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    元スレ勇者「ハーレム言うなよ!絶対言うなよ!」武道家「4よっ!」

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    551 :

    おつ

    552 :

    乙でございます

    555 :

    乙です

    熱いぜカンダタ

    556 :



    ……
    …………


    パカラッ パカラッ


    勇者「……」

    遊び人「……」

    カンダタ子分A「……!見ろ、森を抜けるぞ」


    ――ダーマ北・高台――


    パカラッ パカラッ

    ズザァッ……


    勇者「……追っ手は」

    カンダタ子分A「来てねえ……みてえだな」

    勇者「……」

    カンダタ子分A「おい、こっから先はお前らで行けるか?」

    勇者「え?」

    カンダタ子分A「依頼だと“逃がす”ってとこまでしか聞いてねえ」

    カンダタ子分A「もうお前一人でも大丈夫だろ」

    勇者「……子分Aさん、まさか」

    カンダタ子分A「……じゃあ、気をつけて逃げろよ」

    勇者「ま、待ってよ!!」

    ガシッ!

    勇者「まさかカンダタの所に……!?」

    カンダタ子分A「……離せよ勇者、早く逃げろバカ」

    557 = 1 :

    勇者「だ、だったら!だったら僕も行く!!」

    カンダタ子分A「……っ!!」

    遊び人「勇者ちゃん、何言って……!」

    勇者「依頼したのは僕だ!!遊び人は逃がせたんだ!だから――」


    カンダタ子分A「ふざけた事言ってんじゃあねえぞカスがぁッ!!!!!!!」


    バキィッ!!!!

    勇者「ッッ!!!!」

    ドシャアッ!!

    遊び人「勇者ちゃんっ!!」

    カンダタ子分A「親分があそこに止まったのはてめえを逃がすためだ!!てめえと嬢ちゃんを逃がすためだ!!」

    カンダタ子分A「そんな事もわかんねえのか!!お前の仕事は嬢ちゃんを守りきる事だろうがよ!!!」

    勇者「……っ!!で、も」

    カンダタ子分A「親分が選んだんだ!!お前のちっせえクソみてえな八方美人な精神で泥塗んじゃねえ!!!てめえが来ても何にもならねえ!!」

    勇者「……」

    遊び人「……」

    カンダタ子分A「……おい、嬢ちゃん」

    遊び人「えっ……はい……?」

    カンダタ子分A「勇者と一緒に早く逃げろ。そいつ、やる時はやるのにだいぶヘタレみてえだからよ」

    カンダタ子分A「そいつがへこたれそうな時は、尻蹴り上げるなりで渇入れてやってくれや」

    558 = 1 :

    遊び人「……はい」

    カンダタ子分A「ん、いい女だ」

    勇者「……子分Aさん」

    カンダタ子分A「……じゃあな勇者」

    遊び人「子分Aさん!」

    カンダタ子分A「!」

    遊び人「…………ありがとう」

    遊び人「カンダタにも、伝えておいて」

    遊び人「……ありがとう」

    カンダタ子分A「……へっ、本当に良い女だ」

    ダッ

    カンダタ子分A「あばよ!」

    パカラッ パカラッ

    カラッ ラッ……





    勇者「……」

    遊び人「……」

    勇者「……ごめん、遊び人」

    スクッ

    勇者「逃げよう……とにかく、ここを」チラッ

    ビュゥゥゥ……

    勇者「……」

    勇者「ここを……離れよう」

    遊び人「……うん」


    …………
    ……

    559 = 1 :



    ……
    …………

    パカラッ パカラッ


    勇者「……」

    遊び人「……」


    ポツ ポツ

    パラ パラ


    勇者「……!雨だ」

    遊び人「……見て、向こうから黒い雲が来てる」

    勇者「早いうちに暗くなりそうだね……一旦、この当たりで休もう」



    ――ダーマ北・岩山の横穴――


    ザッ ザッ


    勇者「……ここなら、馬も入りそうだ」

    「ブルル……」

    勇者「ずっと走りっぱなしだったもんね……ありがとう」

    ガシャッ

    勇者「……遊び人、手枷、見せて」

    遊び人「え?でも……」

    勇者「それじゃ色々不便だろ?……なんとかしてみる」

    ガリッ

    勇者「……このっ、くそ、固いな」ガリッ ガツッ

    遊び人「勇者ちゃん、私は別に大丈夫だよ!」

    遊び人「そんな事より、勇者ちゃん傷だらけじゃない!そっちを先に」

    勇者「後でいいよ」

    遊び人「……」

    勇者「……後でいいんだ」

    遊び人「……」

    遊び人「……よく、ないよ」

    遊び人「ばか……」

    勇者「…………うん」

    560 = 1 :



    バキィッ!


