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    元スレ上条「そこのおねーさん! お茶しない?」 麦野「あん?」

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    651 :

    突然ですが、今から投下。

    今回は長め、50kb。
    長いので、分割して読まれることを推奨。

    では投下します。

    652 = 1 :

    「…消えろッ!」

    垣根からどこか危険な雰囲気を感じ取ったのか、麦野がいきなり『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。
    音も無く光速で迸った光の槍は、しかし、垣根が身体を覆うように被せた白い翼に吸い込まれ、消えた。

    「…なに?」
    「おいおい、ずいぶんと暴力的だな。そんなんじゃ、男にモテねぇだろ?」

    垣根は余裕の表情を崩さない。
    対して、絶対の自信を持つ必殺の一撃をあっさりと防がれ、麦野は不満そうに眉根を、ぎゅっ、と寄せた。

    「…手に持っているソレはが獲物?」

    結標が警戒した声で問う。
    垣根の右手には、一見してそれとわかるライフルが握られていた。

    「あぁ、これは違うぜ。暇だから今回の『掃除屋』をぶち殺した時の戦利品だ」

    垣根がライフルを麦野と結標の足元に転がす。
    強化プラスチックで構成されたフレームが、カン、と軽く乾いた音を立てた。

    「『掃除屋』…」
    「そうだ、お前らだって薄々気付いているだろ? 今回の件はずばり『暗部の間引き』だ。
     誰が音頭とってるか知らねぇし、証拠があるわけでもねぇけど、これが正解だよ」

    垣根の言葉を麦野は冷静に受け止めた。

    麦野自身も、恐らくそうであろうと予想していた。
    任務に失敗した暗部があっさり『掃除』されたこと、狙っていたはずの『反学園都市勢力』がまったく釣り出されないことが一番の理由だ。

    「…そうなの?」
    「あたしに聞かないでよ、先輩」

    麦野の問いに結標が簡潔に答える。

    「ただ、あたし達に指示を出したのは、いつもの統括理事会ルートだけどね」
    「つまり、それで正解ってことか、くそったれ……」

    麦野が全身の緊張をやや解く。
    内実が暗部同士の内ゲバであるのならば、最早、麦野が任務を継続する意味はない。

    「予想してた中で最悪の答えだ。ふざけんなよ…」

    麦野が毒づいて、バイクに向かおうとする。
    だが、一歩足を踏み出す前に、垣根帝督が動いた。

    「おいおい、なに帰ろうとしてんだよ、てめぇ…!」

    垣根の翼がにわかにその先端を伸ばし、袈裟懸けに麦野に襲い掛かる。
    慌てて麦野が後方にステップしそれをかわすと、アスファルトの地面に翼が炸裂音を立てて突き刺さった。

    「コイツ……!」
    「俺様にとっては、この状況は好都合なんだよ。内ゲバ? 最高じゃねぇか」

    白い翼がゆっくりと垣根の背に格納される。
    それは即ち、垣根が戦闘態勢をとったことを意味してた。

    「俺様が目的を果たすためには、他のlevel5は邪魔なんだよ。だから…」

    6枚の翼が一気に展開される。

    「素直に俺様にぶち殺されろッ!!」

    今夜、最後の戦闘が幕を開けた。

    653 = 1 :

    「淡希ッ!! 一旦休戦ッ!!」
    「了解、先輩ッ!!」

    女性2人が一瞬でアイコンタクトを取り、素早く共同戦線を作る。
    顔には出さなかったが、麦野の『原子崩し(メルトダウナー)』があっさり防がれたことは、麦野、結標双方にとっても衝撃だった。
    ゆえに、「この男には2人掛りではないと危ない」と、2人の本能が合致したのだ。

    「いいねぇ、こっちも2人同時の方が手間が省けていいぜ!」

    垣根帝督が白い翼を横薙ぎに振るう。
    麦野と結標とを、一気になぎ倒す勢いだが、激突の前に2人の身体が空中に掻き消える。

    「…テレポートかッ!?」

    垣根の前方数m先の空中に結標が出現する。
    そして、結標が何かを取り出そうとミニスカートの中に手を突っ込み、

    「で、本命は後ろ、と…」
         ・ ・
    無音で背後から照射された『原子崩し(メルトダウナー)』を、垣根は振り返ることすらせずに翼で防いだ。

    「クソッ、大人しく死んどけよッ!!」
    「こんな子供だましに引っ掛かるかっての、馬鹿か?」

    垣根の後方で臍を噛む麦野に軽口で答える垣根。
    しかし、今度は正面の結標が動いた。

    「潰れろッ!!」

    はるか遠方に駐機してあった軽クレーン車を垣根の頭上にテレポートさせる。
    重さ数トンの重量物が、ふわり、と数瞬だけ滞空し、次の瞬間には大音声と共に垣根を押し潰した。

    どぉぉぉぉん!!!

    「やったか!?」
    「先輩、それ禁句ッ!!」

    固唾をのんで2人が見守る中、舞い上がった粉塵が次第に晴れ、そして。

    「単純だが、それだけに効果的な攻撃だな。だが、俺様には通用しねぇな」

    一体、どんな能力行使が行われたのか。
                                 ・ ・ ・ ・ ・ ..・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ..・ ・ ・ ・ .・
    垣根帝督は何事も無かったかのように、悠然と軽クレーン車の中から歩いて出てきた。

    「…なんだコイツ?」

    あまりにも異常なその光景に、結標が冷たい汗を流して呟く。

    「おぉ、そういえば自己紹介がまだだったな。学園都市序列第2位のLevel5、垣根帝督だ」

    白い翼がさらにその面積を拡大させる。

    「――俺の『未元物質(ダークマター)』に常識は通用しねぇ」

    654 = 1 :

    どぉぉぉぉん!! どぉぉぉぉん!!

    重量物の激突音が連続で木霊する。

    結標が、目に見える車や街路樹といった重量物を、片っ端から垣根の頭上にテレポートさせているからだ。

    「死ねよッ!!」

    さらに、重量物で身動きが取れない垣根に、麦野が連続で『原子崩し(メルトダウナー)』を撃ちこむ。
    しかし、

    「馬鹿の一つ覚えか? いい加減飽きたぞ、おい」

    垣根帝督は全くの無傷だ。
    重量物は足止めにしかならず、『原子崩し(メルトダウナー)』は身体に届く前に白い翼に防がれてしまう。

    「…淡希、攻め順を変えるわよ」
    「了解… チッ、癪に障るわね…」

    麦野がレオタードのスリットから「拡散支援半導体(シリコンバーン)」を取り出し中空に放る。

    「食らえッ!!」

    照射された『原子崩し(メルトダウナー)』がカードに接触し、複数の光の矢が垣根に襲い掛かる。

    「なんだよ、結局は小細工かよ」

    しかし、それも垣根は難なく防御する。
    ますます不機嫌そうに麦野は眉を寄せるが、本命は結標だ。

    (目標視認ッ!!)

    軍用懐中電灯の灯りを垣根に向ける。

    (アイツはメルヘンチックに飛んできたから、空中に跳ばすのは悪手… ここは地面に『埋める』ッ!!)

    テレポート先を、数十m下の地中に設定。
    圧迫、窒息させるのが狙いだ。

    「とんでっけぇぇ!!」

    結標が「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開する。
    だが、

    「残念、既に解析済みだ」

    垣根は強制テレポートされる事なく結標に向かってダッシュすると、白い翼を鋭く結標の腹部目掛けて打ち出した。

    (ヤバイッ!! 回避ッ!!)

    まだ余裕のある結標が、自身の身体をテレポートして回避しようとする。
    しかし、結標がいくら能力を行使しても、テレポートは発生しなかった。

    ドゴォ!

