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    元スレ勇者「ハーレム言うなよ!絶対言うなよ!」武道家「4よっ!」

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    452 :

    追いついた・・・乙!

    453 :

    sageなよ
    俺も追いついた乙

    454 :

    早めだけど一ヶ月保守

    455 :



    ……
    …………

    ――アリアハン城・王の食卓――


    『はぁ……朝っぱらから疲れた……昼飯はよ』

    メイド『御疲れ様でございます』

    大臣『疲れたってほど何かしましたか?』

    『そら……したよ。耕地見回ったりしたよ。何故か王の私が耕しもしたよ。っていうかお前が耕させたんだろうよわしに』

    大臣『御疲れ様でございます』

    『お前ほんっとむかつくわ……頭沸いてんじゃねえの?』

    ガラガラ

    メイド2『食事をお持ちしました』

    『ああ、すまんな』

    カパッ

    『……おお?』

    大臣『どうされました?』

    『む、いつもと趣向が違うなと思ってな。いや、頂くよ』

    パクッ

    『っ!なんだ、これは美味いな!?』

    大臣『見たところいつもより食材が質素な……ちょっとすんません』ヒョイッ

    『お前何さりげなく手掴みでわしのメシ取ってんの?』

    大臣『んん!こりゃ美味い!』

    『だろう、いや、昨日までも勿論美味かったがこのような味も好みだ。料理長に伝えておいてくれ』

    メイド『かしこまりました!……ふふ』チラッ

    メイド2『うふふ』チラッ

    メイド・メイド2『『えへへー』』

    『?』


    ――厨房――


    メイド『……――だって!二人共すごく美味しいって!』

    メイド2『褒めてたよー!やっぱり気付くんだね』

    料理長『そういうこったよ。これからもちょくちょく献立を任せてもいいかい?』


    遊び人『はいっ!ありがとうございます料理長!』

    456 = 1 :

    バシャバシャ カチャカチャ

    遊び人『食材が質素なら質素なりに濃い味付けだけじゃなくて素材の味で勝負しようと思ったの』

    遊び人『ほら、お城から少し南の方の耕地で作ってるヒヨドリカブは煮込むと凄く甘くなるけどすぐにドロドロになっちゃうでしょ』

    遊び人『その解けたカブを濾した汁で次は原型が留まる程度にまたカブを煮込むの。さらっと塩をまぶせばさっぱりとした深いコクの甘いカブの煮込みの出来上がり』

    メイド『手間かけてるわねー』

    料理長『筋が良すぎるとは思ってたけどここまでとはぁね。もうすぐ10歳になるかどうかの子が……』

    遊び人『えへへ!師匠が二人共凄い人だからね!』

    料理長『ああ、勇者母さんにも教えて貰ってるんだってね。あの人は伝説だから』

    遊び人『後のもう一人は勿論料理長だよ』

    料理長『あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。前の生意気なアンタからは考えられないね』

    遊び人『一言よーけーい!』

    カチャッ

    遊び人『っよし!それじゃ夕飯の仕込みまでには戻ってくるね!』

    メイド2『勇者母さんの所に行くの?』

    料理長『気を付けて行ってきなよ』

    遊び人『はい!お疲れ様です!』


    ――勇者宅――


    勇者『それは……そう、そこで編み棒をそこに通すの。そこで切ってみて?』

    遊び人『ん、……できたっ』

    勇者『出来上がりね。上手いわ遊び人ちゃん』

    遊び人『えへへ!お義母さん、ありがと!』

    スタスタ

    勇者『あれ、すごいね。遊び人ちゃんが作ったのかい?』

    遊び人『あ、女勇者。こんにちは。そだよ、私が作った』

    勇者『きれいだね、しかし遊び人ちゃんは女子力高いね』

    遊び人『そうかなぁーえへへー、そうかなぁー?』

    勇者『(顔すごい緩んでる……)』

    勇者『これでいつでもお嫁にいけるわね?ふふ』

    遊び人『そっ!そんなっ、お義母さん!およめさんにいつでもこいなんて、そんなっ、あはっ、あはは!やだもー!』

    勇者『?』ニコニコ

    勇者『ねえ、“おかあさん”って呼ぶのは別にいいけどなんかイントネーションおかしくないかい』

    457 = 1 :

    勇者『そういえば遊び人ちゃん、遊び人ちゃんももうそろそろ“火贈りの儀式”じゃない?』

    遊び人『うん!あと半月くらいかな』

    勇者『もう何の職を祈るか決めた?』

    遊び人『そうだねー。やっぱり神使かな?』

    勇者『あら、神使?って事は僧侶職かい?なんでまた』

    遊び人『え?なんで?』

    勇者『いや、てっきり賢者職を目指すか、火贈りの儀式を受けずに料理人として生きるかどっちかだと思ってたからさ』

    遊び人『うーん、それもいいんだけどね。だって勇者ちゃんは旅に出るんでしょ?』

    遊び人『だったら私もついていきたいし。賢者はお姉ちゃんと一緒だから絶対嫌だし』

    遊び人『そうすると何かなって思ったんだけど、治療をできる神使は何人居てもいいかなって思って』

    勇者『うーん、そっかあ』

    遊び人『それに勇者ちゃんに回復呪文を使えるのが僧侶だけなのも悔しいしね!』

    勇者『ふふ、それじゃあ勇者の怪我は僧侶ちゃんと遊び人ちゃんにお願いするわね?』

    遊び人『うん!任せてお義母さん!』




    ……
    …………

    ――アリアハン・ルビス聖堂――


    神父『火贈りの儀式とは……最初に説明しなければなりませんね』


    神父『ここに集まった皆さんも、ルビス様が火を司る神様である事はご存知でしょう』

    神父『ルビス様はこの大地を創られた際に、人間達に内なる炎……職業を与えました』

    神父『その意思を継ぎ、秩序を守る者……神使――通称・僧侶』

    神父『大地を切り開く豪腕を持つ者……闘士――通称・戦士、武闘家』

    神父『人と人を繋ぐ才覚を持つ者……理人――通称・商人』

    神父『これらの職業以外にも、陰の職業として』

    神父『万象を操る者……魔術師――通称・魔法使い』

    神父『影に忍び生きる者……夜歩人――通称・盗賊』

    神父『世を忘れ、現を生きる者……快楽者――通称・遊び人』


    神父『これらの中から、あなた達自身が選んだ職業を与える儀式です』

    神父『望まぬのなら、火贈りの儀式を受けず、ありのままの人として生きるのも良いでしょう』

    神父『ここに集められた春の下月に生まれた子らよ。あなた達はもう10の齢をくぐります』

    神父『自分の意思で決め、そして今日から自分の足で歩き出すように。私は祈りましょう』

    458 = 1 :

