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    元スレ八幡「やはり俺の三学期はまちがっている」

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    1 :

     自分の中の正義と社会の正義、どちらに従うべきかという話がある。
    前者に従えば他人に迷惑をかけてしまうかもしれないし、周りから
    白い目で見られる可能性が高い。
    よって、多くの人は後者に従う。理不尽だと思うことに対しても、
    それが社会の常識だと言われれば納得してしまう、いや、納得するふりをする。
    自分の中の正義を押し殺して、他人に合わせる。もう自分の正義など持っていないという
    人もいるかもしれない。
    皆他人に対して、自分に対して嘘をつきながら生きていく。
    中には自分の正義を貫いて「偉人」とよばれるまでになった人もいるが、そんなのはごくまれに起こる例外だ。
    すなわち、社会の中で生きるということは、嘘の中に生きるということと同義なのである。

    しかし、これがぼっちの場合になるとすべてが逆転する。
    自分の中の正義に従ったってそもそも他人に関わらないので迷惑もかけない。
    周囲に白い目で見られるどころか眼中に入りさえもしない。何それ悲しい。
    とにかく、ぼっちというのは、自分の正義に従って生きることのできる、
    自由かつ誠実な生き物で、その生き方は偉人と呼ばれる人たちのそれと同じだ。
    つまり、ぼっち=偉人という方程式ができあがってしまうのだ。
    そうとなると、ぼっちのなかのぼっちたる俺は、偉人の中の偉人ということになる。
    なんだ、おれ最強じゃん。こんな100年に1人の逸材の俺には、過度の罵倒や、
    暴力行使をやめるべきである。やめてくれないかなぁ。


    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1407042570

    2 = 1 :

    3学期が始まって2週間が経過した。

    テレビではどこかの町の積雪量が過去最高などと騒いだりしているが、
    教室のなかは暖房が効いていて、ぽかぽかお昼寝日和といったところだ。

    今の授業科目は数学なので、寝たふりをしながらまたどうでもいい考え事をしていたが、
    暖かさに負けてそのまま寝てしまった。

    しばらく寝ていると、「・・ちまん、八幡!」と俺を呼ぶ声がする。

    俺のことを下の名前で呼ぶやつは俺の知る限りでは2人しかいない。

    ルミルミと愛しの戸塚だけである。(材木座?ナニソレハチマンヨクワカンナイ)

    となれば教室にいるのは戸塚だけなので、必然的にこの声の主は戸塚ということになる。

    しかし、それにしては声が高い。戸塚も男子の割にはこえが高いが、そのさらに一段上という感じがする。
    疑問に思いながらも顔を上げてみると、そこには由比ヶ浜がいた。

    「ヒッキーやっと起きた!もう、何回も呼んでるんだからさっさと起きてよね!」

    「おう。悪い、それより戸塚に呼ばれた気がしたんだが。」

    「へ?、さいちゃんならいま教室にはいないけど。お手洗いじゃないかな」

    「……もしやとは思うが、さっき俺の名前を呼んだのはお前か?」

    「う、うん……」

    言いながら、頬を赤く染める由比ヶ浜。おい、自分からやったんならそんなに恥ずかしがるなよ。こっちまで恥ずかしくなってくるだろうが。

    「男の名前を気安く呼ぶなよ、このビッチが!」

    「な!ビッチってなんだし!だってヒッキーって呼んでもたまに反応してくれないんだもん!さいちゃんが名前呼んだら絶対反応するからそれの真似しただけだし…」

    最初は威勢よくつっこんだ由比ヶ浜であるが、だんだんと尻すぼみになっていく。
    どうでもいいけどつっこみはもっと穏やかにしてくれませんかね。さっきからふたつの夢の塊がたゆんたゆんゆれてるんですが…

    3 :

    名前の前に#いれるといいよ

    4 = 1 :