    鈍く、深い音がして結標の腹部に翼が激突する。
    瞬間的に胃の内容物が食道を逆流し、結標は激しく嘔吐した。

    「う、げぇぇぇぇ!!」                  ・ ・ ・ ・ .・.・ ・
    「悪いが、お前の操る11次元ベクトルを、全く違う異質なベクトルに変換させてもらった。テレポートを見せすぎたな」

    655 = 1 :

    さらにうつ伏せに倒れた結標に追撃を加えようとする垣根に、麦野が『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。

    「させるかッ!!」
    「てめぇも見せすぎなんだよ」

    渾身の一撃は、しかし、垣根の翼に防がれ… いや、

    「解析は終了した」
    「え…?」
                                        ・ ・  ・ ・
    白い翼に触れた『原子崩し(メルトダウナー)』が、そのまま反射・反転して麦野に襲い掛かった。

    「…嘘でしょッ!!」

    麦野が慌てて正面に『原子崩し(メルトダウナー)』のバリアを張って防ぐ。
    しかし、その表情は焦りで満ちている。

    「解析… 解析って…?」
    「種明かしをしようか。お前の能力は『曖昧なままの電子を操る』能力だろう? 本来、電子線は直進するもんだが、それは常識の物理学での話だ」

    垣根帝督が翼を広げる。

    「俺様の能力『未元物質(ダークマター)』は、この世の物理法則に拠らない、全く異質な物質だ。
     異質な物質に触れた電子線はその性質を変えて反射した。実に簡単なタネと仕掛けだろ?」

    翼を広げた垣根帝督がゆっくりと地面から離れて飛翔する。

    「簡単に片付けるのはつまらねぇからな、遊んで殺るよ」

    次の瞬間、ヒュン、という軽い風切音ががしたかと思うと、麦野のレオタードの右腕部分が、まるで刃物で切られたかのようにぱっくりと裂けた。
    さらに、麦野の素肌にも長さ数センチの裂傷ができ、たらたら、と血液が流れ出す。

    「かまいたち…?」
    「正解。翼の隙間を通る風に一工夫加えてみた。おら、踊れよ」

    垣根の言葉と共に刃物となった風が麦野に襲い掛かった。

    「舐めんなッ!!」

    麦野も『原子崩し(メルトダウナー)』のシールドを作りあらかた防ぐが、量がハンパではない。
    度々にシールドの隙間から突破され、浅い切り傷をいくつも負う。

    656 = 1 :

    (このままじゃジリ貧じゃない…!)

    所々を切り裂かれ、半ば半裸状態となった麦野が覚悟を決める。

    残った「拡散支援半導体(シリコンバーン)」を全て中空に放ると、そのすべてに『原子崩し(メルトダウナー)』を叩き込む。

    「おいおい、またそれか?」

    拡散する光の矢が、垣根の翼に弾かれ、あるいは反射する。

    しかし、それは麦野にとって覚悟の上だった。

    「…跳べっ!」

    結標戦で回避に使ったように、足元に『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。
    爆発と共に急激な推進力を得た麦野が、跳ね上がるように夜の空に跳躍する。

    「…せいッ!!」

    さらに空中で『原子崩し(メルトダウナー)』を放射し、体軸に急激な横回転を与える。
    急激に回旋した体幹に沿わせるように、麦野は全身の力を注いで右の踵を垣根帝督に叩き込んだ。

    ズボッ、と音がして麦野の踵が白い翼に完全にめり込む。
    ここで、初めて垣根帝督の表情が変わる。

    「まさか…ッ!?」
    「そのまさかよッ! ゼロ距離で喰らいやがれッ!!」

    翼の内側から、麦野が『原子崩し(メルトダウナー)』を踵から照射する。
    垣根の体表がほの白く発光し、電子線が垣根の服を焼く。
    しかし、

    「……流石に焦ったぜ」

    麦野の放った渾身の『原子崩し(メルトダウナー)』は、垣根の身体を滑って後方へと流れて行った。

    「そんな…」                                     .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ .・ ・ ・ ・ ..・ ・ ・ .・ .・ ・ ・ ・ ・
    「別にフリックのつもりじゃない。この白い翼は勝手に出てきちまうんだ。体表の汗に細工をして電子線を曲げさせてもらった」

    空中で垣根が麦野を拘束する。

    「最後の足掻きは良かったぜ。だが、これで終わりだ」

    ドコッォ、と麦野を白い翼が強かに打撃する。
    全身を激痛に支配された麦野の身体が力を失い、そのまま落下して地面に叩き付けられた。

    「が… は……」

    肺腑の空気を強制的に吐き出して麦野が悶絶する。
    まだ意識は保っているが、満足に身体を動かすことが出来ない。

    「予想外に手間は取ったが、結局はこの程度か…」

    垣根帝督が地面に降り立つ。

    「じゃあな」

    トドメの一撃を放とうと、垣根が白い翼を広げたその時、

    「テメェ、沈利から離れろッ!!」

    最後の主役が遅れてやって来た。

    肩に担いだ婚后光子を地面に降ろし、上条当麻が吼えた。

    657 = 1 :

    「……なんだ?」

    新たな敵の登場に、垣根が臨戦態勢を整える。
    言動から察するに、あの男は足元に転がっている女の仲間なのだろう。

    「高位能力者か…?」

    垣根が警戒して動かずにいると、上条は軽く息を吸った後、全力で垣根に向かってダッシュした。

    「うおおぉぉぉぉぉ!!」
    「…………ッ!!」

    上条の雄叫びに、本能的な恐怖を感じた垣根が白い翼を振るう。
    狙い済ました一撃は、しかし、上条がわずかに身を捻ったことであっさりとかわされた。

    「格闘技… ボクシングかッ!!」

    (肉体強化系の能力者か?)

    だいたいのアタリをつけて、垣根がさらに翼を振るう。
    上条は素早く右半身になり翼を避けると、サウスポーのリードブロウを垣根に叩き込んだ。

    「シュッ!!」

    右拳が白い翼に阻まれ、あっさりと防御される。
    拍子抜けする垣根だが、上条は構わず右ジャブを繰り返した。

    「ふッ!!」

    顎、ボディ、顎、と狙いを散らしてジャブを放つが、悉く白い翼に阻まれる。
    そうしているうちに、垣根の脳内に不審感が募り始めた。

    「お前、もしかしてタダの無能力者か?」
    「……ッ! だとしたらどうすんだよッ!!」

    なおも攻撃を続ける上条に対して、垣根は軽く息を吐くと、短く呟いた。

    「蹴散らす」

    それまで防御一辺倒だった白い翼が俄かに動きを変え、上条の右側面から薙ぎ払うように強烈な一撃を加えた。

    ドガッ、とも、ズンッ、ともとれる重い音と共に、上条がノーバウンドで数メートルも跳んだ。

    658 = 1 :

    「ぐッ…… 効いたぁ……」

    右腕と右わき腹がズキズキと痛む。
    恐らく、右尺骨と第9,10肋骨にひびが入っている。

    「…内臓破裂ぐらいの勢いで殴ったが、身体だけは丈夫みたいだな」

    悠然と垣根が近づき、翼を上条に叩き付けようとする。

    「食らうかッ!」

    上条は痛む腹筋をフルに活動させ、下肢を強引に天空方面に引き揚げて、そのまま後転倒立から身を捻って立位となった。

    「おおすげぇ、体操選手か、おい?」

    妙に感心した垣根が次々と翼を振るう。
    一度食らって翼の軌道を掴んだのか、上条は見事な体捌きでその全てを回避した。

    「やるじゃねぇか、無能力者でそこまでやるなんて、凄いよお前」
    「世間を知らねぇみたいだな。俺程度のレベルの格闘家はこの街にはゴマンと居るぜ」

    上条の言葉は本心だ。
    豪快な足技を使う駒場や、格闘技の師匠である土御門などには、全く勝てる気がしない。

    「能力者は、その能力で自分を縛っちまって、周囲が見えなくなるもんだ」
    「…吹くじゃねぇか」

    上条の言葉にカチンときたのか、垣根が僅かに顔をゆがませる。
    そして、さっきと同じように白い翼を振るい、

    「もう慣れたぜ、その攻撃はよ!」
    「ざけんな無能」

    よけたはずの右足が粉砕された。

    659 = 1 :

    「ぐぉぉぉぉぉ!!

