元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」
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101 = 100 :
自分が目覚めた場所は海岸沿いの砂浜だった。
東側はそれなりに遠くまで見渡せるが、西側にはすぐ傍に高い岩場があり視界が遮られている。
律子は少し迷ったが、
見たところ東側に行ってもあまり有益なものは得られそうにないと考えた。
西側から、取り敢えず海岸を探索してみよう。
もしかしたら船が通るかも知れないし、他にも何か脱出の糸口が見えるかも知れない。
それに自分と同じ考えて海岸を目指すアイドルがきっと何人か居るはずだ。
その子達と協力して解決策を探そう。
色々と思考を重ね、律子は西側へと歩き出した。
が、しばらく歩くと律子が思っていたよりも早く事態は展開した。
「きらりちゃん……みりあちゃぁん、どこぉ……。ぇぐっ……お姉ちゃあん……」
律子「っ! あの子、確か……」
102 = 100 :
涙声で友達の名を、また姉を呼びながら歩く少女。
その姿を律子は知っていた。
人影を見て一瞬警戒はしたが、様子を見てその必要はないと判断した。
律子「あなた、城ヶ崎莉嘉よね……?」
莉嘉「ひっ!?」
律子「ああごめんなさい! 大丈夫心配しないで!
私はあなたに危害を加えるつもりはないから!」
声をかけた途端に怯えた目を向けられ、
律子は慌てて自分に敵意がないことを示す。
律子「ほら、私が持ってるのはこのヘルメットよ!
武器なんかないわ。だから安心してちょうだい」
103 = 100 :
莉嘉「あ、えっと……?」
律子「信用、してもらえるかしら……。もし信用できないなら、私は今すぐここを離れるわ」
莉嘉「! う、ううん、大丈夫!」
律子の対応が良かったか、あるいは莉嘉の一人ぼっちになる不安が優ったか、その両方か。
莉嘉は律子の敵意がないという言葉を信じた。
それを受け、律子は安堵のため息をつく。
莉嘉「あ、あの、お姉ちゃん、765プロの人?」
律子「ええ……。765プロで竜宮小町のプロデューサーを担当してる、秋月律子よ」
莉嘉「ア、アタシ、城ヶ崎莉嘉! 346プロで、シンデレラプロジェクトで……」
律子「凸レーションのメンバー、よね?」
104 = 100 :
莉嘉「えっ。し、知ってるの?」
律子「もちろん。本来は一緒に仕事をする相手だったんだもの」
莉嘉「あ……そっか。本当は、765プロの人たちと、合同で……。
ね、ねぇ! えっと、プロデューサーは何か知らないの!?
どうしてアタシたち、こんなことになってるの!?」
律子「待って、落ち着いて。まずは冷静になりましょう。
冷静に、状況を整理するの。目が覚めるまでに何があったか、
私たちが持っている情報を共有しましょう。まずはそこからよ!」
莉嘉「あ……う、うん、わかった」
律子はこの異常な状況においても、いや、異常な状況だからこそ、
努めて冷静に行動することを固く心に決めていた。
ただ、自分が思いつく限りの手が尽きた時、果たして冷静でいられるか……。
表には出さないが、それが律子にとっての最も大きな不安の一つだった。
105 = 100 :
それから数分、律子と莉嘉はお互いの持つ情報を話し合った。
猫を首輪で殺害したという話を聞き、
律子は小鳥の説明が本当に冗談でもなんでもなかったことを改めて確信した。
莉嘉「アタシたち、どうなっちゃうのかな……。アタシ、殺すのも殺されるのもやだよ……!」