    「とにかく、これからは、下の名前で呼ぶのはやめろ。さもないとまたビッチよばわりするぞ。」

    「だからビッチ言うなし!…ヒッキーはさ、あたしに名前で呼ばれるの、いや?」

    由比ヶ浜が目を若干潤ませながら聞いてくる。やめろその目、おれのわずかにある良心が痛んじゃうだろうが。

    「ああ、戸塚専用だからな。戸塚以外が呼ぶことは許さん。」

    「どんだけさいちゃんのこと好きなんだし…じゃあヒッキーって呼んでも絶対反応してよね!」

    「…善処する」

    「絶対だからね!」

    そう言って足早に自分の席に戻っていく。

    こんな風に、由比ヶ浜と長時間教室の中で話すというのは、3学期に入ってからはもう珍しくなくなってしまった。

    最初に話しかけてきたときには、向こうも緊張していたのか、話す言葉もぎこちなかったが、
    今では部室にいるときと同じような感覚で話している。

    俺は、最初の3日ぐらいは由比ヶ浜に俺と教室で話すリスクをしつこく説明していたのだが、由比ヶ浜は気にしないの1点張りだった。なのでもう俺も諦めてしまった。

    いや、本当は諦めるべきではないのだろうが、今のこの状況を心地いいと感じてしまっている以上、やる気もこれ以上起きなかった。

    ま、いざとなったら俺が由比ヶ浜を脅していることにすればいいし、由比ヶ浜も三浦がトイレに行ったり寝てたり葉山と話し込んでいるときだけ来ているようだし、

    このままとりあえずは現状維持ということで様子を見ている。

    幸い三浦達は俺と由比ヶ浜がはなすことについては反対していないようだ。

    俺はあれこれ考えながら次の授業の準備をする。

    次の授業は平塚先生の現代文だ。そのことをわかってて由比ヶ浜も起こしに来てくれたのだろう。


    そして、今日の昼休み、考えもしなかった出来事が起きた。

    5 = 1 :

    ≫3さんありがとうございます。

    一番最初の書き込みで改行し忘れました。読みづらくてすいません。
    今日はこれで終わりです

    6 :

    期待

    もし鳥が合ってたら全く関係ないものに変えた方が良いよ

    7 :

    鳥の意味ねえなこれじゃ

    8 :

    安価のやり方も素で知らんのか

    9 :

    読みにくい

    11 :

    >>1よ、もう少しいろいろと見たり調べてから書いたほうがいいぞ

    12 :

    もしもしうっせぇな

    13 = 1 :

    1です。なにぶんネット初心者なもので、トリップや安価のつけ方については申し訳ないです
    トリップは変えておきました。
    今は書き溜めているので。それが終わり次第投下します

    16 :

    >>13
    外野の野次は無視しとけよ
    俺ガイルSSは面白い作品ほど野次が増えるから

    17 :

    昼休み、流石に冬場にベストプレイスでの食事は嫌だったので、
    いやいやながらも教室で飯を食うことにしていた。

    周りの騒音はイヤホンから流れる音楽でシャットアウト。
    そして、少し俯きながらあらかじめ買っておいたパンとMAXコーヒーを
    貪る。これで完成、ぼっち流昼飯の型。なんじゃそら。

    そうしているといきなりイヤホンが片耳抜き取られた。何事かと思い顔をあげると、
    泣き黒子がトレードマークの見知った女子がいた。

    名前はたしか…川なんとか…川なんとかさーちゃんみたいな感じだったと思う。

    「ねぇちょっと…隣いい?」
    「は?」
    「隣で一緒に食べていいかって聞いてんの」
    「いや何でだよ」

    マジで意味が分からなかった。というか女子から学校で昼飯一緒に食べていいかとか
    聞かれたの俺史上初めてなんですけど。

    しかし、ここで勘違いする俺ではない。並のぼっちならば両手を上げて喜ぶような
    シチュエーションだが、俺はここで冷静に理由を聞き出す。

    「理由言ったら一緒に食べてくれんの?」
    「まぁ、内容によるな」

    まともな理由なら食ってやらんこともない。だから一緒に食べるとか何回も言うな。
    恥ずかしいだろうが。

    「なんか一人で食べてると姫菜のやつが誘ってくんだよね、昼飯。」
    「いいことじゃねーか。お前文化祭のとき海老名さんと仲良くなったんじゃなかったのかよ。」
    「うん、それは全然構わないっていうか嬉しいんだけど、姫菜と一緒に食うと三浦たちと
    一緒に食うことになるんだよね。それにちょっと慣れなくて。」

    「で、その海老名さんよけが何で俺なんだよ。」
    「そ、それは…あんたが一番気ぃ遣わなくて済むし、楽だからだよ。」

    18 = 1 :

    なるほど、まぁ俺相手とか気遣いする価値もないもんな。

    「はぁ…まぁ勝手にしていいぞ、さーちゃん。」

    ちょっと名前が思い出せないので、からかい半分にこいつの妹が使っていた
    愛称で呼んでやる。

    すると川崎は怒ったのか顔を真っ赤にして睨みつけてくる。
    ふぇぇ…怖いよぅ。

    「さ・・さ・・馬鹿じゃないの?…普通に呼んで」
    「あー悪い。上のなまえは…川…川…山…」
    「川崎だっつの。いい加減覚えろ。」

    ああ、そうだ川崎だった。ていうか俺さっき思い出してたじゃん。
    というか覚えてたけど。

    「ていうか、ほんとに隣いいの?」
    「むしろ俺がいいの?って感じだわ。女子と二人で昼飯なんて長年夢見てきたからな。
    嬉しすぎてお外走ってきたいぐらいだわ。」
    「そ、そう…」

