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    元スレ八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」

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    552 = 15 :

    八幡「今の自分の現状が嫌だって思うなら……それを変えようとしろよ……!」

    『比企谷八幡』は変わる事を否定した。それは彼が自分自身を肯定できてしまうような超人だったからだ。ベクトルは違えどもきっと、雪ノ下雪乃という人間と同じように。

    だが、俺たちは彼らのような超人ではない。

    今までの自分を肯定できないし、今の自分自身も肯定できないような、弱い人間ばかりなのだ。この世界にいるのは。

    それに、『比企谷八幡』だって、時を経るにつれて変わっていった。それは変化の肯定なのではないだろうか? なら、今俺が相模にこう言うのは、間違っていない……はずだ。

    554 = 15 :

    相模「……でも、ウチ、やっぱり怖い……」

    八幡「それでも、今のままでいるのはよくない……と俺は思う」

    相模「……君、名前、なんて言うの?」

    八幡「比企谷八幡」

    相模「……変な名前」クスッ

    八幡「よく言われる」

    まだ二回目だけどな。

    555 = 553 :

    しえん

    556 = 15 :

    相模「じゃあ、比企谷くん……」

    八幡「なんだ?」

    相模「…………」モジモジ

    八幡「…………」

    相模「……ウチと」

    八幡「…………」

    先を続けさせたい衝動に襲われるが、我慢する。ここは相模自身の力で言わせなければならない。じゃなければ、これまでの時間が無駄になってしまう。

    相模「ウチ……と……っ……! と……っ……友達になってください!!」

    それは相模が変わろうとした事、そして変わり始めた事の現れであった。

    558 :

    八幡「ああ、いいぞ」

    相模「本当に!?」

    八幡「ああ」

    相模「はぁ……よかったぁ……」ドサッ

    相模は全身の力が抜けたのか、地面に尻餅をついた。

    相模「ありがとね、比企谷くん」

    八幡「別に……これくらい大した事じゃねぇし……」

    559 = 519 :

     

    560 = 553 :

    私怨

    561 = 15 :

    すいません、ちょっと休憩してました。
    今日中に終わりそうです。



    こうして相模の説得に成功し、さらに初めての友達を得て、俺は帰宅した。ふぇぇ、疲れたよぉ。

    自分の部屋に入り、とりあえずそのままベッドにぶっ倒れる。

    ボスッと気持ちいい音がする。柔らかい。もう今日は寝たいが、やらなきゃならない事がまだ残っている。

    ゴーインゴーインアロンウェーイ

    おや、電話か。一日に二回も着信とかもう大地震が起こるレベルだろ、これ。

    ピッ

    八幡「もしもし」

    結衣『あっヒッキー? あのね、さがみん無事見つかったって!』

    八幡「おーそうか、よかったな」

    結衣『うわーヒッキーすごい他人事みたいに』

    八幡「実際他人だしな」

    結衣『うー……。まあそういう事だから、もう心配しなくても大丈夫だよ!』

    八幡「おう、連絡どうも」

    結衣『じゃあまたね!』

    ピッ

    562 = 532 :

     

    563 = 15 :

    八幡「……あんな事言っちまった以上、俺もこれ以上逃げてるわけにはいかねーよな」ゴロゴロ

    八幡「よっと……!」スッ



    カタッカタカタ

    八幡「…………」カチッカチッ

    八幡「……やっぱ……そうか」

    564 = 553 :

    紫煙

    565 = 15 :

    学校での始業式が終わり、その後のSHRが終わるとすぐに俺は総武高に向かった。

    見慣れた扉を開くと、そこには初めて出会った時と同じように雪ノ下雪乃が、部室の中にいた。

    雪乃「あら、来たのね。別にわざわざ校外から来なくてもよかったのだけれど」

    八幡「悪かったな。来ちまったよ」

    とりあえず雪ノ下の席から一番遠い椅子に座った。

    566 = 553 :

    567 = 15 :

