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    元スレ小鳥「今日は皆さんに」 ちひろ「殺し合いをしてもらいます」

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    801 :

    >>800
    さすがに杏のサブマシンガンはきらりかかな子が回収するんじゃ

    803 :

    乙に飲まれよ
    かなり来るモノがあるけど魅入られるねこれ…

    804 :

    8:15 秋月律子

    律子「っ……駄目。もう、遠くへ行ってしまったみたい……」

    砂浜に残った足跡を見て、律子は唸るようにそう呟く。

    数分前、彼女達の居る灯台に「あの音」が届いた。
    春香と千早、また美波とアナスタシアは、
    それが伊織の音響閃光手榴弾の爆音だと知っていた。
    四人はそれを皆に伝え、そして、行動を起こした。

    亜美の死が彼女達を動揺させたのは確かだが、
    幸いにもそれで不和が生じるということはなかった。
    寧ろ、既にゲームに乗っている者が居るからこそ
    自分達はより強く結束しなければと、そう考えていた。
    また所属事務所に関わらず、
    この場に居ない他のアイドル達を案ずる気持ちも皆共通していた。

    805 = 804 :

    その気持ちがあったからこそ、
    やはり伊織を放ってはおけないと一同は全員で音の方へ向かうことにした。

    美波達346プロの三人は真美に接触するわけにはいかないが、
    それでも伊織から聞いた双葉杏と諸星きらりの件がある。
    仮に765プロだけで伊織と真美を探しに行ったとして、
    もし杏達と遭遇してしまったら恐らく交戦は免れない。
    それを避けるため、伊織達を発見するまでは美波達も同行することとなった。

    が、音がしたであろう場所に一同が着いた時には、既に誰も居なかった。
    足跡は残されていたが森の中へ消え、完全に行方知らずとなっていた。

    それを見て皆沈黙し肩を落とす。
    が、その沈黙は律子の落ち着いた声によって破られた。

    律子「……仕方ないわ。これからは最初に決めた通り、
      探索組と待機組に分かれて行動しましょう」

    806 = 804 :

    それを聞き、数人は驚いて目を見開いた。

    「な、なんで!? 伊織と真美はどうするの!? 放っておいていいのか!?」

    春香「そんな……! 律子さん、まだみんなで探せばきっと見つかります! だから……」

    二人を探すのを諦めるつもりか、と響と春香は律子に食ってかかる。
    しかしそんな彼女達に、
    律子は努めて毅然とした態度で返した。

    律子「放っておくわけでもないし、探すのをやめるわけでもない!
       ただ、このまま全員で探し続けると時間がかかりすぎるのよ。
       ゲームに乗り気な子が居ると分かった以上は
       バラバラで手分けして探すわけにはいかないのは分かるわよね?
       それなら全員で固まって探すより、
       他事務所同士のチームを複数作って動いた方がきっと早く見つけられるはずよ!」

    807 = 804 :

    これを聞き、響と春香は自分達の早とちりに気付いて押し黙る。
    律子は二人がひとまず納得してくれたことを確認して、少し声のトーンを落として続けた。

    律子「ただ、チーム編成は変えることになるわね……。
       探索側により多く人数を割いた方がいいわ。
       灯台に残るのは最低限で、346プロと765プロから一人ずつにするべきだと思う。
       残りのみんなは二つに分かれて、それぞれ346プロ一人と一緒に行動する……。
       これが今私が考えられる一番良いやり方よ。もし何か意見があれば、聞かせてちょうだい」

    この状況でも可能な限り最善手を考え立案する律子。
    そんな彼女の様子に、皆少なからず驚いた。

    律子は亜美の死を知ったにも関わらず、冷静に考え続けている。
    いや、亜美の死を知ったからこそ、
    考えることをやめてはいけないと、律子はそう思っていた。

    亜美の死に感じた絶望から律子を奮い立たせたのが、
    伊織を、仲間を案じる心だった。
    これ以上犠牲者を出したくないという思い一つで、律子は今動いていた。

    808 = 804 :

