元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」
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1 :
一週間前、346プロ
一同「なっ……765プロと合同合宿ーーーー!?」
346P「少し急になりますが、ちょうど一週間後に三日間の合同合宿を行うことになりました。
スケジュールの調整は済んでおりますので、あとは各自……」
未央「ま、まさかあの765プロと……! ついに私たちもここまで来たかって感じ!?」
莉嘉「ねぇねぇPくん! 765プロってことは、美希ちゃんとかも居るの!?」
346P「はい。765プロの方も12名全員が参加されます」
みりあ「すごーい! 本当に765プロの人とお泊りできるんだ!」
李衣菜「765プロってほんとすごいもんねー。
テレビとか雑誌とか、毎日何かで見てる気がするもん」
みく「流石の李衣菜ちゃんも765プロは知ってるんだね……安心したにゃ」
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2 = 1 :
アーニャ「765プロ……。私も、知ってます。可愛い人、きれいな人ばかりですね」
きらり「みんなとーってもキラキラハピハピしてて、きゃわいいにぃ!」
かな子「お、お菓子たくさん持って行かなきゃ! 765プロの人たち、食べてくれるかな?」
智絵里「うう、なんだか緊張してきちゃった……」
蘭子「つ、ついに、遂に我が力を、い、頂きに立つ者達へと示す時が……!」
美波「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。
って……あら? 凛ちゃん、どうかしたの?」
凛「えっ? あ、いや……。なんかみんな大げさじゃない?
私たちだって一応アイドルなんだし……」
未央「し、しぶりん、なんて大それたことを……! 765プロの凄さを知らないとは!」
3 = 1 :
卯月「そ、そうですよぉ!
近頃は765プロに憧れてアイドルを目指す子も少なくないって聞きます!」
凛「あ、そうなんだ。いや、すごいのは知ってるんだけど……」
杏「っていうかプロデューサー、よく合同合宿とかできたよね。
こう言っちゃなんだけど、知名度とかで言えばあっちの方が断然上でしょ?」
346P「それは、その通りかも知れません。しかし皆さんも着実に知名度は上がってきています。
そしてそのことは765プロの方も認めてくださっています。
シンデレラプロジェクトも、765プロに決して劣ることのない魅力を持っていると」
みく「ほ、本当!? じゃあみくたちもあんな風になれるの!?」
346P「はい。私はそう信じています」
未央「な、なんか燃えてきた! よーっし、765プロの人に良いとこ見せるぞー!」
4 = 1 :
ちひろ「ふふっ……なんだかみんな、いつにもまして元気になっちゃいましたね」
346P「千川さん……。はい、皆さんとても……」
ちひろ「『いい笑顔』。ですよね?」
346P「……その通りです」
ちひろ「そう言えば今回の合宿所の近くには海があるそうですが、
プロデューサーさんは水着はお持ちですか?」
346P「は? いえ、アイドルの皆さんには休憩時間は自由に使っていただくつもりですが、自分は……」
ちひろ「プロデューサーさんも一緒の方が、きっとみんなも喜びますよ。
アイドル達と親睦を深めることも大事ですし、ね?」
346P「け……検討させて、いただきます」
5 = 1 :
・
・
・
亜美「ねぇねぇ兄ちゃん! 346プロってどんなとこなの?」
真「最近よく仕事で一緒になったりしますよね?
あ、でもシンデレラプロジェクトの人とは会ったことないなぁ」
765P「彼女たちが有名になり始めたのは最近だからな。
でもその成長っぷりはみんなも知ってるんじゃないか?」
貴音「確かに……。近頃はめでぃあへの露出も急増しているようです。
頂点を目指す立場としては、決して無視できない存在と言えるかも知れません」
伊織「ふんっ。でもまだまだ私たちの方がずーっと上よ。
そう簡単に追いつかれたりなんかしないんだから」
6 = 1 :
あずさ「あらあら~。伊織ちゃんは負けず嫌いさんねぇ」
伊織「当然でしょ? 競争相手なのに意識しない方がどうかしてるわよ」
真美「ねぇ兄ちゃん、ライバルと一緒に合宿なんてしちゃって大丈夫なの?