律子「……大丈夫よ。これを考えて実行したのが人間である以上、『完璧』なんてことはないわ。
どこかにきっと穴がある。こちらが最善の手を打てばなんとかなるはずよ。
だから、いい? 絶対に諦めちゃダメよ?」
莉嘉「プロデューサー……。う、うん、そうだよね、なんとかなるよね!」
律子「それじゃ、そろそろ行きましょうか。まずは海岸沿いを探索しましょう。
それから、私のことは律子でいいわ。私も莉嘉って呼ぶけど、それでいい?」
莉嘉「う、うん! よろしくね、律子ちゃん!」
本来ならさん付けで呼ばせるところだけど……
と律子は一瞬思ったが、今はそんなことはどうでもいい。
こうして二人は、島西部の海岸沿いを北上し始めた。
106 = 100 :
15:30 島村卯月
卯月「……」
目覚めて30分ほど経つが、卯月はその場から動けずに居た。
訳のわからない状況に立たされ、何をどうしていいのかまったく分からず、
未だにただただ武器の説明書と地図を交互に見返すことしかできていない。
今の卯月には何のために地図を見ているのか、
どうすれば事態が進むのか、
そもそも事態を進めるべきなのか、
何も分からない……いや、分からない以前に思考がまともに働いているかどうかすら怪しかった。
そしてそんな卯月の背後から突如、声がかかった。
「島村卯月ちゃん……よね?」
107 = 100 :
卯月「わあっ!?」
小鳥「あっ、ご、ごめんなさい! 驚かせるつもりはなかったの!」
卯月「え……あ、いえ! こ、こっちこそごめんなさい!」
そう言って卯月は慌てて頭を下げる。
それを見て小鳥は、努めて優しい声で声をかけた。
小鳥「あの……なんだかずっと動いてなかったみたいだけど、大丈夫?
もしかして、どこか怪我したの?」
卯月「い、いえ、違うんです。ただ、これからどうしようかなって考えてて……。
みんなと会いたいんですけど、どうすればいいのか、分からなくて……」
108 = 100 :
小鳥「みんなっていうのは、346プロの子達よね?」
卯月「あ、はい!」
小鳥「もし良かったらだけど、私も一緒に手伝いましょうか?」
卯月「え……い、いいんですか!」
と、小鳥の提案に卯月はぱっと顔を輝かせた。
そして何の疑いもなく嬉しそうに、
卯月「あ、ありがとうございます! 私、一人で何か考えるのってまだちょっと苦手で……。
あっ、私、島村卯月です! 346プロで、ニュージェネレーションズっていうユニットで
アイドルをさせてもらってます! よろしくお願いします!」
109 = 100 :
まるで今自分が置かれている状況を理解していないかのように
いつもと変わらない調子で元気に自己紹介する卯月。
それを見て小鳥は強く胸を締め付けられるのを感じた。
しかしすぐに取り繕い、薄く笑って自己紹介を返す。
小鳥「私は765プロで事務員をしてます、音無小鳥です。
えっと、卯月ちゃんって呼んでもいい?」
卯月「はい! えっと、それじゃあ……小鳥さん、よろしくお願いします!」
小鳥「ええ、よろしくね。さて、早速だけど……私はそこの上から階段で降りてきたの。
それで降りる前にね、向こう側に誰か居るのが見えたのよ」
卯月「えっ!? 本当ですか!」
小鳥「ええ。遠くだったからはっきりとは分からなかったけど、多分346プロの子じゃないかな?」
110 = 100 :
小鳥が指差した方向は、海岸沿いの北側。
しかし砂浜に立つ崖に遮られ、向こう側は見えない。
確認するには、崖沿いに歩いて向こう側へ行くしかなさそうだ。
卯月「そ、それじゃあ行ってみましょう!
