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    元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」

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    151 = 131 :

    智絵里・雪歩・蘭子はその場で震えてそう

    152 :

    ゆきぽは塹壕戦のプロだからな

    153 = 132 :

    15:00 双海真美

    真美「っ! あ、亜美……亜美ぃーーーーーーーーッ!!」

    目が覚めた真美の最初の行動は、
    状況を整理するでもなく、鞄を探るでもなく、双子の妹亜美を呼ぶことだった。
    そしてそれは、向こうも同じだった。

    真美「……!」

    確かに聞こえた。
    毎日聞いているあの声が、自分の名前を呼ぶ声が、自分の声に重なって確かに聞こえた。
    そう確信した真美は二度目を叫ぶことなく走り出した。

    声がした方向に向かって一直線に走る。
    するとほんの少し走ったところで、正面に鏡が置いてあると思えるほど
    まったく同じようにこちらへ走ってくる影が見えた。

    154 = 132 :

    亜美「真美!」

    真美「亜美!」

    双子の姉妹は同時に互いの名を呼び、
    そしてそのまま走り寄り、飛びつくようにして抱き合った。

    真美「亜美ぃ! どうしよ、どうしよ……!」

    亜美「そ、そんなの分かんないよ! 真美も考えてよー!」

    涙目になりながら二人でとにかく混乱を共有する亜美と真美。
    だがいつまでも混乱しているわけには行かない。
    ここで先に話を切り出したのは亜美だった。

    亜美「ま、まずは『情報のキョーユー』からだよ!
       困った時はそうしろってりっちゃんが言ってた!」

    真美「じ、情報のキョーユー?」

    亜美「亜美が知ってることと真美が知ってることを二人で教えあうんだよ!」

    155 = 132 :

    真美「で、でもそんなの同じじゃん! 亜美も真美も、完璧に同じ状況っしょ!?」

    亜美「うっ……そ、そうかもしんないけど、でも……!」

    亜美がせっかく律子から教わった手もいきなり塞がったように思えた。
    しかし今度は真美が気付く。
    自分たちに同じではないものがあるということに。

    真美「あっ……ま、待って亜美! そう言えば鞄!
       鞄にはみんな違うものが入ってるって言ってた!」

    亜美「! そ、そうだ! じゃあ鞄を……あれっ!?」

    真美「そ、そうだ! 鞄、さっきのとこに置いてきちゃったんだ!」

    亜美「早く取りに戻らなきゃ! 真美、あとでね!」

    真美「亜美もあとでね!」

    二人は互いにそう言い残し、背を向けて同時に走り出した。

    156 = 132 :

    そして数十秒後。
    二人は無事に再会できた。
    状況を考えると荷物を取りに行く間にも何が起きるか分からなかったが、
    互いの距離が近かったことが幸いした。

    二人は先ほどと同じ場所で今度は座り込む。
    そして鞄を開け、その中身を確認した。

    とは言っても確認が必要だったのは真美の方だけだった。
    亜美はその鞄から既に武器が半分近くはみ出していた。

    亜美「やっぱりそうだ……。これ、ゴルフのやつだよね? 真美のは?」

    真美「真美はこれ……。っていうかこんなの説明書いらないじゃん!」

    157 = 132 :

    『ゴルフクラブ』と『鎌』

    それが亜美と真美に支給された武器だった。
    そしてこれらにも例に漏れず説明書が添付されている。

    亜美「そーだよ! っていうかなんでこんなの入ってんの!?」

    真美「意味わかんない! 真美たちのこと馬鹿にしてるっぽいよ!」

    何の変哲もないただのゴルフクラブと草刈用の鎌。
    それにわざわざ説明書が付けられていることに対し二人は憤慨する。
    そして二人とも、なぜここでゴルフクラブと鎌が支給されているのか理解できていなかった。
    つまり、人を殺すためにこれらの道具を使うという発想がそもそも無いのだ。