    そしてその思いは他の765プロのメンバーにも通じた。
    それまでは亜美の死のショックが抜けきらず、
    とにかく伊織を放ってはおけないという感情のみで動いていた者が大半だった。
    頭は混乱で満ち、思考する余裕などなかった。
    しかし律子は、感情に支配されることなく
    頭を最大限に使って仲間を救おうとしてくれている。
    そのことが、皆に落ち着きを取り戻させた。

    春香「ご、ごめんなさい、律子さん。私、焦っちゃって……。
       わ……私も、それでいいと思います!」

    「じ、自分もごめん! 自分も、律子に賛成だぞ!」

    律子「……それじゃあ、急いで相談しましょう。
      でも焦らないように、しっかり話し合って決めるわよ」

    そうして一同は急いで、しかし冷静に、
    これから誰がどう動くべきかを話し合い決めていった。

    809 = 804 :

    8:25 三村かな子

    かな子「うあっ……!」

    みりあ「か、かな子ちゃん! 大丈夫!?」

    かな子「っ……はあっ、はあっ、はあっ……!」

    何かに躓いたのか、かな子はバランスを崩して膝をついた。
    そしてみりあの呼びかけに答える余裕もなく、
    両手をついて荒い呼吸を地面に向けて吐き続ける。

    みりあに比べ、かな子は既にかなりの体力を消耗していた。
    それもそのはず。
    今かな子の背中には、気を失ったきらりが抱えられていた。

    810 = 804 :

    かな子は杏の死を間近で見て茫然自失とし、
    その後の民家で起きた爆発やみりあの声にすら反応しなかった。
    しかしきらりが失神したのを見て、初めて動き出すことができた。

    そしてそれと同時に、ここから離れなければと感じた。
    また手榴弾が投げられるかも知れない。
    あるいは別の敵がやって来るかも知れない。
    とにかくここは危ない。
    すぐ森の中に逃げなければ。

    かな子は傍に立つみりあにそう言って、きらりを背中に抱えて歩き出した。
    肋骨に痛みがなければみりあも手伝えていただろうが、それは叶わなかった。
    そうして、自分より遥かに背の高いきらりを抱え、
    舗装されていない森の中をかな子は走り続けた。

    が、ここでついに限界が来た。

    811 = 804 :

    立ち上がろうとするも足に力が入らない。
    人一人抱えて舗装されていない山道を走るのは、
    相当な負担をかな子の両足に与えていた。

    みりあ「休憩しよ、かな子ちゃん! 無茶して怪我なんかしちゃったら大変だよ!」

    みりあはかな子の限界を察し、休憩を提案する。
    かな子はそれを聞いてみりあに目を向け、
    その時初めて、みりあが脇腹に手を当てていることに気付いた。

    かな子「みりあちゃん……怪我、してるの……!?」

    みりあ「えっ? あ……う、ううん、大丈夫だよ!」

    かな子「そ、そんなはずないよ……! 見せて、早く!」

    みりあは慌てて健在をアピールしたが、痛みを隠していることは明らかだった。
    そしてみりあはかな子の必死な様子に観念したように、
    服を捲って痛む箇所を見せた。

    812 = 804 :

    それを見てかな子は思わず息を呑む。
    みりあの脇腹は、一部が赤紫色に染まり、見るからに痛々しく腫れていた。

    その原因は、真だった。
    あの時みりあが飛びついた際、真は咄嗟に反撃し、
    みりあの胴体に思い切り膝を打ち込んだのだ。
    そして不安定な姿勢ながらも十分な威力を持ったその蹴りは、
    みりあの肋骨にヒビを入れていた。

    骨折していることまではみりあにもかな子にも分からなかったが、
    かな子はその痛々しい痣を見て、思わず目に涙を浮かべた。
    きらりは意識を失い、みりあは酷い打撲を負い、
    そして、杏は死んでしまった。
    短い時間で起きたこれらの出来事は、かな子の心を確実に追い詰めていた。

    813 = 804 :

    だが同時にこれらの出来事が、
    逆にかな子の心に折れることを許さなかった。

    今無事なのは、自分だけ。
    もし今、卯月を殺した者や杏を殺した者に襲われたら、
    きらりとみりあを守ることができるのは自分だけ。
    だから、自分がしっかりしていないといけない。