    勇者「っはぁ!……やっと割れた……」

    勇者「でも手首から完全に外すのは無理だね……銅の剣じゃ真ん中を割るくらいしか……」

    遊び人「……」

    勇者「もう時間もだいぶ費やしちゃったね……」

    勇者「大丈夫?手、痛まない?」

    遊び人「……ううん、大丈夫」

    勇者「魔法は?どう?使えそう」

    遊び人「……っ」

    シーン

    遊び人「……ダメ、みたい」

    遊び人「この枷自体に魔力瓦解の呪文がかけられてるから、完全に外さないと……」

    勇者「じゃあ、帰ったら戦士に頼んでみよっか」

    遊び人「……」

    勇者「……遊び人?」

    遊び人「……」

    勇者「遊び人?どうした?やっぱりどこか」


    ギュッ……


    勇者「って、遊び、人?」

    遊び人「……」

    勇者「……」

    遊び人「……良かった」

    遊び人「無事で、良かった」

    勇者「……うん」

    ギュッ ナデナデ

    勇者「遊び人も。無事で良かった」

    遊び人「……」

    遊び人「……!?」

    ガバッ

    遊び人「勇者ちゃん、その手っ……!?」

    勇者「え?何?」

    遊び人「指の爪っ……!全部剥がれてるじゃん!」

    勇者「ああ、これは、まあ平気平気。一枚残ってるし」

    561 = 1 :

    遊び人「っ……!脱いでっ!!」

    勇者「えぇっ!!?遊び人、うわっ!」

    バッ!!

    遊び人「……!!!!」

    遊び人(凄い傷と痣……!!昔からあるヤツじゃなくて、新しい)

    遊び人(しかも……)

    スッ

    ズキン!!

    勇者「っ……く!」

    遊び人「……五ヶ所」

    遊び人「ううん、それ以上……折れてる……!」

    勇者「あんまり、触られると痛いかな……」

    遊び人「……」

    遊び人「ボロボロ、じゃない」

    勇者「なんとかなるもんだよ」

    遊び人「……バカじゃないの」

    勇者「あはは、ひっどいなぁ」

    遊び人「……」

    勇者「……?……遊び人」

    遊び人「……」

    遊び人「……っ」

    ポロ

    遊び人「バカじゃ、ないの」

    遊び人「なんで、なんで勇者ちゃんは、そうなの」

    遊び人「いっつも、ぼろぼろになって」

    ポロポロ

    勇者「……」

    遊び人「いい、めいわくよ」

    遊び人「ゆうしゃちゃんが、こんなふうになるならっ」

    遊び人「こんなふうになるならっ……!!」

    勇者「……」



    ――――――――――――



    ムオル勇者『俺にしてみれば、それらはただの愚行だ。他人の事を考えたふりをした、極めて利己的な行動だ』

    ムオル勇者『全て匹夫の勇だ。下策であり、餓鬼の空想。……それらが偶々上手くいったにすぎない』



    ――――――――――――


    勇者「……」

    勇者「……ごめん」

    562 = 1 :

    遊び人「っ……!!!」

    遊び人「なんでいちいち謝るのっ……!!」

    遊び人「勇者ちゃんがそんなんじゃ!!!!わたし、どうすればいいのよっ!!!」

    遊び人「私っ……!!わたしっ……!!」

    遊び人「賢者の一族の、くせにっ……!!なんの力も無い……!!」

    遊び人「迷惑かけて、ばかりでっ……!」

    遊び人「なんにも……できないっ……!!」

    勇者「……」

    勇者「……」

    勇者(それは、僕のセリフだ)

    勇者(僕は、何ができた?)

    勇者(確かに、遊び人を転職から遠ざける事ができた)

    勇者(でも、その手助けを頼んだカンダタは……)

    勇者(……)

    勇者(そして、またこうやって悩む事しかできない)

    勇者(結局、僕は)

    勇者(自分のために、ウジウジと)

    遊び人「っ……っ……!!」

    勇者「……遊び人」

    勇者「冷えてきた。火を熾そう」

    勇者「とりあえず……今を凌ごう」


    …………


    パチパチ……

    遊び人「……」

    勇者「……」

    遊び人「……勇者ちゃん」

    勇者「ん?」

    遊び人「さっきは……ごめん」

    勇者「……ううん、僕こそ」

    遊び人「……」

    勇者「……」

    563 = 1 :

    勇者「えっと……とりあえず、早朝明るくなる前にここを出ようか」

    勇者「多分、その頃には雨も止むと思う」

    遊び人「……ん。そだね」

    遊び人「でもその後はどうするの……?この先って確か」

    勇者「うん。海で行き止まり。だからあと一日経ってからダーマ方面へ戻って、アッサラームに一度落ち着こうと思う」

    勇者「そうしたらポルトガに行こう」

    遊び人「……一日置くのは、捜索が分散するから?」

    勇者「だね。ダーマ付近に戻ってくるとは思わないだろうし、もしそれを読まれたとしても来賓の人達の警護やら誘導やらで人員は割かれてると思うから」

    遊び人「……だったらあと一日ここに居れば良いんじゃないの?ここなら見つかる心配も」

    勇者「なさそうだけど……ちょっと行っておきたい場所があるんだよ」

    遊び人「行っておきたい場所……?」

    遊び人「……!……まさか」

    勇者「……うん」


    勇者「遊び人と、賢者の昔の家」

    勇者「“ガルナの塔”」


    遊び人「……」

    勇者「……駄目かな」

    遊び人「……ううん。行きたい」

    遊び人「連れて行ってくれる……?勇者ちゃん」

    勇者「……うん。行こう」

    勇者「そうと決まれば、今日はもう眠ろうか。雨も降ってるし食事は明日の朝に調達しよう」

    勇者「寝床、準備するね」

    564 = 1 :

