元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」
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701 = 653 :
砂粒は目を直撃し、伊織の視界は今や完全に奪われている。
それに対し凛の視力は、敵を視認できる程度には機能している。
凛は立ち上がり、利き手にナイフを構える。
今この瞬間は、自分以上に敵の視力は不自由になっているはず。
やるなら今しかない。
そう決断し、凛は足を踏み出して
伊織に向けてサバイバルナイフを思い切り振り抜いた。
しかし、
伊織「ッぐ……!?」
伊織を襲ったのは、頭部への打撃。
伊織はそれに一瞬怯むが、しかしこれは凛にとっても想定外だった。
切りつけるはずが、柄の部分で殴りつけてしまった。
視界の不良が災いし、凛は伊織との距離感を誤ったのだ。
702 = 653 :
失敗した、今度こそ……と凛はもう一度ナイフを振りかぶる。
だがそれと同時に、伊織は目を閉じたまま凛が居るであろう位置から距離を取った。
そして凛が距離を詰めようとした次の瞬間。
霞んだ視界に、もう一つの影が飛び込んできた。
真美「いおりん……!!」
待機するように言われていた真美だったが、
伊織の身に危険が迫ったと見て慌てて駆け寄ったのだ。
そして伊織の腕を掴み、
真美「こっち!! いおりん、こっち……!!」
そう言って森の中へ逃げようと必死に引っ張る。
しかしそんな真美の胸に、伊織は何かを押し付けた。
真美が視線を落とすとそこにあったのは、
伊織が智絵里から奪った銃だった。
そして真美がそれを確認したのと同時、伊織は目を閉じたまま怒鳴るように叫んだ。
伊織「撃って、真美! 早く!!」
703 = 653 :
真美はその声を聞いて、ほぼ反射のように伊織の手から銃を受け取る。
そして、伊織に切りかかった「敵」に向けて、構えた。
凛「っ……!」
朧げな凛の視界だが、銃口を向けられたことは分かった。
それが誰かも分からないし、周りの音もほとんど聞こえない。
ただ分かるのは、765プロと思しき人間が一人増えたことと、
相手が自分達に明確な敵意を持っているということだけ。
こんな状況で下手に身動きを取れるはずがない。
凛は間も無く自分を貫くであろう痛みへの恐怖に、思わず目を瞑った。
が、しかし。
完全に抵抗の意思を失った凛に向けて銃を構えた真美の手は、
これ以上ないほどに震えていた。
704 = 653 :
伊織「真美!? どうしたの、真美……!?」
未だ目を開けることのできない伊織は、
発砲音が聞こえないことに焦りを感じ真美の名を呼ぶ。
しかし真美の耳には伊織の声は届いていない。
いつの間にか真美の視界は涙に滲んでいる。
心臓は張り裂けそうに鼓動し、呼吸はまともに肺に空気を送っているのかすら分からない。
そして数秒後。
伊織の耳に聞こえたのは発砲音ではなく、
喉から漏れ出すような、真美の泣き声だった。
伊織がそれを聞いたのと、凛が決断したのはほぼ同時だった。
閉じた目を恐る恐る開けた凛は、なぜか敵が銃口を下げていることに気が付いた。
表情は分からず声も聞こえないため、理由は分からない。
しかし、今しかない、と凛はそう思った。
凛「智絵里、立って!!」
705 = 653 :
すぐ隣で震える智絵里の肩を抱き、凛はそう叫ぶ。
大声で叫んだ凛の声は、麻痺した智絵里の耳にも届いた。
智絵里は仲間の声にようやく動くことができ、凛の手を握って立ち上がる。
そして伊織達に背を向けて二人はその場から逃げ出した。
伊織「っ……この……!」
伊織は凛の声を聞いてほんの僅かに目を開けた。
真美が銃を握っていることを確認し、その手から銃を取る。
そして去って行く凛達の背中に銃口を向けた。
しかし、やはりまともに目を開けていられない。
しばらくなんとかして照準を定めようとしたが、
二人が木の陰に隠れて見えなくなった辺りで、伊織は歯噛みして銃口を下ろした。
俄かに喧騒は収まり、海岸には再び静けさが訪れる。
伊織の耳には、波の音と、真美の泣き声しか聞こえなくなった。
706 = 653 :
伊織は手探りで、智絵里から奪った荷物から
