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    元スレ上条「そこのおねーさん! お茶しない?」 麦野「あん?」

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    601 = 1 :

    「…行くぜ!」

    短い宣言と共に、麦野の腰が下から突き上げられる。
    いつもの挿入とは違い、より腹壁側の膣壁を小刻みに突き上げられ、麦野の快感レベルが一気に高まる。

    「それ…ッ、そこッ、凄い……ッ!」
    「ああ… なんか、スッゲーとこ当たってる感じするぜ……」

    上条の声に、やや緊迫感めいたものが含まれる。
    毎度のことだが、駅弁スタイルは麦野を落とさないようにするのに気を使う。

    上条が、よりしっかり麦野を把持しようと両手を臀部に回す。
    すると、

    にゅる……

    「あ、バカ……ッ!」

    しっかり持とうと力を込めた上条の右手中指が、意図せず麦野のアナルに、第一関節まで潜り込んでしまった。
    入れた上条も、入れられた麦野も面食らって、思わず顔を見合わせてします。

    「わりぃ……」
    「き、汚いから… 早く抜いてよ……」

    流石の麦野も、準備無しでアナルを弄られるのは恥ずかしいのか、目線をそらして頬を染める。

    しかし、そんな仕草が、上条にとっては新鮮でひどく可愛いものに思えた。

    「……痛くない?」
    「い、痛くは無いけど…ッ!」

    麦野の様子を確かめながら、慎重に中指をアナルに埋め込んでいく。
    中ほどまで挿入すると、膣に埋め込んだペニスを、薄い腸壁・膣壁越しに感じることができた。

    「うわ… 意外と近いんだ……」
    「そりゃ、隣同士の穴なんだし… あ、ちょっと、そこで本気でストップ!」

    中指が根元まで埋め込まれた段階で、麦野が真剣な声で言った。

    「それ以上入れられたら、本当に指を汚しちゃうから……」

    恐らく、絹旗やフレンダが今の麦野を見たら、悶絶を繰り返して憤死するかもしれない。
    それぐらい、今の麦野はしおらしく、か弱く見えた。

    「ああ、それじゃ、ここまでな…!」
    「ちょ、抜いてよぉ! あぁんッ!!」

    指をアナルに挿入したまま、上条が腰の動きを開始する。
    挿入した指に、ピストン運動するペニスが、ごりごり、と擦れる。

    当然、その間の膣壁・腸壁も擦られて、麦野はなんとも言えない、ぞくぞく、とした快感を味わった。

    「もぅ… こんな、小技ばっかり、覚えてぇ…!」

    予想外のアナル責めに、急速に昂ぶりながら、麦野は新たな絶頂の予感に腰を奮わせた。

    602 = 1 :

    「23区か。予想通りと言えば予想通りだな」

    『スクール』専用のルートから得られた情報は、麦野沈利が受けたものと全く同じ内容だった。

    「しかも1時間後か… 面倒くせぇ……」

    1人ごちると、垣根帝督は上着を羽織って席を立った。

    「待機じゃないの?」
    「ブラついて時間を潰す」
    「私は?」

    腕を組んで眉尻を上げる『心理定規』を、垣根はチラリと一瞥した。

    「もう、この件からは手を引いて良いぜ。あとは『残った暗部』を叩き潰すだけだからな。俺様だけで十分だ」
    「あ、そ。それじゃ、こっちは勝手にやらせてもらうわね」

    『心理定規』は軽く肩をすくめると、イブニングドレスの上から薄手のコートを羽織った。

    「あ、あの……」

    1人、会話の輪から外れていた初春が、おずおずと垣根に声を掛けた。

    「その… あの……」
    「あぁ、なんだ?」

    歯切れの悪い初春の言葉に、垣根が面倒そうに応答する。

    「…………お尻、外してください。その……」
    「………あぁ、トイレか」

    得心した垣根が、知恵の輪状になった鍵束を一瞥すると、複雑に絡み合っていた鍵束の内、一本が弾かれるように元の形に戻った。

    「あ、ありがとうございます……」

    礼を言うのもおかしな話だが、責め具を着けた張本人である塔下が死んだ以上、垣根が鍵を解除しないことには、初春の性感帯はロックされたままなのだ。

    「の、残りは……」
    「残りの鍵は1時間かけてゆっくりと解けるように設定しておいた。無理やり開けようとするなよ、鍵が壊れる」

    そう言われて、初春は捻れた鍵束を見つめた。
    よくよく見てみると、たしかにゆっくりと捻れが直っていっている。

    「……1時間はここに居ろと」
    「まぁな。それが解けたら、もうお前は用済みだから帰って良いぜ。お前の能力はチト惜しいが、使い処が面倒だからな」

    あっさりと言う。
    それはつまり、初春を『スクール』から解放するということだった。

    「……………………………」

    何か言いたくて、しかし、何も言えずに初春は黙り込んだ。
    『風紀委員(ジャッジメント)』として、垣根帝督を見逃すことは出来ない。
    しかし、この男に対して、決してこれ以上触ってはならない、と、心のどこかが警告を発しているのだ。