    しかしそんな無知で無邪気な子供で居ることを、
    この懇切丁寧な説明書は許さなかった。

    158 = 132 :

    真美「……ま、待って、え? な、何、書いてんのコレ……?」

    亜美「な、何これ……。やだよ、亜美、そんなのやだよ……!」

    ゴルフクラブで、あるいは鎌で、どのようにすれば人を殺すことができるか。
    説明書には殺人の方法が亜美と真美にも分かりやすい文章で丁寧に書かれていた。

    読み進めるうちに二人は否応なしに現状を再認識させられる。
    自分たちは今、殺し合いゲームに参加しているのだと。

    真美「や……やだ!! 真美、こんなの絶対いや!!」

    亜美「あ、亜美だってやだよ! 人殺しなんてしたくないもん!!」

    真美「亜美、作戦会議だよ! これからどうすればいいのか考えなきゃ!」

    亜美「うん! 人なんか殺さなくてもいいように考えよ!!」

    絶対に人なんか殺したくない。
    その確固たる意思を以て、これからどう行動すべきか。
    亜美と真美はまず二人でそれを考えることから始めた。

    159 = 132 :

    15:02

    あずさ「っ……」

    鞄の中の説明書を読むうちに、あずさは手が震え始めるのを感じた。

    鞄を開けた時にプラスチックのような容器に入った液体が初めに見え、
    何の気なしに蓋を開けてみた。
    するとその瞬間に強い臭いが鼻をつき、慌てて蓋を閉めた。
    そして次に手に取った説明書には、大きな文字でその液体の名が書いてあった。

    『フッ化水素酸(フッ酸)』

    あずさにとって聞いたことがあるような無いような名前だったが、
    まず間違いなく危険な薬品か何かであることは分かった。

    160 = 132 :

    そして説明書を読み進めると改めて確信に変わった。
    間違いなく一般人が手にしていい薬品ではない。
    あまりにも危険すぎる。

    あずさは一瞬、ここに置いていってしまおうかと考えた。
    しかし万が一、誰かがこの薬品を見つけたら。
    誤って害を被ってしまったら。
    そう考えると、自分がこの手で持ち運んだ方が
    他のみんなにとっては危険が少ないのかも知れない。

    しばらく悩んだ結果、あずさはその薬品を鞄の中に閉まった。
    そして立ち上がり地図を持って歩き始めた。
    ここからなら海が近いはず。
    一度海に出て、海岸沿いを歩いてみよう。

    あずさはそう決め、歩き出した。

    161 = 132 :

    15:45 神崎蘭子

    蘭子「……!?」

    どこか遠くから聞こえた大きな音。
    それを聞き、蘭子は初めて顔を上げた。
    そしてこれが彼女にとってある意味最大の幸運でもあった。
    蘭子は目が覚めてからの数十分間ずっと蹲っており、
    この音が無ければずっとその体勢のまま動かなかったかも知れない。
    もしそうなれば一時間以上同じエリアに留まっていたこととなり、蘭子は死んでいた。

    しかし今、蘭子はそのルールを思い出した。
    時計を見て、慌てて立ち上がる。
    そして鞄を持ち、取り敢えず今いるところから離れることにした。

    162 = 132 :

    少し走ったところで地図を広げる。
    ここで初めてしっかり地図を見た蘭子だが、一つのエリアは案外狭いらしい。
    それならばもう安心だろう。
    そう思い、蘭子は一人ホッと胸をなで下ろした。

    だが安心している場合ではないことは本人も十分に分かっている。
    これからの行動を考えなければならない。
    蘭子は地図を見、そして目に付いたのが集落だった。

    集落は二箇所にあるようだが、
    ここからならまっすぐ西に進んで行ける方が分かりやすいかも知れない。

    蘭子は混乱しながらも考え、そう判断した。
    そうして蘭子は二つある集落のうち、北西側にある方を目指して歩き始めた。

    163 = 132 :