    頼れる仲間を失ったことが、
    無力な仲間が傍にいることが、かな子の心を支えた。

    かな子はにじみ出た涙を拭く。
    そして顔を上げてみりあの目をしっかり見て、言った。

    かな子「……杏ちゃんのところに戻ろう。荷物を置いてきちゃったし、
        それに……杏ちゃんのこと、あのままにしておけないよ……!」

    その言葉を聞き、みりあもまたかな子の目を見てしっかりと頷いた。

    814 = 804 :

    8:35 音無小鳥

    小鳥「……先に入って。鍵をかけるから」

    莉嘉「うん……」

    小鳥に促され、莉嘉は灯台の中へと入る。
    そして小鳥もそれに続いて入り、扉を閉めて内鍵を回した。

    話し合いの結果、小鳥と莉嘉が灯台に残ることになった。
    346プロの三人のうち一人灯台に残すのであれば、一番幼い莉嘉が妥当だ。
    また765プロのアイドル達には全員、伊織と話をする機会が与えられるべきだ。
    小鳥がそう言って、自分と莉嘉を待機組にするよう提案したのだ。

    この提案に反対する理由も特に無く、皆納得し、
    二人に灯台での待機と周囲の観察を任せた。
    ただ貴音だけは小鳥の言葉の裏に気付いていたが、何も言うことはなかった。

    815 = 804 :

    『もし灯台に346プロの者が来たら、莉嘉を人質に武装を解除させられる』

    それが、小鳥が自分達を灯台に残すよう提案した本当の理由だった。
    346プロを人質に取るには、対象と二人きりが都合が良い。
    他に誰か居ればその所属事務所に関わらず阻止される恐れがある。
    そして人質はできるだけ、小柄で力の弱い人間の方がいい。

    また、きらりとユニットを組んでいるということも莉嘉を選んだ理由だった。
    伊織の言葉通り諸星きらりがゲームに乗り気なのだとすれば、
    きらりを相手にした時の人質は
    ユニット仲間である莉嘉が最適だと、小鳥はそう考えた。

    とは言え、あくまでそれは最終手段。
    莉嘉が765プロに仲間意識を持っている今なら、
    自分が何もしなくとも莉嘉自らが相手に武装解除を呼びかけるだろう。
    それが成功すれば、自分の敵意を相手に気付かせることなく無力化できる。
    可能であれば間違いなくその方がいい。
    その意味でも、莉嘉は最適だった。

    816 = 804 :

    そこまで考えて、小鳥は莉嘉を選んだ。
    他の皆が伊織を案じるその隣で、
    利用するなら誰が適任か、その算段を立てていた。

    自分が今どれだけ最低な人間になっているか、自覚している。
    でも仕方ない。
    みんなを守るためなのだから。

    前を歩く莉嘉の後頭部を眺めながら、
    小鳥は何度言ったか分からない言葉を頭の中で復唱した。
    が、ふと小鳥の思考は止まる。

    莉嘉の肩が震え、嗚咽が漏れ始めた。
    そして小鳥が理由を聞くより先に、莉嘉はしゃくり上げながら口を開いた。

    莉嘉「ごめん、なさい……ごめんなさいっ……!」

    817 = 804 :

    小鳥「……どうして謝るの? 何か、あったの?」

    唐突に泣き始め、謝罪の言葉を口にした莉嘉。
    だが小鳥には謝られる心当たりはなく、率直にその意図を聞いた。
    すると莉嘉は途切れ途切れに、答えた。

    莉嘉「亜美ちゃん……殺したって……。
       きらりちゃん、と……杏、ちゃんっ……殺した、って……!」

    しっかりした文章にはなっていなかったが、
    この言葉で小鳥はすべて理解した。
    莉嘉は、杏達が亜美を殺したことへの罪悪感に耐え切れず、泣き出してしまったのだ。

    自分の仲間が相手の仲間を殺したことへの罪の意識。

    この感情は、当然美波とアナスタシアも持っている。
    また卯月の死を知っている765プロの者達も、
    それを隠している分余計に強い罪悪感を持っている。

    818 = 804 :

