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    元スレ垣根「女…だと…」一方通行「…もォ開き直る」

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    551 :

    20日、か…。

    553 :

    まだなのか

    554 :

    言い訳するくらいなら1レスでも進めるべきなのは分かってるんですが一応生存報告だけしておきます
    待っててくれる人本当ごめんね

    全然関係ないけど超電磁砲6巻読み返してたら64ページの一番上のコマに郭ちゃんらしき人物がいることに気付いた!
    さりげなくステイルとかインデックスが出てることには気付いてたけどこれには気付かなかったぜ!!

    「マジで?気付かなかった!」って人いたら是非チェックしてみて下さい

    556 :

    ゆっくり待ってるよー

    557 :

    遅くなって本当~~にすみませんでした!!
    やっと再開です、久しぶりなのでage投下で

    では投下

    558 = 1 :



    ―――





    その男は悪びれもせずに馴れ馴れしい態度で片手を挙げる。


    垣根「久しぶりってとこだな。どいつも元気そうで何よりだ。あ、とりあえずそこの無能力者は死ね」ペッ

    浜面「えっ」ビクッ

    絹旗「………な、なにが……なんで」

    垣根「ん?ああ、お前は相変わらずチビだな絹旗」

    絹旗「はあ!?」

    滝壺「“未元物質”……?」


    滅多なことでは動揺しないマイペースな滝壺が、今においてはただ呆然と硬直している。

    垣根「だから名前で呼んでくれねえか。俺には垣根帝督っつーれっきとした名前があるんだからよ」

    その台詞にはっと我に返った絹旗は滝壺を庇うように一歩前に躍り出ると強く垣根を睨み付ける。


    絹旗「超待って下さい、なんであなたが!!?」

    垣根「どうして復活してんのかってことか?それなら腕のいい医者にちょろっとな」シレッ

    絹旗「はぁぁぁああああああああ!?」

    垣根「まあそんなことはどうでもいい。あと別にお前らブチ殺しに来たりしたわけでもねえから安心しろ」

    絹旗「……………超わけが分からないです……こんなの絶対超おかしいですよ…」

    滝壺「きぬはた、落ち着いて」

    どうどう、と混乱しまくった絹旗を宥める滝壺の顔を垣根はじっと見つめるとそれから小さく首を振る。

    垣根「……流石に他人の彼女寝取る趣味はねえ」フルフル

    滝壺「え?」

    垣根「でもまあその様子だと『体晶』の方はなんとかなってるみてえだな。よかったよかった」

    滝壺「!!」

    浜面「ッッ!」ギリッ

    まるで世間話をするような軽い口振りで放たれたそのワードに
    浜面は固く奥歯を噛み締めると反射的に垣根に掴みかかる。

    浜面「おい、テメェッ…!!滝壺に何かしたら…」

    垣根「あ?」ギロ

    浜面「ごめんなさい」

    滝壺「…………………今のはまづらは応援出来ない」

    浜面「ごめん、ごめんな滝壺……負け犬でごめんな……でもこいつ怖い…」ガクブル


    軽く睨まれただけで一瞬で戦意喪失した浜面に滝壺があからさまに失望の色を滲ませた視線を向ける。

    そんなアイテムの面々をよそに垣根は落ち着き払った態度で辺りを見回した。



    垣根(……なんだ、麦野はいねえのか)


    目的の人物がいないことに露骨にがっかりした表情で改めて目の前の三人の姿を眺め、それからふとあることに気が付く。

    559 = 1 :


    垣根「あん?そういやあの金髪もいねえな。……まあそっちは当然っちゃ当然か。
    裏切り者には制裁を、暗部の基本中の基本だ。『新生』アイテムからは永久追放ってとこか?」

    浜・滝・絹「「「――――――!!!」」」


    何気なく言った台詞にビシッ、と一瞬でその場に凍り付くような亀裂が走る。

    その空気だけで垣根には分かった。



    垣根「………そうか、死んだか。ってことは大方ブチ切れた麦野に粛正されたんだろ?」

    浜面「こ、の……ッッ!」グッ

    せせら笑うように口端を歪ませ正確で残酷な答えを突き付けた垣根に、浜面は今度こそ本気で逆上し拳を握りしめる。

    滝壺「待って、はまづら」ギュッ

    浜面「……滝壺」

    垣根「……、」


    しかしその腕を普段は緩慢な動作の滝壺がしっかと掴み、静かな、それでいて有無を言わせぬ力強い目で制止するとふるふると首を振る。

    咄嗟に拳の力を緩めた浜面に、垣根は軽く白けた調子で髪を乱雑に掻きあげると短く息を吐いた。


    垣根「……フレンダね。確か墓地があんのは10学区だったな」クルッ

    浜面「な……?」

    突然現れたと思ったらまた唐突に背を向けすたすたと歩き出す垣根に
    浜面は理解不能といった驚愕の顔で続く言葉を発することも出来ないまま棒立ちになる。

    と、その時ガンッ!!!と盛大な音がフロア中に響いた。


    浜面がびくっと肩を震わせながら振り返る。

    それは絹旗が目の前のテーブルを思いきり殴りつけた音だった。

    木製の厚いテーブルに大きな凹みが出来ている。
    もっとも彼女が本気で殴っていたら、それこそ凹むどころじゃなく粉々に粉砕されていただろうが。

    それまで黙っていた絹旗が重い口を開く。


    絹旗「………何ですかそれ。まさか超感傷にでも浸っちゃってるんですか?」

    垣根「ああ?」

    絹旗「行ってどうするんです?笑うんですか、皮肉に花でも添えるつもりですか?」




    絹旗「――――あなたにそんな権利が超あるつもりでいるんですか!!?誰のせいでフレンダはっ…!」

    垣根「……オイオイ、言っとくがあの時こっちは正当な取り引きをしただけだぜ?何が悪いんだ?」

    浜面「テ、メェふざけん…!」

    滝壺「はまづらっ!」

    浜面「でもよ!!!」

    滝壺「ていうかはまづらじゃ絶対この人には勝てないから。空気読んでおとなしくしてよう?」ネ?

    浜面「…………ハイ」

    560 = 1 :


    垣根「……ああ、そうか。本当は死んでも仲間は売れないって最後まで抵抗したフレンダに無理矢理拷問なり心理定規の能力なり使ってお前らの情報を吐かせました~、
    ……とでも言って欲しかったか?」

    絹旗「っ!」

    垣根「いいこと教えてやるよ。あいつは随分あっさり口割ったぜえ?それこそこっちの方が拍子抜けするくらいに」

    絹旗「……」ギリ

    垣根「俺は確かに外道のクソ野郎だ。絶対に手ぇ出しちゃいけねえ真っ当な人間まで傷つけてのうのうと生きてるクソ野郎だ。
    他人のことどうこう言えた立場じゃねーよ」

    どこまでも不遜な態度で垣根は言い放つ。

    垣根「……が、お前らの仲間意識だって結局はその程度のもんだったんだろ?なあ?」

    浜面「こいつ……!!」

    滝壺「はまづら、いい加減黙れ」

    浜面「ゴメン」




    垣根「―――つまりテメェの言い分にはムカついた」

    絹旗「……………。超その通りです」

    滝壺「きぬはた…」


    一言も言い返せず、つい今しがたテーブルを叩き潰したその華奢な手を絹旗は小刻みに震わせる。

    誰一人息を呑む者すらないまま、シン、とその場全体が水を打ったように静まり返る。

    けれども次の瞬間、あまりに場違いな明るい声が沈黙のフロアに突如として割り入ってきた。



    「いたいた浜面ー!!にゃあ」

    浜面「!!!?」


    浜面「なっ、フレメア……!」

    浜面「駄目だ、今こっちに来るな!!!」

    フレメア「え?」

    ててて、と小走りに満面の笑顔で手を振りながら近付いてきた少女は、いつにないほど鋭い浜面の剣幕にきょとんと首を傾げる。

    垣根が声のした方に目を向けると、その幼い少女が視界に入った。

    ふわふわとした金髪に大きな青い瞳。まるでアイドルが着ているようなフリルのついた可愛らしい服。
    媚び媚びな甘ったるい声は、しかしこの年の少女としては十分あざとさよりも愛らしさが勝る。

    そして何より、あのフレンダ=セイヴェルンをそのまま小さくしたような……

    561 = 1 :