    雪乃「……相模さん、家に帰ってきたみたいね」

    八幡「そうだな」

    雪乃「何をしたの?」

    八幡「……別に、何もしてねぇよ」

    雪乃「私の目を誤魔化せると思っているの?」

    そう言われて彼女の目を見る。……こえぇよ。あと、怖い。

    569 = 532 :

     

    570 = 15 :

    八幡「本当に何もしてねぇって。何でそんなにしつこいんだよ。俺は相模とまだ二度しか会ってねぇし」

    雪乃「二度……?」

    あ、やべ。また墓穴掘った。

    雪乃「やはり昨日会ったんじゃないの。それで、比企谷くんはまた変な事を言ったのね。自首しなさい。今ならまだ間に合うわよ」

    八幡「自首してる時点でもう手遅れだと思うんですが」

    雪乃「そうかしら?」

    八幡「そうだろ」

    571 :

    しえん

    572 = 15 :

    ああ、また話を引き伸ばしている。本当はもう話し始めなければならないのに。いつまで逃げているつもりなんだろうか。

    八幡「……由比ヶ浜は?」

    雪乃「少し遅れるそうよ。そうメールが来たから」

    はいはい、仲良いアピールですか。もう慣れましたよ、そんなのには。

    雪乃「で、相模さんには何て言ったの?」

    八幡「……まあ頑張れとかそんな感じだ」

    嘘はついてない、嘘は。判定はグレーだが。

    573 = 553 :

    574 :

    むい

    575 = 15 :

    雪乃「……そう」

    あれ? これだけで納得しちゃうの? この十数時間の間に何があったの?

    などと言う冗談は置いといて。

    八幡「雪ノ下、大事な話がある」

    俺はそう切り込んだ。すると、雪ノ下はそれまで読んでいた本を閉じて、真っ直ぐ俺を見た。

    流石、校内一の美少女と言われるだけある。その透き通った瞳は吸いこまれてしまいそうだと錯覚してしまう程に、美しかった。

    576 :

    しえん

    577 = 15 :

    八幡「すぅーーーはぁーーーー」

    一度、深呼吸。

    それでも早まる一方の心臓の鼓動。

    おかしいな、運動なんかしてないのに。

    まあいいか。

    八幡「雪ノ下」

    雪乃「何かしら?」

    八幡「俺はこれから真面目な質問をする。だから真面目に答えてくれ」

    雪乃「……わかったわ」

    もう一度、深呼吸。

    そしてもう一度吸って、俺は声を振り絞るように出した。















    八幡「この世界は、俺の夢なのか?」
















    579 = 15 :




    世界が止まった。



    音が消えた。



    色も、何もかも、感覚というものが全てなくなってしまった。



    ああ、なにも見えない。なにも聞こえない。



    なにもかもが、真っ白だ。




    581 = 15 :

    雪乃「…………」

    言い終わると、雪ノ下は目を見開き、口を少し開いてただ俺を見つめていた。

    八幡「…………」

    俺も何も言わない。いや、何も言えないのだ。あまりの緊張で喉が乾きすぎて、声がうまく出せない。

    お互い何も言えないまま、ただ時間だけが過ぎていった。

    そして、その無言の時間のせいでわかってしまった。

    俺の言った事は、本当なのだと。

    583 = 15 :

    雪乃「……いつから、気づいていたの?」

    雪ノ下が声を出したのが、俺が聞いてからどれくらい経った時なのか、わからなかった。

    実は三十秒くらいしか経ってなかったのがしれないし、もしかしたら、二十分以上黙ったままだったのかもしれない。

    そんな事、わからないし、どうでもいい。

    八幡「……結構最初の方から疑ってはいた。所々おかしいところはあったしな」

    雪乃「……例えば?」

    584 = 571 :

    しえん

    586 = 15 :

    八幡「今思えば、最初からおかしかった。最初に話しかけた時、俺はあまりにも怪しかった。もしお前が本当に初対面であったなら、あんな風に会話なんてしなかったろう。すぐに通報されるかボコボコにされるかのどっちかだったと思う」