    たまらず転倒し、上条は激痛にのたうち回った。
    どういう作用が働いたのか、右の踵骨、腓骨が砕かれている。

    「遊んでやってるのを勘違いすんじゃねぇよ無能」

    声とともに、右手首に強烈な翼の打撃が加えられる。
    ぼきり、という音と共に、橈骨の遠位端が真っ二つに割られる。

    「ぎゃああぁぁぁ!!」
    「弱いものいじめなんて、柄じゃねぇのによ。弱いくせに吼えるからこうなるんだ」

    倒れ付す上条に、垣根がすくうような一撃を加える。
    サッカーボールのように翼に蹴られた上条が、きっかり3秒間滞空して、地面に強かに叩き付けられる。

    「ぐっ… ごほぉ……」

    先ほどひびの入っていた肋骨が完全に折れた。
    幸い、肺には刺さっていないようだが、激痛が上条の視界を赤く染める。

    「ああ、気分が悪いぜ… ん?」

    ふと、右足に違和感を感じて垣根が視線を落とす。
    すると、そこには荒い息をした麦野沈利が、必死に垣根の右足にしがみつこうとしている姿が見えた。

    「これ以上は…」
    「おいおい… 安っぽいドラマじゃねぇんだからよ…」

    呆れた声を出して垣根が乱暴に麦野を振り払う。

    「黙っとけ」

    ごっ、と容赦ない蹴りが麦野の顔面を捉える。
    頬に強い一撃を食らって、麦野が再び倒れ込んだ。

    「何か企んでるのか?」

    このとき、垣根の意識が少しだけ上条から離れた。

    660 = 1 :

    遠くから麦野の弱々しい声が聞こえる。

    雄叫びを上げて駆け寄りたい気持ちをぐっと堪えて、上条は近くのとある人物に声をかえた。

    「おい… 起きろ……」
    「………なんですの、傷だらけのヒーローさん?」

    声を返したのは婚后光子だ。
    実を言うと、担がれている最中に目は醒ましていたが、上条もそれに気付いていたため大人しくしていたのだ。

    「頼みがある。アイツの注意が完全に俺から離れた瞬間、『空力使い(エアロハンド)』で俺の身体をアイツ目掛けて飛ばしてくれ」

    上条の言葉に婚后が胡乱な目つきになる。

    「大人しく寝ていないと、本気で死ぬことになりますわよ?」
    「俺が動かねぇと、沈利が殺されちまう。頼む……」

    真剣な表情で婚后を見つめる。
    その、あまりにも力の篭った熱視線に、婚后は頬が赤くなるのを感じた。

    「べ、別にそれぐらいのことだったら構いませんが… まだ隙というほどには警戒を解いていませんわよ?」

    ぷい、と上条から顔を背け、目線だけ横目で見る。

    「大丈夫だ、沈利が隙を作ってくれる」
    「……何か申し合わせを?」
    「いや、何もねぇ」

    あっさり言う上条に、ますます胡乱な目つきになる。

    「何もねぇが、沈利なら最後の最後まで絶対に足掻いてくれる。それを信じる」
    「……そうですか、わかりましたわ」

    力強い上条の言葉に、婚后が深く頷いた。

    661 = 1 :

    「おらッ!!」

    今度は腹部を蹴られる。
    身を屈めて必死に痛みに耐える麦野に、垣根がますます詰まらなさそうに顔をゆがめる。

    「おい… マジで何もねぇのかよ? 萎えるぜ…」

    そう呟いた瞬間、麦野がギラリと目を光らせてとある一点を見つめ叫んだ。

    「淡希ッ!!」
    「………死んだフリさせとけよッ!!」

    身体中を吐瀉物で汚しながら、結標淡希が力を振り絞って軍用懐中電灯を麦野に向ける。

    「完全痴女じゃん!」

    所々切り裂かれたレオタードは、その錯覚の効果も失っていた。
    電灯の灯りが照らした瞬間、麦野の身体がはるか空中に出現した。

    やや白み始めた払暁の空に、半裸のレオタード美女が舞う。

    「食らえッ!!」

    空中から地面の垣根目掛けて、『原子崩し(メルトダウナー)』を連続で照射する。
    無論、そのどれもが白い翼に防がれ、弾かれ、反射されるが、そんなのはお構い無しだ。

    反射された光の槍を強引に『原子崩し(メルトダウナー)』で打ち消し、さらに連射する。

    「芸の無い足掻きだなぁ、おいッ!!」

    攻撃の合間に、垣根が空気のかまいたちを飛ばす。
    しかし、それを予期していたのか、麦野は『原子崩し(メルトダウナー)』を推力に使って弾かれるように空中を移動してよけた。

    「チッ、面倒な…ッ!!」

    舌打ちをする垣根だが、だからと言って焦ってはいなかった。

    ああも無謀な空中機動と連続照射が長く続くわけは無い。
    このまま防いでいれば、麦野沈利はじきに力尽きて墜落するはずだ。

    そう予想して、垣根は『原子崩し(メルトダウナー)』の処理に全力を注ぎ込んだ。

    662 = 1 :

    「今だッ!!」
    「あ、あの光の奔流の中に突っ込んでいくおつもりですの!? 下手をうったら貴方が焼かれますわよ!?」
    「覚悟の上ッ!!」

    上条の迷いの無い言葉に、婚后が息を呑む。

    「やってくれ!」
    「…ええい、わかりましたわ! 貸しイチですからね、色男さん!」

    婚后が上条の身体の各部分を流れるような動きでタッチする。
    次の瞬間、轟くような空気噴射とともに、上条の身体が砲弾のように飛び出していった。

    663 = 1 :

    麦野沈利は無我夢中だった。

    結標の名前を呼んだのも、今、こうやって無駄な攻撃を続けているのも全くのノープランだった。

    シュパンッ!!

    「くぅ!!」

    垣根の放ったかまいたちが麦野の肌を浅く切り裂く。
    着ているレオタードはもう半分も面積を残していない。
    『原子崩し(メルトダウナー)』を使った強引な飛翔もそう長くは続かない。

    ただ、彼女が願うのは1つ。

    (当麻が逃げる時間を…ッ!!)

    結標が問題なく『座標移動(ムーブポイント)』を使えたのは大収穫だった。
    テレポート能力は他の能力と比べても非常に複雑な演算を必要とし、とりわけ結標は身体的苦痛に弱いと知っていたからだ。

    そして、『座標移動(ムーブポイント)』は、こと移動・逃亡にかけては、すべての能力の中でダントツの性能を持っている。

    (離脱するときに当麻を連れて逃げてくれれば…!)