    だが彼女達は、理屈を理解していた。
    殺したのは自分じゃない。
    自分の全く知らないところで起きたことなのだから、自分に責任はない。

    実際にそう考えたわけではないが、
    無意識下でその理屈を以て自らの罪悪感を薄れさせ、耐えていた。

    だが莉嘉にはそれができなかった。
    幼さゆえか、性格か、その両方か。
    莉嘉の感情は、仲間の殺人をまるで自分の行いであるかのように捉えていた。
    そしてその思いが、集団を離れ長い沈黙を経るうちに高まり、今爆発した。

    莉嘉「ごめんなさいっ……亜美ちゃん……ごめ、なさい……!」

    亜美に謝っているのか、小鳥に謝っているのか。
    莉嘉は泣きじゃくりながらただただ謝り続ける。

    そして小鳥はそんな莉嘉を見て、ぽつりと呟いた。

    819 = 804 :

    小鳥「……莉嘉ちゃんは、何も悪くないわ。
       それに、杏ちゃんと、きらりちゃんも」

    莉嘉の前に膝を付き、
    俯いた莉嘉の目を見るようにして小鳥は話す。

    小鳥「あの子達もきっと、一生懸命なの。
       みんなのことを守らなきゃ、って、必死に、頑張ってるの……。
       だから……私はあの子達のことを責めたりなんかしない」

    その言葉を聞き、莉嘉は涙に濡れた目で小鳥を見る。
    その顔を見て、小鳥は自分の顔が酷く歪みそうになるのを感じた。
    しかし必死に耐え、穏やかな表情を貼り付け、

    小鳥「そうよ、悪くなんかないの。だって……仕方ないんだから」

    安心させるために、心を落ち着かせるために、そう言い聞かせた。

    820 = 804 :

    8:35 渋谷凛

    多分、もうすぐのはずだ。
    凛は地図に目を落とし、何度目か分からないが灯台の位置を確認した。

    伊織の襲撃を受け、凛と智絵里は海岸沿いを歩くのは
    危険だと判断し森の中を行くことにした。

    これなら一方的にこちらの姿だけが丸見えになるという可能性は低くなる。
    灯台は視認できなくなるが、やむを得ない。
    大体の位置はわかったのだし、問題ないはず。

    そうして二人が歩くうちに、ふと生い茂る木々が途切れた。
    見るとその空間は左右に長く伸びている。
    どうやら小道のようなところに出たようだった。

    821 = 804 :

    凛は地図を見て、この道がどこへ続いているのかを確認する。

    「左が灯台で……右が集落かな」

    その声に智絵里も地図を覗き込んだ。
    見ると、この小道は灯台と集落を結ぶものらしい。
    左に進めば灯台に着き、
    右に進めば、二つある集落のうち北西側の集落に着くようだ。

    自分がいる場所を確認し終え、凛は智絵里を振り返った。

    「……どうする? このまま灯台行くのでいい?」

    智絵里「う……うん。やっぱり、気になるから……」

    「うん……だよね。よし、それじゃ予定通りにしよう」

    822 = 804 :

    少し前の急襲を受け、二人はこのまま灯台へ行っていいものか初めは迷った。

    765プロにはゲームに乗り気の者が居る。
    もし灯台に居るのがそういう者達だったら、あまりに危険すぎる。
    身を守る術はサバイバルナイフが一本。
    もし相手の武器が飛び道具だったとすれば防ぎようがない。
    またナイフより長く大きな武器であっても圧倒的に不利だ。

    今の状態で誰が居るか分からない灯台へ向かうのは、やはり不安がある。
    しかしその不安を、灯台への期待が上回った。
    灯台を調べれば何か見つかるかもしれない。
    上に登れば何か見えるかも知れない。
    その思いは凛、智絵里ともに共通していた。

    そうして二人は当初の予定通り灯台を目指すことを決め、
    今も小道を北へ向かって進んでいる。

    823 = 804 :

