元スレ上条「そこのおねーさん! お茶しない?」 麦野「あん?」
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S-13 DAY 0
PM 3:30 偽装アパート 尾立荘前
「で、案の定留守かい……」
勢い込んで来たものの、(当然だが)上条のアパートには誰も居なかった。
「お姉さま、両隣もお留守のようですわ。…どうしましょう?」
隣室のメーターを確認した黒子が、遠慮がちに美琴に言う。
「…気は進まないけど、もう一つの住所を訪ねるしかないわね。一応、これ謝罪なんだし…」
本当に気が進まない口調で美琴が言う。
あの麦野沈利とは顔も合わせたくないが、仕方がない。
美琴とて、『上条に会ってとにかく謝りたい』という気持ちは強い。
「わかりましたわ、それでは移動を… て、あら…?」
黒子が踵を返そうとすると、上条のアパートに向かって、1人の女性が歩いてくるのが目に入った。
タンクトップに包まれたでっぱいを盛大に揺らし、さらっさらのオデコを光らせ歩くのは、自称・上条当麻の許婚、吹寄制理だ。
「……どちら様?」
上条の部屋の前に立つ少女2人を、吹寄が不機嫌そうに誰何する。
この一週間ほど、あまり上条が携帯電話に出てくれないので、足しげく上条のアパートに通うのが日課になっているのだ。
ちなみに、この吹寄の行動はしっかりと上条に報告されており、2回だけ吹寄を部屋に上げている。
「…その部屋の人に何か用事?」
なかなか口を開かない2人に苛々した様子で吹寄がさらに問う。
しかし、美琴も黒子も、とある一点を凝視してフリーズしている。
その一点とは、言わずもがな、吹寄のおっぱいだ。
((でかい……))
自分たちの頭ほどありそうなド巨乳に、言い知れぬ敗北感を抱く。
「あのね…… ん?」
いい加減焦れた吹寄が、2人の視線に気付くと、面倒そうに、ふんっ、と鼻を鳴らした。
「あんまり見てると、見物料取るわよ?」
「……ハッ!? ご、ごめんなさい、つい……」
正気に戻った美琴が頭を下げ、遅れて黒子も「す、すみませんですの!」と頭を下げる。
「別に良いから、こっちの質問に答えてくれない?」
「あー、えっと、私たちは…」
「わ、私たち、以前、上条さんにご迷惑をおかけしてしまって…!」
口ごもった美琴の代わりに、黒子が口を開いた。
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「迷惑?」
「は、はい! こちらのお姉さまは高位の電撃使い(エレクトロマスター)でいらっしゃいますが、
お姉さまが能力を行使されたときに、不幸なことに、上条さんがお巻き込まれになられて……」
「そ、それで、謝りにきたんです!」
何とか復帰した美琴が同意する。
それを聞いた吹寄は、やや表情から険をとって、「ふぅん…」と頷いた。
「そういう話、聞いたことないけど、まぁ、自分から不幸話を話すタイプじゃないしね、当麻は」
はぁ、と吹寄が溜め息を吐く。
しかし、その台詞の中には、御坂美琴にとって聞き捨てならない言葉が含まれていた。
「あ、あの… 上条、さん、とは、どんなご関係ですか…?」
勢い込んで尋ねる。
対して吹寄は、美琴のことを何も知らないので、なんでもないように答えた。
「え? 許婚よ、親公認の」
「「は、はぁぁぁぁ!?」」
美琴と黒子が口をあんぐりと開けて叫ぶ。
その反応になぜか悦を感じたのか、吹寄が胸を反らせて、ふふん、と勝ち誇る。
「ま、高校生ともなると、そういう関係も有るってことよ… で、留守なんでしょ?」
放心状態の美琴が、かくかく、と頭を上下に振る。
「はぁ… どうせあの女のところでしょうね…」
「あ、あの女って、あのオンナですか……?」
つい、ポロリと美琴が口に出してしまうと、耳ざとく吹寄がそれに反応する。
「…麦野さんのこと、知ってるの?」
「えっと、いや、その、名前は知らないんですけど…… あっ、一緒に歩いているのを見たんで……」
しどろもどろに美琴が答えると、吹寄は納得したように頷いた。
「ああ、なるほどね。…悔しいけど、許婚はアタシだけど、今の彼女はあの人なのよ。 …なに、その顔? やっぱり知り合いなんじゃない?」
「い、いえ、本当に知らないです… 名前だって今知ったし……」
しばらく、じとー、と美琴を見ていた吹寄だが、やにわに小さく肩をすくめると、「まぁ、いいわ」と呟いた。
「当麻にはアタシから言っておくから、貴女たちはもう気にしなくても良いわよ」
その言葉を聞いて、美琴がポケットに入れたメモを手で強く握る。
(…なんかムカつく)
このデカチチには、絶対麦野の住所は教えないでおこう。
そう、美琴は心の中で誓った。
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S-14 DAY 0
PM 4:00 麦野のマンション「Meltykiss」 リビング
「つーことで、フレンダは今回リタイアだ。まったく、あの馬鹿は…… あ、ソコソコ……」
いつものマンションのいつものリビングでは、床に敷いたマットレスに麦野が腹ばいになり、その麦野に馬乗りになって上条がマッサージを行っている。
上条はポロシャツに部屋着の短パン、麦野はスポーツブラにスパッツというラフな格好だ。
「ていうか、フレンダ大丈夫なん? 裂けたりとかしてんじゃねぇ?」
麦野の脊柱に沿って、翼を広げるように両手を動かしてマッサージを行う。
女性らしい、ふにふに、としたお肌の下にある、しなやかな筋を慎重に伸張する。
「恥を承知で医者に行くらしいわ、繋がったまま… あ~、いいわ、それ……」
「駒場さんもなんと不幸な……」
笑えばいいのやら、哀れめばいいのやら、判断のつかない表情で上条が言う。
(つーか、あの体格差だったら、フレンダが駅弁スタイルで抱きついて、駒場さんがコートを着れば上手く隠れるかも……?)
