元スレ勇者「ハーレム言うなよ!絶対言うなよ!」武道家「4よっ!」
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301 = 1 :
タッタッタ…
タ…
・
命名官「……」
ボリボリ
命名官「やれやれ……」
命名官「野生の鹿がこんな人間の近くで悠長に糞を垂れ流すもんかね……」
パッパッ
命名官「アンタのせいで泥を握るはめになっちまったよ」
ガサッ
勇者「……」
命名官「……ま、泥だらけのアンタに比べたらマシかね」
302 = 1 :
勇者「な、なんで……」
命名官「なんで見逃したかって?」
命名官「どうやら私に見つかった時の反応やらを見るに……アンタがその罪人とやらなんだろ?」
勇者「……!」
命名官「でも、魔物がそんな風に泥だらけで駆けずり回るとも思えないしね」
命名官「第一、今回の件については私も懐疑的なのさ」
勇者「懐疑的……?」
命名官「……別に、見逃したからと言ってアンタを味方として扱う気はないんだけどねえ」
勇者「あっ、その」
命名官「早いところ消えな。次ここらで見たらサマンオサ兵に突き出すよ」
勇者「……」
勇者「……ありがとう、ございました……!」
ダッ
勇者「っ……!!」
ガサガサ
命名官「……」
命名官(……あの小僧……“名”が無かった)
命名官(おかしいね。魔物のように名前の加護が無いんじゃない。だから魔物じゃないとすぐわかったが――……)
命名官(“からっぽ”なんだ。名前が……まだルビス様の御加護からちゃんとした名を与えられていない。マリナン様でもどうしようも無いねありゃ)
命名官「……ルビス様も仕事をサボるお方って事かね……」
タッタッタ
神官「なんかノリで逃げちゃいましたけど!命名官様!謁見!謁見行って下さいってば!」
命名官「ちっ」
…………
……
…
・
303 = 1 :
・
…
……
…………
ズサッ!!
勇者「はぁっ……!!はぁっ……!!」
ゴソ
勇者「……ふぅ、はっ」
勇者「はぁっ、はぁっ……!!」
勇者(整理、整理しなきゃ)
勇者(地面に、枝で……描きおこして)
ガリガリ
勇者(式の開催は神殿の内部……神殿はどうやら四階建ての建物……)
ガリガリ
勇者(外から窓や柱の付き方をみた感じだと、四階建てといっても二階は一階の大聖堂を閲覧する、閲覧席のようなもので……実質吹きぬけになってる)
ガリガリ
勇者(大聖堂の中はどうなんだ……?儀式だから祭壇があると思うんだけど、どこだ?)
ガリガリ
勇者(警備は……神殿の後ろの方は少し薄くなってた。でもそれは後ろからだと入り口も何もないからで)
ガリガリ
勇者(正面は、あたりまえだけれど厳重に警備されてる。横側も、別塔付近も兵やダーマの神兵が厳重に警備してる)
ガリガリ
勇者(別塔といえば、遊び人の姿は確認できなかった……あそこにいるのは警備の厳重さからしても明確なんだけど)
ガリガリ
勇者(別塔からも、横からも、後ろからも……隙が無い)
ガリ
勇者(どこからも、隙が無い)
ガ…
勇者(そして)
…
勇者「……」
勇者(そして)
勇者(儀式が、明日になった)
304 = 1 :
勇者(計算外だ、まさか加護日を無視してずらしてくるなんて)
勇者(どうする?女勇者が今日戻ってくるとは考えにくい)
勇者(第一、あの小屋からここまで来るのに半々日かかったんだ。もう一回行って戻ってくるとなると)
「この辺りは探したか?」
勇者「!!!?」
「いや、まだだ」
「一応探っておこう。森の中に潜んでる可能性は高い」
勇者「っ!」
ザッ!!
勇者(だめだ、移動をしなきゃ……!!)
……
…
・
・
…
……
ザッ ザッ
勇者「はぁっ、はぁっ」
勇者(もう、人の気配はしないか)
勇者(……)
305 = 1 :
ゴソッ
勇者(……?)
勇者(……無い)
ゴソゴソ
勇者(無い、無い!)
勇者(荷物が少し無くなってる……!まさか)
――――――――――――
ザッ…ザッ…
勇者『(人の気配がする……足音はなるべくさせないように)』
……!