真美たちの人気の秘密を盗まれちゃったらやばいっぽいよー?」
765P「そんな盗まれて困るような秘密なんて持ってないだろ……。
それに、確かに彼女たちはライバルかも知れないが、敵視することはないぞ?」
律子「今回の合宿も、互いに利があると判断しての決定よ。
彼女たちが信条とする『パワーオブスマイル』。
これは私たちの方針と近いところもあるし、きっと何か得るものがあるわ」
7 = 1 :
765P「そういうことだ。これは互いを高め合ってより上を目指すための合宿でもある。
まぁお前たちに限ってそんな心配はないと思うが、
変に張り合ったりするんじゃなくて、志を共にする仲間だと思って参加して欲しい」
伊織「……今あんた、私の方見て言わなかった?」
765P「え!? いやそんなことは……」
美希「いやーん、でこちゃん怖いのー。
こんな人が765プロに居たらきっと346プロの人たち怯えちゃうって思うな!」
伊織「う、うるさいわね! そういうことならちゃんと仲良くするわよ!
あとでこちゃん言うな!」
春香「合同合宿かー。どんな風になるんだろ……楽しみだね、千早ちゃん!」
千早「そうね……。良い刺激になりそう」
響「よーし! 自分、かっこいいところ見せてやるさー!」
8 = 1 :
やよい「うっうー! すっごく楽しみですー!」
雪歩「な、なんだか緊張しちゃうよぉ。
大丈夫かなぁ、私、足引っ張っちゃったりしないかなぁ……」
真「あははっ、大丈夫だよ雪歩。いつも通り、ボク達らしくやろう!」
小鳥「みんな楽しそうですねー。今回の合宿も海の近くですか?」
律子「はい、その予定です。っていうかすみません、毎回留守番お任せしちゃって……」
小鳥「いいんですよ。それが私の仕事なんですから」
765P「ありがとうございます、音無さん。またお土産買ってきますね!」
小鳥「まぁ! ふふっ、それじゃあ楽しみにしてますね、プロデューサーさん」
9 = 1 :
こうして、765プロと346プロ(シンデレラプロジェクト)の合同合宿が決定した。
片や全国的に有名なトップアイドル。
片や人気急上昇中の新進気鋭の新人アイドル。
双方相手に感じる思いは様々ではあったが、
この合宿へのやる気が十分であることは両者に共通していた。
知らせを受けてからの一週間、これまで以上に仕事にレッスンに励み、
合宿へ向けてますます気合を充実させていった。
当日は各々貸切のマイクロバスに乗って事務所を出発。
765側も346側も道中いつものように賑やかで、これから始まる楽しい三日間を予感させた。
しかしその移動中。
運転手を除く全員の記憶が、ぷっつりと途絶えた。
10 = 1 :
・
・
・
千早「春香。起きて、春香」
春香「ん……。あっ、ご、ごめんなさい! 私居眠り……あれっ?」
伊織「これで全員起きたわね……」
春香「えっと……ここ、どこ? 合宿所?」
千早「分からないわ……。みんな目が覚めたらこの部屋に。それに、この首輪も」
春香「えっ?」
11 = 1 :
春香たちが目を覚ました場所、
そこは白い壁に囲まれた殺風景な部屋だった。
ただ隅にぽつんとテレビが置いてある以外は何も無い。
その部屋に765プロのアイドルたちが全員揃って、どうやら眠っていたようだ。
春香「な、何だろこの首輪……。あ、そうだ! 346プロの人たちは? もう来てる?」
律子「それが本当に何も分からないのよ。
千早がさっき言ったとおり、全員いつの間にか寝てて、目が覚めたらここに居て……。
さっきからプロデューサーや小鳥さんに電話してるんだけど全然出ないし……」
亜美「しかもドアが開かないんだよー!」
真美「うあうあー! 真美たち、閉じ込められちゃったよー!」
貴音「これは所謂どっきり企画……というものなのでしょうか?」
12 = 1 :
響「ハム蔵ー、居ないのかー? おーい、ハム蔵ってばー!