    「まぁ、1時間何もしないのは暇だろうからな」

    沈黙を守る初春に対して、垣根は1枚の光ディスクを差し出した。

    「これは…?」
    「前に質問したな、『何のために』と。ヒントぐらいは出してやる。後はおまえ自身で判断しろ」

    それだけ言うと、垣根は初春に質問を許さず、さっさと部屋から出て行ってしまった。

    「……私からは何の忠告も出来ないわね。観るか観ないかは初春さんの自由よ」

    準備を終えた『心理定規』が、一枚のメモを初春に渡した。

    「これ、私の連絡先。個人的には初春さんとお友達になりたいから、気が向いたら連絡をちょうだい」
    「は、はぁ……」

    どんな表情をして良いか分からず、初春は光ディスクとメモとを交互に眺めて溜め息を吐いた。

    603 = 1 :

    「1時間、か……」

    1時間のインターバルを与えられたのは、何も追跡者だけではなかった。
    逃亡者である天井亜雄にも、1時間の休憩(インターバル)が与えられていた。

    「逃亡の英気を養えって? なんだかムカつくわねー」

    場所は23区の多目的トイレ(リラックススペース)
    そこで結標淡希が顔をしかめ、すぐそばに立つ婚后光子もコクコク頷いて同意する。

    「逃げる獲物に適度な休息…… 癪に触るやり方ですわね」
    「だが、有り難いのは事実だ……」

    そう言うと、天井はミサカ00000号を呼び寄せ、寝台に寝るように指示をした。
    深夜からの絶え間ない逃亡劇に疲労しているのか、彼女は肩で息をしていた。

    「マスター…?」
    「少し身体の調子を見よう。命令だ」
    「はい、マスター…… はぁ…」

    疲れからか、その独特な言い回しも行わず、ミサカ00000号は寝台に身を置いた。

    「クローン、か……」

    結標がポツリと呟く。
    この夜の逃亡劇で、結標は彼女がどういう存在・状態なのか、おぼろげに理解していた。

    「こんなこと言うと失礼になるかもしれないけど、儚い存在に見えるわ、私には」
    「お姉さま、詩人ですわね… そこはかとなくインテリジェンスの香りが……」
    「茶化さないの」

    意外に真面目に考えているのか、結標がぴしゃりと言う。

    「……印象としては間違っていない。体細胞クローンである彼女は、我々と違い寿命は明らかに短い」

    ミサカ00000号のバイタルを測定し、携帯医療キットから長い針の注射器を取り出して天井が言った。

    「能力も、オリジナルの御坂美琴と比べて、ほんの1割ほどしか再現することが出来なかった…… 儚い存在と言えば、そうだろうな……」

    テキパキとなれた手つきでミサカ00000号の胸元をはだけ、左胸を露出させる。
    乳首に着けられた意匠化ピアスも露わになり、結標と婚后が思わずギョっとした表情になる。

    「なに、それ……?」
    「……バカな男の、バカな行動の結果だよ」

    慎重に注射器を操作し、心臓注射を行う。
    すると、乱れていたミサカ00000号の呼吸が、ゆっくりと安静なものに変わっていった。

    「これで、今晩はもう大丈夫だろう……」

    ミサカ00000号の衣服を整え、天井は機器を片付けると、1つ、大きく息を吐いた。

    「時間はまだあるな… 暇なら聞くかい? バカな男の身の上話を……?」

    疲れに疲れきった表情で微笑する天井に、結標と婚后はゆっくりと首を縦に頷いた。

    604 = 1 :

    天井亜雄は元々『肉体操作(ボディポテンシャル)』系の科学者だ。
    しかし、『肉体操作』系は能力としては地味で、また、科学への応用も利きにくい能力であり、天井は常に資金繰りに苦労をしていた。