    垣根「なるほど。そういうことか」

    垣根の洩らした言葉に先んじて絹旗が即座に口を挟む。

    絹旗「……彼女は関係ありませんよ」


    絹旗「ええ、確かにフレンダがあの時仲間を売ってまで逃げのびようとしたのはただの我が身可愛さじゃなく、彼女……自分の妹のためだったというのは超事実でしょう」

    淡々と、機械的に小柄なショートボブの少女は告げる。

    絹旗「でもあなたの言う通り本当に元々フレンダは軽薄なところのある女でしたし、何より命張って仕事してる暗部においてそんな言い訳は超通用しません」

    浜面「……絹旗」

    フレメア「?……??」オロオロ


    絹旗「確かにフレンダは『アイテム』を裏切った超大馬鹿野郎です。麦野の制裁を受けたのは完全に自業自得です」

    絹旗「でも……」


    絹旗「でも、それでも私はフレンダが好きでしたっっ!!!
    お調子者で口が軽くていつもいつも麦野にベタベタしては超お仕置きされて、それでもケロッとしてるそんな能天気なフレンダが……」





    絹旗「好き、でした…」





    自分でも気付かないままに喉の奥に込み上げる嗚咽を絹旗が必死に押し留めようとしたその時、
    ぽん、と頭の上に何かが乗った感触を感じ彼女は顔を上げる。

    それは垣根の手の平だった。


    垣根「さっきの台詞は全面的に撤回する。
    お前らの繋がりが本当はどんなものだったか何も知らねえくせに、勝手にその程度なんて決めつけた俺の完全な失言だ。………悪かったな」ワシャワシャ

    お世辞にも丁寧とは言えない手付きで乱暴に髪を掻き回す垣根に、絹旗は驚いたように大きく目を見開く。そして……













    絹旗「いや超キモいです、触らないで下さい。
    この感触を今夜のオカズにでもするつもりですか?うわ、超キモい。超死ね」ペシッ

    垣根「…………………可愛くねえガキだな」ビキッ

    心底ドン引きした顔でその手を振り払う絹旗に垣根のこめかみにビキビキと青筋が浮かぶ。

    562 = 1 :


    垣根「ったく……『暗闇の五月計画』ね。お前もなかなか難儀な人生送ってきたんだろ?よくここまで生き抜いてきたじゃねえか」

    絹旗「……あなたに同情される義理は超ありません」

    垣根「同情?誰が?俺がお前に?自意識過剰極まりねえチビガキだな。
    今のは賞賛だ。ガキはガキらしく素直に受け取っときゃいいんだよ」

    絹旗「……、」

    どこか小馬鹿にした口調の垣根に絹旗は数拍の間訝しげに眉をしかめ、それからふぅ、と息を吐く。

    絹旗「……分かりました。もうこれ以上止め立てはしません。
    腹立たしいですがどちらにせよ私の『窒素装甲』ではあなたの『未元物質』には超勝てませんし」

    垣根「分かってんじゃねえか」

    絹旗「ただ一つだけ……今日行くのはやめて下さい。多分“そこ”には麦野がいます。
    私たちはともかく麦野があなたの姿を見たら絶対超ブチ切れて――」

    垣根「え?マジで!?麦野いんの!!?一石二鳥じゃねえか、よっしゃあああああああああああああ!!!!!」バッ

    絹旗「……………………はい?」

    垣根「うおおおおお待ってろよ麦野ぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」ドバーン!!


    いきなりガラリと目の色を変えて、止める間もなく全速力でその場から走り去っていく垣根に聡い絹旗はすぐに気が付く。

    あ、やべえ。超ミスった……と。




    後に残された嵐が去った翌日のようなこの状況に、暫く思考が停止したままポカンとしていた一同の中、最初に絹旗がゆっくりと口を開く。

    絹旗「……………滝壺さん。私が後で麦野に超お仕置きされる確率ってどのくらいだと思います?」

    滝壺「……100%、かな」

    絹旗「詰んだ……私の人生超詰みました、ハハ……」ズーン

    滝壺「大丈夫。その時は私も一緒にお仕置きされるから」ポン

    絹旗「……いえ、大丈夫です。もうこうなったら全責任は浜面に超押し付けることにしましょうそうしましょう。
    テーブル凹ませたのも浜面です。店員さーん、この人店の物超壊しましたーーーー!!」ハイ!

    浜面「やっぱそうなるんだね!!うん、分かってた!!分かってたよ俺!!!」

    フレメア「大体、浜面元気出して。にゃあ」

    浜面「フレメア…」

    フレメア「にゃおー。浜面はいつもかっこいいよ?」ナデナデ

    563 = 1 :


    浜面「……ありがとうフレメア…。お前が俺の味方でいてくれるんなら心強いよ」

    滝壺「…………………はまづら?」バキャッ

    浜面「きゃあああああああ!やめて滝壺!当たり前のように素手でグラスぶち割らないで!!」

    フレメア「私知ってる。こういうのって“カカア天下”って言うんだよね。大体、浜面尻に敷かれててかわいそう…」ウルッ

    浜面「ちょっ…!」

    うるうると哀れんだ目で浜面の上着の裾を掴むフレメアに滝壺の目がくわあ!!と開眼する。

    滝壺「……ここぞとばかりにはまづらの点数稼ぎしようとするなよこの小娘が…」ゴゴゴゴゴ

    浜面「もはや滝壺のキャラが別人どころじゃなくなってるーー!!」ガビーン!

    浜面「落ち着け滝壺!一回落ち着いてキャラ戻そう!!な?」

    滝壺「ねえフレメア、今すぐグリンピース食べたいよね?食べるよね?……食べろ」ガシッ

    フレメア「ふぎゃああああああああああああ!!!?」ジタバタ

    浜面「滝壺ーーーーーーーー!!!!」



    ギャーギャーと途端に騒がしくなった浜面たちを尻目に、絹旗は一人垣根の飛び出していったファミレスの扉の方に向き直る。


    絹旗「………垣根帝督、ですか」

    かつて対峙した時の姿を思い出しながらぽつりと呟く。





    絹旗「前はもっと超冷たい目をしてたはずだったんですがね」





    564 = 1 :



    ――――







    百合子「…………どォしてこうなった」


    垣根とアイテムの面々が一騒動起こしているその最中、一方通行は心底疲れきった声でそう呟いた。

    オリジナルにあらぬ勘違いをされ完全に意気消沈した彼女は今
    喫茶店まで足を運ぶ気力もないままにふらふらと目についた近くの公園に入り頭を抱えながらベンチに座り込んでいる。

    百合子「チクショォ…これならまだ実験のことで恨まれてた方がずっとマシだったわ…」


    頭の中にふつふつと怒りと共に浮かぶのは、当然あの妙に飄々とした老齢の男の顔。

    百合子「あンのカエル…。マジで殺す。アイツだけは殺す。何がなンでも殺す」ブツブツ

    一方通行はぶつぶつと冥土帰しに悪態を吐くが、しかしなんだかんだと言っても彼の腕の確かさは本物なのであり
    事実、自分自身の治療や妹達の調整などで今まで大いに助けられてきている。

    そんな彼を一方通行が殺すことなど出来ようはずもない。

    もっともそのことをよくよく理解しているからこそ冥土帰しもこうして散々に一方通行をからかって遊んでいられるのだ。

    百合子「あれか、やっぱチョーカーの設計図渡させた時背中に拳銃突き付けたりしたこと根に持ってンのか…?」

    大外れである。

    実際は彼の個人的な大いなる野望(※妹達に恩を売ってナース服着用を義務付けること)の為の布石として利用されているだけなのだが
    そんな馬鹿過ぎる事情など知るよしもない一方通行は割と真剣にこれまでの自分のやってきたことを反省し始めた。

    元々能力的には最強と謳われていても精神面においては打たれ弱いことに定評のある彼女は、深く肩を落とし俯き加減に嘆息する。

    百合子「ハァ……」


    565 = 1 :



    「――――どうした嬢ちゃん」


    百合子「……あ?」

    その時、不意にかけられた声と視界に入った足にいつの間にか目の前に誰かが立っていることに気がつく。

    咄嗟に上を向いた一方通行は、しかし相手の姿を目に止めた途端思いきり顔をしかめた。


    百合子(………なンだコイツ)

    時代錯誤な白ランを羽織り、さらにはその下に日の丸だかなんだかよく分からないデザインのシャツを着込み、おまけに額にはハチマキという
    思わず「え?番長ですか?」と聞きたくなるようなあまりに珍妙な恰好の男がそこにいた。