勇者『(……いや、会話から何か情報を掴めないか)』
勇者『(少し近づいて――……)』
サマンオサ兵『式の予定が、明後日から明日へ変更になりました』
勇者『!!!?』
神官『はい?』
命名官『何だって……?なぜまたそんな事』
サマンオサ兵『ええ、理由は下々の私どもは存じ上げていないのですが――……』
勇者『(は、え?)』
勇者『(ど、どういう事?)』
勇者『(それじゃ、リミットが――……)』
ガッ
勇者『!』
勇者『(しまっ――……)』
ドサッ!!ズザァッ!!ガサッ!!
――――――――――――
勇者(あの時……!!)
306 = 1 :
ゴソゴソッ
勇者(まずい、薬草や火口箱が入ってた袋が無い……!)
勇者(地図は……)
ポ
勇者「……?」
ポツッ
ポッ ポツッ
勇者「……!」
勇者(勘弁、してくれよ)
ポツッ ポツ
パラッ パラパラ
勇者「……」
勇者「…………雨」
ザァァァァァァァァ…
勇者「……」
勇者(活動しにくくなった)
勇者(動きは鈍くなるし、森の中に目印を付け辛くなった)
勇者(このままだと、体温も体力も、奪われる)
勇者(雨宿りする場所もない、寝床を確保する時間も、無い)
勇者「……」
勇者「……」
勇者「……あれ」
ザァァァァァ
勇者「……」
勇者「……」
勇者(僕、どっちから来たんだ?)
勇者(どこから来たんだ?)
勇者「……」
勇者「……」
勇者「……」
307 = 1 :
バシャ…
勇者「……」
勇者(とり、あえず)
勇者(とりあえず、歩かなきゃ)
バシャ バシャ
勇者(遊び人を見つけないと)
勇者(でもどうやって助ける?)
勇者(僕に)
――――――――――――
ムオル勇者『俺にしてみれば、それらはただの愚行だ。他人の事を考えたふりをした、極めて利己的な行動だ』
ムオル勇者『全て匹夫の勇だ。下策であり、餓鬼の空想。……それらが偶々上手くいったにすぎない』
――――――――――――
勇者(僕に、何ができる?)
勇者(非力で)
勇者(魔力も、知恵も無い僕に)
308 = 1 :
――――――――――――
女勇者『……お義兄ちゃん』
女勇者『…………ごめん』
――――――――――――
勇者(全部投げ出して)
勇者(命、捨てる事以外に)
勇者(なにが)
――――――――――――
イシス戦士『お前はもう、容易に、傷つくな』
イシス戦士『お前が傷ついて、一人に、なろうとするほど、私の主は……悲しむのだ』
イシス戦士『私の主を悲しませたら……許さんぞ』
イシス戦士『……――絶対、無事でいろ』
――――――――――――
勇者(なにが)
――――――――――――
『勇者』
『貴方、本当に愚かね』
『自分の命一つで状況が変えられると思っているの?』
『どれだけ自分の命を過大評価してるのかしら』
――――――――――――
309 = 1 :
バシャッ バシャッ バシャッ
バシャッ バシャッ
バシャッ…
……
…
・
ザァァァァァァァァァァァァァァァァ……
勇者「……」
ああ
またこれだ
結局
結局僕は何もできない
勇者「……」
勇者「……」
もうじき夜になる
勇者「……」
勇者「……ああ」
ギリィッ…
勇者「僕は……………………弱いなあ…………」
…………
……
…
・
310 = 1 :
今日はおしまいです
311 :
投下乙です!
みんな丸く収まりますように…
313 :
まっていたよつぎからはいつくるか教えてね
314 :
おつ
316 :
次は4月になるのかな?
317 :
――ダーマ・別塔・客間――
スタスタ
バン!