    16:50 萩原雪歩

    雪歩「はあっ、はあっ、はあっ……!」

    ほんの少し前まで進んでいたのとは丸っきり向きを変え、雪歩は半泣きで走っていた。
    その目線は進行方向と手元とを忙しく行き来している。
    そうしてしばらく走り続けた後、ようやく雪歩は足を止めた。
    息を整えながら、やはり手元に目をやる。

    雪歩の手元には、10分ほど前まで美波が持っていたのと同じ物が握られていた。
    探知機は765側と346側にそれぞれ一つずつ支給されており、
    765側でそれを引き当てたのが雪歩だった。
    そしてこの探知機こそが、雪歩がたった今全力疾走した理由だった。

    164 = 132 :

    15:50 萩原雪歩

    雪歩「はあっ、はあっ、はあっ……!」

    ほんの少し前まで進んでいたのとは90度向きを変え、雪歩は半泣きで走っていた。
    その目線は進行方向と手元とを忙しく行き来している。
    そうしてしばらく走り続けた後、ようやく雪歩は足を止めた。
    息を整えながら、やはり手元に目をやる。

    雪歩の手元には、10分ほど前まで美波が持っていたのと同じ物が握られていた。
    探知機は765側と346側にそれぞれ一つずつ支給されており、
    765側でそれを引き当てたのが雪歩だった。
    そしてこの探知機こそが、雪歩がたった今全力疾走した理由だった。

    165 = 132 :

    海岸で目覚めた雪歩は、やはりしばらくは恐怖で動けずにいた。
    しかしこのままでは駄目だと思い立ち、その場を動くことを決意した。

    そしてまずは集落に向かおうと島の中心部を目指して歩き始めたのだが、
    ふと手元の探知機に目をやった途端、雪歩の心臓は跳ね上がった。
    自分が今まさに進んでいるその先に、346プロのアイドルを示す印が表示されていたのだ。
    しかも、自分の居る方へ向かって進んでいるようだ。

    探知機を見るのが遅かったため、かなりの接近を許してしまっている。
    そのことに気付いたと同時に、雪歩は向きを変えて走り出した。
    とにかく恐怖に頭を支配され、必死に走り続けた。

    そして今に至る。
    これからどうするべきか、雪歩は必死に考えた。
    結果、やはり集落を目指すことに決めた。
    ただし先ほど探知機に映った者との遭遇を避けるため、思い切り遠回りをして。

    しかし今にも、もしかしたらその人がこちらに歩いてきているかも知れない。
    そう思い、雪歩は探知機を気にしつつ再び早足で歩き始めた。

    166 = 132 :

    今日はこのくらいにしておきます
    >>165の名前欄は消し忘れただけなので気にしないでください

    名前が出た中でしばらく大きな変化(出番)がなさそうな三人を書きました
    次の更新はさっきも書いたけど年明けになります
    日にちは未定です

    167 = 149 :

    乙 年明け楽しみにしてます

    168 :

    李衣菜はお預けか…
    年明け待ってます乙

    169 :


    杏がどっちに転ぶかが気になる所ですね

    170 :

    やよい「ぱららららららっ」

    171 :


    凛ちゃんはまだか

    172 :

    いおりに死亡フラグたったね

    173 :

    探知機ってどっち側の人間かもわかるのか、強くない?