    「そんなとき、量産型能力者開発計画、通称『レディオノイズ』計画が立案された」

    登録してあった超能力者(レベル5)御坂美琴のDNAマップを用い、体細胞クローンによる人工的な超能力者を造りだすプロジェクトであった。
    肉体形成の分野において第一人者であった天井は、プロジェクトの責任者として白羽の矢が立ち、資金難に喘いでいた天井もこのプロジェクトに飛びついた。

    「だが、知ってのとおり、計画は完全に失敗に終わった……」

    計画の中期の段階で、学園都市を統べる『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』は、人工超能力者の可能性をゼロと断定した。
    そのため、計画に参加していた企業や資産家は次々と見切りを付け、計画から離れて行った。

    プロトタイプ体細胞クローン、『ミサカ00000号』が生れ落ちたのは、ちょうどその辺りであった。

    「私は、傾いたプロジェクトを何とか建て直そうと躍起になった。少ない私財を投げ打ち、様々なコネを使い、なんとかミサカ00000号を超能力者に育てようとした」

    だが、それも失敗に終わった。
    何が原因だったのか分からない。いや、原因が多すぎて特定できないと言った方が正しかった。

    「私は肉体変化・操作に関してはスペシャリストだったが、ソフト面、即ち脳については全くの門外漢だった。
     計画の初期には、布束という天才脳科学者がサポートしてくれていたが、彼女はすぐに計画から離れてしまったからな……」

    計画が凍結され、天井の手元に残ったのは、多額の負債とただ1人製造されたミサカ00000号だけだった。

    無残に最後のスポンサーが最後通告をしたときのことを、天井は良く覚えている。
    何もかもか灰色になり、残された機材とミサカ00000号の前で、天井は獣のような絶叫を上げた…

    605 = 1 :

    「全てが終わった、そう思った。実際に科学者としての私は終わりだった。未来も何も無くなった……」

    浅く寝息を立て始めたミサカ00000号を見て、天井が呟くように言った。

    「私は全てを呪った… 私を責任者にした統括理事会を… 掌を返したスポンサーを… そして、何より、この娘をな……」

    天井が2人の方を振り向いた。

    「コイツが憎くて憎くて仕方がなかった。殺そうとも思ったし、実際に喉に手をかけた。…少し、気が触れていたんだろうな」
    「…まぁ、気持ちは分からないでもないわね」

    気遣うように、結標が天井に同調する。
    天井は軽く「ありがとう」と言って、続きを話した。

    「私が喉に手をかけても、この娘は無抵抗だった。当然だ、そういう風に調整していたのだからな。そして… 魔が差した……」

    額に手を当て、ひどく後悔をした表情になる。

    「無抵抗の美少女を前にして、その時の私は情欲を抑えることができなかった。
     …恥ずかしい話だが、研究一筋のせいであまり異性とは縁が無くてね。無抵抗なことを良いことに、散々この娘を犯し抜いた」

    あの時、天井は思いつく限りの陵辱をミサカ00000号に与えた。
    それでも、天井の気は晴れることなく、逆に行為はどんどんエスカレートしていった。

    「元々、私は肉体変化の専門化だったから、この娘の体を思うがままに改造した。
     乳房を肥大化させ、陰毛を永久脱毛し、陰核の包被を切り取り、咽頭を改造し、タトゥーを彫り、ピアスを入れた…」

    流石に不快に思ったのか、婚后が顔をしかめた。

    「…ご本人を目の前にして言うことではありませんが、悪趣味なことですわね」
    「はは、私もそう思う。思い出すだけで自殺したくなる……」

    だが、天井が最も後悔していることは、それではなかった。

    「度重なる肉体改造に、精神が未発達なこの娘も、ようやくおかしいと気付き始めた。 ……だから私は、この娘の脳も改造した」

    2人が、軽く息を呑むのを感じた。

    「さっきも話したが、私は脳は専門外だ。だから布束が残した『学習装置(テスタメント)』を使った」

    『学習装置(テスタメント)』とは、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感全てに対して電気的に情報を入力することで、脳に技術や知識をインストールするための装置だ。

    「だが、門外漢があやふやな知識で使ったせいか、期待する効果は現れなかった。結果は、ご覧の通りだ……」
    「……性奴隷としての人格形成は、狙ったものではなかったんの?」
    「さてな…… 狙ったようにも思えるし、そうでないようにも思える…… だが、この娘が、ああいった支離滅裂な言動を話し始めて、ようやく目が覚めた……」