えっと、すぐ準備しますからちょっと待っててくださいね!」
そう言って卯月は、手に持っていた紙を折りたたみ始める。
と、ここで小鳥がその手を制止した。
小鳥「あっ、待って! その前に、えっと……それ、見せてもらえないかな?」
卯月「? これですか?」
小鳥が指したその紙を卯月は素直に手渡す。
そしてそれは小鳥の考えた通り、卯月の持つ武器の説明書だった。
111 = 100 :
『散弾銃(ショットガン)』
その文字を見て、小鳥は微かに息を飲んだ。
自分のことを疑うことも警戒することもなかった、この優しく穏やかな少女。
そんな彼女にこの強力な武器が渡ったという事実を、小鳥は幸運に思った。
もし卯月でなければ、この武器は765プロにとって大きな脅威になり得ただろう。
小鳥「卯月ちゃん……これ、今、その鞄の中に?」
卯月「あっ……はい。なんだか怖くて触ってないですけど……。
私が触ったら、間違えて大変なことになっちゃいそうなので」
小鳥「……あの、一応聞いてみるけど……。
卯月ちゃん、今自分の身に何が起こってるか分かってる……わよね?」
卯月「え? それは……分かってると思います。
えっと、酷いゲームに参加させられてるって……」
112 = 100 :
卯月「でも、大丈夫ですよね! 私一人だとどうしようもないかも知れないけど、
みんなで頑張れば、きっと家に帰れますよね!」
そう言って笑顔を浮かべる卯月を見て、小鳥は再び胸を痛めた。
卯月は言葉ではそう言っているが、その目には隠しきれていない感情があった。
小鳥は直前まで、卯月の不自然すぎるほどの危機感のなさに違和感を覚えていた。
自分を見てもまったく警戒しようとしなかったこと、
まるで日常の中に居るような明るさ、
銃の存在に大して怯えもせず無関心であるかのような態度……。
しかしこれらの違和感の全てに今ようやく合点が行った。
言ってしまえば現実逃避だ。
殺し合いを強制され、相手を殺さなければ自分も仲間も全員死ぬという現実……。
その点に一切目を向けようとしていない。
それが卯月の今の状態だった。
113 = 100 :
小鳥「……ええ、そうね。きっとみんなで帰れるわ」
そんな卯月の心情を思い、小鳥は卯月が求めている返事を返した。
そしてそのまま更に言葉を続ける。
小鳥「ごめんね、おかしなことを聞いて。
それで、えっと……その銃なんだけど、卯月ちゃんの言う通り、
やっぱり危ないわよね? だから、良かったら私が預かろうと思うんだけど」
卯月「えっ? で、でも危ないですよ? それに結構重たいですし……」
小鳥「だ……大丈夫! こう見えて私、力持ちなんだから!
それに重たいなら余計、卯月ちゃんは大変でしょう?」
114 = 100 :
卯月「え、っと……それじゃあ、ごめんなさい。お願いしてもいいですか?」
小鳥「ええ、もちろん!」
卯月「その、ありがとうございます!」
深々と頭を下げて礼を言い、卯月は鞄の口を広げる。
小鳥はその中から散弾銃と予備の弾を取り出して、自分の鞄の中へ入れた。
小鳥「さて……それじゃ、行きましょうか。
きっと今からなら追いつけるはずよ」
卯月「はい、行きましょう!」
そうして二人は崖の向こう側を目指し、
東側の海岸を北上し始めた。
115 = 98 :
ちゃっかり敵から強力な武器を奪う小鳥さん
116 = 100 :
15:30 前川みく
みく「あのー! 誰か居ませんかー!」
扉を開けてそう呼びかけるのも何度目か。
家屋はあれど人の気配はまったくない。
この村はどうやらもう長く人は住んでいないようだと、
みくが薄々感じていた予感は確信に変わり始めていた。
みくが目覚めたこの場所は、村というより集落に近かった。
しかしみくが考えている通り、もう何年も人は住んでいない。
というより、この島自体が無人島と化してから長い。
人が居ないなら、何か別のものを。
はっきりとした目的は定まっていないが、みくは探し物を変更して探索を続けることにした。
117 = 100 :
それからしばらく経ったが、やはり大したものは見つけられなかった。
成果と言えばただ野宿するよりはマシな場所を見つけた、という程度だ。
それも探索の成果ではなく自分がたまたまそこに配置されたからに過ぎない。
しかし、みくはこれを幸運と考えていた。
地図にははっきりとこの集落が示してある。
島にはもう一箇所、ここから南東の辺りに集落があるようだが、
もしかしたら誰かこちらを目指してやって来てくれるかも知れない。
そうすれば、これから先の行動を相談できる。
ただ出来れば346プロのアイドルの方が……。
と思うが早いか、その時は訪れた。
「み、346プロの人だよね……?」
118 :
小鳥さん、皆のために悪魔になる気か?