ランシール勇者「騎士団長」
騎士団長「はい?ああ、ランシール勇者さん。もうダーマに着いておられたのですね」
騎士団長「そんなに焦って、どうかされましたか?」
スタスタ
ランシール勇者「どうしたも何も、なぜですの?」
騎士団長「と、いいますと?」
ランシール勇者「式の日程ですわ。何故加護日を避けて急遽明日に変更されたんですの」
騎士団長「その事ですか。急で申し訳御座いません」
ランシール勇者「それはいいんです。何故こんな事を」
騎士団長「少しね。懸念しておかねばと思いまして」
ランシール勇者「懸念?」
騎士団長「はい。どうやらあの男が脱獄したらしいではないですか」
ランシール勇者「ええ、先程そう聞きましたわ」
騎士団長「あの男はもうすでに遊び人様が賢者の末裔だという事を知っています」
騎士団長「だとすれば、遊び人様が火贈りの儀式で力を手に入れる前に、仲間の魔族と襲撃する可能性も考えられます」
騎士団長「ですから、急遽予定を変更させていただきました」
ランシール勇者「ですが、加護日がっ」
騎士団長「確かに加護日からは外れます……ですが実質なんの問題も無いでしょう」
騎士団長「宗教上のただの名目に過ぎません。そんなものより合理的な選択肢を選びます」
ランシール勇者「……!」
「あまり騎士団長殿を困らせるな、ランシール勇者」
ランシール勇者「!」
騎士団長「これはこれは、ランシール神官様」
スタスタ
ランシール神官「この件については私達教会側も承諾しているのだ。お前が口を挟むことではない」
ランシール勇者「しかし……」
騎士団長「とにかく、これは決定事項です。申し訳ありません」
ランシール勇者「……かしこまりましたわ。失礼します」
318 = 1 :
バタン
ランシール勇者「……はぁ」
「大丈夫、ですか?」
ランシール勇者「え?……あら、スー勇者」
スー勇者「こんばんわ、です」
トテトテ
スー勇者「お話してたですか?」
ランシール勇者「ええ。もう済みましたわ」
ランシール勇者「今回の日程変更について、少し納得がいかなかったものでして……」
スー勇者「確かに、急だったでした」
ランシール勇者「ま、もう決定した事ですしね。行きましょうか」
スタスタ
ランシール勇者「そういえば、エジンベア勇者は?」
スー勇者「エジンベアさんは、お仕事中です」
ランシール勇者「そう。感心ですわね」
スー勇者「でも、神官のお姉さん達に、声かけて、まわってましたです」
ランシール勇者「前言撤回しますわ」
スー勇者「……」
ランシール勇者「……スー勇者」
スー勇者「え?あ、はい?どうした、ですか?」
ランシール勇者「それはこっちのセリフですの。貴方なんだかさっきから暗い顔してますけど……どうかされたんですの?」
スー勇者「……」
ランシール勇者「……?どこか体調が」
スー勇者「賢者様」
ランシール勇者「え?」
スー勇者「あの人、賢者様に、ならないのが、良い……思います」
ランシール勇者「……」
スー勇者「……ごめなさい、なんでも、ないです」
ランシール勇者「……それ、わたくし以外の前で言っちゃ駄目ですわよ」
スー勇者「……はい」
ランシール勇者「……」
ランシール勇者(ま……私も同感ですけれどね)
…………
……
…
・
319 = 1 :
――ダーマ・別塔・貴賓室――
「いやあ、一目でもそのお姿を拝見できて光栄でしたぞ!」
遊び人「……どうも」
「それでは失礼いたします!ガハハハ」
スタスタ
バタン
遊び人「……」
ガチャ
神官「あの、お疲れさまでした」
遊び人「……」
神官「お疲れでしたら……何かお持ちいたしましょうか?」
神官「お飲み物でも……もしご希望でしたら食事も」
遊び人「いらないです」
神官「そ、そうですか……」
遊び人「それより……まだ謁見待ちがいるんでしょ」
遊び人「早く終わらせたいから……次の人お願いします」
神官「は、はい!呼んでまいります!」
バタン
遊び人「……はぁ……」
遊び人「……」
遊び人「…………何を」
遊び人(何をやってるんだろ……私)
コンコン
遊び人「はい」
ガチャ
神官「お待たせしました。次の方でもう最後でした」
遊び人「そうですか」
神官「それでは……あ!ちょっと、どこ行こうとしてるんですか!」
遊び人「?」
神官「ちょっと、逃げないで、もう!真面目にやってください!」
遊び人「……どうしたんですか?」
