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    元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」

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    651 = 627 :

    伊織「言ってみなさいよ……そう思うならこの子にそう言ってみればいいじゃない!!
       亜美が殺されたのは嘘だって、そんなわけないって、
       この子に向かってそう言ってみなさいよ!!」

    律子「い……伊織、落ち着いて!!」

    今の伊織は感情が制御できていない。
    今にも莉嘉に向かって飛びかかりそうな伊織の肩を、律子は咄嗟に掴む。
    しかし次いで律子の口から出た言葉は、律子自身の体と心を凍りつかせてしまった。

    律子「莉嘉や彼女達に何を言ったって、もう……!」

    もう、何なのか。

    自分は今何を言おうとしたのか。
    直前で飲み込んだ言葉が、胸の中を、頭の中をかき乱すのを律子は感じた。

    伊織の肩に置いていた手を自分の口元へ運び、
    そのまま膝から崩れ落ちるようにして、律子は地面に座り込んだ。

    652 :

    自分のミスで人が死ぬのを恐れて身を挺して助けようとした春香あたりがいうならともかく伊織じゃ説得力ないな

    653 :

    『亜美は二度と帰ってこない』

    頭にこびり付いたこの言葉をかき消すように、律子は声を上げて泣いた。
    そしてこの律子の泣き声が、他の765プロの者達の感情に、亜美の死を理解させた。
    律子と同じように崩れ落ち泣き声を上げる者、声を押し殺しながら涙を流す者、
    ただ表情を歪め、拳を握る者……。
    仲間を失った悲しみに暮れる皆を、346プロの三人はただ見ていることしかできなかった。

    しばらくその場には泣き声だけが響き続けるかと思われた。
    だが唐突にその時間は終わりを告げる。

    伊織「……諸星きらりと、双葉杏。やったのは多分この二人よ……」

    脈絡なく発された伊織の言葉。
    それを聞きある者は恐る恐る、ある者は驚いた様子で伊織に目を向ける。

    伊織の目にはやはり皆と同じように涙が浮かんでおり、
    その表情からは怒りも読み取れた。
    しかし先ほどまでの感情の昂ぶりは既になく、
    その場に居る者全員に情報を伝えるべく静かに伊織は話し始めた。

    654 :

    杏はそうだけどきらりはちょっと違うよな

    655 :

    きらり「え?」

    656 = 653 :

    伊織「油断させたのが諸星きらりで撃ったのが双葉杏……。
       もう一人居たみたいだけど、そいつのことは分からない。
       私は実際に見たわけじゃないけど、
       でもその二人だってことは真美の話から考えて間違いないわ……」 

    美波「き、きらりちゃんと、杏ちゃんが……」

    そう呟いた美波に、伊織は目を向ける。
    美波は思わず身を固くしたが、伊織はふっと目を逸らし、

    伊織「……さっきは私も少し興奮してた。
       騙し討ちしたのは私も同じだし、亜美を殺したのはあんた達じゃない。
       もう、そこを混同する気はないわ……。それに、そういうゲームなんだしね。
       あんた達がゲームに乗り気じゃないってことも、信用してあげる。
       でも……」

    と、そこで伊織は再び美波達へ視線を向ける。
    そして莉嘉とアナスタシアを見て、静かに片手を出し、言った。

    伊織「やっぱり、武器は渡してもらうわ。あんた達に配られた武器を出しなさい」

    657 :

    無茶言うなって思うけど
    これも感情を利用した一つの交渉なんだよね

    658 :

    きらりの圧倒的とばっちり感
    むしろきらりのおかけで真美は助かったんだが

    なんにせよこれで灯台組は対等じゃなくただの人質になったか

    659 = 653 :

    その言葉に、二人は困惑する。
    自分の仲間が双海亜美を殺してしまったこと、
    自分の仲間に双海亜美が殺されてしまったこと、
    そのことに深い悲しみと罪悪感に近い感情を彼女達は持っていた。

    自分達は、伊織の言葉を拒否できる立場には無いのかもしれない。
    しかし武器を要求した伊織の真意が分からない。

    身を守る武器を手に入れるためか、
    あるいは765プロの脅威となり得る可能性を完全に排除するためか。
    それならまだ良い。
    だが、もしそうでないなら。
    守るためでなく攻めるためだったなら、
    自分が武器を渡したことで346プロの誰かが殺されてしまうかも知れない。

