元スレ勇者「ハーレム言うなよ!絶対言うなよ!」武道家「4よっ!」
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951 = 1 :
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――某国の街道・森の中――
パカラッパカラッ
ヒヒィーン!!
御者「はぁっ!はぁっ!」
「止まれ!!止まれって言ってんだろうが!!!」
御者「ひぃっ!!……クソッ!!」
野盗「止まらねえと全員ブチ殺すぞ!!!!止まれ!!」
御者(最近噂になってる野盗だ……!!数が多い!)
御者2「おい!早くっ、早く前に進んでくれ!」
御者「これでも全速力だ!これ以上速度出したら中に居る客が」
パカラッ!! パカラッ!!
野盗「へへ、身軽な俺達に追いつかれねえと思ったかよ!」
御者2「あ、あぁっ!」
御者(クソッ!追いつかれた……!)
――――――――――――
――馬車の内部――
「あぁっ!ルビス様……!」
「こんなの聞いてない!なんで野盗が」
男の子「おかあさん……!」
赤ん坊「あぎゃあ!あぎゃあ!」
女「……!」
ギュッ
女「大丈夫……あなた達は私が護るからね……!」
952 = 1 :
―――――――――――――
ザァッ……
ギシ…
御者「……っ」
野盗の頭「やっと止まりやがったな……よっと」
スタッ
野盗の頭「それで?これは何を運んでやがる?……駅馬車か?」
御者「……」
野党の頭「中に人間が居るな?」
御者「っ……」
野盗の頭「……おいお前ら」
「「「うすっ!」」」
野盗の頭「男は全員身包み剥いで四肢を切り落として草むらにでも転がせ」
野盗の頭「女は攫う。手始めに裸にして犯してやれ」
御者「なっ!や、やめ」
ザンッ
御者「うあぁっぁぁっ!!!!」
ドサドサッ!!
野盗の頭「さっき手綱を握ってたのはその指だよなぁ?」
ジャキッ
野盗の頭「じゃあもう片方の手も差し出せ」
野盗の頭「全部切り落としてから四肢を切り落としてやる」
御者「ひっ、ひ……!」
野盗の頭「それじゃお前ら!!お前らはとりかかr」
……
野盗の頭「……?」
御者「はっ……くっ……!?」
野盗の頭「……」
野盗の頭(蹄の音)
ダガダッ ダガダッ
野盗の頭「…………誰だ?」
953 = 1 :
「お前ら!!!とまれ!!!」
「「「おいーっす」」」
パァン!
ヒヒィーン!!!
パカラッ パカッ…
野盗の頭「……?」
御者「……っ」
御者(こいつらの身なり……野盗の様な……!!)
御者(まさかこいつらの仲間が……!!)
「おお、思ったよりも多かったな」
「親分、どうするんすかこれ」
野盗の頭「……なんだァ?てめえら」
スタスタ…
「……てめえが親分かよ?そんな雰囲気だが」
野盗の頭「だったらなんだ」
ヒュ
野盗「え」
ゾドン!!!!!
覆面の男「奪う」
954 = 1 :
ザワッ!!!
野盗達「ボス!!!」
野盗「ぐあああああああっ!!!!!」
野盗(腕がっ!!!おれ、俺の腕が)
ザッ
野盗の頭「っ!!」
スタスタ
覆面の男「大人しくしろや?まあ大人しくしても切り落とすけどな」
野盗達「てめえっ!!!」
ダッ
野盗A「クソがぁっ――!!!!」
野盗B「っの野郎!!!」
野盗C「だらぁっ――!!」
覆面の男「血の気が多い奴らだぜ」
ガキィン
「!!?」
覆面の男「……よくやった、子分A」
子分A「親分息くさい」
覆面の男「今関係なさすぎないそれ!!!!?」
野盗の頭「な、なんだ」
野盗の頭「なんなんだてめえらは!」
覆面の男「んなもん決まってるだろうが」
ザンッ
野盗の頭「ぎゃああああああ!!!!!」
覆面の男「てめえと同じく悪党だクソカスが」
955 = 1 :
…………
ドサッ
子分A「っと、よし」
子分A「親分、全員の膝の皿砕いておきましたぜ」
覆面の男「じゃあお前らはその野盗どもの金目の物全部ぶんどっとけ。俺は馬車の方行く」
「「「うーっす」」」
スタスタ…
御者「ひ……あ」
覆面の男「……」
御者「いのち、命だけは、勘弁を」
ドカッ!
