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    元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」

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    551 = 548 :

    李衣菜「なんで……そんなに冷静で居られるの?
        友達が殺されたのに、なんで……」

    この李衣菜の言葉は、杏を責めているものではない。
    それはここに居る全員が分かった。
    皆もまったく同じ感想を抱いていたからだ。

    李衣菜は床を見つめ、数時間前の自分を思い出す。
    倒れたみくを発見した時、また殴られた事実が発覚した時。
    自分はまるで冷静では居られなかった。
    今でもあの時のみくが苦しむ姿を思い浮かべるだけで胸を掻き毟られる思いがする。

    しかし杏の表情からは、混乱も悲しみも怒りも、何も読み取れない。
    読み取れないからと言って、では杏は卯月の死に対し何も感じていないかと言うと、
    当然そんなことはないと李衣菜も分かっている。

    552 = 548 :

    杏だって友達の死や殺した犯人に対し何か思っていることがあるはずだ。
    殺された時には少なからず動揺したはずだ。

    だが、にも関わらず、なぜ冷静で居られるのか。
    李衣菜も他の皆も、ただただそれが疑問だった。

    杏は李衣菜の言葉を聞き少しの間を置いて、

    「冷静じゃなきゃ死ぬからだよ。
     死んだことを引きずっても
     卯月ちゃんは生き返らないし、無駄に犠牲者を増やすだけ。
     そんなことに使うエネルギーがあるなら自分が生き残るために使わないと。
     杏はそう思って、冷静で居ようとしてるだけだよ」

    自分に集まる視線に向かってやはり落ち着いた声と表情で、そう答えた。

    553 = 548 :

    「あ、そうだ……。そう言えば他にもそっちに教えなきゃいけないことがあるんだった」

    これ以上この話題を続ける必要がないとばかりに、
    あるいは今自分が言ったことを体現するように、杏は話題を切り替える。
    が、地図を開いて話を始めようとしたその直前
    杏は一瞬動きを止め、そして顔を上げて言った。

    「……かな子ちゃんときらりは向こうに行って休んでていいよ。
     あとは杏が話せば情報の交換は終わりだから」

    かな子「え……?」

    何故ここで自分達二人を先に休ませようとするのか。
    せっかくなのだから最後までみんなで一緒に居ればいいんじゃないのか。

    かな子は初め、そう思った。
    しかし杏の目を見て、またこれから杏が話すであろう内容を推測して、
    かな子は彼女の意図を察した。

    554 = 548 :

    かな子「うん……わかった。きらりちゃん、行こう?」

    きらり「……」

    かな子に促され、きらりは黙って立ち上がる。
    そしてこの集落に来た時と同じように、手を引かれるまま部屋を出て行った。

    李衣菜たちはそんな二人の、特にきらりの背中を心配そうに目で追う。
    二人の姿が見えなくなったと同時に、杏は李衣菜たちに声をかけた。

    「きらりのことも含めて、今から話すよ」

    その言葉で李衣菜たちは杏に視線を戻す。
    それを確認し、杏は地図を指さしながら話し始めた。

    555 = 548 :

    「まず大事なことから。二時間前くらいかな……。
     地図で言うとこの辺りで、双海亜美と双海真美に会ったんだ。
     それで、二人とも武器は大したものじゃなかったから、殺すなら今だと思って撃ったんだよ」

    まるで何でもないようなことのように話されたせいで、三人の理解は一瞬遅れた。
    そして一瞬後、杏が本当に人を殺そうとしていた事実を理解した。
    みくは息を飲み、蘭子の手は震え始めてしまう。
    だが李衣菜は膝の上で拳を握り、続きを促した。

    李衣菜「……それで、どうだったの」

    「逃げられた。多分弾は当たったと思うけど、殺せたかどうかは分からない。
     で……その辺りのことで、きらりがああなっちゃってるんだ」

    みく「ひ……人が目の前で撃たれて、ショックだったから?」

    「あー、えっと、それもあると思うんだけど……」

    556 = 548 :