思わずそんなシーンを想像してしまい、ぷっ、と吹き出す。
「なぁにぃ? 面白いことでもあったぁ?」
マッサージが気持ち良いのか、麦野がだらけた声で言う。
「いや、なんでも。ケツ揉むよ?」
「いーよー……」
上条が両手の手掌を使って、麦野の臀部をぐにぐにと圧迫する。
(えーと、骨盤がここだから、大臀筋はこのあたりか……)
土御門から習った解剖学を頭に思い浮かべて、形良く発達したお尻を優しくマッサージする。
麦野が着ているのは薄いスパッツ1枚のみだから、殆ど裸尻を揉んでいるようなものだ。
段々と上条の手の動きが熱を帯びてくる。
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「…手つきがやらしーぞー?」
ほんのり桃色の吐息と共に麦野が言う。
「いえいえ、上条さんはマッサージをしているだけですよ、っと…!」
そう言いながらも、上条は五指を蠢かせるように臀部を揉みしだく。
うつ伏せに寝る麦野の吐息が、緩やかにその間隔を短くしていく。
(沈利はお尻も最高だなー… 揉んでて飽きねぇ……)
思わず、両足の付け根に指を伸ばしたくなるが、そこはぐっと我慢する。
代わりに、親指をそろそろとお尻の中心に降ろし、窄まりの周囲を優しくマッサージすると、麦野の身体がピクッと震えた。
「……興味あるの?」
「え、何に?」
「お尻、アナルセックス」
そういう目的で触ったわけではないが、多感で欲望満載な男子学生としては安易に否定できない事柄だ。
「…んー、ぶっちゃけると、ある、かな? でも、無理はしたくない」
上条の脳裏に、後穴をレイプされて裂傷を負った佐天涙子の姿が浮かぶ。
想像はできないが、麦野のああいう姿を見たくはない。
だが、麦野は特に動揺するでもなく、上条の言葉に答えた。
「…ま、そのうちね」
『無理』とか、『嫌』とか言わないあたり、麦野沈利である。
「いいの?」
「しばらく使ってないから、準備要るし。アタシも嫌いじゃないし。
ま、マンネリ予防とでも思っておきなさい。それより……」
言葉と共に、麦野の手が、スッ、と伸びて上条の手を取り、スパッツの上から秘裂に押し当てた。
ちゅく… と汗と共にもっと粘ついた液音が微かに聞こえた。
「テメェの触り方がやらし過ぎるから、火が着いちまっただろーが」
顔を上げて、上気した頬と潤んだ瞳で上条を見る。
「責任とれ、コラ」
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S-15 DAY 0
PM 4:10 麦野のマンション「Mwltykiss」玄関前
「ここがあの女のハウスですわね…」
目の前にそびえる高級マンションを見上げて黒子が言う。
美琴は、まだ失言のショックが尾を引いているのか、若干元気の無い様子だ。
「黒子… 今日はもう『ごめんなさい』だけ言って帰るわよ…」
「ええと、はぁ、そうですわね…」
美琴を異常なほど崇拝している黒子にとって、異性との接近は止めて欲しいのだが、こうも元気が無い様子を見るのも苦痛である。
「…思うにお姉さま、しばらくあの殿方とは距離を置いた方がよろしいのでは無いでしょうか?
果報は寝て待て、という言葉もございますし……」
「うん…… でも、許婚とかいるみたいだし……」
許婚の存在がかなり強烈だったせいか、なんだかよく分からない焦燥感を美琴は感じていた。
「大変失礼ですが… お姉さまはあの殿方のことを、本当に好いていらっしゃるんですの?」
黒子が、おずおず、といった風に美琴に訪ねる。
問われた美琴は、眉間を指で摘むと、「う~~~~~む……」と低く唸った。
「なんて言うか… あの女があの馬鹿にキスしたときに、無茶苦茶悔しくて、無茶苦茶悲しかったのよね… さっきのデカチチの人の時も」
自分でもよく分かっていない微妙な気持ちを、必死に説明しようとする。
「正直に言うと、アイツのことが好きかどうかはよく分かんない… けど、胸がモヤモヤしてるの、ずっと……」
胸の辺りを苦しそうにさする。
「…だいたい、アイツが私のこと無視すんのがムカつくのよ!
恋とかそういうのとは別に、とりあえず私のことを名前で呼べっつーのよ!」
美琴の髪の毛から、微弱な放電現象が起こる。
どうも、上条のことを考えるにつれて、段々と腹が立ってきたらしい。
「それにこのままだと、あの麦野って女や、デカチチの許婚に負けた感じがしてすっごい嫌。
私はそんなに軽い存在じゃないわよ……!」
はっきりと分かるほど美琴の髪が放電する。
黒子は、本当なら、ここで宥めるのが自分の役目だと分かっていたのだが、それまでの沈んだ美琴を見ていたせいか、ついついノッてしまった。
「その通りですわ! あの類人猿はお姉さまの魅力に気付いていませんのよ!」
「そう? …そうよね。うっし、謝るだけはなし! 一言、『名前で呼べ』ぐらいは言ってやろうじゃないの!」
完全にテンションを戻した美琴が、大きく自分に気合を入れる。
そして、美琴と黒子は互いに頷き合うと、マンションの自動ドアを潜って、オートロックのエントランスに足を踏み入れた。
かくして、御坂美琴はルビコンを渡る。
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S-16 DAY 0
PM 4:10 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング
「あんッ、あんッ! ソコ、ソコ弱いのッ!! ソコばっかり卑怯よぉ……ッ!」
リビングでは、ストレッチマット上でまんぐり返しになった麦野が、屈曲位で上条に激しいピストン運動を食らっていた。
「へへ… せっかく沈利のGスポット見つけたんだから、責めなきゃ損だろッ? つーか、沈利も気持ちいいからいいじゃん…ッ」
この前発見した、麦野の新たな性感帯を、ペニスで激しく擦り突く。
抽挿のたびに白濁した愛液が秘裂から飛び散り、麦野が長い髪を振り乱してよがる。
「駄目ッ! 感じすぎて、おかしくなるぅ!」
本能的な安楽を求めてか、麦野が上条に抱きつくように両手を伸ばす。
だが、上条は意地悪そうに笑うと、麦野の両腕を両手でマットに押さえつけると、さらにピストンのスピードを上げた。
バンッ、バンッ、バンッ、バンッ!!
