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    元スレ勇者「ハーレム言うなよ!絶対言うなよ!」武道家「4よっ!」

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    901 :

    きたーーーーーーーー!!!!!!

    902 :

    よっしゃ!

    903 :

    待機してる

    904 :

    あと五時間な

    905 :

    まだ終わらんよ

    906 :

    まだ15分ある

    907 :


    -番外-

    【蜘蛛の糸】

    /nox/remoteimages/f7/99/c0eb0dbeaf5dc6c6dd0797763727.png

    908 = 1 :






    ああ


    色が綺麗だ


    色が綺麗だ




    909 = 1 :



    カンダタ「……」





    ―ネクロゴンド火山付近・国連の砦・簡易牢獄―



    カンダタ「……」

    カンダタ「……」

    カンダタ「……」


    カツカツカツ…

    ザッ


    ガチャッ

    キィ…


    「死刑囚カンダタ。立ってください」


    カンダタ「……」

    「……聞いていますか?」

    カンダタ「……」

    「……?」

    (天井の隅をじっと見てる……)

    カンダタ「………………なんだ……?てめえは」


    ダーマ勇者「私は国連認定勇者資格保有者の一人ダーマ勇者です。あなたを刑場まで連行します」


    カンダタ「……」

    ダーマ勇者「無駄な抵抗はしないで下さい。もし抵抗するようでしたら」

    スクッ…

    カンダタ「……」

    ダーマ勇者「……で、では。……皆さん。お願いします」

    ダーマ聖騎士団員「はいっ」

    ダーマ聖騎士団員2「こちらだ」

    カンダタ「……」


    スタスタ


    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者(本当にあれが大悪党カンダタなの……?全く覇気が無かった)

    ダーマ勇者(それになんだかぼーっとして何かを見つめてたけど)

    チラッ

    ダーマ勇者「……?」


    蜘蛛「……」


    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者(……蜘蛛の巣……)

    910 = 1 :


    カツカツ……


    カンダタ「……」


    ダーマ勇者「……」

    カンダタ「……なあ」

    ダーマ勇者「連行中の会話は禁止されていますので」

    カンダタ「あいつは、どうなった」

    ダーマ勇者「……」

    カンダタ「あいつは……」

    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者(なんてか細い声なの……?いやいや、ここで情に流されては)

    カンダタ「……」

    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者「……例の、魔族の男なら、捕まえられませんでした」

    カンダタ「……」

    ダーマ勇者「……」

    カンダタ「そうか……」


    それ以降、カンダタは何も言わなかった



    ―ネクロゴンド・火口―



    ランシール神官「これより処刑を執り行う!」


    ランシール神官「この男は魔族に与し、賢者ガルナの末裔を拐かす手引きをした!」



    カンダタ「……」



    ダーマ勇者「……」

    ダーマ勇者(結局、あの後もずっと虚ろなまま……)

    スタスタ

    「やっべ……遅刻遅刻」

    ダーマ勇者「?……あっ、エジンベア勇者様」

    エジンベア勇者「やあやあ、久しぶりだね」ボソボソ

    ザッ

    エジンベア勇者「最近ずっとネクロゴンドの調査だったんだっけ?可愛い顔が火傷したりなんか――……」ボソボソ

    ダーマ勇者「もう!刑の執行中です!お静かに!それに遅刻ですっ!反省なさってください!」ボソボソ

    エジンベア勇者「はいはいすみませんね」ボソボソ

    911 = 1 :




    カンダタ「……」




    ランシール神官「ルビス様の光に背くような行いをこの男は――……」


    エジンベア勇者「……長い前置きはいるんだろうかねぇ」ボソッ

    ダーマ勇者「処刑なんですよ?例え罪人であろうと一人の命が失われそうな時にあなたはもうっ」ボソボソ

    エジンベア勇者「……」

    ダーマ勇者「……?どうしたんですか?」ボソ

    エジンベア勇者「ん?」

    ダーマ勇者「いえ……なんだか急に黙っちゃったので」

    エジンベア勇者「……いや……なんでもないさ」

    ダーマ勇者「……?」


    カンダタ「……」


    エジンベア勇者「……」


    エジンベア勇者「……なぜ一人の罪人の処刑をこんな大仰な形で取るんだろうね」

    ダーマ勇者「え?だってそれはあの人がガルナ様を――……」

    エジンベア勇者「だからって、船でネクロゴンドまでわざわざ罪人を運んでまでやる事かい?」

    ダーマ勇者「……」

    エジンベア勇者「……ねえ、ダーマ勇者」

    エジンベア勇者「君がネクロゴンド火口付近の調査をはじめてから一ヶ月、誰か火口に落ちたりしたかい?」

    ダーマ勇者「……?いえ、誰も……」

    エジンベア勇者「……そっか」

    エジンベア勇者「もしあの罪人がいなければ……」

    ダーマ勇者「え?」

    エジンベア勇者「…………ん、気にしないでくれ」

    912 = 1 :