119 = 100 :
みく「っ!?」
突然横から話しかけられ、慌ててそちらを向く。
するとそこに立っていたのは、
美希「あ、あの! ミキ、星井美希だよ! は、はじめましてなの!」
みく「へっ? あ……み、美希ちゃん!?」
美希「! ミキのこと、知ってるの……?」
みく「知ってるよ! だってテレビでよく見るもん!」
美希「わあ、嬉しいの! でもミキも知ってるよ! えっと……前川みく、だよね!」
みく「ほ、ほんと!? 美希ちゃんがみくのこと知ってるなんて、すごく嬉しい!!」
120 :
一番やばそうなのが早々にきてしまったか
121 = 100 :
美希「あれっ? でも言葉遣いがちょっと違うような……。
あんまり『にゃあ』って言わないんだね」
みく「えっ? そ、そんなことないにゃ! みくは可愛い猫ちゃん目指、し……」
状況を忘れさせるような盛り上がりを見せていた二人だが、
皮肉にもその時の会話が、みくに思い出させた。
目の前で大好きな猫が爆死させられた、あの光景を。
そして自分たちが置かれている現状を。
美希「……? みく? 大丈夫?」
みく「あ……う、うん。ごめんね、大丈夫……」
美希「なんだか顔色が悪いの……。ちょっと座った方がいいって思うな」
122 = 100 :
みく「う、ううん、大丈夫。ありがとう……」
美希「……やっぱり、そうだよね。こんな訳わかんないことになって……」
そうして二人とも黙り込んでしまう。
しかしいつまでもこうしているわけにはいかない。
そう思い、みくは顔をあげた。
みく「美希ちゃんも、こんなゲーム絶対嫌だよね? 殺し合いなんて、しないよね?」
美希「そ……そんなの当然なの!」
みく「みくも同じだよ……殺し合いなんて絶対に嫌……。
だからみくは、何か別の方法を探すことにしたの!
美希ちゃんも手伝ってくれるよね! まずこの近くに何があるか見てみようよ!」
123 = 100 :
美希「近くに、何があるか……? 何か見つけたら、解決できるの!?」
みく「え、えっと、それはまだ分かんないけど……。でも、きっと……」
美希「あ……。うん、そうだね! ミキもそう思うの!」
そう言って美希が見せた嬉しそうな笑顔を見て、みくも同じように笑顔になる。
それと同時に、持ち前の明るさが少しではあるが戻ったようだ。
敢えて明るく振舞おうとしているというのもあるかも知れないが、
少なくとも見た目には普段のみくに戻りつつあった。
みく「よーし、やってやるにゃ! 絶対解決策を見つけてやるにゃー!」
124 = 100 :
美希「あはっ! 本当に『にゃあ』っていうんだ。なんだか可愛いの!」
みく「えへへっ、当然にゃ!」
いつもと変わらぬ様子の美希に、元気にそう返すみく。
そしてみくは足元に下ろしていた鞄を持ち、肩にかけた。
みく「じゃあみくは、あっちを探すね!