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!! だめぇぇぇぇぇぇ!!」
四肢を完全に抑えられた麦野が、絶頂と共に悲鳴を上げる。
本イキしたとわかるほど膣道が収縮し、上条は思わず麦野の体奥で射精した。
「うっ… あー、出ちまったか… 沈利のマンコ、気持ちよすぎ、我慢できねぇ」
「馬鹿ぁ… ちょっとは手加減しなさいよぉ…」
イッた後の顔を見せたくないのか、両手で顔を隠して、しかし目線だけはチラッと出して麦野が言う。
その仕草から、普段の傍若無人な態度と真逆の可愛さを感じて、上条は再び下半身に力が集まるのを感じた。
「……さーる」
「沈利だって、1回じゃおわらねぇだろ?」
麦野に覆いかぶさるように身体を密着させ、愛の篭ったディープキスをする。
じゅぷ、じゅぷ… と互いの唾液をこれでもかと交換する作業に没頭すると、次第に麦野の身体から力が抜け、くたり、と脱力し始めてた。
「やっべぇ、幸せ感じちゃってる……」
ディープキスで出来た銀色の糸を断ち切り、沈利が呆然と呟く。
その台詞に、言いようの無い充実感を得て、上条は麦野の背中に手を回した。
「沈利、足を絡めて」
「うん、だっこして……」
麦野の長い足が、しっかりと腰を大好きホールドしたのを確認すると、上条は麦野と繋がったままゆっくりと身を起こし始めた。
「うあぁぁ… 奥まで刺さるぅ…」
自然と体重でペニスが最奥まで突き込まれる。
この前試して以来、麦野はこの駅弁スタイルに病みつきになっていた。
とにかく、密着感と挿入角度が良いらしい。
「あっ、あっ、あっ… あぅぅぅ……」
上条がリビングを、のっしのっし、と歩くと、麦野の身体が小刻みにバウンドする。
数毎に軽い絶頂を迎え、麦野の頭の中に小さな火花が次々と炸裂する。
(あー、こりゃヤバイ… 意識跳ぶかも……)
軽い絶頂は深い絶頂の前ぶれだ。
今は小刻みに突かれているが、一度でも深く激しく突き込まれたら、はしたないあえぎ声を上げてイッてしまうだろう。
上条が麦野のそんな些細な変化を敏感に感じ取り、抱えなおす動作で深く突きこもうとしたその瞬間……
ぴんぽ~ん……
部屋のチャイムが甲高い音を立てて鳴り響いた。
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「……え、誰?」
反射的に上条が答えてしまったが、それが不味かった。
無駄にハイテクな麦野のマンションは、チャイムの応答は音声認識になっている。
これは、部屋に生活する人間の音声を勝手にサンプリングし、その人の声色によって応答・拒否を判断してくれる優れモノだ。
が、しかし、優れすぎたその技術は、今の上条の声を応答と判断したらしく、リビングの60インチモニターに来訪者の顔がデカデカと映し出された。
「………げっ!」
モニターが映したのは、当然、エントランスでチャイムを鳴らした御坂美琴と、お供の白井黒子だった。
対面で繋がっているおかげか、まだ麦野にはモニターが見えていない。
「……だれぇ?」
首をめぐらそうとする麦野を慌ててキスで止めて、上条の頭が高速回転する。
映像は単方向(ワンウェイ)だが、音声は双方向(ツーウェイ)だ。
今の状態では、こちらの声もあちらの声も筒抜けになってしまう。
(あのビリビリが訪ねてきたなんて知れたら、超能力者(レベル5)の全面対決になっちまう……ッ!!)
そこまで考え至った上条は、画面の御坂美琴が口を開くより前に怒鳴った。
「あの…」
「15分!!!!!!」
突然の大声に、画面の中の御坂美琴が、ビクッ、と震える。
「15分たったら降りてくるからッ! 黙ってロビーで待ってろ!!」
麦野に聞かれないように、麦野の身体を思いっきり抱きしめて上条が叫ぶ。
画面の美琴が神妙に、コクコク、と頷いて、これで落着と上条は思った。
が、
「やっ、それ、だめぇ…」
急に怒鳴り、体位を弄ったのがまずかったのか、上条は麦野の体奥をペニスで突きこむ格好となってしまったのだ。
ゆえに、麦野はあえぎ叫ぶ。
「やだぁ!! 死ぬ、死んじゃうよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
御坂美琴がモニターの中で驚きの顔をすると共に画面が消失する。
(聞かれたッ!? いや、しかし、このまま沈利を放っては……!)
非常に幸運なことに、麦野はまだ来訪者の正体に気付いていない。
上条は断腸の思いで麦野とのセックスを切り上げることを決意すると、一旦ペニスを引き抜いて、麦野をダイニングテーブルに腹ばいにさせた。
「あん… もうバック?」
「後ろからされるのも、好きだろ?」
「うん、好き… いっぱい突いて……」
男を受け入れるために、麦野が精液と愛液でぐちゃぐちゃになった秘裂を自らの手で開く。
内心、冷や汗をかきながら、上条は勢い良くペニスを突きこんだ。
「あっはぁぁぁぁぁ!!」
(…まぁ、どうせ上には上がってこれねーし、早々にお帰りいただくか…)
麦野の嬌声をBGMにそう決意した上条は、トドメを刺すべくピストンのピッチを上げた。
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S-17 DAY 0
PM 4:15 麦野のマンション「Meltykiss」 エントランス
しかし、事態とは常に悪い方に転がるものである。
「く、黒子、今の声!」
「はい、間違いなく女性の悲鳴でしたわ!」
言うや否や、白井黒子が能力を発動してテレポートする。
残った美琴はポケット端末を取り出して、エントランスの入出力装置に接続、マンションの防犯システムに侵入する。
「あのバカ… 何やってんのよ……ッ!」
完全に勘違いした御坂美琴が、己の能力を駆使して状況を把握しようとする。
しかし、
「…何コレ!? 普通のマンションの防犯システムじゃ無い!!」
このマンションは、暗部組織『アイテム』の拠点の1つであるから、当然、電気能力者のハッキングに対するシステムも構築してある。
だから安易に、かつ早急にダイブした美琴が弾かれたのだが、そのことが却って美琴の疑念を強める結果となってしまった。
外からマンションの外観を確認してきた黒子が、美琴の隣に再びテレポートしてきた。
「お姉さま! このマンションの階層構造は一般的ですわ! 内部へのテレポートは可能です!」
「こっちは駄目だったわ。エントランスドアを開こうとして潜ったら、あっさり弾かれちゃった。なんとか通報システムにはばれなかったけど、再挑戦は無理ね…
普通のマンションじゃないわよ、ここ。」
「まさか… どこかの組織の隠れ蓑だと…!?」
少女2人のボルテージが段々と上がっていく。
「でも、中枢に近いエントランスは開かなくても、各部屋のドアを個別に開くことはできるかも…」
「それでしたら、わたくしがドアの前までエスコートいたしますわ! お姉さま捕まってくださいまし!」
美琴が黒子の肩を掴むと、黒子が素早く「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開する。
外から見たマンションの階層構造から11次元のベクトルを計算し、エントランスから目的の部屋までの空間をつなげる。
「跳びますッ!」
次の瞬間、美琴と黒子は何の変哲も無い、両開きのドアの前に出現した。
「ナイス黒子! ここなら…ッ!!」
最早、ポケット端末を使わずに、御坂美琴がドアの電子ロックを解錠する。
コクリと黒子に頷くと、いつの間にか『風紀委員(ジャッジメント)』の腕章をつけた黒子が、勢い良くドアを開けた。
「ジャッジメントですの!」
美琴と一緒に玄関を上がり、短い廊下を走りぬけてリビングへ通じるスライドドアを開く。
その瞬間、
「とうまぁぁぁぁぁぁぁ!! 好きぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「くっ… 出すぞッ! 沈利の子宮に全部出してやるッ!!!!」
恋人2人の激しいセックスが終了し、遠目でも分かるほどの激しいフィニッシュが行われる。
つの字が2つ重なったような格好の2人が、ゆっくりと視線をドアに向け。
……4人の8つの眼が点になった。
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S-18 DAY 0
PM 4:20 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング
「ッッッっざけんなぁぁぁぁぁぁl!!!!」
瞬間的に『ぷっつん』した麦野が理性のタガをあっさり放す。
繋がってのしかかっている上条を乱暴に背中から振り落とすと、無意識のリミッターを解放する。
(まずいッ!!)