    ダーマ勇者「そういえば、他の勇者の方々も遅刻ですか?」ボソボソ

    エジンベア勇者「んにゃ?今日は僕しか来ないよ」

    ダーマ勇者「あれ?そうなんですか……ランちゃんもですか?」

    エジンベア勇者「……」

    ダーマ勇者「?」

    エジンベア勇者「……ランシール勇者も、来ない」

    エジンベア勇者「ま、その理由はいつか彼女から聞くといいさ。君ら仲良いみたいだしねぇ」

    ダーマ勇者「そうですか……」

    ダーマ勇者「あの、でしたらエジンベア勇者さんは今日は何故ここに」

    エジンベア勇者「……死体の運搬さ」

    ダーマ勇者「…………はい?」



    ランシール神官「……――では、その前に……この男の手下達の血肉も、ルビス様の大地へ捧げよう」



    ダーマ勇者「えっ?」

    エジンベア勇者「ほら、あれさ」


    ザッザッザッ

    エジンベア兵達「「「「……」」」」


    ダーマ勇者「……?」

    ダーマ勇者「あの、あの真っ赤な麻袋って」

    エジンベア勇者「……死体だよ」



    ランシール神官「さあ、取り出しなさい」



    「「「はいっ」」」

    ガサッ

    バサバサ


    ゴロッ



    カンダタ「…………」



    ダーマ勇者「ひ……ッ……」

    エジンベア勇者「……」


    ランシール神官「……これらの遺体」

    ランシール神官「全て貴様の仲間で間違いないな?」



    カンダタ「……」



    ランシール神官「……では、火口に放り投げなさい!」


    「「「はっ!」」」

    913 = 1 :




    ああ



    カンダタ「……」



    火山の地鳴りが脳に響く



    カンダタ「……」



    顔が熱い



    視界が赤い



    不快だ



    全てが不快だ



    真っ暗だ



    縋れる物もねえ



    真っ暗闇だ


    914 = 1 :

    …………

    ……






    ――とある集落・とある家族――



    赤子「ぅやあぁぁぁ、ぅやぁぁぁ」


    「ああ、はいはい泣きやんどくれ」ユサユサ


    ギャーギャー

    息子「今殴ったのはてめえだろうが!」

    息子2「ちげえ!こいつが殴ったんだ!」

    息子3「お前っ、俺になすりつけんな!」

    「ちょっとあんた達!喧嘩するんじゃない!」

    息子「だって――……」

    ゴツン!

    息子「あだっ!」

    「母ちゃんを困らせてんじゃねえよ」

    息子「あんちゃん何すんだよ!」


    少年「うるせぇんだよさっきからお前ら」


    息子2「でもよお」

    少年「でももへったくれもあるか!」

    ゴツン!

    息子2「いてぇっ!」

    少年「俺も本読んでるんだよ!喧嘩すんなら外でやれ!」

    少年「それとも全員朝まで外で過ごしてえか!?ああん!?」

    息子3「わ、わかったよぶたないでっ!」

    少年「分かりゃいいんだ分かりゃ」

    915 = 1 :

    スタスタ ドスン

    ペラ…

    少年「……」

    「ありがとねお兄ちゃん」

    少年「いいって。母ちゃんはもう横になってろよ」

    「いいわ。あんたらのご飯も作らなきゃ」

    少年「俺がやるってそんなの」

    「だーめ」

    少年「……ったく。俺ももう子供じゃねえんだ」

    「まだ12になったばっかでしょうが。まだまだ子供さ」

    少年「そうやって子供扱いする……もう働けるっての!」

    「いいから。あんたらは今は遊ぶのが仕事だよ。生意気言って」

    少年「くそっ……見てろよ。とんでもねえくらい出世して見返してやる」

    「ふふふ、アンタならできるわ。アンタは字も読めるし」

    少年「まだまだ分かんねー事も多いけどな……でもたまに街に行けば教会で教えてもらえるんだ」

    少年「この前はルビス聖書っての貰って……ほら!これ!今読んでるやつがそうなんだけど」

    「難しい事はわかんないけど、ルビス様に纏わる話の本なんだろ?面白いかい?」

    少年「うーん……面白い話もつまんねー話もあるな」

    少年「でも面白い話はすげーわくわくすんだよ!ルビス様って精霊様の友達もいっぱいいるらしいぜ!」

    少年「で、その他の精霊様が世界を作るときに手伝ってたりするんだって!世界ってこの世界だけじゃないんだ!いっぱいあるってさ!」

    「ふうん?そりゃすごいね」

    少年「他にも、その精霊様と協力して、別の世界の魔物の王と戦ったり、願い事をなんでも叶えてくれる竜の神様がいたり!」

    「そんな事まで書いてあるのかい」

    バサッ

    少年「あーあ……そんな神様が居たらいっぱい願い事叶えてもらうのになぁ」

    少年「まずは腕っぷしと頭の良さを貰って、お城のお偉いさんの職についてさ」

    少年「そして魔物と戦う旅に出るんだ!そしたらじゃんじゃん稼げるだろうから、こんな家じゃなくもっとでっかい家に母ちゃんを住ましてやるよ!」

    「あははっ、ありがとう。楽しみだねえ」

    少年「へへ!」

    「でも、それはダメよ」

    少年「えっ!?な、なんでさ」

    「そんな神様に貰った力で強くなっても、きっと意味はない」

    「私の子供なら自力で、自分の力で強くなりな」

    「その為にあんたを腹痛めて、健康になるように産んだんだ」

    少年「……でも」

    「ん?」

    少年「……」

    少年(でも……俺達は、オヤジの盗みを働いてきた金で育ったんだろ)

    少年(そんな生活、正直俺はもう嫌なんだ)

    少年「……」チラッ

    赤子「……う?」

    少年「……」

    少年(こいつには、オヤジや母ちゃんに対して、そんな考えもってほしくねえ)

    916 = 1 :

    赤子「ふぇ」


    少年「んぇ?」


    赤子「あぎゃあぁぁぁ、あぎゃぁぁぁ」


    「あらら、どうしたの」

    少年「あっ!……ちょっと待って!動かないで!」

    「?」

    スッ


    フワッ


    少年「……こいつの首元にいやがった」


    蜘蛛「……」


    少年「蜘蛛だ」

    「全然気付かなかったわ、ありがとう」

    少年「いいって……天井から降りて来たみたいだ」

    少年「このっ」

    スッ…


    「……ちょっと、何しようとしてるの」


    少年「えっ?」ピタ

    「何してるのアンタ」

    少年「何って……蜘蛛を殺そうとしてるだけだけど」

    「やめなさい」

    少年「えっ?」

    917 = 1 :