    神父『それでは名を呼ばれたものは聖堂の前へ』


    ガヤガヤ


    遊び人『~♪』

    町娘『ねえ、もう何の職にするか決めた?』

    遊び人『うん!神使にするの!』

    町娘『そうなんだ!私はね――……』

    神父『次、町娘さん』

    町娘『あ!私だ!行ってくるね!』

    遊び人『うん!頑張って!』


    神父『それでは……聖・ルビスに祈りを』

    町娘『はい』

    神父『あなたは、何を祈りますか?』

    町娘『…………――“理人”を』

    町娘『私は、家の商いを継ぎたいです。ルビス様、お願いします』

    神父『それでは私に続いて詠唱を』

    <……。……。


    遊び人『(こんな儀式なんだ……)』


    神父『……最後に。もう一度お祈りを』

    町娘『……』


    フッ……


    町娘『……!』

    神父『……お疲れ様でした。あなたは今日これから理人です』

    町娘『すごい……!なんか生まれ変わったみたい……!』

    神父『ふふ、ご両親に報告してくると良いでしょう』

    町娘『はいっ!ありがとうございました!』

    タッタッタ……

    神父『さて……次の方、遊び人さん!』

    遊び人『(きた!私の番!)』

    スタスタ… ザッ

    遊び人『お、お願いします!』

    神父『はい。それでは……』

    ピタ

    神父『……おや?』

    遊び人『え?』

    神父『…………遊び人さん、あなたは――』

    459 = 1 :

    …………

    ―――アリアハン城・賢者の部屋―――


    勇者『この羊皮紙であってる?』

    賢者『ええ。そうね……ありがとう、次はこの文献を探してもらえるかしら』

    勇者『うん分かった』

    賢者『……そろそろかしら』

    勇者『え?なにが?』


    バタァン!!


    遊び人『お姉ちゃん!!!!』


    勇者『うわぁっ!!!?遊び人!?』ビクーン!!

    賢者『……騒がしいわ、遊び人』

    遊び人『っ……!!お姉ちゃん!!』

    ヅカヅカ

    ガシッ!!

    遊び人『お姉ちゃん……!!どういうことよ!!』

    賢者『痛いわ、離してもらえるかしら』

    勇者『あ、遊び人どうしたのさ、だめだよ、喧嘩はだめだよ』オロオロ


    遊び人『あんた、私の職業を勝手に“快楽者”にしたでしょ!!!!』


    勇者『えっ』

    賢者『……』

    遊び人『神父様に言われたの!もう私は快楽者の炎を宿してるって……!!』

    遊び人『あんた私が寝てる間に勝手に儀式したでしょ!!!神職だからって!!!』

    賢者『……』

    遊び人『なんとか言ってよ!!どういうことなの!!』

    賢者『……』

    勇者『け、賢者……?』

    賢者『……ええ』

    遊び人『!』

    賢者『確かに、私があなたの火贈りの儀式を執り行ったわ』

    賢者『ただ、文句は言わせないわ』

    遊び人『なっ……!?』

    賢者『あなた、勇者の旅に付いて行くつもりと言っていたわね?』

    遊び人『それが何よ!あんたと何の関係があるの!?』

    賢者『思い上がりすぎよ。中途半端な力を持ったあなたが旅に出て何になるの?』

    勇者『ちょっと、賢者……!』

    460 = 1 :

    賢者『前から火贈りの儀式で力を願わずに普通の人間として生きなさいと言っていたはずよ』

    賢者『それを無視して力を願うから、戦いようの無い快楽者の職業に就かせたの』

    遊び人『あっ……!!あんたに、あんたに何の権利があってそんな事するのよ!!!!』

    賢者『賢者の一族の驕りに身を任せて自身を過信するあなたの姉。それを制する権利がある』

    遊び人『……』

    遊び人『……』

    遊び人『……』

    勇者『あの、その、二人共……』オロオロ

    ガタッ

    賢者『勇者、さっきの文献探していてもらえるかしら。私は蔵書室で他の文献を探してみるわ』

    勇者『いや……賢者、だからさあ!』


    ガタッ


    勇者『え?』

    カタカタカタ……

    勇者『……?なんだろ、地震?……少し揺れて』

    賢者『っ!』

    勇者『……――って、え?』


    カタカタカタ


    ズズズズズズズズ



    遊び人『っ…………!』



    勇者『遊び人!?』

    賢者『遊び人!!“それ”を治めなさい!!!』


    遊び人『私だって……!!私だって!!』

    遊び人『私だって魔法を使える……!!呪文も唱えられる!!!』

    遊び人『あんただけが賢者の一族じゃないっ……!!』


    ゴオオ!!!


    賢者『遊び人!!』


    遊び人『あんただけが』


    ズオォォッ!!!!


    遊び人『おじいちゃんの孫じゃない!!!!!!!』

    461 = 1 :


    ガシィッ!!



    賢者『遊び人!!勇者もいるの!!治めなさい!!』



    遊び人『っ!』ハッ


    ズズズズ

    ズズ

    ズ…




    勇者『(……治まった……?)』


    遊び人『……』

    賢者『……遊び人』

    賢者『今、自分がどうなったか理解はできたかしら……っ?』

    遊び人『……』

    賢者『あなたは確かに多少の力は持っているかもしれない』

    賢者『でも制する事はできないの。今の様に』

    賢者『今あなたは感情に任せて中途半端な力を使って勇者を危険な目に合わせたわ』

    賢者『“快楽者”の職についていても、余る力を制御さえできない……その体たらくなのよ』

    遊び人『……!!』

    勇者『……』

    遊び人『……っ』

    ペタン

    遊び人『うっ、っ』ポロ

    遊び人『ふくっ……ふぇぁ……うぁぁあっ……!!』ポロポロ


    賢者『泣けば済むとも思わないで頂戴』

    賢者『……勇者』

    勇者『な、なに?』

    賢者『今見た事は絶対口外しては駄目』

    賢者『わかった?』

    勇者『……う、うん』

    クルッ スタスタ

    賢者『……それじゃ、私は蔵書室に行くからこの子をお願い』

    勇者『え!?ちょっと賢者!!何言ってんだよ!遊び人が』

    賢者『説教なら後で聞くわ。今もう私が何を言っても無駄よ。貴方だってわかるでしょ』

    ガチャッ

    賢者『私だって……わかってる』

    バタン

    462 = 1 :

