれよ」
勇者「一緒に、生きて帰ろうな、相棒」ナデナデ
馬「」ヒヒーン
馬「」カキ、カキ
勇者「よしよし、ちょっと待ってろ。飼い葉を餌箱に入れてと」ザッ、ザッ
勇者「あと、明日からたっぷり走る事になるからな。これもたっぷり持ってきたぞ。食ってくれ」っ人参
馬「」ヒヒーン
勇者「ああ、嬉しいか。ふふっ」
馬「」モグモグ
勇者「これからは辛く厳しい旅になると思うけど、頑張ってくれよ」
勇者「一緒に、生きて帰ろうな、相棒」ナデナデ
馬「」ヒヒーン
ー 家 ー
勇者「さてと、少し早いけど、明日の為にもう寝るか」
勇者「仕度も全部終わってるし、体調を万全にして出発しないと」
コンコン
勇者「……?」
勇者「誰だ……こんな時間に?」
勇者「」テクテク、ガチャッ
団長の娘(以下、幼馴染み)「あ……こんばんは」
勇者「幼馴染みか……。どうしたんだ?」
幼馴染み「今、ちょっといい……? 中、入っても大丈夫?」
勇者「いいよ。どうぞ。何か温かい飲み物でも出すよ。紅茶だけはまだ少しだけ残ってるから」
幼馴染み「うん……。ありがと」
勇者「さてと、少し早いけど、明日の為にもう寝るか」
勇者「仕度も全部終わってるし、体調を万全にして出発しないと」
コンコン
勇者「……?」
勇者「誰だ……こんな時間に?」
勇者「」テクテク、ガチャッ
団長の娘(以下、幼馴染み)「あ……こんばんは」
勇者「幼馴染みか……。どうしたんだ?」
幼馴染み「今、ちょっといい……? 中、入っても大丈夫?」
勇者「いいよ。どうぞ。何か温かい飲み物でも出すよ。紅茶だけはまだ少しだけ残ってるから」
幼馴染み「うん……。ありがと」
勇者「」コポコポ
勇者「はい、どうぞ。残念な事に少ししかなかったけど」スッ
幼馴染み「うん……」ソッ
幼馴染み「」ゴクッ
幼馴染み「…………」
幼馴染み「……部屋、綺麗に片付いちゃってるんだね。物とかほとんど無くなってる……」
勇者「明日出発だからな。きっと当分は帰って来れないだろうし。物があっても埃をかぶるだけだよ」
勇者「その間、管理してもらうのも悪いし、結局売りに出したんだ。明日には、このベッドもそこのテーブルも食器棚もなくなってるよ」
勇者「その持ってるティーカップも。何もかも」
幼馴染み「そっか……。全部、売りに出しちゃったんだ……」
勇者「まだ一年ぐらいしか住んでなかったから、もったいないとは思ったけどな。でも、帰ってきて蜘蛛の巣だらけの家を見るのは嫌だったから」
幼馴染み「……そっか」
勇者「うん」
勇者「はい、どうぞ。残念な事に少ししかなかったけど」スッ
幼馴染み「うん……」ソッ
幼馴染み「」ゴクッ
幼馴染み「…………」
幼馴染み「……部屋、綺麗に片付いちゃってるんだね。物とかほとんど無くなってる……」
勇者「明日出発だからな。きっと当分は帰って来れないだろうし。物があっても埃をかぶるだけだよ」
勇者「その間、管理してもらうのも悪いし、結局売りに出したんだ。明日には、このベッドもそこのテーブルも食器棚もなくなってるよ」
勇者「その持ってるティーカップも。何もかも」
幼馴染み「そっか……。全部、売りに出しちゃったんだ……」
勇者「まだ一年ぐらいしか住んでなかったから、もったいないとは思ったけどな。でも、帰ってきて蜘蛛の巣だらけの家を見るのは嫌だったから」
幼馴染み「……そっか」
勇者「うん」
勇者「それで、どうしたんだ? 明日の式典の前に、もう一度会いに来てくれたのか?」
幼馴染み「そうじゃない……。ただ……」
勇者「うん」
幼馴染み「本当に行くんだなって……。それを確かめに来たの」
勇者「……うん。行くよ」
幼馴染み「だよね……。もう町中その話だらけだし、広場じゃ明日の為の式典の準備してるし……」
幼馴染み「私の家にも挨拶に来たし、お父さんからも帰ってきてから話をされたし……」
勇者「団長が……。何か言ってた?」
幼馴染み「……寂しくなるけど、明日は笑顔で見送ってやりなさいって。……そう言われた」
勇者「……うん。俺も明日は笑顔で見送って欲しいと思う」
幼馴染み「うん……。だけど……」
幼馴染み「そうじゃない……。ただ……」