    カサカサ

    少年「あっ、逃げられた……おい母ちゃんなんで止めたんだよ」

    「無意味に殺すのはやめな。あの蜘蛛だって、どんなに小さくても生きてるんだ」

    少年「なんでだよ。たかが蜘蛛だろ」

    「……」

    ナデナデ

    「どんなに小さくても、頑張って生きてるんだ」

    「それをあたしらがどうこうする事はないだろう」

    少年「……でも」

    「あの蜘蛛が何をしたわけでもない」

    「あんたにとってたかが蜘蛛でも、あの蜘蛛にとっては大切な命なんだ」

    少年「……」

    「さ、そろそろご飯にしよう……この子抱いててくれるかい?」

    スッ

    少年「……ん」

    「ありがと。ちょっと待ってなよ」

    スタスタ…

    少年「……」

    赤子「……?」

    少年「……べろべろ、ばぁー」

    赤子「きゃっきゃっ」

    少年「へへ……」

    少年「……」



    あんたにとってたかが蜘蛛でも、あの蜘蛛にとっては大切な命なんだ



    少年「……」

    918 = 1 :



    ……
    …………



    少年「はぁっ、はぁっ、はっ」



    ザッザッザッザッ


    ガリッガリガリッ


    少年「はっ、く、ふ、はぁっ」


    ザッザッザッザッ


    ザッザッザッザッ


    ザッザッザッザッ


    少年「はぁっ、はっ、はっ」


    ザッザッザッザッ


    ザッザッザッザッ


    ザッザッザッザッ


    ザッ



    くちゃッ



    少年「はっ、はぁっ」

    少年「はぁっ……はぁっ」

    少年「……はぁっ、はぁっ」


    ザッ……ザッ

    ザッザッ……

    パラ…



    少年「はぁっ……はぁっ……」


    少年「……はぁっ……はぁっ……はぁっ」


    少年「は――っ、は――っ、は――っ」



    少年「母ちゃん」



    へんじがない

    ただのしかばねのようだ

    919 = 1 :



    ……
    …………


    ――とある街中――


    ガヤガヤ



    スタ… スタ…



    少年「……」



    町人「でさぁ」

    町人2「ははっ、それはお前が悪い――…」


    ドンッ


    町人「いてっ!」

    少年「っ……」


    ドサッ


    町人「いてて……」

    町人2「あーあー、何やってんだよ」

    町人「あはは、ごめんなボウズ。大丈夫か?」


    少年「……」


    町人「……?立てるか?」

    町人2「おい君、何か落として……」

    ヒョイ

    町人2「ん?……これ……ひっ!?」

    バッ


    少年「っ……」


    タッタッタ


    町人「?……変なガキだったな」

    町人2「……」

    町人「ん?おい、どうした?」

    町人2「……指」

    町人「え?」



    町人2「あのボウズ、千切れた指を大事そうに持ってやがった」

    920 = 1 :


    ――教会――


    老神父「……の、……となりて」

    老神父「大地……炎は」


    キィィ


    老神父「?」


    スタ…スタ…


    少年「……」


    老神父「おや、君は」


    ガタ

    スタスタ

    老神父「丁度今お祈りが終わった所なんだ。今日はどうしたんだい?聖書の続きを借りに?」

    少年「……神父様」

    老神父「ん?」

    少年「……」

    スッ


    老神父「……!」


    少年「これ……母ちゃんなんだ」

    少年「お願い、神父様」


    少年「生き返らせて」


    少年「母ちゃんを、生き返らせて」

    921 = 1 :

    老神父「……君」

    少年「お願い……前に、前に言ってたじゃん、神父様」

    少年「体の一部分が残ってれば、蘇生呪文で元通りになるって」

    少年「お願いだよ、お願い」

    ギュッ

    少年「神父様っ……!ルビス様っ……」

    老神父「……」

    スタスタ

    ナデ…


    老神父「……大変申し訳ないが……君は今、お金は持っているかね?」


    少年「……は?」

    老神父「……すまないが、お金が無いと引き受ける事ができないんだ」

    少年「そんなっ、なんで……お願い、なんでもするから」

    老神父「私だって、できる事なら無償で引き受けたい。しかし、ルビス教の神父としての立場もある」

    老神父「今現在、世界中で魔物に殺され蘇生を待ち続ける人たちが居る」

    老神父「そして、それによって孤児になった子供達も大勢いるんだ」

    老神父「その魔災孤児の子供達を養うための施設を整えているのもルビス教だ……その運営資金は、蘇生を依頼した人々から貰い受けるゴールドで賄っている」

    老神父「これには、例外を作るわけにはいかないんだ」

    老神父「もし私が、無償で君の母を蘇らせれば、その噂を聞きつけて私の元に大勢が押し寄せる」

    少年「誰にも、誰にも言わない!!」

    老神父「蘇生呪文は大掛かりな呪文だ。君が誰にも言わなくとも、他の信者達やシスターには知られてしまう」

    少年「……」

    少年「……じゃあ」

    少年「お金を……」

    少年「お金を……持ってくれば……」

    老神父「……すまない」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    クルッ

    スタスタ…


    バタン


    シーン…


    老神父「…………すまない……」

    922 = 1 :




    少年「だれか」



    少年「お金を」



    少年「お金を下さい」



    少年「お願いです」



    少年「だれかっ」



    少年「少しで、いいんです」



    少年「お金をください」



    少年「母ちゃんを」



    少年「おねがいっ……」



    少年「おねがい」



    少年「おねがい、しますっ……」



    923 = 1 :