神官「あっ、いえ!すみませんお待たせしました!最後の謁見の方です!」
ギィ
命名官「はいはい、お邪魔しますよ」
320 = 1 :
遊び人「……どうも」
命名官「はい、どうも」
遊び人「……」
命名官「……」
シーン……
遊び人「……?」
命名官「……」
神官「……?」
ザッ
命名官「よし。お疲れ様です」
遊び人「えっ」
神官「待とうよバババア」
命名官「えっ、何バババアって」
神官「何早速帰ろうとしてるんですか!前代未聞すぎますよ!」
命名官「別にいいじゃろう。ちゃんと顔見たし」
神官「謁見ってそういうんじゃないんですよ!!!」
ワーワー
遊び人(なんなのこの人達……)
命名官「それに、もういいんじゃって本当に」
神官「だから良いわけが――……」
命名官「遊び人ちゃんも変わらず元気そうじゃしの」
遊び人「……」
遊び人「……へ?」
321 = 1 :
神官「ちょっと命名官様!そんな無礼な――……」
命名官「しかし、本当に大きくなったねぇ」
神官「……って、え?」
命名官「ガルナのじじいに連れられてここに訪れていた時はこーんなちっこかったんじゃが」
神官「……え」
命名官「……あれから十年ほどかい?私も齢を取るわけじゃ」
遊び人「……」
遊び人「…………あ」
命名官「ま、あの時は」
命名官「お前さんも賢者ちゃんも生意気なクソガキじゃったがの」ニコッ
遊び人「…………名前のお婆ちゃん」
命名官「お?思い出したかい?」
神官「え!?お、お知り合いだったんですか!?」
命名官「昔少しね」
命名官「この子等が小さかった時は、ここから近いガルナの塔に住んでたんだよ」
遊び人「……やっぱり、この大陸だったんだ」
命名官「……なんにせよ。そういう事じゃから」
スタスタ
神官「あ、ちょっと!」
命名官「私はそろそろ寝るとするよ。それじゃあ――……」
遊び人「名前のお婆ちゃん!」
命名官「……」ピタッ
遊び人「…………お願い」
遊び人「話……少しだけでも、聞いてくれませんか……?」
神官「……!」
神官(この人の人間らしい表情、はじめて見た)
命名官「……やれやれ、どっちの謁見かわかったもんじゃないね」
命名官「でも、ま。人にお願いはちゃんとできるようになったみたいじゃの」
322 = 1 :
・
…
……
…………
スタスタ
神官「……」ウロウロ
給仕「あら?どうしたの?」
給仕2「アンタ、賢者様の付き添いに任命されてたんじゃなかったっけ?」
神官「え?ああ、いえ。少し追い出されまして」
給仕「何か大切な話でもしてるの?」
神官「みたいです……」
―――――――――
命名官「……」
遊び人「……」
命名官「……そうか」
命名官「賢者ちゃんは……」
遊び人「……うん」
命名官「……辛かったね」
遊び人「……」
命名官「……」
遊び人「……」
命名官「……ずっと、アリアハンにいたのかい?」
遊び人「……うん」
遊び人「良い所だよ。この大陸にいた時の事、そこまで覚えてないけど……」
遊び人「でも、アリアハンよりずっとずっと住み難かった記憶はあるもの」
命名官「はは、そりゃ住んでる所が悪すぎたのさ」
命名官「あんな塔に幽閉同然で暮らしていればそうもなるじゃろう」
遊び人「……あの塔はこの近くにあるの?」
命名官「ああ。すぐさ」
遊び人「……そっか」
命名官「行ってみたらどうだい。騎士団長に頼めば調整もしてくれるんじゃないのかね」
323 = 1 :
遊び人「……いいや」
命名官「なんでだい。せっかく近いのに」
遊び人「……」
遊び人「……行ったら、余計な事、思い出しそうだから」
命名官「……」
ギシッ
命名官「……のう、遊び人ちゃん」
命名官「アンタ、姉に対して何かあるのかい?」
遊び人「……」
命名官「……なんだか、賢者ちゃんの事を意識的に避けてやしないかい」
遊び人「……お婆ちゃんなら知ってるでしょ」
命名官「ああ……まあ、そうじゃけど」
命名官「確かに、仲は良い姉妹では無かったからね」
遊び人「……」
命名官「何かあったらアンタは賢者ちゃんにつっかかって、賢者ちゃんはそれを相手にしなくて」
命名官「たまに私の所をガルナのじじいが訪れたと思ったら、毎回アンタらがその始末」
命名官「本当にうるさいったらありゃしなかったよ」
遊び人「……」
命名官「……」
命名官「でも、今はそれ以上にあの子とアンタに壁があるように思えるね」