    その希望を胸に秘めて、麦野は『原子崩し(メルトダウナー)』を撃ち続ける。

    「早く… 逃げてッ!!」

    祈るような気持ちで倒れた当麻を見る。

    そして、その瞳に映ったのは、
    雄叫びを上げて突進する上条当麻の姿だった。

    664 = 1 :

    「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

    人間の重心は常に変化する。
    基本的な解剖学的立位肢位では、重心は第4腰椎のやや前方に位置する。

    しかし、四肢の関節運動や、体幹・頸部の回旋により、重心は極めて複雑にその位置を変化させる。

    ゆえに、単純に吹っ飛ばしただけでは、人体は直進しない。

    そういう意味では、婚后光子は掛け値無しの天才であった。

    (すげぇ…ッ!! 身体の動きに合わせて噴射が…!)

    まるで身体の動きを完璧に予測していたかのように、全く重心がぶれずに上条当麻が疾走する。

    そして、麦野との射撃戦の最中、雄叫びに気付いた垣根帝督がこちらに顔を向け、

    「取ったぁぁ!!」

    上条、渾身の左フックが垣根の顔面を捉えた。

    「ぐはぁぁッ!!」
                             ・ .・
    空中にいることで、しっかりと下肢によるためを作れなかったことが災いしたのか、一撃では垣根は倒れなかった。
    ただ、左手で殴ったことで能力をキャンセルしたのか、垣根の背中から6枚の翼が掻き消える。

    「…てめぇぇぇ!!」

    怒りに形相を歪めた垣根が、白い翼を再度出現させる。
    だが、上条は当然のように、やや左半身のオーソドックススタイルになると、左ジャブを垣根の顔面に叩き込む。

    「無駄n… ぎゃッ!!」

    絶対の自信を持って防ごうとした白い翼があっさりと突破され、垣根の鼻頭に拳がヒットし鼻血が空中に散る。

    「なん、だと……!」
    「てめぇ、舐めすぎなんだよッ!!」

    痛む右足を強引に地面に突き刺し、わき腹、胸部、顎の流れるような左フックの三連打を見舞う。

    ドゴッ、ドコッ、ガッ!!

    強烈な三撃に、しかし、垣根帝督は倒れない。
    上条の身体が万全ではないことを踏まえても、それは異常なタフネスだった。

    「…畜生め、この俺様に奥の手を使わせやがって……ッ!!」

    垣根帝督の目つきが変わる。

    そして上条は、確かに流れていたはずの垣根の鼻血が止まっているのを見た。

    665 = 1 :

    「…なにッ?」
    「解析したぞ… てめぇの能力はその左手であらゆる能力をキャンセルするものか… どうりで最初は右しか使ってこねぇわけだ。奥の手隠してやがったな……」

    上条の目前で、垣根の殴られた頬の青痣が、見る見るうちに治癒していく。

    「それなら、俺様も奥の手を切らしてもらう。体組織の変性なんざやりたくねぇが、まぁ、細胞が入れ替わるまでの我慢だ…ッ!!」

    恐るべきことに、垣根帝督は己の体細胞を『未元物質(ダークマター)』で変性し、治癒速度を異常に亢進しているのだ。

    無論、作り変えられた体細胞は、他の細胞にどんな悪影響を及ぼすか想像が付かない。
    ゆえに奥の手、滅多なことでは使うまいと、垣根自身が戒めていた能力使用だ。

    「残念だったなッ! 銃火器の1つでも持ってりゃ勝ちだったのによ!」

    垣根帝督が素早く右足を軸に身体を半回転させ、左足を上条の右わき腹に叩き込む。
    なかなかどうして、腰の入った回し蹴りだ。

    「クッ…!」

    壊れた右腕でなんとか防御するが、衝撃とともに右手首に激痛が走る。
    今ので、右手首が完全にイカれてしまった。

    (尺骨までいったか… クソッ!!)

    激痛に飛びそうになる意識を懸命に手繰り寄せる。

    「俺様を油断させるためだろうが、ダメージを負いすぎたな! 超能力者だから身体を鍛えないってのは幻想だぜッ!」
    「んなの、沈利を見てりゃ分かるよッ!!」

    距離を取ろうと繰り出される強烈な前蹴りを何とかかわす。

    (空手…じゃない、キックボクシングか…!?)

    確信が1つの覚悟を生む。

    (キックボクサーなら…ッ!!)

    上条が無事な左足のみで跳躍する。

    「おおぉぉ!!」

    大降りの左ストレートを垣根が両腕を交叉してブロッキングする。
    しかし、これで距離が詰まった。

    666 = 1 :

    「せいッ!」

    上条が至近距離からのショートアッパーを繰り出す。
    垣根は右足を一歩引いてそれをスウェイバックでかわすと、とある準備動作に入った。

    右腕を強く引き、体幹を小さく、しかし、急激に右回旋させる。
    左足が腰の高さまで持ち上がり…

    (来たッ! ローキックッ!!)

    狙いは上条の壊れた右足だ。
              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
    だから上条は、右足を前に踏み出した。

    「……ッ!? せいッ!!」

    上条の行動に不審感を感じながらも、垣根はそのまま強烈なローキックをぶち込んだ。

    ゴッ!!!

    肉と肉、骨と骨とが激突する鈍い音が響く。

    垣根は、確かに上条の右足に致命的なダメージを負わせたことを確信した。

    「終わりだッ!!」
    「…ああ、終わりだッ!!」

    不意に、上条の左手が伸びる。
    勝利を確信した垣根の一瞬の隙をついて、上条は左手で垣根の左手首をガッチリと掴んだ。

    「てめッ!」
    「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

    全身全霊の力を振り絞って左手を手前に引く。

    「な、なにッ!!」

    垣根の左半身が強引に引っ張られ体勢を崩す。
    そして、上条の眼に垣根の後頭部が見えた。

    「ぐっ… ああぁぁぁ!!」

    壊れた右手で強引に鉄拳を作る。
    激痛が脳を引き裂くが、そんなものには構ってられない。

    「チィッ!」
    「じゃあな、三流超能力者。他人のオンナに手を出すからこうなるんだぜ」

    引き絞る左腕の動きと連動するように、右腕を回転させる。
    狙うは、垣根帝督の頸椎――!

    ドガァァ!!!

    強烈な右フックが垣根帝督の後頭部に命中する。
    眼球が飛び出そうなほどの衝撃に、垣根の視界が真っ赤に染まる。
    『未元物質(ダークマター)』で回復しようにも、未だ上条の左手で身体を掴まれているためか、上手く能力が使えない。

    「くそ、が……」

    後頭部を殴られたからか、四肢が麻痺して上手く動かすことが出来ない。
    強靭な精神力でなんとか継ぎとめていた意識が、とうとう朦朧とした。

    「ぐ……」

    カクン、と垣根の身体から力が失われる。
    垣根の左腕を掴んだまま上条は、油断せずにそのまま垣根を後ろ手に拘束した。

    「……ふう」

    大きく大きく息を吐き出し、この夜の全ての戦闘が終了した。

    667 = 1 :

    「もぅ… 無茶しすぎ……!」

    いつの間にか地面に降りていたのか、麦野が慌てて上条に駆け寄る。

    「わりぃ、けど、沈利が無事で良かったよ」
    「それでアンタが重傷だったら意味ないわよ…」

    上条の有様は酷いものだ。
    特に、無理に使った右手首は、完全に関節方向とは違う向きに曲がってしまっている。

    「早く病院に…」
    「待った、それよりコイツはどうする?」

    上条が拘束した垣根を示す。

    「…負けた暗部を掃除していたスナイパーは、そいつが潰したらしいから、あんまり気は進まないけど、『上』に連絡して回収に……」

    麦野がそう話した瞬間、突如、ガソリンエンジン音が鳴り響いた。

    「な、なんだッ!!」
    「当麻、向こうッ!!」

    振り返った上条の眼に、闇に紛れるチャイナブルーのプジョー206が、3人目掛けて爆走するのが見えた。

    「うわッ!!」

    轢き殺されると感じた麦野が、上条を抱きかかえるようにして身を翻す。

    ギャリギャリギャリギャリッ!!!!!