    ――数日後・街角――


    スタスタ


    「そうなの?じゃああの兵隊さんって」

    女>2「そうそう。物騒よねえ」

    ピタ

    「……」

    女>2「ん?どうしたの?」

    「……あれ」

    女>2「え?……やだ、なにあの子」




    少年「……」


    少年(……器の中、1ゴールドも入ってない)


    少年(誰もお金をくれない)


    少年(誰も見向いてくれない)


    少年(お金が……ない)


    ギュゥゥ…


    少年(……お腹が空いて、お腹が痛くなってきた)


    少年(食べるものなんてない)


    少年(もう、どうしようもない)


    少年(なんで、俺にはお金が)


    少年(みんな持ってるのに……なんで)


    少年(……)


    少年(……もう)


    少年(もう)



    少年(誰かの、金を)



    少年(いっそ)



    ギュッ…



    少年(盗んでしまえば)


    924 = 1 :



    「君、どうしたの」



    少年「……」



    女>2「……あなた、この辺りの子じゃないわよね?」

    「どこか他の街から来たの?」


    少年「……あ」


    スッ


    「!」

    女>2「ひっ」


    少年「これっ……母ちゃんです」

    少年「生き返らせるのに……お金が要って」

    少年「お願いです」

    少年「少しで良いから……お金を」

    少年「……ください、ください」

    グゥゥゥ

    少年「っぁくぅっ」

    少年「お願い、くださいっ……」


    「……」

    女>2「……」


    クルッ


    少年「あ」


    タッタッタ

    「……」

    女>2「……」


    少年「まって」

    少年「まって、待ってぇ」

    少年「おねがっ……お願いします」

    少年「おねがい……」

    少年「……」


    シーン


    少年「……」


    925 = 1 :


    少年「……」

    少年(やっぱり、皆……お金なんてくれない)

    少年(そうだ、皆、皆)

    少年(皆、くそ)


    タッタッタ


    少年(……え)


    ザッ

    「ほら、パンとチーズを持ってきたわ。食べて」

    「さっきのお腹の音、しばらく何も食べてなかったんじゃない?」

    女>2「私は弟のお古の靴……あんた足が傷だらけじゃない」


    少年「……え」


    「それと、少しだけど」

    女>2「私からも」


    チャリン チャリン


    少年「っ……!?」


    「……私達も、生活が苦しくてこれくらいしかできないの」

    「お腹の中に赤ちゃんがいるし……何かと要り様なの。ごめんなさいね」

    女>2「でも、見過ごすわけにもいかないから……これで、許してちょうだいな」


    少年「……っあ」


    ポロポロ


    少年「ありがとうっ……ありがとう」


    少年「ありがとうございばすっ……ありがとうございばすっ……!!!!」


    「……」

    ギュッ

    「これくらいしかできないけど、頑張ってね」

    「まだあなたは小さいんだから……この世界を呪わないで」

    「頑張って……強く」

    「頑張ってね……」

    926 = 1 :

    …………
    ……



    フラ…フラ


    少年「はぁっ……はぁ」

    少年(母ちゃん)

    少年(このお金があれば、母ちゃんが)


    スタスタ

    グイッ


    少年(え)


    浮浪者「……」


    少年(え?なに、この人)


    バキィッ


    少年「あぎっ……!!?」

    ドシャッ

    浮浪者「……」

    グイッ

    バッ

    少年「あっ……!!?やめっ、やめろぉっ」

    浮浪者「……」

    スタスタ

    少年「やめろ、やめろっ」

    少年「それは俺が貰った……返せっ、返して」

    浮浪者「え、なに。なに」

    少年「なにじゃねぇっ、返せっ」

    浮浪者「なにっっな―――ん――だ―よ―――っ」

    バキッ

    少年「あがっ」

    浮浪者「んふーっ、ふーっ」

    ダッ

    少年「あっ」


    タッタッタ


    少年「やだ、まてっまって」

    少年「やだよぉっ、だってそれは、さっき」

    少年「俺が、お姉ちゃん達に」

    ピタッ

    少年「……やだ、やだ」

    少年「くそっ」


    少年「なんで……」

    927 = 1 :

    …………
    ……



    ――街角・夜中――


    フラ…フラ…



    少年「誰か」

    少年「お金をください」

    少年「誰か――っ」

    少年「誰か」


    ガシッ


    「うわっ、なんだこのガキ」

    少年「お金を、お金をくださいっ」

    「おいおいおい……離してくれよ」

    バッ

    「悪いがこっちにだってそんな余裕ねえんだ」

    スタスタ





    少年「……」


    少年「……誰か」


    少年「誰か、お金を」


    少年「誰か」


    ポン


    少年「……えぁ」


    貴族風の「……お金が必要かね?」


    少年「あっ……お金」

    少年「お金を、お金をくださいっ」


    貴族風の「よしよし、じゃああっちの路地の方に行こうか」


    スタスタ


    貴族風の「……なあ、君」



    貴族風の「飴をしゃぶるのはお好きかね?」

    928 = 1 :






    ……
    …………



    少年「おええええっ……おえっ」


    少年「おぶっ……おえええぇぇっ」


    少年「ひふ……おえ」


    少年「おええええっ……!!!!」


    …………
    ……



    929 = 1 :



    ――教会――


    バタン


    老神父「ん?こんな夜中にどなた……」

    老神父「……――!!」


    少年「……」


    老神父「き、君」

    スタスタ

    老神父「ボロボロじゃないか……ああ、衣服に嘔吐の跡まで」


    スッ


    老神父「……!」


    少年「……おかね……」


    老神父「君……どうやって」

    少年「これで、母ちゃんを……生き返らせて……」

    老神父「……ああ」

    ギュッ

    老神父「任せたまえ、ああ。任せたまえよ」

    老神父「では早速その亡骸を私に」

    少年「……これ……」

    老神父「ああ、では――……」


    老神父「……」


    老神父「……」


    少年「……神父様……?」


    老神父「……君」




    老神父「この亡骸は……魔物にやられたものではないのか……?」


    930 = 1 :

    少年「……え……あ」


    老神父「……すまない」

    老神父「まさか、人の手によるものだとは……」

    老神父「これでは、私には――……」


    少年「……」


    少年「……」


    少年「……あ」


    ヨロッ ペタン


    少年「あああ、うあああ……っ」


    老神父「……!」

    ギュッ!!