    それから杏は、詳細まで話した。
    きらりが亜実と真美の警戒を解いたこと、
    自分がそれを利用して二人を騙し討ちしたこと……。

    つまり結果だけ見れば、
    きらりが騙し討ちに手を貸したことになるのだということを。

    みく「……それじゃあ、きらりちゃんはそのことを気にして……?」

    李衣菜「それ、ちゃんと言ってあげたの? きらりちゃんのせいじゃないって……」

    蘭子「は、早く、言ってあげないと……!」

    「もちろん、言ったよ。きらりが何もしなくたって
     どっちにしろ杏は撃ってたんだから関係ないって。
     それで一応納得はしたと思うんだけど、でも多分……原因はそれだけじゃないんだ」

    そう言って杏はきらりが出て行った方へと視線を外す。
    そして一呼吸置き、言った。

    557 = 548 :

    「自分で言うのも変だけど、きらりって杏のこと好きでしょ?
     だから多分、杏が人を殺すって決めちゃったのが嫌なんだよ」

    それを聞いて三人は、確かにそうかも知れない、と思った。
    きらりの性格や杏との仲の良さを考えれば、
    杏が殺人を犯すということに酷く心を痛めているのは想像に難くない。

    だがそれと同時に、本当にそれだけだろうかという気持ちも三人は微かに抱いた。
    自分が殺人に手を貸すような真似をしてしまったこと、
    親友が殺人に手を染めてしまうこと……。
    それらは確かに優しいきらりの精神を摩耗させる要素としては十分だ。

    しかしそれを踏まえても、今のきらりの落ち込み方は異様に思えた。
    杏は気付いていないのか、気付いていて敢えて何も言わないのか、それは分からない。
    分からないが、他に何か原因があるのではないか。

    だがその考えはまったく根拠の薄いものであり、
    三人が自分の気のせいだと思い直すのに時間はかからなかった。

    558 = 548 :




    かな子「えっと、じゃあ……私、多分もう少し起きてるから何かあったら言ってね。
        もし寝てても、起こしてくれて大丈夫だから……」

    きらり「……」

    かな子「……おやすみ、きらりちゃん」

    黙って横になるきらりの背中に、かな子はそう声をかけて自分も休むことにした。
    まだ寝る時間には早すぎるが、起きていてもすることがない。
    初め、かな子は会話をして少しでも気を紛らわせようとはしていた。
    だがきらりの状態を見てそれは断念した。

    杏が亜美と真美を撃ってから、
    きらりは杏ともかな子とも、会話らしい会話をまったくしていなかった。

    559 = 548 :

    かな子に背を向け床に寝るきらり。
    しかしその目はそれまでと同じように薄く開かれ、どこともない空間をぼんやりと見続けていた。

    きらりの瞳には、あの時の杏の顔が張り付いて離れなかった。
    耳からはあの時の言葉が離れなかった。

     『杏はそんなの絶対嫌だ。友達が殺されるなんて絶対に嫌だ』
     『だから二人とも、力を貸して。生き残るために精一杯のことをするんだ……!』
     『杏……これ以上みんなが傷つくの嫌なんだよ』

    そう言って自分を見上げる杏の表情は、
    あんな状況でも自分に勇気をくれて、頼もしさも感じた。
    この子と一緒ならきっとみんなで帰れると、そう思わせてくれた。
    しかし……

     『撃たないわけないじゃん。やらなきゃみんな死ぬんだから』
     『それとももしかして、人を殺すくらいなら自分が死んだ方がマシとかって考えちゃう感じ?』

    560 = 548 :

    杏が人を殺す決意をしてしまったことは、きらりの心を強く締め付けた。
    だがそれでも、その決意が優しさから来るものだと信じることができていれば、
    きらりは恐らくここまで精神を摩耗させることはなかった。
    心を痛めながらも、杏の覚悟を受け入れることすらあるいはできていたかも知れない。