御者「んぐふうっ」
ドサッ
覆面の男「……金になりそうなもの用意しとけ」
スタスタ
――馬車・内部――
ガラッ…
「「「「ひいぃっ!!!」」」」
覆面の男「おー?六人か……意外と乗ってやがったな」
覆面の男「おいてめえら。有り金全部よこしな」
覆面の男「交通料だと思え。逆らったら外の野盗共みたいにしてやるぜ?」
「……っ!」
ガサッ… スッ
「命だけは……!」
「わ、私も!金ならいくらでもやる!」
「お願いです、命は」
覆面の男「へへ、素直でいいこったな……そんじゃ」
956 = 1 :
ザッ
覆面の男「……なんだ」
男の子「……っ!!」
覆面の男「なんだ、ガキ」
男の子「おかねはっ……わたさないっ」
男の子「おかあさんのお金は、ぜったいわたさないっ」
女「な、何を言ってるの!!やめなさいっ」
「そうだ!逆らうな!!」
「なに言ってるんだこのガキ!!黙らせろ!!」
覆面の男「……なんでだ?ボウズ」
男の子「このお金は、しんぷさんにわたすためのお金なんだ……っ」
男の子「妹は、まだあかんぼうなのに……びょうきで」
男の子「となりのくにのしんぷさんしかなおせなくて……!」
男の子「おかあさんがやっと、おかねをためたのに……!」
赤ん坊「ふぁぁぁ!ふやぁぁぁ!」
覆面の男「……」
男の子「なんでおまえなんかにやんなくちゃいけないんだぁっ!」
男の子「ぜったいわたさないっ!ぜったいぜったいに!」
957 = 1 :
女「もういいのっいいからっ」
覆面の男「……ボウズ」
男の子「っ……!」フルフル
覆面の男「……いい度胸してやがるぜ」
女「すみません!!お願いです子どもには手をっ」
ポン
ナデナデ
覆面の男「……」
男の子「……っ……?」
女「え……?」
覆面の男「……ボウズ、俺ぁ、悪党だ」
覆面の男「外に転がってる奴らも悪党だ。悪党は腐るほど居る」
覆面の男「この世は悪党ばっかりだ……だから」
覆面の男「母ちゃんと、妹を護れるのはボウズ。お前だけなんだ」
覆面の男「わかるか?」
男の子「……」
覆面の男「だからお前は強くなれ。飯をいっぱい食え。他人を蹴落としてでも偉くなれ」
覆面の男「お前が強くなりきるまでは、母ちゃんと妹を危険から逃がせるように頭を回せ勉強しやがれ」
覆面の男「……逃げるな」
覆面の男「どうする事もできねえままに母ちゃんと妹が危険な目に遭っちまったら、逃げずに立ち向かえ」
覆面の男「一生後悔するハメになんぜ」
男の子「……?」
覆面の男「…………」
ゴソッ
覆面の男「オラ、まずは俺から母ちゃんを護ったご褒美だ」
ジャラッ
男の子「!……わぁっ」
覆面の男「こんくらいの金貨がありゃ半年はやっていけるだろうよ」
女「そ、そんな!いただけませんっ」
覆面の男「いいから受け取れや。俺がやるって言って――……」
覆面の男「……」
女「……?」
覆面の男「……あんた」
覆面の男「…………そうか」
覆面の男「そっか、そりゃ。こんなボウズに育つわけだ」
958 = 1 :
女「何を……」
覆面の男「それじゃ、俺はずらかるぜ」
ナデナデ
覆面の男「ボウズ。言った事全部守れよ?」
覆面の男「オレぁ悪党だから、気が変わってまたこの馬車を追いかけてきちまうかもしれないぜ?」
男の子「……!っ、うん!させない!!」
ガラッ
ストッ
覆面の男「よし、オラ!てめえ馬車をさっさとだしやがれ!」
御者「は、はひぃっ!?」
女「あ!あのっ!お礼を――……」
覆面の男「……」
クルッ
パサッ
女「言わ……」
女「……」
「……この顔の傷、覚えてねえかな。アンタは」
「アンタがもし覚えて無くても、俺は忘れらんねえ」
女「……」
「…………ありがとう」
「今はこんなんになっちまったけど」
「俺は、あの時の、あのパンとチーズに。すげえ救われたんだ」
女「あなた……!!」
959 = 1 :
パサッ
覆面の男「っし!!オラァ!!!さっさと馬車出せ!!!」
御者「は、はひぃっ!!!」
パァァン!!