    勇者『……』

    遊び人『だってっ……!!だって……!!』ポロポロ

    遊び人『こんなの、ひどいっ……!!ひどいよ……!!』ポロポロ

    勇者『…………』

    勇者『……っ!遊び人!』

    ガシッ

    勇者『別にいいじゃない!快楽者でも!』

    遊び人『ぐすっ……っ……?』

    勇者『そんなに強い力も持ってるし、遊び人は頭いいしさ!』

    勇者『家事もすごいし、快楽者でも遊び人は凄い子だよ!』

    遊び人『勇者ちゃん……』グスッ

    勇者『だから、泣き止んでよ……ね?』オロオロ

    遊び人『……』

    勇者『ね?』

    遊び人『……っ。わたしが』

    勇者『ん?』

    遊び人『わたしが、快楽者でも……旅、つれてってくれる……?』

    勇者『もっちろんだよ!!遊び人がよかったらこっちからお願いしたいくらいだもん!』

    遊び人『……』

    グシグシ

    遊び人『っ、勇者ちゃん』

    勇者『なに?』

    遊び人『……ありがと』

    遊び人『約束……破らないでね』

    勇者『ん!絶対!』



    ――ドアの前――


    <…………!……!


    賢者『……』


    …………
    ……

    463 = 1 :



    ………

    ――アリアハン城・厨房裏・戸口――


    スタスタ

    遊び人『いしょっと』

    ドサッ

    遊び人『(ん、これで全部捨て終わった)』

    スタスタ

    『こんにちはー。毎度ありがとうございまーす』

    遊び人『ん?あっ、商人』

    商人『あれ、遊び人ちゃんじゃないですか』

    遊び人『どうしたの、そんな荷物抱えて』

    商人『こないだ注文された調味料、遅れて入ってきた分を持ってきたんですよ』

    遊び人『そんなに沢山?』

    商人『いえ、調味料はこれだけです。はい』

    遊び人『はいありがと。……その残りの荷物は?』

    商人『賢者ちゃんです』

    遊び人『え?』

    商人『賢者ちゃんから頼まれたものを持ってきたんですよ』

    遊び人『あいつが?めずらしいね』 

    商人『多分、来月必要なものなんでしょうね』

    遊び人『来月?何かあるの?』

    商人『え?賢者ちゃんか勇くんから何か聞いていないんですか?』

    遊び人『何かって……何を?』

    商人『いえ、来月――――……』

    464 = 1 :


    …………


    ――アリアハン城・廊下――

    スタスタ

    遊び人『……』


    『どういうことなのですか!』


    遊び人『!』


    『納得がいきません!大臣様からも何か講義を!』

    大臣『そう言われても困る。君から直に言えばいいだろう』

    『もう申し上げました!しかし』

    大臣『とにかく、私からはもうどうしようもない。もう一度賢者様と勇者殿と話すがよかろう』

    『大臣様!大臣さm』

    バタン

    『……ちっ!』

    クルッ

    『!』


    遊び人『……』


    『……遊び人さん』

    465 = 1 :

    遊び人『……ん』

    スタスタ

    『無視をせずともよいではないですか?』

    遊び人『返事したでしょ……んじゃね』

    『来月の事はもうご存知なんでしょう?』

    ピタッ

    遊び人『……』

    『……あなたは確か勇者君をだいぶ御気に召されていたと思うのですが』

    遊び人『あんたには関係ないでしょっ……!』

    『あなた、これでいいのですか?』

    遊び人『……』

    『明らかに彼の身の程を過ぎた計画です……遊び人さん』

    遊び人『……なによ』

    『あなたからも、賢者様になにか言われた方がよろしいのでは?』

    遊び人『……っ』

    ギリッ

    遊び人『あんたには関係ないでしょ!!』

    ダッ

    タッタッタ

    『……ふふ』

    『(扱い易い事この上無い……)』

    スタスタ

    『(……あの男、どれほど調子に乗れば気が済むのか)』

    『(……いつか)』

    ギリィ…

    『(いつか、思い知らせてやる)』



    ――遊び人の客室――


    コンコン

    賢者『遊び人?居るかしら?』

    <……

    賢者『……入るわよ』

    ガチャッ バタン

    遊び人『……』

    賢者『やっぱり居た。居るのなら返事なさい』

    遊び人『……何の用よ』

    賢者『すぐに終わるわ。聞きなさい』

    賢者『来月のはじめから二ヶ月ほどかしら……少し出かけなくてはならないの』

    賢者『その間あなた、大人しくしているのよ。迷惑はかけないように。分かったかしら?』

    遊び人『……』

    賢者『……返事が聞こえないのだけれど』

    466 = 1 :

    賢者『まあいいわ。それで、帰ってきたら――』

    遊び人『……ねえ』

    賢者『何かしら』

    遊び人『それ、勇者ちゃんも一緒なんでしょ?』

    賢者『……ええ。勇者も連れて行くつもり』

    遊び人『……聞いたよ』

    遊び人『二人きりなんだってね』

    賢者『!』

    遊び人『……二人なんだってね』

    賢者『……ええ。一応二人で行くわ』

    遊び人『……ふふっ』

    賢者『何を笑っているの』

    遊び人『ううん?あはは、二人で行くんだ』

    賢者『別に勝手でしょう。あなたがそれに何かをとやかく言っても』


    遊び人『愛しの勇者ちゃんと二人で行きたかったんだ?』


    賢者『……――なっ……!!!!』


    遊び人『……』

    賢者『な、何を言ってるの遊び人っ』

    賢者『冗談が過ぎるわ。そんな、そんな不純な動機では無くて必要な事なの』

    遊び人『…………ふっ』

    賢者『ちょっと、何を笑っているの!』

    賢者『本当に、彼自身にも関係があって――』

    遊び人『ふふっ、あははっ、顔真っ赤っ、あはははっ』

    賢者『っ……!違う、これは』

    遊び人『あはははっ、あははは』

    賢者『いつまで笑ってるのっ、いい加減に』

    遊び人『あはは、図星なんだっ、ははは』

    賢者『遊び人、だから』

    遊び人『また、またなんだ、あははっ』

    賢者『……遊び人?』

    遊び人『また、また』

    ポロ…

    賢者『……――!!!!』



    遊び人『……また、そうやって、私のほしいもの、したいこと、持ってっちゃうんだ?』ポロポロ

    遊び人『おじいちゃんも、賢者の仕事も……――次は、立場を利用して、勇者ちゃんを』ポロポロ

    遊び人『私の、好きな人も、奪ってくんだ?』ポロポロ

    467 = 1 :