    雪乃「…………」

    八幡「由比ヶ浜に関してもだ。初めて会って数度会話してそれでもうあだ名をつけようなんて、早すぎる。これが普通の男であるならまだ納得できただろう」

    八幡「しかしお前が由比ヶ浜に俺を紹介した時、何て言ったか覚えているか? ストーカーって言ったんだぞ? 親友のストーカーかもしれない人間にあだ名をつけようなんて、いくら由比ヶ浜でもしないと思っていた」

    八幡「なぁ……」

    八幡「お前たちも、本当は全部覚えてるんだろ……?」

    雪乃「…………」

    588 = 15 :

    雪乃「……ええ、覚えているわ。少なくとも、あのクリスマス会のところまでは」

    八幡「ならなんで……? そもそも何なんだよ、これは!?」

    雪乃「質問は一つずつにしなさい、比企谷くん。……なら後者の方から答えようかしら」

    雪ノ下髪を一度整えてから、話し始めた。

    雪乃「……あなたは、現実世界で『俺ガイル』にハマった。そして十二月二十四日に、ボリューム9をした。ここまでは合ってるわね?」

    八幡「あ、ああ……」

    やはり……全部知っていたのか……。

    雪乃「でもね、ボリューム9が終わった時に予想外の事が起こったの」

    雪乃「……脳にいくら信号を送っても、あなたは、目覚めなかった」

    590 = 15 :

    雪乃「あなたは、『俺ガイル』内の世界を望み、そして現実を拒否しすぎて、現実で目覚めなくなってしまった」

    雪乃「いえ、目覚めるのを拒絶した、と言うのが正しいのかしらね」

    八幡「…………」

    雪乃「だから、あなたを目覚めさせるためのプログラムが作動した」

    八幡「それが……この世界ってわけか……」

    雪乃「そうよ」

    592 = 15 :

    八幡「だから……この世界には、俺と同じ状態の、相模がいたのか」

    雪乃「ええ、そして彼女を説得するには、まずあなた自身が現実を肯定できるように、そして『嘘』を否定できるようにならなくてはならない」

    八幡「…………」

    雪乃「この世界はあなたのためだけに存在しているの」

    雪乃「あなたの心が……現実を認められるくらい、強くなるために」


    594 = 15 :

    雪乃「私からも一つ質問、いいかしら?」

    八幡「あ、ああ。なんだ?」

    雪乃「どうして、ここが夢だと気づいたの? さっきの理由だけでは不十分なように感じられるのだけれど」

    八幡「ああ……それは、日付けだ」

    雪乃「日付け?」

    八幡「明確な狂いは日付けだった。まず、俺が現実にいた時、つまり『俺ガイル』の9をやる前、12月22日は月曜日だったんだ」

    八幡「つまり、12月24日は『水曜日』になるはずだろう? でも、ここでは12月24日は『木曜日』になっていたんだ」



    参照

    >>274
    >>280
    >>417

    596 = 15 :

    雪乃「……なるほどね。確かに一日の差とは言え、そんなズレは現実では絶対にあり得ないものね」

    八幡「あの時の俺は『俺ガイル』の最新話を死ぬほど待ってたからな。日にちも全くズレなしで覚えてた。まあ一番の理由はそれだな」

    雪乃「……そう。……由比ヶ浜さん、もう入って来ていいわよ」

    ガララ

    結衣「や……やっはろー……なんて……」

    えへへと気まずそうに笑う。

    八幡「由比ヶ浜……お前が嘘をつけるなんてな」

    結衣「バ……バカにすんなし!」

    八幡「いや、由比ヶ浜にしてはうまかったと思うぞ?」

    結衣「それ喜んでいいのか微妙だね……」

    598 = 568 :

    Oh……

    599 = 15 :

    八幡「……俺は、目覚めなきゃいけないんだよな?」

    雪乃「そうよ、じゃなければこれまでしてきた事の意味がなくなるでしょう?」

    八幡「……また、会えるよな?」

    雪乃「…………」

    結衣「…………」

    二人とも申し訳なさそうに目をそらした。由比ヶ浜に至っては既に涙ぐんでいた

    八幡「な……何でだよ……? また続きが出たらやればいいじゃないか!」

    結衣「……ダメなんだ、ヒッキー」


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