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    元スレ勇者「ハーレム言うなよ!絶対言うなよ!」武道家「4よっ!」

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    501 :

    待ってたよおおおおお勇者かっこいいよおおおお

    502 :

    乙!
    待ってたかいがあったぞ!

    503 :

    おつ!
    うれしいなぁ

    504 :


    頑張ってくれ

    505 :

    カンダタが助けてくれるとは

    507 :

    そろそろ

    508 :

    ――アリアハン城・城門前――

    ザワザワ


    「勇者母さんはここにいるんだろう!?」

    「何か一言あってもいいんじゃないのか!!」

    「勇者って子は魔の使いだったの!?説明させなさいよ!」


    門兵「皆さん!!落ち着いて下さい!!」

    門兵2「その件については王から近々説明を――……」

    「その王があいつの存在を他国に隠していたんだろう!!」

    「アリアハンの名を貶める気かよ!」


    <……!……!


    スタスタ

    料理長「……」


    ――厨房――


    ガチャッ

    料理長「ただいまっと」

    メイド「料理長!おかえりなさい」

    メイド2「一応、柔らかい麦粥を作っておきました」

    料理長「すまないね。任せちゃって」

    メイド「……どうですか?勇者母さんの様子……」

    料理長「ああ……相変わらずだよ」

    メイド2「……そうですか」

    料理長「……」


    コンコン


    三人「「「!」」」

    料理長「……なんだい、裏口に誰か来たのかね?」

    メイド「でも一体誰が……」

    コンコン

    メイド2「はいはい、行きますよ」

    スタスタ ガチャ

    メイド2「どなた――……って」


    勇者「……や」


    メイド2「女勇者様!!?」

    509 = 1 :

    メイド「女勇者様!」ガタ

    料理長「女勇者ちゃんかい!?」ガタッ

    バタン

    勇者「裏口から失礼するよ。みんなごめんね」

    勇者「城門からは入れそうになくてさ」

    料理長「……!あたしらに詫びはいらないのさ!あんた今までどこほっつき歩いてたの!」

    メイド2「あのね女勇者様。実は、えっと、その」

    勇者「お母さんがお城に匿われているんだよね?戦士ちゃんのお父さんから聞いたよ」

    勇者「……直ぐに会いに行きたいんだ。場所は?」


    ――客間――


    勇者「……」


    ルイーダ「……」

    ルイーダ「(勇者母さん……)」

    コンコン

    ルイーダ「……はい、どなた?」

    ガチャ

    料理長「ここだよ」

    勇者「……」

    ルイーダ「!!女勇者ちゃん!!」ガタッ

    勇者「ルイーダさん……ごめんね、色々」

    ルイーダ「私はいいの……!早く、傍に来てあげて」

    スタスタ

    勇者「……」

    勇者「……」

    勇者(目が、真っ赤に腫れてる)

    勇者(お義兄ちゃんの事心配して、ずっと泣いてたんだ)

    ルイーダ「……勇者くんの報せを聴いたら、だいぶ参っちゃったみたい」

    料理長「それでもあんたらの家に押しかけるバカな輩も少し居たからね。ここで安静にさせてたのさ」

    料理長「今は寝ているが、起きてる間はずっと泣き通しだったよ」

    勇者「……」

    スッ ギュッ

    勇者「……」

    勇者「……もう泣かないで、お母さん」

    クルッ

    勇者「……」スタスタ

    料理長「ちょっとアンタ!またどっか行く気なの!?」

    ルイーダ「女勇者ちゃん……?」

    勇者「……門の所に居る、2、30人の人達の所に行ってくる」

    料理長「はあ?」


    勇者「……魔物が、お義兄ちゃんが」

    勇者「私達や、アリアハンを騙してた事を自供したって……伝えてくる」

    510 = 1 :



    ……
    ………


    ――ダーマ付近の森――


    ダカダッ ダカダッ!!


    カンダタ「おい!後ろァどうだ!?」

    カンダタ子分A「…………最後尾のヤツが『何も追って来ない』って言ってます!!」

    カンダタ子分B「……」

    カンダタ子分C「……や」


    「「「やったぁ―――――!!!!」」」


    カンダタ子分D「マジかよ!!本当に国連相手にやりやがったぁー!!うはほほーっ!!」

    カンダタ子分E「っひゅー!今マジで俺らワルっぽい!!」

    カンダタ「え、今までワルっぽくないって思ってたの?」

    カンダタ子分A「おい!勇者!お嬢ちゃんは!?」

    勇者「うん!ありがとう!!怪我は無いみたいだ!!」

    カンダタ子分B「やったなぁ!!」

    カンダタ子分C「おいおいお姫様抱っこで馬に乗って王子様みたいじゃないのぉ!」

    カンダタ子分D「盗賊団を率いて王子もクソもあるかぁよ!」

    カンダタ子分E「けははは!違いない!!」

    カンダタ「まだ気ィ抜くんじゃあねえぞ!!ちゃんと逃げ切るまでなぁ!!」

    勇者「ああ!!」

    遊び人「ゆ、勇者ちゃん」

    勇者「なに!?どっか痛む!?」

    遊び人「ううん!じゃなくて……その、この現状は……!?」

    勇者「え……?ああ、カンダタ達の事?」


    カンダタ「いいか!昨日作ったルートを外れんなよ!!」

    カンダタ子分達「「「「おうっ!!!!」」」」


    勇者「……昨日、色々あってね」


    …………
    ……

    511 :

    …………


    ――昨夕・ダーマ付近の森――

    ザァァァァァ

    バシャッ

    バシャッ

    バシャッ

    勇者『(とりあえず……歩かなきゃ……!)』

    勇者『(途中まで乗ってきた、馬の所までは、戻らないと)』

    勇者『(……ん?)』

    ピタ

    勇者『……』

    勇者『(あれ……?見間違いか?)』


    <……!