    老神父「すまないっ、すまない」

    少年「だって、神父様が、治るって、生き返るって」

    老神父「すまない……!」

    老神父「魔族が人類を脅かす今では、人同士の殺しは皆無に近く……まさかそんな事をする者がいるなんて」

    老神父「なあ、君……これはどこでやられたんだ」

    少年「村にっ……大勢、兵士たちがっ……」

    老神父「……村に?」

    老神父「……」

    老神父「君は」

    老神父「まさか、先日滅ぼされたあの盗賊達の集落の……!!」

    少年「……っ……っ」

    老神父「……!」

    老神父(……関係あるものか……!)


    グイッ


    老神父「本当にすまなかった……泣きやんでおくれ」

    老神父「前にも言った通り、ルビス教は行き場の無い子供達を養う施設をいくつも持っている」

    老神父「君も私が責任を持って、そこへ案内する……!」

    老神父「だから今日はここで休んでくれたまえ……」

    931 = 1 :

    ………………


    ――教会・併設舎――


    ホー… ホー…


    ドンドン

    ドンドン


    「神父様」

    「神父様、すみません」


    スタスタ

    ガチャ

    老神父「……なんですかな、こんな夜更けに」

    「夜分遅くに申し訳ありません」

    「私どもは王国の兵なのですが」

    老神父「…………はあ、どういったご用件で」


    「ここに少年が逃げ込んできませんでしたか?」


    老神父「……」

    「なんでも、近頃王国が粛清した悪党達の生き残りが一人居たらしく……」

    「王がそれを聞き、後顧の憂いを絶つ為に見つけ出して連行しろ、との事で」

    「話によると、討伐に協力した旅の方がその子供の顔に大きな傷を付けたそうです」

    「ここに現れませんでしたか……?顔に大きな傷のある少年が」

    老神父「少年、ねぇ……」

    老神父「いえ、ここには数人の信徒達と施設行きを待つ子供達が居りますが、近頃加わった子供は居りません」

    「……」

    「……」

    老神父「……」

    「……そうですか」

    「いえね、近隣の住人からみすぼらしい格好をした少年の目撃情報を聞いたものですから」

    「あの悪党達の集落から一番近いこの街に潜んでいる可能性が高いので、念のためね」

    老神父「それはご苦労様です」

    「では申し訳ありませんが」


    「その施設行きを待つ子供達を見せて貰えますか?」


    老神父「お断りします」

    老神父「子供達は皆眠っておりますので……何卒、また明日いらっしゃいますよう」

    932 = 1 :


    「……そうですか」

    「では明日の早朝、また伺います」

    老神父「ええ、それでは良い眠りを」

    「良い眠りを」


    バタン


    老神父「……」

    老神父「……」

    老神父「……っ」ガリガリ


    「……今の、って」


    老神父「!!」


    スッ…


    少年「……」


    老神父「……聞いていたのか」

    少年「今の、あいつら……俺を」

    老神父「……」

    スタスタ

    ガシッ

    老神父「……逃げるんだ」

    少年「えっ……」



    …………

    ――教会・裏口前――


    老神父「あの兵達はまた明日も来るだろう……恐らく、君を生かしておきはしない」

    老神父「朝が来る前に、国境をなんとしても越えるんだ」

    少年「でもっ……」

    老神父「すまない、私も付いて行くべきなのだろうが……早朝までに戻れそうにない」

    老神父「そうなれば、私に疑いがかかり次はこの教会の子供達が……」

    少年「……」

    老神父「……これを、肩にかけて行きなさい」

    スッ

    老神父「この袋には、僅かだが食料とお金が入っている」

    老神父「そして……これを」

    スッ

    少年「……!」

    老神父「ナイフを……」

    ギュッ

    老神父「……いざという時に、使いなさい」

    老神父「野宿する際にも、魔物と出会った時にも」

    老神父「……『敵』に出会った時にも」

    933 = 1 :

    少年「……」

    老神父「最後に、聖水だ」

    老神父「絶対というわけではないが、大抵の魔物は近寄ってこない筈」

    少年「……」

    老神父「……君よ」

    ギュッ

    老神父「すまない……私が君に蘇生の加護の話をもっと早く伝えていれば……」

    老神父「君よ、恨むなら、私を恨んでおくれ……無力な私を恨んでおくれ」

    老神父「ただ、この世界は、この世界は恨まないでおくれ」

    少年「……神父様」

    老神父「……」


    スッ


    老神父「……この子に、ルビス様の御加護がありますよう……」

    老神父「……――行きなさい。朝が来る」


    ―――――――
    ―――――――


    …………
    ……




    ――明け方・国境近くの森――


    ザァァァァァァ…


    バシャッ バシャッ


    少年「はぁっ、はぁっ……」

    少年「はぁっ……はあ……」

    少年「はあ……はあ……」


    バシャッ バシャッ


    少年「はぁっ……ふ、う」

    少年「はぁっ……はぁっ」




    「おい!こっちだ!」



    少年「!?」



    「こっちに子供みたいな人影が……」

    「やっぱりさっきの神父が俺達を謀ってたんだ……!追え!」



    少年「ひっ……!」

    少年(追手……!)