ぞわっ、とした恐怖を覚えた上条が、全身の筋をフルに収縮させてフローリングの床を蹴る。
何人もの能力者と対峙してきた戦士としてのカンが、麦野の状態が危険だと囁く。
「死ねよやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
超能力者(レベル5)麦野の『原子崩し(メルトダウナー)』がフルパワーで放たれようとした瞬間、
必死の思いで接近した上条が、その左手で腕を掴んだ。
「…………あッ!?」
無意識に練り上げられた麦野の「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」が四散する。
期待していた結果を得られなかった麦野は、「チッ!」と舌打ちすると、忌々しげに上条を見た。
「……なんで止めんだよ!?」
「……暴走したら、やばいんだろ?」
視線だけで人を殺しそうな形相の麦野に、上条が出来るだけ平静を装って答える。
以前、絹旗や滝壺から聞いていたが、麦野の能力である『原子崩し(メルトダウナー)』は、ひどく不安定な能力らしい。
その破壊力は折り紙つきだが、最大出力で能力を行使すると、麦野本人すら消し飛ぶほどの出力を出してしまうのだ。
上条が『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で止めていなかったら、ドアで固まっている美琴と黒子はもちろん、上条や麦野すら一瞬で消滅していただろう。
「……クソが」
能力の暴走を自覚して少し冷静になったのか、麦野がややトーンの落ちた声で悪態を吐く。
「……離せよ、とりあえずはキレねぇから」
やや乱暴に上条の左手を振り払うと、ゆっくりとした歩みで美琴と黒子に近づいた。
「あ、あの… その……」
とんでもなくショッキングな光景に美琴が何も言えないでいると、目の前に来た麦野が全裸のまま腰に手を当てて仁王立ちした。
注がれたばかりの上条の精液が、股間から、ぼたぼた、と落ちるが気にも留めない。
「意趣返しのつもりかよ、コラ……ッ!」
頭半分低い美琴を見下ろす体勢で詰問する。
普通ならこういう物言いをされると、カチン、ときて言い返す美琴だが、流石にこの情況では何も言えない。
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460 = 1 :
「も、申し訳ありません!! じ、事件性を感じて、風紀委員であるわたくしの独断で……」
美琴に代わって、黒子が腰を90°に曲げて謝罪する。
「あぁッ!! 風紀委員は学内の事件担当だろうが!! 管轄外でナニ越権行為してんだよッ!!」
「そ、それは……」
麦野の言ったことは事実で、黒子たち風紀委員(ジャッジメント)は、本来、学校内の治安維持を行う組織だ。
学外の担当は、教師で構成させる警備員(アンチスキル)が担当となる。
「返す言葉もありませんの… 非礼の段、深く、深く謝罪いたします。本当に申し訳ありません!」
段々と黒子の口調が焦ったものになる。
というのも、チラリと横目に見た美琴の様子が明らかにおかしいからだ。
「うそよ… そんな…… ささって… 垂れて……」
「と、とにかく、このような状況では、きちんと謝罪も出来ませんの! 日を… 日を改めて謝罪を!」
「ざけんなよッ! テメェらの顔なんざ二度と見たくねぇよ!!」
麦野が吐き捨てるように言い、美琴を睨みつけると、震える彼女の視線が自分の股間に集中していることに気付いた。
「…あン?」
釣られて視線を落とすと、股間から太ももにかけて、上条の精液が白い道筋を作っているのを発見した。
ふん、と1回鼻を鳴らすと、麦野は右手の人差し指で太ももの精液を掬い、美琴に良く見えるように突きつけた。
「なーに、見てんだよ? ナカ出しのザーメンがそんなに珍しいのかよ、あぁ?」
そのまま精液まみれの指を自分の口に持っていき、びちゃびちゃ、と下品な音を立てて舐めしゃぶる。
黒子の顔が引き攣り、美琴の震えがいっそう加速した。
「…沈利、もう勘弁してやれよ」
いつの間にか服を着た上条が助け舟を出す。
腹を立てているのは彼も同じだが、これ以上美琴たちが責められるのを見るのは、流石に気分が悪い。
「あぁ!? アンタ、この小娘の肩持つ気!?」
「そうじゃねぇよ。俺だって頭きてるけどよ、そこのツインテールが言う通り、仕切り直さねぇと、話しできる状況じゃねぇだろ?」
上条の言葉に、黒子が、コクコクッ、必死にと頷く。
「………マジ、ふざけんなよ…… 良いカンジにイケてたっていうのに……」
不満たらたらにそう呟くが、ひとまずの怒りは収まったらしい麦野が、くるり、と踵を返す。
「…シャワー浴びてくる。後は勝手にしろ…」
すたすた、とリビングに散乱した自分の衣類を回収し、床に零れた精液を綺麗にハンカチで拭うと、麦野はバスルームへと消えて行った。
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461 = 1 :
「……はぁ」
麦野が視界から消えると、それまで何とか気を張っていたのか、美琴の膝が、カクン、と折れた。
「お、お姉さまッ!」
隣の黒子が慌てて美琴を支える。
普段なら、『ぐへへ、役得ですわ!』ぐらいは思う黒子だが、流石に今はそんな余裕はない。
「……15分、って言ったよな?」
完全に疲れた表情で上条が言う。
黒子は美琴に肩を貸したまま、バツが悪い顔で再度頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんの… 女性の悲鳴が聞こえたので、てっきり事件かと……」
「それで人の家に突撃かよ… つーか、何しに来たんだよ?」
「…この前の騒動のお詫びに……」
「お前ら、無駄に行動力と実行力ありすぎ……」
ハハハ、と乾いた笑いを浮かべ、どんよりとした視線を茫然自失の美琴に送る。
「…もう帰れ、と言いたいけど、ビリビリをソファに寝かせるぞ。休んでけよ」
「それは…… これ以上、あの方の勘気を被るのは…」
「沈利は俺が宥めるよ。それに、いくら沈利でも、本気で弱ってる人間を嬲る趣味は… あるっぽいけど、させねぇから、俺が」
あまり頼りにならない台詞ではあるが、確かに今の美琴では歩行も怪しい。
自分がテレポートで運ぶのも良いが、今は空間移動のストレスも美琴にはかけたくなかった。
「お言葉に甘えさせていただきますわ… さ、お姉さま…」
黒子が苦労して脱力した美琴をソファに寝かせる。
手伝おうと手を伸ばしかけた上条だが、却って悪い結果になると思い、手を引っ込めた。
(夏休み前だったら、何も考えず手を出してただろうなー)
こういう行為がトラブルの原因なのだと、ようやく上条は自覚するようになっていた。