    天井が、再び2人を見た。

    「君たちがどんな指令を受けているのかは分からないが、これからはこの娘の安全を第一に考えて欲しい」

    そう言われて、結標と婚后は互いに視線を交わした。

    「私のことは、もう良い。この娘を最終ポイントに指定された時刻に連れて行く。それを第一に頼む」

    言って、深々と頭を下げる。
    その天井の行為に、婚后は口元を扇子で隠して目を泳がせ、結標は困ったように頭を掻いた。

    「……ま、事情は大体把握したから、私たちは全力で任務を遂行するだけよ」
    「そうですわね…… 受けた任務をきっちりこなすだけですわ」

    結標がきっぱりと言い、婚后がそれに同調する。
    天井は、幾分和らいだ表情で、「ああ、それで頼む」と、微笑んだ。

    606 = 1 :

    「よし、行くか……」

    漆黒のライダースーツに身を包み、麦野がハイブリット・バイクに跨る。

    「………うぃ」

    どこか冴えない声で上条が答え、後方のタンデムシートに跨る。
    その頬には、赤々としたもみじ色の手形がついている。

    「…ぶつことねぇじゃん」
    「やめて、って言ったのにやめないからよ」

    麦野から『勝手にアナルを弄った罰』として、風呂上りに痛烈な平手打ちを食らったのだ。

    「……今度はちゃんと準備しとく」
    「……はい?」
    「なんでもない! 行くぞ!」

    清音性に優れたハイブリットバイクが音も無く走り出す。
    肉付きの良い麦野の胸腰部に手を回して、上条は互いのフルフェイスのヘルメットを、こつん、と合わせた。
    このヘルメットは、内部で話した声を振動として広い、接触した同じタイプのヘルメットに伝達する優れモノだ。

    『なぁ、シナリオ書いてるのが学園都市なら、最後に出てくる障害もやっぱり能力者かな?』
    『ええ、恐らく出てくるのは『座標移動(ムーブポイント)よ』

    麦野が数ヶ月前の記憶を引き出して答える。

    『『座標移動(ムーブポイント)は、指定した座標の物体を任意に瞬間移動することができるテレポーターよ。
     この能力の凶悪なところは、始点と終点が固定されていないことよ』

    つまり、見えるモノ全てが範囲ということだ。

    『つまり、『見られたら終わり』ってこと?』
    『まぁ、動き回っていたらテレポートは難しいらしいから、一箇所に留まらないことね』

    一応、麦野の頭の中に戦闘プランはある。
    上条が接近し、左手で結標を無効化するのが理想だが、それはかなり難しいだろう。

    (大盤振舞いでいかないとね……)

    それに、麦野個人としては、あまり上条と結標とは絡んで欲しくないのだ。

    (アタシ以上に年下趣味だからな、アイツは……)

    上条に聞こえないように軽く舌打ちして、麦野はアクセルを強く握り込んだ。

    607 = 1 :

    23区。
    航空・宇宙開発分野が占有するこの学区に、音も無く麦野のタンデムバイクが進入する。

    「……そろそろポイントね」

    指定された逃亡ルートはすぐそこだ。
    麦野は『座標移動(ムーブポイント)』の奇襲を警戒し、バイクの速度を緩やかに落とした。

    瞬間、麦野の瞳が、光る何かを知覚した。

    「…………来たッ!!」

    手首を素早く動かし、前輪をロックしたままアクセルを全開。
    強引にドリフトをしてバイクを方向転換させると、元居た場所を鈍く光る球体が通過し、そして、同じ速さで戻って行った。

    「結標…… じゃないか……」
    「あら、お姉さまのお名前を知っていらっしゃいますの? とすると、貴女が『原子崩し(メルトダウナー)』?」

    高出力の証明の下に、この場にそぐわないブルマ少女がゆっくりと歩いてきた。

    姿を見せたのは婚后光子だ。
    婚后は以前使用したジャイロスタビライザーは背負っておらず、代わりに、3つのひも付きゴム弾がついたごつい手袋を両手に嵌めている。