勇者「うん」
幼馴染み「本当に行くんだなって……。それを確かめに来たの」
勇者「……うん。行くよ」
幼馴染み「だよね……。もう町中その話だらけだし、広場じゃ明日の為の式典の準備してるし……」
幼馴染み「私の家にも挨拶に来たし、お父さんからも帰ってきてから話をされたし……」
勇者「団長が……。何か言ってた?」
幼馴染み「……寂しくなるけど、明日は笑顔で見送ってやりなさいって。……そう言われた」
勇者「……うん。俺も明日は笑顔で見送って欲しいと思う」
幼馴染み「うん……。だけど……」
勇者「だけど?」
幼馴染み「……なんかね。今までずっと、実感わかなかったの」
勇者「何が?」
幼馴染み「勇者が魔王討伐の旅に出るっていう、その実感。頭では理解出来てるけど、どこか現実味がないっていうか……」
勇者「……うん。かもね。女神様から神託を受けたって話を初めて聞かされて、俺もしばらくはそんな感じだったから。ふわふわしてて、どこか他人事みたいな」
幼馴染み「そうなんだ……」
勇者「うん」
幼馴染み「だけど……。今日、このがらんどうな部屋を見て……それでやっと実感したんだ。本当にいなくなっちゃうんだなって……」
勇者「……うん」
幼馴染み「……なんかね。今までずっと、実感わかなかったの」
勇者「何が?」
幼馴染み「勇者が魔王討伐の旅に出るっていう、その実感。頭では理解出来てるけど、どこか現実味がないっていうか……」
勇者「……うん。かもね。女神様から神託を受けたって話を初めて聞かされて、俺もしばらくはそんな感じだったから。ふわふわしてて、どこか他人事みたいな」
幼馴染み「そうなんだ……」
勇者「うん」
幼馴染み「だけど……。今日、このがらんどうな部屋を見て……それでやっと実感したんだ。本当にいなくなっちゃうんだなって……」
勇者「……うん」
幼馴染み「昔の事……覚えてる?」
勇者「覚えてるよ。毎日、幼馴染みに意地悪されてたっけ」
幼馴染み「……ごめん」
勇者「いいよ。今はもうそんな事ないし」
幼馴染み「あの頃は……お父さんやお母さんが取られちゃったみたいに思ってたから……」
勇者「いきなりやって来て、今日からこの子も一緒に住む事になった、家族だと思って仲良くしてくれ、なんて言われたらきっと俺もそう思っただろうね」
幼馴染み「……お墓参りはもう行ったの?」
勇者「こっちのお墓には。でも、中は空っぽだからね。向こうの村に戻ったら、きちんと墓参りするつもりだよ」
幼馴染み「そっか……」
勇者「うん」
勇者「覚えてるよ。毎日、幼馴染みに意地悪されてたっけ」
幼馴染み「……ごめん」
勇者「いいよ。今はもうそんな事ないし」
幼馴染み「あの頃は……お父さんやお母さんが取られちゃったみたいに思ってたから……」
勇者「いきなりやって来て、今日からこの子も一緒に住む事になった、家族だと思って仲良くしてくれ、なんて言われたらきっと俺もそう思っただろうね」
幼馴染み「……お墓参りはもう行ったの?」
勇者「こっちのお墓には。でも、中は空っぽだからね。向こうの村に戻ったら、きちんと墓参りするつもりだよ」
幼馴染み「そっか……」
勇者「うん」
幼馴染み「…………」
勇者「…………」
幼馴染み「ねえ、勇者……」
勇者「うん」
幼馴染み「……私。話、聞いちゃったんだ……」
勇者「何の?」
幼馴染み「…………」
勇者「…………」
勇者「…………」
幼馴染み「ねえ、勇者……」
勇者「うん」
幼馴染み「……私。話、聞いちゃったんだ……」
勇者「何の?」
幼馴染み「…………」
勇者「…………」
幼馴染み「……私も」
勇者「うん」
幼馴染み「ついてく……」
勇者「……どこに?」
幼馴染み「旅に……」
勇者「…………」
幼馴染み「……私さ、魔法、使えるし」
勇者「うん」
幼馴染み「……学校の成績、魔法と数学が良かったの勇者も知ってるでしょ。学年で7位と4位だったんだよ」
勇者「うん」
幼馴染み「……料理も出来るし。洗濯も、掃除も、裁縫も。一通りの家事は全部出来るし」
勇者「うん」