    川崎は若干引いていた。

    そのまま特に会話も無いまま食事の時間が過ぎる。
    …なんていうか、こいつとの沈黙も心地いいものがあるな。
    言葉などなくても、場が持つというか…雪ノ下との沈黙に似たものがある。

    と、ここで川崎が席を立とうとする、俺のほうはもう食い終わっていたので、
    二人のランチタイムは終了だ。

    「今日はありがとね。」
    「気にすんな。俺も悪い気分じゃなかったし。」
    「その… 明日からも、いい?」
    「構わねえよ。」

    19 = 1 :


    「うん。…本当にありがとね、色々。」
    「だから構わねえって言ってるだろ。」

    「この際だから言っとくけど、あたし、ほんとうにあんたには感謝してんの。
    あんたがいなかったら、あたしの家族、めちゃくちゃになってたかもしれないし。」
    「いや、その礼は前にもらったから今更気にすることじゃねーよ。
    俺の方こそお前には2回助けてもらってるんだ。むしろ俺のほうが感謝してる。1回分な。」

    「へぇ、あんたが人に感謝するとか、珍しいこともあるもんだね。」
    「あぁ、俺も誰かに感謝するなんてまっぴらごめんだ。…だから、1回限りならお前の頼み事ただで聞いてやる。できる範囲でな。」
    「じゃあ、早速頼んでいい?」
    「おう、べつにいいぞ。お前に感謝する時間はなるべく減らしたいからな。早いほうがいい。」
    「じゃ、じゃあ今週の土曜日家に来て。」
    「は、はああああ!?」

    びっくりした。超びっくりした。多分今年に入って一番びっくりした。
    今年まだ1ヶ月もたってないけど。

    しかしこんなこと言われて勘違いしない男子多分俺しかいないよ?
    ていうかもしかして勘違いじゃない?いや、クールになれ比企谷八幡。
    こいつは今頼み事を俺にしてるんだ。なにか用事があってそれを手伝うとか
    そんな感じだろう。そうじゃなかったらなんかもういろいろとやばい。

    「違う!違うから!…ただけーちゃ、妹の京華がまたあんたに会って遊びたいって!」
    「分かった、分かったから。その妹と遊びにつきあえばいいんだろ。」
    「そ、そう!別にあたしが来てほしいとかそんなんじゃ絶対ないから!」

    と、川崎は真っ赤になってまくし立ててくる。なんかちょっとかわいいとか思ってしまった。
    でも絶対とか言われると八幡ちょっと傷ついちゃう。

    20 = 1 :

    「じゃ。じゃあ、携帯出して。連絡先交換しとかないとだめでしょ。」
    「お、おう…ほい、これ携帯」

    俺はいまだに顔を真っ赤にしている川崎に携帯を渡した
    「そこに入ってる連絡先をかって登録しといてくれ」
    「あんた、雑すぎでしょ。普通他人に携帯ごと渡せないよ。」
    「べつに見られて困るようなもんないからな。」
    「ふぅん、はい、そっちにも登録しといたから。」
    「おう、サンキュ。」
    「じゃ、また明日の昼休み。」
    「ああ」

    そしてようやく独りに戻る。

    正直むちゃくちゃ恥ずかしかった。

    クラスのほとんどはぼっち同士の昼飯など気にも留めていなかったが、
    葉山、海老名さんあたりからの視線をビンビン感じていた。
    おい、お前らなんでそんな見てんだよ。俺は見られて喜ぶ変態じゃねえぞ。

    海老名さんに関しては普通に雪ノ下と飯食いに行ってる由比ヶ浜にチクリそうだ。
    べつにそれがどうしたと言うべき事なのだが、由比ヶ浜にばれるといろいろとめんどくさそうだということを直感が俺に告げている。はぁ、めんどくせぇ。

    21 = 1 :

    そして翌日の放課後、俺は今部室でいつものように読書をしている。

    昨日から川崎と昼飯を食っていることについて由比ヶ浜にいろいろ聞かれると
    思っていたが、いっこうにそのことについての話題はない。
    どうやら海老名さんは報告をしていないらしい。海老名さんマジ感謝です。