    一方通行は一瞬で「あ、これ絶対面倒臭ェ人種だ」と冷静に判断を下すと、速やかに心のシャッターを固く閉じ即座に無視を決め込む。

    百合子「…………」

    「ん? なぜ話しかけているのに何も答えないんだ?」

    百合子「…………」

    「もしかしてオレの声が聞こえていないのか?」

    百合子「…………」

    「ノックしてもしもぉーし!!聞こえてますかーー!?」

    百合子「…………」イライラ

    「?? ……はっっ!そうか、この子は耳が聴こえないのか!!そういや杖も持ってるしな!
     ん?いやいや、白い杖ってのは確か目が見えない人がつくもんじゃなかったか?」

    百合子「…………」イライライラ

    「む。もしくは外人さんという線も…。
    はろー、ないすちゅーみーちゅー!!ニホンゴワカリマスカーーー!!?」

    百合子「…………」イライライライラ

    「くっ、これでも伝わらないか…! だがしかし!根性出して叫び続ければきっとオレのソウルは届くはず!!
    よっし………くぉぉぉおおおおおんにちはああああああああああーーーー!!!聞っこえてまs…」

    百合子「ああああァァァうっぜェェェェェェェ!!!
    さっきっからうるっせェンだよオマエはよォ!!!」

    「なんだ、聞こえてんじゃねえか」

    あまりのしつこさに耐えきれなくなった一方通行が思わず叫び返すと、相手は呆れた様子で普通の声色に戻り息を吐く。

    百合子「………で?」ジロ

    「うん?」

    百合子「なンなンですかァ何のご用ですかァ、こっちはオマエみてェな暑苦しい奴に何一つ用は無いンでとっとと帰って歯ァ磨いてクソして二度と戻って来ンな」チッ

    566 = 1 :


    「何ってそりゃ公園のベンチで女の子が一人項垂れて泣いていたから声をかけたというただそれだけのことだ!!
    女の涙を止めてやるのが根性ある男の勤めだからな!!!」

    百合子「いや、泣いてねェよ」

    「どうした、悩み事か?オレでよければ話を聞くぞ! 俯いていたら幸せが逃げる!さあその涙のわけを話してくれ!!さあ、さあさあさあ!!」

    百合子「だから泣いてねェつってンだろどいつもコイツも話聞けよマジでェ!!」

    「ところで嬢ちゃん白いな!それにそんな細っこい身体じゃ根性つかねえぞ!ちゃんとメシは食ってるか!?」

    百合子「唐突に話変わり過ぎなンだよオマエは!! 誰が貧弱モヤシd………………まァうン」←※やっぱり否定出来ませんでした


    相手のテンションに乗せられて怒鳴り続けていた一方通行は、けれどそこである違和感に気が付き眉を寄せる。

    百合子「っつか嬢ちゃンって……オマエ俺が女に見えてンのか」

    「なに!?まさか男なのか!?」

    百合子「え?」


    百合子「いや……俺は…」

    投げ掛けられた端的な疑問に言葉を詰まらせる。

    百合子(前々からたまに女だと思われることはあったがこれは…)

    百合子(……、やっぱり確実に身体は女に近付いてきてるってこと、か…?)


    「ちなみに男だった場合殴る!!!!」グッ

    百合子「――――――は?」



    百合子「え、え? おい意味が分か………ああああ拳握ンな構えンな振りかぶンなマジで殴るつもりかよオマエ!?」ビクッ

    「当然だ! 女ならいざ知らず大の男が一人でじめじめ泣き腐ってるなんざ言語道断だからな!!一発根性入れ直してやるぜ!!」

    百合子「だから泣いてねェつってンだろォが根性根性うっせェよ、なンなンだよオマエはよォォォォォ!!」

    「ん?オレか?そういえば自己紹介がまだだったな!!」

    百合子「いや別にンなことは聞いてな…」

    「オレの名前は削板軍覇だ!!!!」

    百合子「だから聞いて……………削板?」

    百合子(どこかで……、!!!!)




    百合子(コイツ………第七位か!!)


    男が名乗った名前に一方通行は目を見開く。

    同じレベル5の第七位、削板軍覇。初めて対面した相手に、改めてまじまじとその全身を眺め回す。

    567 = 1 :


    削板「さて、では改めて問おう。お前は男か女か?」

    百合子「え?」

    百合子「あ……俺は…」


    百合子「俺、は…………ってだから拳振り上げンなァァァ!!お、女!女だから!!」バッ

    削板「お、そうか? うんうんそうだよな!こんなひょろっちいナリした男がいるわけねえもんな!!」ハッハッハ

    百合子「だから誰がひょろっちい……うおおォォ、ダメだそろそろ本気でキレちまいそォだ」イライライライラ


    百合子(こンな奴に殴られたら確実に死ぬ……かといって能力使ったりしたら俺が第一位なのバレて余計面倒臭ェことになるような気もする……クソがァ!!)

    削板「時に嬢ちゃん、オレは今人探しをしてるんだが嬢ちゃんは何か知らねえか?」

    百合子「あ、あァ? どンだけ人の言うこと聞かねェンだよオマエ、マジで脈絡なく話変わり過ぎだろ…」

    削板「とある人物にどうしても会わなくちゃならなくてな!!」

    百合子「…………もォイイ。いちいち突っ込むのも面倒臭ェ」

    削板「ちなみにどんな人物かっつーと……って、よく考えたら嬢ちゃんみてえな一般人が知ってるはずもなかったな!!
    すまん、今のは忘れてくれ!!」

    百合子「!」

    その言葉に一方通行がぴくりと反応する。

    百合子(一般人が知らない相手でレベル5のコイツが探している人物…)

    頭の中に一つの可能性が浮かび上がる。


    百合子(まさか垣根……?)


    百合子(だが何故コイツが……確か第七位は表側の人間のはず)

    568 = 1 :


    世界最大の原石と言われ、あまりにデタラメなその力故にまともな解析すら出来ないまま
    莫大とされる潜在能力の可能性にも関わらず仕方なしにレベル5の中では末席に置かれているという異端中の異端。

    しかし一方通行の知る限りこの男は超電磁砲と同じ表を代表する側の人間のはずであり
    暗部の闇にどっぷり浸かっていた垣根と結びついて考えられるような点は見当たらない。

    百合子(いや……でも、)

    垣根は復活してからというもの特に身辺を隠蔽して生活するようなことはしていない。
    それどころか街中でもおおっぴらに何度もその能力を使っている。

    だとしたらこの男の耳に既にそういった情報が入っていたとしても何らおかしな話ではない。

    百合子(仮にこの予想が当たっていたとして何の目的で…)

    削板「おっと、もうこんな時間か。白い嬢ちゃん、すまねえがオレはもう行かなくちゃならねえ!!」

    百合子「え?」

    削板「まあ、とにかく俯いて泣いててもいいことないぜ!女は笑顔が一番だ、元気出せよ!
    じゃあまた縁があったらどこかで会おうぜ!!」クルッ

    百合子「は? あ、おい待っ……」

    削板「うおおおお根性ぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」ドドドドド…





    百合子「……………行っちまった。なンだったンだ一体…」

    百合子「……」


    言うだけ言ってさっさと砂埃を巻き上げながら音速の二倍はありそうな速度で去っていった第七位の後ろ姿をただただポカンと見送った後、一方通行は少しの間考え、そして――






    百合子「まァイイか。垣根だし」

    あっさり結論付けた。





    569 = 1 :

    ここまでです
    ホント遅くなってごめんなさい、次こそむぎのんのターンです

    でもとりあえずソギーが出せて満足!
    ちなみにむぎのんとソギーとモアイちゃんは今後準レギュラー的な感じになる予定です

    ではまた

    570 :

    うぉぉぉぉたまたま覗いたらリアルタイム遭遇ぅぅううう!
    乙です!
    準レギュラーにwwktkとまらない

    571 :

    レベル5は本当に話を聞かないなwwwwww

    572 :

    追いついた
    流石のぐんぱっぱ

    573 :

    お、来てた
    お久しぶり乙乙

    574 :

    ソギーktkr!
    これで勝つる!