    勇者『(あの、大きい木の下……馬が何頭も繋がれて……)』

    勇者『(集団が、野営を)』

    勇者『……っ!!』

    ジリッ

    勇者『(まずい……!多分、国連の息のかかった連中だ……!)』

    勇者『(きっと森の警備に就かされて……!)』

    ジリッ

    勇者『(とりあえず、逃げ)』


    ジャキッ

    『動くな』


    勇者『……――――!!!』ピタ


    『手ぇ組んで武器捨てろ。ゆっくりこっち向け』

    512 = 1 :


    …………


    ――カンダタ一味の野営地――


    カンダタ子分B『親分!テントから雨漏りする!』

    カンダタ『もうだいぶ古くなっちまってるからなぁ』

    カンダタ子分C『あれ?カンダタ子分Aは?』キョロキョロ

    カンダタ『さっき乾いた薪を探しに行かせた。もうじき帰ってくんだろ』

    バシャバシャ

    カンダタ子分A『親分!』

    カンダタ『お、ほら見ろ……って』

    カンダタ『………………は?』


    勇者『…………』


    カンダタ子分A『……そこらをうろついてやがりました』

    カンダタ子分A『騒がれると面倒なんで、一応連れて来たんすけど』

    カンダタ子分D『お前ぇっ!?』ズザッ

    カンダタ子分E『またお前かよぉ!?』

    カンダタ子分F『どんだけ俺らの事好きなの!?』

    513 = 1 :

    勇者『……』

    カンダタ『……っく』

    カンダタ『くっ、くはっ!』

    カンダタ『あっはっはっはっはっは!!!っんとによく会うなクソガキ!!』

    カンダタ『今度はなんだどうした!?本当に一味に入りに来たかよ!』

    勇者『……』

    カンダタ『……お?どうした?だんまりか?』

    カンダタ『ってか、あの他のガキどもはどうしたよ?』

    勇者『……カンダタ』

    カンダタ『あ?』


    ズザァッ!! ドチャァッ!!


    カンダタ子分達『『『『!!!?』』』』

    カンダタ『……』

    カンダタ『……おい、ガキ』

    カンダタ『そりゃ何のマネだ?』


    勇者『……』


    カンダタ『なんで俺に土下座なんぞしてんだ?お前』

    勇者『お前に』

    カンダタ『あ?』

    勇者『お前に……頼みがある』

    カンダタ『……は?』


    ギリィッ…!


    勇者『……僕にっ……!!力を貸してくれ……!!』


    カンダタ『……』

    カンダタ子分A『はぁぁ?お前何言ってやが』

    カンダタ『お前ら、少し黙ってろ』

    カンダタ子分A『へ?親分?』

    カンダタ『……おい、クソガキ』

    カンダタ『顔上げて、一から説明してみろ』

    514 = 1 :

    …………

    ザァァァァ…


    勇者『……』

    カンダタ『……!』

    カンダタ子分A『……は』

    カンダタ子分B『なんだ、そりゃ』

    カンダタ子分C『つうことは、お前』

    カンダタ子分D『てめえは今、国連に追われてるって事か!!?』

    勇者『……簡単に言えば、そうなる』

    カンダタ子分E『はぁ~……なんつうか、あれだな』

    カンダタ子分F『てめえも結構厄介なヤツなんだなぁ』

    カンダタ子分G『で?その賢者サマとやらの嬢ちゃんを助けるために』

    カンダタ子分H『俺達に力を?貸して欲しいって?そういう事かよ』

    勇者『……ああ、そうだ』


    『『『…………』』』


    カンダタ『……てめえ、正気かよ?』

    勇者『正気だ』

    カンダタ『女一人だぞ』

    勇者『遊び人一人の問題じゃなくなってくる』

    勇者『多分、沢山の人間が死ぬことになる。大きい争いが起こることになる』

    カンダタ『それは俺が与り知ることか?てめえが与り知る事か?』

    勇者『知ってるから見過ごせない』

    カンダタ『てめえの言ってる事が正しい保証もねえだろう』

    勇者『でもどの道』

    カンダタ『……』

    勇者『……遊び人が危険な目に遭う』

    勇者『それだけは、確実だ』

    勇者『魔物達は確実にあいつを狙いに来る。遅かれ早かれ』

    カンダタ『……もう一回言うぜ?女一人だぞ』


    カンダタ『女一人のために国連を敵にまわして馬鹿みてえに戦うっつうのか?』


    勇者『そうだ』


    カンダタ『女一人だぞ』


    勇者『女一人の運命がかかってんだ』


    勇者『一人の運命がかかってるんだよ』


    カンダタ『……』

    515 = 1 :

    カンダタ『……だが、さっきも言ったが、そりゃあ俺にぁ関係ねえよな?』

    カンダタ『なんでてめえは俺がただでホイホイ誘いに乗ると思ったんだ?馬鹿か?』

    勇者『タダじゃない』

    カンダタ『……ん?』

    ドジャッ!!

    カンダタ子分A『なんだその袋』

    勇者『……ゴールド金貨が入ってる』

    カンダタ子分B『は?』

    ジャラジャラ

    カンダタ子分C『っ……んだ、アレ』

    カンダタ子分D『ちょ、っと待てどんだけ入って……』

    カンダタ『……』

    ジャラ……

    勇者『……これが、僕の全財産の3分の2だ』


    勇者『これで、あんたらを。盗賊団を雇いたい』


    カンダタ子分達『『『はぁぁ!!?』』』

    カンダタ『……』

    勇者『……』

    カンダタ『……なあ』

    カンダタ『俺が首を縦に振ると思ったのか?てめえは』

    勇者『ああ』

    勇者『前にバハラタのお前らのアジトで……そこの三人に聞いたんだ』チラッ

    カンダタ子分E『……え?』

    カンダタ子分F『俺達?何か言ったっけ?』

    カンダタ子分G『えっと…………あ』


    ――――――――
    ~~~~~~~~


    勇者『……あのさ、あの女の人を攫った理由ってなんなの?』

    カンダタ子分E『理由、ですか?』

    勇者『うん。正直ホッとしたけど、攫った上で何もしないなんて、目的がよくわからないなぁと思ってさ』

    カンダタ子分E『あぁ、まぁごもっともっすねぇ』

    カンダタ子分F『これは実は――……依頼なんすよ』

    ピタ……

    勇者『……え?依頼?』

    カンダタ子分E『はい。詳しくは知らないんすけど、親分が誰かに頼まれたらしくて』

    カンダタ子分G『結構な纏まった金貰ったらしくてね。“あの女を夕方まで一切手を出さずに監禁。そして無傷で夕刻に村に帰す”って依頼』


    ~~~~~~~~
    ――――――――


    カンダタ子分E『……あー……』

    カンダタ子分G『言ったなあ……』

    勇者『……あれを思い出したんだ』

    516 = 1 :