うぅ、やっぱりこの部屋には居ないみたいだぞ……」
美希「もしかしてこれ、夢の続きなの? だったらもう一回寝たら目が覚めるかなぁ……あふぅ」
あずさ「あらあら……ダメよぉ美希ちゃん。ほら起きて、ね?」
雪歩「も、もしかして私たち、ずっとこのままなんじゃ……!」
やよい「はわっ!? そ、それは嫌ですー!」
真「テレビの企画とかだったら、そろそろ説明があってもいいはずだけど……」
と真が呟いたのとほぼ同時。
部屋の天井にあるスピーカーから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
小鳥『全員目が覚めましたね、おはようございます』
13 = 1 :
・
・
・
未央「えっ? この声……」
凛「ちひろさん……だよね」
同時刻、346プロのアイドル達。
彼女たちも765プロのアイドル達とまったく同じ状況に立たされていた。
ちひろ『それでは説明を始めます。
質問は最後に受け付けますので、しっかりと聞いていてください』
淡々としたその言葉を聞き、アイドル達は俄かに静まり返る。
それを確認したか、ちひろは説明を始めた。
ちひろ『これから皆さんには、765プロの人たちと殺し合いをしてもらいます』
14 = 1 :
小鳥『まずテレビ画面を見てください。この無人島が殺し合いの場になります』
ちひろ『期間は三日間。お互いに相手の事務所の人間を殺し合って、
三日後の24時までに多く生き残っていた方の勝利となります。
どちらかが全滅した時はその時点でゲーム終了です』
小鳥『勝敗が決まると同時に敗者チームは全員首輪を爆破され死亡します。
生き残るのは勝者チームのアイドルのみです』
ちひろ『引き分けだった場合は両チーム全員の首輪が爆発します。
その場合、生存者はありません。765プロ346プロ共に全員死亡します』
小鳥『また当然ですが、自殺はおすすめしません。
自分の死が敗因となって、仲間が全員死ぬ事態を招く恐れがあります』
ちひろ『ちなみに首輪は絶対に外れないし、無理に外そうとしても爆発します』
15 = 1 :
小鳥『ゲーム開始前に皆さんはもう一度眠らされ、島の中にランダムに配置されます』
ちひろ『その時、ゲームに勝つための道具がランダムに一つずつ配られるので、
目が覚めたらまずは傍に置いてあるカバンを確認してください』
小鳥『他に配られるのは三日分の水と食料、時計、懐中電灯、
必要事項の書かれた書類、それから地図とコンパスです』
ちひろ『地図にはエリアの区分と、自分がどこに配置されたのかが記されています』
小鳥『また、日中は同じエリアにずっと止まっていることは禁止されています。
エリア区分は地図で確認してください』
ちひろ『止まるのが許されているのは、19時から翌朝の7時までです。
それ以外の時間に、同じエリアに1時間以上留まっていると首輪が爆発します』
小鳥『なお、ゲーム終了後には勝者の記憶は改ざんされ、これまでの生活に戻されます。
以降の生活に殺人を犯したことによる精神的影響はありません。安心して殺し合ってください』
ちひろ『これらのことは配布される書類に記載してあります。必要に応じて参照してください』
小鳥『説明は以上です。ではこれから質問を受け付けます』
16 = 1 :
説明を聞き終えたが、346プロのアイドルたちは全員静まり返っていた。
状況を整理するのに頭が追いつかないのだろう。
しかしそんな中、未央がおずおずと、ぎこちない笑みを浮かべて手を上げた。
未央「えーっと、ちひろさん……?」
ちひろ『はい、なんでしょう』
未央「えっと、その……ど、どうやったら相手を『殺した』ことになるの?」
ちひろ『相手の心臓が止まり生命活動を停止したら、です。手段は自由です』
未央「……ちょ、ちょっと待って。殺し合いって、本当に殺し合うわけじゃないよね?
そういう雰囲気のゲームでしょ? ほら、サバゲーっていうの? ああいう感じの……」
ちひろ『本当の殺し合いです』
17 = 1 :
未央「い、いやいやいや……。ないでしょ、え? 殺し合いってそんな……」
アーニャ「アー、えっと……? こ、ころしあい、ですか?
人を殺す……ということですか……?」
ちひろ『そうです』
みりあ「だ……ダメだよそんなの。人を殺しちゃうのって、いけないことなんだよ……?