何かあったら呼ぶから、美希ちゃんも呼んでにゃ!」
美希「うん、ありがとうなの!」
笑顔でお礼を言う美希に、みくは同じく笑顔を向け、それから背を向けて歩き出す。
美希はほんの少しその背中を見つめてから、反対方向に歩き出した。
125 :
プロデューサーの命が危ないって知ったらどうなるか
126 = 100 :
今日はこのくらいにしておきます。
続きは多分明日投下します。
あと>>89できらりの武器が散弾銃になってますが、短機関銃の間違いでした。
127 = 99 :
小鳥さんの見た人って、位置的に杏か、蘭子も近くにいるし、どうなることやら・・・・
128 :
ラスボスは小鳥さんかな
129 :
最初の選択肢次第でピヨちゃんの周辺の346勢が全滅した可能性
130 :
杏「表が出たら、このゲームに乗るっ!」
131 :
それで表がでたら「あー、やっぱ今のナシ!」とか言って裏が出るまでコイントスやり続けてそう
そしてそれをうづぴよor蘭子に見られて赤面しそう
132 :
15:40 新田美波
伊織「止まりなさい!!」
美波「ッ……!」
こちらに気付いた伊織の悲鳴にも似た叫びに、美波は足を止めざるを得なかった。
双方の間にはまだ数十メートルは距離がある。
伊織は明らかに美波のことを警戒している。
それに気付いた美波は、大声で敵意のないことを伝えた。
美波「だ……大丈夫! 私はあなたと戦うつもりはないわ!
ただ協力しようと思ってここまで来たの!」
133 = 132 :
しかし伊織はまったく警戒を解く気配を見せず、叫び返す。
伊織「その手に持っている物は何!? 支給された武器でしょ!?」
美波「武器……? ち、違うわ! 武器なんて持ってない!
これは探知機よ! 他の子たちの居場所が分かるの!」
伊織「……!」
美波に支給されたものは、アイドル達の居場所が分かる探知機。
それを聞き伊織は表情を変えた。
警戒の色を僅かにではあるが弱め、そしてゆっくりと美波に向かって歩みを進める。
美波は取り敢えずは信用してもらえたことに安堵し、
同じように伊織に向かって歩き始めた。
134 = 132 :
徐々に二人の距離は縮まり、10メートルを切った。
伊織は相変わらず警戒心を顕にしているが、
美波は歩を進めながら出来るだけ優しく、穏やかに声をかける。
美波「あなた、水瀬伊織ちゃんだよね? 竜宮小町のリーダーの……」
伊織「……待って」
と、伊織はここで再び美波を制止した。
美波は素直に従って足を止める。
そして伊織は数メートル先の美波に、静かに言った。
伊織「その探知機、こっちに投げてもらえる? 確認しないと信用できないわ……」
美波「……もちろん、良いわよ。それじゃあ投げるね?」
135 = 132 :
美波は下手でそっと探知機を伊織の胸元めがけて投げ、
伊織はそれを落とすことなく受け取った。
美波「右側にスイッチが二つあって、それでズームインとズームアウトが出来るの。
探知できるのは半径300mくらいまでみたいだけど、
765プロの子と346プロの子で色分けがされてあって分かりやすいわ」
伊織「……」
説明を聞き、伊織は美波を気にしながらも目線を手元に下ろす。
そして探知機を色々と操作した後、再び美波を見て、静かに言った。
伊織「本当に探知機みたいね。それじゃ、お返しにこれを渡すわ」
136 = 132 :
そう言って伊織は鞄から何か円筒状の物を取り出す。
伊織の言葉を聞いてすぐに構えた美波だったが、
美波「えっ……!」
伊織はそれを美波の胸元へ向けて真っ直ぐではなく、大きく弧を描くように高く投げた。