    勇者『あの時お前は少なくともタニアさんには何の危害も加えてなかった』

    勇者『だから、依頼は絶対守るんじゃないかって……そう思ったんだ』

    カンダタ『……』

    勇者『カンダタ、アンタらに依頼をしたい』

    勇者『この金で、僕に協力して……遊び人を攫い出してくれ』

    カンダタ『……』

    勇者『……』

    カンダタ『……払うのは、全財産じゃあねえのか?』

    勇者『遊び人を連れ戻したら、まだ旅を続けなきゃいけない』

    カンダタ『……』

    勇者『……』

    カンダタ『……』


    カンダタ『っく』

    カンダタ『あっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!!!』


    カンダタ子分A『親分!?』

    カンダタ『馬鹿だぜお前!!本当に馬鹿だ!!』

    カンダタ『女一人のために、散々な目に遭わせてきた俺に頭下げて国連を敵にまわすかよ!!』

    ザッ!!

    カンダタ『おいお前ら!!全員よおく聞け!!』

    カンダタ『今からこいつらは依頼主だ!!気張って国連のクソカス共を出し抜いてやろうぜ!!』

    カンダタ子分B『親分、って事は』


    勇者『……じゃ、じゃあ!』


    カンダタ『ああ、付き合ってやろうじゃねえか』

    カンダタ『やるからにはとことんだ!!泣き言は吐かさねえぜ!覚悟しろよガキィ!!』


    勇者『……っ』

    ギュッ…

    勇者『ありがとう……!』

    517 = 1 :

    …………


    ザァァァァァ……


    カンダタ『……とまあ、もし奪還成功した後の森の中の逃げ道はこんな感じだな』

    勇者『うん!これだったら……!』

    カンダタ『……で、だ。問題の奪還なんだが……』

    カンダタ子分A『明日の儀式の時間になりゃ高確率でその嬢ちゃんが大聖堂に来る』

    カンダタ子分B『そこが狙い目だと』

    勇者『ああ、多分中には祭壇があると思うんだけど、儀式の最中はその祭壇上には祭司と遊び人だけになると思うんだ』

    勇者『その一瞬はあらゆる警備から解放されると思うんだけど……』

    カンダタ『しかし、どうすんだ。そこに割り入るつもりかよ』

    勇者『……うーん……それが問題なんだよね……』

    カンダタ子分C『親分、勇者。火薬なら多少持ち合わせがあるぜ』

    カンダタ子分C『神殿の一部で爆発起こして混乱に乗じて……なんてどうだ?』

    カンダタ『……いや、それだと奴らは余計に警戒して再度嬢ちゃんの周りに集まるだろうな』

    勇者『それに、もし遊び人を奪取できても、どうやって神殿の外まで連れ出すかが……』

    カンダタ『……』

    勇者『……』

    カンダタ子分A『……手詰まり?』

    勇者『い、いやっ!まだ何か、何かあるはず……!』

    カンダタ子分B『他の子分達の知恵も合わせてなんとか捻りだそうぜ』

    カンダタ子分C『ってか、あれ?他の奴らは?』

    カンダタ『さっき、逃げ道の経路と罠の仕込みの確認に行かせた。そろそろ戻って来るだろうよ』

    カンダタ子分A『しかし日が暮れてもうだいぶ経つ……雨のせいで暗くなるのが早かったとはいえ、時間は無くなってきてんぞ』

    カンダタ子分C『まず神殿にどうやって入って、どうやって隙をついて嬢ちゃんを連れ出すか』

    カンダタ子分B『それを確実にしねえと逃げ道の意味も無くなるしなあ』

    518 = 1 :

    カンダタ『……』

    勇者『……何か』

    勇者『きっと何か、方法があるはず』

    勇者『何か……』



    『なかなかに悪い話をしておるね』



    一同『『『!!?』』』

    カンダタ子分A『誰だっ!!』ジャキッ!!

    カンダタ子分B『そこの暗がりから……!』ジャキッ

    カンダタ『……おい、どこのどいつだ』

    ジャキンッ!!

    カンダタ『面ァ見せろ』

    勇者『……!』


    バシャ バシャ

    『私もまぜてくれないかねぇ』


    勇者『……』


    『丁度私も』


    勇者『……あなたは』


    ザッ



    命名官『……悪い事をしたい気分なんじゃよ』


    519 = 1 :

    ――――――――――


    遊び人「おばあちゃんが!?」

    勇者「うん。神殿の内部の構造や儀式の手順を全部教えてくれたんだ」

    遊び人(……名前のおばあちゃん……)

    勇者「カンダタや、命名官様が居なかったら……どうなってたか考えるだけで恐ろしいよ」

    カンダタ「けっ!!おいガキ、まだ気ィ抜くなつってんだろうがよ」

    カンダタ「どうなってたかとか言ってんじゃねえ。まだどうなるか分かんねえんだぜオイ!」

    勇者「ああ!ちゃんと気は張っておくよ!」

    カンダタ「どうだかなぁ!」

    遊び人「で、でも勇者ちゃん」

    勇者「ん?」

    遊び人「あの勲章は……?国連の勇者の勲章は、誰から……?」

    勇者「ああ……」チラ


    カンダタ「おい!次ァそっちだ!!枝が低くなってくるから気ぃつけろ野郎共!」

    カンダタ子分A「親分に言われずとも気ィつけてますよ」


    勇者「……カンダタが持ってたんだ」

    遊び人「え……!?」

    勇者「理由までは僕も分からない……ただ」


    ―――――――――


    ジャラッ

    カンダタ『……これを奴らに見せれば、ちったあ有利になんじゃねえのか』

    勇者『!?それっ、国連の勇者の勲章!?三つも!?』

    命名官『おや、こりゃ驚いたね』

    命名官『確かに、それが三つもあれば只事じゃないと皆理解するじゃろうから、遊び人ちゃんに近づく事はできるかもしれないね』

    カンダタ子分A『親分っ……それは』

    カンダタ『うるせえ黙ってろ。どう使おうが俺の勝手だろうがよ』

    カンダタ子分B『……うす』

    勇者『……?』

    カンダタ『……ガキ。これ、使え』


    ―――――――――


    勇者「……何か、言いたくない理由がありそうだったよ」

    遊び人「……」


    カンダタ「前から思ってたけどお前ら結構反抗期よな?」

    カンダタ子分D「え、デレ期っすよ。馬鹿じゃねえの?」

    カンダタ「それデレなの?」

    520 = 1 :