    きらりは信じたかった。
    杏は本当は心優しい少女だが、
    346プロの仲間を守るために仕方なくあんなことをするのだと。
    友達のために、辛さを押し殺して決意せざるを得なかったのだと。

    しかし、頭から離れない。
    きらりがよく知る杏の姿とはかけ離れたあの表情が、あの言葉が。
    中でも、あの時杏が一番最後に放った言葉。
    そのたった一言が、きらりの心に、頭に、黒い塊としてこびり付いていた。

     『杏は嫌だよ。絶対に死にたくない』
     『自分が生き残るためなら』

     『他の誰が死んだって構わない』

    561 = 536 :

    >>556で亜美が亜実に…

    562 = 548 :

    ……杏ちゃん、そうなの?
    本当に自分が生き残るためなら、誰が死んでもいいの?
    誰が死んでも、って……本当に、そうなの?

    違うよね、そんなことないよね。
    そんなつもりで言ったんじゃないよね。
    ちょっと言葉を間違えちゃっただけだよね。
    きらりが細かいことを気にし過ぎなだけだよね。

    もう、寝よう。
    これ以上酷い想像をする前に寝よう。
    明日の朝になったら、きっと今日より少しは元気になってるはず。

    ……目が覚めたら、いつものベッドだったら良いのにな。

    きらりは悪い想像をかき消すように、泡沫のような希望を胸に目を閉じた。
    閉じた瞼から、雫が一筋流れる。
    だが目を閉じても、瞼の裏に張り付いた杏の顔はなかなか消えてくれなかった。

    563 :

    他の人の名前が入ってるわけでもなくただの誤字なので指摘するようなことじゃない

    564 = 548 :

    19:30 星井美希

    美希「あ、そう言えばどっちが先に寝るかまだ決めてなかったよね」

    と、美希は会話が一区切りしたところで話題を変えた。
    どちらが先に寝るか。
    つまり、見張りの当番をどうするかという問題だ。

    美希「真くんどっちがいい? ミキはどっちでもいいの」

    喋りながら美希は床に座った未央を一瞥する。
    目が合い、未央は視線を逸らした。
    真はそんな未央の方に数秒目をやった後、美希に向き直り答える。

    「……ボクもどっちでもいいけど、それじゃあ先に寝させてもらってもいいかな」

    565 = 548 :

    美希「うん。ミキ、ちゃんと起きてるから心配しないでぐっすり寝ててね」

    「心配なんかしてないよ。えっと、交代は夜中の一時くらい?」

    美希「もう少し遅くてもいいよ。ここってエリアのギリギリ端っこだから、
       動くのは八時の五分前とかでも間に合うの。
       だからミキ的にはできるだけたくさん寝ておいた方がいいって思うな」

    「いや、五分前は流石にやめた方が……」

    と、ここで真は何か思い出したように口をつぐむ。
    そして不安げに眉をひそめた。

    「ねぇ美希。ボクたちがこのエリアに来たのっていつだったか覚えてる?
     あと何分ここに居られるんだっけ?」

    566 = 548 :

    19時にカウントが止まるとして、再開するのは翌朝7時。
    自分達に残された時間はどのくらいか、何時までこのエリアに居られるのか。
    それを不安に思っての質問だったが、しかし美希は不思議そうに小首をかしげた。
    質問がわかりにくかったか、と真は改めて尋ね直そうとしたが、
    それとほぼ同時に美希は合点がいったように表情を変え、

    美希「あっ、もしかして真くん、あの紙まだ読んでないの?」

    「えっ?」

    そう言って美希は鞄を開けて数枚の紙を取り出しペラペラとめくる。
    そしてその中の一枚の一部分を指さし、真に見せた。

    美希「ほら、ここに書いてあるの」

    真は紙を受け取り美希の示した箇所を見る。
    そこに書いてあった内容を読み、真は美希の言った意味が分かった。

     『エリア滞在時間は19:00の時点でリセットされる』

    567 = 548 :