    576 :

    おつ!
    麦野準レギュラー化とかどう考えても垣根からの迷惑を被る位置だよなww

    577 :

    浜面......。

    カッコ悪さに研きがかかってるなww

    578 :

    垣根と麦野の組み合わせ好きだから楽しみ

    579 :

    しかし垣根は百合子たんの夫

    580 :

    投下に来た……んだけど今回いつも以上に下ネタ酷い上に地味に長いかも、ごめんなさてんさん

    とりあえず投下していきます

    581 = 1 :


    ――――






    その頃、麦野沈利は第10学区の墓地の前にいた。

    墓地とは言ってもその形状は立体駐車場に似たビルであり、住民の八割を学生が占めるこの街ではこの場所を訪れる者は極端に少ない。

    麦野「……」

    カツカツとハイヒールの音を響かせながらつい今しがた建物内から出てきた彼女の足取りは決して重くはなく、やはりその目元に涙は見えない。

    けれども、背筋をぴんと伸ばして一歩一歩マイペースに歩くその整った横顔には、どことなく物悲しいものを感じさせる何かがあった。


    麦野「ったく……この私がわざわざ超高級な鯖缶持ってきてあげたんだから向こうでちゃんと噛み締めながら食べなさいよねー。
    ………超だって。絹旗の口癖が伝染ったかしら」

    ふふ、と小さく笑みを溢しながら言う麦野は、自分以外誰もいない寂寥感漂うその場所で我ながら丸くなったものだなどと妙な感慨に耽る。

    麦野「ねーえ、フレンダぁ。都合がいいかもしれないけどさ……私、アンタといて楽しかったよ」

    麦野「……もっかい、みんなでプール行きたかったね」

    誰に聞かせるでもない独り言を漏らしながら、かつての底抜けに能天気な仲間の姿を思い浮かべる。

    ……例えば夏のただでさえ暑い日にベタベタひっつかれたり、かと思えば胸を触ってこようとしたり
    呼んでもいないのに勝手に家に遊びに来てはそのまま泊まっていったり
    帰っていった次の日に何故か自分の下着を含む衣類が何枚かなくなっていたり
    後日部屋に盗聴機が仕掛けられているのを発見したり、使ったあとのストローや割り箸をこっそり回収しようとしたり―――





    麦野「…………いや、やっぱあと十回くらいブチ殺しときゃよかったわ」ビキ

    彼女からされた数々の変態的な奇行を思い出してビキリと青筋を立てる。

    その時、ひらりと麦野の足元に何かが舞い落ちた。

    麦野「……あら」


    目を止めた麦野がそれを拾い上げる。
    白い鳥の羽と思われるものがふわりと手の中で揺れた。

    麦野「鳩か何かかしらね」

    フレンダのあの欧米人特有の抜けるような白い肌や青い目、柔らかな金髪をした容姿を脳裏に思い描く。

    もし彼女の背中にこんな白い羽があったらきっとよく似合うに違いない。そう、まるで天使のような……


    そこまで考えて麦野は首を振る。

    582 = 1 :


    麦野「…………いや。いやいややっぱねえわ。羽はねえわ」


    白い羽、という単語に頭の中でとてつもなく気持ちの悪い連想が浮かび上がり麦野はぶんぶんとそれを追い払う。

    麦野「……ていうか妙にいっぱい落ちてんな」

    二枚、三枚と立て続けに落ちてくる羽にそこで初めて違和感を覚える。

    麦野「っつかよく見たら別にどこにも鳩なんて飛んで―――」

    ふと見上げた空には鳥など一羽も飛んでおらず、ただ青い空が広がっているのみだ。

    しかし麦野はそこではたと気が付く。

    何か、そう、つい今しがた連想してしまったとてつもなく気持ちの悪いものをそのまま具現化させたような――……




    垣根「麦野ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」バッサァァァアアア!!!

    麦野「はあああああぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!???」


    583 = 1 :



    垣根「よお、久しぶり」スタッ

    麦野「」


    麦野「えっ、えっ…?」

    垣根「あー、みなまで言うな。お前の言いたいことは大体分かってるから」

    麦野「は……、」


    麦野「未元、物質……?」

    垣根「名前で呼んでくれよ。出来れば下の名前希望。何なら俺もお前のこと沈利って呼ぶから」

    麦野「あ゛ァ!?」

    麦野「ちょっ待て、テメェグチャミソのスクラップになってたはずだろうが!!
     私はちゃんとこの目で見てんのよ!!!」

    垣根「うん? それに関しちゃお前も一緒だろ」

    麦野「え…?」

    垣根「その顔……特殊メイクか? あと片眼と片腕も作りもんだろ」

    麦野「!!」

    あの絹旗に間近で見ても分からないと言われた特殊メイクと義眼を一目であっさり見抜かれて麦野は動揺する。

    やはり目の前にいるのは偽物なんかじゃなく、間違いなく本物の第二位。その観察眼は人並外れている。

    垣根「ま、俺も補強はしてるんだけどな」

    麦野「…………、一体何の用よ。まさか――」

    垣根「あー、早まるなって。そんなシリアスな展開じゃねえから安心してくれ」

    麦野「ふざっけんな、こっちはテメェに二回もやられた鬱憤が溜まりまくっててしょうがねえんだよ!! そのスカしたツラ吹っ飛ばされてえのか!!」

    垣根「相変わらず気が強いなお前は。いいな、その鼻っ柱へし折って屈服させてやんのも悪くねえ――――とかなんとか言ってみてえとこだが本当にそういうんじゃねえよ。
    お前に会いにってのも目的の一つだがとりあえず俺が用のあんのはそっちだ」

    麦野「あ…?」

    584 = 1 :


    ちらりと垣根が視線を向けた先、今まさに麦野が出てきたばかりの寂れたビル。

    麦野「……アンタ、」

    垣根「どうだ麦野。あいつに会わせてくれねえか」

    麦野「絶っっっっ対にお断りよ。ていうかナニ? やっぱ脳ミソぶち割られてオカシくなっちまった訳? 今更何言ってんだテメェは」

    垣根「あー、それさっきも絹旗に言われた」

    麦野「ああ!? テメェあいつらに…っ」

    垣根「だから安心しろって。手ぇ出したりなんざしてねえから。っつか今ので確信した。お前らやっぱ繋がり強ぇのな」

    麦野「はあ?」

    垣根「正直ナメてた。フレンダの奴のことあっさり切る程度の仲だってな。でも違ぇってのはよーく分かったぜ」

    麦野「……、」

    麦野「買い被んな。私はフレンダをぶっ殺した張本人だ、本当ならあいつらと一緒にヘラヘラやってていいような身分じゃないのよ」

    垣根「その割にゃ随分とあいつらはお前のこと慕ってるみたいだったぜ?」

    麦野「うっせーよ、上から臭ぇ台詞ぶっこいてんじゃねーぞクソメルヘン。
    言われなくても分かってるし、もう吹っ切れてんのよこっちは。……少なくともそう言い切れるまでには成長出来た」

    垣根「そうか。ならそれでいい」

    麦野「……」

    垣根「まー、アイテムの連中置いて一人でここまで来てるって時点でお察しってとこだしな。そっちはまあもういいか」

    麦野「……私に会いに、ってのは何なのよ?」

    垣根「そうそう。麦野、お前を口説きに来た」サラッ

    麦野「……………………は?」

    垣根「だから口説きに来たんだって」

    麦野「」

    垣根「俺の女にならねえか、麦野」

    麦野「ハァ!!? 意味分かんない、ホント何言ってんだよテメェ私に何したか分かってんの!?」

    垣根「えっ、まだナニもしてねえけど」

    麦野「そういう意味じゃねーよ!! 二回も! 思いっきり叩き潰してくれただろうが!! 忘れたとは言わせないわよ!」

    垣根「えー、あれはお互い仕事でやったってことでサラッと水に流せばよくねえ?」

    麦野「いい訳ねーだろ!!」

    585 = 1 :


    垣根「とにかく俺は真剣だ。本気でお前を落としに来た、だからお前も真剣に答えてくれ」

    麦野「……、」

    真面目腐った表情で真摯にこちらの顔を見つめてくる垣根に、警戒し構えていた麦野の腕が初めて弛む。


    麦野「……本当に本気で言ってるの?」

    垣根「当たり前だろ。俺にはお前しかいねえよ」フッ

    ※初対面の番外個体を速攻で口説こうとしました


    麦野「…………そう」

    麦野の静かな声色を合図と取った垣根は小さく笑うとゆっくり彼女の方へと近付いていく。

    垣根「さあ麦野。これからは俺がお前を――」

    麦野「誰がテメェなんかに靡くか死ねオラァああああああああああああああ!!!!」ガッ!!