    勇者「でもまあとりあえず、今は逃げる事に専念するだけだ」

    カンダタ子分A「今んところ追手は来てねえみてえだ!ルートは一番目を通ってきゃ恐らく追いつかれねえ!」

    遊び人「ルート?」

    勇者「ああ、逃げ道をいくつか作ってあるんだよ。状況に応じてね」

    勇者「今の所、追手が来ていない一番見つかりにくい道を走ってる」

    カンダタ子分A「このまま一番目を突っ走れりゃ何も問題は……」



    カンダタ子分B「親分!!勇者!!」



    勇者「え!?」

    カンダタ「何だ!どうした」

    カンダタ子分B「後ろのヤツらが!伝言をって!」

    カンダタ子分A「なんなんだよどうしたんだ!!」



    カンダタ子分B「追手が来やがった!!」

    カンダタ子分B「追手の姿を一番後ろのヤツが見たらしい!!!」



    カンダタ「……!」

    カンダタ子分A「うっそだろオイ……!」

    521 = 1 :

    勇者「な、なんでこんな早く……!?」

    カンダタ(一番目のルートはわざとしっちゃかめっちゃかな方向へ伸ばしてある)

    カンダタ(蹄跡が残らねえ様に、砂煙もたたねえように落ち葉で埋もれた道を選んだ)

    カンダタ(それなのに、もう追いつかれちまった……!)

    勇者「追いつかれたって事は、僕らが迂遠な道を行ってるのがバレて、その最短距離を来られてるって事だよね……!?」

    カンダタ子分A「しかしそれがどうやってバレるんだよッ!もしかして向こうに盗賊職のヤツでもいんのか!?」

    カンダタ「いや、それだとしても早すぎるぜ」

    勇者「じゃあなんでっ……!」

    カンダタ「……空から俺らの動向を探られでもしねえと、こんなに速くは追いつかれねえ」

    カンダタ子分A「馬鹿言ってる場合じゃねえって親分!どうする!ルート変えるか!?」

    カンダタ「とりあえず、二番目のルートに移行だ!!」

    カンダタ「てめえら!!ここが正念場だ!踏ん張ってくぜ!!!」


    カンダタ子分達「「「おう!!!!」」」


    カンダタ「ガキ!てめえも嬢ちゃんをぜってえ離すんじゃねえぞ!!」

    勇者「ああ!!」

    遊び人「……っ」

    カンダタ「……へっ」

    カンダタ(…………用意したルートは全部で5本)

    カンダタ(全部使い切る事態にならねえ事を祈るぜ)

    522 = 1 :

    今日はおしまいです

    524 :

    乙でございます

    525 :


    相変わらずおもしろい

    527 :

    ――勇者達の後方――


    ドドドッ ドドドッ


    ポルトガ兵「エジンベア勇者様!前方より奴らの姿を捕捉したとの伝達が!」

    エジンベア勇者「へえ、ホントかい?じゃあこのまま前の彼らに付いていけばいいって事だよね?」

    ポルトガ兵「はい!そのようです!」

    エジンベア勇者「良かった良かった。やすやす逃げられてしまっては僕も責められるからねぇ」

    エジンベア勇者「……しかし」

    ポルトガ兵「は、どうかされましたか?」

    エジンベア勇者「…………前の彼らは、どうやって奴らの行方を追っているんだろうねえ」

    ポルトガ兵「……と、いいますと」

    エジンベア勇者「ちょっと要領良すぎないかい?奴らが神殿付近を逃げ出してから僕らが追いかけるまで少し時間が空いた」

    エジンベア勇者「その間に開いた距離も今じゃ殆ど無い。僕らの馬が特別速いわけでもないだろうし、不思議だ」

    ポルトガ兵「た、確かに……ですが、やはり流石といったところではないでしょうか」

    エジンベア勇者「ああ……流石」


    ドドドッ ドドドッ



    サマンオサ兵「……」



    エジンベア勇者「流石、サマンオサ兵といったところだね」

    ポルトガ兵「最前列の方々は騎士団長様の直属の兵との事です。並々ならぬ修羅場をくぐりぬけてきたのでしょう」

    ポルトガ兵「でしたら盗賊の逃げ道を割り出す事は容易い事なのかもしれません」

    エジンベア勇者「……かねえ」

    エジンベア勇者(なーんか……気味悪いんだよねぇ……)


    ――――――――――


    ダカダッ ダカダッ!


    カンダタ子分E「親分!おやぶーん!!」

    カンダタ「なんだぁ!」

    カンダタ子分F「駄目だ!!この道でも撒けねえ!!アイツら追って来てやがる!!」

    カンダタ「……ちッ!!」

    カンダタ子分A「ちゃんと一番後ろの奴は罠をかましたんだろ!?それでも駄目だったのかよ!」

    勇者「くそっ……!」

    遊び人「罠って……?」

    カンダタ子分A「昨日仕掛けた罠さ!この四番目には罠を幾つも仕掛けてたんだ!」

    カンダタ子分A「木の上に人の目鼻も馬の目鼻も狂っちまう毒粉を大量に包んだ風呂敷を吊るしておいて」

    カンダタ子分A「一番後ろの奴が自分が通る際にそれをぶち破って後ろに撒く、みてえな罠とか、他にも色々仕掛けてたんだよ!」

    カンダタ「まあ……全部無駄になっちまったみてえだけどなあ!!」

    528 = 1 :