    つまり最後に移動した時刻に関わらず、
    美希の言う通り八時ギリギリまでここに居られるということだ。

    続けて紙を見ていくとそこには美希が示した事項を始め、
    最初の説明では述べられなかったことが内容によって分類され記載されていた。
    真はおおよそどういったことが書かれてあるのかを把握するため、
    手早く紙をめくり全体にざっと目を通す。

     『死亡者の発表は三日目の7:00に一度だけ』
     『参加者の生死は首輪を通して確認される』
     『同士討ちでの死亡もカウントされる』
     『三日目の23:50から、生存者の少ないチームの首輪は警告音を発するようになる』
     『致命傷を負い死が確定していても三日目の24:00の時点で生きていれば生存者扱いとする』
     『勝敗が決すると共に勝者は首輪から射出・噴射される薬により眠らされる』
     『首輪を外そうとする、解体しようとする、機能を停止または変更させようとする等の動き、
     あるいは島の中心部から3km以上離れたことを感知すると、首輪は爆発する』

    真の目に止まったもの以外にも、
    知らなくても殺し合いには影響がない程度のことや
    わざわざ説明するまでもないようなこと等、補足的な事項が色々と記載されているようだった。

    568 = 548 :

    しかし補足的とは言え、知らないよりは当然知っておいた方がいい。
    量はそれなりにあるが寝る前に読んでおくべきかと真は考えたが、

    美希「ミキ的には、それ読むよりはもう寝ちゃった方がいいって思うな。
      ミキと交代してからでも読む時間はあるし、
      それにミキもう全部覚えちゃったから、分からないことがあったら聞いてくれればいいの」

    そう言って美希は真に早く寝るよう促す。
    この状況下でしっかり書類に目を通ししかも内容を覚えたという美希に
    真はやはり驚きを覚えたが、敢えてそれを口にすることはなかった。
    それより美希の言う通り、確かにそろそろ眠りについた方がいいかも知れない。

    569 = 548 :

    いつも寝る時間よりは遥かに早いが、
    途中で見張りに起きることを考えればそこまで多く睡眠時間を取れるわけではない。
    そう思い、真は美希に紙を返す。

    「うん……。それじゃあ、ボクはもう寝るよ。
     一応言っておくけど、ちゃんと起こしてね?
     無理して美希の分の睡眠時間削ったりしちゃ駄目だよ」

    美希「大丈夫、わかってるの。真くんこそ、ちゃんと眠らなきゃ駄目だよ?」

    「わかってるよ。それじゃおやすみ、美希」

    美希「おやすみなさいなの。……人質さんももう寝ていいよ。その方がミキ的には助かるし」

    真が横になったのを確認し、美希は表情を改めて未央に目を向けて言った。
    未央は美希の言葉に従い倒れこむようにして横になる。
    懐中電灯が室内を照らす薄明かりの中、
    目を瞑って呼吸する未央の顔を美希はじっと見続けた。

    570 = 548 :

    今日はこのくらいにしておきます
    続きは多分週末とかになります

    571 :



    ダーク杏も中々ロック・・・かな?

    572 = 548 :

    あとこれで一日目終了です
    以降は翌朝まで移動は無いです
    一応今アイドル達の位置が大体どんな感じになってるか貼っておきます

    /nox/remoteimages/bf/60/041d3babb501b92232009ca98e13.png

    573 = 532 :


    あずささんと雪歩…
    孤独に怯えた夜を過ごす事になるのか…

    574 :



    きらりが闇に飲まれかけている

    575 :

    蘭子さえ引くレベルの闇っぷり

    576 :

    平時では目覚めることのなかった杏の闇の部分が非常時で開花する…こういうの好き

    577 :