    934 = 1 :

    「くそっ、雨で音が……!」

    「松明の火はちゃんと覆っておけよ!見逃したら終わりだ!」


    …………

    ……

    …………


    ザァァァァァ…


    ガサッ ガサァッ


    少年「ばはっ、ぷぁ」

    少年「はーっ、はーっ」

    少年「はーっ、はーっ」

    少年「はーっ、はーっ」


    ……


    少年「はーっ……はーっ……」

    少年「やっ……と」


    ドシャッ


    少年「はぁっ、はっ」

    少年「はっ、はっ」

    少年「はーっはっ」

    少年(もう走れない)

    少年(立てない、辛い、眠い)

    少年(お腹が痛い、もういやだ)

    少年(もういやだ、もういやだ)


    少年(なんで俺だけこんな目に)


    少年(なんで俺だけこんな目に遭うんだ)


    ――――――――



    この世界は、この世界は恨まないでおくれ



    ――――――――


    少年「っ……そ」

    少年「くそっ……っそぉ……!!」

    935 = 1 :

    ザァァァァァァ


    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年(あと、どれくらいで夜があけるんだろう)

    少年(いつこんなのが終わるんだろう)

    少年(いつまで俺は)


    ゴソ


    少年「……」


    蜘蛛「……」

    カサ…… カサ……


    少年(……蜘蛛)

    カサ…カサ

    少年(…………死にかけてる)


    蜘蛛「……」


    少年(雨から、逃げられなかったのかな)

    少年(溺れて死にそうだ)

    少年(……)


    蜘蛛「……」


    少年(…………俺みたいだ)

    少年(苦しそうだ)

    少年(……)

    少年(殺して、やろうか)


    スッ


    少年「……」


    蜘蛛「……」


    少年(いっそ)

    少年(ひとおもいに)

    少年(つぶして)

    936 = 1 :




    あんたにとってたかが蜘蛛でも、あの蜘蛛にとっては大切な命なんだ




    ピタ


    少年「……」

    蜘蛛「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……そう、だよなぁ」


    スッ…


    少年「死にたくないよな」

    ポロポロ

    少年「死にたく……ないよなぁ"っ……」

    少年「ぐそっ、ぐ」

    少年「ぐそぉっ……!!うう"ぅぅっ"」

    少年「生きでるんだもんなぁっ」

    少年「畜生ッ……ちくしょっ……!!」



    ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ



    …………
    ……

    937 = 1 :



    ……
    …………


    ザァァァァァァ


    少年(雨が…………強くなってきた……)

    少年(歩け……歩け)

    少年(歩け)

    バシャッ バシャッ

    少年(早くしなきゃ……早く)

    少年「はっぁ、く」

    少年(でも、もうそろそろ)

    少年(!)


    ザッ


    少年「はぁっ……はあ……」

    少年「はあ……はあ……」

    少年「はぁ……」


    少年「…………国境だ」



    ――某国・国境の関所――



    ザァァァァァ…



    スタ…スタ…


    少年「はぁっ……はぁ……」

    少年(早く……早くここを抜けないと……)


    ザッ


    少年「……?」


    シーン…


    少年「……」

    少年(……?誰もいない)

    938 = 1 :



    ―――――――――――


    老神父『恐らく関所では王国兵が検閲を行っている』

    老神父『しかし、その場でこの書状と金貨を渡せば通れる筈だ』

    老神父『でもその前に、関所の王国兵にも君の話が行っているかもしれない』

    老神父『もし君を見て王国兵が怪訝な目をしたら、すぐに逃げるんだ』


    ―――――――――――

    少年(誰かいるんじゃなかったのかな……)

    スタスタ

    少年「……?……!!」

    少年(誰か倒れ)

    少年「……」

    少年「……」



    少年(…………なんだ、これ)



    オォォオォ…



    少年(人が、いっぱい死んでる)

    939 = 1 :

    少年「!?……?」キョロキョロ


    シーン


    少年(もしかして魔物に……?だったら、近くにまだ魔物が居やがるんじゃ)


    ザァァァァァァ……


    少年「……っ」ブルッ

    少年(もしそうだったら、魔物はどこに――……)

    少年「!」

    少年(そうだ、この関所の上の階ならこの辺りが全部見られる)

    ダッ

    タッタッタ…


    …………


    ――関所上階・詰所兼見張り台――


    タッタッタ…

    ザッ

    少年「はぁっ、はっ……あ」

    少年(薄暗くて辺りがよく見えない……早く窓側に)

    少年「うっ……!?」


    オォオオォォォ


    少年(これ全部死体……死体か!?ここもかよ……!!)

    少年「うぷっ……」

    少年(くせぇっ……これ、血の匂いか……!!)


    「……」


    少年「っ」ぞっ


    ズザッ!!

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年(誰か、居る)


    ゴソ… ゴソ


    「……」


    少年「……」

    少年「……なに」

    少年(死体の山の中で……何か)

    940 = 1 :

    ゴソ


    「……」


    少年「……」

    少年(……婆さんだ)

    少年(暗くてよくわかんねえけど……婆さんが死体を漁ってる)

    少年(もしかして、ここの人たちを、全部あの婆さんが……?)


    老婆「……」

    クルッ

    老婆「……?」

    少年「!」

    少年(気付かれ――……)


    老婆「ひぃぃっ!!?」


    少年「……え」

    バタッ

    バサバサ

    老婆「違う、違うんですっ」

    老婆「すみませっ……これは」

    少年(え?俺に驚いてる……?)