    カンダタ「仕方ねえ!おいお前ら!!五番目の方法に移行だ!!」


    カンダタ子分達「「「!!」」」


    カンダタ子分B「でも親分!いいのかよ!」

    カンダタ「仕方ねえっつっただろうが!!もう後はねぇ!!」

    カンダタ子分A「っ……おい!!皆!“五番目”だ!布を被れ!!」


    カンダタ「被ったら一回全員馬を止めろ!!一塊になれ!!」


    遊び人「え!?」

    勇者「遊び人!布を被るよ!!」ガバッ

    遊び人「ちょっと待って勇者ちゃん!なんで止まっ」

    勇者「いいから!!」


    ――――――――


    ダカダッ ダカダッ

    エジンベア勇者「……お?」



    カンダタ一味「「「……」」」



    エジンベア勇者「前方に見えてきたねぇ……!」

    ポルトガ勇者「奴ら、止まっていますね……?ついに観念して」

    エジンベア勇者「……おいおい」

    ポルトガ勇者「え?」




    「今だ!!散れぇっ!!!」



    「「「応ッッ!!!!」」」


    ダッッ!!!!



    エジンベア勇者「アレ、どれが賢者様だよぉ……!?」

    ポルトガ兵「こ、小賢しい真似をっ!!!!」

    529 = 1 :

    ダカダッ ダカダッ!!


    勇者「っ……!」


    ――――――――――


    カンダタ『……最後の方法、“五番目”の逃げ道だが』

    カンダタ『同じ色の布を被って、一回固まった後……五個の隊に分かれて逃げる』

    カンダタ『このガキと賢者の嬢ちゃんとやらは俺とカンダタ子分Aが引き連れる』

    カンダタ『残りの奴らはあらゆる方向に逃げ回れ』

    カンダタ『いいか、ぜってぇ捕まんじゃねえぞ。逃げ切りやがれ』

    カンダタ『逃げ切ったら……アッサラームで身を潜めてろ』

    カンダタ『もし……もし一月経ってもアッサラームに姿を現さなかったら……』


    『そんときゃ、いねえ奴は死んだもんだと思え』


    ――――――――――


    勇者(絶対……!絶対に逃げ切るっ……!)


    カンダタ子分A「……おい」


    勇者「えっ?」

    カンダタ子分A「嘘だろ、オイオイオイ」

    遊び人「……蹄の音が、全然減らない」

    勇者「……!?」

    クルッ

    勇者「…………なんで」



    ドドドッ ドドドッ


    サマンオサ兵「「「……」」」




    勇者(なんで、一人も迷わず僕達を……遊び人を追ってきてるんだよ……ッ!!!?)

    カンダタ「……五番目も失敗みてえだなあ」

    カンダタ子分A「親分……!」

    カンダタ「……」

    カンダタ(……――覚悟の決め時か)

    530 = 1 :

    今日はおしまいです

    532 :

    乙でございます

    533 :

    まだかいね?

    534 :

    まだ一月も経過していない
    まだだいじょうぶ・・・まだ・・・

    535 :

    カンダタ「おい子分A」

    カンダタ子分A「なんすか!」

    カンダタ「最終分岐点まであとどんくらいだ」

    カンダタ子分A「……」

    カンダタ「……オイ、どんんくらいだって聞いてんだ」

    カンダタ子分A「……っ、……もう少しで着く」

    カンダタ「“あの”煙玉はちゃんと持ってるか」

    カンダタ子分A「ああ……三つある」

    カンダタ「大丈夫だな……昨日俺が言った事は覚えてるか」

    カンダタ子分A「……ああ」

    カンダタ「じゃあ、実行だ。しくじんなよ」

    カンダタ子分A「…………」

    カンダタ「……オイ、返事が聞こえねえぞ」

    カンダタ「昨日言った事、実行だ。わかったか」

    カンダタ子分A「……はい」

    カンダタ「へっ、それでいい」

    勇者「二人共さっきから何話してるのさ!走るのに集中しないと――……」

    カンダタ子分A「勇者」

    勇者「えっ?何!?」

    カンダタ子分A「ルート移行だ」

    勇者「……え?」

    カンダタ子分A「“六番目”だ。六番目のルートに移行するぜ」

    勇者「ちょ、ちょっと待ってよ!昨日の話で五番目は決めたけど六番目なんて決めてなかっただろ!?」


    カンダタ「おい、勇者」


    勇者「だから何――……え」

    勇者(カンダタに名前で呼ばれた……?)

    カンダタ「お前、こないだ言ってたよなぁ」

    勇者「……?何をさ!」

    カンダタ「俺が『人を』殺せないって」

    勇者「え?」

    カンダタ「てめえ、言ってたよな」

    勇者「……う、うん。言ったけど……でもあれは挑発として」


    カンダタ「三人だ」


    カンダタ「俺は、人生で三回、殺しをやった」

    536 = 1 :

    勇者「……は?」

    カンダタ子分A「……」

    カンダタ「……俺は悪党だ」

    カンダタ「盗みもやった。騙しもやった。追剥した回数も数えきれねえ」

    カンダタ「その悪事を働いた時の事なんざこれっぽっちも覚えてねえ……だがな」

    カンダタ「殺しをやった時の、得物の柄の感触と奴らの最後の声は、今でも脳味噌全体にこびり付いてる」

    カンダタ「その動機と一緒に、今でも俺の感覚に纏わりついて、離れやしねえ」

    カンダタ「……動機は、お前にも分かって貰えるようなくだらねえ事さ」

    勇者「……」



    ―――――――――――

    ジャラッ

    カンダタ『……これを奴らに見せれば、ちったあ有利になんじゃねえのか』

    勇者『!?それっ、国連の勇者の勲章!?三つも!?』

    カンダタ『……ガキ。これ、使え』


    ―――――――――――


    勇者「……カンダタ、まさか、お前」


    ジャキン!!