    部活も残り僅かになろうかというとき、突如部室の扉が開かれた。

    「せんぱ~い」

    来やがった。

    「帰れ、今すぐ帰れ。生徒会でなんとかできないことはここでも何ともならん。」
    「ちょ、まだなんにも言ってないじゃないですかー。」

    そう言って一色は俺の服の袖を軽く摘む。あざといやっちゃなー。

    「一色さん、誠に遺憾ながら、その男の言うとおり、奉仕部は生徒会の委任機関ではないの。
    クリスマスイベントのあれは例外なのよ。」

    「そ、そうだよいろはちゃん!だからヒッキーの袖から手、放して!」

    雪ノ下サン?援護射撃するならしっかりやってくれません?弾こっちにもあたってるから。
    むしろこっちにしか当たってないから。

    あとガハマさん、そうだよとか言ってるけど雪ノ下の言ってること半分も理解してないよね?

    「もー、違いますよ。今日は生徒会長としてではなく、高校1年生一色いろはとして相談があるんです。」

    顔をぷくーっと膨らませながら答える一色。ほんとあざとさしか感じない。

    「ということで先輩借りてっていいですか?」

    どういうことだおい。俺は物じゃねえぞ
    物より存在感無い自信あるけど。

    「一色さん、あなた奉仕部に相談があるのよね?ならその備品だけを貸すわけにはいかないわ。」
    「だから、奉仕部に依頼してるんですよ、先輩を貸してくださいって。」

    「いや、そもそも俺嫌なんだけど。あとちょっとで帰宅できるのにわざわざ用事増やすとかありえないし。」
    すると一色は俺だけに聞こえるような声で呟いた。

    「はぁ、葉山先輩とのことなんだけどなぁ。先輩責任取ってくれるって言ってたのに。」
    「いや言ってねえよ。」

    22 = 1 :

    「今日お話しするために生徒会も頑張って早く終わらせたのに…。」
    「それ頼りにしてるとか言って男子に仕事押し付けただけだろ。」

    「先輩にそう言われると思って自分で仕事やってきたのに…。」
    「なん…だと」

    驚いた。てっきりまた男どもを手玉にとってたと思ってたのに。

    まぁこの発言自体が嘘の可能性もあるがそんなすぐばれるような嘘はつかないだろう。

    しかし、一色がそこまでやるということはよほど本気なのだろう。
    それに一色のこの状況は俺が原因らしいし、断るのは少し気が引ける。

    「雪ノ下、今日はもう部活終わりにして俺がこいつの相談を個人的に受けるってのはどうだ?」

    「…あなたが良いというのならそうしましょう。今日の活動は終わりにします。」
    雪ノ下は不承不承といった感じで告げる。

    「ぅぅぅう」
    由比ヶ浜はなにか悔しそうに唸っている。何?お前も一色から相談うけたいの?



    以前の俺なら、どんなことも一人で抱え込もうとしていただろう。
    いや、今の俺でもそれは変わらない。「誰か」に頼ることはいままでも、これからも
    ないはずだ。

    だが、「こいつら」には頼ってもいいんだと思っている自分がいる。
    こいつらからまぁ、なんというか、信頼みたいなもんをされていることは
    俺ももうわかっている。だからこれから言うことは、そんな二人への、
    せめてもの、そして身勝手な返答だ。

    「まぁ個人的な悩みらしいからそんな無理は言われないはずだ。
    …それに無理そうだったらお前らと一緒に解決することも考えとく。」

    「比企谷くん…」

    「ヒッキー…うん!遠慮せずに頼って!むしろ一人で行けそうでもじゃんじゃん頼って!」

    「…考えとく。」
    ほんと、俺も人間強度が下がったもんだ。

    「おい一色、もう落ち込んだふりするのやめろ。うざいから。」

    「あは、ばれてました?じゃあとりあえず生徒会室まで行きましょう!」

    俺は二人に軽く別れの挨拶をすると、一色に引きずられながら生徒会室へ向かった。

    23 = 1 :

    今日の投下は終わりです。
    批判についてですが、そういうこといわれるのも楽しみの一つだとおもっているので、
    少なくともそれで気を悪くしてエタる(?)心配はしないでください。
    まぁ自分のss最後まで読みたい人がいるのかは疑問ではありますが、所詮は自己満足ですので。

    24 :

    いいね

    25 :

    乙、続き待ってるよ

    27 :

    荒し嫌い

    31 = 27 :

    あぼ~んだ

    34 :

    乙、楽しみにしてるから!