    今日はおしまいです

    565 :

    乙でございます

    566 :

    乙です。カンダタも子分もすごくかっこいい。

    567 :

    おつおつ

    568 :

    カンダダとAのしぶとさに期待

    569 :

    カンダタ親分、一生ついてきます。

    572 :

    あげんな

    573 :

    4年もたって完結しないのかよ
    もはやSSと呼べる長さじゃないね

    575 :

    そろそろ来てくれるさ

    576 :



    ……


    ホーホー…


    遊び人「……」

    勇者「……」


    ギュリッ…!


    勇者「……っ……!くふっ……!」

    勇者(眠れない……)

    勇者(骨が痛む。体のあちこちが熱を持ってる)

    勇者(内臓が焼けるみたいだ。妙な汗が止まらない)

    勇者(一旦体を休めるとダメだな……痛みを完全に自覚しちゃう)

    勇者(……くそ、くそくそっ)

    勇者(こんなのワケないぞ)

    勇者(こんなのワケないぞ、くそ)

    勇者(ちくしょう)


    ズキィィッ!


    勇者「――――!!」

    勇者(何かっ……!)

    パシッ モグッ

     ガリッ!!

    勇者「ふ、ぐ」

    勇者(石ころでいい、強く喰いしばる事ができれば)

    勇者(とにかく、遊び人を連れて皆と合流するまでは……そして)

    勇者(イシス戦士さんにお詫びして、カンダタに報酬を渡すまでは)

    勇者(体……もってくれよ)

    勇者「……つ、っ……!!」


    遊び人「……」

    遊び人(背中合わせでも分かる)

    遊び人(勇者ちゃんが苦しんでるのも、後悔してるのも)


    勇者「……ふぅっ……!」


    遊び人(……)

    577 = 1 :

    …………


    遊び人「……」

    モゾッ

    遊び人「……」


    勇者「……」


    遊び人(……やっと眠りについたみたい)

    遊び人「……」

    スッ

    遊び人「……」

    ナデ

    勇者「……ん……」

    遊び人「……傷、深い」ボソッ

    勇者「……」

    遊び人「……」

    勇者「……」

    遊び人「……」


    遊び人(私には、僧侶みたいに勇者ちゃんの傷を治せない)

    遊び人(それどころか、傷付けてばっかりだ。あの時、勇者ちゃんが帰って来た日も。今日も)

    遊び人(ねえ、勇者ちゃん……私の事……恨んでる?)


    勇者「……」


    遊び人(……恨んで、くれないんだろうなあ)

    遊び人(いっそ、私を憎んで、恨んでくれたらいいのに)

    遊び人(きっと勇者ちゃんは、それも絶対許さないんだろうな)


    勇者「……う……」

    勇者「…………すぅ……」

    遊び人「……」

    遊び人(ねえ、私は何ができる?)

    遊び人(私はどうすればいいんだろう)

    遊び人(貴方のために)

    遊び人(どうすれば)


    …………
    ……

    578 = 1 :

    チリリリリ……


    勇者「……ん」

    勇者(眠ってたのか……少し楽になってる)

    遊び人「起きたの?勇者ちゃん」

    勇者「え?あ、遊び人」ガバ

    遊び人「私も今起きたの……まだ日は昇ってないね」

    勇者「ああ、そだね。それじゃ出発しようか」

    遊び人「うん」


    ……


    パカラッ パカラッ


    ――ダーマ地方・北部――


    勇者「すっかり雨もやんでるね。雨量が多くて降雨時間が短いとは聞いてたけど……」

    遊び人「だから明るくなるのも少し遅いの。隠れて行動するにはいいかもね」

    勇者「まあね……正直、昨日はああ言ったけどガルナの塔付近にも兵が捜索派遣されてないとは言えないからなあ」

    勇者「だから一応保険の為に人が作った道を行くのはよそう。隠れながら進もう」

    遊び人「うん」




    ……


    パカラッ パカラッ


    勇者「……あの塔かな?少し見えてきた」

    遊び人「……!」

    勇者「……どう?」

    遊び人「うん……だんだん、道も思い出してきた」

    遊び人「この景色も、あの塔も……私、昔見た事ある」

    勇者「決まりだね。じゃあちょっと急ぐよ掴まってて」

    遊び人「うん」

    ギュッ…

    遊び人「……」


    オォォォォオォ…


    遊び人(……なんか嫌な雰囲気)

    遊び人(ガルナであるお姉ちゃんが死んだから、ルビス様の加護が薄くなってるんだ)

    579 = 1 :