ペットボトルを取り出し、その水で目を洗った。
砂を洗い流し、何度か目を開閉させ、痛みが無いことを確かめる。
ついでに口もゆすいで砂を吐き出し、顔を袖で拭った。
その時になってようやく伊織は、真美の姿をはっきりと見た。
真美は地面にへたり込むように座り、両手をついて俯いている。
泣き声はもう聞こえないが時折しゃくり上げ、肩が跳ねる。
そんな真美の後ろで伊織は、激しい後悔と自己嫌悪を感じた。
自分の失態で、渋谷凛と緒方智絵里を逃がしてしまった。
それも美波の時とは違い、明確な殺意を顕にした上で、逃がしてしまった。
もうあの二人が765プロを敵視するのは、ほぼ間違いない。
なぜ逃がしてしまったのか。
躊躇してしまったからだ。
つまり自分は、この期に及んで未だ中途半端だったんだ。
707 = 653 :
自分が決めたと思っていた覚悟など、まったくの薄っぺらいものだった。
中途半端だったせいで、自分のみならず真美まで危険にさらした。
それだけじゃない。
凛に反撃された自分は、あろうことか真美を頼ろうとした。
真美の心が弱っているのを知りながら、銃を持たせて射殺を命じた。
自分は真美を守ろうとしていたんじゃなかったのか。
灯台であれだけの啖呵を切っておいて、いざとなるとこのざまだ。
その灯台のことだってそうだ。
自分のことを棚に上げて、346プロの騙し討ちを責めた。
亜美を殺した奴らとは無関係の三人に、八つ当たりのように怒鳴り散らした。
伊織は拳を握り、自分の意思の薄弱さ、一貫性のなさを責めた。
自分自身に虫酸が走る。
ここまで酷い自己嫌悪を覚えたのは伊織は初めてだった。
708 = 653 :
そしてそれと同時に、
自分が真美の精神状態を何も分かっていなかったことを恥じた。
たとえ何があっても、真美に撃てなどと言うべきじゃなかった。
反撃され危険が迫っていたとは言え、目が開かなかったとは言え、
それでも自分がなんとかするべきだった。
真美が銃を構えたまま泣き出すまで、気付かなかった。
真美はただ346プロに怯えているだけではなかった。
怯えているだけなら、ああはならないはずだ。
銃を構えることはできたのだ。
ならば、恐怖の対象を排除するためにそのまま引き金を引くこともできるはず。
しかし真美は撃たなかった。
それどころか泣き出してしまった。
真美の心の状態は自分が思っていたよりずっと複雑で、
ずっと深刻なものだったと、伊織はこの時になってようやく気付いた。
709 = 653 :
真美はあの時、確かに引き金を引こうとしていた。
346プロの者を殺そうという明確な殺意を、真美は確かに抱いていた。
あの時、あの瞬間は、自分が圧倒的に優位であることを感じ、
真美の346プロに対する恐怖心は影を潜めていた。
恐怖心に勝る復讐心が、あの時の真美の心には確かにあった。
亜美の仇を討つ。
昨日から今までの間に真美がそう考えたのは一度や二度ではない。
恐怖に震えながらも、その裏には確かに亜美を殺した346プロへの憎しみがあった。
346プロは怖い。
でも、亜美の仇を取らなければ。
復讐しなければ。
真美の心を、幾度となく殺意がよぎった。
しかしそのたびに……。
亜美のことを思い出すたびに、真美は分からなくなった。
710 = 653 :
真美『や……やだ!! 真美、こんなの絶対いや!!』
亜美『あ、亜美だってやだよ! 人殺しなんてしたくないもん!!』
真美『亜美、作戦会議だよ! これからどうすればいいのか考えなきゃ!』
亜美『うん! 人なんか殺さなくてもいいように考えよ!!』
自分も亜美も、人なんか殺しなくなかった。
だからたくさん考えた。
人を殺さないために、たくさん、たくさん、考えた。
その時の亜美の顔が、言葉が、今でもはっきりと思い浮かぶ。
二人で一緒に、一生懸命考えた。
人を殺さずに済む方法を、頑張って考えた。
そう……亜美は絶対に、人殺しなんか嫌だったんだ。
711 = 653 :
仇を討ちたい。
亜美を殺した奴らが憎い。
復讐してやりたい。
しかし亜美との思い出が、駄目だと言う。
あの時の亜美が、やめてと言う。
人を殺さないために二人で一生懸命話し合ったあの思い出。
もし自分が346プロの者を殺してしまったら、あの思い出を台無しにしてしまう気がする。