    174 :

    態々両陣営に1つずつって事だから重要アイテムとして設定してたんだろうなぁって考えると346ヤバい

    175 :

    原作はBR法が認知されてて桐山という殺人狂がいるから殺し合いが成り立ってるけど、こっちの状況ならまず全員集まって話し合いしようってなりそう

    176 = 169 :

    卯月はちょっとヤバめか・・・・春香は大丈夫かな・・・・・

    177 :

    まず殺し合いが始まるのか不安

    178 :

    こういうのは誤解やつまらない事故がきっかけで殺し合いが始まるのがお約束

    179 :

    普通にピヨ子が始めそう

    180 :

    開始一時間でアイドル達がどう移動したか一応貼っておきます
    あくまで大体の目安なので後で何かおかしいところが見つかったら
    修正したりしなかったりするかも知れません

    /nox/remoteimages/99/a5/9c4b016d2877618ab66db76a1376.png

    181 = 180 :

    16:00 天海春香

    海沿いを歩きながら、春香は20分ほど前に聞こえた音のことを考え続けていた。
    距離が遠くまた波の音に混ざっていたためはっきりとは分からないが、
    何かが爆発した音のように聞こえた。

    爆発音ではないか。
    一度そう思ってしまうと、想像はどんどん嫌な方向に進んでいく。

    爆弾の音だったのかも知れない。
    誰かが爆弾を使ったのかも知れない。
    だとしたら誰が、何のために?
    まさか本当に戦ってるのか。
    じゃあ誰と誰が?
    爆弾で誰か死んでしまったのか。
    誰が死んでしまったのか……。

    182 = 180 :

    一歩歩くごとに嫌な想像が頭の中を駆け巡る気がする。
    ただ歩いているだけなのに心臓が早鐘を打つ。
    そしてしばらく歩いた後、その心臓は一際大きく跳ね上がった。

      「春香……?」

    突然のその声に、春香はほとんど反射のように顔を向けた。
    まず目に映ったのは防波堤とその向こうに広がる海。
    声はどうやら防波堤の下から聞こえてきたらしい。

    視界を遮る壁はそう高くない。
    春香は聞き覚えのあったその声の主を確かめるべく、
    急いで壁の上から身を乗り出して下を見た。
    するとそこに居たのは、

    千早「やっぱり、春香だった……!」

    183 = 180 :

    千早「下から春香の頭とリボンが見えて、もしかしてと思ったけど……」

    安心したようにそう言ってこちらを見上げる親友の顔を見て、
    春香の感情は一気に高ぶった。
    返事をすることも忘れ、勢いをつけて壁に上り、そして、

    千早「ちょっ、春香!? 危な……きゃっ!?」

    2メートルほどの高さから、千早に向かって飛び降りた。
    千早は慌てて春香の体を受け止めたが、当然落下の勢いのままに砂浜に倒れこむ。

    千早「も、もう! どうして急に飛び降りたりなんか……」

    倒れたままの態勢で、自分にしがみついている春香を軽く叱ろうとした千早。
    しかし春香の様子がいつもと違うことに気付いて、言葉を飲み込んだ。

    184 = 180 :

    春香「千早ちゃん、良かった……! 千早ちゃん……!」

    千早「春香……」

    自分の胸元に顔を押し付けたまま涙声で安堵の声を漏らす春香。
    千早は初めて見る春香の姿にどうしていいか分からず、ただ黙って春香の頭を見続ける。

    しかし泣いている親友をこのまま見ていることしかできないのも嫌だ。
    そう思い千早は、右手を春香の肩からゆっくりと、頭へと移した。
    そしてそのままぎこちなく、春香の頭を撫でる。

    春香「……千早ちゃん……?」

    髪に触れるその感覚に、春香は千早の胸から顔を上げた。
    涙目ではあるが既に泣き止み、きょとんとした目で千早を見つめる春香。
    そんな春香の反応に、千早は慌てて頭から手を離した。

    千早「あっ……ご、ごめんなさい。
       その……どうすればいいか、分からなくて……。」

    185 = 180 :