    しかしあと少しで小道が終わって森を抜けるというところで、
    二人は慌てて道の脇の木々に身を隠した。
    そして顔を覗かせ、灯台を見る。

    少し先に立つ灯台。
    その屋上に、人が居る。
    そしてそれは、346プロの者ではなかった。
    見たことはない。
    だが346プロの者ではないということは、765プロの者ということで間違いない。

    そこに居たのが仲間ではなかったことと、
    そして何より相手が持っていた武器が、凛と智絵里を木の陰に隠れさせた。
    詳しくは分からないが、どう見てもナイフより拳銃よりもっと強力な銃だった。
    それを見て二人は言葉にするまでもなく思った。
    灯台に行くのは無理だ。
    諦めよう。

    二人は顔を見合わせて、森の奥へと戻っていった。
    その直後、屋上に莉嘉が姿を現したのだが、凛達がそれに気付くことはなかった。

    824 = 804 :

    9:00 菊地真

    「美希、少し休もう……! 一度傷口を診ておいた方が良いよ!」

    美希「はあっ……はあっ……!」

    激しく呼吸を乱した美希は、真の言葉を聞いて頷き、地面に腰を下ろす。
    美希の左足を直撃した破片は特に深くまで突き刺さっており、
    機動力を失った美希は真に比べ遥かに体力を消耗していた。

    真は座り込んだ美希の隣に膝をつき、鞄から未開封のペットボトルを取り出す。
    そして痛みを堪えキャップを回し、美希の足に慎重に水をかけた。

    825 = 804 :

    「大丈夫? 痛くない?」

    美希「っ……うん。こんなの、へっちゃらだよ」

    汗を滲ませながらも、美希は心配かけまいと真に笑いかけた。
    だが真はそれに笑顔を返す余裕もなく、心配そうな表情を浮かべ続ける。

    「他にも傷あるよね? そっちの方も見せて!」

    美希「……真くんも、手、怪我してるの」

    「ボクの傷は最後でいいから!」

    美希「あっ……」

    そう言って真は、美希の後ろに回って服を捲る。
    一瞬、首を回して背後の真に何か言おうとした美希だったが、
    真の表情を見て口を閉じ、正面を向いてじっと自分のつま先を見つめた。

    826 = 804 :

    美希「もう……真くんってば強引なの。
       流石のミキも、いきなり裸を見られちゃうのはちょっと恥ずかしいって感じ」

    水のかかる冷たい感覚を背中で受けながら、
    美希はまるで日常の中に居るかのように軽口を叩いた。
    しかしその声には微かに苦痛を堪える強張りがあり、
    これもまた心配させないための気遣いであると真はすぐにわかった。

    しばらく黙って傷口周辺を水で洗っていた真だが、
    ふと軽く息を吐いて美希に声をかけた。

    「……一応、これで傷口は洗ったよ。
     でも、多分……破片がまだ刺さってるよね。やっぱり、取った方がいいのかな……」

    美希「ん……ミキ達お医者さんじゃないし、あんまり触らない方がいいって思うな。
       それにもし取った方が良くても、取るための道具がないの」

    「だよね……。じゃあもう、これくらいしかできないかな……。
      ただ水で流しただけで、意味なんてあるのか分からないけど……」

    827 = 804 :

    美希「絆創膏とか包帯とかも無いだもん、仕方ないの。
       でもミキの服ってきれいだし、バイキンなんか居ないって思うな!」

    本気でそう思っているのかどうかは分からないが、
    美希の言う通り雑菌を防ぐような道具が無い以上、気にしすぎても仕方ない。
    もしかしたら何か良いやり方があるのかも知れないが、
    医学の知識など無いに等しい自分達では、これ以上できることはない。

    「うん……そうだね」

    真は短く一言そう言って、自分の腕にも片方ずつ水をかけた。
    その時、思わず痛みに表情を歪めてしまい、
    今度は美希が心配そうに声をかける。

    美希「……やっぱり、痛いよね。ごめんね、ミキのせいで……」

    828 = 804 :