思わず美波はそれを目で追い、落とすまいとして注視する。
だから気付くことができなかった。
投げた直後、伊織が耳を塞いでうずくまったことに。
伊織の投げたそれが放物線を描き落下し始めたと思った、次の瞬間。
美波「ッッ!!??」
辺り一帯を覆い尽くすほどの強烈な光と爆音が、美波を襲った。
137 = 132 :
『音響閃光手榴弾(スタングレネード)』
屋外では効果が薄れると言われるこの武器だが、
それでもただの女子大生を一時的に行動不能にするには十分な効果を発揮した。
突然の脅威から身を守ろうと、
美波は呼吸すら忘れてただ体を丸めて身を固くすることしかできなかった。
しばらく経って恐る恐る目を開けた時には、伊織は既に姿を消していた。
強い光を直視したせいでまだ視界がはっきりとしない。
追いかけるのは不可能だった。
美波は少なからずショックを受けた。
何にショックを受けているのか、それは自分でも分かっていない。
ただ視界の不良を差し引いても、しばらく動く気にはなれそうにないと美波は感じた。
しかしそれから長くは待たず、美波の表情に落ちた影は取り払われた。
アーニャ「美波っ……美波!!」
138 = 132 :
背後から聞こえたその声に振り向くより先に、
座り込む美波の目の前にアナスタシアが半ば倒れこむようにして回り込んできた。
アーニャ「美波、Ты в порядке!?」
美波「えっ?」
アーニャ「Что случилось!? Есть ли какие-травмы!?」
美波「ア、アーニャちゃん、ちょっと……!
私は大丈夫だから、お、落ち着いて? ね?」
アーニャ「あ……ご、ごめんなさい。えっと、大丈夫、ですか!?
美波、怪我はないですか!? 何がありましたか!?」
139 = 132 :
アーニャ「いきなり大きな爆発、聞こえました!
私、見に行ったら、美波が居ました! 倒れてるの、見ました……!」
美波「あ……う、うん。でも大丈夫、びっくりして倒れちゃっただけ。
どこも怪我はないから、心配しないで?」
泣きそうな顔で声を荒げるアナスタシア。
そんな彼女をまずは安心させなければと、美波は優しく微笑みかけた。
アナスタシアをそれを見てようやく少し落ち着きを取り戻したらしく、
今度は確認するように静かに聞いた。
アーニャ「ほ、本当、ですか? 怪我、してないですか?」
美波「ええ、本当よ」
アーニャ「っ……美波!!」
140 = 132 :
美波「きゃっ!?」
アーニャ「Я рад……! 安心しました、私、美波に何もなくて……!」
無事を確認した途端、アナスタシアは勢いよく美波に抱き着いた。
美波には表情は見えなかったが、直前の表情と声色から、
彼女が涙を流していることは分かった。
抱き着かれた瞬間は驚いた美波だったが、すぐに両手をアーニャの背に回して抱き返す。
美波「ありがとう、アーニャちゃん……。ごめんね、心配かけちゃって」
アーニャ「謝ること、ないです! 私、嬉しいですから……!」
141 = 132 :
それからもう少しだけ二人は互いの温もりを確認し合った。
しかしそうしてばかりは居られないのも事実。
美波はアナスタシアの肩に手を置き、体を離して言った。
美波「アーニャちゃん……。まずは確認させて欲しいことがあるの」
アーニャ「? なんですか……?」
美波「今私たちがどういうことになってるか、理解はできてる?
眠らされる前の説明、ちゃんとわかった?」
アーニャ「あ……。Да、わかりました。
私たち、765プロの人達と、えっと……殺し合い、するんですね?