    「……ごめん、当麻」
    「…わかった、まかせろ」

    婚后の狙いは恐らく追跡者の足止めだろう。
    そう判断した麦野は、上条を降ろすと、ギアを入れずにアクセルをゆっくりと上げた。

    「…危なくなったら、すぐに逃げなさい。負けたときの狙撃に気をつけてね」
    「ああ、沈利もな」

    短く言葉を交わした瞬間、上条が猛然と婚后目掛けてダッシュする。
    同時に、強引にギアを入れた麦野のバイクが、猛スピードで急発進する。

    「……ッ!! 無視するおつもりですのッ!?」

    婚后が手首を返してゴム弾を掌に引き寄せる。
    しかし、婚后がゴム弾の射出準備を終えるより早く、上条が一気に距離を詰めた。

    「おらッ!!」
    「おっとっとッ!!」

    意識を散らす目的で放った大振りの右ストレートを、婚后が慌てて前転してかわす。
    その隙に、麦野のバイクは赤いテールランプを揺らして走り去った。

    608 = 1 :

    「……ま、良いでしょ。お姉さまが負けるはずはありませんし」

    程よい脱力肢位でファイティングポーズをとる上条に相対する。
    距離はおよそ1m強。先ほどの踏み込みを見るに、1ステップで上条は距離を詰めてくるだろう

    「確認いたしますが…… 降参していただけませんか?」
    「…そりゃ、コッチのセリフだッ!!」

    上条が地面を強く蹴りつけ、婚后との距離を一気に詰める。
    流石に女性の顔を殴るのは気が引けるのか、腹部を狙って左フックを放つ。

    「あ、そ~れ!」

    しかし、上条が動いたのと同時に、婚后も身を亀のように丸めたと思うと、胸に重ねた左腕を、右手で軽く叩いた。
    瞬間、みえない何かに弾かれたかのように、婚后の身体が後方に吹っ飛んだ。

    「なにッ!!」
    「よっとっとッ!」

    4、5メートルを一気に移動し、たたらを踏んで婚后が着地する。

    「ご解説をいたしましょうか?」
    「……『空力使い(エアロハンド)』。任意の点に空気の噴射点を作り、物体を飛ばす能力か……」
    「ご名答! 人はわたくしの事を、『トンデモ発射場ガール』と呼びますのよ!」

    婚后が今度こそ手元にゴム弾を引き寄せて左右計2個のゴム弾にタッチする。

    「お行きなさいッ!!」

    撃ち出されたゴム弾が、高速で上条に迫る。
    が、上条は僅かに身を動かしただけでソレを回避した。

    「おや?」
    「電撃よりは遅ぇし、初動が分かっている弾なんて当たるかよ」

    やや呆れた口調で上条が言う。     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
    しかし、それでも婚后は笑みを崩さず、手首をくるりと返した。

    「……うおッ!!」

    背部に、ぞわり、とした危険を感じて、今度は上条が地面に転がる。
    そこを、手首の返しで軌道を変えたひも付きゴム弾が、高速で通過していった。

    「……なんじゃそりゃ?」
    「いわゆる1つの、くらっかぁ~・う゛ぉれぇ~いッ! ですわッ!!」

    言葉の終わりに、今度は左右計4個のゴム弾を射出する。
    しかし、4個のゴム弾は上条に向かわず、てんでバラバラな方向に飛んで行った。

    「……まさかッ!」
    「そのまさかですわッ!」

    婚后が独特な動きで手首を返すと、4つのゴム弾がまるで生き物のように四方から上条に襲い掛かった。

    「くっそッ!!」

    身を捻り、後方に下がることでゴム弾をかわす。
    距離がさらに離れた。

    「やりますわね。では、これはいかが?

    手元に戻したゴム弾の内1つを発射する。
    足元に打ち込まれたソレを、上条が軽くジャンプしてよける。
    すると、ほど同じ軌道で次弾が高速で迫った!

    「チィッ!!」

    着地の瞬間を狙われ、上条は強引に空中で身を捻り着地点をずらす。
    しかし、不完全な着地はバランスを崩す結果となり、上条の瞳が3発目のゴム弾を捉えた。

    ごつッ、と鈍い音がした。
    何とか腕のガードが間に合ったものの、上条の右腕に見る見るうちに黒血が集まり痣となった。

    609 = 1 :

    「……ッたく、めんどくせー」

    上条が大きく深呼吸をして、軽くステップを踏む。

    「再度申し上げますが、降参していただけませんか? まだ、わたくし本気じゃないんですよ?」

    余裕の笑みを崩さずに婚后が言う。
    上条はそんな婚后をジト目で見ると、ふぅ、と息を吐いた。

    「気は進まねえけど、お前を殴って倒すから」
    「あらあら、負け犬の遠吠えにしては、大言が過ぎますことよ?」

    婚后がゴム弾を射出する。
    角度、時間、スピードを変えられたソレらが、いっせいに上条に襲い掛かる。

    「ぐっ……ッ!!」

    ゴム弾に翻弄されるように上条が身を捻る。
    多方向から襲い掛かるゴム弾を、ある程度はよけることに成功するが、かわしきれない数個をやむを得ずガードする。

    「おや、ジリ貧ですことよッ!?」

    婚后がゴム弾の密度と速度を上げる。

    (今だッ!)