    賢者『……!!!あ、遊び人っ』ザッ


    遊び人『入ってくるなぁ!!!!!』


    賢者『!!』ビクッ

    遊び人『なによっ、なんなのよあんたっ!!本当に!!!!なんなのよあんた!!!!』

    遊び人『勇者ちゃんは、勇者ちゃんは私が好きになったのにっ!!!!ずっと好きだったのに!!!!』

    賢者『遊び人っ、私は』

    遊び人『うるさいうるさいうるさい!!!!私はあんたの一体なんなのよ!!!!あんたに縛られて!!!!あんたに好きな人達持ってかれて!!!!』

    賢者『……』

    遊び人『今、お城でどんな噂が流れてるか知ってる!!!?勇者ちゃんがあんたを好きって……あんたの事好きだって噂が流れてるの!!!!』

    賢者『……!!』

    遊び人『なに……!?本当に私どうすればいいの!!?勇者ちゃんは、勇者ちゃんは私が先に好きだったの!!!!なんであんたはっ……!!』

    ペタン

    遊び人『っ……!!!だい、きらい……っ!!』

    賢者『……』

    遊び人『きえて……!!わたしの前からきえてよっ!!!!』

    賢者『……』

    遊び人『あんたなんか――……あんたなんか!!』

    ギリィッ!!



    遊び人『あんたなんか!!!!!死んじゃえばいいんだ!!!!』



    賢者『……――!!!』

    遊び人『っ……!!』ポロポロ

    賢者『……』

    賢者『……』

    賢者『……』

    賢者『……』

    賢者『……ごめんなさい』

    クルッ

    スタスタ


    バタン


    遊び人『っ……!!うあっ』

    遊び人『うあああっ……!!うあああああん……!!!』


    …………
    ……

    468 = 1 :



    ……
    …………


    ――アリアハン城・厨房――


    メイド『そういえば、遊び人ちゃん』

    遊び人『んー?なあに?グヤーシュの釜はさっき見てきたけどまだ沸々してなかったよ』

    メイド『ううん、そうじゃなくて。賢者様と勇者くんが帰ってくる予定の日ってもう過ぎてるよね?まだ帰って来ないの?』

    遊び人『……しらない』

    メイド2『あら?なになに?なんだか不機嫌?』

    遊び人『もういいでしょ。ほんとうざったいよ二人共』

    メイド『わあ怖い』

    メイド2『でも二人が行ってからなんだか心ここにあらずって感じよ?』

    遊び人『もう!いいでしょ!!ちょっと外のグヤーシュの釜見てくる!』

    スタスタ

    メイド『あら、怒らせちゃった』

    メイド2『あはは、釜はさっき見たばかりって言ってたのにね』


    ――厨房裏――


    カパッ

    遊び人『……』

    遊び人『(……まだ全然、火が通ってない)』


    <……!……!


    遊び人『?』

    遊び人『(なんだろ……?なんかお城の入り口の方が騒がしい?)』


    ――厨房――

    ガチャッ

    遊び人『ねえ、なんだか入り口の方が――……』


    メイド『あ……遊び人ちゃん』

    メイド2『……』

    料理長『……釜を見てたのかい』


    遊び人『料理長?おはようございます。どしたの?』

    料理長『……や、ちょっとね』

    遊び人『?……あ、それよりなんだか入り口が騒がしいみたいなんだけど――……』


    <……!


    遊び人『……?』

    遊び人『なんか、お城の中が騒がしい?』

    469 = 1 :

    料理長『……!』

    メイド『……』

    メイド2『……』


    遊び人『……?ちょっと様子見てくる』


    ザッ

    料理長『遊び人、駄目よ』

    遊び人『え?な、なんで?』

    料理長『二人共、頼むわね』

    メイド『はいっ』

    料理長『すぐ戻るわ』

    スタスタ……

    遊び人『え?何?何があったの?』

    メイド2『……』

    遊び人『……――ねえ』

    遊び人『何なの?』

    遊び人『教えてよ、二人共』

    メイド『あとで、後でわかるから』

    メイド2『っ……』

    遊び人『……』




    <おい!!勇者が帰って来たぞ!!!




    遊び人『!』

    メイド『!!』

    メイド2『……声張り上げるなよバカっ……!』

    遊び人『ねえ、今勇者ちゃんが帰って来たって』

    メイド『それは、その』

    メイド2『……っ』


    遊び人『……』


    遊び人『……』


    遊び人『……』


    遊び人『…………ねえ』

    470 = 1 :














    遊び人『お姉ちゃんは?』














    471 = 1 :



    ……
    …………


    ――勇者の家――

    コンコン

    勇者『はい……』

    勇者『……!』


    遊び人『……』


    勇者『遊び人ちゃん』

    兵士団長『少しよろしいか』

    勇者『……なんでしょうか』

    兵士『遊び人様が勇者に会いたいとの事です』

    兵士2『少し失礼します』

    『……失礼します』

    勇者『遊び人ちゃんだけなら、歓迎しますが……さすがにこう大人数は』

    スタスタ

    兵士団長『失礼する。さあ、遊び人様』

    勇者『っ!ちょっと!』

    グイッ

    勇者『勇者は怪我人なんです!!そんな――……』

    兵士団長『同時に、容疑者でもあります』

    勇者『……!!!!』

    『……』

    兵士団長『……失礼』

    スタスタ…

    勇者『……』


    ――勇者の部屋――


    勇者『……』


    ガチャッ


    勇者『……』

    勇者『……』

    勇者『……』


    遊び人『……』


    勇者『……あ、遊び、人』

    472 = 1 :

    遊び人『……勇者……ちゃん』


    言いたい事は、沢山あった


    勇者『……遊び人』


    『大丈夫だった?』とか

    『命が無事でよかった』とか

    『帰って来てくれて、うれしい』とか


    勇者『僕は、……僕』


    『お帰りなさい』、とか

    会う前は、沢山考えてた、勇者ちゃんの帰りを迎える言葉

    無事を、嬉しく思う言葉

    優しい、言葉

    考えてた、筈だった


    勇者『…………』


    でも


    真っ先に、私の、暗渠みたいな、淀んだ迷路みたいな体内から出てきた言葉は








    遊び人『なんで……お姉ちゃん、死んだの?』








    勇者『……………………………………あ………』

    473 = 1 :

    遊び人『お姉ちゃん、なんで、帰って来ないの』

    やめろ

    遊び人『ねえ、お姉ちゃんを、どうして』

    やめろ

    やめろ

    遊び人『なんで、勇者ちゃん、なんで』

    やめろ

    やめろ

    やめろ


    それだけは言うな


    それだけは絶対、言うな


    遊び人『なんで、勇者ちゃん』




    言うな!!!!!!