亜美との思い出を、亜美の思いを、台無しにしてしまう気がする。
凛に銃口を向けた時、真美の殺意は最大にまで高まった。
何かが違えば恐らく引き金を引いていた。
だがその瞬間、やはり亜美との思い出が心に浮かんだ。
だから、できなかった。
亜美のために殺さなければいけない。
亜美のために殺してはいけない。
どうすればいいのか、わからない。
712 = 653 :
矛盾する二つの気持ちは常に真美の中にあり、
それはことあるごとに頭と心を掻き乱して、少しずつ真美の精神を蝕んでいた。
そして、今。
実際に仇を討つ機会が巡ってきてしまったことは、更に大きく真美の心を削った。
伊織は真美のこの精神状態を、正確に理解したわけではない。
しかし自分が発砲を命じたことが、真美の心を更に弱らせてしまったことは分かった。
伊織はぎゅっと目を瞑り、座り込む真美を正面から抱いた。
胸の中でしゃくり上げる真美の頭を抱きしめ、
伊織は真美への懺悔とともに改めて決意する。
もう真美には何もさせない。
手を汚すのも心を汚すのも、自分一人でいい。
これ以上真美の心を傷付けない。
最後まで、この子のことを守り通す。
最後まで、絶対に。
713 = 653 :
今日はこのくらいにしておきます
続きは多分明後日くらいに投下します
714 = 685 :
乙
伊織の決意は固いな
というか本来の親友と会ってるのに会話なしで別れたな・・・・
715 = 655 :
この状態の伊織と李衣菜に出会って欲しいなぁ……(愉悦)
乙
716 = 658 :
いきなり不意打ちでスタングレネード受けた状態から凛よく頑張ったな 状況考えると小鳥から逃走する時の杏と未央と交戦した時の真並に凄いことしてる 拳銃失ったのは痛いけど凛化けるかもな
717 = 685 :
危うくニュージェネ2人目の犠牲者になる所だった・・・
智絵里やられてたら杏ももっと闇化しちゃうだろうし・・・
718 :
乙
美希が昼まで集落にいた方がいいって言ってるけど、7時以降は同エリアに1時間以上滞在したら首輪ドカンじゃないのかね
なんか誰も(1時間ルール)気にしてないし、このルール必要あったのか
719 = 672 :
乙
そういえば本家バトロワは首輪外してたよな?
その線はあるだろうか
720 = 672 :
>>718
1時間ルールがないと初期位置か集落、灯台で動かない人が多発するやろ
721 = 654 :
>>719
そういうことしようとしたらドカンって書いてあったような…
722 = 671 :
バトロワの首輪は内部構造知ってれば外せる けど原作川田みたいな内部構造はじめから知ってるキャラいないからハッキングして知るしかない
が、おそらくメンバーの中で唯一できる可能性があった杏はゲームに乗ってしまった よって外すことはほぼ不可能かと
乙
723 :
こうやって見るとやっぱ杏ってジョーカーだよな
乙
724 :
メインヒロイン2人の内1人が散り、もう1人が若干空気・・・
ヤバイかも
725 :
乙です
未央が卑屈な笑顔を見せたのは反逆への布石だと信じたい……無理かなぁ…
726 :
乙
いおまみの主人公とヒロイン感
727 :
伊織→美波 武器奪取
小鳥→卯月 武器奪取
美希→みく 撲殺未遂
小鳥→卯月 射殺
小鳥→杏 武器奪取
杏→亜美 射殺
未央→真 爆殺未遂
伊織→智絵里 武器奪取
反撃や防衛を除いたその時点で敵意のない相手に対する攻撃一覧だがやっぱ765すげーな
今までその気の奴がそうじゃない奴に奇襲かけるばっかりだったけど次で動きそうだね このままいくと杏と美希真が交戦することになるし
728 :
『首輪を外そうとする、解体しようとする、機能を停止または変更させようとする等の動き、あるいは島の中心部から3km以上離れたことを感知すると、首輪は爆発する』
とあるから首輪爆弾をどうこうできないな
729 :
346側は雑魚ばっかりで張り合いがないな
杏も仲間に妨害されて死にそうだしもっと根性見せてくれないと盛り上がりに欠ける
730 :
もう765の誰が死のうと心に負担はない
731 :
しょうもない対立煽り系のレスは他所でやってくれ
732 :
そういえば首輪にプレイヤーの会話盗聴用のマイクってついてんのかね?