遊び人「……」
命名官「……何かあったのかい。あの子が亡くなる前に」
遊び人「……」
命名官「……」
遊び人「……ううん」
遊び人「何も無い……何でも無いの」
遊び人「ただ……」
遊び人(私が……――馬鹿すぎただけ)
…………
……
…
・
324 = 1 :
―――――――――
――十数年前・ダーマ地方・ガルナの塔――
『…………』
カリカリ……
『…………』
カリカリ……
スタスタ
『おーい』
スタスタ
老人『おーい、どこに行ったんだい?』
シーン……
老人『……全く』
老人(目を離すとすぐ居なくなる)
老人(私の書物も数点無くなっているし……一体何処に)
スタスタ
老人『……あっ』
『…………』
カリカリ……
『…………』
カリカリ……
老人『二人共、こんな所にいたのかい』
『あ!おじーちゃ!』
『……あ、ガルナおじい様』
ガルナ『ちゃんと返事をしないといけないよ』
325 = 1 :
トテトテ
『おじーちゃ!おじーちゃ!だっこ!』
ガルナ『はいはい、どっこらしょ』
ダキッ
ガルナ『あいたた……また大きくなったかい?』
『んへへ』ギュゥ
ガルナ『ところで、何をしていたんだい?二人共』
『……これを書いていたのです』
『あれね!あたしもね!かいたよ!』
ガルナ『これ?』
スタスタ
ガルナ『これ、とは……』
ガルナ『……』
ガルナ『…………!』
ガルナ『(持ち出された書物の術式の解体構成論理……しかも、新しいエーテル祈昇華法も付け加えられてる)』
ガルナ『君達……これは』
『おじい様の役に、少しでも立てばと思いまして』
『えへへー。えらい?えらい?』
ガルナ『……』
ナデ…
『!』
『あー!なでなでよりだっこのほうがいいー!』
ガルナ『……』
ガルナ『(私の孫でありながら、末恐ろしいよ)』
ガルナ『…………偉いぞ』
ガルナ『遊び人……賢者』
遊び人『ほんとー!?』
賢者『ありがとうございます。おじい様』
326 = 1 :
今日はおしまいです
328 :
乙
次も待ってます
329 :
乙でございます
330 :
…………
遊び人『おねーちゃんのばかー!!』
賢者『なんとでも言いなさい』
ガルナ『おや、どうしたんだい二人共。また喧嘩かい?』
遊び人『おじーちゃ!おねーちゃんが!』
賢者『この子があんまり我がままを言うので……』
ガルナ『まあまあ。仲良くしなさい』
賢者『すみません……』
遊び人『ぶぇーだ!』
賢者『……全く』
ガルナ『はは……そうだ、二人共。外に出る支度をしなさい』
賢者『え?』
遊び人『えっ!?おそと!?おそとでれるの!?』
ガルナ『ああ。早く着替えて来なさい』
遊び人『やったー!』タタタ
賢者『あ、こら遊び人。走っては――……』
遊び人『うるさいぶぇーだ!』
賢者『……はぁ』
ガルナ『ははは……』
ガルナ『しかし、賢者があの子を思って叱っているのは分かるしいい事だが……』
ガルナ『仲良くしなければいけないよ?大事な家族なのだから』
賢者『……はい』
331 = 1 :
…………
――ダーマ地方・ガルナの塔付近――
ガラガラ
遊び人『ばしゃー!はやい!おうまさんはやい!』
馬『ヒヒォォ』
ガルナ『遊び人、そんなにはしゃいでは落ちてしまうよ』
賢者『……おじい様』
ガルナ『ん?なんだい?』
賢者『今回はどちらへ?』
ガルナ『ああ。ダーマまで行くんだ。近いからすぐ着くさ』
賢者『……何か、御用が?』
ガルナ『…………ちょっと、ね』
賢者『……』
遊び人『あ!あれ!あれなに!?すごいきれぇ!』
ガルナ『ん?あれは星屑花さ。この大陸のこの地方にしか咲かないんだ』
ガルナ『ルビス祭から大体半年の、流星の季節になると発芽する事からそういう名前になったんだよ』
遊び人『ふーん?』
賢者『……ちなみに、あの花から精製される糖度の高い飴色の蜜はバハラタや他の村では』
遊び人『おねーちゃんのはなしはきいてませぇーん』
賢者『……』
ガルナ『こ、こら……仲良くね?』
332 = 1 :
――ダーマ神殿・正門――
『……』
ガラガラ
『お?』
ガラガラ
ガルナ『ほら、着いたよ。二人共』
賢者『はい』
遊び人『ついたー!おっきー!おしろ!?ねえこれおしろ!?』
『やっと来たか……』
スクッ
『おい、ガルナのじじいや!』スタスタ
賢者『!』
遊び人『じじい?』
ガルナ『……すまない、待たせた。命名官』