ね、そうだよね? 莉嘉ちゃん、きらりちゃん!」
きらり「あ、えっ? そ、そうだよ、もちろん、そう……!」
莉嘉「当たり前だよ! そんなのゲームでもなんでもないじゃん!」
18 :
765
春香 千早 美希 亜美 真美 真 律子
雪歩 響 伊織 あずさ やよい 貴音
13人
346
卯月 凛 未央 アーニャ 美波 蘭子
かな子 智絵理 杏 きらり みりあ 莉嘉
みく 李衣奈
14人
765は運動神経いい響と真がいるとはいえ
不利じゃない?
19 = 1 :
凛「あのさ……これドッキリとかじゃないの?
あり得ないでしょ? 殺し合いのゲームとか……」
卯月「そ、そうですよ! ちひろさん、ドッキリですよね!
何かの番組のドッキリ……」
ちひろ『ドッキリではありません。本当に殺し合ってもらいます』
美波「っ……ちひろさん、この扉を開けてください!
このままじゃ話が進みそうにありません!」
ちひろ『扉を開けることはできません。
どうしても信用できないようでしたら、テレビに向かって右側の壁を見てください』
20 = 1 :
それを聞き、天井のスピーカーに向いていた皆の視線は壁へと誘導された。
すると数秒待たず、真っ白な壁が左右に開き、ガラスの壁へと姿を変える。
そしてその向こう側には首輪をした猫がいた。
アイドル達のものとよく似た形の首輪をした猫が。
李衣菜「……ね、ねぇ、あれってまさか……」
ちひろ『皆さんの首に付けられているものと同じものです。少し小型ですが。
それでは実際に作動させてみましょう』
みく「作動……ま、待って!? それって……!」
これからの展開を察したみくがスピーカーに向かって叫ぶ。
しかし次の瞬間。
何の前触れも、警告音すらなしに首輪が破裂し、ガラスに真っ赤な飛沫が散った。
21 = 1 :
突然の惨状に数人は同時に叫び、残りの数人は口元を押さえ目を見開いたまま固まっている。
しかしそんな彼女たちなど意に介していないかのように、やはりちひろは淡々と言った。
ちひろ『これで信じてもらえましたか?』
智恵理「ぃっ……いや、嫌ぁ……!」
かな子「だ、誰か……誰か助けてください! 誰かあっ!!」
凛「や……やばいよコレ! 早く逃げなきゃ!!」
未央「ド、ドア!! あのドア破ろうよ!!」
22 = 1 :
ちひろ『助けは来ませんし、ドアの破壊もガラスの破壊も不可能です。
もう質問がないようなら、ガスで眠らせた後ゲームを開始しますがよろしいですか?』
部屋の中の阿鼻叫喚など聞こえもしないかのように静かな声が流れ続ける。
しかしそんな中、唯一その声に返事を返す者が居た。
杏「待った!! 質問あり!!」
きらり「え……あ、杏ちゃん……?」
ちひろ『はい、なんでしょう』
杏「杏たちが生き残る方法って、殺し合いゲームに勝つ以外には絶対に無いの?」
ちひろ『ありません。あらゆる不正、抜け穴の可能性を想定し、その全てが潰してあります。
ゲームに勝利する以外で生き残ることは不可能です』
23 = 1 :
杏「……そっか。それじゃもう一つ。死んだ子の今後の扱いってどうなるの?」
ちひろ『事故死あるいは行方不明として扱われます』
杏「勝ったら本当に記憶消してくれるの?」
ちひろ『はい、間違いなく。勝者には平穏な日常が約束されます』
ちひろの声と同じように淡々と連続して質問を投げかける杏。
そんな杏に周りのアイドルたちは困惑の表情を向けている。
杏はそれに気付いていないのか気付かないふりをしているのか、天井を見つめ質問を続ける。
杏「相手チームの人数は?」
ちひろ『14人です』
杏「島の広さは?」
24 = 1 :
ちひろ『外周はおよそ9km。
地図には100mごとに罫線が引いてあるのでそれを参照してください』
杏「……わかった。じゃあもういいよ。質問終わり」
きらり「あ、杏ちゃん……? どうして……?」
『どうして』。
この一言に込められたきらりの感情を、杏は察した。
だからきらりが最も欲しているであろう答えを返す。
杏「心配いらないよ、一応聞いただけ。どうせなら色々質問しときたいと思ってさ」
ちひろ『もう質問がないようなので、ガスを注入します』
杏の言葉に対してきらりが口を開く前に、ちひろが先を急かすように言った。
346プロのアイドル達のこの部屋での記憶は、これが最後だった。
25 = 1 :
・
・
・
伊織「は……はぁ? 何言ってるの? 冗談にしちゃ趣味が悪すぎるわよ……」
亜美「そうだよピヨちゃん! もういいからネタばらししてよ!」
真美「真美たち十分ドッキリしたっしょ!? だからもう終わりでいいよ!」
律子「あの……小鳥さん。本当に悪趣味過ぎじゃありませんか?