    勇者・遊び人「「!!?」」


    カンダタ「……いいか、勇者」


    カンダタ「馬を止めたら殺す。追い戻して来たら殺す」


    カンダタ「まっすぐ走りきらなけりゃ殺す」


    カンダタ「嬢ちゃんを離したら殺す」


    カンダタ「逃げ切らなけりゃ……呪い殺す」

    537 = 1 :

    勇者「……待って、待ってよカンダタ」

    勇者「お前さっきから何を言ってるんだよ……!早く一緒に――……」


    カンダタ子分A「親分!目印が見えた!最後の分岐点だ!」

    カンダタ「よっしゃあ、子分A!“あの”煙玉だ!」

    カンダタ子分A「おう!!……っだらっしゃあ!!!」

    ブンッ!!!!


    ボォン!!!!


    勇者「うわっ!?」

    遊び人(煙玉を上空に!?)


    カンダタ(今から通過する分岐点から先は木の葉が濃い。四方八方からの視界を防ぐ事ができらあ)

    カンダタ(だが突入前に保険……“さっきから違和感を感じる上方”から姿を隠す為に、粒の軽い色粉末で作った、上に舞い上がりやすい煙幕を上にぶちまける!!)

    カンダタ(そして――……!)


    ザッ!!


    遊び人「!?」

    勇者「っ!?カンダタ!!?」



    カンダタ(……俺はここで)


    奴らを、国連の犬共を迎え撃つ!


    538 = 1 :

    勇者「カンダタ!!カンッ……」

    ジャキッ!!

    勇者「!」

    カンダタ子分A「……立ち止まんな!」

    カンダタ子分A「さっき親分が言った事忘れたのか!手綱しっかり持ってやがれ!!」

    勇者「でっ……でも!」


    カンダタ「……」


    勇者「……――!」

    ゴソッ

    勇者「……っ!カンダタ!!!!!」


    ブンッ!


    カンダタ「あん?……っとと」

    パシッ!

    カンダタ「…………なんだこりゃあ」


    勇者「報酬の“前金”だ!!!!」

    勇者「あとは直接手で渡す!!!だからっ」


    勇者「だから!!!絶対受け取りに来いよ!!!!!」


    勇者「その時まで!ずっと、ずっと待ってるからな!!!」


    ドドドッ ドドドッ…

    ドド……






    カンダタ「……」

    カンダタ「……バカか」

    カンダタ「バカか、アイツ」

    539 = 1 :

    ダカダッ ダカダッ


    「おい!こっちでいいのか!?」

    「だって前のサマンオサの奴らが――……!!」


    エジンベア勇者「どうしたんだい前の衆?」

    ダーマ兵「どうやら煙幕を撒かれ、相手を見失ったようです!」

    エジンベア勇者「……?ふうん?」

    エジンベア勇者(煙幕?確かに上の方が煙っぽくはあるけど、別にさっき目潰しを撒かれた時と大差は無いように感じるけど……)

    エジンベア勇者「……ちょっと前の方に行って来るよ。ふっ!」

    バシン ヒヒィーン!!

    ダカダッ ダカダッ!!

    エジンベア勇者(なんか、妙なんだよねホント。サマンオサの人ら……ちょっと嫌なカンジ)

    エジンベア勇者「あ、いたいた。ねえねえ君たちー!」

    サマンオサ兵「……なんでしょう」

    エジンベア勇者「ねえ、賢者様を見失ったってホントに……」

    サマンオサ兵「……――!!居たっ!!!!」

    エジンベア勇者「え?」



    カンダタ「……」



    エジンベア勇者「……一人?」

    エジンベア勇者(賢者様はどうしたんだ?この先に逃げたのか?)

    エジンベア勇者(なんでコイツは逃げない?なんで仁王立ちでこっちを伺って)

    エジンベア勇者(あ、やばい、やな予感しかしない)

    エジンベア勇者(これ、多分罠だ)

    540 = 1 :

    ガバァッ!!

    エジンベア勇者「っ……!後方!直進するな!!最後方のヤツは止まるよう伝達しろ!!!」

    エジンベア勇者「前方の奴ら!!!進路を至急――……」



    カンダタ「おせえよ、カスタコが」



    ズッ


    サマンオサ兵「「「!!!?」」」


    ポルトガ兵「うおぉっ!!?」


    ダーマ兵「これはっ……!」




    エジンベア勇者(落とし、穴っッ……!!!!!)




    カンダタ「定員オーバーだ」


    カンダタ「沈んでカスムシみてえにもがけ。ゲロクソ野郎共」



    ズドドドドドドドオ!!!!!!


    541 = 1 :

    ドドドォッ ドポォ!!


    「わあああああ!!!!」

    「後方!!止まれ!!押すな!!おすっ うわああああっ!!!!」

    「馬がっ!!馬が上にっ」

    「な、なんだこれ、沼!!!?沈んでいくっ」


    エジンベア勇者「ぶはぁっ!!たはっ」

    エジンベア勇者「っ!!毒の、沼……!!?」


    カンダタ「けはははは!!!いい眺めだなあ!?」

    エジンベア勇者「っ、やってくれたねぇ……!?」

    カンダタ「見事に大量にかかってくれたな。統率が取れ過ぎて纏まりすぎちまった隊列っつうのも困ったもんだろ?」

    エジンベア勇者「このっ……」

    ガシッ!!

    エジンベア勇者「ふっ……!く、!」

    カンダタ「這い上がろうとしてんのか?無駄無駄だボケ。その沼の毒で手足が痺れちまってるだろ。超即効性だぜその毒」

    カンダタ「それに淵には時間が無かったから申し訳程度だが、蝋が塗ってある。ま、諦めな」

    エジンベア勇者「ごのっ!くふっ……この、毒沼の落とし穴全部お前が作ったのかい……!?」

    カンダタ「全部用意できるかバァーカ。ここにでけえ毒の沼があったから利用させて貰ったのよ」

    カンダタ「落とし穴を作るのは俺の十八番だからなァ。使う枝の種類や配置、上の腐葉土や落ち葉の被せ方……全て熟知してる」

    カンダタ「人を乗せた馬が大勢一度に乗れば広範囲の枝が耐えられなくなって沈むように全て即席で作るぐらいワケねえさ」

    エジンベア勇者「……だいぶ、魔物らしくないねっ……!」

    カンダタ「……魔物?」

    ポルトガ兵「とぼけるな悪党め!!」

    ダーマ兵「あの魔物の男に味方していただろう!!貴様も魔物なのでは」


    カンダタ「  あ ?  」


    ポルトガ兵・ダーマ兵「「っ……!?」」ゾッ…

    カンダタ「あのガキが魔物?魔物だって言いてえのか?てめえら?」

    エジンベア勇者「……違うとでも、言いたそうな顔だね?」

    カンダタ「……」

    カンダタ「くくっ……!ははっ、いや、傑作だね」

    ドスン

    カンダタ「よっこらせ……と。だが残念だが俺は魔族でもなんでもねえ。ただの人間の悪党さ」

    エジンベア勇者「……?だったら何故お前はあの男に味方するんだい?」

    カンダタ「……なあ、お前」

    エジンベア勇者「え?僕かい?」

    カンダタ「その勲章……国連の勇者だよな?」

    エジンベア勇者「それがなんの――……」


    カンダタ「お前、なんで国連の勇者になった?」

    542 = 1 :