ヒヒィーン!!!
ガラッ
ガラガラガラ!!
ダカダッダカダッ!!
女「っ……!ありがとう」
女「ありがとう!ありがとう……ぼうや!!」
ガラガラ…
ガラ…
・
覆面の男「……へっ、坊やって年かよ」
覆面の男「おい!そっちの馬車も解放しちまえ!」
子分A「えー?いいんすかー?」
覆面の男「野盗共の有り金でも十分な稼ぎだろ。引き上げだ」
子分A「……親分」
覆面の男「あ?」
子分A「なんか上機嫌すね?」
覆面の男「……どうだろうな」
子分A「にやにやしててきもい」
覆面の男「今ので不機嫌になりましたけども」
960 = 1 :
――――――――――
…………
……
…
・
――某国・街角――
ガヤガヤ
覆面の男「オイ、質屋には行って来たか?」
子分A「いや、質屋には子分D達が行ってますけど」
覆面の男「そうか。戻ってきたら買出し行って来いよ子分A」
子分A「めんどくさいなあ」
覆面の男「お前子分って自覚ある……?」
子分B「しかし、なんか騒がしいっすね?街の中が」
覆面の男「あー、俺もさっきから気になってたんだが……なんだ?祭りでもあんのか?」
子分C「さっき話をちらっと聴いた限りだと、国連の勇者が来てるらしいっすよ」
覆面の男「国連の勇者?っつうとアレか?」
子分A「ああ、最近制定されたっつう、偉い魔族討伐人の」
子分C「なんでもその一人がここに訪ねて来てるらしっすよ」
覆面の男「へえ」
子分B「はは、興味なさそうっすね」
覆面の男「俺には関係ねえ話だ……さて、と」ザッ
子分A「どこいくんすか?」
覆面の男「散歩だ。子分D達が戻って買出し行ったら棲家に戻ってろ」
スタスタ…
子分A「……変わったなあ」
子分B「え?何が?」
子分A「親分だよ。この前の野盗を襲った後から、なんか物腰が柔らかくなっちまった」
子分C「あー、確かに」
子分A「……ま、いい事なんだけどよ」
子分B「いや盗賊としてはどうなんだろう」
961 = 1 :
…………
ガヤガヤ
スタスタ…
覆面の男「?」
覆面の男(なんだ、あそこやたらと人だかりが)
「勇者様!是非握手を!」
「期待しております!」
「お願いです!是非弟子に……!」
覆面の男「お?」
覆面の男(あれが国連の勇者か……)
覆面の男(ま、盗賊としては近寄りたかぁねえが、顔を覚えておくか)
「魔王など倒してしまってください!!」
「カザーブ勇者様!!」
覆面の男「……」
覆面の男「……」
覆面の男「……」
カザーブ勇者「ははは、皆さん。お任せ下さい」
カザーブ勇者「ああ、押さないで下さい、逃げませんから」
覆面の男「……」
962 = 1 :
・
…
……
…………
――街外れ・裏通り――
スタスタ…
カザーブ勇者「ふう……やっと解放された」
カザーブ勇者(人気があるのは有難いけれど上手く動き回れなくなりそうだな)
カザーブ勇者(しかしそれだけ市民の期待が高いという――……)
ザッ
カザーブ勇者「?」ピタ
覆面の男「……」
カザーブ勇者「……?あの、すみません。通していただけますか?」
覆面の男「……以前は、お世話になりました」
カザーブ勇者「?以前?……どこかで?」
覆面の男「いえね、ほら……盗賊の集落の住人達を駆逐した事があったじゃないですか」
覆面の男「あの時、自分も兵として出兵していたんです」
カザーブ勇者「……盗賊の、集落」
カザーブ勇者「ああ……!あの時の」