この子達はまだ中学生だし、346プロには小学生の子も居ますよね?
小鳥さんはこの程度の分別は付けられる人だと思ってましたけど……」
響「そうだぞぴよ子! こんな酷い冗談、自分だって怒るぞ!」
小鳥『冗談でもドッキリでもありません。全て事実です』
26 = 1 :
真「じ、事実って……そんなわけないじゃないですか!
そんな、殺し合いのゲームなんて……!」
やよい「わ、私! 嫌ですそんなの! 絶対やりたくないです!」
小鳥『不参加は認められません。全員強制的に参加になります』
伊織「あんたねぇ……いい加減にしなさいよ!
こんな悪趣味なドッキリどこの誰が企画したの!?
教えなさい! 文句言ってやるんだから!」
小鳥『ドッキリではありません』
27 :
765プロチームも14人なのか?
28 = 1 :
怒りや困惑を顕にする皆に対し、ほとんど感情の篭っていない返事を繰り返す小鳥の声。
伊織はそれに痺れを切らしたようにスピーカーから目を逸らした。
伊織「っ……あっそう! もう良いわよ!」
そう言ってポケットを探り、携帯電話を取り出した。
そしてどこかへ電話をかけ始める。
やよい「い、伊織ちゃん? どうするの……?」
伊織「新堂に言って調べてもらうの! ったく、冗談じゃないわ。
こんなふざけたこと考えた奴、どう責任取ってもらおうかしら……あっ、新堂?
調べて欲しいことがあるんだけど。……え? ええ、そうだけど……。
……ちょ、ちょっと、何言ってるの? 新堂……?」
29 = 1 :
皆が見守る中、受話器に向かって何度かうわ言のように相槌を繰り返す伊織。
いつの間にか初めの勢いは完全に姿を消していた。
そして遂に、
伊織「……新堂……」
伊織は震えた声で執事の名を呟き、そして電話を持った手を力なく下げた。
その様子を見て一同は最悪の状況を察した。
小鳥『これで信じてもらえましたか?
なお今の通話は信用してもらうために許可しましたが、これ以降は繋がりません』
伊織「……なんでよ。なんで、こんな……」
伊織の執事が彼女に何を言ったのかは分からない。
しかし、決して常識に欠けていることなど無く、
寧ろリーダーとしての高い資質を備えているはずの彼女が、
『殺し合いゲーム』を事実であると認めた。
そのことが、これ以上ない説得力を以てアイドル達に非情な現実を突き付けた。
30 :
個人間のバトロワじゃなくてチーム形式なのね
31 = 1 :
しかし当然ながら、全員が伊織の判断にすぐさま納得できるわけではない。
それを真っ先に指摘したのは亜美だった。
亜美「ま、まだ分かんないよ! いおりん!」
伊織「え……?」
亜美「しんどーさん、このゲームが本物だって言ってたんだよね?
でもしんどーさんもドッキリの仕掛け人ってこともあるじゃん!
だから、いおりんに嘘ついてるってことも……」
客観的に見れば当然考えうる可能性。
しかし落ち込む伊織を勇気付けようとしたはずのこの言葉を聞き、
伊織は形相を変えて怒鳴った。
伊織「新堂は……新堂は嘘なんかつかないッ!!」
32 = 1 :
伊織「新堂は、ずっと私の味方で……私を、いつも助けてくれて……。
私を思っての方便ならまだしも、こんな最低な嘘をついたことなんか一度だって無いわ!!