    遊び人『なんで……――お姉ちゃんを殺したのぉ……?』ポロポロ







    ああ


    ああ





    ああ、私は



    私は、賢者なんかには、なれない



    私は、本当に






    愚かだ

    474 = 1 :



    ……
    …………


    ――ダーマ・別塔・貴賓室――


    命名官「……」

    遊び人「……」

    遊び人「結局ね」

    ギュッ

    遊び人「私は、甘えてたんだ」

    遊び人「勇者ちゃんや、お姉ちゃんに」

    遊び人「……自分の事しか考えられてなかったんだよ」

    遊び人「そんな私が、今さらお姉ちゃんの残り香に縋りつけられない」

    命名官「……そうかい」

    ギシッ

    命名官「それで、あんたはどうするんだい。これから」

    遊び人「……」

    命名官「あんた気付いてるんだろう?今回のこの件の計画者はあんたを――……」

    遊び人「……私さ」

    命名官「ん?」

    遊び人「勇者ちゃんに、許してもらえるなんて思ってないんだ」

    命名官「……」

    遊び人「あんな事言った後も、勇者ちゃんはまた普通に接しようとする私を受け入れてくれた」

    遊び人「受け入れてくれたんだよ」

    命名官「……うん」

    遊び人「……それに、それにさ」


    遊び人「私……やっぱり、勇者ちゃんが、好きなの」


    命名官「……」

    遊び人「……この気持ちが、もう実らないって事も分かってる。そんな資格もない」

    遊び人「でも、やっぱり……勇者ちゃんが居てくれるだけで、私は十分」

    遊び人「だから、私は勇者ちゃんが助かる確率があるなら、私はそれに縋る」

    遊び人「……例えそれが、騎士団長の嘘だったとしてもね」

    命名官「……あの騎士団長の嘘を信じる事にして、騎士団長の嘘に乗っかるってわけかい?」

    命名官「勇者って子の命を助けるって方便を信じたふりして、賢者として魔物達の囮になるってわけかい」

    遊び人「馬鹿でしょ?」

    命名官「ああ、馬鹿で、愚かだ」

    遊び人「でも、それしかないの」

    命名官「……」

    遊び人「…………もう、それしかないの」

    命名官「……どうしようもない、馬鹿だよ」

    475 = 1 :


    ガタッ

    命名官「私は帰るよ。あんたの陰気に中てられて眠くなってきた」

    命名官「おまけに苛々するよ。馬鹿すぎて」

    遊び人「はは、ごめんね。話してくれてありがとう」

    命名官「別にいいさ。もう勘弁願いたいけれどね」

    遊び人「でも、もう随分遅くになっちゃって……」

    命名官「儀式は明日の昼らしいから、まだ時間がある」

    命名官「寝る時間はたっぷりあるじゃろ……それじゃ」


    バタン


    遊び人「……ありがとう」


    ――廊下――


    神官「あっ!」

    命名官「ふぁぁ、話の長い事長い事……」コキコキ

    神官「命名官様!」

    命名官「え?アンタずっと待ってたの?」

    神官「酷いこのクソババア!!!」

    命名官「アンタも大概酷いわ」

    スタスタ

    命名官「もう謁見はないんじゃろ?あの子、だいぶ参ってたから世話して早く寝せてやりな」

    神官「はい!命名官様はもうお休みで?」

    命名官「適当にするさ。ほら、もう遅いんだ。あの子の世話を急ぎな」

    命名官「あの子だって賢者の一族と言えど、まだガキ……女の子なんだ。あの服は窮屈そうだったよ」

    神官「は、はい!すみません!それではお休みなさい!」

    スタスタ バタン

    命名官「……ふう、さて、と」


    スタスタ

    命名官「(明日の昼までには時間がある)」

    命名官「(……寝る時間はたっぷりある)」


    命名官「(悪い奴ほどよく眠る)」


    命名官「……年寄る体にに夜更かしはキツイね」


    …………
    ……

    476 = 1 :



    ……
    …………

    ――ダーマ神殿前――


    ザワザワ


    旅人「今日は再火贈りの儀式は駄目なのか?」

    ダーマ兵「ええ。また後日お願いします」

    旅人「そうか……しかし、凄い人間だな。何かあるのか」

    ダーマ兵「はい……ここだけの話なんですが、賢者様が復活されるとか」

    旅人「へえ、そりゃすごい。しかしこんな厳重に兵が入り口に集まるもんかい?」

    ダーマ兵「まあ賢者様の復活とあればこれくらいは……中にも相当な兵が警備にあたっていますよ」

    旅人「ふうん。そんなに魔物が怖いのかね」

    ダーマ兵「まあそれもありますが……最近ではこのバハラタ付近で盗賊団が出没しているらしく、それもあってね」

    ダーマ兵「でも何より……あの落日の七日間を手引きした男が襲いに来る可能性が高いらしく」ヒソヒソ

    旅人「ええ、なんだいそりゃあ!?」

    ダーマ兵「……そのせいか」チラッ


    ガヤガヤ


    ダーマ兵「ポルトガ兵もサマンオサ兵も入り乱れて、相当な警備になっていますよ」

    477 = 1 :


    …………


    ――ダーマ・別塔・貴賓室――


    ガチャッ

    騎士団長「失礼します」

    神官「あ、騎士団長様」


    遊び人「……」


    騎士団長「……おはようございます。遊び人さん」

    騎士団長「大変お似合いですよ」

    神官「それでは、私は失礼します」

    遊び人「……はい」

    神官「では」ペコリ

    バタン


    騎士団長「……」

    遊び人「……何よ」

    騎士団長「いえ、本当によくお似合いだなと思いまして」

    遊び人「ああそう……で、何の用?」

    騎士団長「……今日は、儀式を拒否する事のないようにお願いしますね」

    騎士団長「もし土壇場でダーマ神官様の祝福を拒絶するような事があれば――……」

    遊び人「勇者ちゃんの命は無いんでしょ?」 

    騎士団長「……お分かり頂けているのなら良かったです」ニコ

    ザッ

    騎士団長「それでは、参りましょうか」


    騎士団長「儀式が……始まります」 

    478 = 1 :


    ―――ダーマ神殿・大聖堂―――



    ダーマ神官「……皆の者」


    ダーマ神官「我々はこれまで、魔の存在に脅かされていた」


    ダーマ神官「あの七日間から、これまで」


    ダーマ神官「しかし、これからは違う」


    ダーマ神官「我々の眼前には、希望の灯火が点ろうとしている」


    ダーマ神官「その瞬間を、見守り、祝福して頂きたい」


    騎士団長「……それでは、ガルナ様の妹君……賢者の末裔を迎えましょう」

    騎士団長「賢者様、どうぞ神壇へ」


    ガチャ

    ギィィ…



    遊び人「……」



    ザワザワ

    「あの方が賢者の末裔……」

    「美しい……」

    「まるで女神を見ているようだ……!」


    ――二階・貴賓席――


    命名官「ぐう……ぐぅ……」zzz

    神官「ちょっと命名官様!起きて下さいよ!!」ヒソヒソ!!