幼馴染み「……体力も意外とあるんだよ。子供の頃みたいにすぐバテたりとかしないよ。体も丈夫な方だから、風邪とか滅多に引かないし」
勇者「うん」
幼馴染み「魔物だって怖くないよ。お父さんについていって、魔物と出くわした事が二回あったけど平気だった。普通に戦えるよ」
勇者「うん」
幼馴染み「……だから、私も一緒についてく」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「…………」
勇者「……ごめん」
勇者「うん」
幼馴染み「ついてく……」
勇者「……どこに?」
幼馴染み「旅に……」
勇者「…………」
幼馴染み「……私さ、魔法、使えるし」
勇者「うん」
幼馴染み「……学校の成績、魔法と数学が良かったの勇者も知ってるでしょ。学年で7位と4位だったんだよ」
勇者「うん」
幼馴染み「……料理も出来るし。洗濯も、掃除も、裁縫も。一通りの家事は全部出来るし」
勇者「うん」
幼馴染み「……体力も意外とあるんだよ。子供の頃みたいにすぐバテたりとかしないよ。体も丈夫な方だから、風邪とか滅多に引かないし」
勇者「うん」
幼馴染み「魔物だって怖くないよ。お父さんについていって、魔物と出くわした事が二回あったけど平気だった。普通に戦えるよ」
勇者「うん」
幼馴染み「……だから、私も一緒についてく」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「…………」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「……何で」
勇者「危険だから」
幼馴染み「危険だから、私がついて行くんだよ。一人より二人の方がいいじゃない」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「……足手まといにならないから」
勇者「ごめん」
幼馴染み「……なら、どうすればいいの」
幼馴染み「……どうやったら、私、勇者と一緒にいられるの」
幼馴染み「……教えてよ」グスッ
勇者「待ってて」
幼馴染み「ぅ……」ポロポロ
勇者「帰るのを待ってて。幼馴染みやみんながいるから、俺はここに絶対に帰ろうって思えるんだ」
勇者「俺が魔王を倒すから、幼馴染みは帰ってきた俺を誉めてくれ」
勇者「だから、ここで待ってて」
幼馴染み「ぁぅ……」ポロポロ
勇者「危険だから」
幼馴染み「危険だから、私がついて行くんだよ。一人より二人の方がいいじゃない」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「……足手まといにならないから」
勇者「ごめん」
幼馴染み「……なら、どうすればいいの」
幼馴染み「……どうやったら、私、勇者と一緒にいられるの」
幼馴染み「……教えてよ」グスッ
勇者「待ってて」
幼馴染み「ぅ……」ポロポロ
勇者「帰るのを待ってて。幼馴染みやみんながいるから、俺はここに絶対に帰ろうって思えるんだ」
勇者「俺が魔王を倒すから、幼馴染みは帰ってきた俺を誉めてくれ」
勇者「だから、ここで待ってて」
幼馴染み「ぁぅ……」ポロポロ
幼馴染み「待ってたって……」エグッ
幼馴染み「意味……ない……!」エグッ
勇者「幼馴染み……」
幼馴染み「だって……私は……聞いたんだから……」エグッ
幼馴染み「帰ってきたら……お姫様と結婚するって……」エグッ
勇者「…………」
幼馴染み「なら……何で……私が……待つ意味……」グスッ、エグッ
幼馴染み「どうして……何で……どうして……。どうして……こうなるの……」ヒック、エグッ
幼馴染み「私は……勇者が……勇者の事が……。前からずっと……ずっと……」グシュッ、エグッ
勇者「…………」
幼馴染み「意味……ない……!」エグッ
勇者「幼馴染み……」
幼馴染み「だって……私は……聞いたんだから……」エグッ
幼馴染み「帰ってきたら……お姫様と結婚するって……」エグッ
勇者「…………」
幼馴染み「なら……何で……私が……待つ意味……」グスッ、エグッ
幼馴染み「どうして……何で……どうして……。どうして……こうなるの……」ヒック、エグッ