「つーか、お前らここの住所、どうやって知ったんだよ?」
「そ、それは……」
黒子が明らかに目線を泳がせる。
相棒である初春飾利が、意外に腹黒いハッカーであることを知っているだけに、余りまっとうな手段でないとは想像している。
それだけに、本当は隠しておくつもりだったが、こういう状況になってしまってはシラを切るのは難しかった。
「…わ、わたくしが風紀委員のデータベースから調べまして……」
「嘘つけ。学内担当の風紀委員に学外のデータベースがあるかよ」
上条の鋭い突っ込みに、黒子が返答に窮する。
「……友人のハッカーに調べてもらいましたの。方法はわかりませんし、名前は、その……」
「ハァ… その友人にどうやって調べたのか詳しく聞いて俺に教えてくれ。それが名前を教えない条件な」
まだあまり実感はないが、上条とて暗部組織『アイテム』の一員なのだ。
『アイテム』のセーフハウスである麦野のマンションが、いとも簡単に所在を割ったことについては追求せざるを得ないのだ。
最も、初春の現在の境遇から、そんな心配は杞憂なのだが。
「わかりましたの、必ず連絡いたします。 えぇと…」
「いちおー、俺のメルアド。絶対に他の人間に教えるなよ」
適当なメモにメールアドレスを走り書きして黒子に渡す。
神妙な顔でそれを受け取ると、黒子は視線を美琴にむけた。
462 = 1 :
「…こんな事をしでかして図々しいとは思いますが… お姉さまを責めないでくださいまし。罰はしっかりと受けますから……」
「まぁ、コイツがこういう行動するのも、元を正せば上条さんの自業自得な所もあるからなー…」
頭をポリポリと掻いて、上条は声色を慎重に整えて美琴に声を掛けた。
「あー、御坂美琴だよな? お前、もう俺を追うの止めろ。お前が辛いだけだよ。見てらんねぇよ」
その言葉が引き金になり、とうとう美琴が、ぐすぐす、と嗚咽を漏らし始める。
可哀想だとは思うが、ここははっきり言っておく必要があると上条は感じた。
「……あのな、今の俺は麦野の彼氏なんだ。御坂のことは好きでも嫌いでもないけど、麦野のことは好きなんだよ……」
言い終えて、上条が「ふぅ…」と大きな溜め息を吐いた。
例え傷つける結果になっても、吹寄にもこう言うべきだった。
上条は自分の優柔不断さに嫌気が差した。
「傷つけるようなこと言ってわりぃ… けど、これが本心だから……」
何かがぽっきりと折れるのを黒子は感じた。
そして、それは美琴も同様だったのだろう。
泣き腫らした目を小さく開けて上条を見ると、小さな小さな声で「わかった…」とだけ呟いた。
463 = 1 :
S-19 DAY 0
PM 4:30 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング
「どーゆーことだ、あン?……」
髪は洗わずに身体だけ流したのか、タオルターバンをした麦野がバスローブ姿でリビングに現れた。
再び怒気を発しそうな麦野に、黒子がリビングの床に正座をして深々と土下座をする。
幾分回復したらしい美琴も、ソファの上でしっかりと頭を下げた。
「ご気分を害して本当に申し訳ありませんでした。このお詫びは必ずいたしますわ」
「いらん、帰れ。風紀委員にも報告すんなよ、面倒だ」
「しかし…」
「アタシは帰れって言ったの…ッ!」
なおも言い募ろうとする黒子を一喝すると、黒子は諦めたように美琴を見た。
「お姉さま、今日のところは…」
「うん…… ごめんなさい、ごめんなさい……」
ふらつく足どりでソファから立ち上がり、美琴は何度も麦野と上条に頭を下げた。
優しい言葉を掛けたいところをぐっと抑えて、上条は短く「ああ…」とだけ答えた。
そうして、美琴と黒子が支え合うようにして玄関から出ようとした瞬間、
「……待ったッ!」
意外なことに麦野が2人の足を止めた。
「あの… 何か…?」
黒子が怪訝そうな表情で言うと、麦野はチラリと美琴を見て言った。
「コイツは『常盤台の超電磁砲』。レベル5の第3位、御坂美琴で間違いないのよね?」
「えっと、はい、そうですが…?」
訳もわからず黒子が同意する。
美琴も麦野がなぜそんな確認をするのか分からず、薄ぼんやりとした表情で頷いた。
「つーことは、ひょっとしたらAIMも似通っている可能性があるか……」
顎に手を当ててブツブツと呟くと、麦野は視線を上条に向けた。
「当麻、こいつら連れていつものファミレスに行って来て。それで、1時間ぐらいだべってて」
言いつつ、上条にだけ分かるように、素早く2回ウインクする。
意図を察した上条は、多少戸惑いながらも「ああ、わかったよ」と返した。
「あ、あのー、一体…」
「アタシに負い目感じてるんなら言う通りにしな。そうしたら、今日の件は水に流してやる」
凄まじく意外な麦野の言葉に、美琴と黒子が目をパチクリさせる。
「ふぁ…ファミレスで1時間だべれば良いんですの?」
「ああ。それと、ここに来てからファミレス出るまでのことは、一切合財他言無用、良いな?」
2人にとっては、奇妙な条件だが、それで家宅侵入を許してもらえるなら願ったり叶ったりだ。
美琴と黒子は互いに顔を見合わせると、おずおず、と視線を麦野から外さないで頭を下げた。
464 = 1 :
S-20 DAY 0
PM 5:00 「とある」ファミリーレストラン
「まったく… あの性悪淫乱女はどういうつもりなんですの…!?」
折角なので、と頼んだパフェを食べ終えると、口火を切るように白井黒子が憎々しげに呟いた。
麦野のマンションから出てからずっと、彼女は不機嫌な表情のままだ。
御坂美琴はと言うと、喪失状態からは回復したらしく、正面に座る上条の顔をチラチラと見ながらパフェを食べている。
「お前… ちっとは歯に布着せろよ。また拗らせたいのか?」
「元々はアナタが原因でしょう!?」
黒子がテーブルを、ドンッ、と叩いて怒りを露わにする。
マンションでは状況的に平謝りだった彼女だが、それだけに鬱積した思いが溜まっていたらしい。
「アナタがお姉さまを誘惑するから……」
「してねーッ! …っつうのは、俺の主観なんだろうな……」
上条が軽く息を吐いてドリンクバーのコーヒーを啜る。
吹寄の一件で上条も多少は成長していた。
自分のいらん行動が、自分が思っているよりも他人に対して影響を与えていると、身を持って実感したからだ。
「……あのさ」
それまで、ずーっと黙ったままだった美琴が、おずおず、と口を開いた。
「…迷惑、だった?」
「どれを指してんのかわかんねーけど、追いかけっこやガチンコ勝負は、そりゃ迷惑だった」
「そ、それは分かってるわよ! 自覚してるわよッ! そうじゃなくて……」
視線を泳がせて顔を真っ赤に染める。
「…ゎたしが、アンタのこと、す、好きだったこと……」
ガンッ!!