    垣根「ほああああああああああ!!!?」キーン


    その時、何の躊躇いもなく蹴り上げられた麦野の足が深く深く突き刺さった。

    …………垣根の股間に。



    垣根「お、おま……それだけは、それだけは反則だろうが…」ヨロッ

    完全に気を抜いていたために能力で防御していなかった垣根は、もろに急所にダイレクトアタックを食らって悶絶する。
    我々の業界ではご褒美です。

    麦野「うげ、服越しとはいえ汚ぇもん触っちまった…」オェ

    垣根「……ちくしょう…これならまだ口だけで滅多に手は出してこねえ一方通行の方がマシだよ…」ヨロヨロ

    麦野「は? 一方通行…?」


    麦野「ちょっと待て、なんでそこであいつが出てくんのよ」

    垣根「ん? ああ、実は俺が復活してからあいつとはなんやかんやあってな。
    今は和解してんだよ。お前らに会う為に浜面に連絡取ってくれたのもあいつだ」

    麦野「はあ? ……いやアンタら殺し合いした仲でしょ? ていうかテメェが冷蔵庫になってたのあいつのせいだろ」

    垣根「それは俺の自業自得であってあいつのせいじゃねえよ。まあそれでも確かに前は憎んでたし現在進行形でムカつくとこは多々あるけど。
    ……それ以上にあいつと知り合って教えられたことがある。今は友達だ」

    麦野「…………友達?」

    垣根「にしてもあいつもなあ。いい奴だし好きだけど……あの体型とキツ過ぎる性格がもうちょっとどうにかなればなあ」ブツブツ

    麦野「は?」

    麦野「え、キモい。テメェあのモヤシまでそういう対象に入れてんの? ホモかよ、キメェ」

    垣根「え?」

    麦野「あ?」

    垣根「……あれ、お前浜面から何も聞いてねえの?」

    麦野「え、え?」

    586 = 1 :


    垣根「あいつ女だぞ」シレッ

    麦野「…………………マジ?」

    垣根「マジマジ」アッサリ

    麦野「いや騙されないわよ。つまんねえ嘘ついてんじゃねーよ」

    垣根「だからマジだって。ちなみに名前は鈴科百合子」←※軽薄が服を着て歩いてる男(一方通行談)

    麦野「………………」


    麦野「確かに男だか女だか分かんない見た目してるとは思ってたけど……まさか本当に女だったとはね」

    垣根「まああいつのことは今はどうでもいい。麦野、俺と付き合ってくれ。毎日お前の胸を揉ませて欲しい」

    麦野「死ね。テメェの粗末なモンでもしごいてろ×××野郎」

    垣根「……なんでこう会う奴会う奴基本的に俺に対して辛辣なんだよ…。優しいのは黄泉川お姉さんたちぐらいだよ…」


    垣根「あと麦野、これだけは聞き逃せねえから言っておく。――――俺のは、デカい」キリッ

    麦野「どうでもいいんだよマジで死ねよテメェェェェェェ!!!!」ブンッ!

    垣根「おっと、悪いが二度は食らわないぜ」サッ

    麦野「ッチ!」

    垣根「そうだな、とりあえず食事でも行かねえか? なんでもお前の好きなもの食わせてやるよ。
    フランス料理でもイタリアンでも中華でもいい」

    麦野「死ねよ○茎」

    垣根「おい、誰が包○だ」

    麦野「あぁ? どうせ真性だろテメェなんざ」

    垣根「真性でも仮性でもカントンでもねえよ。ズル剥けだから、俺ホントズル剥けだから!!!」

    麦野「ズ○剥け連呼してんじゃねーよマジでブチコロすぞテメェええええええええええええ!!!!」

    垣根「ああ!? いくら麦野でもマイサンまで侮辱すんのは許さねえぞ!!
     なんなら証拠見せるか? 俺の伝家の宝刀拝ませてやろうかコラ!!」カチャカチャ

    麦野「なにズボンに手ぇかけてんだコラァァァァァァァ! 死ねよ! ホント頼むから死ねよ!!」

    垣根「まあ流石に今のは冗談だ。いくら俺の未元物質ジュニアに常識が通用しないからって人前でストリップかますような変態的趣味はねえ」ハハッ

    麦野「既に十分変態だよテメェは」

    587 = 1 :


    垣根「まあとにかく食事行こうぜ? なんなら個室サロンでもいいけど」スタスタスタ

    麦野「誰が行くか!! って、ちょ、近寄ってくんじゃないわよバカ!!」バッ

    垣根「ははっ、能力を展開した俺にお前が勝てねえのはよくよく分かってるだろ?
    さあこれから二人で楽し………………アレ?」ピタ

    麦野「……?」

    垣根「あれ? あれあれ、あるぇ~?」



    ここで一つおさらいしておこう。

    現在の垣根の身体は一度はグチャミソのスクラップになってもはや再生不可能と思われたのを、生え抜きの名医の手によって無理をしてこしらえたものだ。
    肉体的には特に問題はないものの、その能力は不安定な状態であり補強がなされている。

    肩と足に取り付けた電極がその圧倒的な力の暴走を防ぎ安定させるための低周波装置として働いているのだ。

    しかし今の垣根はつい先ほど男にとっての心臓ともいうべき急所に思いっきり麦野の渾身の蹴りがクリティカルヒットしたばかりであり、
    またここまで来る為にずっと能力を使って飛んできた。

    超能力というものにはその力が強力であればあるほど繊細かつ複雑な演算が必要となる。
    万全な状態でないと上手く扱うことなど到底出来ないのだ。


    つまり簡単に言うと羽が出ない。


    垣根「………………、えーっと」

    途端に青ざめていく垣根に麦野は始めこそ目を丸くしていたが、
    だんだんとその切れ長の大きな瞳は獰猛な獣のそれに変わり、口元は歪に左右に引き裂かれていく。

    麦野「……どうやらご自慢のあのメルヘンな羽は出せないみたいねーえ、『未元物質』?」

    カツコツと、足音が近付いてくる。

    垣根「……待て麦野。落ち着け。人間には対話がある。話し合おう。
    っていうかそもそも俺ただ食事に誘っただけじゃん? 別にいきなり取って食おうとしたわけではないじゃん?
    だからそんな…………待って待って待って、え、ちょ…」

    麦野「―――――オ・シ・オ・キかくていね?」ニコォ


    588 = 1 :






    「アッ――――――!!!!!」











    589 = 1 :




    ―――翌日、とあるファミレス




    百合子「……」

    垣根「……」

    百合子「一つ尋ねてもイイか垣根」

    垣根「なんだ」

    百合子「オマエなンでそンな全身ボロッボロなンだよ」

    垣根「…………………」

    百合子「……うン、まァ大体何があったかは察してるから敢えて深くは突っ込まねェでおいてやるが」

    垣根「……助かる」

    百合子「だから最初から忠告しといたっつーのに…」ハァ

    垣根「おい、いきなり突っ込んでんじゃねーかおいコラ」

    百合子「どォせキメェこと言いながら迫ったンだろこの童貞が」

    垣根「……」

    百合子「ったく…。つーかこっちもあの後いろいろあって結局喫茶店行きそびれたしよォ…」

    垣根「いろいろ?」

    百合子「……あー」

    百合子(第七位のことだけは一応言っとくか?
     でもあの根性バカが探してンのが垣根って決まった訳でもねェし、言ったからどォなるもンでもねェしな。
    コイツならなンかあったとしても早々やられねェだろォし)

    百合子「……いや、大したこっちゃねェ。まァ、なンだ。とにかく向こうはオマエが復活したことは知ったンだ、
    俺とオマエだって最初はこンな風にツラ並べてメシ食えるよォな関係になるなンざ思いもしなかっただろ。
    つまりオマエの戦いはまだまだこれからなンだよ、一回フラれたくらいで諦めンな」

    垣根「慰めてくれんのは有り難ぇがその台詞はむしろ駄目な方向のフラグだ」

    百合子「つっても例えどンなにオマエが頑張ったところで結局第四位にゃ一生相手にされねェだろォけどな」キッパリ

    垣根「せんせー、百合子ちゃんが俺のこと言葉の暴力で苛めてきまーす。学級会で議題にしましょー」

    百合子「……せンせー、垣根くンがウザいンで校舎裏行ってシメてきまーす」

    垣根「……せんせー、百合子ちゃんがムカつくんで屋上でボコり返してきまーす」

    百合子「………せンせー、垣根くンとか今週3回も掃除当番サボってましたァー。
    罰として今日の給食のプリン抜きにしましょォー」

    垣根「なっ…!!」

    垣根「……プリンはやめろよ! 小学生にとっての給食のプリンとか超ご馳走だろうが!
    ………給食まともに食ったことねえけど!!」

    百合子「うぜェ……っつかそォいや俺もねェなァ。実際大して美味いモンでもねェだろ。多分」

    垣根「ああ、大勢でくっちゃべりながら食べるからこそ美味いってのあるよな。キャンプ場でのカレー的な」

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    百合子「それはすげェ分かる。林間学校の飯盒炊飯的な。行ったことねェけど」