    36 :

    おつおつ!

    37 :

    ということで俺は今一色と二人で生徒会室にいる。

    別に学校に関する用事という訳でもないらしいのに、暖房はガンガンに効かせまくりである。
    職権濫用しまくりじゃねーか。俺としてもそっちのほうがいいから何も言わないけど。

    「で、なんだ話って。」
    「まぁまぁそんなに急がなくってもいいじゃないですか。ゆっくりしていってくださいよう。」
    「いや、俺はさっさと家に帰りたいんだ。さっさとしてくれ。」
    「ちぇー。」

    といいながらも二人分の茶を用意する一色。おい、人の話聞いてた?
    長居させる気満々じゃねーか。

    「で、話っていうのはですね…実は私、葉山先輩と今度の日曜日デートすることになったんですよ!」

    いや、なにが「実は」なのか全くわからん。

    「よかったじゃねーか。ていうか何? “私の恋愛うまくいってますよ”自慢を俺にしたいだけ?恋愛事上手く行ったことの無い俺へのあてつけかよ。」

    告白しても振られた思い出しかないし。やっと本気で好きになれそうだと思った子は男だし。ほんと碌な思いしてねーな。

    「違いますよー。私、そこで絶対に葉山先輩を落としたいいんです!
    でも、具体的な案が中々出てこなくて…。そこで先輩にアドバイスをいただけたらなーって。」

    「アホか。俺は他人の恋を終わらせるための助言ならできるが、成就させる助言なんてできないぞ。そんなもん知ってたら真っ先に俺が実践するわ。」

    38 = 1 :

    「えー、そんなことないと思いますけどねー。先輩結構あざといし。」

    は?俺のどこら辺にあざとさがあるってんだ。あざとい俺とか気持ち悪すぎんだろ。
    材木座に匹敵するわ。

    「まぁとにかく、何かアドバイスを下さい。参考になるかもしれないじゃないですか。」
    一色が急かしてくるので、こたえてやることにする。まぁ俺としてもさっさと帰りたいしな。

    「前にも言ったと思うが、あいつの前ではあんまり猫被んない方がいいと思うぞ。
    俺とか葉山みたいにある程度地頭がいいやつらにはそっちの方がいい感じだ。」

    「っ…!そ、そうですかね~。」

    「ああ、それに、周りには猫被ってんのに自分にだけ素を見せてくれるっていうのも、男子的にはポイント高い。」
    俺は葉山の趣味趣向などはこれっぽっちも知らないが、猫被り続けた今まででだめだったんだ。やり方を変えてみるのもありだろう。

    「自分にだけ素を見せてくれる…は!先輩口説いてるんですか!先輩が私が素を見せてることに対して嬉しいと思ってくれてるのは私も普通に嬉しいですけど付き合うとかはまだちょっと無理ですごめんなさい。」
    「俺は何回お前にふられりゃいいんだよ…」
    「あは、あははー…。」

    一色が何故か気まずそうに笑う。おい、お前が勝手にふったんだろうが。

    39 = 1 :

    「で、でもー、葉山先輩に素を見せるっていきなり出来そうにはないんですよねー。
    今までずっといい子演じてきましたし。」

    「まぁそこは頑張るしかないだろ。とにかく、俺はできる限りの助言はした。
    帰らせてもらうぞ。」

    「ちょっとまってくださいよー!…あ、そうだ!先輩、デートについてきてくださいよ!」
    「はぁ!?」

    いやいやなんでそうなる?。まったく、わけがわからないよ。

    「いやー先輩が隣に居てくれればー、私、葉山先輩の前でも素でいれそうなんですよねー。」

    「まて、意味が分からん。何度でも言うぞ。意味が分からん。」

    「だからー、先輩が居たら、私もリラックス出来て先輩に接する態度で葉山先輩とも話せるとおもうんですよねー。」

    なるほど、とは思わない。しかしこいつなりに考えた結果なのだろう。だが…

    「いや、そうだとしても、日曜は予定があるんだ。悪いな。」
    「先輩に予定?何ですか言ってください。」
    おい、なんでちょっと早口になってんの?おこなの?