負けた時と、ничью、引き分けの時は、みんな死ぬ……ですね」
142 = 132 :
美波「うん……それでね。私、人殺しなんてそんなの絶対嫌だから……。
さっき765プロの水瀬伊織ちゃんに会って、それで、一緒に協力しようと思ったの。
でも、逃げられちゃった……。伊織ちゃん、映画に出てくるような、
光と音が出る爆弾を持ってて、それで……」
アーニャ「……Такой……そんなことが、あったんですね……。
私、見たことあります。イオリ……中学生のアイドルです」
美波「あの子、完全に私のことを、346プロのことを敵だって思ってた……。
もしあの子が人を傷つける武器を持っていたら、使ってしまうかも知れないわ。
ううん、あの子じゃなくても、他にもそんな子が居るかも知れないって……。
そう思ったら、私……」
アーニャ「美波……」
143 = 132 :
自分の肩に置かれる美波の手が震えている。
アナスタシアはそれに気付くと、そっと美波の手に自分の手を重ね、
それから自分の胸元で彼女の手をぎゅっと握った。
アーニャ「大丈夫です、美波」
美波「え……?」
アーニャ「協力してくれる人、きっと居ます。私、一緒に探します。
それから、もしも美波に酷いことをする人が居たら、私が守ります。
だから美波? 怖がらないで。私たち、ラブライカ……ずっと一緒です」
美波「……アーニャちゃん……!」
優しく心強いアナスタシアの言葉。
それを聞き、美波は笑顔でアナスタシアの手を握り返した。
その時にはもう美波の手は震えてはいなかった。
144 = 132 :
アーニャ「そう言えば、美波? 私、美波に聞きたいことあります」
二人で手を握り合って少し経った後、
不意に思い出したようにアナスタシアは美波に聞いた。
アーニャ「美波、武器はなんですか? 私は、これが入ってました。
見たことないですが、強そうです。これならきっと、美波のこと守れます」
そう言ってアナスタシアは鞄から武器を取り出した。
武器自体は美波も見たことはなかったが、その如何にも攻撃的な形状に少し物怖じした。
美波「……こ、これが、アーニャちゃんの……?」
アーニャ「Да……. ここに、色々と書いてあります」
次いでアナスタシアは説明書を取り出し、美波に手渡す。
見るとそこには、美波が武器の形状から抱いたイメージとは少し違う名称が記されていた。
145 = 132 :
『モーニングスター』
美波がこの名前を見たのを確認し、アナスタシアは呟くように言った。
アーニャ「Утренняя звезда……朝の星、という意味ですね」
そういう意味ではアナスタシアにお似合いの武器かも知れない。
しかしそれでも見た目は武器そのもの、用途は当然人の殺傷である。
美波は親友が自分のためにこんな武器を使おうとしていることを辛く思った。
が、アナスタシアは困ったようなぎこちない笑顔で続けた。
アーニャ「名前は、好きです。でも、形はとても怖いです。
でも、あー……だから、みんなも、怖がると思います。
атака、攻撃してきた人も、逃げてくれると思います」
美波「! ……そっか、そうだよね。使わなくても、きっと……」
アーニャ「Да. それで、美波の武器はどうですか? 怖い武器ですか?」
146 = 132 :
美波「私は探知機……えっと、人を探す機械だったんだけど。
さっき伊織ちゃんに持って行かれちゃって……」
アーニャ「あ……そう、ですか。でも、大丈夫ですね?
二人で一緒に、探しましょう。協力してくれる人、きっと見つかります」
美波「うん……そうだよね!」
アーニャ「では、行きましょう。
私は、маяк……灯台に行ってみたいですが、
美波、どこか行きたいところはありますか?」
美波「灯台……島の北側にあった灯台ね? 私もそこでいいと思うわ」
美波は地図を広げ、灯台の位置を確認する。
自分とアナスタシアが歩いてきた道を戻ることになるが、
灯台ならひょっとすると何か得られるものがあるかも知れない。
そう思い、二人は島北部の灯台を目指すことにした。
147 = 132 :
これで取り敢えず15時台に誰かに出会ったアイドル達は全員です
15時台で他に気になるアイドルが居れば何人か様子を書きます
特に無ければ今日はこのくらいにしておきます
次の更新は年明けになります
148 :
乙です
亜美真美はあの距離で出会ってないのか…
あずさの迷子スキルで脱出の可能性が微レ存?
149 :
杏の行動が気になる
150 :
乙
李衣菜がみくと出会えたの気になります
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