    パカラッ… ザッ

    勇者「よいしょ……遊び人。手を」

    遊び人「大丈夫だよ勇者ちゃん。降りられるよ」

    ズザッ

    勇者「……着いたね」

    遊び人「……うん」



    オォォォォォォ…



    ――ガルナの塔――




    「ブルル…」

    勇者「お前もありがとうね……しばらくこの陰で休んでてくれよ」

    「ブル…」


    遊び人「……」


    勇者「……遊び人」

    遊び人「……」

    勇者「……入ろうか。また雨が降りそうだ」

    遊び人「……うん」


    ――ガルナの塔・内部――


    スタ……

    勇者「……」キョロキョロ


    シーン…


    勇者「……ちょっと待ってね」ヒソヒソ

    遊び人「?」

    勇者「これでいいか……よっと」

    ヒュッ


    コーン 

    コーン…

    ーン…






    勇者「……」

    遊び人(……誰の足音も、衣擦れの音もしない)

    勇者「……音が届く範囲には誰も居ないみたいだね。進もう」

    580 = 1 :



    ……
    …………


    スタスタ


    勇者「……」

    遊び人「……」

    遊び人(……私が子供の頃と、全然雰囲気が違う)

    遊び人(私達が住んでた部屋ってまだ残ってるのかな)


    ―――――――――


    遊び人『おねーちゃんのばかー!』


    賢者『何とでも言いなさい』


    ガルナ『こらこら、仲良く。ね?』


    ―――――――――


    遊び人「……お爺ちゃん」ボソッ

    勇者「え?何?」

    遊び人「ん?ごめん、なんでもない」

    勇者「……昔を思い出す?」

    遊び人「少し、ね」

    スタスタ

    勇者「……ごめんね」

    遊び人「なんで謝るの」

    勇者「勝手に行き先決めちゃったからさ」

    遊び人「ううん……私も来たかったから」

    遊び人(…………あれ?)

    ピタッ

    勇者「ん?どうした?」

    遊び人「……ねえ、勇者ちゃん」

    遊び人「なんで勇者ちゃんはここに来たかったの?」

    581 = 1 :

    勇者「……」

    遊び人「なんで勇者ちゃん、さっきから……塔の順路から外れて、離れに向かってるの?」

    遊び人「最初来た人って、大抵騙されるのに」


    遊び人「私達の家が離れの階段から行けるの、知ってるみたい」


    勇者「……」

    遊び人「どうして」

    遊び人「私達の家までの道のりを知ってるの?」


    勇者「……えっとね……とりあえず進みながら話すよ」

    遊び人「……?」


    スタスタ


    勇者「……実はね、あの時テドンを目指してアリアハンを発った時、賢者はテドンに直接来なかったんだ」

    遊び人「え?」

    勇者「先に僕をテドンに置いて、どっかに行っちゃったんだ。賢者がテドンに来たのは一週間後くらいだったんだよ」

    勇者「その一週間の間に、賢者はここを訪れていたらしい」

    遊び人「お姉ちゃんが……?でも、何をしにここに?」

    勇者「……」

    遊び人「……?」

    勇者「…………わからない」

    勇者「でも、落日の前日にさ」

    勇者「賢者に言われたんだ」

    582 = 1 :

    ―――――――――――



    『この先、もし私に何かあったら』


    『私達の昔の家に訪れて欲しいの』


    『これからその経路を教えるわ』


    『その場所に……あの子に託したいものがある』



    ――――――――――――


    遊び人「託したいもの、って」

    勇者「……」

    遊び人「……」

    ギュッ

    遊び人「……昔の私達の家って言ったんだよね」

    勇者「うん。賢者はそう言ってた」

    遊び人「だったら、案内は任せて。近道も知ってる」

    遊び人「ついてきて。勇者ちゃん」


    …………
    ……

    583 = 1 :

    ――ダーマ・大聖堂――



    「結局賢者様は連れ去られたと!?」


    「魔族の男も捕らえられなかったとか……」


    「なぁにをしているんだ国連の奴らめが!!」


    ザワザワ


    神官「ああ、本当に大変な事になっちゃったなぁ……」

    命名官「騒々しいねえ。帰らせてはくれんかのう……眠いんじゃよね」

    神官「ダメに決まってんでしょう!この一大事なんですよ!」

    神官「っていうか命名官様、昨日ぐっすり寝てたじゃないですか!私達神官は一睡もできなかったんですよ!」

    命名官「年寄りじゃもの。若いのと一緒にせんでおくれよ」

    神官「あーもう、やだこの暖簾に腕押しババア」

    命名官「あまりにひどいこの小娘」


    スタスタ

    ザワッ…


    神官「!」

    命名官「おや、来たようじゃね」



    騎士団長「皆さん、静粛にお願いします」


    ザッ

    騎士団長「えー、神官の方々、ダーマの聖兵の方々ももうお聞きではあると思いますが」

    騎士団長「賢者様を奪還する計画は叶いませんでした」


    ザワッ


    「どうされるおつもりか!!」

    「救世主が魔族の手におちたのですよ!!事態は深刻だ!!」

    「国連の精鋭達は何をされておられたのです!!」


    騎士団長「……ええと、これからのお話なのですが」

    584 = 1 :