    そう思うと、二人はやはり簡単に伊織の指示に従うことはできなかった。

    とは言え、もしもここで伊織がより強く押せば二人はその指示に従っていただろう。
    しかしその「もしも」は、現実とはならなかった。

    律子「駄目よ、伊織……。武器は渡せないわ……!」

    660 = 654 :

    俺も無茶いうな思ったが、本当に敵意はないと思わせるためには渡さないといけない
    もし渡さず何かしら言って誤魔化そうものなら、敵意は少なからずあると思われたりするし選択肢は一つしかないようなもんだな

    661 = 653 :

    先程まで亜美を失った悲しみに打ちひしがれていた律子。
    しかし今、その声色にはしっかりとした意志が宿っていた。
    律子は立ち上がり、そして涙に濡れた目で伊織の顔を真っ直ぐに見て言った。

    律子「武器を渡せば、きっとあなたは346プロの子を傷付けてしまう……。
       そしたら、今度はあなたが狙われるかも知れないのよ!」

    伊織「……傷付けなくたって、どうせ狙われるわよ。亜美を殺した奴らにね。
       それとも何? あんた、私が為すすべもなく殺されてもいいって言うの?」

    律子「っ……そんなはずないでしょ!? 私は、あなたのことを心配して……!
       もう……もうこれ以上、誰にも死んで欲しくないのよ!!」

    伊織「……」

    律子は自分のことを心配してくれている……そんなことは分かっている。
    口には出さずとも、伊織は律子の気持ちを十分に理解できていた。
    だがそれでも今の自分は、律子と話し合って意見をすり合わせることはできない。
    武器の奪取は無理だ。
    伊織はそう感じ、静かに目を閉じた。

    662 = 653 :

    伊織「もういいわ。真美、行きましょう」

    伊織はそう言い、真美は少しの間を空けて黙って頷く。
    そして二人は律子に背を向けた。

    律子「なっ……ふ、二人ともどこに行くの!?」

    伊織「言ったでしょ、あんた達とは別行動を取るって。
       そっちはお互い仲良くやってれば良いわ。
       その方が死ぬ確率は少なそうだし。
       でもこっちはこっちで、取るべき行動を取らせてもらうから。
       たださっき言った通り、
       やる気になってる346プロの連中も居るってことは忘れるんじゃないわよ」

    慌てて声をかけた律子に、伊織は肩越しに目線だけをやって早口気味にそう答えた。
    そして前を向き、真美と二人で歩き出した。

    663 = 653 :

    律子「ま、待って! 二人とも、お願い、待って……!」

    必死に声をかけるが、二人は振り向くことなく去って行く。
    だが律子はその場から動くことができず、ただ小さくなっていく二人の背中へ叫び続ける。
    本当なら、今すぐ駆け出して力尽くでも止めるべきなのかも知れない。
    しかしその場に居る誰も、それはできなかった。

    伊織が単に346プロを警戒しているだけなら、間違いなく止めていた。
    亜美が殺されたという事実があったとしても、きっと止めていた。

    しかし律子達が二人を引き止めることができなかった理由は、伊織ではなかった。

    美波に話しかけられて泣き叫んだ、真美。
    彼女は去り際までずっと、そして今も何度も振り返り、
    怯えた目で346プロの三人を見続けている。
    そのことが彼女達にこれ以上ない躊躇を与えた。

    664 = 655 :

    あとで、杏の行動の引き金がピヨだって知ったときの二人の反応が凄く見たい

    665 = 653 :

    美波達に敵意はないと、真美もきっと頭では分かっている。
    だが真美の心は今や、完全に346プロへの恐怖に侵されてしまっていた。

    亜美が殺されたこと。
    しかも一度心を許した相手に殺されたこと。
    その事実が真美の心へ与えた影響は計り知れない。
    誰が何を言おうと恐らく彼女の中の恐怖心が消えることは二度とない。

    346プロの者ががただ近くに居続けるだけで、
    想像を絶する恐怖が、苦しみが、真美を襲い続けるだろう。
    もしかすると、心が耐え切れなくなってしまうかも知れない。

    真美の美波達に対する態度は見た者にそう思わせるのに十分なものであり、
    そしてそんな状態の真美に、
    346プロとの協力を強いることは彼女達にはできなかった。

    666 = 653 :