    美希「ミキの首とか頭とか守ってくれたから、怪我しちゃったんだよね?
       それにミキがもっとちゃんと気を付けてれば、こんなことにならなかったのに……」

    「美希のせいなんかじゃないよ。気付かなかったのはボクも同じだし、
      それに美希の傷だってボクを守ってくれたから負った傷だろ?
      だからなんていうか……おあいこってことにしておこうよ」

    と、この場を収めるため真はそう言った。
    しかし真は、本心では美希よりも圧倒的に自分の方に責任があると考えていた。
    だがここでそれを言っても、美希も「自分の方が」と主張を返してくるだろう。
    今ここでそんなやり取りを続けても意味がない。
    そして美希はこの真の考えを知ってか知らずか、

    美希「……うん。ありがとうなの、真くん」

    それ以上自分を責めることなく、薄く笑って礼を言った。

    829 = 804 :

    美希「それじゃあ……これからどうする?
       ミキ的には、早く765プロの誰かと一緒になりたいって感じ」

    と、早速美希はこれからどうするかという話題に切り替えた。
    真は美希の意見を聞き、静かに頷く。

    「ボクも賛成かな。
      ただ、怪我のことを考えるとあんまり無茶しちゃダメだ。
      血はそこまでたくさん出てるわけじゃないけど、
      それでもできるだけペースは落とした方がいいと思う」

    美希「うん……そうだね」

    「それに、隠しても仕方ないから正直に言うけど……。
      ボクはもう、手榴弾をあまり遠くには投げられない。
      無理に投げようとしたら、多分コントロールがきかなくなる。
      残されてるのは一発だけだし……。
      だから346プロの子を見たら、逃げるか隠れることを最優先に考えたいんだ」

    830 = 804 :

    美希「……うん。悔しいけど、ミキもまともに戦うのは無理だと思う」

    と美希も自分の状態を正直に話した。

    現状、二人とも戦力としてはほぼ無力。
    しかし真は、その状況に気を落とすことはなかった。

    「まずは、できるだけ体を休めながら少しずつ北に向かってみようよ。
      森の中ならそう簡単に敵に見つかることはないだろうし、
      これ以上急いで集落から離れる必要もないと思うんだけど……どうかな」

    そう言って冷静に、これから取るべき行動について確認を取る真。
    そんな真を美希は数秒見つめ、そしてニッコリ笑って答えた。

    美希「……あはっ。真くん、すっごく頼もしいの。
       うん、ミキもそれでいいって思うな」

    この返事と笑顔に、今度は真も、穏やかな笑顔を返すことができた。

    831 = 804 :

    今日はこのくらいにしておきます
    続きは多分明日投下します

    832 :

    乙!
    ふと思ったが両アイドルは私服だろうが律子はスーツで小鳥さんは事務服なんかな…
    だとしたら小鳥さんはよくあんな服でそこまで動けるよな

    833 :

    それ言ったら杏は防御力低そうな服だったからやられたかもだし蘭子も動きにくそう

    834 = 832 :

    そうなるか…でも着替えさせられたとも考えられないし…
    もし着替えさせられたとしたらお偉いさんたちのイメージが一気に変態親父たちになるな

    835 :

    今回もあずささんと雪歩出てこなかった……
    今はみんな全体的に北寄りにいるっぽいから、2人は南の方にいるのか
    雪歩は探知機持ちだから誰かと合流しようと動くと思うが……はたして

    836 :

    乙でした
    みきまこのどっちかは破傷風とか感染症フラグかなぁ

    837 :

    肋骨にヒビって呼吸する度に痛むから地味にきつい

    838 :

    更新してみた

    /nox/remoteimages/a6/a8/b4a006abfb4500560cc2f3db70e2.gifあと>>572を見返してみたんだが、ちえりん組とあみいお組が海岸で合流してるのにどっちの組もあずささんとかち合ってないのは奇跡でしかない

    839 = 838 :

    伊織の手榴弾はあと何発残ってんだ?