    垣根「でも確か常磐台の給食とかってクソ高いんだろ? 地下街の学食レストランに入ってんの見たことあるし」

    百合子「金はあるところにはあるってこった」

    垣根「あ、そうだ今度そこ行こってみようぜ。給食の揚げパンとか一度食ってみてえ」

    百合子「オマエはホント貧乏臭ェ味覚してやがンな。
    まァクソガキ共連れて行ったらまた馬鹿みてェにハシャぐだろォが」

    垣根「ほら、よく風邪で休んだ奴とかいると余った牛乳ジャンケンで取り合ったりすんじゃん? あれすげー楽しそう」

    百合子「栄養の為だかなンだか知らねェが、酢豚にパイナップルとかサラダに柿ぶち込む発想だけは理解出来ねェ。
    別々に食えばイイだろアレ。パイナップルと柿はデザート枠だろ」

    垣根「俺はほうれん草とチーズのサラダに林檎はアリだと思うけどな」

    百合子「海藻サラダとかグリンピースのスープもアレ誰に需要あンだ?
     どォせあァいうのは大量に余って捨てられ…………いや、そもそもなンで給食なンかの話になってンだ?」

    垣根「……?」

    百合子「……?」

    垣根「あれ……?」

    ガヤガヤ ワイワイ

    ウィーン

    <イラッシャイマセー
    <オヒトリサマデヨロシイデスカ?
    <コチラヘドウゾー


    ??「ったく、昨日はえらい目に遭ったわ……」スタスタスタ

    百合子「……ン?」

    ??「二度とあいつにゃ……あん? って、げっ!!」ピタッ

    垣根「あ?………って麦野じゃねーか!!!」ガタンッ

    麦野「~~~~…っっ!」



    麦野「くっそ、まさか昨日の今日でまたテメェに会っちまうとは思わなかったわ…」ハァ

    垣根「ああ。これはもう運命だな」フッ

    麦野「……ホンット懲りねえなテメェ。昨日あんだけ痛めつけてやったのにもうピンピンしてやがるし…」

    百合子「……………」

    麦野「ん? あら、久しぶりね第一位。アンタ女だったんだって?」

    百合子「か、帰る」ガタガタッ

    垣根「あー、待て待て待て一方通行」ガシッ

    百合子「は・な・せ!!」ジタバタ

    591 = 1 :


    垣根(大丈夫だって、心配しなくてもこいつらお前のこと“最初から”女だと思ってんだよ)ヒソヒソ

    百合子(……あ?)ピタッ

    垣根(お前が嫌なのはその訳分かんねえ身体のこと知られることだろ?
    つまり麦野たちはお前のこと生まれつき女だって思ってる訳だから別に笑ったりしねえって)ヒソヒソ

    百合子「…………………」


    百合子「あァ、まァ、そォいうことなら…」

    麦野「?? なにコソコソ話してんのー?」

    垣根「なんでもないなんでもない。それより麦野、今日は他の奴らとは一緒じゃねえのか?」

    麦野「とりあえずあの後浜面はボコったから今は寝込んでるわ」シレッ

    垣根「……それってもしかして俺のせい?」

    百合子「……元を辿れば俺のせいかもなァ」

    麦野「どうせ今頃滝壺に甲斐甲斐しく看病してもらってるだろうからむしろご褒美でしょうよ」ケッ

    垣根「あー、なるほど。つまりお前は墓穴掘っちゃったわけね」

    麦野「るっせーよ! テメェがあのまま大人しく死んどきゃ済んだ話だろうが!!
    ゴキブリみてえにしぶとく生き返ってきやがって!!!」

    垣根「………どうしよう一方通行。俺麦野に死んでた方がいいってレベルまで嫌われてる」

    百合子「安心しろ。俺もちょっと前まではそォ思ってた」

    垣根「なるほど、つまり今はそう思ってないと」

    百合子「……ノーコメントだ」

    麦野「………………、」

    麦野「この目で見るまで信じられなかったけどアンタら和解してるっての本当だったんだ」

    垣根「ん? だからそう言っただろ。まあ立ち話もなんだ、ここ座れよ。奢ってやるから。ほら一方通行、お前も座れ」グイグイ

    百合子「……チッ」ガタン

    592 = 1 :


    麦野「え、マジ? テメェのツラ見ながら食事すんのは吐き気がするけどそれならまあ相席してやるよ」ガタン

    垣根「お前どんだけ女王様なの?」

    百合子「……オラ、第四位。メニューだ」つメニュー

    麦野「あらどうも。さて、じゃあ何にしよっかな~」ペラッ

    垣根「俺らもドリンクバーしか頼んでなかったし何か食うか」

    百合子「ン」

    麦野「シャケのムニエルはここ一週間連続で食べてるし他のにしよっと」

    垣根「シャケ好き過ぎだろ…。流石に一週間連チャンはねえわ」

    麦野「シャケは至高。異論は認めないわ。んー……よし、この鮭のホイル蒸しに決めた。あとマリネ」

    百合子「それムニエルと大して変わらなくねェか。……あー、俺はハンバーグセットでいいか」

    垣根「んじゃボタン押すぞ。麦野、お前もドリンクバー頼むだろ?」ピンポーン

    麦野「当然」



    ザワザワ ワイワイ

    店員「――――かしこまりました。ではドリンクバーはあちらのコップをご自由にお使い下さい」スタスタ

    麦野「はーい」

    麦野「んじゃ第二位。ドリンクバー行って私の飲むもん取ってこい」

    垣根「おい」

    麦野「何よ、文句あるわけ?」フン

    垣根「……まあいいか。昨日のこともあるし、ちょうどションベン行こうと思ってたし」ガタッ

    麦野「きったねーなあ。食事の場なんだからそういうのはもっとオブラートに包んだ言い方しろよ」

    百合子「それはオマエだけは言っちゃいけねェセリフだ」

    垣根「お花を摘みに参りますわ」キラッ

    麦野「うぜえ…」

    百合子「……いつかの変態ツインテ思い出すからやめろ」

    垣根「で、何取ってくるよ」

    麦野「とりあえず烏龍茶でいいわ。ちゃんと氷も入れてこいよ」

    垣根「ハイハイ、りょーかい」スタスタスタ

    百合子「………」

    麦野「………」

    麦野(って、ぶっちゃけこいつと二人とか地味に居心地悪ぃな。話すことないし。いや、第二位ともねえけど)

    百合子「……」パカッ カチカチカチ ピロリン♪

    麦野(あの第一位がケータイでクーポン読み取ってやがる…)ジッ

    百合子「……ン? なンだよ?」

    麦野「え? いや別に…」

    百合子「ここのコーヒーあンま美味くねェンだよな」ズズズ

    麦野(なら来んなよ…)

    百合子「……」

    麦野「……」

    麦野(なにこの気まずい空気)

    593 = 1 :


    百合子「………あー」

    麦野「あん?」

    百合子「まァ、その、……なンだ。垣根の奴は確かに馬鹿だしうぜェけどよォ」

    麦野「……はあ?」

    百合子「根はそンな悪い奴でもねェンだ。だから、なンつゥか……あンま邪険にしないでやれ」

    麦野「……、」

    麦野「それってあいつのフォローのつもり? ホントいつの間にそんなヌルい馴れ合いする関係になってんだテメェら。
    脳ミソ弄られ過ぎてとうとうイカれちまった訳? 根暗く傷の舐め合いでもしてんのかよ」

    百合子「周りからすりゃそォ見えても仕方ねェのは分かってンよ。
    でもアイツとつるンでンのは舐め合いとかじゃねェ、それだけは言える」

    麦野「……あっそ。まあ別にこっちもアンタらの仲とか興味ないし。
    でも少なくとも私は第二位のバカのことは嫌いだから。何吹き込まれたとこでそこは変わんないわよ」