    どうすることが正解なのかその場の誰にも分からなかった。
    真美の精神状態は心配だが、
    殺される危険だけでも減らすためにここに居させるべきなのか。
    それとも二人が自分の身を守れるよう、武器を渡した方が良いのか。
    それとも灯台での協力を放棄してでも誰かが二人に付いて行くべきか。
    それとも……。

    考えれば考えるほど、いたずらに選択肢が増えていく。
    そしていずれの行動を選択した場合を想定しても、
    良い結果と悪い結果が浮かんでは消え浮かんでは消え、答えは出ない。

    そうして悩むうちに二人の背中はどんどん小さくなり、
    森の中へと入った後はあっという間に見えなくなってしまった。

    残された者達は皆、しばらくそこから動くことができなかった。

    667 = 653 :

    今夜はこのくらいにしておきます
    続きは多分次の夜投下します

    669 = 654 :

    乙。

    読んでて重いし胃がキリキリするのに読むのが止められない…

    670 :



    美波達は杏の事を相当頼れる存在だと思ってたからショックも大きいだろうな・・・

    671 :

    杏は今でも相当頼れる 方向性が逆なだけで
    ピヨは杏のこと知ってるから思うところありそうだな

    乙乙

    672 :

    結構集団ができてきたけど、レーダー持ってる伊織と雪歩の動きが気になる

    例えばみきまこと合流したらどう動くかとか

    673 :

    乙です
    杏って卯月やられた報復で亜美真美撃ったの?
    初見からヤル気に満ちてた様な…

    674 :


    この言い争いの原因ともいえるピヨちゃん…

    675 = 658 :

    いやピヨが杏の目の前で卯月撃った結果杏が交渉の余地なし全員潰すって思考になったって話だろ
    杏はリアリストだから初めから脱出優先で考えてただろうけど出会い頭で即射殺にまでなったのはピヨとの遭遇が原因でしょ

    676 :

    やっぱりいおりん行っちゃうのか…

    677 :

    今の状態だといおまみはみきまこと合流するのがベストなのかな
    心配なのはロクな武器がなく探知機に頼って逃げ回るしかない事か

    678 :

    ただ場所を把握できるってのは一番逃げやすいからなぁ
    雪歩のレーダーが渡らなければいいが

    679 = 654 :

    杏は最初から殺らなきゃ殺られるって思考だったと思うが
    卯月がうまく杏と合流してたら絶対小鳥さんを殺るつもりだったろ

    680 = 658 :

    んなわけない
    本人が脱出方法考えてたって言ってるからはじめは警戒心しかなかったんだろ そこに卯月小鳥がきたわけだからこの時点で小鳥に殺意があったってのは不自然
    小鳥以外の765も色々やってるし別の場面で遅かれ早かれ同じ結論には至ってただろうけどそのトリガー引いたのは小鳥でしょ

    681 :

    果たして真美はいおりん依存状態から立ち直れるのか

    682 = 654 :

    振り返ってみると小鳥さん最初は武器奪い二人を人質にするつもりだったんだろうな
    最初から[ピーーー]つもりなら撃っちゃったあとに杏たちが逃げたのを黙って見てないだろうし
    止めを指したのは、もう卯月は助からないとわかったからせめてこれ以上苦しまないようにとって感じだから?
    だから響たちと合流したとき泣いてたんだよな
    まあ、あれがきっかけで小鳥さん吹っ切れて皆守るためなら自らの手をいくらでも汚す覚悟ができたんだろうけどさ
    765側は何人か覚悟ができたが346側は杏以外は覚悟ができてないし不利だな
    いくら杏の武器が強いとはいえこちらはたくさん武器あるしそういった面でも不利だ
    346が勝てる要素こうして考えるとないような気がしてきた

    683 :

    相手を騙して武器奪った時点で敵意の塊みたいなもんだけどな
    殺しあいのゲームで「[ピーーー]つもりはなかった」なんて通用するわけがない

    684 :

    美波に「レーダー返して」って言える胆力があれば……

    685 :

    やよい・・・親友の別離に何も言えず・・・

    686 :

    スタングレネードが複数支給されてるなら、未央の手榴弾も複数支給されてると考えると、それを奪うであろう真組はかなりの脅威
    いずれにせよ探知機が杏組か真組のどちらかに渡ったら趨勢が一気に傾きそう

    687 = 671 :

    いや未央は美希に追い詰められた時に丸腰って描写されてるからもう手榴弾もってないんじゃないかな
    持ってたらそう書かれるはずだし

    689 = 653 :