    しかし、麦野の予想とは裏腹に、プジョーは豪快なドリフトを決めて急停止した。
    そして、後部座席のドアが開き、

    「垣根さん、乗ってくださいッ!!」

    改造スクール水着に雨がっぱを着た初春飾利が、小さな身体を精一杯伸ばして垣根の身体をつかんだ。

    「……ッ!!」

    痺れる手足を何とか動かし、初春に引っ張られるようにして垣根がプジョーの後部座席に滑り込む。

    「出してくださいッ!!」
    「オッケーッ!!」

    運転席に座った『心理定規(メジャーハート)』が、ギアとクラッチをリズム良く操作してプジョーを急発進させる。

    後部座席のドアが閉まる瞬間、麦野と初春の目が一瞬だけ交錯した。

    668 = 1 :

    逃げるプジョーの車内で、初春が大きな溜め息を吐いた。

    「こ、こ、こ、怖かったです… 運転が荒すぎですよ…」
    「なに言ってんの、アレくらい普通よ」

    やや親しげに会話を交わす女性2人を見て、垣根が不可解に眉を寄せた。

    「……なんでお前がここにいるんだよ、初春」

    拘束の鍵は渡した。
    『スクール』と関わる必要は、もう無いはずだった。

    「光ディスクの動画を見ました」

    垣根とは視線を合わせず、初春が言った。

    「暗闇の五月計画、プロデュース…… 貴方の行動原理がアレであるのならば……」

    静かに、初春飾利が垣根帝督を見つめる。

    「私は貴方に付いて行きます」

    その言葉に、垣根は朦朧とした意識の中で、「…勝手にしろ」とだけ呟いた。

    669 = 1 :

    「……ま、どっちかってゆーと、ウチラにとってはありがたい展開かもね」

    上条を抱いて地面に、ぺたり、と腰を降ろして、麦野沈利はしみじみと呟いた。

    「いや、ホント。あんなのとは2度と相対したくないわ」

    婚后に身体を支えられながら、結標が2人に近づいて言った。

    「で、先輩はどうすんの? まだやる?」
    「やるわけないでしょ。『アイテム』は今回の件から完全撤退よ」

    麦野が両手を挙げて降参のポーズを取る。

    「…ウチらを騙した上層部には、いつか落とし前つけるけどね」
    「怖いなぁ… ほんじゃ…」

    結標が軍用懐中電灯を操作して、離れた位置で抱き合っていた天井とミサカ00000号をこの場にテレポートさせた。

    「……終わったのか?」

    大事なものを守るように、ミサカ00000号をその腕に抱いた天井が、恐る恐る声を掛けた。

    「ええ、貴方を狙う暗部は全員リタイア。おめでとう、ゴールよ」

    結標の言葉に、麦野が軽く舌打ちをし、天井が深く溜め息を吐いた。

    「……ありがとう、本当にありがとう。先ほどの戦闘を見て、自分がどれだけ危ない橋を渡っていたかを実感したよ」
    「本当よ。あんな化け物が出てくると知ってりゃ、絶対に引き受けなかったわ」

    おどけた調子で結標が言い、婚后がクスリと笑った。

    「はは… それでは、ここからは私たちだけで良い。目的地はすぐそこだ」

    ようやく緊張の取れた表情で天井が言う。
    しかし、そう言って歩き出そうとした天井を、全くの第三者の声が止めた。

    「いや、その必要はないよ?」

    柔らかい声に6人が視線を向けると、いつの間にか昇っていた朝日を背に、カエル顔の医師が立っていた。

    670 = 1 :

    「なにやら騒動があってたみたいだからね。おっとり刀で来てみたら、もう終わっていたみたいだね?」

    カエル顔の医師はのんびりとした口調で言うと、まず上条に近づき、素早く全身のチェックを行った。

    「……うん、君、よく動けたね? 根性以前に、筋の付き方が理想的なんだろうね? ウチの病院なら全治2週間だから、早めに受診してね? とりあえず……」

    カエル顔の医師が、上条の胸部に両手を当て、一瞬だけ力強く手を操作した。

    ゴキゴキッ!

    「ぐっ!」
    「ちょ、ちょっと何やってッ!?」

    上条がうめき声を上げ、麦野が慌てて詰問するが、カエル顔の医師は涼しい顔で答えた。

    「うん、とりあえず、折れた肋骨は元の位置に矯正しておいたから、安静にしていれば肺に刺さる心配はないよ?
     手足の方は、流石に機材がないと無理だね?」

    言われて、上条はさっきよりもずっと呼吸が楽になったのを感じた。

    「あ、ども…」
    「別に良いよ、僕は医者だからね?」

    カエル顔の医師はそう言うと、今度は天井とミサカ00000号に向き直った。

    「さて、君が天井君だね? 僕の患者はそっちかな?」
    「はい、彼女です」

    天井がミサカ00000号の背を押して前に出させる。
    ミサカ00000号は状況がよく分かっていないのか、キョトンとした顔をしている。

    「もらったバイタルデータだと、健康状態は問題ないみたいだね? あとは、病院でしっかりエコー検査をして…」
    「あのぉ……」

    完全に蚊帳の外に置かれた結標が、遠慮がちに声をかけた。

    「別に知る必要も権利も無いかもしれませんけど、どういうことか説明してもらえませんか? 天井さん、貴方の目的って、逃げることじゃないの?」

    結標の質問に、天井がかなり困った顔をする。

    「あー、その… 騙したつもりじゃなかったんだが…… 私の本当の目的は、この人に彼女を託すことなんだ」

    その言葉に、誰よりもまずミサカ00000号が反応した。

    「託す…? マスター、託すとはどういう意味ですか? と、ミサカ00000号は不安を押し殺して申し上げます…!」
    「そのままの意味だよ、00000号……」

    天井がミサカ00000号の頬を撫ぜる。
    その行為に何かを感じたのか、ミサカ00000号が両手で撫ぜる天井の手を掴んだ。

    「ちょっとちょっと! 全ッ然、話が見えないんだけどッ!」

    結標が半切れで怒鳴る。
    その声に、カエル顔の医師が「おや?」といった風に首を傾げた。

    「天井君、彼女たちには、母体のことはきちんと説明していないのかい?」
    「は、はい…」
    「それは迂闊だね? テレポートがどんな負担をかけるか分からないんだよ?」
    「そう、ですね……」
    「あのですねぇ……」

    いい加減、結標が切れそうになったとき、カエル顔の医師が結標の方を向いて言った。

    「彼女、ミサカクローン・プロトタイプ00000号は、妊娠しているね?」

    結標の眼が丸くなった。

    671 = 1 :

    「に、妊娠ッ!!??」

    結標が素っ頓狂な声を上げる。

    「く、クローンって、妊娠できるんですの?」

    婚后も流石に驚いたのか、思わず質問をする。

    「うん、通常、クローンの生殖能力は極めて低い。無いと断言しても良いね?」

    なぜかミサカ00000号がコクコクと頷く。

    「けれども、流石は肉体変化の専門家である天井君だ。彼は完璧とは言わないまでも、一定の生殖能力を持たせることに成功した」

    カエル医師の言葉を、ミサカ00000号が引き継いで答える。

    「ですが、ミサカの生理はとても不定期です。排卵の無い月もありますし、着床の可能性もとてもとても低いのです」
    「そう、本来なら、体外受精すら不可能な妊娠確率なんだね。なんだけど…」
    「ミサカはマスターとのらぶらぶセックスで見事に妊娠しました! 排卵誘発剤もオギノ式も何も使わずです! と、ミサカ00000号は頬を赤らめながらマスターとのラブラブ度をアピールします」