    あずささんと雪歩大丈夫か…

    578 :

    理凛誰だよと思ってしまった

    579 :

    これって武器を確実に当てるなら雪歩が役にたつよな

    穴掘って相手をそこまで誘導し上からドーン!と

    これなら杏のサブマシも役にたたないっしょ

    580 :

    サブマシンガン相手に落とし穴じゃ足止めが精々だろ、というかスコップがない

    581 = 579 :

    >>580
    雪歩のスコップがないとなぜ言い切れる。あれは雪歩の念能力だぞ(白目)

    582 :

    その辺が有りだったら、公式アニメで人外やってた765勢が有利すぎるわ

    583 = 579 :

    人外と言えば貴音って謎多いしいくらでも設定弄くれるから貴音無双ができそうだな

    584 :

    765アニメはギャグ調の描写や元2次ネタが多かったから割りと皆人外的なことやってたな

    585 = 579 :

    その中で唯一THE普通だったダブルリボンさんは一体

    586 :

    特徴が無いのが特徴

    587 :

    ところで灯台組が協力を求められる相手がいないようなんだが
    りーな組に行きそうだが杏が敵対するのが目に見えてる

    588 :

    原作は生き残りが1人になるまでというルールだから殺し合いになったけど、こっちのルールだとお互いに生き残り人数多い方が望ましいのにそんな殺し合いになるもんかなぁ?

    589 :

    そりゃ仮に生き残っても人数が少なければ連帯責任で全員ドッカーン!って感じなるし、少しでも数を減らして生き残りチームを有利にしたくなるっしょ
    それに他の方法があるかもわからないし、それなら確実に生き残る方に賭けるよ
    もし他の方法を見つけても成功する保証もないし、それなら敵を倒し生き残る方がまだ確率は高いかと

    590 :

    首輪ついてる時点でもう生殺与奪は主催者の気分次第だしなぁ
    主催者の気分を損ねない内は協力がベストだったと思う、今更だけど

    591 = 589 :

    それがベストだったとしても協力は必ずできるとは限らないし
    アイドルだって一人一人考え方は違うし杏みたいな考え方するやつも少なからず出るんだし
    今回は小鳥さんが誤って卯月を殺っちゃったのが始まりだけど
    もし小鳥さんが殺らずに協力関係築いてても杏みたいな考え方するやつがいる限り早かれ遅かれこうなってたと思う

    592 :

    やっと追いついた。続き気になって眠れねぇよ

    594 :

    二日目
    6:30 音無小鳥

    小鳥「みんな、もう準備は出来てる?」

    貴音「はい。すぐにでも出発できます」

    やよい「す、すみませんお待たせしちゃって……」

    「ううん大丈夫、時間通りだぞ」

    小鳥「……それじゃあ、行きましょうか」

    その言葉を合図に、四人は小鳥を先頭にして歩き始めた。
    西の方に見える灯台へ向かって。

    595 = 594 :

    本当ならやはり昨日のうちに向かいたかった。
    しかし数時間歩いたことや精神的な疲労により、
    日が沈んだ時点で思いのほか彼女たちの体力は削られていた。

    そして何より心の準備が必要だった。
    ゲーム開始直後ならまだしも、数時間も経てば灯台には誰か居る可能性が高い。
    それが765プロの者ならば良いが、そうでなかった時。
    疲れきった心と体で的確な判断と行動を選択できるかどうか、分からなかった。
    そういった理由から四人は灯台を調べるのは日を改めることにし、
    今こうして向かっている。

    しばらく歩き、壁の汚れが見える程度に灯台に近付いた。
    中に居るのであれば、それが765プロの者でありますように。
    四人はそう願いながら歩みを進める。

    しかしその歩みは数秒後、同時に止まった。
    灯台の屋上の扉がゆっくりと開いたのが見えたのだ。

    596 = 594 :