    「ごまかさないで頂きたい!」

    「ダーマは国連へも援助金やその他の支援もしているのです」

    「だというのに賢者様をこうも簡単に魔物に明け渡してしまうとは!」

    「だからやはり若い先導者はあてにならんのだ!!」

    「どう説明されるのですか!!」


    騎士団長(……カスの役にもたたない糞袋共が五月蝿いですね)

    騎士団長「えー、この度は真に――……」


    「あっはっはっはっは!!」


    騎士団長「?」

    「誰だ?」

    「こんな時に笑い?」


    命名官「っくっく、あっはっはっ!」


    神官「ちょちょちょ、ちょっと命名官様!?」

    命名官「悪い悪い、ちょっとおかしくって……くふっ、あははははっ!」

    「ああ、ホラ。命名官の婆さんだよ」

    「どうしたんだろう、気でもおかしく……」

    「笑っている場合ですか命名官様!!一大事なのですよ!!」

    命名官「いやあ、悪いねえ。あまりに滑稽だったもんだから」

    「は?」

    命名官「ぬくぬくと聖堂の中でお祈りしていた坊や達が何を言い出すかと思ったら」

    命名官「他力本願に泣き言をぬかすからさ、おかしくておかしくて」

    585 = 1 :

    「なっ……!」

    「命名官様!何を仰います!」

    神官「うっほぉぉぉぉいババァ様なに言ってんですか!!!!上級の神官の方々に向かって!!!!!」ヒソヒソ!!!

    命名官「あんたちょっと黙ってな」

    「あなたは事の重大さを理解しておられないのだ!!」

    命名官「しとるさ、勿論ね」

    「でしたら――……」


    命名官「だがここでグダグダ言って責任をどうこう空論を捏ねくりまわしている奴らが」

    命名官「現地で動く人間達にその問いを投げかけて足を鈍らせておるのが滑稽でね」


    「……!」

    「なにを、えらそうに」

    命名官「そりゃ御互い様だろうよ、いいかい。ダーマの高位神官とあっても、私らは何者でもないんだ」

    命名官「せいぜいルビス様と神様の御手伝いをして……お祈りするくらいしか脳は無い。私はマリナン様の手助けだけどね」

    命名官「“祈れ、呪うな”……あんたらが急いて事態を悪化させる事のないようにね」

    「しかし……このままじゃ賢者様が!」

    「賢者様が、新たなる世界の主導者が攫われては我々は」

    命名官「くっくっく、さっきあんたらも言ったじゃろうがよ。『若い先導者はあてにならない』ってね」

    命名官「あの華奢な細腕にあんたらの世界を預けるのはお止めよ。情けない」

    命名官「大賢者の血を引くと言えど、あの子はまだ15の少女だ」


    「……」

    「……それは」

    神官「でっ、でも!!」

    「「?」」

    命名官「え?」


    神官「でも、魔物に連れさられたんですよ!!」

    神官「私、賢者様の傍に付いてましたけど……賢者様が命名官様とお会いした時の、あの顔」

    神官「本当に、年相応の少女ってカンジで……!」

    ギュッ

    神官「だ、だったら、余計に救わないと!」

    神官「賢者職への転職も叶わずに、魔物に連れ去られてるんでしょう!?15才の女の子が!」

    神官「それはそれで問題じゃないですか!私なら怖くてトラウマものです!」

    神官「そこは焦りましょうよ、早く助けてあげなきゃじゃないですか!!」

    586 = 1 :

    騎士団長「……」

    「「「……」」」ポカン

    命名官「……」ポカン


    神官「……え?えっと……」

    神官「あの、私、すみません、なんか出過ぎた事」


    命名官「……っぷ、ははっ」

    命名官「いや、いいのさ。そうさね。まだ15の少女なんだ」

    命名官「……ありがとうね」

    神官「へ?へ?」

    命名官「で!だ。さっきは何を言いかけてたんだい?騎士団長さん」

    騎士団長「は、ああ。ありがとうございます」

    騎士団長「賢者様の行方は今も捜索しております。が……一つだけ気がかりな所がありましてね」

    「気がかりな所……?」

    命名官「……――!」

    騎士団長「そこに、予め手をうってあります」

    騎士団長「何か報せがありましたら直ぐにこちらへも報告致します。皆さんはしばらくお待ちを」


    ザワザワ……


    命名官「……ふう、それじゃ私は部屋に戻るとするかね」

    神官「あ、はい」

    命名官「神官よ」

    命名官「さっきはありがとよ、本当に」

    神官「?……??」

    スタスタ

    騎士団長「……命名官様も、ありがとうございました」

    命名官「……」

    騎士団長「あの場を落ち着かせる為に、あのような事を……何とお礼を申し上げてよいか」

    587 = 1 :

    命名官「私はちょっと苛ついただけさ。礼なんてやめてくれるかい」

    命名官(寒気で反吐が出る)