    7:40 双葉杏

    李衣菜「……本当に行くの? まだ爆弾持ってる奴が居るかも知れないのに……」

    そう聞いた李衣菜の視線の先には、
    もう一つの集落へ行くための支度をする杏の姿があった。
    周辺で爆発音がしたということは李衣菜たちも既に知っている。
    そんな場所へ自ら赴こうとする杏を案じての言葉だった。

    しかし杏はそんな李衣菜に対し、変わらず落ち着いた様子で答える。

    「まぁ、やっぱり早いうちに調べておきたいしね。
     それに危ないのはどこも同じだよ。
     爆発起こした人がこっちの集落に来る可能性だってあるんだし」

    その言葉に対する李衣菜、みく、蘭子の反応はそれぞれだったが、
    緊張感が高まったという点では共通していた。
    杏はそれを確認し、今度はきらりとかな子に目を向けた。

    690 :

    >>1でもないのにID赤くしちゃう人を弄るのはやめなさい

    691 = 653 :

    「それで、二人ともどうするか決めた?」

    その言葉にかな子達は二人で顔を見合わせる。
    そしてすぐに杏に向き直り、

    かな子「私たちも……一緒に行ってもいいかな」

    少し遠慮がちにだが、かな子は杏の目を見てそう答えた。
    杏はかな子の返事を聞き、きらりに目を向ける。
    きらりは慌てたように目を逸らしたが、覚悟を決めるようにぎゅっと目を瞑り、
    そして杏と目を合わせて頷いた。

    「……それじゃ、もうちょっと待ってて。もうすぐ準備終わるから」

    そう言って杏は二人から目線を外し、支度の続きを始めた。

    692 = 653 :

    それから数分後、準備は整った。
    必要最小限に厳選した荷物を持ち、杏は立ち上がる。

    「それじゃ、行ってくるよ。何もなかったらすぐ戻ってくるから」

    李衣菜「うん……気を付けて」

    みく「……ごめんね。みく達、一緒に行けなくて」

    「別にいいよ、謝らなくても。それよりちゃんと安静にしてなよ。
      あ、でももし何かあったらすぐ逃げなきゃ駄目だからね」

    横になったままのみくに杏はヒラヒラと手を振って背を向ける。
    その背中に向け、蘭子も声を搾り出すようにして声をかけた。

    蘭子「あ、あのっ……! き、気を付けて、ください……!」

    「お互いにね。さっきも言ったけど、危ないのはここも一緒なんだから」

    杏はやはり落ち着いた声でそう答え、きらりとかな子を連れ部屋を出て行った。

    693 = 653 :

    7:45 星井美希

    美希「ミキ的には、もうしばらくここで待ってた方がいいって思うな」

    そろそろ準備しよう、行くなら早い方がいい。
    そう提案した真に、美希ははっきりと反論を述べた。
    その理由を真が問うより先に美希は話し始める。

    美希「だってこっちから行くより、向こうから来てもらった方が安全なの。
      ミキ達があっちの集落に行っても、どの家に誰が居るかなんて分からないよね?
      でも家の中で待ち伏せしてる人達からは
      ミキ達のことが丸見えになってるかも知れないの。だからミキは反対」

    この意見を聞き、真は実際に自分達が向こうの集落へ着いた時の状況を想像する。
    そして、確かに美希の言う通りかも知れない、と思った。

    694 = 653 :

    次の行き先は今自分達が居る集落の北西にある、もう一つの集落。
    その点については二人の意見は一致していた。
    しかし出発は早い方がいいと言う意見について、美希は反対している。

    美希「人質が居るって言っても、例えば家の中からいきなり撃たれちゃったりとか、
       物陰からいきなり襲いかかられたりとかしたらどうなるか分からないの。
       だからミキは、こっちが346プロの人を待ち伏せした方が良いと思うな。
       ここからなら誰か来たらすぐ分かるし、爆弾だって使いやすいもん。
     きっとそっちの方が良いの」

    「……でも美希、346プロの人がここに来てくれるとは限らないよ。
     確かに可能性としては低くないかも知れないけど、
     ここで待っていてももし誰も来なかったら……」

    美希「じゃあ、午前中くらいだったら良いよね?
      12時くらいまで待って、それで誰も来なかったら出発するの。それじゃ駄目?」

    695 = 653 :