    瞬間、突如として上条が婚后に向かって猛然とダッシュした。
    婚后が全てのゴム弾を射出したのを確認したのだ。

    「弾が戻るよりも速くッ!」
    「奥の手と言うものは隠しておくものですわよ?」

    全弾使い切ったと思われた婚后の手に、手品のようにゴム弾が現れた。

    「掌ばかりに集中して、手の甲を忘れていらっしゃいませんのッ!」

    勝利を確信した婚后は、接近する上条の顔に向かって、必勝の一撃を射出した。
    ダッシュした上条は、よける間もなく当たるはず。はずだった。

    「そうだな、奥の手は隠しておくもんだ」

    上条が左手を軽く振るう。
    直撃するかと思われたゴム弾は、上条が左手で触れた瞬間、勢いを失って減速した。

    「なッ!? そんなッ!!」
    「痛かったぞ! 痛いぞッ!!」

    ボディ目掛けて、5分の力で正確に鳩尾を打ち抜く。
    婚后の身体がくの字に折れ曲がり、そのまま膝をついて崩れ落ちた。

    「……ふぅ、何とかなったか」

    先行した麦野は大丈夫だろうか。
    心配する上条は、ふと、麦野の言葉を思い出した。

    『負けたときの狙撃に気をつけてね』

    上条は油断無く辺りを見回すと、迷った末に、婚后の武装を解除して担ぎ上げた。

    610 = 1 :

    「はぁはぁはぁ…… もうすぐ、もうすぐだ……」

    一方、逃亡ルートの終わり際では、天井たち3人が息を切らせ疾走していた。
    学園都市が指定した最終ポイントまであと数百メートル。
    天井が逃走の成功を夢想し始めたとき、結標が天井の襟首を掴んで止めた。

    「ぐっ… なんだッ!?」
    「ごめん、天井さん。追いつかれちゃったみたい」

    天井が慌てて首をめぐらすと、黒いライダースーツの女が、バイクから降りてヘッドライトをこちらに向けるのが見えた。

    「やっぱ、ファイナリストは麦野先輩か…… こーんな屋外の開けた場所で、私に勝てるかしら?」
    「能力が知れてりゃ、対策なんざいくらでも取り様があるだろうが、ボケが……ッ」

    麦野が静かに闘志を燃やす。

    「……後ろの2人が、ターゲットとクローンか。その2人を守りながら戦うつもりかよ?」
    「このぐらいのハンデがちょうど良いんですよ。…天井さん、下手に動かないでね、始点がずれるから」

    結標が念押しに言い、天井が深刻そうに頷いた。

    「それじゃ… 始めますかッ!!」

    結標が軍用懐中電灯のスイッチを入れ、超能力者(レベル5)同士の戦闘が始まった……


                                                          ―――続く。

    611 = 1 :

    はい終わり。

    次で終われるかな?

    婚后さんのゴム弾はジョジョではなくコータローまかりとおるLが元ネタ。
    じゃあの。

    612 :

    乙だ。エロも、それを抜きにしても面白いから困る。

    天井くンはどうなるか…描写多くて嬉しい限りだわ

    613 :

    同意
    めちゃくちゃ面白いわ。こういうの好き
    続き楽しみにしてる

    614 :

    3回ヌイた……………

    ふう、訂正、4回だ

    615 :

    >>1
    今日見つけて全部よんでしまった・・・

    616 :

    >>615

    ageんなクズ死にさらせ

    618 :

    >>615
    全部読んだならageたらダメなの察しような?