    840 :

    あみいお組とかいう亡霊

    841 :

    雪歩Pのワイ、震える

    842 :

    10:00 萩原雪歩

    雪歩は今、途方に暮れていた。
    昨晩北西の集落に向かっていたのだが、
    探知機はそこに346プロのアイドルが六人も居ることを示していた。
    そんなところに無警戒に行けるはずは無く少し引き返した後、
    孤独に震えながら森の中で一晩を過ごした。

    そして今朝。
    今度は南東の集落に行ってみようと歩き始めた雪歩だったが、
    まさにその方向から、今度は爆発音が聞こえた。
    慌てて探知機を見たが、爆発が起きたのは探知可能な範囲の外側だった。
    だが少なくとも、もうどちらの集落も安全ではないことは分かった。

    雪歩はどうすればいいのか分からず、
    集落から離れるために再び南下し海岸に出て、
    文字通り右往左往したのち、とうとうその場に座り込んでしまった。
    孤独や恐怖や不安、様々な負の感情が、雪歩の心を侵し始めていた。

    843 = 842 :

    しかし涙に濡れた雪歩の目に、探知機に起きた変化が映った。
    北の方角から、765プロを示す点が二つこちらに近付いて来ているのだ。
    雪歩は目を見開いて跳ねるように立ち上がり、北へと走った。
    そして森に入り少し走ったところで、雪歩はようやく待ち望んだ顔を見ることができた。

    雪歩「い……伊織ちゃん!! 真美ちゃん!!」

    そう名前を呼んだ雪歩を見て、伊織は僅かに安堵の色を浮かべた。
    そんな伊織達に雪歩は駆け寄り、そして勢いよく抱きついた。

    雪歩「良かった……私、ずっと一人で……!
       すごく寂しくて……でも、良かったぁ、良かったよぉ……!」

    そう言って、二人を抱きしめたまま泣き始める雪歩。
    また真美も、雪歩の背中に手を回し、
    ぎゅっと服を掴んで同じように泣いた。

    844 = 842 :

    伊織も本音を言えばもっと長く雪歩とこうして抱擁し、再会を喜びたかった。
    しかしそういうわけにもいかない。
    伊織は雪歩に抱きしめられたまま、呟くように口を開いた。

    伊織「……雪歩、聞いて欲しいことがあるの」

    雪歩「え……?」

    その伊織の声色に、雪歩はただ事ではない何かを察した。
    ゆっくりと体を離し、そして伊織の顔を見る。
    伊織は雪歩の目を見つめ返し、

    伊織「無茶を言うかも知れないけど……できるだけ、取り乱さないで」

    そう前置きして伊織は、亜美のことを話し始めた。
    それを聞いて雪歩が見せた反応は、伊織の予想を大きく外しはしなかった。

    初めは信じられないような顔を浮かべ、
    しかし伊織の表情と泣き続ける真美を見てそれが事実だと実感し、
    地面にへたり込み、涙を流した。

    845 = 842 :

    地に手を付き涙を流す雪歩を見下ろしながら、伊織は眉根を寄せる。
    泣いている場合ではない。
    悲しんでいる場合でもない。
    そんなことは分かっているが、それを口にすることはやはり胸を強く締め付けた。

    だがそれでも口にしなければならない。
    伊織は拳を握り、雪歩に向けて口を開こうとした。

    しかしその直前、雪歩が顔を上げた。
    そして未だ流れる涙を止めることなく、

    雪歩「ど、どうしよう……。伊織ちゃん、私達、これからどうしたら良いのかな……!」

    すがるように伊織を見つめてそう言った。
    それを受け、伊織は言いかけた言葉を飲み込んだ。

    雪歩の目は不安と悲哀に満ちている。
    だが今、彼女は「これから」のことを聞いた。
    恐怖と悲しみに包まれながら、決して絶望などはしていない。
    雪歩の頭は既に「次」に切り替わっていることに、伊織は気付いた。

    846 = 842 :

    伊織「そうね……。これからどうするべきか。それを考えなくちゃいけないわ。
       だからもう一つ、あんたに大切なことを教えるわね」

    伊織は座り込む雪歩を見下ろしたまま、静かに言った。
    雪歩は一瞬の間を開けて涙を拭い、立ち上がって頷く。
    それを見て伊織は、やはり落ち着いた声で続けた。