    やはり誰か居たようだ。
    四人は無意識的に息を殺し、その正体を確かめるためじっと目を凝らす。
    そして次の瞬間、響とやよいはぱっと顔を明るくして声を上げた。

    「春香……! あれ、春香じゃないか!?」

    やよい「そ、そうです! 春香さんですー!!」

    二人に次いで小鳥、そして貴音も確証を得る。
    朝日を浴びるように大きく伸びをするその少女は、確かに春香だった。

    765プロの仲間を見付けた嬉しさに、響は両手を大きく上げる。
    そして息を吸い込み……

    貴音「響」

    「むぐっ……!」

    597 = 594 :

    力いっぱい春香の名を叫ぼうとしたところで、貴音が響の口を押さえた。
    響は昨日のことを思い出し、首を縦に数度振る。
    それを確認して貴音は手を離した。

    「……ご、ごめん。自分、ついまた……」

    貴音「いえ、気にしないでください。気持ちが急くのも分かります。
      それに私も、仲間との合流は早いに越したことはないと思います」

    やよい「わ、私! 早く春香さんに会いたいです!」

    小鳥「そうね……。早く、合流しましょう」

    そう言って小鳥は駆け出し、三人もすぐ後に付いて行く。
    一歩足を出すごとに春香の姿がはっきりと見えてくる。
    そしてそれから数十秒後、春香の視界もようやく、その端に動くものを捉えた。

    春香「……あっ!? こ、小鳥さん! 響ちゃん、貴音さん、やよい!!」

    598 = 594 :

    春香はこちらへ駆けて来るよく知る顔を見て、
    少し前の響ややよいと同じように顔を明るくした。
    そして慌てて振り向き、屋上への出入り口から中へ向かって叫ぶ。

    春香「ご、ごめん千早ちゃん! 一階の入口開けてあげて!」

    千早「えぇ、わかった……!」

    春香に続き屋上へ出ようと階段を上っていた千早は、その言葉を聞き踵を返した。
    直前に春香が呼んだ名はしっかり千早の耳にも届いており、
    事情の説明は必要なかった。

    美波「! 千早ちゃん!」

    アーニャ「どうか、しましたか? 何か急いでいるように見えます」

    あと少しで階段を降りきるというところで、千早は美波達と鉢合わせる。
    千早は慌てることなく、何があったか二人に手短に話した。

    599 = 594 :

    千早「765プロのメンバーが四人、今この灯台に向かってきています」

    美波「えっ……ほ、本当!?」

    千早「まず私が応対して今のこちらの状況を……
       つまり、346プロと協力していることを話します。
       新田さんとアナスタシアさんは、奥へ戻って律子と城ヶ崎さんにこのことを伝えてください」

    アーニャ「Да……えっと、私たちは、出てこない方がいいですか?」

    千早「……そうね。大丈夫だとは思うけど、念のために奥で待っていて」

    千早の言葉に美波とアナスタシアは頷き、奥へ駆けていく。
    その背中を見送って、千早は出入り口へと向かい、そして扉を開けた。

    600 = 594 :

    「! ち、千早! 千早も一緒だったのか!」

    やよい「千早さーん! よ、良かったですー!」

    千早が外へ出たとき、小鳥たち四人はもうほぼ目の前まで来ていた。
    響とやよいが真っ先に駆け寄り、再会を喜ぶ。

    千早「我那覇さん、高槻さん……。四条さんと音無さんも……会えて、嬉しいです」

    そう言って千早は四人に笑いかける。
    小鳥がゲームの説明をしていたことに関しては、
    千早は既に「やらされていた」ということで納得している。
    そして今、765プロのメンバーと行動を共にしている姿を見て改めて確信した。

    そんな千早に小鳥が何か話しかけようと口を開く。
    しかしそれとほぼ同時に、千早の後ろからもう一つ影が飛び出してきた。

    春香「本当に良かった……! 千早ちゃん、早く中に入ってもらおうよ!」


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