    千早「春香に、えっと……同い年の女の子に抱き着かれて泣かれるなんて初めてで、
       だから、その……。……い、嫌だったかしら。ごめんなさい……」

    しどろもどろと一生懸命弁解する千早。
    そして最後にはなぜか落ち込んでしまった。
    それを見て春香はほんの少し間を置いたあと、にっこりと笑った。

    春香「ううん……ありがとう、千早ちゃん。
       おかげですっごく落ち着いた! もう大丈夫だから心配しないで!」

    千早「そ、そう? だったら良いんだけど……」

    春香「それから、ごめんね。いきなり飛びついちゃって……。怪我してない?」

    千早「あ……いえ、良いの。気にしないで。でも次からは気を付けた方が良いわね。
       いくら砂浜とは言っても、やっぱり危ないから」

    186 = 180 :

    すっかりいつも通りの調子を取り戻したような二人。
    だが当然状況はいつも通りではない。
    春香が元気になったし互いに怪我も無いのなら、
    と千早は表情を改めて話題を変えることにした。

    千早「それより、春香。少し前に、遠くで何か音が聞こえなかった?」

    春香「あ……う、うん。すごく、大きな音だった……」

    千早「そうね……。何か、爆発音のように聞こえたわ」

    春香「だ、誰か、戦っちゃってるのかな……。
       あ、あの爆発で誰か、死んじゃったのかな……!?」

    千早「春香、落ち着いて。悪い方に考え始めたらキリがないわ……。
       それより、これからどうするか考えましょう」

    春香「あっ……そ、そうだね。ごめん、また私取り乱しちゃって……」

    187 = 180 :

    春香は千早の言葉を受け、再び冷静さを取り戻すことができた。

    そうだ、悪い想像ばかりしていても仕方ない。
    ここは最大限ポジティブに考えて、今やるべきことを優先しよう。

    春香「えっと……これからどうすればいいか考えるんだよね!
       私はね、まずはみんなで集まったほうが良いと思うんだ」

    千早「みんなというのは……765プロのみんな?」

    春香「本当は346プロの子たちも集まれれば一番良いんだけど、
       それはもしかしたら難しいかも知れないから……。
       取りあえずは765プロのみんなで集まって、できたら346プロの子達も一緒で、
       それでみんなでどうすれば良いか考えようよ!」

    千早「……そうね。私も賛成よ。みんなで考えれば良い案が思い浮かぶかも知れないし。
       ただやっぱり……万が一のことも、考えておいた方が良いと思うの」

    188 = 180 :

    春香「え……? ま、万が一って……」

    千早「……346プロの子が襲ってきた時、どうするか。一番に考えるのは説得でしょうけど、
       もしそれが駄目だった時……。逃げるか、戦うか……早く決めておかないと、
       きっと後悔することになると思う」

    「そんなことはない」「襲ってくる子なんて居るはずない」
    少し前までなら春香は恐らくそう答えただろう。

    しかし、どうしても忘れがたいあの爆発音のことがある。
    ポジティブに考えようとはしているものの、それで他の可能性が消えるわけではない。
    春香も当然そのことは分かっており、無責任に「大丈夫」とは言えず視線を落としてしまう。
    そしてそのまま黙り込んでしまうかに見えたが、数秒後、春香は搾り出すように答えた。

    春香「……私は、本当は逃げたい。でも、もし逃げられなかったり、
       逃げたせいで他の誰かが襲われたりしたら……」

    189 = 180 :

    春香「だから私は、戦った方が良いと思う……。
       で、でも殺したりするんじゃなくて、気絶とか、動けないようにするっていう感じで……」

    恐らくこれまで春香が口にしたことのない、精一杯の「攻撃的」な言葉。
    それでも悪く言えば中途半端で、声にも不安や辛さがにじみ出ている。
    しかし千早はこれを聞き、表情を変えずに頷いた。

    千早「私もそうするべきだと思う。攻撃する意思のある人を放ってはおけない。
       なんとかして説得を続けるにしても、無力化してからでないと駄目だと思うから。
       ただもちろん、相手の武器によるけれど……」

    と一瞬思案するように目を逸らした千早だったが、
    春香が何か言う前に再び視線を戻した。

    千早「春香、あなたの武器を教えてもらえるかしら。
       戦うのに適したものだといいんだけど……。私は少し、頼りない物だったから」

    190 = 180 :