    百合子「それならそれでイイ。こっちもあのバカのケツまで拭いてやるつもりはねェよ」

    麦野「……」

    百合子「……」

    麦野「……ただの興味本位で聞くけどさ。アンタらつるみだしたきっかけって何よ?」

    百合子「…………………」

    麦野「?」

    百合子「正直あンま思い出したくねェ、が、まァ……突き詰めりゃただの成り行きだ。自分でも未だに謎なくらいだ」

    麦野「抽象的過ぎて何一つ伝わんないわね。ま、そこら辺根掘り葉堀り尋問するほど野暮でもないけど」

    百合子「『葉堀り』って言葉超イラつくよな。葉っぱが掘れるかっつーの」

    麦野「は?」

    百合子「……なンでもねェ」ズズッ

    麦野「……」

    百合子「……」

    百合子「つーかオマエにゃ浜面がいるから最初から垣根に靡くなンざ思っちゃいなかったし」

    麦野「!?」

    594 = 1 :


    麦野「なっ、なななななんでそこで浜面が出てくんのよ!? わっわた、私はべべ別にあんな馬鹿面のことなんか全然っ……!」アタフタ

    百合子「……うわァ」

    麦野「そのドン引きした目やめろ第一位ぃぃいいいいい!! ホントにあんな阿呆面どうでもいいんだよこっちは!
     浜面とか猿顔のブサイクだし? エロいことばっか考えてやがるイカ臭ぇ粗○ンの××××野郎だし頭悪いチンピラで、だから、
    あ゛ああああふざっけんな、はーまづらあああああああああああああ!!!!!」ガターン!!

    百合子「いや、今この場においては浜面何も悪くねェだろ。罵るならせめて俺を罵れよ」

    麦野「全ては浜面が悪いのよ!! 死ね浜面!!!」ガン!

    百合子「……ああ、浜面って普段からこォいう扱い方されてンだな。
    そりゃ能力追跡の方にコロッと落ちるわ」

    垣根「よう、烏龍茶入れてきたぞー……ってなに騒いでんだお前ら」スタスタ

    麦野「はー…はー…」ゼェハァ

    百合子「とりあえず落ち着け。ここまで出禁にされたくねェンだよ」

    垣根「なになに、ガールズトーク(笑)でもしてた訳? 俺も混ぜろよ」ガタン

    百合子「そンなンじゃねェよ殺すぞ。ほら第四位、これ飲ンで気ィ鎮めろ」つ烏龍茶

    麦野「………」ハァハァ

    百合子「ンで垣根。オマエのコップに入ってるその気持ち悪ィ未元物質はなンだ」

    垣根「カルピスにブドウジュース混ぜた」シレッ

    百合子「キメェ…」

    垣根「俺はチャレンジャーだからな。ちなみにコーラに牛乳混ぜても美味いんだぜ? 比率間違えると分離してえらいことになるが」

    麦野「………、アンタらってさ。いつもそんな感じなわけ?」

    垣根「あん?」

    麦野「とりあえず和解してんのはよーーーく分かったから置いとくけど。
    ぶっちゃけた話、天下の一位と二位がこんなファミレスでぐだぐだくだらねえことしながら駄弁ってるとかその体たらくはどうなのよ」

    百合子「あァ? それ言ったらオマエらアイテムも変わンねェだろォが」

    垣根「そして今まさにその体たらくな輪の中にお前も入ってるからな?」

    麦野「……………変な奴ら」

    595 = 1 :


    垣根「まー、せっかくこうしてレベル5が三人も集まってんだし。親睦深めようぜ、親睦」

    麦野「テメェと深める親睦なんざ爪の先ほどもねーよ。ってか昨日のは本当になんだったの?」

    垣根「久々に見たむぎのんの眩しさにちょっとテンションが上がり過ぎてしまいました」

    麦野「誰がむぎのんだ」ビキ

    百合子「垣根が迷惑かけて悪かったな。コイツホント根っからの女好きだから」

    麦野「あー、そういうの一番きめぇわ。がっついてる奴って同性からも嫌われるしね」

    垣根「別に男に好かれねえのは構わねえよ」

    百合子「いや、オマエ好かれてるだろ」

    麦野「え?」

    垣根「……おいばかやめろ、まさか」

    百合子「コイツ前回転寿司食いに行った時そこのガチムチ店員に思いっきり目ェ付けられててなァ」

    麦野「……ぶっwwww」

    垣根「それ微妙にトラウマなんだからマジでやめてくれ。思い出しちまっただろうが…」ブルッ

    百合子「見事な体育会系マッチョだったよな」

    麦野「そりゃまた…www」ククッ

    垣根「……なあ、何度も言うようだがギャグでもなんでもなく冷静に考えて俺って美形の部類だよな?」

    百合子「アレだろ、全般的に女ウケがイイのはもっとこう、爽やか好青年~みてェなタイプなンじゃねェの?
    良くも悪くも好み真っ二つに分かれる顔だろオマエ」

    麦野「確かにね。ツラの良さだけは認めるけど、そのチャラついた雰囲気が生理的に受け付けない子も多いでしょ」

    垣根「俺ってそんな浮わついたイメージなのか?
    いやでも逆に黒髪短髪でアウトドア系のファッションとかしてる俺の方がねえだろ」

    麦野「ああうん。それは確実に似合わねえわ」

    百合子「――――似合わねェな、メルヘン野郎」キリッ

    麦野「は?」

    垣根「……心配するな。自覚はある」フッ

    百合子「……」

    垣根「……」

    垣・百合「「ぶふっwwww」」

    麦野「」

    麦野(え、今の笑うとこだったの? やべえ、こいつらの笑いのツボがさっぱり分かんねえ…)

    596 = 1 :


    百合子「あー…なンつったかほら、アイドルだか俳優だかの……ひとつい? みてェなのが一番モテンじゃねェの」

    麦野「ああ、一一一(ひとついはじめ)ね。確かに美形よね、私はああいう優男苦手だけど」

    垣根「なんかお前らの口からアイドルの名前が出ると全然違う単語に聞こえんな」

    麦野「どういう意味だコラ」

    百合子「あれだ、黄泉川がなンかそいつの出てるテレビ番組録画したりしてンだよ」

    垣根「えー、女ってあんなんがいい訳? 黄泉川お姉さん意外とミーハーだな」

    百合子「芳川もだが無駄に若者気取ってやがるからなァあいつら…」

    麦野「そういや昨日も言ってたけどそのヨミカワとかって誰よ?」

    垣根「ああ、こいつの保護者。二人ともいい人だぜ、美人だし」

    百合子「ただのこうるせェババァ共だ」

    麦野「あ? ババァ?」ピクッ

    垣根「なんでそこでお前が反応すんだよ」

    百合子「でもコイツ、ナリは派手だが中身は無駄に庶民派つーか貧乏臭ェとこあンだよな」

    垣根「そこはお前に言われたかねえよ」

    麦野「へー。具体的には?」

    百合子「冷凍とかインスタント食品美味そうに食ってるわ、酒は安モンの焼酎だの発泡酒だの飲ンでるわ…」

    麦野「はあ? 第二位テメェ、無駄にこ洒落たレストランとか行ってそうなのに実際は普段そんなの食ってんのかよ。
    ……ってよく考えたらここもファミレスだったか」

    垣根「成金趣味じゃあるまいし別になあ…。
    実際、昔っから実験に協力したり仕事で金はバンバン入ってきてたけど使いどころってあんまねーんだよな。結局のとこ殆ど手付かずのままだ」

    麦野「まあそれはね。私もたまに衝動買いしたりプライベートプール借りっぱしたりその程度だわ」

    百合子「プール借りっぱはその程度とは言わねェ」

    垣根「金は持ってる奴が使わねえと経済回んねえからな。間違った使い途ではねえだろ」

    百合子「………オマエらもし今度ツンツン頭の三下とチビのシスター見つけたらそいつらになンか食いモン恵ンでやれ」

    麦野「んー…」ジロジロ

    597 = 1 :


    垣根「ん? 何だよ麦野、俺に見とれて」

    麦野「死ね。……いやね、確かに言われてみればぱっと見の印象はいかにもホスト崩れって感じだけど
    よくよく見りゃ別にアンタってジャラジャラピアスだのアクセサリーだのしてる訳ではないのよね。
    服装だけで言えばどっちかっていうとシンプルな方だわ」