漫画板では内蔵されてたハズだけど
733 = 728 :
あー…付けてそうだね
それを聴きながらニヤニヤして楽しんでそうだ
734 :
アイマス殆ど見てないから聞くけど、真の体術は「あれくらいやってもおかしくない」の?
運動神経凄いってのは知ってるけど
735 :
道路を挟むビルの二階辺りに渡した梯子にぶら下がって、カンフーバトルしちゃうくらいには高スペック。
コメディ回だけどね。
736 = 728 :
まあ真は貴音とは違う意味でチートキャラだから
737 :
それに引き換え346プロのメンバーはイベントのたびに誰かが倒れる虚弱者集団だもんな
738 = 728 :
346は200くらいアイドルいるから、そうでもしないとさばけないんだろ(運営が)
739 :
765はコメディ補正と切り離せない子がいるから難しいよ
740 :
てか既に双方に死者出てるけど、勝者になった方はここら辺どう収拾つけるんだろ
741 :
それは事故とかって記憶を改竄してこの三日間の記憶を消すんだって
742 :
双方全滅も有りなんかね(バジリスク感)
743 :
これプロデューサーも参加だったら765に勝ち目ねぇよな。
744 :
>>1です
すみません今日は更新できそうにないです
続きは週末になりそうです
745 :
楽しみにしてたけど…まあ、ちかたないね
746 :
進んでると思ったら全部雑談だったでござる
747 :
ゆっくりでええんやで
748 :
8:05 星井美希
美希「それじゃ真くん、向こう側よろしくね」
真「うん。美希も、その子のこと任せたよ」
そう言って真は、未央の鞄から手榴弾を三つ全て取り出した。
そして美希が向かっているのとは別の窓に見張りにつく。
二人は話し合った結果、美希が未央の挙動と南側の窓を見張り、
真が手榴弾を持って北側と西側の窓を見張ることになった。
今美希たちが居る部屋は、二人が最も待ち伏せに適していると判断し選んだものだった。
窓が北・南・西の三方向に付いており周囲を広く見張ることができる。
唯一窓のない東側には部屋への入口の扉があり、内鍵をしっかりとかけている。
749 = 748 :
窓のある方向から誰かが来れば、まず確実に自分達の方が先に相手に気付く。
仮に窓のない東側から来たとしても、
玄関を開ける音や部屋の扉を開けようとする音で気付くことができる。
この状況であれば、先手を打って行動できることは間違いない。
部屋の中央には大きめのテーブルがあり、
何かあった時には身を隠したり倒して遮蔽物として使ったりもできるだろう。
待ち伏せの準備としては恐らく万全だった。
ただやはり懸念材料は、「一時間ルール」の存在だ。
これだけの準備を整えていても、一時間に一度はこの場を離れなければならない。
確率としては低いがその間に敵が訪れることもあり得ないことではない。
人質が居る以上、不利になるということはないが、優位性は薄れてしまう。
もしエリアの移動中に敵が来たらどうするか、
その時の対策も一応考えては居るが、やはり多少不安であることには違いない。
が、そんな風に二人が胸に抱えていた懸念は杞憂に終わった。
真「っ! 美希……!」
750 = 748 :
真はギリギリ聞こえる程度の声で美希を呼んだ。
その声に美希が振り向くと、真は北側の窓から外を覗いたまま、
手だけを美希の方へ向けて手招きしている。
美希は姿勢を低くし、未央を連れて真の横に行く。
そして真と同じように僅かに顔を覗かせて外を見た。
すると、北北西の方角からこちらに向かって歩いてくる人影が目に映った。
人数は三人。
まだ十分な距離があり、こちらの存在には気付いていないようだ。
方角から考えて、北西の集落からやって来たのかも知れない。
武器は、分からない。
先頭を歩くアイドルは鞄を持っている。
後ろの二人は何も持っていない。
どこかへ落としたか、あるいは置いてきたか。
北西の集落へ置いてきたのかも知れない。
とすると、ここへ来たのは偵察か、調査か……。
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