覆面の男「……やっぱり」
カザーブ勇者「覚えています、覚えていますとも……ですが」
カザーブ勇者「もう、忘れませんか?あの時の事は」
覆面の男「…………」
963 = 1 :
カザーブ勇者「私は正直思い出したくはないのです。あの時は本当に気分が」
覆面の男「……く」
覆面の男「くふっ」
カザーブ勇者「……?あの、どうされました?」
覆面の男「くはっ、かははははっ」
覆面の男「やっぱり、てめえか」
覆面の男「忘れたいってか、忘れたいってのか」
カザーブ勇者「……?いったい」
ひゅぱ
カザーブ勇者「かぴゃふ」
カパァン!!!!
ばちゃぁっ
びちゃびちゃびちゃ
カザーブ勇者「っ!!?!?!?っっ、っっ!!!!?」
カザーブ勇者(下顎が!!!!わ、私の下顎が!!!!!!)
覆面の男「ふーっ、ふーっ……!!!」
覆面の男「てめえは、母ちゃんや、弟達や妹殺しておいて、忘れるってか」
覆面の男「俺はなぁ、忘れたことァねえぞ」
スルッ
「この傷をてめえに付けられた時からなぁ」
「俺は忘れた事ァねえんだ」
964 = 1 :
――街外れの廃墟・盗賊達の一時的な棲家――
ゴンゴン
子分A「ん?誰だ?」
子分B「親分じゃねえの?出ろよ」
子分A「はいよ。おい、俺の手札いじんなよ」
スタスタ
子分A「……“何か用か?”」
「……“少しだけ、酒を分けてくれ”」
子分A(この声、合言葉。親分で間違いねえな)
子分A「ちょっと待ってくださいよっと」
ガチャッ
子分A「親分おそかったっすね、何やってたん……」
ズル
子分A「……っ……!!?」
ズル ズル
子分B「ああ、親分おかえんなさ……」
子分C「……は?」
子分D「ひっ……!!?」
覆面の男「……」
どちゃっ
子分A「……親分」
子分A「その、肉の塊……なんすか」
子分A「その形、まるで」
覆面の男「……俺は、忘れかけちまってた」
覆面の男「そうだ、全部クソッカスだ」
覆面の男「全部全部糞だ、この世の、全部」
覆面の男「…………俺も、屑で、悪党なんだ」
子分A「……っ」
覆面の男「……」
ジャラッ…
覆面の男「…………この勲章を付けてる奴」
覆面の男「もう一人居やがるはずだ、その中に」
覆面の男「殺してやる」
覆面の男「この際、全員殺してやる」
ギュリッ
覆面の男「この勲章付けてやがる奴ら」
覆面の男「国連の、勇者共……全員、殺してやる」
965 = 1 :
・
…
……
…………
――某国領内・平野――
ドシャッ
覆面の男「はーっ……はーっ」
覆面の男「はくっ……はーっ」
「……」
覆面の男「はーっ……はーっ」
覆面の男(ダメだ……コイツ、強すぎる)
覆面の男「……殺せ」
「……」
スタスタ
「……お前が国連の勇者達を連続で殺している犯人か」
覆面の男「……んくらい、分かってるんだろうが」
覆面の男「俺の、俺達の作った罠に全部気づいてやがったくせに」
「ああ。あの落とし穴か。見事なものだったよ」
「前例がなければ私達も気付かなかっただろうな。しかし前例が二件あった」
「……国連の勇者達を狙うのは私怨か?」
覆面の男「……殺せ」
「…………」
覆面の男「……」
「……話してくれないか。国連の勇者達を狙った理由を」
………………
「……そうか、それでか」
覆面の男「あいつらは……全員クソだ。……あいつらだけじゃねえ」
覆面の男「人間ってのぁ、大抵がクソだ。救いのねえ奴らばっかりだ」