    「……わかった。それじゃ、12時まではここに居よう」

    その返事を聞き、美希は薄く笑った。
    そして横でずっと黙っていた未央にチラリと目を向け、
    俯き気味の未央の顔を覗き込むようにして言った。

    美希「もし346プロの人が来たら、人質さんの出番だからね。
       ちゃんと人質さんになっててね? そしたら殺さないであげるから」

    確認とも忠告とも取れるこの言葉に、未央は卑屈な笑みを浮かべて二度三度頷く。
    美希はその顔を至近距離で数秒見つめた後、真に視線を外した。

    美希「真くん、見張る場所とか決めよ? 作戦会議なの」

    そうして二人は、更に話し合いを続けた。
    未央は目を閉じて、二人の会話をただ黙って聞いていた。

    696 = 653 :

    8:00 水瀬伊織

    伊織は草木の中にじっと身を伏せて探知機を注視する。
    息を潜め、目と耳に神経を集中する。
    聞こえるのは波の音と、真美の息遣い、それと、

    「見えてきた……。智絵里、もうすぐだよ」

    智絵里「う、うん……!」

    微かに聞こえる346プロのアイドル達の話し声。
    液晶に映る二つの点が最接近する。
    とは言っても距離はそれなりにあり、気付かれる恐れはほぼない。

    凛達が通り過ぎていったのを見計らって、伊織は木の陰からそっと頭を出す。
    少し離れた場所に、恐らく灯台に向かって砂浜を歩く二人の背中が見えた。

    697 = 653 :

    そして、はっきりと見た。
    二人の手にはそれぞれ武器が握られている。
    一つはサバイバルナイフ。
    そしてもう一つは、拳銃。

    チャンスだ。
    この機を逃さない手は無い。
    少なくとも拳銃、できれば両方手に入れたい。

    あの二人が765プロに対して友好的かどうか、それは分からない。
    そして分からない以上、武器を奪うのに手段を選ぶことはできない。
    交渉など論外だ。
    相手が殺意を持っていた場合、今の自分達には拳銃から身を守る術がないのだから。

    だから、やるしかない。
    それが絶対のルールなのだから。

    698 = 653 :

    伊織は長く息を吐いて覚悟を決め、真美に目配せする。
    それを見て真美は慌てた様子で耳を抑え目を瞑った。

    真美が耳を塞いだのを確認して、
    伊織は手に持っていた音響閃光手榴弾のピンを抜く。
    そして、まだこちらに気付いていない凛と智絵里の背に向けて投げた。

    手榴弾は弧を描き、二人の右上方を通過して、見事目の前に落ちた。

    「っ!」

    智絵里「ひっ……!?」

    突然視界に映った飛来物に驚き、二人は思わず注視する。
    そして次の瞬間。
    智絵里が小さく上げた悲鳴ごと、その場を爆音と閃光が覆い尽くした。

    699 = 653 :

    その直後、伊織は森を出た。
    凛と智絵里は伊織の狙い通り、砂の上に倒れ伏して身を固くしている。
    二人に向かって走りながら、伊織は智絵里の拳銃と荷物を確認した。
    智絵里は自分が銃を握っていることなど忘れているかのように、
    頭を抱えて体を丸めている。

    そして数秒後。
    智絵里が握っている銃は強引に指から引き剥がされた。
    また伊織は銃を奪うと同時に、
    傍に落ちていた智絵里の荷物も自分の後ろへと放り投げた。

    突然の出来事に智絵里は驚いて声を上げ、反射的に伊織の方を見る。
    だが閃光を直視した目は、まともに働いてくれない。
    ただそこに何者かが居るという、それだけの情報しか得られない。
    そのことが恐怖心を更に掻き立て、敵の存在を確認したにも関わらず
    智絵里は逃げることも立ち向かうこともできなくなってしまった。

    700 = 653 :

    しかしそのことが智絵里にとって幸いした。
    無力に怯える少女の姿が、伊織に僅かな躊躇を与えたのだ。

    つまりそれは、伊織に隙が生まれたことに他ならなかった。

    「ぅあああぁあああッ!!」

    突然の叫び。
    それを聞き伊織が咄嗟に目を向けた直後。
    伊織の両目を、痛みが襲った。

    伊織が感じたのは目の痛みだけではない。
    顔全体に、何かがぶつかったのを感じた。
    少し遅れて口の中の不快な異物感にも気付く。
    そこで伊織はようやく何が起こったか理解した。
    爆音と閃光の衝撃からいち早く回復した凛が、敵の存在を感じ取り砂を掴んで投げたのだ。


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