    そう言って千早は足元に視線を落とす。
    春香がその視線を追うとそこには、先端の無いモップが落ちていた。
    千早はそれを拾い上げ、困ったように言う。

    千早「他のみんなもこの程度なら良かったんだけど、
       あの爆発音を聞く限りそれは少し楽観的過ぎよね……。
       だから春香、あなたの武器を教えて欲しいの」

    春香「あ、えっと、それが……」

    千早の質問にバツの悪そうな表情を浮かべる春香。
    そして申し訳なさそうに、小さな声で言った。

    春香「お、置いてきちゃって……。怖かったし、絶対使わないって思ったから……」

    191 = 180 :

    千早「え? 置いてきたってどこに……?」

    春香「あの灯台が私が目が覚めたところなんだけど、そこに……」

    そう言って春香は離れたところに見える灯台を指さした。
    千早はチラと灯台を見、再び春香に視線を戻す。

    千早「……それで、何だったの? 春香の武器って」

    春香「毒入りの……ちょ、ちょっと待ってね。えっと……」

    口で説明するよりその方が確実と思ったのか、
    春香は鞄の中を探って武器の説明書を取り出して千早に手渡した。
    そして千早はそれを読んだ途端、嫌な想像が頭をよぎった。

    『水・食料(毒入り)』

    本来の水と食料とは別に配られた、毒入りのもの。
    それが春香の武器だった。

    192 = 180 :

    春香「一応見分けは付くように小さく目印は付いてるみたいなんだけど、
       なんだか私、間違っちゃいそうで……。
       それに使うつもりも無いんだから、ってそう思って置いてきちゃったんだ……」

    積極的な攻撃のためでも自衛のためでもない、明らかに騙し討ちを想定した武器。
    春香が絶対に使わないと判断したのも頷ける。
    しかし……

    千早「す……捨てたんじゃなくて、置いてきたの? 灯台のどこに……?」

    春香「えっ? えっと、一階にあったテーブルの上、に……。ッ!!」

    ここでようやく春香も気付いた。
    そう、それが毒だと知っているのは今ここにある説明書を読んだものだけ。
    つまり何も知らない者がそれを見つけた場合どうなるか。
    可能性としては決して高いとは言えないだろうが、しかし……。

    千早「急ぎましょう。最悪の事態が起こってしまわないとも限らないわ……!」

    春香「そ、そうだね! 急ごう!」

    言葉も少なに、二人は灯台に向かって走り出した。

    193 = 180 :

    16:00 渋谷凛

    波の音が聞こえ、更に歩くと木々の隙間から海が見えた。
    しかし凛は焦らず、先ほどまでと変わらず慎重に進む。

    今からちょうど一時間ほど前……目が覚めた直後に聞こえた声。
    あの声を頼りに歩いた先に居たのは、765プロのアイドルが三人。
    遠目でしかも多くの障害物越しだったため
    はっきりとは見えなかったが、何か話し合っているようだった。

    内容までは聞き取れなかったが、
    武器を手にして険しい顔つきで話すその様子を見て積極的に接触しようとは思えなかった。
    あまり考えたくはないが、その三人は既に覚悟を決めてしまっている可能性だってあるのだから。

    凛はそう思い、彼女らと距離を取ることに決めた。
    そして間違って発見されてしまわないよう、
    また他の765プロのアイドルに接触してしまわないよう、
    慎重に歩みを進めて今ようやく海岸へとたどり着いた。

    194 = 180 :

    視界が開け、凛はほっとため息をつく。
    左右の見通しはよく、これなら森の中のように神経を張り詰める必要はなさそうだ。

    そんな風に一瞬思った凛だったが、
    海岸に出てふと森を振り返るとその楽観的な考えはすぐに消えた。

    そうだ、もし今あの森の中に誰かが居ても、自分は多分気づけない。
    でも向こうからは、自分の姿は丸見えなんだ。
    これはひょっとすると森の中を進んだほうが安全かも知れない……。