幼馴染み「私は……勇者が……勇者の事が……。前からずっと……ずっと……」グシュッ、エグッ
勇者「…………」
勇者「……もう遅いし、送ってくよ」
幼馴染み「いや……やだ……」グスッ
幼馴染み「ねえ……何で……」グスッ
幼馴染み「何で……私は……ダメなの……。何で……」グシュッ
勇者「……幼馴染みの事は、妹みたいに思ってるんだ。ずっと一緒に過ごしてきたし、もう家族なんだよ」
幼馴染み「好きで……私……そうなった訳じゃない……」エグッ
幼馴染み「なら……幼馴染みなんか……嫌だ……。嫌だよ……なりたくなかった……」エグッ、ヒック
勇者「俺も好きで孤児になった訳じゃないよ」
幼馴染み「違う……。そんな……つもりじゃ……」エグッ
勇者「でも、団長と亡くなった父さんが親友で、俺を引き取って色々と面倒を見てくれた。そうでなかったら、俺はきっとどこかの教会に引き取られて、今頃、貴族や大金持ちの家で下働きをやっていたかもしれない」
勇者「俺にとっては、優しくしてくれた団長はもう一人の父さんだし、奥さんはもう一人の母さんなんだよ」
勇者「そして、幼馴染みは妹なんだ。それ以外にはもう見えないんだよ……ごめん」
幼馴染み「う……うぅ……」グシュッ
勇者「……送ってくよ。立てる?」
幼馴染み「ぅぅ……ぁぅ……」ガタッ
勇者「……ずっと大事に思ってるよ。幼馴染み」
幼馴染み「ぅん……ぅぅ……」エグッ
幼馴染み「いや……やだ……」グスッ
幼馴染み「ねえ……何で……」グスッ
幼馴染み「何で……私は……ダメなの……。何で……」グシュッ
勇者「……幼馴染みの事は、妹みたいに思ってるんだ。ずっと一緒に過ごしてきたし、もう家族なんだよ」
幼馴染み「好きで……私……そうなった訳じゃない……」エグッ
幼馴染み「なら……幼馴染みなんか……嫌だ……。嫌だよ……なりたくなかった……」エグッ、ヒック
勇者「俺も好きで孤児になった訳じゃないよ」
幼馴染み「違う……。そんな……つもりじゃ……」エグッ
勇者「でも、団長と亡くなった父さんが親友で、俺を引き取って色々と面倒を見てくれた。そうでなかったら、俺はきっとどこかの教会に引き取られて、今頃、貴族や大金持ちの家で下働きをやっていたかもしれない」
勇者「俺にとっては、優しくしてくれた団長はもう一人の父さんだし、奥さんはもう一人の母さんなんだよ」
勇者「そして、幼馴染みは妹なんだ。それ以外にはもう見えないんだよ……ごめん」
幼馴染み「う……うぅ……」グシュッ
勇者「……送ってくよ。立てる?」
幼馴染み「ぅぅ……ぁぅ……」ガタッ
勇者「……ずっと大事に思ってるよ。幼馴染み」
幼馴染み「ぅん……ぅぅ……」エグッ
ー 翌朝、広場 ー
国王「それでは勇者よ、期待して待っておるぞ」
王妃「吉報を待っています。道中、困難や苦境もあるでしょうが、挫けず頑張りなさい」
勇者「ははっ! ありがたき御言葉、旅の励みに致します!」
ワーワー、キャーキャー、パチパチ!!(大歓声、大拍手)
王女「」ツイッ
王女「勇者よ」
勇者「はっ!」
王女「父上からお話は聞いています。その上で貴方にこう言いましょう」
王女「必ずや、生きて帰ってきなさい。私はいつまでもそれを待っています」
勇者「……姫」
王女「返事は、はい、しか私は受け取るつもりはありません。……どうかお気をつけて」
王女「そして、私をあまり待たせないようにして下さい。頼みましたよ」
王女「……姫のお気持ち、しかと承りました。最善を尽くします」
王女「ええ……」
ワーワー、キャーキャー、ピーピー、パチパチ!!(更に大きい大歓声、大拍手)
団長「……姫も心を決めたか」
幼馴染み「……ぅ」グスッ
国王「それでは勇者よ、期待して待っておるぞ」
王妃「吉報を待っています。道中、困難や苦境もあるでしょうが、挫けず頑張りなさい」
勇者「ははっ! ありがたき御言葉、旅の励みに致します!」
ワーワー、キャーキャー、パチパチ!!(大歓声、大拍手)
王女「」ツイッ
王女「勇者よ」
勇者「はっ!」
王女「父上からお話は聞いています。その上で貴方にこう言いましょう」