ファミレスに鈍い音が鳴り響く。
白井黒子が突然、額をテーブルに打ち付けたからだ。
どうも、『聞きたく無いワード』を耳にした瞬間、脳が拒絶のあまり意識を強制的にカットしたらしい。
「お、おい… ツレ、大丈夫かよ…?」
「黒子にはさ… 胸のもやもやとか言ったんだけど…」
「無視かよ、ひでぇな…」
黒子の奇矯な行動に悪い意味で慣れている美琴が、全く気にするそぶりも見せず話し続ける。
「あ、アンタがあの女と、その… せ、セックスしているの見て、う、羨ましいなって思っちゃったの…
キ、キスの時だってそう… 羨ましいなって… アンタとキスできて良いなって…」
ショッキングな出来事が続いて何かのスイッチが入ってしまったのか、真っ赤な顔のまま美琴が喋りまくる。
「ねぇ、これってやっぱり、アンタのことが好きだったってことだよね? ねぇ?」
「俺に聞くな… てゆーか……」
やれやれ、と上条が嘆息する。
この少女は、失恋によって恋を学んだのだ。
(すっげぇバイタリティ… 立ち直りが早いっつーか、なんつーか……)
「……俺のことはもう良いんだな?」
「うん…… アンタの言葉、痛かったけど、なんだか胸が軽くなったから……」
なんとも奇妙な、しかし、どことなく居心地の良い空気がテーブルに満ちた。
「そっか… わりぃ」
「謝んなくていいわよ、悪いことばっかりしてたの、アタシだし…」
御坂美琴が、ようやく笑った。
465 = 1 :
同時刻、同店内、上条たちのテーブルからほぼ死角となるテーブル。
「おおっとー、麦野の犬と第三位が超微妙に良い雰囲気ですねぇ… これは後で麦野に超報告しないと…」
「だめだよ、絹旗。麦野がかわいそう」
4人がけのテーブルを占拠しているのは、『アイテム』構成員の絹旗最愛と滝壺理后だ。
2人は麦野からの指示で、上条たちに見つからないように潜んでいるのだ。
「で、ソッチのほうは超いけそうですか?」
「うん、これだけ近ければ体晶の使用も少なくてすみそうだよ」
滝壺が小さなガラスケースから取り出した白い粉末を手の甲に乗せ、ちびちびとソレを舐める。
見るからにアレな風景に、何も知らない他人が見たら勘違いしそうである。
「………捉えた。ターゲットのAIM拡散力場は記憶した。これで、もーまんたい」
「アレは傑作でしたねぇ… それじゃ、仕込みはこれで超終了ですね。あとは明日勝負です…!」
滝壺の大能力『能力追跡(AIMストーカー)』は、たとえ地球の裏側に居ようとも、検索対象を探し出す強力なものだが、
一度、検索対象のAIM拡散力場を記憶しなければならない。
そして、御坂美琴のAIM拡散力場を記憶したのは、今回の任務に依るものだ。
『クローンっつーことは、いくらかはAIM拡散力場も似る可能性がある。保険の意味も含めて記憶しておけ』
というのが麦野の指示だ。
「フライングして、今から超検索したら大きなアドバンテージなんですが……」
「これでも十分フライングだって、麦野が言ってた。焦らずいこう…」
滝壺が若干気だるそうに言う。
体晶の使用は身体に悪影響を与え、さらに性質の悪いことに蓄積する。
滝壺は文字通り『命を削って』能力を行使しているのだ。
「……使用回数が超少ない方が良いですから」
「そだね、ありがとう、絹旗」
友人の気遣いに、微笑みを浮かべて滝壺が頷いた。
.
466 = 1 :
S-21 DAY 0
PM 6:00 第11学区 貸し倉庫街
物資の搬送が盛んで、そのために大きな貸し倉庫が整然と立ち並ぶ第11学区。
複雑な倉庫群の迷路を、みょうちきりんなルートで延々と歩き、壮年と少女の2人組が1件の貸し倉庫へやってきた。
「ここか… 尾行を警戒してのこととはいえ、流石に疲れたな……」
疲労感で満たされた声で言うのは天井亜雄だ。
彼とは対照的に、ミサカ00000号は涼しい顔で貸し倉庫の認証キーを入力した。
「141060561310000と… 何か意味があるのでしょうか? と、ミサカ00000号は当然の疑問をマスターに申し上げます」
「さぁな… それよりも、これからお前はあまり喋るなよ。ボロが出ると面倒だ」
「マスター、マスター。かしこまりました。今よりミサカ00000号はお口チャックです。と、ミサカ00000号はマスターの命令を遵守いたします」
両手の人差し指で口の前にバッテンを作って、ミサカ00000号が口を閉じる。
「よし… それでは入るぞ…」
物資搬入口よりもずっと小さい通用門のドアを開けて2人は中に入った。
貸し倉庫の中は様々な物資が積まれ、さらに光量が絞られており、目が慣れるのに少しの時間が必要だった。
ようやく目が慣れてきた天井が、誰か居ないかと口を開きかけると、突然、眩いライトが天井の顔に向けられた。
「うわっ!!」
「………………ッ!!」
悲鳴を上げてのけぞる天井をガードするように、ミサカ00000が無言で前に出る。
「あ、ごめんねー、驚かせちゃった?」
物資の隙間から、若い女の声がした。
続いてもう一つ。
「お姉さま、悪戯はお客人に対して失礼ですわよ。ましてや、こちらはご依頼人なのですから…」
「はいはい、みっちゃんは真面目ねぇ…」
ゆらり、と物資の陰から2人の少女が現れた。
1人は、冬服のミニスカートに、サラシにブレザーを肩に掛けただけという扇情的な衣装の少女、
もう1人は、艶やかな緑髪が美しい、デザイン着物を着た日本人形の様な少女だ。
「一応、符丁を確認しましょうか。『沈黙の巨人』」
「『とろみのついた日本酒』…」
天井が緊張を隠し切れない声で言うと、少女2人は満足したように頷いた。
「はい、オッケー。自己紹介をするわね。私たちは『グループ』。こっちは相棒の婚后光子」
「はじめまして、婚后光子と申します。そして、こちらのお姉さまが、学園都市第6位の超能力者(レベル5)……」
婚后がもったいぶった仕草で、手に持った扇子で隣の少女を指した。
「『座標移動(ムーブポイント)』の結標淡希ですわ」
結標は、にっ、と歯を見せて笑うと、手に持った軍用の懐中電灯をくるりと回した。
.