    微妙な雰囲気が流れた。

    「…つまり、妊娠確率ほぼ0%だったけど、ヤリまくったおかげで見事に命中した、と」
    「軽く言うけど、これは奇跡に近い出来事だね? はっきり言えば、学会で発表するレベルの出来事だね? できないけど」

    はぁぁぁぁぁぁ…… と結標が盛大な溜め息を吐いて天井を見た。

    「天井さぁん… ホント、最初に言っておいてよ…」
    「すまない… 本当に、すまない…」

    天井が顔を真っ赤にして何度も頭を下げる。
    しかし、それで毒気を抜かれたのか、結標は両手を肩の高さまで上げて、首を、ふるふる、と左右に振った。

    「ということは、最初から天井さんは学園都市外に逃げるつもりはなくて、そこのお医者さんのところに2人して保護されるのが目的だったのね…
     そして、逃げる過程で、情報に踊らされた『暗部』を釣る生餌になった、と……」

    結標の言葉に、麦野が再び舌打ちを打つ。
    だが、天井はゆっくりと首を振って言った。

    「ほとんど正解だが、1つだけ違うところがある」

    そして、ミサカ00000号の顔を正面から見て、言った。

    「保護されるのはミサカ00000号、君だけだ」

    ミサカ00000号の眼が大きく見開かれた。

    672 = 1 :

    「どうして… どうしてですか!? と、ミサカ00000号がマスターに申し上げますッ!!」
    「それが、学園都市が出した条件だからだ。『妊娠したクローン体』という成果は保護されるべき対象だが、研究に失敗した研究者はそうではない」

    天井は淡々と語った。

    「今夜の逃亡が成功したのならば、お前の身は学園都市が最後まで面倒を見てくれる約束になっている。私は……」

    少しだけ息が詰まった。

    「私は、処分されるだろう。レディオノイズ計画で、私は不必要に学園都市の闇に触れてしまった。野放しにはされないだろう…」
    「そんな……」

    ミサカ00000号が口を押さえて絶句する。
    そんな彼女の肩に手を置いて、天井が噛んで含めるように言い聞かせた。

    「分かってくれ。君を生かす方法はこれしかなかったんだ…
    「嫌です… 嫌です…ッ! マスターが居ないと、私は生きていけません……」
    「生きてくれ、頼む。僕のためにも、僕と君との子どものためにも…」
    「嫌です、嫌ですよぉ……」

    とうとう、ミサカ00000号が泣き崩れる。
    小さな声で「嫌です、嫌です…」と連呼する。

    「…そういうわけだから、できればこれからもこの娘と…… ぶふぉッ!!」

    次の瞬間、天井が結標の右ストレートでぶっ飛ばされた。

    673 = 1 :

    「……これ、かなりムカつきません、先輩?」

    ハァハァ、と荒く息を吐きながら結標が言う。
    すると、麦野が、ゆらり、と立ち上がって「そうね…」と同意した。

    「ヤルだけやって、妊娠させといて、あとはポイとか、最低とかそういうレベルじゃないわね…」

    かなり頭に来ているのか、麦野の周囲に『原子崩し(メルトダウナー)』が漏電している。

    「最後まで責任持つのが男だろうがぁ!!」

    倒れた天井の顔面に、麦野のサッカーボールキックが炸裂する。
    さらに天井が吹っ飛ぶ。

    「はいはい、戻っておいで~」

    が、結標が即座に『座標移動(ムーブポイント)』を使って手元に天井を引き戻す。

    「しかも何? 『僕のため』って? オンナに十字架背負わせて楽しい? ねぇ、楽しい?」

    結標の容赦のないストンピングが天井の顔面を連打する。

    「がっ、や、やめッ!!」
    「はい握手~」

    助けを求めて必死に手を伸ばす天井の両手を、麦野が両手とも握る。そして、

    「焦げろや」
    「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」

    限定的に展開した『原子崩し(メルトダウナー)』によって、天井の両手の平が真っ黒に焼かれる。

    「ま、マスターッ!!」

    ミサカ00000号が慌てて駆け寄ろうとするが、それを婚后が途中でブロックする。

    「おっと、今は近づかないほうが良いですよぉ」
    「で、でもマスターがッ!!」

    ミサカ00000号の心配通り、天井は美女2人の陵辱を一身に浴びてズタボロになった。
    顔は原型を留めないほどに変形し、両手は骨が見えるほどに炭素化している。

    「あがが……」
    「…まぁ、このくらいにしておいてあげる」

    既に気絶している天井を一瞥して、麦野が荒い息を整える。

    「君ら、無茶するねぇ…」
    「別にいいでしょ。お医者さんはそこにいるんだし」
    「そりゃそうだけど……」

    カエル医師がかなり引きながら苦笑いをする。

    「マスターッ!!」

    ようやく解放されたミサカ00000号が天井に駆け寄り、必死に天井に声を掛ける。

    「マスター、マスターッ!!」
    「ああ、見た感じ、命に別状はなさそうだね。もちろん、手当ては必要だけど…」

    カエル医師が苦労して天井を担ぎ上げる。

    「顔は… こりゃ、元の形には戻らないなぁ。うわぁ、手は再生できないから、義手になっちゃうねぇ…」
    「酷い…… なんてことを……」

    ミサカ00000号が涙で潤んだ瞳で麦野と結標を睨みつける。
    だが、次のカエル医師の言葉で、その表情が変わった。

    「これは、僕の病院に長期入院しないと駄目だね。研究段階の再生技術も使って… ああ、これは年単位で治療に時間がかかりそうだ」
    「え…?」

    ミサカ00000号がカエル医師を見る。
    カエル医師は、全然格好良くないウインクをしてみせた。

    「決して自分の患者を見捨てないのが僕のポリシーなんだね? 僕の患者になったからには、治るまでは、最後まで僕が面倒をみるよ。無論、統括理事会が何を言おうと関係は無いさ」
    「そ、それじゃ…」
    「まぁ、とりあえず君は元気な赤ちゃんを産むことを考えなさい。ああ、名前はしっかり2人で考えること、いいね?」

    ミサカ00000号の瞳から、先ほどとは違った涙が流れ落ちた。

    「はい… はい…! 元気な赤ちゃんを産んでみせます。と、ミサカ00000号は高らかに宣言します!!」

    674 = 1 :

    それから2週間後―――

    「ローション塗った?」
    「塗った」
    「抗生物質飲んだ?」
    「飲んだ」
    「洗腸はちゃんとできた?」
    「浣腸3回して水しか出てこなくなった」
    「よくほぐした?」
    「指3本余裕」
    「……よし、入れていいわよ」

    麦野のマンション「Meltykiss」、麦野のベッドルーム、通称「インランの間」(絹旗命名)。
    クィーンサイズのベッドに仰向けになった麦野が、自ら両脚を高々と抱え上げて、臀部の深いところまで男に見せ付ける。

    この2週間、暇を見つけては拡張を繰り返し、つい先ほどまでも男の指で散々弄られ続けた菊のつぼみが、妖しくその姿を見せた。

    アナルはヴァギナより低い位置にあるため、麦野の腰の下にクッションを入れて位置を調節する。
    高鳴る動悸を抑えつつ、長大なペニスの先端を麦野のアナルに軽くキスさせると、麦野も緊張しているのか、アナルの皺がきゅ、と収縮した。