    619 :

    ageちまったモンは仕方が無い。
    仕方が無いので、短いけど麦のんVSあわきんだけ投下。

    620 = 1 :

    「ふっ!!」

    麦野沈利、対、結標淡希。

    最初に動いたのは麦野だった。
    自身の座標を悟られまいと、大きく弧を描くようにダッシュする。
    さらに、

    「喰らいなッ!!」

    未だ一箇所に固まっていた、結標、天井、00000号を巻き込むように『原子崩し(メルトダウナー)』を叩きこむ。

    「強引なのは相変わらずね…!」

    音も無く飛来する極太のビームに、しかし、結標は全く臆する事なく対処する。

    「う、うわっ!!」

    結標の代わりに天井が悲鳴を上げる。
    が、次の瞬間には、天井は奇妙な浮遊感を感じ、数瞬前に居た場所とは全く異なる地面に座り込んでいた。

    「ひ、ヒヤヒヤさせる…」
    「何度体験しても慣れないですねぇ… と、ミサカ00000号がか弱く主張します…」

    どうやら、『原子崩し(メルトダウナー)』が発射されてから、僅か数瞬の間に、結標が『座標移動(ムーブポイント)』の能力を使って彼らを瞬間移動させたようだ。

    「ちっ、どこ行った…!?」

    消えた結標を麦野が目をギラ付かせて探す。

    探索時間はほんの数秒。
    安易に見つからないと悟った麦野は、遠慮無く座り込んでいる天井たちに掌を向けた。

    「動くと死ぬぞぉ!!」

    瞬間、『原子崩し(メルトダウナー)』の斜線上に結標が現れる。

    距離にして約3m。
    結標は麦野が『原子崩し(メルトダウナー)』を照射するよりも速く、軍用懐中電灯を麦野に向けた。

    「成層圏までふっ飛びなッ!!」
    「やなこったッ!!」

    文字通り光速のライトに照らされる直前、麦野の両足が爆発するように弾けた。
    どぉん! という炸裂音と共に、麦野の身体が斜め後方に吹っ飛ぶ。

    極めて慎重に出力を調整した『原子崩し(メルトダウナー)』を両足底から照射して、その反動で『跳んだ』のだ。

    621 = 1 :

    「うわッ! なにその荒業!? 足痛く無いの!?」
    「余計なお世話!!」

    麦野が空中で懐から1枚のカードを取り出して放り投げた。

    『拡散支援半導体(シリコンバーン)』

    『逆落とし』戦でも使ったソレは、『原子崩し(メルトダウナー)』を拡散させる、文字通り『アイテム』である。

    「行けぇ!!」

    『原子崩し(メルトダウナー)』がカードに接触し、光の槍が数条の光の矢に変化する。

    「ちっ! 馬鹿の一つ覚え…ッ!!」

    毒づくものの、その攻撃方法は苦手なのか、結標がテレポートして大きく距離をとる。

    地面に光の矢が次々と激突し、瞬間的に砂煙が舞う。

    「くぅッ… 目隠しのつもり……?」

    本来なら、屋外では『座標移動(ムーブポイント)』はほぼ無敵である。
    しかし、麦野が指摘したとおり、今の結標には天井とミサカ00000号という足手纏いが居る。
    彼らを視認できる位置・距離が、結標の移動限界であり、麦野の勝機である。

    「こっちだボケッ!!」

    不意に、麦野の声が場に響いた。

    「なッ…! 馬鹿にしてんのッ……!?」

    『原子崩し(メルトダウナー)』の不意打ちを警戒していた結標が、わざわざ自分の位置を教えた麦野に苛立ちの声を上げる。
    だが、麦野を見た結標は、苛立ちを不審に変えた。

    「………痴女?」
    「誰が痴女だッ!!」

    結標の視線の先には、黒いライダースーツを脱ぎ捨てた麦野の姿があった。
    ライダースーツの下は、往年の芸術品泥棒を思わせる薄紅色のレオタードで、さらに、そのレオタードの表面には不可思議な紋様がプリントされている。

    「終わりだッ!!」

    声と共に、麦野が豊満な肉体をダイナミックに躍動させて結標目掛けて突っ走った。

    「いや、意味分かんないし… 万歳突撃ッ!?」

    麦野の突飛な行動に混乱しながらも、反射的に結標は『座標移動(ムーブポイント)』で麦野をテレポートしようとした。
    だが、

    「!!??ッ 11次元ベクトルが計算できない…ッ!?」
    「対策あるっつっただろーがッ!!」

    このレオタードが、麦野の対『座標移動(ムーブポイント)』用の切り札その1だった。
    レオタードの表面にプリントされた紋様は、可視者に視覚的な錯覚を引き起こし、その距離感を狂わせる効果があるのだ。

    その錯覚は一瞬で一時的なものだが、結標の隙を作るには十分な時間だった。

    「サヨナラ、結標…… 天国でそのショタコン治してもらいな……!」

    麦野沈利が躊躇い無く『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。

    どんぴしゃのタイミングだった。
    結標が我を取り戻したときには、『原子崩し(メルトダウナー)』は目の前まで迫っていた。

    622 = 1 :