    「プリキュア見て仮面ライダー見て寝る。」
    「それ予定ないっていうんですよ!」

    「いやでも土曜日にマジで予定あんだよ。お前の方にまで行ったら週末休めなくなるだろうが。そんなん考えられへん。」
    「なんで最後関西弁なんですか…。どうしてもだめですか?」

    上目遣いで言ってくる一色。くそ、その目でこられると俺弱いんだよ。絶対こいつわざとやってるんだろーけど。
    それに、ある程度は責任とると決めた以上、これぐらいの事はしなきゃならんのだろう。まったく、嫌になっちゃうね。

    しかし行きたくないものは行きたくないので、最後の抵抗を試みる

    40 = 1 :

    「そもそも葉山の奴はどうなんだ。デートで他の男と一緒なんて嫌なもんじゃないのか?」
    「あ、それは大丈夫です。葉山先輩心広いんで。」
    「あ、そう…」

    抵抗なんてさせてもらえませんでしたとさ。めでたしめでたし。いやなんもめでたくねーよ。

    「…それなら仕方ない。付き合ってやるよ。」

    「ほんとですか!先輩やっりー!」
    「うぜえ…」
    ほんとにうぜえ…

    「…でも、やっぱり先輩ってあざといですね。」
    「お前はさっきから何を言ってるんだ?」
    やめろ、俺を材木座にするな。頼むから。

    「いやー先輩って普段は自分で自分のこと最低だとか嘘つきだって言ってるじゃないですか。それなのに今だって私の頼みを最終的には引き受けてくれましたよね。
    土曜日に入ってる予定を日曜日にあるって言えば断ることもできたのに、こういうときには正直になるなんて…ほんとに先輩はずるいですね。」

    そう言って一色はにこっと微笑む。それは完全に素の笑顔のように思えた。
    やめろ、そういう顔すんなよ。惚れちゃいそうになるだろうが。

    「…ちげーよ。そんなんじゃない。いま何でその嘘が思いつかなかったのかと後悔してるとこだ。」
    「ふふ、嘘ばっかり。では先輩今日はありがとうございました。また日曜日に!」

    そう言って一色はそそくさと荷物を持ち生徒会を出ていく。あいつ、俺に後片付け全部任せる気だな…、くそ。

    41 = 1 :

    しかし。改めて考えてみると、葉山が一色のデートの誘いを断らなかったのは正直意外ではある。

    相手は一度ふった女だ。誰にでも優しく、誰にも踏み込ませない葉山が、そんな相手とデートに行くだろうか。そんな希望を持たせるような事などするだろうか。

    あいつは相手に対して絶望しか用意できないというのに。

    いや、もしかしたらこんかいのデートはその希望を完全に失くさせるためのものかもしれない。一色に女としての興味を全く示さないことによって、相手にわからせることが目的かもしれない。

    だとしたら、それを一色に伝えて早々にあきらめさせたほうがいいかもしれないと思ったが、すぐにその考えは頭から消えた。

    あいつはあんなにも、前に進もうとしている。大きな挫折を味わっても必死で前に歩いている。


    だったらその足をとめるようなことはするべきではない。


    例えその先にまっているのがバッドエンドだったとしても、いま諦めさせるよりは後悔は小さくて済むだろう。


    そしてあいつが挫折の雨に打たれる結末を迎えてしまったなら、傘代わりになるくらいのことはしてやろう。

    それが、あいつをそういう結末に向かわせた俺の果たすべき責任なのだから。

    42 = 1 :

    今日はこれで終わり

    43 :

    いろはす可愛い

    45 :

    土曜の朝、少し早く起きてしまった俺は、特にすることもないので撮り溜めてあったアニメを見て時間を潰していた。川崎とは昨日連絡を交わしており、12時にマックで集合となっている。

    小町は朝早くから友達とどっかに遊んで行ってしまった。なので俺は今、一人で家にいるわけだが、一人でいる家ってなんかいいよね。
    こうやってリビングでアニメ見てても誰からも文句言われないし。
    はぁー、ほんとにるるもちゃんはかあいいなー。

    るるもちゃんに邪な想いをはせていると、もうそろそろ出掛けなければいけない時間になった。
    最後にあいまいみーを1本だけ見て、準備を終わらせそそくさと家を飛び出す。

    マックには15分前ぐらいに着いた。早く来過ぎたかと思ったが、もうすでに川崎が到着していた。

    「よう」

    短く声をかけると、川崎はこちらに気づいてなかったらしく、

    「ひゃう!」

    と、可愛らしい声で驚いたように返事をした。

    「おい、そんなに驚かなくてもいいだろ」
    「いや、だってびっくりしたから・・・後ろから声掛けないでよ」

    「悪い、でもそろそろ集合時間だし来ること分かってただろ。」
    「・・・こんなに早く来てくれるとは思わなかったし。」
    「いや、早いっていうならお前の方が早いじゃねーか。なんでこんな早く来てんだよ。」
    「べ、別になんだっていいでしょ。それより女子待たせといてなんの言葉もないの?」