    エジンベア勇者「……は?」

    カンダタ「……」

    エジンベア勇者「……覚えていないし、お前に言うつもりも無いさ」

    エジンベア勇者「だから、それが何の関係が――……」

    カンダタ「俺はよ」

    エジンベア勇者「?」

    カンダタ「こっから北の、ちいせえ集落で生まれ育った。ゴロツキや悪党が集まる、クソみてえな集落さ」

    エジンベア勇者「お前の身の上話なんて聴きたくないんだよねえ……!!」

    カンダタ「まあ聴けよ。どうせそっからは助けがこねえと抜け出せねえんだからよ」

    カンダタ「……しかしまあ、そんなクソみてえな所でも、俺にとっちゃ故郷だった」

    カンダタ「お袋と、妹や弟達と……中々に楽しくやってた」


    カンダタ「だがある日、近所の王国が集落を掃除にやって来た」


    エジンベア勇者「……」

    カンダタ「……悪党が作った集落だ。邪魔だったんだろうよ」

    カンダタ「村の男達は真っ先に殺されて、俺たち女子供は大きく掘られた穴の中に全員集められた」

    カンダタ「だが俺は運良く山に遊びに行ってて無事だったんだ……俺だけ」

    カンダタ「俺だけ、無事だった」

    エジンベア勇者「……」

    カンダタ「俺はお袋や弟妹達が入れられた穴を遠くから見て、必死に他の誰かに助けを求めに行ったよ」

    カンダタ「そこで……旅をしている奴らに会った」


    ―――――――――――

    ―集落近くの道―


    『君!どうしたんだ!?』

    『足の裏が血まみれじゃないか、満身創痍だし、一体』

    カンダタ『はぁっ、はぁっ、に、兄ちゃん達』

    カンダタ『助けてっ……!助けて!母さんが!妹達もっ、殺される!』

    『何っ!?魔物か!?』

    カンダタ『違う!とにかく、すぐそこなんだ!早く来てっ!』

    543 = 1 :

    …………

    ――集落――

    タッタッタ

    カンダタ『ここだよ!この中で』

    某国の騎士『止まれ!』

    カンダタ『!』

    某国の騎士『貴様ら何者だ!』ジャキッ

    『旅の者だ。ロマリア国から魔族を退治する命を受けて旅をしている』

    『私はカザーブの認可を受けて旅をしている者です』

    某国の騎士『……国認定の旅人の方々でしたか。これは失礼を』チャキッ

    『一体、この中で何をされているんですか?』

    某国の騎士『ああ、実は』

    ……

    某国の騎士『……――という事です。つまり悪党共を粛清しているのです』

    『……』

    『……』

    某国の騎士『見た所、御二方も戦いに心得があると御見受けしました』

    某国の騎士『穴の中で、そして女子供だとはいえ、腕のたつ悪党も少々居りまして……少し手こずっておるのです』

    某国の騎士『御二方も、“掃除”を手伝っていただけませんか?』

    某国の騎士『御礼は致します。それに……些細なことでも、国同士が手を組んだという事実があれば国間の仲も円滑にいきやすくなるのでは?』

    カンダタ『(些細な、こと?)』

    カンダタ『ねえ……ねえ兄ちゃんたち!こんな奴いいから早く助けてよ!』

    カンダタ『……』

    カンダタ『兄ちゃん、たち……?』

    ――――――――

    カンダタ「今でも思い出すぜ」

    カンダタ「それまで二人の義憤に強張っていた顔が」

    ――――――――


    『……』

    『……』



    ――――――――

    カンダタ「次第に複雑に歪みだす様を」

    544 = 1 :

    カンダタ「まだ国同士が戦争の名残でギクシャクしてた時だ」

    カンダタ「何かきっかけを作っておきたかったんだろうよ……あれは半分、脅しだった」


    ―――――――――


    カンダタ『……兄ちゃん達……?』


    『……悪党の数は?』


    カンダタ『!!?』

    『御手伝いしましょう』

    某国の騎士『おお!かたじけない!』

    カンダタ『なんでっ、なんでっ』

    『じゃあまずは――……』


    ザシュン


    カンダタ『……ぱフォっ』


    『……この子から』


    カンダタ『ぐぁああああああああ!!!!!』

    痛い!痛い!痛い!痛い!

    顔を斬られた!顔を斬られた!

    545 = 1 :

    ガシッ

    カンダタ『!?』


    『……ごめんよ』


    『仕方ないんだ、ごめんよ』


    『ごめんよぉ』


    カンダタ『っ』ゾゾゾッ


    ダッ!!

    『あっ!』

    カンダタ『ひっ……ひぶっ……!』タッタタ

    『逃げたぞっ!何してるんだ!』

    某国の騎士『まあ、一匹くらい良いでしょう。さあ、こっちです』


    ――――――――

    タッタッタ

    カンダタ『はぁっ!はぁっ!』

    斬られた 痛い

    痛い、斬られた

    カンダタ『はぁっ!はぁっ!』

    でも、戻らなきゃ

    戻って、皆を助けなきゃ



    でも

    僕一人で?

    どうやって?