    自身へのテレポートは間に合わない。
    勝負は決まったかと思われた。
    しかし、結標淡希は、やはり学園都市第六位の超能力者(レベル5)であった。

    「きてはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

    『原子崩し(メルトダウナー)』が結標に激突する寸前、光の槍はその軌道を変えて垂直に立ち上った。

    「な、なに…ッ!?」
    「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!」

    なんと言うことか。
    結標淡希は、光速で照射された『原子崩し(メルトダウナー)』を、『座標移動(ムーブポイント)』でテレポートしたのだ。

    よほど酷い負荷が脳にかかったのか、結標の鼻から一筋の血が、たらり、と流れ落ちる。
    だが、その双眸は大きく見開かれ、麦野沈利を凝視している。

    「……お前、アホだろ?」
    「逆王手… 勝負あったわね……!」

    結標がゆっくりと麦野に軍用懐中電灯を向ける。

    麦野の背筋に、ぞわり、とした冷や汗が流れ落ちる。

    (まずいッ!!)

    そう麦野が感じ、結標が能力を使おうとした瞬間、

    「おいおい、ちゃんと曲げる方向は確認して曲げろよ。危うく俺様に当たるところだったじゃねぇか……」

    ヒートアップした戦場に、第三者の声が響いた。

    麦野と結標が声のした空を見上げる。
    そこには、大小6つの白い翼を優雅に広げた、ホスト風の青年が浮かんでいた。

    「まぁ、予想通りだが、最後の相手は超能力者(レベル5)か。美味しい状況だなぁ、おい」

    緩やかに翼を羽ばたかせ、青年――垣根帝督が、3人目の超能力者(レベル5)が地面に降り立った。

    623 = 1 :

    あい終わり。

    あわきん、新約になってかまちーに忘れられてるんじゃないだろーか?

    624 :

    乙。ナイフォロ。流石優しい

    625 :

    しかしあわきん第六位なのはなんでだろう
    希少価値的にも有用性的にももっと上位でよさそうな気がする

    626 :

    欠陥品だからやろ

    自分をテレポできへんから

    627 :

    乙でした

    628 :

    ここのあわきんは完璧って書いてあるだろ
    それだともうちょっと上位にいると俺も思けどね

    629 :

    汎用性がないからじゃない?
    工業価値がないというか

    630 :

    ただ単に6が空席だから入れただけだろ

    632 :

    >>622
    「きてはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

    バスタードかよ…

    633 :

    はよ 頼む
    おかずが足りんのや

    635 :

    >>634そういうのは初めてきた人スレで聞こうぜ

    636 :

    テスト

    大丈夫かな?
    次回投下は多分来週。

    エロは入る予定は未定。

    637 = 635 :

    乙把握

    638 :

    昨日ss速報(ここ)の鯖が落ちてたのは俺だけでせうか?

    639 :

    サーバーが落ちたと思ってるのに俺だけって何なんだよ

    640 :

    お前だけならそれ鯖落ちとちゃう

    641 :

    鯖が何かわかってない子供か老人の俺は知ってるんだぜってアピール失敗例

    642 :

    >>638
    >>1も焦りましたが、どうもここの板では風物詩のようですな。

    あー、麦のんとあわきんと吹寄にトリプルパイずりフェラされてー
    つーか、そんなシチュ書きてー

    643 :

    あれなんだったの?たまにあるけど
    鯖落ちと思ってた

    >>642
    書いていいのよ

    644 :

    の子(月に一回のメンテナンス)の日だよ

    645 :

    きも

    646 :

    更にオリアナ、オルソラ、神裂、ビバリー、ヴァルキリーを加えたらどうなるのか

    647 :

    雲川先輩

    648 :

    ビバリーが誰か普通にわかんねえ…イギリス組か聖人か?

    これ湾内さんとか御坂黒子と3Pとかあり得るな…素晴らしい

    649 :

    >>646
    (おっぱいで)圧死する

    >>648
    アニメ『とある魔術の禁書目録』の初回DVD特典SS『とある科学の超電磁砲』に出てきた映画監督
    見た目が18歳ほどでLカップという爆乳のアメリカ人
    ちなみに美琴は彼女の映画『鉄橋は恋の合図』のファンで、19巻では浜面も彼女の作品を大絶賛していた
    ↓参考画像

    650 :

    >>649
    アナルほど
    小説組が知らない訳だ


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