    「別に遅れたわけじゃねーしな。それで謝るとかありえねー。自分が何か悪いことしてもなるべく謝りたくねーってのに。」
    「まぁあんたはそういうやつだしね。」

    ばっさりといつも通りに言い捨てる川崎。
    しかし、今日の川崎の身に纏う雰囲気はいつもとは違う。

    46 = 1 :

    服装は清楚な感じの白いワンピースで、ポニーテールの結び目もいつもより低めで留められている。
    俺の持っていた川崎のイメージ=黒のショーツだったので、いろいろと覆された気分だ。

    俺の川崎へのイメージ酷過ぎだろ。

    「にしても今日はずいぶんと感じが違うな。」
    「・・・変?」

    「いや。ただ一瞬お前のねーちゃんかなんかだと思っちまったってだけだ。」

    「・・・それってどういうこと?」

    「ん?いや言葉通りの・・」
    「ちゃんと言って」

    「・・・大人っぽくてよろしいと思いまする。」
    「宜しい。ったく、最初からそう言えばいいのに。」

    「そんな爽やかイケメンみたいなことさらっとはできねーよ。俺に何求めてんだ。」
    「・・それもそーだね。」

    そう言って川崎が歩き出したので、その後ろを付いていくように俺も歩き出す。
    その間は全くの無言であるが、当然のことながら気まずさは感じない。

    ただぼーっと歩いていると、川崎が不意に立ち止まる。するとある家の玄関の中へ入っていった。どうやらここが川崎ん家らしい。

    「上がって。」
    「おじゃまします。」
    「そう言えばあんた、お昼食べてないでしょうね?」
    「ああ、そう言われたからな、食べてきてないぞ。」

    「…そう。ならリビングで待ってて。いまご飯作ってくるから。」
    「あいよ。」

    そう言ってリビングへ向かうと、そこには川崎の妹が居た。

    47 = 1 :

    「あ!はーちゃんだー!」
    俺の姿を見つけるやいなや、けーちゃんは俺の胸に飛び込んでくる。
    え?なんでこんなになつかれてんの?ハチマンヨクワカンナイ。

    「おう、元気にしてたか?」
    「うん!」
    「そうかそうかー」

    そう言って頭を撫でてやる。ちなみにこの光景が外で繰り広げられようもんなら一発で通報物である。

    「けーちゃんもまだご飯たべてないのか?」

    「うん、まだ京華ご飯食べてない!これからさーちゃんがすっごいおいしいごはん作ってくれるんだよ。はーちゃんもたべる?」

    「おう。八幡も一緒に食べるぞ。」

    「ほんと?やったー!」

    けーちゃんはそう言って抱きしめる力を強める。
    ほんと、なんでこう小さい子供って無条件にかわいいんでしょうね?

    しばらくけーちゃんの相手をしていると、川崎が飯を持ってきた。
    どうやら昼飯はチャーハンのようだ。

    「おおー!きょうはチャーハンだ!はーちゃん、さーちゃんの作るチャーハンとってもおいしいんだよ!」

    「そうか、それは楽しみだな。」

    「まぁそんなに期待しないで食べてよ。」

    そう言う川崎の方を見ると、先ほどの私服の上にエプロンを着ている。
    なんかこう…すげー色っぽいな。いかにも出来る奥さんって感じだ。

    そんなこと恥ずかしくて言えねーが。

    48 = 1 :

    「じゃ、いただきます。」
    俺が言うと二人もそれに続く。

    「いただきます。」

    「いただきまーす!」

    そしてチャーハンを勢いよく頬張る。うむ、中々にうまい。

    「ど、どう?」

    川崎が何か心配そうに聞いてくる。どうとは料理の味のことだろう。

    「普通に旨い。最高に旨いとは言えねーのかも知れねーがこういう味の方が
    温かみがあって俺は好きだ。小町と同じランクをつけてやってもいいぞ。」

    「…このシスコン」
    「うっせ、ブラシスコン。」
    「ファザマザコンでもあるよ。私は。」
    「それもうファミコンじゃねーか!」
    もうスーパーサキサキブラザーズとか発売しちゃってもいいレベル。

    しかし、こんな冗談も言い合いながらも、川崎は顔を真っ赤にしている。
    おい、ちょっと料理褒められたぐらいでなんでそんな照れてんだよ。
    こっちまで恥ずかしくなっちゃうだろうが。

    「まぁ俺の小町びいき心がなかったら小町の王座も危なかったな。」
    ふ…やはり俺のシスコン道は何があっても揺るがないのである。シスコンマジ最強。

    「そ、それって…ま、まぁあんたが喜んでくれるならそれでよかったよ。」
    「なんかはーちゃんとさーちゃん恋人みたーい。」

    ファッ!!いきなり何言っちゃってくれてんのこの子。

    いやいや俺と川崎が恋人とか…あれ?なんか容易に想像できるぞ!?