覆面の男「……一握りの人間以外、死んだほうがマシだ」
「……」
「……お前が落とし穴の中で殺した二人も、救いが無かったと思うか」
覆面の男「……思うぜ」
覆面の男「あいつら……最後は、色んな手で……命乞いしてやがった」
覆面の男「二人目の奴は、三人目の情報を……全部、勝手に喋り始めた」
覆面の男「三人目は……俺の、村を……滅ぼした一人だった」
「……」
覆面の男「……」
覆面の男「…………穴の中でもがいて死ぬ」
覆面の男「それが、どんな気持ちか……分からせてやりたかった」
966 = 1 :
「……」
覆面の男「……なあ」
覆面の男「殺せよ……早く」
「お前の仲間達の居場所は」
覆面の男「もう逃がした……早く、殺せ」
「……なあ」
「お前が今回殺そうとした二人は……お前の言う一握りの人間だ」
「あいつらがお前の村に居たなら、きっとお前の村は滅んでいなかった」
覆面の男「……」
「……確かに、これまでお前が殺した勇者達は悪い噂を頻繁に聴いた」
「だがあいつらは」
「勇者オルテガと勇者サイモンは違う」
「あいつらは本当の勇者だ」
「……だから、こうして盗賊の俺も奴らの力になっているんだ」
覆面の男「……は……!?てめえ、盗賊職なのかよ……!?」
「……元は僧侶だがな」
覆面の男「ははっ……わかんねえ野郎だ」
「なあ、悪党」
覆面の男「なんだ……悪党」
「お前も俺の仕事を手伝わないか?」
覆面の男「…………は?」
「お前の子分達共々、俺の盗賊団に入って色んな事を手伝って欲しい」
「様々な地方に味方を作るようにしているんだ。お前にはこの地方を担当してほしい」
覆面の男「お前、正気か?」
「正気さ……ああ、そういえば名乗りもまだだったな」
盗賊父「俺の名はカンダタ。悪党だ」
967 = 1 :
・
…
……
…………
―――――――――――
――某国・酒場――
カラン…
盗賊父「……」
覆面の男「……」
盗賊父「……すまないな」
覆面の男「へっ……大盗賊カンダタ様が、えれぇしょぼくれ様じゃねえか」
盗賊父「…………」
覆面の男「……」
盗賊父「……敵は、予想外に多かった」
盗賊父「オルテガも、サイモンも……こんな事になるなんて」
覆面の男「……」
盗賊父「…………もうこの地方以外の手下達は、解散させた」
覆面の男「……次は俺達か」
盗賊父「……」
覆面の男「………………反吐が出るぜ」
盗賊父「……」
覆面の男「アンタらしくもねえ。世界の終わりみてえなツラしやがって」
覆面の男「てめえの命が狙われるから、手下の俺らの命もあぶねえ」
覆面の男「だから解散させて、自分は旅に出るってか」
盗賊父「……まだやらなければならない事がある」
覆面の男「……勝手にしろ」
ガタッ
覆面の男「あんたのその偽善者面、毎度苛々すんぜ」
盗賊父「……」
覆面の男「……なあ、カンダタ親分」
覆面の男「いや……もう親分でもなんでもねえな」
覆面の男「あんたはもう、カンダタでもなんでもねえ」
盗賊父「……?なにを」
覆面の男「……アンタ。カンダタの名を捨てろ」
覆面の男「…………達者でな」
スタスタ
バタン…
盗賊父「……」
968 = 1 :
――――――――――
バタン
スタスタ
覆面の男「……」
子分A「……親分」
子分B「……」
子分C「……」
覆面の男「……準備しろ」
スタスタ
覆面の男「夜明け前までには出るぜ」