    「……もうカミングアウトしちゃうけど」
    「え、なに?」

    紅潮した頬を見せたくないのか、麦野がそっぽを向いたまま言う。

    「アタシ、アナルは初めてだから」
    「え、あ、うん……」

    この2週間、『退院したらアナルセックスさせたげる』と、麦野主導で準備を進めてきたから、この発言は正直意外だった。

    「それじゃ、さ…… 無理しなくても良いんだぜ?」
    「ううん、いいの… ていうか、その……」

    麦野にしては珍しく言いよどむ。

    「……処女、貰って欲しい。ここしか残ってないから……」

    消え入りそうな声でそう呟く。
    上条は、心臓の鼓動が一段階早くなるのを感じた。

    (やべぇ… 今すぐガンガン犯してぇ……)

    オンナにここまで言われたら後には引けない。
    そもそも、上条本人も楽しみにしていたのだ。

    675 = 1 :

    「じゃ、入れるぜ…」
    「うん、ゆっくりね……」

    亀頭が肛門にめり込むと、麦野が「はぁぁぁぁ……」と腹式で呼気し、同時に下腹部に力を入れていきんだ。

    「お、おおぉぉぉぉ…!」

    抵抗のあった肛門が、ふわっ、と口を開き、その間に上条はエラの張った亀頭を完全に肛門の中に収めることに成功した。

    「ちょ、チョイストップ!」
    「お、おう!」

    違和感が凄まじいか、それとも痛みがあるのか、麦野がペニスの進行を止めて、「ふぅー… ふぅー…」と長く長く深呼吸を繰り返す。

    「…落ち着いた?」
    「うん、いいよ… 痛がっても構わないでいいから、最後まで入れて…」

    麦野が腕を伸ばして上条の首に手を回す。
    いつもだったら、これは「キスして」の合図だが、今は違う意味があると上条は感じた。

    「いくぞ…」

    宣言と共に、ペニスを直腸に、ズズッ、ズズッ…! と進入させる。
    途端に麦野の顔が苦痛に歪む。

    本来は「出す穴」に「入れ」られる違和感と、狭い直腸を長大なペニスが蹂躙する圧迫感を感じる。

    平均よりもずっと大きい上条のペニスを初めて受け入れるのだ。
    きちんと準備をしていなければ、恐らく佐天のように肛門が裂けてしまっていただろう。

    「大丈夫か…?」
    「平気… 平気だから…… 最後までお願い……ッ」

    首に回した手が背中に降り、思わず爪を立てて、カリカリ、と上条の皮膚を削る。

    事前にローションを直腸内に注入してあったせいか、肛門を抜けてからはそれほど抵抗を感じない。

    「はあああぁぁぁぁぁ!!」

    麦野が肺腑の空気を全部吐き出すような大呼気をすると同時に、上条が最後まで腰を進める。
    互いの陰毛がわずかに触れ合い、上条のペニスが全て麦野の直腸に収まった。

    「……入った?」
    「ああ、入った、全部……」

    思わずホッとして脱力する麦野の顔に、上条がキスの雨を降らす。

    「ぎゅってして… 強く……」

    挿入したペニスがあまり動かないように注意して、上条は言われた通り麦野を強く抱きしめた。

    676 = 1 :

    「…ありがと」
    「うん? いや、初めてなら優しくしねぇと」
    「そうじゃなくて… あの時無茶して助けてくれたこと……」
    「…ああ」

    垣根との戦闘のことだと思い至り、上条は得心して頷いた。

    「もうちょっとカッコよく倒せたらよかったんだけどな、ハハ…」
    「なに言ってるの。十分カッコよかったわよ」

    麦野が上条の頭を自慢の豊乳に押し付ける。
    甘酸っぱい麦野の匂いが、上条の鼻腔いっぱいに広がった。

    「あんなにボロボロになってさ… こんな色情魔の為に…」

    上条を幸せ抱擁から解放して、正面に見据える。

    「前に言ったかもしれないけど、もう一度宣言しておくわね。アンタはアタシの男で、でも、それ以上にアタシはアンタの女よ」

    真剣な目つきで言う。

    「だからね…… 心からのお願い… あんまり無茶しないで……」

    スッ、と麦野の顔が近づき、上条と静かに、緩やかに口唇を合わせる。

    「あぁ、分かったよ。出来る範囲で無茶することにする」
    「…はぁ、言うだけ無駄なのかしらね」

    溜め息を吐くが、その表情は穏やかなものだ。

    「ね、動かないの?」
    「いや、だってきつそうだし」
    「少しぐらいなら我慢できるわよ。それとも、私のお尻、気持ちよく無いの?」

    麦野の表情がやや不安げになる。

    「まさか… 入り口はぎゅうぎゅう締め付けてくるし、ナカはあったかいし… すげぇ気持ち良いよ」
    「じゃ、動いて。アタシも気持ちよくシテ…」

    ここまで言われて動かないのは、男子としての沽券に関わる。

    上条「じゃ、いくぞ」と前置きして、ゆっくりと埋め込んだペニスを抜き始めた。

    「おおおぉぉぉぉ…!」

    長くて太い肉棒がゆっくりと抜かれる感触に、麦野が擬似的な排泄感を覚える。

    (こ、これ… 結構良いかも……)

    人間は、何かを「出す」際に快感を覚える生き物だ。
    エラの張った亀頭が、腸壁をごりごり擦られながら排出するのは、麦野にとって未体験の快楽だった。

    「それ、良い…」
    「ん?」
    「出すの… 出される時、気持ち良い…」

    元々、麦野は快楽に対して感度が高い。
    初体験のアナルセックスだが、麦野の身体はしっかりとそれに順応しつつあった。

    677 = 1 :

    「こうか?」

    再び根元までペニスを押し込んで、今度もゆっくりとペニスを引き出す。

    「あぁぁ… うん… それ、良いわ… 気持ち良い…」

    ズズッ、ズズッ、と亀頭が腸壁を往復して擦る。
    単調で静かな抽挿だが、上条のほうもこれはこれで気持ち良いものだった。

    (肛門の締め付けってすげぇな…)

    ペニスの竿を包む肛門の締め付けがヴァギナの比ではない。
    まるで、強力な輪ゴムで締め付けられ、ごりごりと上下にしごかれているようだ。

    「う、締まる…ッ!」
    「ん? コレが良いの?」

    呟いた上条の一言で察した麦野が、肛門をぎゅっと締める。

    「うわッ!」
    「あ、痛かった?」
    「いや、全然… すっげぇ締まったから驚いただけ…」

    肛門括約筋は随意筋であるため、かなり能動的に動かすことができる筋である。
    元々、男を悦ばせるために色々と鍛えている麦野だから、この筋はかなり自由に動かすことが出来た。

    「こんな感じ?」
    「おっ、絶妙…」

    本気で気持ち良いのか、上条が目を閉じて深呼吸しながら抽挿を繰り返す。
    ぬめりが少なくなるとローションを追加する。

    その内に、だんだんと抽挿のスピードが速くなってきた。

    「あっ、あっ、あぁぁ……」

    ぞりぞりと腸壁を擦られて、麦野が歓喜の喘ぎを上げる。
    感じている証拠に、ペニスを飲み込むアナルのすぐ上の穴から、夥しい愛液が垂れ流れている。

    「はぁ、はぁ、はぁ… くっ…」

    感じているのは上条も同じで、既に何度も射精の波をやり過ごしている。

    不意に、上条と麦野の視線が交錯した。

    「そろそろ…」
    「うん… 最後は激しくシテ…」

    そう言われて、上条が改めて麦野の両脚を抱え上げ、身体を二つに畳んだ屈曲位にする。

    678 = 1 :

    「…イクぞッ!!」

    短い宣言と共に、上条が猛烈なピストン運動を開始する。

    びちゃ、びちゃッ!!