    ぼっち気質で家族愛が強いという共通点があるから話も合うことが多いし、
    おそらく相手を身内と認めたらお互いに強い愛情注ぎそうだし。


    こんなことを思ってしまうのはこの一週間一緒に昼飯を食ってるからだろうか。

    全く、自分の中学時代からの成長してなさ具合には嫌になる。
    いや、こういう自分を諌めるために勘違いするべからずという教訓を持って過ごしてるんだ。
    感情は生まれてしまうのだから仕方ない。誰かさんに「化け物」と言われた理性で、
    それを制御するのだ

    よし、心の整理完了。

    49 = 1 :

    しかし。お隣にいるこいつはそんな余裕はなかったようで、

    「け、けーちゃん!そんなこと言わない!私がこいつとこ、恋人とかありえないから!」
    「なんで?、さーちゃん、はーちゃん嫌い?」

    「いや、きらいとかじゃなくてその」
    「やっぱりー!さーちゃんいっつもはーちゃんのいいところ京華にいってるもんね!」
    「こら!京華!それは言っちゃダメなやつでしょ!」

    え、なにそれ、聞いてないんですけど俺の今さっき稼働したばかりの理性が剥がれかかってんですけど。
    つーかなんだよ、俺のいいところって。あって2,3個だろ。いっつもってありえないだろ。

    「それ…本当なのか?」
    「うん!それで京華、あのとき会ったお兄ちゃんがそんなにかっこよくて優しいって分かったから、京華もはーちゃんのこと大好きだよ!」
    「ちょ!こら京華!」

    川崎史上おそらく最高の慌てぶりでけーちゃんを抑えようとする。

    ていうか「も」ってなんだよ「も」って。
    まるで川崎も俺の事大好きみたいじゃねーか。
    もう俺の理性は崩壊寸前である。

    「はーちゃんはさーちゃんのこと好き?」
    純粋な眼差しで聞いてくるけーちゃん。く、これじゃ誤魔化すことも叶わなそうだ。
    「あー、まぁいいんじゃないか。料理上手いし、優しいところもあるしな。将来いいお嫁さんになると思う。」

    「な、なあああああああ!」
    「だが俺の目標は専業主夫だ。おれはいい奥さんじゃなくて働いてくれる奥さんが必要なんだ。」
    「……」

    そう言って何とか茶化す。こうでも言わないとほんとに川崎ルートに入ってしまいそうだ。
    「うーん。京華難しいことよく分かんない!好きか嫌いかで言って!」

    茶化せませんでしたとさ。くそ、ちょっと恥ずかしいが思ってることを言うしかない。

    「好きか嫌いかでいえば…好き…かな?」

    「っ~~~~~!!!」

    川崎はとうとう顔から湯気が出るほどに顔を真っ赤にして顔を机に突っ伏した。

    リアルに「かぁぁぁぁぁ///////」みたいな効果音が聞こえてきそうである。
    多分俺も今そんな感じだろう。

    50 = 1 :

    「じゃあさーちゃんとはーちゃんは“かっぷる”だね!」
    「…おい川崎」

    俺はけーちゃんに聞こえないくらいの声で川崎に囁く。
    「…なに」

    川崎は突っ伏したまま応える。

    「けーちゃんの前では、もうカップルってことで通さないか?
    それの方が傷が浅くて済む気がする。」

    「分かった。」
    川崎は渋々といった感じで了承する。

    「ああ、そうだぞけーちゃん、俺たちはカップルなんだよ。」
    「そっかー!はーちゃんがお兄ちゃんとか京華嬉しいなー!」

    く、眩しい、眩しすぎる。こんないたいけな子供を騙してるなんておれはなんて・・・
    なんて…というか考えるまでもなく屑だった。そうだ。おれって屑じゃん何をいまさら
    落ち込むことがある。

    そんなことを考えてる自分に落ち込んでいると

    「とにかく、さっさとご飯食べるよ。そうじゃないと私たち別れちゃうから。」
    「えー!それはやだー。」
    「じゃあさっさと食べる。」

    そう言ってけーちゃんにご飯を食べさせる川崎。オカンスキル高いなー。


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