    怖い


    怖いよ


    痛いのは、やだ


    死ぬのは、やだよ

    546 = 1 :



    ……
    …………


    カンダタ「……次の日、集落の場所に行ったら、穴は埋められてた」

    カンダタ「掘り返したら、地中深い所からグチャグチャの肉や焼け焦げた肉が出てくるだけだったよ」

    カンダタ「お袋の、弟達の、妹の、肉と骨は全部一緒にごちゃ混ぜになってた」


    エジンベア勇者「……!」

    ダーマ兵「……っ」

    ポルトガ勇者「……う」


    バサッ…

    カンダタ「ほら、この傷がその時カザーブの奴に付けられた傷だ」

    カンダタ「この傷だけは、回復呪文なんて使わずに、そのままにしてんだ。忘れねえ為にな」

    カンダタ「……この傷を付けた奴と、一緒に居た奴は……しばらく経った後、勇者になってたよ」

    カンダタ「国連の勲章を、得意気にぶら下げてな」


    エジンベア勇者「……」


    カンダタ「……なあ、お前ならどうした?」

    カンダタ「お前が騎士に手伝えって言われたら、どうした?」

    カンダタ「殺したか?大義名分の下に、悪党どもを殺したか?」

    カンダタ「もし、お前が」

    カンダタ「もしお前が、俺だったら」

    カンダタ「あの時、戻って、皆を助けるために、足掻いたか?」

    カンダタ「……なあ」

    カンダタ「お袋や、妹や、弟達は、何をしたんだ?」

    カンダタ「なんで殺された?悪事を働いてないあいつらが、なんで」

    カンダタ「……なあ」

    エジンベア勇者「……」

    カンダタ「……あいつは」

    カンダタ「あのガキなら」


    カンダタ「勇者なら、殺さねえ」

    カンダタ「勇者なら、逃げねえ」


    カンダタ「加護も無いくせに、ツレを守る為に後先考えねえ男だ」

    カンダタ「あいつなら、国に逆らっても、殺さねえ」

    カンダタ「あいつが俺だったなら、皆を助ける為に、諦めねえ」

    547 = 1 :

    カンダタ「……あいつが、魔物?んなわけあるかよ」

    カンダタ「お前ら、何やってんだ?」

    カンダタ「魔王を倒すのがお前らの仕事じゃなかったのか?」

    カンダタ「国に命令されてしっぽ振って、何も考えず“人間”一人追い回して」

    ギリィッ!!


    カンダタ「てめえらは犬だ!!!!!」

    カンダタ「正義もクソもねえ!!!!勇ましくもなんともねえ!!!!!」

    カンダタ「死から遠い所で、首輪付けられて尻尾振って肉棒おっ勃てて喜んでる」


    カンダタ「犬畜生さ!!!!お前らはよ!!!!!!」



    エジンベア勇者「っ……!!!!」

    ギギィッ…!!!

    エジンベア勇者「僕を、見下すな悪党ォ……!!!!!」




    「犬以下が吼えよるじゃん」




    ダーマ兵「!!」

    ポルトガ兵「あっ!!」

    エジンベア勇者「!?」


    ヒュン!

    カンダタ「!!!」


    ガキィン!!!!


    ズザァッ…


    カンダタ「くっ……!」

    カンダタ「……援軍のお出ましか」



    ジパング勇者「全く、勇者っちに逃げられたかと思えば」


    ジパング勇者「こんなムサい男の御相手とはちょっと滅入るよね」

    548 = 1 :


    ワァッ!!


    ダーマ兵「ジパング勇者様!!」

    ポルトガ兵「お願いします!沼から抜け出せず……!」


    ジパング勇者「なんで揃いも揃ってみんなお沼に嵌ってさあ大変状態なんじゃよ……」

    ジパング勇者「まあまっとれまっとれ☆すぐに」


    ガキィン!!!


    カンダタ「……!!」


    ジパング勇者「……この犬以下を片付けるからねっ☆」



    ガキン!!

    シュバッ ズザァッ!!


    カンダタ「……」

    ジパング勇者「お?彼我の実力差をもう弁えたようじゃね?」

    カンダタ(あー……こりゃ、ダメだな)


    ジパング勇者「犬以下の癖に少しはできるようじゃの」


    カンダタ(……こいつ、強すぎる)

    カンダタ(ま、でも)


    ――――――――――

    ドドドッ ドドドッ


    勇者「っ……!」

    遊び人「……!」


    ――――――――――


    カンダタ(時間は十分に稼げたな)

    カンダタ(……ちゃんと守れよ、勇者)

    ジパング勇者「さて、どうわらわに立ち向かうつもり?」

    ジパング勇者「わらわには隙なんてないよ?」

    ジパング勇者「さっきの話聞いた限り、もう落とし穴も、というか罠自体ないんじゃろ」

    ジパング勇者「さっさと諦めてくりゃれよ。ムサい男を縊る性癖なんてわらわには――……」

    549 = 1 :


    キンッ!!!!


    ジパング勇者「!!!?」


    バシッ!


    ジパング勇者「っ……!これは」

    ジパング勇者(1ゴールド金貨……!)


    ヒュンッ!!!!


    ジパング勇者「!!」


    ガキィィン!!!!!


    カンダタ「……っ!!!!」グググ…!

    ジパング勇者「姑息な手を使いよるじゃん……!!」グググ…!

    ヒュンッ!

    ガキィン!!ガキィン!!

    カンダタ「っ、っ!!」

    ジパング勇者「今の、さっき勇者っちに貰った金貨じゃろうっ!?」

    ジパング勇者「大切にしなくていいのかえ!?」


    カンダタ「やっぱ、さっきの上からの気配、てめえだったか」


    ジパング勇者「……」ピタッ

    ズザァッ!!

    ジパング勇者「……」

    ジャキッ



    ジパング勇者「お前、もう殺すわ」


    ジパング勇者「あの金貨、本当に勿体無い事したのう?」


    ジパング勇者「地獄の門番に渡すワイロにでもすればよかったじゃろうに」




    カンダタ「地獄の沙汰を渡るのに、金も何も必要あるものかよ」



    カンダタ「この身一つあればいい」



    ジャキン!!!!



    カンダタ「来いよ犬畜生!!!!俺は悪党だ!!!」



    カンダタ「大盗賊、カンダタ様だ!!!!」

    550 = 1 :

    今日はおしまいです


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