    命名官「ん……あと半刻……」zzz

    神官「半刻眠ってたら儀式終わっちゃいますよ!!」ヒソヒソ!!


    ―――

    エジンベア勇者「おお、美しい……」ウットリ

    スー勇者「……」

    ランシール勇者「……スー勇者?大丈夫ですの?顔色が……」ヒソヒソ

    スー勇者「……はい、わたしは、大丈夫……思います」

    ランシール勇者「……無理はなさらずに、ね」

    スー勇者「……はい」

    479 = 1 :


    カツ… カツ…

    ザッ


    ダーマ神官「……その場にお願いします」


    遊び人「……」


    ダーマ神官「貴女は、現在快楽者の火を宿しておりますね」

    遊び人「……はい」

    ダーマ神官「その火を消し、貴女は賢者の火を宿すことになります」

    遊び人「……はい」

    ダーマ神官「その事について、何か異論はございますか?」

    騎士団長「……」

    遊び人「……」

    ダーマ神官「……」




    遊び人「…………ありません」




    騎士団長「……」

    騎士団長「……」ニヤ

    ダーマ神官「……それでは、始めましょう」

    ダーマ神官「再火贈りの儀式を」


    遊び人「……」


    遊び人「(……これで、いいんだ)」

    480 = 1 :


    ――ダーマ神殿・入り口――


    ダーマ兵「……もう儀式が始まった頃ですかね」

    ポルトガ兵「ですね。できれば中の警護がよかったなあ」

    サマンオサ兵「そんな事を言われてはこちらも士気が下がる。少し黙っていろ」

    ダーマ兵「す、すみません!」

    ポルトガ兵「……はいはい。でも神殿前の警備にいきなり借り出されるとはなあ。さすがに」チラッ

    ズラッ…

    ポルトガ兵「……こんな大勢が警備に当たらなくてもよかないか」

    サマンオサ兵「だから黙っていろと言っている。世界の変革の守り人だという自覚が足らん」

    ダーマ兵「すみません……」

    ポルトガ兵「大仰に言うねえ……」





    ポルトガ兵「……ん?」


    パカラッ… パカラッ…


    ダーマ兵「?」

    ダーマ兵「(蹄の音……?)」


    パカラッ パカラッ


    ポルトガ兵「……こちらに向かっている」


    パカラッ パカラッ!!


    「伝令!!!伝令――!!!!」


    サマンオサ兵「止まれ!!!止まれと言っている!!!」

    ザァッ!!

    ガシャン!!

    伝達兵「はぁっ!!はぁっ!!で、伝令っ!!」

    481 = 1 :


    ポルトガ兵「伝令!?って、アンタ大丈夫か!?」

    ダーマ兵「顔、どうしたんですか!?包帯ですごい事になっていますよ!?」

    ポルトガ兵「というか全身傷だらけじゃないか!!一体何が――」

    サマンオサ兵「それよりも!伝令とは何だ!!答えろ!!」

    伝達兵「賢者様に!!直接伝えなければならない事があります!!すぐに通してください!!」

    サマンオサ兵「ならん!!今は儀式中だ!!!後にしろ!!」

    ダーマ兵「い、一応私が内部の上官へ伝達しましょうか?」

    伝達兵「なりません!!!火急の用件なのです!!!賢者様だけに!直接口上しろとの事です!!」

    ポルトガ兵「一体誰の命だよ!?」

    スッ

    一同「「「!!!!」」」

    ダーマ兵「そ、それは……!」


    サマンオサ兵「国連の勇者の勲章……!!?」

    ポルトガ勇者「それも、三つも……!!!!」


    伝達兵「どうぞご覧を!!本物です!!」

    ダーマ兵「……三つとも本物です!!」


    伝達兵「ポルトガにおられる御三方からの命です!!!」

    伝達兵「今、賢者様に危機が迫っております!!!!!」

    伝達兵「迅速に……――迅速に許可を!!!!」

    482 = 1 :


    ――大聖堂内――


    ダーマ神官「そして大地を創ったルビス様は、闇に立ち向かう意志を、我らに与えた」

    ダーマ神官「生まれ落ちた子らは、火を宿し、そしてその火を絶やさぬように――……」


    <我々は…………。そのルビス様の意思を……。


    遊び人「……」

    遊び人(私が、この職になってから、五年か)

    遊び人(いろいろあったなあ)

    遊び人(皆、こんな職になった私に普通に接してくれて)

    遊び人(……皆、無事かな)

    遊び人(女勇者、戦士、武道家)

    遊び人(魔法使い、盗賊、僧侶、商人)


    遊び人(……――勇者、ちゃん)


    ダーマ神官「そしてロトの聖剣を象った十字に――……」


    遊び人(皆と、まだ旅していたかったな)

    遊び人(下らない事で笑って、泣いて)

    遊び人(冗談言い合って、喧嘩して)

    遊び人(……皆と、一緒に、居たかった)

    遊び人(女勇者の軽口がもっと聞きたかった)

    遊び人(戦士の食べっぷりをもっと見ていたかった)

    遊び人(武道家の説教を聞いていたかった)

    遊び人(魔法使いと勉強の話をしてたかった)

    遊び人(盗賊にお茶の淹れ方をまだ教わってなかった)

    遊び人(僧侶の優しい歌声を、もっと聞きたかった)

    遊び人(商人の商売の話も、もっち聞きたかった)


    遊び人(……勇者ちゃんを、好きでいたかった)


    遊び人(そばに居たかった。ずっと見ていたかった)

    483 :


    ダーマ神官「……――以上が、ルビス様の祝詞となります」

    遊び人(でも、もういい)

    ダーマ神官「それでは、今一度問います。最後の問いです」

    遊び人(私は、賢者にはなれない)



    ダーマ神官「賢者として生きることを……――望みますか?」



    遊び人「……」


    騎士団長「……」


    ダーマ神官「……」


    でも


    賢者になれなくても




    遊び人「……はい」




    囮くらいには




    遊び人「望みま――……」






    バタァン!!!!