子分A「大親分は……?」
覆面の男「盗賊団は解散だとよ」
子分B「……やっぱり」
子分C「じゃあ、もう……」
覆面の男「……」
ザッ
覆面の男「……これからは、前みてえに俺が頭だ」
覆面の男「ただ……いいかお前ら」
覆面の男「今日をもって、俺がカンダタだ」
覆面の男(俺がカンダタの名前で悪事を働きまくる)
覆面の男(そうすりゃ、“ヤツら”はカンダタの名に反応して俺を探そうとするだろう)
覆面の男(親分の存在は“ヤツら”からだいぶ遠ざけられるはず)
覆面の男(親分みてえに義賊みてえなマネはしねえ……だが、親分には借りもある)
覆面の男「…………――これから、俺をカンダタって呼びな」
969 = 1 :
……………
……
…
・
「それでは死刑囚カンダタ!前へ!」
ザッ
カンダタ「……」
ああ、真っ暗だ
真っ暗だ
地鳴りが耳ん中をぐるぐる回ってやがる
縋れるものは何も
何も
カンダタ「……」
「それでは……槍兵!」
「「はっ!」」
ジャキッ
「……死刑囚の背を突いて、火口へ」
カンダタ「……」
ああ、これで終わりか
くだらねえ幕引きだった
縋れる物なんざ何もねえ
クソみてえな人生だった
970 = 1 :
……
……
……
……
……
……
……
……
……――何も、無かった?
いや
俺は、知ってた筈だ
その縋れる何かは、確かにあった
俺のクソみてえな人生を
クソみてえな俺を救ってきたモノが
確かにあったはずだ
971 = 1 :
カンダタ「……」
クルッ
「「「!!!?」」」
カンダタ「……」
エジンベア勇者(こっちを向いた……?)
ダーマ勇者「何を……」
「貴様!何のつもりだ!!」
カンダタ「俺の命は俺のもんだ」
ニタァ
カンダタ「俺が終わらせる」
ダッ!!
「なっ!!!?」
ダーマ勇者「きゃっ……!?」
エジンベア勇者(自分で背中から飛び込みやがった……!!)
カンダタ「あばよ!!!犬畜生共!!!あばよ!!!魔物共!!!」
カンダタ「先に地獄で待ってるぜ!!!!!」
972 = 1 :
オオオオオオオオオオオオオオオオオ
……
カンダタ(ああ、背中が熱ぃ)
……
カンダタ(視界が速度を落としてやがる)
……
カンダタ(視界が背中の方から緋色に染まっていくのが分かる)
……
カンダタ(……)
……
カンダタ(笑えねえ)
……
カンダタ(やめてくれ)
……
カンダタ(最後の最後で)
……
カンダタ(ああ)
……
カンダタ(火口から、火の光が差し込んで)
……
カンダタ(一本の白い光が)
カンダタ(ああ)
カンダタ(これじゃまるで)
973 = 1 :
カンダタ(まるで――……)
974 = 1 :
【蜘蛛の糸】-完-
975 = 1 :
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466192590/
次スレです
976 :
乙
羅生門もええね
977 :
投下&スレ立ておつですー!初めのイラストはカンダタかな
イケメンすなぁ…
978 :
おおぅ…乙でございます(ウルウル…
979 :
乙
話が進むにしたがってどんどんドス黒さが増していくねえ
にしてもあの覆面パンツがこんなイケメンとは・・・
980 :
乙です
カンダタがかっこいい・・・
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