    と、再び森に戻ろうと早足気味に歩き出した凛。
    しかし直後その足は、また視線は、ぴたりと止まった。

    自分と同じく森から出てきた者の姿が少し離れたところに見えた。

    195 = 180 :

    凛は一瞬身を固くしたが、それが誰かを確認してすぐに力は抜けた。
    次いで、向きを変え小走りにそちらの方へ駆け出す。
    ある程度距離が縮まったところで、凛は少し声を張って名を呼んだ。

    「智絵里!」

    智絵里「っ! り、凛ちゃん……!」

    唐突に名を呼ばれ、智絵里は一瞬怯えたようだったが
    すぐにその表情には安堵の色が浮かぶ。
    そして彼女も凛の方へと駆け寄った。
    と、ここで凛は智絵里の右手に光る物に気が付いた。

    彼女の小さな手に握られたそれは、どう見ても拳銃だった。

    196 = 180 :

    智絵里「凛ちゃん、わたし、わたし……!」

    「う、うん、大丈夫。大丈夫だから……」

    凛の元へ着いた智絵里は喜びからか現状への不安からか泣き出してしまう。
    凛は彼女の右手が気になってはいたが、取りあえずは智絵里が泣き止むのを待つことにした。

    しばらく寄り添い、声をかけたり背中をさすったりするうちに、
    ようやく智絵里は会話を出来る程度には落ち着いた。

    「もう平気? 話せそう?」

    智絵里「う、うん……ごめんなさい」

    「良かった……。じゃあ、早速聞きたいんだけど……それってやっぱり、本物なの?」

    197 = 180 :

    凛の視線を追うように智絵里も手元に視線を下ろした。
    そして凛の言う『それ』が、自分が握り締めている銃を指しているのだと気付く。

    智絵里「あっ……。そ、そう、本物みたい……」

    「……あの、さ。それ、入れ物とか無いの?
     危なくない? そんな風にずっと手に持ってたら……」

    智絵里の持つ銃に気付いてから、凛はずっとそれが気がかりだった。
    見たところトリガーに指はかけておらず、
    五指でグリップを握り締めるような形になっているから
    うっかり発砲してしまう可能性は低そうではあるが、それでも気になるものは気になる。
    普通こういうものはホルダーか何かに入れておくものでは……
    と凛はそう考えていたのだが、智絵里は首を横に振った。

    智絵里「入れ物みたいなのは無くて……。
        それに、危ないのは分かってるんだけど、でも……怖くて……」

    198 = 180 :

    智絵里が怖いと言っているのは拳銃のことではない。
    言葉は少なかったが、文脈的にも心情的にも十分それは理解できた。

    もちろん智絵里は引き金を引くつもりなどないし、
    誰かを傷つけたいとも思っていない。
    しかしこの異常な状況下で自分の身を守ってくれる
    唯一の道具を手放せるような性格でもなかった。

    またそれは凛も同じである。
    彼女も移動の間中ずっと、鞄の中にあったサバイバルナイフを手放せないでいた。

    「……わかった。取り敢えずそれはそのまま持っといて良いとして、まず移動しようよ。
     実はさっき向こうの方で765プロの人達を見たんだ。
     あんまり考えたくないけど万が一ってこともあるから、逆方向に行きたいんだけど……」

    智絵里「な、765プロの人……!? う、うん、じゃあこっちに行こう!」

    こうして二人は765プロのアイドル達……響、貴音、やよいの三人から離れるように、
    島南側の海岸近くを西へと進むことにした。

    199 = 180 :

    今日はこのくらいにしておきます
    続きは多分明日の夜投下します

    200 :

    乙です
    全体的に765勢の武器ショボww


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