    伝達兵「伝令!!!伝令!!!!」





    遊び人「っ!!!?」


    ダーマ神官「なっ!!?」


    騎士団長「何事です!!!儀式の最中ですよ!!!!」

    484 = 1 :


    ザワザワ!!

    「なんだ!?」

    「伝達兵?」

    「この儀式の最中にか?」


    ダーマ神官「静粛に!!静粛に!!!」

    騎士団長「警備の兵達は何をしているのです!!!何人たりとも通すなと言った筈です!!!!」


    伝達兵「儀式の最中である事は承知しております!!!しかし」

    ジャラッ

    伝達兵「火急の用件にて!!!!賢者様に報告をお許し下さい!!!!」


    騎士団長「!!?それは!」


    エジンベア勇者「あれは……」

    ランシール勇者「国連勇者の勲章!?」

    スー勇者「む、ムオルさんたちに、なにかっ!!?」


    神官「ええ!?何か大変な事に……ねえ命名官様!!起きて下さいよ!!!」ユサユサ

    命名官「……」


    騎士団長「では早く済ませなさい!!何事です!!!」


    伝達兵「有難く、瞬刻を頂戴します!!!!」

    タッタッタ

    ズザッ

    伝達兵「賢者様!!!」


    遊び人「は、はい!」


    伝達兵「たった今、承った伝言を述べます!!」


    遊び人「伝、言?」


    伝達兵「はい!!アリアハンの者からの伝言です!!!!」


    遊び人「……アリアハンから?」


    騎士団長「アリアハン……?」

    騎士団長「……」

    騎士団長(……待て)

    騎士団長「……――っ!!」


    伝達兵「申し上げます!!!!」

    485 = 1 :



    スッ






    伝達兵「……――『言う事聞く人、この指止まれ』」






    遊び人「……」


    遊び人「…………」


    遊び人「………………」



    タッ



    ダーマ神官「!?賢者様!?」

    騎士団長「警備兵!!!!警備兵!!!!!」

    ダーマ神官「えっ!?」

    騎士団長「この男を――!!!!いやっ」



    ギュッ


    遊び人「……」


    「……ありがとう、遊び人」


    シュルッ


    遊び人「…………ゆ」ポロ





    騎士団長「この魔物を取り押さえろ―――――――ッッ!!!!!!!!」







    勇者「ありがとう、覚えていてくれて」






    遊び人「………………勇者……ちゃん……!!!!!」ポロポロ

    486 = 1 :



    「取り抑えろ!!!」

    「逃がすな!!!!」

    「賢者様を取り戻せ!!!」


    ダッ!!!


    勇者「っ!!遊び人!!!」ギュッ!

    遊び人「えっ!!」

    勇者「つかまってて!!!」ゴソッ

    フワッ

    騎士団長「!!!!」


    勇者はキメラの翼を使った!!


    ゴォォ!!!


    「ぐおぉ!?」

    「馬鹿なっ!!上は」



    命名官「……そう」ボソッ

    命名官「大聖堂の上は」



    勇者「遊び人!!!僕の陰に!!」ギュッ!!

    遊び人「えっ!?」

    勇者「下の人間達!!!避けてろ!!!!」


    ガッシャアアアアン!!!!!


    命名官「ガラス張りなんさね」


    ガッシャン!! バリィン!!

    ガシャァァァァン!!


    「破片が落ちてくる!!避けろ!!!」

    「でも賢者様を受け止めなくては!!」

    「おい見ろ!!」


    パラ… 


    「しがみ付いて屋上の方に逃げたぞ!!!」

    「屋上だ!!!!急げ!!!!」

    487 = 1 :

    ザワザワ!!!


    騎士団長「……」

    ダーマ神官「騎士団長殿!!い、一体どうすれば」

    騎士団長「く」

    ダーマ神官「え?」

    騎士団長「失礼」クルッ

    ダーマ神官「騎士団長殿?」


    騎士団長「っ、くふっ」


    騎士団長「んふっ、ぎゅふふ、ぎゅふふふ、」


    騎士団長(やってくれます、やってくれますね勇者くんやってくれます、やってくれます)


    騎士団長(殺します、殺します、ああ、楽しませてくれる。憎しみが尽かない。殺しましょう)


    騎士団長(そうです、ただ処刑するだけじゃつまらない、魔族裁判にかけるだけではつまらない)


    騎士団長(ああ、楽しい、楽しい程殺したい)


    騎士団長(楽しい、ああ、楽しい)


    クルッ


    騎士団長「……ランシール勇者さん!!!」


    ランシール勇者「……大丈夫。今、追いかけていきましたわ」

    スー勇者「わたしたちも、向かう、です!」


    騎士団長「おお、さすが最速の勇者」

    クルッ

    騎士団長「……魔法兵を集めて下さい!!!」

    騎士団長「奴はキメラの翼を使い逃亡を図りましたがキメラの翼は障害に当たると効力を失います!!」

    騎士団長「しかし奴は屋上に登りました!!そこからまた翼を使い移動するでしょう!!」

    騎士団長「ですので、魔力場の強い場所へ移動魔法で先回りしてください!!!戦闘兵も同行するように!!!!」


    「「「「はっ!!!!」」」」


    騎士団長「……さて」

    騎士団長(後は任せてみますかね……)

    488 = 1 :


    ――ダーマ神殿・屋上――


    ビュオォォォッ……


    勇者「っぎぎぎ!!!よいしょおっ!!!!」

    ドサッ!

    遊び人「っ!」

    勇者「はぁっ、はぁっ、遊び人、大丈夫!?怪我は無い!?」

    遊び人「ゆ」


    ギュウウウ!!!


    遊び人「勇者ちゃんっ……!!勇者ちゃん……!!!!」

    勇者「……遊び人」

    遊び人「よかっ……!わたし、勇者ちゃんが……!!!」

    遊び人「裁判に…………かけられたとっ……!!!!」

    勇者「……」

    ナデ

    勇者「……心配かけて、ごめん」

    勇者「でも、今は急がなきゃ。まだ逃げないと――……」


    「逃げるったって、どこにだい?」


    遊び人「!!」

    勇者「……――!」


    ザッ

    「やれやれ、屋上によじ登る事になるなんて思わなかったよ」


    勇者(今の短時間で追いかけてきたなんて――…)


    「……始めまして、賢者様と勇者クン?だっけ」

    エジンベア勇者「僕はエジンベア勇者。賢者様には覚えておいて頂きたいですねぇ」

    ジャキッ

    エジンベア勇者「勇者クンの方は……忘れていいよ」

    勇者「……」

    ジャキン

    勇者「……」

    エジンベア勇者「お?やる気かい?」


    ヒュンッ!!