    いつものセックスとは位置がずれ、上条の下腹部が麦野のヴァギナを叩く。
    そのたびに、溢れた愛液がしぶきを上げて飛び散る。

    「あッ、すごッ… すごい……ッ!! ごりごり、アタシのお尻がごりごり削られてるぅ……!!」

    完全にアナルセックスの感じ方を覚えたのか、麦野が通常のセックスと変わらぬ喘ぎ声を上げる。
    フリーになった両手がベッドのシーツを引き絞り、なんとか押し寄せる快楽に耐えようとする。

    「イクならイッちゃえよッ! アナルセックスでイッちゃえ!!」

    こちらもあまり余裕がない上条が激しく腰を動かして叫ぶ。

    「だって、だってお尻だよッ!? 絶対に痛いまま終わると思ってたのにッ!!」
    「それだけ、俺と沈利が愛し合ってるってことだろッ!」
    「ばかぁ!! こんな時にそんな事言わない!!」
    「こんな時だからじゃねぇか!」

    麦野を気持ちよくイカせたい。

    その気持ちが、ほとんど無意識に上条の手を動かした。

    「あ、馬鹿、今弄ったらッ!」

    上条の左手が伸びて、固く隆起したクリトリスを摘む。
    少しの間、抽挿を止めて麦野の顔を覗きこむと、麦野は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして「イヤイヤ…」と首を振った。

    「おかしくなる… 今弄られたら、絶対におかしくなっちゃう…」
    「…見せてくれよ、おかしくなった沈利を…ッ!」

    ぐにゅ。

    猛然とピストンを開始すると同時に、左手で固くしこったクリトリスを押し潰す。
    瞬間、

    「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

    部屋中どころか、マンション中に響きそうな大声を上げて、麦野が絶頂に達した。
    同時に、痛いくらいにペニスを締め付けられた上条も限界に達する。

    「く、出る… 出すぞッ!!」

    ドクドクドクドクドクドク……!!

    信じられないくらい大量の精液が、麦野の直腸に注がれる。
    子宮に掛けられるのとは、また違った精液の注入に、麦野の下腹部が悦ぶように痙攣した。

    679 = 1 :

    「はーッ、はーッ、はーッ!!」

    数百メートルの全力疾走を終えた後のように、2人が荒く激しい呼吸を繰り返す。

    「はぁ、はぁ… 抜くぞ?」

    声を掛けて、上条が萎えたペニスをずるずると引きずりだす。
    それまで限界に拡げられていた肛門が閉じるより早く、注入された精液が、ごぽっ、とあふれ出てきた。

    「うわ… エロ……」

    ヴァギナから精液が逆流するシーンは何度も見てきたが、これがアナルになるとまた違った淫靡さがあった。

    「えっと、たしか、終わったらすぐに洗うんだったよな…」

    抗生物質は飲んでいるが、それでも感染症が怖い。
    事前のレクチャーではそう教えられていたが、

    「……待って、アタシが綺麗にするから」

    麦野が緩慢な動作で上条にのしかかると、萎えた上条のペニスを大きく口を開けて頬張った。

    「お、おい… 今は」
    「いいひゃら…」

    いくら浣腸を繰り返して綺麗にしたとはいえ、今の今まで腸内に入っていたそれを、麦野は愛おしそうに喉の奥まで頬張った。

    上条にしてみても、禁止されていたから、かなり久しぶりのフェラだ。
    身をもって知ってる麦野のテクニックに、再び血液がペニスに集まるのを感じた。

    「かひゃくなっら…」
    「沈利にフェラされたらそうなるって… つか、解禁… で良いの?」

    ちゅぽん、と堅くなったペニスを口外に出して、麦野が言った。

    「ホントは病室でしてあげるつもりだったんだけどね。大部屋だったから遠慮したのよ」

    そう言って、除菌用のウェットティッシュを使って、丁寧にペニスを拭き清める。

    「うわ、スーッってする…」
    「まぁ、こんなもんで良いかしら…」

    しっかり除菌したのを確認すると、麦野は改めてベッドにあがり、上条に向けてM字に開脚した。

    「さぁ、次はドコの穴を使うの? …ココ?」

    麦野が口を指差す。

    「今日は喉フェラだってしてあげるわよ… それともココ?」

    未だ精液を垂れ流すアナルを指差す。

    「コツは掴んだから、貴方のおちんぽをごしごし擦ってあげるわよ… それとも、ココ?」

    愛液でぐずぐずになったヴァギナを指差す。

    「いつか貴方の子供を孕む、その予行練習、しない?」

    頭がクラッとなる。
    その誘い方は卑怯すぎる。

    「…ンなの、全部味わうに決まってんじゃねーか!」

    理性がぷっつんした上条が、乱暴に麦野のヴァギナにペニスを挿入する。

    愛の睦み事は、まだまだ終わらない……

    680 = 1 :

    ――とある病院のとある病室

    「マスター、マスター。おシモの世話は如何でしょうか? と、ミサカ00000号が尿瓶を片手に申し上げます」
    「…つい30分前にやってもらったばかりだ」
    「では、マスター。性処理の方は如何でしょうか? と、ミサカ00000号が指でのの字を書きながら奉ります」
    「いらん… というか、頼むから病室でそういう事を大声で言わないでくれ…」
    「…わかりました、と言いながら、しれっと右手をマスターの下衣のナカへ…」
    「やめんかッ!」
    「……………ケチ」
    「あのなぁ…… それより、お前の体調はどうなんだ?」
    「はい、万全です。赤ちゃんも、エコー検査で順調に生育していることが判明しました」
    「そうか…」
    「3ヶ月だって… そう、お医者さんが言ったの…… 貴方の子よ…… と、ミサカ00000号が昼メロ風に言い放ちます」
    「ああ、そうだな、私の子だ……」

    天井亜雄が、苦労して視線をミサカ00000号の腹部に向けた。

    「元気に育てよう。…2人で」
    「…はいッ!」

    病室に、涼しげな風が吹いた気がした。



                                                             第3話 妹編 了

    681 = 1 :

    次回予告。


    「え、沈利って、お嬢様だったの?」
    「上条当麻ッ、貴様鼻の下を伸ばしてるんじゃない!」
    「きょうこそははまづらと…」
    「超潮風が気持ち良いですッ!!」
    「…アタシの別荘だってこと、わすれるんじゃないわよ?」


    第4話
    「砂浜でセックスするときは、立ちバックでやんないとまんこに砂が入って怪我するのよね」



    「ええと、自己紹介をします。私は、天草式十字凄教所属の魔術師、姫戸です」

    次回は海で水着回で新キャラでエロエロな予定は未定。

    682 :

    乙。天井くンが取り敢えずフルチューニングと幸せになれてよかったな…!

    次回も楽しみだぜ

    683 = 1 :

    はい終了。

    次回投下はマジで未定。
    ちょっと忙しくなるので。多分、1月中はないです。

    1,2時間でちゃちゃと書いた短編は投下するかもですが、本編は2月以降に。

    それでは次回。

    685 :

    おつ

    687 :

    乙でした

    689 :

    上がってたのか乙!

    690 :

    おとぅ

    691 :

    むぎのん可愛いよむぎのん

    692 :

    アナルファックのやりすぎで肛門がフジツボ状になってしまった麦のんは止めてほしいなと

    693 :

    駄菓子菓子
    猫しっぽ付きアナルプラグを常用してスカートから尻尾が出てる麦のんは見てみたいなと

    695 :

    おかずがたりん
    なるべく早くおかずぅ~

    696 :

    乙、一気読みした

    698 :

    舞ってる

    699 = 698 :

    舞ってる

    700 :

    まだか……


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