    伊織「……346プロには、765プロと協力して解決策を探してるアイドル達も居るわ。
       北にある灯台に、みんな集まってる」

    雪歩「え……?」

    伊織「だから……もし雪歩がこのゲームに乗りたくないのなら、
       そっちに行ってちょうだい。私は止めないから」

    雪歩はこの情報を聞いて目を丸くする。
    亜美が殺されたという話の直後に今度は真逆の情報を聞かされたのだ。
    困惑しないはずがない。

    847 = 842 :

    雪歩「ほ……本当に、協力してるの? だ、騙されてたりとか……」

    伊織「それは無さそうよ。律子や貴音、千早がそう言ってたから。
       私も実際に見て、その点に関しては心配ないって信じることにしたわ」

    雪歩「そ、そう、なんだ……。他には、誰が居るの?」

    伊織「765プロはその三人と、小鳥、やよい、響、春香の全部で七人。
       346プロは新田美波、アナスタシア、城ヶ崎莉嘉の三人よ」

    雪歩「……みんな、知ってるの? さっき伊織ちゃんが教えてくれたこと……」

    伊織「知ってるわ。でもそれを聞いたからって、
       少なくともあのグループは敵対しようとなんてしないでしょうね。
       ただ……」

    と伊織はここで一瞬目を伏せてひと呼吸起き、
    再び雪歩の目を見て、言い切った。

    伊織「はっきり言って、私は協力なんて無駄だと思ってる。
       ゲームに勝つ以外に生き残る方法なんて無い」

    848 = 842 :

    伊織「でも、その気じゃない子に人殺しを強制するつもりもない。
       だから雪歩、あんたはどうするか決めなさい。
       私達と一緒に居るか、それとも灯台に行って律子達と一緒に居るか」

    雪歩「っ……」

    伊織「すぐに決められることじゃないかも知れないけど、
       でも出来るだけ早く決めてちょうだい。決められるまで待っててあげるから。
       どっちにしろあんたと合流したら休憩するつもりだったし」

    伊織はそう言い、チラリと真美に目を向けた。
    真美は相変わらず伊織の袖を掴んだまま、俯いて時折鼻をすする。

    伊織「……真美、少し座って休みましょう」

    その言葉に黙って頷き、真美はその場に座り込む。
    雪歩はそんな真美と伊織の様子を見ながら、
    自分にとって恐らく最も重要となる選択を出来るだけ早く、
    しかし早計に失することのないよう、一人目を瞑って考え始めた。

    849 = 842 :

    それからどのくらいの時間が経ったか。
    雪歩はずっと閉じていた目を静かに開き、立ち上がった。

    伊織はそれを見て、もう気持ちは決まったのか、と雪歩に問おうとした。
    が、その時。
    探知機に反応があった。

    伊織が探知機を手に取ったのを見て、雪歩も自分の物を確認する。
    するとそこには、765プロを示す点と346プロを示す点が複数表示されていた。
    伊織と雪歩はこれを見て、その点の正体を察した。

    真美「……いおりん……?」

    探知機を見つめる伊織に、真美はか細い声で呼びかける。
    伊織は探知機の液晶を伏せ、笑顔を向けた。

    伊織「大丈夫よ。多分、律子達がここから離れたところに居るってだけ。
       でも346プロの奴らは居ないから安心して」

    850 = 842 :

    真美「りっちゃん達……? なんで……?」

    伊織の嘘を真美は疑うことなく受け入れ、思ったことを素直に質問した。
    そしてその質問に、伊織は少し考えて答える。

    伊織「『解決策』とやらを探してるか、それとも私達を探しに来たか……。
       それか、その両方ね」

    真美「真美達を探しに……?」

    伊織「会って話でもしたいんでしょ。
       私達と一緒に来るつもりなのか
       それとも私達を灯台に連れて行きたいのか、それは分からないけど」

    真美「え……や、やだ……。真美、やだよ。いおりん、真美……」

    伊織「えぇ、分かってるわ。346プロの連中と一緒になんて過ごしてたまるもんですか」

    と、ここで伊織は真美から雪歩に視線をやる。
    雪歩はそれを受けて、伊織が何か言う前に先に口を開いた。


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