    騎士団長「いいえ、言わせて下さい誓わせて下さい」



    騎士団長「“あなたの励ましには本当に心をうたれました”」


    騎士団長「“それに応える為にあの魔族の男は必ず捕まえて然るべき処置を致しましょう”」


    騎士団長「“この件に協力した仲間があの盗賊以外にも大勢いるでしょうから”」


    騎士団長「“どんな手を使ってもその協力者を割り出して”」


    騎士団長「“全員の首をルビス様の祭壇に捧げて見せましょう”」



    命名官「……」

    騎士団長「……」


    命名官「……楽しみにしておくよ」

    命名官(腐った目をしているね、クソガキが)


    騎士団長「はい。任せておいて下さい」

    騎士団長(まだとぼけた目をされますか、死に損ないが)

    588 = 1 :

    騎士団長「それに先ほどおっしゃったように、現状……賢者様は職を持たない一人の少女にすぎません」

    騎士団長「今のままでは無力に等しい……早急に事をすすめないと」

    命名官「あーはいはい、頑張っておくれよ」

    スタスタ

    命名官「私は戻る。何か進展あったら呼んどくれ」

    神官「命名官さま、待って下さいよもう!」

    騎士団長「……ふぅ」

    騎士団長(さて、私も――……)


    ザッ

    クルッ

    命名官「ああ、そうそう騎士団長さんよ」

    騎士団長「?何でしょうか」

    命名官「……確かに、あの子は今、なんの力も無い小娘だ」

    命名官「だけどね。覚えときな」

    命名官「賢者じゃなくても、なんの力が無くても……女ってのは世界を変えちまう時がある」

    騎士団長「……何が仰いたいのか」


    命名官「存外、その無力な少女が世界を救っちまうかもしんないんじゃぜ」

    命名官「乙女をなめんなよ」


    スタスタ

    命名官「そんだけじゃよ。んじゃ」

    神官「本当に何言ってるか分かんないこのババアババア」

    命名官「何で二回言ったの……?」


    スタスタ……


    騎士団長「……」

    騎士団長(……老いぼれはこれだから嫌いです)

    589 = 1 :



    ……
    …………


    スタスタ

    ザッ

    勇者「……移動魔法が侵入者を惑わす為に仕掛けられてるとは思わなかったよ」

    遊び人「うん?」

    勇者「まぁ、それはいいんだけどさ」

    遊び人「うん」

    勇者「これはどうだろう」



    オォォォォオォ…



    勇者(綱渡りって……!)

    勇者「ちょっとこれ原始的すぎやしないか?」

    遊び人「……悪かったね、考え方が原始的すぎて」

    勇者「え?」

    遊び人「ホラ、いこ。この綱渡らないと上の階段まで辿り着けないよ」

    勇者「……まさかこれ考えたのって」

    遊び人「原始的な人ですよ」

    勇者「あ、遊び人さん……ごめんなさ、あ、おいてかないで……」



    …………


    スタスタ

    勇者「ふっ……く……」

    遊び人「大丈夫?体中怪我だらけなんだから無理しちゃ……」

    勇者「ん?ごめんごめん大丈夫。それより急がなくちゃ」

    590 = 1 :

    遊び人「……辛かったら言ってね」

    勇者「ありがとう」

    遊び人(……なんか、おかしい)

    遊び人(加護が薄まってるのに、魔物が棲みついてる気配が無い)

    遊び人(しんと静まりかえってる……)

    遊び人(なんか……やな予感がする)

    勇者「しかし……ふは……高くて複雑だね。この塔の構造」

    遊び人「え?あ、う、うん。そうなの。子供の頃は水汲みが憂鬱だったよ」

    勇者「え、水は全部下から汲んで来てたの?」

    遊び人「ううん。全部ではないよ」

    遊び人「塔の一番上に雨桶を置いてて、簡単な濾過装置を下の階のそれぞれの位置まで伸ばしてたの」

    遊び人「雨量も多かったからあまり水には困らなかったけど……たまに日照りの続く時もあったしね。その時は水を汲みに行ってたよ」

    勇者「濾過装置?」

    遊び人「そ。この辺りの雨の成分を魔力解析して、用途によって数本の装置でわけてたんだ」

    勇者「さすが、二人のおじいさんだね。そんなもの作るなんて」

    遊び人「んーん。考えたのはお姉ちゃん。作ったのはお爺ちゃんだけど」

    勇者「……ここに住んでたのって随分前だよね?」

    遊び人「そうだよ。お姉ちゃんも当然子供……本当、お姉ちゃんは昔からなんでもできたから」

    遊び人「……いつになっても、適わないなぁ……」

    勇者「……」

    遊び人「……勇者ちゃん、次ここ右ね」

    勇者「あ、うん……」


    スタスタ


    遊び人「……」

    勇者「……」

    遊び人「……」

    勇者「……」

    遊び人「……ねえ、勇者ちゃん」

    遊び人「お姉ちゃんが私に渡したかったものって……何かな」

    591 = 1 :

    勇者「……ごめん、僕もそこまでは聞いてなくて」

    勇者「『直接渡したらダメなの?』って聞いてはみたんだけど、適当にあしらわれちゃった」

    遊び人「……」

    勇者「……遊び人?」

    遊び人「……そっか、そうだね」

    遊び人(あんな別れ方だったんだもん。私はきっと受けとらなかっただろうな)