467 = 1 :
ハイ終了。
というわけで、あわきんとみっちゃん登場でようやくキャラが揃いました。
ちなみに、あわきんは最初からパーフェクトあわきんなので、どんだけ自分をテレポートさせようが吐き気1つ感じません。
あと、今回で美琴の上条フラグは作者的に完全に折ったつもりです。
原作の美琴は、行動原理が上条or妹達しかないので、それからの脱却狙い。
コレで自由に動いてくれるんじゃないでしょうか。
さて、次回からようやく第3話の本編突入です。
予定してるエロは、あわきん×みっちゃん、天井クン×00000号、塔下君×初春、そして、上条さん×むぎのん
では、キリのいいところまで書けたら投下します。では。
468 = 442 :
乙。毎回毎回、これぞ!って感じが最高にいいな!
次回も超楽しみにしてる
469 :
つーか塔下って誰だよ
470 :
このSS鬼畜モノなの?
471 = 469 :
鬼畜以外のなんなんだ
472 :
なんか婚后がグループだっていう改変で萎えた
いや、面白くないってわけじゃないんだけどね…
473 :
自分の気に入る設定の二次が見たかったら書けばいいのよ
改変がクソだとか言うのは完結してから言おうぜ
474 :
乙!
もうちょい投下早くしてくれ
間がでかい
他のどのss よりも期待してる
476 :
怒ったむぎのん
もカワエェ
477 :
478 = 477 :
速く読みたいぜよ
479 :
投下されたかと期待しながらこのスレを開いてF5を連打する毎日
480 :
なんか2時間暇だったから小話書いた。
投下。
481 = 1 :
Status フレンダ・セイヴェルン、駒場利徳
「…うん、何とかなったね。外科手術に至らなくて良かったね」
消毒液の匂いが染み付いたとある病室。
脊椎損傷などの患者に使われる、大掛かりな牽引装置のあるその部屋で、
長時間の結合から解き放たれた大小アンバランスなカップルが、同時に溜め息を吐いた。
「……とりあえず、トイレ行って来るわ……」
非常に大変疲れた顔と声で、駒場がぼそりと言い、病室の外へ消える。
フレンダの無理な挿入から早数時間。
我慢に我慢を重ねた彼の膀胱は破裂寸前だ。
「うん… 行ってらっしゃい……」
対するフレンダも疲労困憊だ。
自分の腕ほどの肉棒を長時間胎内に埋め込んでいたせいで、太腿の筋肉が疲労の極みに達している。
さらに言えば、おまんこ穴はがばがばである。
「愛に暴走するのも結構だけどね、やっぱり、限度があるよね?
今回は間歇的牽引で何とかなったけど、以後は十分に気をつけてね?」
どことなくカエルを思わせる風貌の医者が、やや呆れた口調で言う。
その言葉に、フレンダは「ハハハ…」と笑って返した。
「でも… 結局、ヤルためには入れるしかない訳で……」
「全部挿入しようとするから無理がでるんだよ。亀頭だけでも挿入は十分だよね?」
「む、むぅ……」
冗談のつもりが真面目に返されて、フレンダが戸惑う。
「とにかくお疲れ様だね。今日診察できたのはラッキーだったね、明日は予約の患者が来るから、1日遅かったら、確実に切開だったよ?」
「げぇ… それはラッキーだったわ……」
「……何が?」
トイレをすませた駒場が入ってくる。
フレンダと目が合うと、どちらとも無く気恥ずかしそうに視線を外した。
「はいはい、治った患者は出てった出てった。いちゃいちゃは自室でやってね?」
「いや、先生、別に俺ら……」
「了解っすー。行こ、利徳」
ベッド上でフレンダが両手を広げる。
俗に言う、『だっこしてポーズ』だ。
「…何のまねだ?」
「アタシ、足に力が入らないし、股間がすんごい痛くて歩けない」
色んなモノを含んだ盛大な溜め息を吐き出して、駒場はしぶしぶフレンダに両手を伸ばした。
.
482 = 1 :
Status 御坂美琴、白井黒子
PM10:00、常盤台学生寮。
「今日は散々な一日だったわね……」
「ですわね……」
順番にシャワーを浴びて、共にベッドに倒れ伏した2人がしみじみと呟く。
ファミレスで上条と別れた後、2人で話し合った結果、今日の出来事は2人の胸に仕舞おうという結論に達した。
固法には「失敗しました。フラれました」とだけ連絡してあるし、住所を書いたメモは焼却した。
「…初春さんには連絡とったの?」
「はいですの。件の住所は、デジタルデータに残していないとのことですの。 …どうやって入手したのかは、言えたものではありませんわ……」
風紀委員として、同僚の違法ギリギリのハッキングは頭痛の種だ。
上条にはメールで事の次第を送ってある。
「あっそ……」
2人の間に微妙な空気が流れる。
「………黒子」
「………お姉さま」
同時に声を掛けて、お互いが虚を付かれる。
しばらくして、黒子の無言の「どうぞどうぞ」ジェスチャーにより、美琴が躊躇いがちに話し出す。
「見ちゃったわね……」
「見てしまいましたわね……」
2人が言う「見た」とは、上条と麦野のセックスシーンだ。
歳相応の性知識しかない美琴と、耳年増でしかない黒子にとって、あの光景はそんな簡単に忘れられるものではない。
「く、黒子はさぁ…… その…… アレが見たの初めて…?」
「も、勿論ですわ!! そういうお姉さまは…?」
「アタシだって初めてよ!! あの、その… ズブって感じがすっごいリアルっつーか…」
顔全体を真っ赤に染めて美琴が赤裸々に語る。
いつもなら「お姉さま、はしたないですわ!」と内心はともかく注意をする黒子だが、今日は違った。
「抜くときも凄かったですの… ズボッ、ヌポッ、という感じで、ズルズルっと……」
「黒子… 言い方がやらしいわよ……」
「お、お姉さまだって…!」
よくよく見てみると、黒子も顔が真っ赤だ。
微妙な沈黙が2人を包む……
「き、気持ち良かったのかな……」
口火か切られた。
483 = 1 :
「い、イク、とか仰ってましたわね、あの方…」
「ていうか、男の人の精液見ちゃったんだ…… ホントに白いのね……」
「それを舐めるとか、想像を絶しますわ……!」
「そうそう! 舐めるもんなの、あれ!? マズイんじゃないの!?」
「く、黒子に言われましても… も、物の本によると、女性の愛液と味自体はあまり変わらないと載っていましたが……」
ハッ、と白井黒子の脳裏に戦慄が走る。
「お、お姉さま…?」
「く、黒子は舐めたことある…? っていうか… その、ぉなにぃの経験はある…?」
「ぐほっ!」
オネエサマ
憧れの御坂美琴から出た突然の猥語に、黒子が鼻血を垂らして悶絶する。
「………ノーコメントですわ」
「あ、あるんだ……」
「ノーコメントですわ!!」
完全に否定しない事が、明らかな肯定ではあるが、流石に女性として明言はできない。
「…それってやっぱり、アタシを想像したりして……」
「お姉さま! お姉さま!! 先ほどから発言が過激すぎますわ!!」
「だ、だって! 興味出ちゃったんだから仕方が無いじゃない!!」
再び、微妙な沈黙が2人を包む。
「……………舐めたことはありませんわ…」
石臼で小麦粉を擂り出すような抑揚の無い声で黒子が言う。
「自分のを舐めるのは、流石に抵抗がありますの……」
ゴクリ、と、どちらか、もしくは双方の喉が鳴る。
「きょ、興味、ある…?」
「きょ、興味、ございます…?」
三度、微妙すぎる沈黙が2人を包む。
「…そっち、行くね」
ギィ… とベッドが軋む音がして美琴が床に立つ。
黒子は心臓が喉から飛び出るかと思うくらい胸を高鳴らせて、その瞬間を待った。
ぽすん、と横寝している黒子の正面に美琴が横たわる。
紅潮した頬と、ひどく色っぽく潤んだ瞳が、黒子の目の前に現れた。
「ああ… お姉さま……」
「一応、傷心の身なんだからね… 慰めてよ、黒子……」
それを免状と理解した黒子は、暴れまわる欲望を必死に抑えて、互いに震える口唇をゆっくりと近付けていった。
「………………ちゅ」
美少女2人の口唇が重なる。
男子禁制の女子寮に、新たな百合の花が加わった……
.