つくわけがない!! それに、それに……!」
あずさ「伊織ちゃん! 少し落ち着いて、お願いだから……!」
亜美に掴みかかり取り乱す伊織を見かね、あずさが仲裁に入る。
伊織はその時になってようやく亜美の怯えた表情に気付き、唇を噛んで視線を逸らした。
そしてそれから少しの間を置き……
小鳥『これでも信用できないのなら、テレビに向かって右側の壁を見てください』
静かに響いた小鳥の声。
その先の展開は、346プロのアイドル達に起きたものと同じだった。
壁が開き、ガラスが現れ、そして同じように、首輪を付けた猫が殺された。
33 = 1 :
悲鳴を上げる者、息を呑む者……。
765プロのアイドル達の反応も346プロのものと大差なかった。
そして765プロのアイドル達の中でいち早く会話へと思考を移すことができたのは、
貴音「……小鳥嬢、答えなさい。なぜ、このようなことをするのですか……」
スピーカーへ向けて静かに、しかしこれ以上ないほどの怒りを露にする貴音。
しかしやはり返答は、淡々としたものだった。
小鳥『娯楽です。アイドル達が殺し合うという事実を楽しむ人たちのための』
貴音「なっ……!?」
その常軌を逸した答えに、貴音は二の句が告げなくなる。
そんな彼女に変わって反応を返したのはやはり、伊織だった。
伊織「な……何よ、それ……。ふざけるんじゃないわよ!!」
34 = 1 :
娯楽で猫を殺し、自分たちを狂ったゲームに参加させる存在。
目に見えないその存在に対し、伊織は怒声を上げる。
しかし次いでその怒りの矛先は、スピーカーの向こうに居る小鳥自身へと向けられた。
伊織「大体なんで……なんであんたはそんな風にしていられるのよ!?
こんなわけわかんないこと私たちにさせて……!
私たちの誰かが死ぬかも知れないっていうのに、なんであんたは平気でいられるの!?」
小鳥『……』
いつの間にか、伊織の目から大粒の涙がこぼれていた。
ぼろぼろと涙を流し、喉が裂けんばかりに叫ぶ伊織。
しかし小鳥は何も答えない。
35 = 1 :
それでも伊織は叫び続ける。
ただただ感情に任せ、無機質なスピーカーに向けて怒りと悲しみをぶつけ続けた。
伊織「仲が良いと思ってたのは私たちだけだったってこと!?
あんたの笑顔も、今まで私たちを助けてくれてたのも嘘だったの!?
私だって、いつもあんたに助けられて、感謝して、なのに……! バカみたいじゃない!!」
小鳥『……』
伊織「最低よ!! こんなことならあんたと仲良くなんてするんじゃなかった!!
こんなことならあんたなんか……! あんたなんか死ん……」
美希「待って、伊織!」
36 = 1 :
伊織の叫びを美希が止めた。
そんな美希の普段とまったく違う様子にアイドル達は、伊織すらも、思わず目を向ける。
そして美希は真っ直ぐに伊織の目を見て、静かに言った。
美希「ミキね、小鳥が平気なわけないって思うな」
伊織「っ……なんでそんな」
美希「だって平気なわけないもん。あの小鳥がミキたちにこんなことして、平気なわけないよ」
ふざけた様子もなく真剣に、ただそう言い張る美希。
何の根拠もない言葉だったが、「あの小鳥が」というこの一言が何よりの証拠であると、
その場の全員に思わせる説得力がそこにはあった。
千早「……私も美希の言う通りだと思う。それに、音無さんの声……少し震え」
小鳥『もう、質問はありませんか?』
37 = 1 :
伊織が怒りをぶつけている間ずっと沈黙し続けていた小鳥だったが、
ここで唐突に話の流れを切るように質問を促した。
伊織はこれを受けて、不確定ながらも小鳥の心情を察した。
他のアイドル達もまた同様だった。
小鳥『もう質問が無いようでしたら……。最後に一つ、大切な説明をします』
”大切な説明”
この言葉に、一同は一言も聞き漏らすまいと身構える。
数秒後、小鳥はやはり淡々と、
小鳥『765プロのアイドルの数は律子さんを含め13人。対して346プロは14人。
数の上での公平を期すため、765プロ側として私も参加します』
38 = 1 :
・
・
・
ちひろ「……っ」
小鳥「ぅくっ……うっ……」
男「お疲れ様でした、お二人とも。見事な演技でしたよ」
ちひろ「どうして……どうして、こんなっ……」
男「おや、説明しませんでしたか? その方が面白いからですよ。
見知らぬ男に説明されるより、親しい間柄の者に淡々と説明される方が……」
小鳥「そうじゃありません!!