    遊び人(それにお姉ちゃんだって、私の事は)

    勇者「遊び人」

    遊び人「え?何?」

    勇者「いや……なんか考え込んでるみたいだったから。大丈夫?」

    遊び人「……うん。大丈夫だよ」

    勇者「……」

    遊び人「……大丈夫」


    遊び人(……何を託されても、大丈夫)

    遊び人(覚悟はできてる)



    ―――ガルナの塔・上階―――



    スタスタ

    ザッ


    遊び人「……勇者ちゃん」

    勇者「……ここ?」

    遊び人「……」コクッ

    勇者「…………そっか」



    ――旧・ガルナの棲家――



    勇者「……入るよ」

    遊び人「うん」


    ガチャッ

    ギィィィ……



    遊び人「……」

    勇者「……」

    592 = 1 :

    スタスタ…

    ジャリッ


    遊び人「……」

    スタスタ

    遊び人「……埃っぽいね」

    勇者「……」

    遊び人「あんまり変わってないや……あはは」

    遊び人「……本は、お姉ちゃんがアリアハンに持ってちゃってたし何も無いね」

    遊び人(そうだね)

    遊び人(ここには、もう何も)

    遊び人「ねえ、勇者ちゃん」

    勇者「ん?」

    遊び人「お姉ちゃんは何か言ってた?その、置いた場所とか」

    勇者「それが、それすらも教えて貰ってないんだ。『行けば分かる』って」

    遊び人「ええ?……お姉ちゃんの事だから、他人に盗られるような場所に置くとは思えないし……」

    勇者「もしかして隠してるのかな」

    遊び人「……ちょっと探してみる」

    勇者「うん。僕も探してみるよ」

    遊び人「ありがと」

    ガサゴソ

    勇者「と言っても……家具くらいしか無いから探すところはあんまり無いね」

    遊び人「うーん……」

    遊び人(『行けば分かる』?なんでそんな事……)

    593 = 1 :

    勇者「ねえ遊び人」

    遊び人「え?どうしたの?」

    勇者「そこの奥の扉って?」

    遊び人「ああ、それ?それはね」

    遊び人「……」

    スクッ

    勇者「遊び人?」

    遊び人「……ついて来て」

    勇者「?」

    スタスタ

    ガチャッ ズズ…

    遊び人「……よかった。まだ開くみたい」

    スタスタ

    遊び人「階段になってるから気をつけてね」

    勇者「……?」


    ………



    ズ

    ズズ

    ゴトン


    遊び人「えほっ、えほ」

    スタ

    遊び人「……」

    勇者「…………ここって」



    ――ガルナの塔・空中菜園――



    遊び人「……まだ、ちゃんと残ってたんだ」

    594 = 1 :

    スタスタ

    遊び人「前はここで野菜を作ってたの。ここなら日も差すから」

    勇者「じゃあここに……あ」

    遊び人「え?」

    勇者「あれ……菜園一面に」


    サァァァ……


    遊び人「……」

    勇者「花が咲いてる……」

    遊び人「ああ、あれはこの当たりに咲く花だよ。多分種が飛ばされてここに……」

    勇者「いや、その花のまんなか」

    遊び人「え?」

    勇者「あそこだけ、四角に花が咲いてない」

    遊び人「……!」

    スタスタ

    ガサガサ

    ザッ

    遊び人「……あった」


    遊び人は宝箱を見つけた


    遊び人「……」チラッ

    勇者「……」コクッ

    遊び人「……」


    ガチャッ


    遊び人「……?」

    勇者「何があった?」

    遊び人「……なにこれ」

    ヒョイッ

    遊び人「本?」

    595 = 1 :

    勇者「何の本かな?」

    遊び人「……」

    勇者「遊び人?」

    遊び人「え、ああ、なんだろね」

    遊び人(……託したいものって……本一冊?)

    遊び人「……」

    パラッ

    遊び人「……」

    パラッ

    遊び人「…………?」



    遊び人「…………!!!」



    勇者「遊び人、それちょっと見せてもらっても」

    バッ!

    遊び人「……だめ」

    勇者「え?」

    遊び人「勇者ちゃんは見ちゃだめ……これ」


    オォォオォォ……


    遊び人「……“悟りの書”だ」


    勇者「悟りの……書?」

    596 = 1 :

    遊び人「……そっか、お爺ちゃんを看取る時に託されてたんだ……」

    勇者「その、悟りの書っていうのは?」

    遊び人「……」

    勇者「……遊び人?」

    遊び人「…………お爺ちゃんに、そんな本があるって事は聴いてたの」


    遊び人「……この世のあらゆる事象・その事象にまつわる全ての事象」

    遊び人「その事象を取り巻く全ての事象、それらについて賢者が全魔力を注いで紡いだ文字列の集まり」


    遊び人「読んだら脳に全てが流れ込んで来て……賢者として生きる事ができる」


    遊び人「…………所謂、“魔書”だよ」


    勇者「……!」

    遊び人「……信じらんない」


    ギュッ…


    遊び人「なんなのよ……お姉ちゃんまで」

    遊び人「あんなに賢者になりたがってた私を叱ってたのに」

    遊び人「賢者として生きようとした私をあんなに縛りつけたくせに……!」


    遊び人「今度は、あんたが居なくなったからあんたの代わりをやれって言うの……!!!!?」


    ブンッ


    遊び人「こんなものっ――……!!!!」


    ガシッ!!