    勇者「!!?」


    ガキィン!!!!


    エジンベア勇者「その弱さでかい?」

    489 = 1 :

    バッ!!

    勇者「くっ……!」

    勇者(とんでもなく速い!!受け止めるのも難しいくらいに……!)

    エジンベア勇者「ねえ、観念してお縄に付きなよ。僕は別に君を斬りたいわけじゃないんだよねえ」

    ジリ…

    エジンベア勇者「それに君もこの状況わかってるだろ?騎士団長は魔力場の強い土地に魔法兵を先回りさせて」

    ジリ…

    エジンベア勇者「賢者様は魔法制御・魔力瓦解の呪文がかけられた手枷をされ、それを守るのは弱っちい君だ」

    ジリ…

    エジンベア勇者「もう諦めなって。これ以上は何もしないからさぁ」

    勇者「……」

    遊び人「ねえ、私達、今……!」

    勇者「うん……」チラッ


    オォォォオォ…


    勇者(どんどん追いやられてる……)


    エジンベア勇者「……おや、気付いたかい?」

    エジンベア勇者「さすがにこの高さからは逃げられないだろぉ?監視者の塔みたく、落ちたら無傷ってわけにもいかない」

    エジンベア勇者「ぼくら加護のある人間でさえ致命傷を負う高ささ……本当にキミ、逃げ場無いんだって」

    勇者「……」

    エジンベア勇者「分かったんなら、賢者様を解放して素直にお縄に――……」


    勇者「じゃあ、聞くけどさ」


    エジンベア勇者「え?」

    勇者「遊び人をお前らに手渡して……そしてどうなる?」

    遊び人「勇者ちゃん……?」

    エジンベア勇者「どうなるって……そりゃあ」

    勇者「魔物が遊び人を狙いに来る」

    エジンベア勇者「……まあそうだろうね」

    勇者「……わかってるんだろ」

    エジンベア勇者「でもそのためにサマンオサが軍をあげて――……」

    勇者「ねえ、冷静に考えた事ある?」

    エジンベア勇者「は?」


    勇者「大賢者が三人も集まって、あのテドンの民が大勢居ても……倒せなかった魔族達から、サマンオサの軍が遊び人を守る事ができるか」

    勇者「考えた事――……あるか?」

    490 = 1 :

    エジンベア勇者「……」

    勇者「……なかったんだろ」

    ギリッ

    勇者「目先の、どうでもいい不確かな情報に踊らされて」

    勇者「遊び人の事も、これから先、戦う事になる人達の事も」

    ギリィィッ!!

    勇者「考えた事……!!!!無かったんだろ……!!!!」

    エジンベア勇者「……」

    ジリッ

    エジンベア勇者「…………何が言いたいんだい」

    勇者「……お前達に、遊び人は任せられないって事だよ!!!!」

    遊び人「勇者ちゃん……!」

    エジンベア勇者「この状況でよくそんなに吼えられるねぇ」

    勇者「……遊び人」

    遊び人「え?」

    勇者「掴まってて」

    遊び人「何――……」

    勇者「……信じて」

    遊び人「……」

    ギュッ

    遊び人「……――うん」


    エジンベア勇者「って、ちょっと待ちなって」


    勇者「……せーので、いくよ」

    遊び人「……うんっ」ギュッ


    エジンベア勇者「え?さっきの話聞いてた?ここから落ちたらマジで死ぬ――……」



    勇者「せーのっ!!!!」


    バッ!!!!


    エジンベア勇者「……――っ!!!!?」

    491 = 1 :


    ダッ!!!!

    エジンベア勇者「賢者様ぁ!!!!」

    エジンベア勇者(マジで飛び降りて逃げるヤツがあるか!!!!)

    エジンベア勇者(まずい!!!賢者様を受け止めるにしても、二人が落ちたのは神殿の後方……!!!!)

    エジンベア勇者(後方は警備の人間なんて殆どいない!!!!)

    エジンベア勇者(まずいまずいまずいまずい!!!!!!)



    ヒュウゥゥゥゥ



    遊び人「っ……!!!」ギュゥゥ

    勇者「……!」

    勇者(落ちる方向も、場所も、大丈夫)

    勇者(……――頼むよ)

    勇者「っ……」スゥゥゥゥ

    492 = 1 :










    勇者「カンダタァ――――!!!!!!!!!!!!!!!」





    カンダタ「応よォクソガキィ!!!!!!!!!!!」





    493 = 1 :


    遊び人「!!!?」


    エジンベア勇者「なはっ!!!?」




    カンダタ「お前ら!!!!作戦通りだ!!!!左右に引っ張れ!!!!」


    カンダタ子分「お前ら!!!今だ!!!!」


    カンダタ子分B「よっしゃあ!!!!」


    カンダタ子分C「受け止めろォ!!!!」


    シュルルルルル!!!


    バァッ!!!


    遊び人「あれは……!!?」

    勇者「落ちるよ!舌に気をつけて遊び人!!」

    遊び人「っ……!」


    ドサァッ!!


    グインッ グイングイン


    遊び人「……っ!?……なんとも、ない?」

    勇者「キャタピラーの糸で作った布だよ!!」

    494 = 1 :


    ガバッ!!

    勇者「そんな事より、急ぐよ!!」

    遊び人「えっ――……」


    パカラッ


    カンダタ子分「勇者!!お前の馬だ!!乗れ!!!」

    カンダタ「ボサッとしてんな!!!!ずらかるぜ!!!」

    勇者「ああ!!」

    遊び人「カンダタ……!!!?なんでっ」

    ギュッ

    勇者「説明は後でする!!!今は逃げるよ遊び人!!!!」

    遊び人「……――うんっ!!!!」



    ヒュォォォォゥ……



    エジンベア勇者「……あっちゃあ」

    エジンベア勇者(逃げられちゃったかぁ……こりゃ面倒くさい事になりそうだ)

    エジンベア勇者(……しかし)


    勇者『……お前達に、遊び人は任せられないって事だよ!!!!』


    エジンベア勇者「……あれが、魔物ねぇ」


    …………
    ……


    495 = 1 :

    今日はおしまいです

    496 = 1 :

    >>482
    ×遊び人(商人の商売の話も、もっち聞きたかった)
    ○遊び人(商人の商売の話も、もっと聞きたかった)

    497 :

    おつ

    498 :

    きた!乙

    499 :

    乙でございます

    500 :

    乙!!待ってたよ!!


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