命名官『アンタは本当に人を待たせるのが好きだねえ!』
スタスタ ザッ
命名官『約束の時間は――……ん?そちらは?』
ガルナ『ああ、賢者と遊び人……――私の孫さ』
命名官『おや!本当かい!?いやあ大きくなったね!』
ナデナデ
命名官『二人共、私のこと覚えてるかい!?遊び人ちゃんが生まれた時に――……』
遊び人『ううん、しらないばばあだよ?』
賢者『ええ。知らないババアです』
命名官『 』
ガルナ『す、すまない命名官!こら!二人共!』
賢者『おじい様をじじい呼ばわりするのは総じてババアです』
命名官『このガキ……』
333 = 1 :
……
ガルナ『……というのが、今回のお願いだ』
命名官『……』
ガルナ『……文句があるのも分かる』
ガルナ『ただ、保険はかけておかなくてはいけない』
命名官『……』チラッ
遊び人『おねーちゃん!いまずるした!ぜったいした!』
賢者『してないわ。いいから少し黙っていなさい。読書してるのに気が散るわ』
命名官『……なんというか』
命名官『アンタも、大人しそうな顔してけっこう残酷な男だね』
ガルナ『……ああ』
命名官『あの子達はアンタの道具かい?』
ガルナ『勿論違う。愛している』
命名官『……』
ガルナ『……時々』
ガルナ『時々、この力も……加護も憎くなるよ』
命名官『…………』
命名官『……すまない、意地の悪い事聞いたね』
ガルナ『いや、いい。誰もが思うさ』
334 = 1 :
命名官『しかし、後の事はどうするんだい?あの子等は――……』
ガルナ『以前、オルテガが私の元に訪れたんだ』
命名官『あの勇者オルテガかい?』
ガルナ『ああ。その時、少し話をしてね』
ガルナ『……おそらく、彼を頼る事になる』
命名官『……そうかい』
ガルナ『ああ。だからとにかく、命名官も頼んだよ』
命名官『わかったわかった。善処しておくよ』
命名官『若い頃からアンタには世話になっておるしねえ』
ガルナ『それを言えばこちらだって』
命名官『もういいって。ま、とにかくしばらくは大丈夫そうなんじゃろう?』
ガルナ『ああ。あとどのくらいかは分からないがね』
ガルナ『だからこれからも定期的に通わせて貰うよ。あの子達を連れて』
命名官『じゃあこの話は今日はもう終わりだ。さ。帰った帰った』
ガルナ『……邪魔をしたね』
ガラッ
ガルナ『それでは、私はこれで』
命名官『……ガルナ様』
ガルナ『ん?』
命名官『…………立場的には仕方の無い事かもしらんけどね』
命名官『できるだけ、踏ん張りなよ。あの子達のためにも』
ガルナ『……』
遊び人『あー!またじゃましたー!おねーちゃんだいっきらい!ばか!ぶぁか!』
賢者『何とでも言いなさい』
ワーワーギャーギャー
ガルナ『…………うん』
ガルナ『そうだね…………』
…………
……
…
・
335 = 1 :
今日はおしまいです
336 :
乙
連日楽しませてもらってます
338 :
連日の更新うれしいです!
339 :
――ガルナの塔・上階・早朝――
オォォォォォォ……
スタスタ
賢者『…………』
賢者『(……菜園の野菜達の元気が少ない)』
賢者『(風に当たりすぎたかしら……いえ、でも土自体の元気が)』
『おねーちゃん?』
賢者『?』クルッ
遊び人『……おねーちゃん、どこいってたの?』
賢者『……起きたの、遊び人』
遊び人『おじーちゃんは?』
賢者『おじい様は自室で本を読んでおられるから、静かになさい』
遊び人『ほん、よんでるの?』
賢者『ええ』
遊び人『じゃあ、しんぞうは?』
賢者『……?え?』
遊び人『もう、しんぞうはだいじょうぶなの?』
賢者『しんぞう?……貴女、何を言って』
遊び人『でも、さっき、しんぞうがわれるっていってた』
賢者『……』
遊び人『……?』
賢者『……!』
ダッ
タッタッタ
賢者『……っ』
――ガルナの自室――
バタン!!!
賢者『……おじい様っ!!!!!』
ガルナ『がっ……は……!!!!』
340 = 1 :
ズザッ
賢者『おじい様!!お気を確かに!!』
ガルナ『く、はぁっ!!……ぜひゅっ、ぜひゅっ』
ガルナ『ご、ほぉ』
ビチャァッ!!
賢者『……っ!!』
賢者『(吐血……!!)』
タッタッタ
遊び人『おじーちゃん!!!』
賢者『遊び人!!来ては駄目!!』
遊び人『やだっ!!だっておじーちゃんが!!』
賢者『遊び人!!!!』
遊び人『ひ……!』ビクッ……!!