    遊び人「!」

    勇者「……遊び人」

    遊び人「勇者ちゃん……」

    スッ

    勇者「……賢者も、何か考えがあったのかもしれない」

    勇者「とにかく、落ち着いて」

    597 = 1 :

    遊び人「……っ」

    スッ

    遊び人「…………うん」

    勇者「……立てる?」

    遊び人「……うん」

    勇者「行こう。遊び人」

    勇者「アッサラームに移動して、少し休もう」

    勇者「多分二人とも、色々ありすぎて混乱してる」

    遊び人「……そう、だね」

    勇者「……行こう」

    遊び人「うん……うん」

    遊び人「行くよ。行こう」

    遊び人「立てる、立てるよ……だけど」

    遊び人「……――少しだけ、待ってね……」

    勇者「……」





    ……
    …………


    スタスタ


    勇者「……」

    遊び人「……」

    勇者「他に見ておきたい場所とかは」

    遊び人「ううん、大丈夫」

    勇者「……そっか」

    勇者(……すごく落ち込んでる)

    勇者(賢者……本当に遊び人を賢者にするためだけにこれを託そうとしたの?)

    勇者(そうだとしたら……いくらなんでも)

    勇者(……いや)

    勇者(僕には、何にも言う資格は無い)

    598 = 1 :

    スタスタ

    遊び人(……お姉ちゃん)

    遊び人(覚悟はできてるつもりだったけど……想像以上に辛いよ、こんなの)


    ―――――――――――



    賢者『貴方は、本当に愚かね』



    ―――――――――――


    遊び人(……結局私はお姉ちゃんの決めたものにしかなれないの?)


    ――ガルナの塔・高層――


    スタスタ

    ザッ


    勇者「遊び人。ほら、また綱だよ。足元気をつけてね」

    遊び人「……」

    勇者「遊び人!」

    遊び人「あっ、ごめんなさい。大丈夫だよ勇者ちゃん」

    勇者「……僕が先に行くよ。本当に気をつけてね?」

    グッ

    勇者「よっ……と」

    勇者(綱自体は太いから、慣れればなんて事無いな)

    勇者(……まあ)チラッ


    遊び人「……」


    勇者(今の遊び人だとそれでもちょっと怖いけど)

    599 = 1 :

    オォォォォオ…


    勇者(……落ちたら流石に死ぬな……あ、でも)

    勇者(そういえば、ここも監視者の塔なんだよね。それなら遊び人なら転落しても傷は負わないのか。そこは安心だ)

    勇者(……しかし、本当にルビス様の御加護残ってるのかなぁ)

    勇者(嫌な雰囲気しかしないし、人っ子一人)

    ピタ


    勇者「……」


    遊び人「……勇者ちゃん?」

    勇者「あ、ごめんごめん」


    勇者(……人っ子一人、居ない)


    勇者(魔物も、生き物も)


    勇者(なんでだ?シャンパーニの塔もナジミの塔も両方とも魔物が棲みついてたのに)


    勇者(なんで僕らはさっきから何にも遭遇しないんだ?)


    勇者「……遊び人」

    遊び人「なに?」

    勇者「早く行こう、何か嫌な予感がしてき」




    「はい、ストップ」




    勇者・遊び人「「!!!!?」」

    ザッ ザッ…

    勇者「なっ、な」

    勇者(誰だ……!?前方の綱の終着点の方から声が)

    勇者(床の向こう側が影になってて見えない……!!くそっ!!)

    勇者「遊び人!!後ろだ!!気をつけて後ろに戻って!!」

    遊び人「う、うん!!!」

    ザッ

    600 = 1 :

    「まあまあお待ちなさいな」

    勇者「!?」

    ブツブツ

    勇者(何かを呟いて……これは、詠唱!?)


    「ヒャド」


    パリィィィン!!!!


    勇者「!!!!」

    遊び人「!!」

    勇者(僕らが来た、縄の出発点に……氷の柱が……!!)

    遊び人「勇者ちゃん!ダメ!逃げられない!」


    「逃がすつもりは無いんですのよ」


    勇者「……!」

    勇者(縄の上で……対峙とか……どんだけ最悪な状況なんだよっ……!!)

    遊び人「勇者ちゃん……!」

    勇者「遊び人……掴まってて……!!」


    スタ… スタ…


    勇者(来る……!)


    スタ…


    ギッ……


    遊び人「……!!!」

    勇者「…………あなたは」



    ギシッ



    ランシール勇者「今度こそ、ゆっくりとお話させて頂きたいですわね」


    ランシール勇者「……教えて貰いますわよ。“真実”を」



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