    少年「ちょ、ちょっと待ってよ」

    老婆「ひぅ……?」

    スタスタ

    少年「俺、ただの人間だよ。魔物とかじゃないから」

    老婆「……」

    少年「ねえ婆ちゃん、これ何があったの?まさか魔物?」

    少年「だったら早く逃げないと」

    老婆「わ」

    少年「?」

    老婆「わたしは……何も、知らない」

    老婆「しらない、しらない」

    少年「……」

    老婆「売られてく、馬車の中で、大きい音がして」

    老婆「出たら、ここの全員、死んでて」

    老婆「売られてくはずのみんなは、もうにげた」

    少年「……な……なに、言ってるんだ……?」

    941 = 1 :

    老婆「みんなにげた……わたしは、少しだけ、ここに残ってる」

    少年「婆ちゃんは何してたんだよ、もし魔物の仕業だったら危ないから」

    少年「……」

    少年「……なあ、婆ちゃん」


    老婆「……」


    少年「その、持ってるペンダント……なんだそれ」


    老婆「……」

    少年「……まさかお前」

    老婆「……ふ、ひゅひっ」

    老婆「ひゅひゅっ、ひひゅひゅひゅ」

    老婆「みんな死んでるからっ、だって、みんな死んでるから」

    少年「……っ」

    ガシッ!

    老婆「ひぃ……っ!!」

    少年「死んだ人の荷物、漁るってのかよ!!」

    少年「婆ちゃん、最低だ!!そんな事許されるワケ」

    老婆「……だれに?」

    少年「え?」

    老婆「だ、だれに、許されるワケが、ないのぉっ?」

    少年「……それは」

    少年「国の法にも……ルビス様にも」

    老婆「く、くにぃ?ほうぅ?」

    老婆「国が、くく、国の法が、わたしを助けたことなんて、いっかいもなかったよぉ?」

    老婆「ルビス様が、わたしを見守ってくれたことも、い、いちどもなかったのよぉ?」

    老婆「誰もわたしを、みまもってくれなくて」

    老婆「だから、わたしは自分で、じぶんを生かしてきた」

    老婆「こうやって……こういう風に!」

    老婆「それがあなたにわかるの?それがあなたにわかるの?」

    老婆「なんで赦されないの?生きたいのよぉっっ。わたしは」

    老婆「これを、ここの、しんだ糞たちの持ち物売れば」

    老婆「しょうがないのぉ、生きられるのぉ!」

    少年「……」

    942 = 1 :

    少年「…………でも」

    少年「でも、それは」

    老婆「ひゅ、ひゅひゅ、おねがい」

    老婆「お願いよ、お願い坊や……見逃して」

    老婆「もうこの国から逃げたいの。お金がいるの」

    老婆「これを逃げた先で売れば、やっていけるのよぉ」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    老婆「……見ないどくれよ」

    老婆「見ないでおくれよっ!!!!」

    ブンッ!!

    ガシャン!!!

    少年「……」

    老婆「どっかにいっておくれ!!消えておくれ!!!!」

    老婆「わたしを見ないでおくれよ!!!!」

    少年「……」

    少年「……俺は」

    少年「……」

    クルッ…

    スタスタ…

    老婆「……」

    老婆「……う」

    ポロポロ

    老婆「うぁぁん……うぁぁぁん……」

    ゴソゴソ

    老婆「うぁぁぁぁん……うぁぁん……」

    ゴソゴソ…

    943 = 1 :

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」

    スタスタ

    少年「……」



    老婆『誰もわたしを、みまもってくれなくて』

    老婆『だから、わたしは自分で、じぶんを生かしてきた』


    ぴたっ


    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    少年「……」

    クルッ…

    少年「…………」

    スタスタ


    少年「……」


    スタスタ

    タッタッタ

    タッタッタ!!

    タッタッタ!!!


    少年「……っ」


    少年「……ははっ、は」


    少年「はははっ!ははははは!!」


    少年「あははははは!!!!あははははははははは!!!!」

    944 :

    お疲れ

    945 = 1 :

    ゴソゴソ… 

    老婆「ぐすっ、これも、金になる」

    老婆「これも、これも」

    タッタッタ

    ズザァ!

    老婆「!!?」


    少年「はぁっ、はぁっ」


    老婆「……な、なによぉお」

    老婆「なんで戻ってくるのよぉ」

    少年「はーっ、はーっ!」

    スタ スタ

    老婆「なに?なに?」

    スタスタ

    スタスタ

    少年「なあ、婆ちゃん」

    スタスタ

    少年「ありがとう、俺も分かったんだ」

    スタスタ

    少年「そうだよな?誰も、誰も守ってくれないんだ」

    少年「だったら、生きるためには仕方ないんだ」


    ガシッ!!


    少年「なら、これも仕方ないよな?」


    ドゴォッ!!!!!


    老婆「っっっぷ」


    ドサッ!!

    老婆「おえっ、かはっ……!!!」

    少年「なあ、婆ちゃん」

    少年「集めた金目のもの俺にちょうだいよ」

    老婆「なっ、はっ」

    ダッ

    老婆「いやああぁぁぁぁぁあ!やだああああああ!!!!」

    少年「待て!!!待てよ!!!」

    ガシッ

    老婆「痛い!!!やめて!!!離しておくれよぉ!!!!」

    少年「暴れるなよ!!!!っ、の!!!!」

    ぶちぶちぃぃっ

    老婆「ああああああ――――――!!!!!!ああああああああ!!!!!!!」

    少年「あば、糞が」

    少年「暴れんな!!クソババア!!!!」

    ぶちぶちぶち!!!!!