賢者『……薬を作るわ』
賢者『菜園から、花が咲いてる植物の葉を全種類二枚ずつ持ってきなさい』
遊び人『……』
賢者『はやくっ!!!!』
遊び人『!』ビクッ
タッタッタ……
賢者『……』
ガルナ『ぜひゅ……!!ぜひゅっ……!!』
賢者『(……さっきの吐血の仕方だと、もうだいぶ病気が進行している)』
賢者『(調合薬でも……長くは……)』
ギリッ……
賢者『……おじい、さま……!』
…………
……
…
・
341 = 1 :
―――――――――――
ガルナ『……』
ガチャッ バタン
賢者『おじい様』
遊び人『おじーちゃん』
ガルナ『ん……?ああ、ふたりとも』
スタスタ
賢者『……具合は如何ですか?』
ガルナ『ああ、今日は比較的楽だ……』
遊び人『ほんと?だいじょーぶ?』
ガルナ『本当さ。心配かけるね』ナデナデ
遊び人『ん……』
賢者『……』
ガルナ『……倒れてから、一週間……迷惑をかけ続けているね』
賢者『そんな事仰らないで下さい。一刻も早く、元気に』
遊び人『げんきになって!またおそといきたい!』
ガルナ『……』
ガルナ『……』
ガルナ『……はは』
賢者『……?』
遊び人『……おじーちゃん?』
ガルナ『…………賢者』
賢者『はい』
ガルナ『話がある』
賢者『…………はい』
遊び人『……?おはなし?』
賢者『……遊び人』
遊び人『なぁに?』
賢者『部屋から出なさい』
遊び人『ええ!やだぁ!おはなしきく!』
賢者『いいから言う事を――……』
ガルナ『遊び人』
遊び人『え?』
ギュッ
遊び人『ふぁ?』
ガルナ『……』
342 = 1 :
遊び人『おじーちゃ?どしたの?』
ガルナ『……』
賢者『……』
ガルナ『……お姉ちゃんの言う事は聞かなきゃだめだよ』
遊び人『……でも』
ガルナ『お姉ちゃんと、仲良くしなくては……だめだよ』
遊び人『……』
遊び人『ん……わかった』
遊び人『いうこと、きく……』
ガルナ『……ふふ、いいこだね』
ナデナデ
遊び人『わふ……んふふ』
ダッ
遊び人『じゃあおねーちゃんとおはなしおわったら、つぎはあたしね!』
タッタッタ
バタン
賢者『……』
ガルナ『……もう、抱きしめることも……ままならなくなってきている』
賢者『……』
ガルナ『……賢者、おいで』
ガルナ『抱きしめてあげられなくなるまで……時間がない』
賢者『……』
賢者『……』
賢者『……』
ギュッ
賢者『…………』
ガルナ『……大きく、なったなぁ……』
賢者『……』
ガルナ『……賢者』
賢者『……はい』
ガルナ『これから話す事を……全部、ちゃんと覚えておきなさい』
賢者『……はい』
343 = 1 :
・
…
……
…………
遊び人『……』
ウロウロ
遊び人『……』
ウロウロ
遊び人『……まだかな……』
オォォォォ……
遊び人『……』
遊び人『あれ?』
遊び人『(いま、おててが)』
遊び人『(おなかが、あったかくなった)』
遊び人『……?』
遊び人『……』キョロキョロ
オォォォォ……
遊び人『へんなの……』
スタスタ
遊び人『!』
賢者『……』
遊び人『おねーちゃん!』
タッタッタ
遊び人『おねーちゃん!おはなしおわった!?』
賢者『……終わったわ』
遊び人『やったー!つぎあたしのばんー!』タッタッタ
賢者『……』
タッタッタ
バタン
遊び人『おじーちゃん!』
ガルナ『……』
遊び人『……?』
344 = 1 :
スタスタ
遊び人『……おじーちゃん?おきてー』ユサユサ
賢者『遊び人』
遊び人『あ、おねーちゃん。おじーちゃんねちゃったよ?』
遊び人『あたしとまだおはなししてないのに、おきてー』
賢者『……』
遊び人『おじーちゃん!おじーちゃんてばぁ』
賢者『……亡くなったわ』
遊び人『おじーちゃ……え?』
賢者『…………遊び人』
賢者『おじいちゃんは……おじい様は、亡くなったの』
賢者『死んだの。死んでしまったの』
遊び人『……』
遊び人『……?』
ガルナ『……』
遊び人『……』
遊び人『……おじーちゃ』
遊び人『もう、おきないの?』
賢者『……』
遊び人『もう、おはなしできないの?』
遊び人『おでかけは?ごはんは?』
遊び人『ねぇ、おねーちゃん!ねえ!』
賢者『……』
遊び人『……!!』
遊び人『やだぁ!!やだやだ!!』
賢者『……遊び人』
遊び人『うそだぁ!!そんなのやだあ!!』
遊び人『うそだもん!!つぎあたしとおはなしするっていってたもん!!』
遊び人『やだやだやだ!!!!おねーちゃんうそついてるんだ!!!』
遊び人『おねーちゃんのぶぁかぁ!!おねーちゃんなんか』
賢者『遊び人!!』
ガシィッ!!