484 = 1 :
終わり。
気が向いたら本番シーン書きます。では。
485 :
予想外だ……乙
486 :
このたいみんぐであらわれるとは
487 :
なぜ更新を本番と分けた
乙
488 :
おめでとう、黒子
489 :
黒子大勝利
491 :
更新速くしてくれ
492 :
早さと速さの違いも分からないのか
493 :
しゅばばばば!
494 :
中傷はやめようぜ
495 :
誰か突っ込むだろうと思ってたが
子萌って誰だよ
497 :
ようやく纏まった時間がとれたので一気書き。
00:00より投下します。
>>495
おお、ご指摘ありがとうございます。
正しくは子萌× 小萌○ ですな。
このスレでは小萌先生はふたなり巨根設定だけど、残念ながら相手が居ない…
姫神でもスライド登板させるかのぉ…
498 :
そんじゃ投下します。
今回は30kb弱。
499 = 1 :
「…よし、始めるか」
『暗部』から連絡があった狩猟解禁時間、午前0時。
麦野沈利の短い一言で、『アイテム』が動き始めた。
麦野のマンションに集まっているのは、麦野、上条、絹旗、滝壺、そして浜面の5人だ。
「まずは平行して情報を集めるわよ。
絹旗はネットの深いところからターゲットの目撃情報を検索。
滝壺は『能力追跡(AIMストーカー)』でターゲットを検索。 …始めろ」
麦野の言葉に、絹旗と滝壺が無言で頷き、それぞれの操作に入る。
本来、PC関連の情報収集はフレンダが得意なのだが、現在リタイヤ中なので絹旗が担当となる。
「ええと、まずはネットの噂話サイトや尋ね人サイト、『書庫(バンク)』経由の超監視カメラ履歴からですね…
流石に隠れて移動しているでしょうけど……」
「………………」
絹旗は、1つ1つ動作を確認するように、ぶつぶつと呟きながらPCを操作し、
反対に滝壺は体晶をひと舐めしてからは彫像のように動かない。
しばらく、全員が無言の時を過ごす。
しかし、ほどなく絹旗と滝壺が、同時に「あれ…?」と戸惑った声をあげた。
「どうした?」
「いえ… 超ダメモトで、尋ね人サイトの掲示板に画像無しで依頼レスをだしたんですが… ほら、見てください」
絹旗が指し示すPC画面には、数十件の新着レスの表示があった。
「依頼して数分で超えらくレスがついてます… 内容は…… えっ、画像あり?」
簡単にウィルススキャンして添付された画像を開く。
すると、ひと目で写真の男女と分かる、壮年男性と少女が歩いている画像が表示された。
「…ご丁寧に、地図情報までありますね。ええと、第3学区ですね」
「他のレスは?」
麦野の指示に、絹旗が次々にレスを開いていく。
「……超予想通りですが、どれもこれも超画像付きの位置情報ですね。
これは12学区、これは14学区… うへぇ、全学区分ありますよ、コレ」
うんざりした表情で絹旗が言う。
「あからさま過ぎて、逆に超怪しいですね。撹乱にしちゃ、やり方が超稚拙です」
「情報の発信源は?」
「いちおー逆探してますが、超100%デコイですよ、これ? 無視するのが一番です」
絹旗がPC画面のウィンドウをいっぺんに消す。
麦野も絹旗の意見に賛成のようで、「でしょうね…」と呟いた。
500 = 1 :
「しかし、発電能力者(エレクトロマスター)らしいと言えば、らしい撹乱の仕方ね。
どこの端末から情報をばら撒いているのか分かればいいけど……」
「餅は餅屋。いわばネットは相手の土俵ですから、超ダメモトで考えるべきですね」
そう言って、絹旗と麦野が滝壺を見る。
体晶の使用でやや苦しそうな滝壺は、妙な踊りを踊っていた。
「あれ… うん…… 北北東? あれ、西南西…? 真東…」
「どうした、滝壺?」
麦野が声を掛けると、滝壺が困惑した表情をした。
「麦野… クローンって沢山いるのかなぁ…?」
「……複数感知したのか?」
むむむ、と滝壺が困った顔になる。
「う~ん、やっぱり本人のAIM拡散力場を記憶したわけじゃないから、ある程度のズレや揺らぎは出るんだけど…
似たような反応がすっごい沢山。しかも、移動してるよ…?」
滝壺の言葉に、麦野が「そうか…」と納得したように呟いた。
「体細胞クローンだったら、複数体複製することも可能ってわけか…? そして、粗悪乱造した個体は使い捨てに……?」
「クローンの人権とか、超無視した虫唾が走るやり方ですね。
…どうします? 反応のひとつを辿れば、第3位のクローンを確保できるかもしれませんよ?」
滝壺が感知した反応がミサカ・クローンならば、『彼女』から何か情報を引き出すことが出来るかもしれない。
「……それは一旦保留、どうにも罠臭いわ。今は情報の精度を高めましょう。
絹旗。滝壺が感知した座標と目撃情報との摺り合わせをしてちょうだい。」
「超了解です」
絹旗と滝壺が再び作業に戻る。
それを眺めながら、麦野は『複数のクローン』という可能性を思考の海に投げ込んでいった。
みんなの評価 : ☆
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