どうしてあの子達がこんな目に遭わなきゃいけないんですか!?」
ちひろ「みんなとても優しくて、いい子なのに……! 普通の女の子なのに、どうして……!」
男「あなた方、さっき自分で言ってたじゃないですか。娯楽のためですよ」
39 = 1 :
小鳥「っ……」
ちひろ「……もう、いいです……! それより、約束は守りました!!
プロデューサーさんを離してあげてください!!」
男「ええ、もちろん」
そう言って、男は指を鳴らした。
するとそれを合図に背後の扉が開き、
そこには顔にあざを作ったプロデューサー達が複数の男に囲まれ立っていた。
「プロデューサーさん!!」
ちひろと小鳥は同時に叫び、各々の事務所のプロデューサーの元へと駆け寄る。
周囲の男はプロデューサーを半ば突き飛ばすように前へと押しやった。
40 = 1 :
765P「……すみません、音無さん。俺のせいで……!」
346P「千川さん……申し訳、ございません……」
小鳥「プロデューサーさんは悪くなんか……!」
ちひろ「それより二人とも、お怪我は大丈夫ですか!?」
765P「は、はい、大丈夫です」
346P「私たちは、何も……。それよりあなた方お二人が……」
男「おや、ずいぶん仲がいいですね。敵同士だというのに」
41 = 1 :
男「特に765の事務員さんは346の人にとってはとんでもない人だと思いますけどね。
まさかわざわざ自分から参加を志願するとは……。
まあ、人数を公平に出来るというのならこちらとしても助かるので良かったですが。
外見も美しくいらっしゃいますからね。顧客は大喜びでしょう。
しかしそんなに346のアイドルを殺したかったのですか?」
765P「やめろ! 音無さんはそんな人じゃない!」
男「そうですか。でもそんな人じゃないかどうかは関係ないと思いますけどね。
ですよね、346のお二方?」
ちひろ「っ……私からは、何も言うことはありません」
346P「音無さんの気持ちは、私にも痛いほど分かります……。
彼女の決断、またこれからの行動についても……私共からは何も……」
42 = 1 :
男「ほう、人間ができていらっしゃる方たちだ。
ま、それは置いといて。765の事務員さん以外には、ゲーム終了まで休んでいてもらいましょう」
男のその言葉を合図に、周囲で待機していた別の男たちが小鳥を除く三人に手錠をかけ、
そして別室へと乱暴に連行する。
小鳥はただ黙って彼らの背中を見送ることしかできなかった。
しかしドアをくぐる直前。
765プロのプロデューサーが不意に振り向き、そして叫んだ。
765P「お……音無さん!」
1.どうか生きて帰ってきてください!
2.どうか誰も殺さないでください!
3.あいつらのこと、よろしくお願いします!
>>47
45 :
安価遠いよ
3
48 = 1 :
765P「あいつらのこと、よろしくおねがいします!」
小鳥「っ……!」
プロデューサーの力強い呼びかけを受け、小鳥は喉元がきゅっと締まるのを感じた。
だが言葉を返す前にドアは閉まり、
小鳥は返事を喉にとどめたまま、黙ってドアを見つめ続けた。
男「さ、ではあなたも眠りますか。
次に目が覚めた時がゲームの始まりですから、そのつもりで」
男の言葉に小鳥は反応を示さない。
ただ俯いて、震えを抑えるかのように胸元で両手を握り締める。
そんな彼女の背中を、男はやはり強引に押して別室へと連れ出した。
そこで小鳥は、アイドル達と同じ方法で眠らされ、
気付いたときには見知らぬ森の中に倒れていた。
49 :
1を選んだら765の勝ちだったろうな
50 = 1 :
今日はこのくらいにしておきます
続きは多分明日か明後日に投下します
一応先に言っておくと、男はもう出てきません
アイドル達が殺し合ったり殺し合わなかったりするだけのSSです
みんなの評価 : ★
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