遊び人『ひっ!!』
賢者『いい加減に――……』
345 = 1 :
遊び人『なんで』
賢者『!』ピタ
遊び人『なんで、あたしには』ポロポロ
遊び人『なんであたしには、おはなししてくれなかったの……?』
遊び人『なんでおねーちゃん、ばっかり』
賢者『……』
遊び人『あだし、もっ、あだしも、ざいごにおはなししだがっだぁ……!!』
遊び人『なんで……なんで、いづもおねぇちゃんばっかり……!!!!』
遊び人『うああぁ、うあああああああああああああああん』
賢者『……』
ギュッ
遊び人『うああああああん、やだあああああああ、やだあああああ』
遊び人『おじーちゃあああああああ!!おじーちゃあああああああ!!』
賢者『……』
賢者『…………わたし、だって……』
…………
……
…
・
346 = 1 :
・
…
……
…………
スタスタ
『さて、と……見えてきたな』
『塔自体はバハラタからも見えてたけどね』
『入り口が、って事さ。さて、ガルナ様は元気だろうか』
『元気だといいが……御自身で仰っていた事情から察するに、おそらく……』
『……ま、とりあえず行ってみるか』
――ガルナの塔――
カツカツ…
『しっかし、やっぱり高いなぁ。この塔』
『ガルナ様の住居は何階だったっけ?』
『ん?確かもうすぐじゃなかったか?』
カツ…
『『!』』
巡礼者『おや、こんにちわ』
『『あ、こんにちわ』』
巡礼者『ルビス様のご加護がありますよう』ペコリ
『どうも。そちらも』
スタスタ…
『……』
『なんだか、巡礼者が多い気がするね』
『ああ。確かに』
『ガルナ様は人望が厚い人だったけど……前に来た時はこんなに居なかった気がするよね?』
『……嫌な予感がするなあ』
『……同じく』
スタッ
『ああ、確かこの階だ。最上階の一階下』
『さて……部屋は』
スタスタ
『ん?』
『女の子……?』
『なんでこんな所に女の子が……ちょっと君』
ピタ
遊び人『……なに?』
347 = 1 :
『少しいいかな、聞きたい事が――……』
遊び人『なに、どうせあんたたちも賢者ガルナにあいにきたんでしょ』
『え……あ、ああ。確かにそうだけど』
遊び人『はいはい、でしょうねでしょうね』
『な、なんだか荒んだ子だね。まだ小さいのに』
『ああ……うちの娘と同じくらいだろうか』
遊び人『でもじゅんれいしゃってかんじじゃないね、おっさんたち』
『おっさ……!?』ガーン
『がはははは!!言うなあこのチビっ子は』
遊び人『まあどうでもいいけどねー』
『き、君!おっさんなんて――……』
スッ
『え?』
遊び人『あっち。むこうのつうろをみぎにまがって、すこしあるいてさいしょにみえる、おおきいドア』
遊び人『そこにいるよ』
『あ、ありがとう』
『恩に着るよ。君の名前は?』
遊び人『……』
『ん?』
ダッ
遊び人『おしえないよぉーだ!!ぶぇー!』
タッタッタ
『なっ、こら君!』
『あっはっはっは!ませてると思ったら齢相応じゃないか。かわいいもんだ』
『まったく……よし、それじゃいこうか』
――ガルナの自室――
ガチャッ…
『失礼します』
『失礼……ん?』
賢者『……』
『……また女の子が一人。なんなんだここは……』
『えっと、君。すまんがガルナ様は――』
348 = 1 :
賢者『ようこそいらっしゃいました。勇者の方々』
『『え?』』
賢者『……もう既に祖父に聞いておられるのではないですか?御二人とも』
『……!』
『……もう、実行していたか』
『だったら……』
賢者『ええ』
賢者『私が、賢者ガルナです』
『……』
ザッ
『『失礼致しました』』
賢者『……御名前を、確認のために頂戴致します』
『『はっ』』
オルテガ『アリアハンより参りました、オルテガと申します』
サイモン『サマンオサより参りました、サイモンと申します』
賢者『…………お待ちしておりました』
349 = 1 :
今日はおしまいです
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