    垣根「そういうお前こそ派手好みっぽそうな割に結構落ち着いた恰好だよな。
    お姉さん系つーの? いいな、俺は好きだぜ?そういうの」

    麦野「ああ、やっぱチャラいわこいつ」

    百合子「結論=垣根は言動がチャラい」

    垣根「ひでえ言われようだ」


    垣根「違ぇんだよなー。俺はなんつうかもっとこう、ダメなとこも含めたそのまんまの垣根帝督を愛して欲しいみたいな?」

    百合子「引くわァ…」

    麦野「………」


    麦野(なーんか、本当に案外普通なのねこいつら。毒気抜かれちまうわ)ズズッ

    垣根「そういや麦野。浜面と能力追跡が今頃乳繰り合ってんのは分かったがもう一匹のガキはどうしてんだ?」

    麦野「ああ、絹旗? あいつならなんか黒くてイルカなガキと遊びに行ってくるとか言って出掛けたわ」

    垣根「なんだよそのふわっとした情報……イルカは青いもんだろ」

    百合子「あァ、黒夜か」

    麦野「そうそう、そいつ」

    垣根「なんでお前が知ってんだよ」

    百合子「オマエが死ンでる間にいろいろあったンだよ。
    まァガキ同士仲良くやってンならイインじゃねェの」

    垣根「出たよ、一方通行の幼女贔屓」

    百合子「ここにある唐辛子ベクトル一気させンぞ」スチャ

    垣根「すみませんでした」

    麦野「……ホント仲良いわねアンタら。ていうか絹旗はあれでも一応中学生だから幼女ではねーよ」

    垣根「中学生ねえ。それにしちゃチビだよな」

    麦野「そうよねえ、そろそろもっといろんなとこ成長し始めていい歳なんだけど。
    ま、あれはあれで結構子供らしくてカワイイとこもあるんだけどね~」

    百合子「なンだ、ただの親バカか」

    麦野「あ゛? 誰が母親気取りのババァだって?」ピキッ

    百合子「ンなこと一言も言ってねェだろ…」

    598 = 1 :


    垣根「つーか親バカ度で言えば一方通行の方が万倍上だろ。完全にお嬢ちゃんの親御さんだもんなお前」

    百合子「黙ってろ」

    麦野「あー最終信号だっけ。あのアホ毛揺らしたアホっぽいガキね」

    百合子「……あ?」ピクッ

    麦野「正直あれに比べたらウチの絹旗の方が断然可愛いわよね」フフン

    百合子「…………オイオイオイ、このババァ歳食い過ぎて朦朧しちまってンのか?
     あンな超超言ってる怪力チビに比べたらまだウチの打ち止めの方がガキらしくてマトモだろォが」

    麦野「あ?」ピクッ

    百合子「まァ確かにクソうるせェし、食いモンぼろぼろ溢しまくったりまとわりついてきたりしてうぜェけど?
     ガキはガキらしくしてンのが一番ですしィ?
    色気もねェのにあの歳であンな際どいカッコしてイキがってるどっかのロリビッチよりゃまだイイよなァ」フフン

    麦野「……なに、喧嘩売ってんの?
    口調で言ったらそっちのミサカミサカうるせえガキのが明らかにおかしいだろうが。
    あんな乳臭いお子ちゃま溺愛して第一位サマはマジでロリコンだったわけ?
    レズでロリコンとか倒錯し過ぎだろ、笑えるわね」ハッ

    百合子「はン、年甲斐もなく年中寒そうな下着着けてるおばさンはやっぱ更年期でピリピリしてるンですかァ?
    負け犬オーラプンプンさせやがって、ヒステリーも大概にしておけよ」

    麦野「あ゛?」

    百合子「大体なァーにが『スケスケなのは仕様です(笑)』だ?
     教育上よくないンでウチのクソガキにそンな汚ねェモン見せンのやめてくれますゥ?
    オマエはセクシー系担当でもなンでもねェよ、ただのババァ枠だ。
    誰得な紐パンとか目に毒なンで即刻中年向けパンツに変えてもらえませンかァ?」ハッ

    麦野「あ゛あ゛あん? テメェ本気で喧嘩売ってやがんな、つるぺた幼児体型なモヤシっ子には私のスタイルがそんなに羨ましく見えるのかにゃーん?
    負け惜しみにしか聞こえないんだけど?」

    百合子「あ゛?」ビキッ

    麦野「ていうか~そんなウルトラマンみてーな恰好したセンス0のまな板ちゃんに絹旗の何が分かんの?
    あの子はねえ、ウチらの切り込み隊長なのよ。
    あんな脳ミソ軽そうなアホ毛ロリとはまずスペックからして違うっていうかぁ?」

    百合子「あ゛ァ!?」

    垣根「怖ぇ…。これが女同士のドロドロの闘いか…」ガクブル

    599 = 1 :


    百合子「………誰に牙剥いてっか分かって口開いてンのか第四位。オマエはやっぱり下半身だけじゃなく頭もユルユルなンですかァ?
    どォせならついでに下顎吹っ飛ばしておしゃぶり上手なツラにしてやろォか? あ?」

    麦野「誰の股がユルいって? 処女臭ぇ匂いプンプン垂れ流してるテメェに言われたかねーんだよ、下の毛も生え揃ってなさそうなくせしやがって。
    そんだけ病人並みに肌白けりゃ×××もそりゃ綺麗なピンクなんでしょーねーえ?
    ジュージューやっちゃう? 可愛い下のおクチに焼きごて当てて真っ黒焦げの刑にしてやろうか百・合・子ちゃん?」

    百合子「」ガタッ

    麦野「」ガタッ

    垣根「やめろお前ら。なんかすげえデジャブだから。
    本当俺の周りは口汚ぇ女ばっかだな…」ハァ

    百合子「ウチの打ち止めはなァ……」

    麦野「ウチの絹旗は……」

    垣根「だーからくだらねえ言い争いすんやめろつってんだろ親バカども。
    あと麦野、お前の紐パンは俺得だから後で見せろ。つーかなんだよ、スケスケとか最高じゃねえか…。
    このモヤシの言うことなんか気にせずこれからも穿き続けろよ?
    老け顔とかホント気にすることねえから、年増でもお前くらい美人でエロければ俺イケるから」

    麦野「死ね」

    百合子「死ね」

    垣根「……え、なんで仲裁しようとした俺がディスられる流れになってんの?」

    店員「お待たせ致しました~」カチャカチャ

    垣根「ああほら、料理も来たことだしここらで一旦休戦条約結んどけ。メシくらい楽しく食おうぜ?」

    百合子「……チッ。命拾いしたな第四位」ガタン

    麦野「こっちの台詞だ第一位」ガタン

    店員「……えーっと…」

    垣根「ああ、すんません。おら、さっさとコップとおしぼりどけろお前ら」

    百合子「仕切ンな、うぜェ」

    600 = 1 :


    店員「こちら鮭のホイル蒸しとマリネのお客様」

    麦野「はいはーい。わーい、シャケだ~」ホクホク

    店員「和風ハンバーグセットのお客様」

    百合子「ン」

    店員「モーニングセットのお客様」

    垣根「どーも」

    店員「以上でご注文の品お揃いでしょうか?」

    垣根「ハイハイ」

    店員「ではごゆっくりどうぞ~」スタスタスタ


    麦野「――――シャケ美味しいわ」モキュモキュ

    垣根「食い始めんの早過ぎだろ……縮地でも使ってんのかお前」

    百合子「っつかオマエこそモーニングっておかしいだろ、今昼だぞ」

    垣根「朝メシ食ってこなかったから朝食っぽいの食いたかったんだよ。まだ11時だしギリギリ朝だろ」

    麦野「んぐんぐ……むぐ。うん、このファミレスも悪くないかな。
    んー、でもやっぱ基本はジョセフよね。
    ジョルノガーデンとかジョリーンパスタも捨てがたいけど」モグモグ

    垣根「ああ、二部もいいよな。個人的には四部が好きだけど」

    麦野「は?二部? 何の話?」

    百合子「三部だろ。ジョータロー先輩マジカッケェ」

    垣根「なんだかんだでスタプラだよな」

    百合子「キラークイーンこそ至高。そォ思っていた時期が俺にもありました」

    垣根「やれやれだぜ」

    麦野「……ねえ、ホントアンタらのノリについてけないんだけど」

    百合子「心配すンな、自覚はある」キリッ

    垣根「異物の混ざった空間。ここはテメェの知る場所じゃねえんだよ」キリッ

    麦野「テメェらそれ言いたいだけだろ。……なに、私バカにされてんの?」ピキ

    垣根「トースト美味い」モグモグ

    百合子「ハンバーグ美味い」モグモグ

    麦野「」イラッ


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