    946 = 1 :

    老婆「ぎゃああああああ!!!!!!やだああああああああ!!!!!やだああああああ!!!!」

    少年「っ……!!へへっ、へへへ!!!」

    少年「こんなに簡単に抜けるんだな、髪って」

    少年「……なあ婆ちゃん」

    ゴソ…


    ――――――――――――――


    老神父『そして……これを』

    老神父『ナイフを……』

    ギュッ

    老神父『……いざという時に、使いなさい』

    老神父『野宿する際にも、魔物と出会った時にも』

    老神父『……『敵』に出会った時にも』


    ――――――――――――――

    ジャキッ


    少年「目玉、刳りぬかれたくないだろ?」

    少年「集めた金目の物よこせよ」


    老婆「はーっ、ばはーっ」

    少年「おいババア、俺は聞いてるんだよ」

    少年「はやくしろよ殺すぞ」

    少年「目玉刳りぬかれてえのかって言ってんだよ」

    少年「しょうがねえんだろ!!!?なあ」

    少年「生きるためにはしょうがねえんだよな?さっきアンタ言ったろ!?!」

    少年「じゃあ俺の、っ、これも!悪い事じゃあねえよな!!!?」


    老婆「ずすっ、はーっ、はーっ!!!!」

    チョロ…

    ジョロ…


    少年「っ!!、は、はは!!!」

    バキィッ!!!!

    老婆「ああああ――!!!!いやああ!!!!」

    少年「ションベン漏らしてんじゃねえよババア!!!!」

    ドカ!!ゲシッ!!!

    少年「はっ!やっ!くっ!それっ!」

    少年「よこせっつってんだろうが!!!!」

    老婆「あげますう!!!もう、もうやめてぇええええ」

    ピタ

    少年「はーっ、はーっ」

    老婆「ひぐっ、ぐすっ、はーっ……!!!」

    少年「……ここの奴らからとった物と……お前のそれ」

    少年「着てる服も全部」

    少年「…………よこせ」

    947 = 1 :



    ……
    …………

    ザァァァァァ……


    タッタッタ

    ジャラジャラ…


    少年「はっ、はっ……!」

    少年「……はは、あははは」

    少年「あははははは!!!!」

    簡単だ!!!

    すごく簡単だったんだ!!!!

    自分の為には仕方ないんだ!!!!

    自分が生きる為には、他の奴らは関係ないんだ!!!!

    俺は間違っていない!!!!


    俺は間違っていない!!!!!!!


    俺は間違っていない!!!!!!!!!!!!!!!


    …………
    ……




    ザァァァァァ……

    老婆「……」

    ムク…

    老婆「……っ、く」

    老婆「はぁっ……はぁっ……」

    ズリ… ズリ…

    老婆「……はぁっ、はぁ」


    ――展望壁――

    ヒョイ

    老婆「……」








    ざああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ








    老婆「……」

    …………
    ……

    948 = 1 :



    ……
    …………


    ――某国・街の路地裏――



    子供「……」

    子供「……」

    子供「……」


    スタスタ

    ザッ…


    「……」


    子供「……」


    「……」

    「……へっ」


    スタスタ…


    子供「……」



    ―――――――


    ――市場・軽食品店――


    店主「はいらっしゃい!……うおっ!?」


    覆面の青年「……」


    店主(なんだ?この覆面……)

    青年「そこのパン一切れとチーズ貰えるか?」

    店主「あ、はいはいこれね……あんちゃん見かけないね?」

    青年「ここらに来るのは初めてだからな。それよりもあれはなんだオヤジ?」

    店主「アレ?」

    青年「来る途中に路地裏で薄汚ねえガキが蹲ってやがったんだが」

    店主「ああ、あれね。乞食だよ。ちょっと前から住み着いてんのさ」

    青年「……ふうん」

    949 = 1 :

    ――――――――


    子供「……」

    子供「……」

    子供「……」

    スタスタ……

    ザッ


    青年「……」


    子供「……?」

    子供「なに……?」

    青年「……」

    ポイッ

    トサッ

    青年「食え」

    子供「えっ」

    青年「いいから食え、死にてえのかてめえは」

    子供「……!」

    ガシッ!

    子供「……っ、がふっ、あがふっ」

    青年「あー、ちょっと待て先にパンを少し水で柔らかくして流し込め」

    ポイ

    青年「おら、水だ」

    950 = 1 :

    子供「……っ」

    子供「っは、ぐぁふっ、んっんっ……!」

    子供「ぷぁはっ……!ふあ」

    子供「あ」

    子供「ありがとぉ」

    子供「ありがとう……!!ありがとぉ……!!」

    青年「……へっ」

    ドサ

    青年「よっこらしょ、と……なあ、俺がただの親切な奴に見えるか?」

    子供「……え……」

    青年「別に俺はてめえを助けたわけじゃねえ……てめえを勧誘するためにこれを喰らわせたんだ」


    青年「お前さ。俺の子分になれよ」


    子供「……子分……?」

    青年「ああ。俺はよ、盗賊だ」

    子供「盗賊……」

    青年「そうだ。盗みも追い剥ぎも手馴れたもんだ」

    青年「てめえはその手伝いをしろ。いいな?」

    子供「……」

    青年「あ?なんだ?嫌なのか?」

    子供「で、でも……それ」

    子供「……悪い、ことだって……ルビス様の、本にも」

    青年「でももクソも悪いも何もあるか」

    ガシッ

    青年「なあ、お前生きたいんだろ?」

    青年「生きてく為にはよ、他の奴なんざ関係ねえんだ」

    青年「ルビスがお前の腹を膨らませたか?お国がてめえの腹を膨らませたか?」

    子供「……」

    青年「俺らみてえなのに必要なのはなぁ……良識でも我慢強さでもねえ」

    青年「他人から何かを奪う強さだ」

    ザッ

    青年「オラ、立てガキ」

    青年「てめえは俺の子分第一号だ。子分Aって呼んでやる」

    青年「ここに俺らの盗賊団を作ってやるんだ」

    青年「分かったら返事して付いてこいや」

    子供「……」

    子供「……っ」グッ

    ザッ

    子分A「…………はいっ!」

    青年「へへっ!いい返事だ!」


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