王女「必ずや、生きて帰ってきなさい。私はいつまでもそれを待っています」
勇者「……姫」
王女「返事は、はい、しか私は受け取るつもりはありません。……どうかお気をつけて」
王女「そして、私をあまり待たせないようにして下さい。頼みましたよ」
王女「……姫のお気持ち、しかと承りました。最善を尽くします」
王女「ええ……」
ワーワー、キャーキャー、ピーピー、パチパチ!!(更に大きい大歓声、大拍手)
団長「……姫も心を決めたか」
幼馴染み「……ぅ」グスッ
国王「では、女神より祝福を受けし勇者を総出で見送れ!」
国王「かの者の旅立ちに、幸運と幸福が舞い降りる様に!」
団長「楽隊、前に!」スサッ
楽隊「」ザッ、ザッ
楽隊「」パッパッパー、パッパパー
カラーン、コローン、カラーン、コローン
(盛大なファンファーレが鳴らされ、教会からは一斉に鐘の音が響く)
勇者「行くぞ、相棒」サッ
馬「」ヒヒーン
隊長A「開門! 開門せよ!」
隊長B「勇者様が旅立たれる! 門を開け!!」
ギギィーーー…… (ゆっくり門が開かれる)
団長「全隊! 旅立つ勇者様に向けて敬礼!」ビシッ
隊員全員「はっ!」ビシッ
団長「魔法弾、打上用意! 放て!」
ヒュー……ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! (花火)
市民A「勇者さまー、必ず世界に平和を!!」
市民B「この世界の事を、お願いします!!」
市民C「勇者様、お気をつけてー!!」
市民D「勇者様、バンザーイ!!」
市民E「勇者様、バンザァーーイ!!」
幼馴染み「勇者! 必ず帰ってきて!! 必ず!!」
隊員たち「隊長ー! 俺たち待ってます! この国を守りながら待ってますから!!」
隊員E「隊長! どうか御無事で!!」
『南の国、王宮日誌より一部抜粋』
かくして、勇者は王都より旅立てり。市民の惜しみ無い大歓声を背中に、漆黒の馬にまたがり颯爽と門を駆け抜け、外へと勇ましく進んでいった。
国王陛下はそれを無言で見送り、姫は名残を惜しむ様にその姿が見えなくなるまでいつまでもその場に立ち尽くされた。
男は口々に勇者の名を熱狂的に叫び、女はハンカチを振ってその門出を祝い見送る。
旅立っていくその勇姿は正に伝説の勇者に相応しきものなり……。
国王「かの者の旅立ちに、幸運と幸福が舞い降りる様に!」
団長「楽隊、前に!」スサッ
楽隊「」ザッ、ザッ
楽隊「」パッパッパー、パッパパー
カラーン、コローン、カラーン、コローン
(盛大なファンファーレが鳴らされ、教会からは一斉に鐘の音が響く)
勇者「行くぞ、相棒」サッ
馬「」ヒヒーン
隊長A「開門! 開門せよ!」
隊長B「勇者様が旅立たれる! 門を開け!!」
ギギィーーー…… (ゆっくり門が開かれる)
団長「全隊! 旅立つ勇者様に向けて敬礼!」ビシッ
隊員全員「はっ!」ビシッ
団長「魔法弾、打上用意! 放て!」
ヒュー……ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! (花火)
市民A「勇者さまー、必ず世界に平和を!!」
市民B「この世界の事を、お願いします!!」
市民C「勇者様、お気をつけてー!!」
市民D「勇者様、バンザーイ!!」
市民E「勇者様、バンザァーーイ!!」
幼馴染み「勇者! 必ず帰ってきて!! 必ず!!」
隊員たち「隊長ー! 俺たち待ってます! この国を守りながら待ってますから!!」
隊員E「隊長! どうか御無事で!!」
『南の国、王宮日誌より一部抜粋』
かくして、勇者は王都より旅立てり。市民の惜しみ無い大歓声を背中に、漆黒の馬にまたがり颯爽と門を駆け抜け、外へと勇ましく進んでいった。
国王陛下はそれを無言で見送り、姫は名残を惜しむ様にその姿が見えなくなるまでいつまでもその場に立ち尽くされた。
男は口々に勇者の名を熱狂的に叫び、女はハンカチを振ってその門出を祝い見送る。
旅立っていくその勇姿は正に伝説の勇者に相応しきものなり……。
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