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    元スレ上条「俺がジャッジメント?」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★
    タグ : - とある魔術の禁書目録 + - 上条 + - 初春 + - 御坂美琴 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    601 :





    じっとガン見する五条さん想像して吹いた

    602 :

    乙ー

    浜面とどう関わっていくのか楽しみだな

    603 :

    乙!

    >>598
    基本的に三点リーダーは2つで1セット
    無駄に使いすぎるとテンポも悪くなるし、ちょっと見にくくなる場合もあるかな……?

    勿論、思案とかを表すなら多く使うのもおk

    604 :

    間を表現したいなら改行でセリフ分ければいいじゃない



    605 :

    >>598
    長いのがこのSSのいい雰囲気だしてる
    このままでいいよ

    606 :



    佐天「それで初春ったら、「こういう事ですので、付き合えません」って断っちゃったんですよー」

    黒子「初春がクラスメイトの殿方から交際を申し込まれていたとは」

    初春「もう、佐天さんっ///」

    黒子「「こういう事ですので、付き合えません」ねえ…………普通はその言葉の真意に何かを感じる筈なのですが」

    上条「ん?」

    佐天黒子「はぁ……」

    初春「ぇぅ///」



     第七学区の大通り。
    午後四時過ぎの学生達の帰宅ラッシュ時は、人通りが忙しなく動いていた。


    前を黒子、佐天が歩き、後ろで初春と上条がそれについていく二列の形をとっている。
    この陣形を取るにあたって、初春が黒子に無言のプレッシャーを与えていたのは言うまでもないだろう。


    とはいえ、はにゃーん的な気分に浸っているだけではない。
    前方の佐天、後方の初春で上条を見る怪しげな視線がないかくまなく探してもいるのだ。


    手には携帯電話を常に握っており、新しい画像が貼られやしないかも時々チェックしている。
    先ほど第一七七支部に到着してから出る僅か数分の間に、事件簿ファイルから例の女子生徒のデータも抜き出していた。


    607 = 1 :


      『田代まさこ』


    あの時の女子生徒の名前は、そう言った。
    日舞女学園の二年生、能力はレベル3の『認識投影』。
    視界に入れたものを脳に蓄積し、特定の機材にデータ化をするもの、らしい。

    …………随分変わった能力だと感じた。

    どういう原理でデータ化をするのかはわからない。
    念動力か、はたまた電気能力でも兼ね備えているのか。
    詳しいことはわからないのだが、まあ別にその能力の全てを知る必要もないのだろう。
    状況証拠はもう十分揃っていたから。

    間違いない。その女子生徒によるものだ。

    動機は、あの掲示板にも書いてあった通り――――助けてもらった事によって恋心でも芽生えたのだろう。


    初春「……………………」イラッ


    でも。
    だからとは言え、能力使って盗撮まがいの事までしていいのか。
    自分で鑑賞する分にはまあ彼女の『自分だけの現実』によるものだし、譲歩するとはいえども。
    理由がどうであれ、彼女はやり方を間違えた。


    上条「初春さん、どうしたんだ? 難しい顔をして」

    初春「えっあ、いえ…………すみません」

    上条「なんかあったか?」

    初春「な、なんでもないですよ…………大丈夫です」

    上条「ならいいけど。なんかあったら相談とかも全然受けるぞ? はは、俺じゃ頼りないかもしれないけど」

    初春「そ、そんなことないです! でも、あ、ありがとうございます!」

    佐天黒子「(これが無自覚天然フラグメイカーの実力…………!)」


    そんな難しい顔をしていた初春も、そんな上条の一言によって一瞬で笑顔になっていた。

    608 = 1 :


     それから少し歩くと、初春の携帯の画面に変化が起きた。


    ―――!!


    あの『日舞女学園』の学校掲示板に新しいスレッドが立ち、一覧表の一番上にその文字が表示されていた。
    それを見た瞬間、初春の目が大きく開かれた。


    『1:今目の前に好きな人がいるんだが』


    普段ならそこまで気にしないようなスレッドがやけに嫌な予感がして、条件反射の様にボタンを押していた。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    1:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:TsrMsk17O
      前にも一度貼ったけど、なんか消されてたからまた貼ってく

        画像は俺の能力で撮ってるからバレずに撮れるわwwwwwwww
      でもなんか風紀委員と一緒にいるぞ…?
      つか腕に風紀委員の腕章付けてる…

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


    ―――きた!!


    その貼られた画像のURLリンクを踏むと、画像が展開されていく。
    拡大されているのか、上条の横顔が画面いっぱいに表示された。

     その瞬間、初春は周りを見渡した。
    どこだ。どこで見ている。
    画像を確認すると、ついさっき通った店が端に写っていて、ほんの数分ほど前に撮影されたもので近くにいるであろう事が窺える。
    角度的に女子生徒がいたであろう方向を見るのだが、今は目ぼしいものはない。

    どうする、どうする。
    犯人を探すべきか、それとも今はスレッドの住民達にせがまれて次々と貼られていくのを止めるべきか。

    609 = 1 :


     考えていると、歩いていた黒子の足が止まった。


    黒子「少し休憩にいたしましょうか」

    上条「ん、りょーかい」

    初春「あ、はい」

    佐天「はーい」

    初春「(…………佐天さん)」

    佐天「(ほえ?)」

    初春「(多分ですけど…………この辺りに、います)」

    佐天「(!!)」



    佐天の表情にも緊張感が走る。
    首を何度も左右に振り、怪しげな人物がいないか確認をしていた。


    とは言え、場所はコンビニの前。
    時間も夕方で学生達でごった返していて、特定の人物を探すのには一苦労してしまう。
    更に二人できょろきょろと視線を泳がしすぎると、犯人に警戒されてしまう危惧もあるだろう。


    やはりまずは、スレッドの動きを止めるのをした方がいいか。


    そう思うと、初春は携帯を再び操作し始めた。

    610 = 1 :


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――

    18:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:TsrMsk17O
      かっこよすwwwwwww

          19:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:yPor73jG0
      うおおおおおおおおおおおおおお

    20:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:Aer9UijF0
      なにそのツンツン頭wwwwwwwww


















      やべ、俺も好きになりそう

    21:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:UehGGht90
      今夜は寝れねーな

    612 = 1 :


    30:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:TsrMsk17O
      お前らすまん、風紀委員にこのスレばれたみたいだわ
      俺はこの場からとにかく逃げる

    31:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:UehGGht90
      >>29
      >>1が盗撮画像貼る
      風紀委員にバレた
      高飛び

    32:以下、名無しにかわりましてNRSがお送りします ID:TbnBbd560
      その後>>1の姿を見た者はいない・・・


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――




    初春「白井さんっ!!」

    黒子「どうしたんですの?」

    上条「ん?」




     その時、初春の視界の端に一目散に逃げ出していく女子生徒の後ろ姿が写った。
    叫び声を上げた初春に驚き、黒子は怪訝な表情を見せたがそんな事よりも。

    613 = 1 :


    初春「盗撮魔です! あの人を追ってください!」

    佐天「うわっすっごい逃げてる」

    上条「盗撮魔!?」

    黒子「本当ですの!?」

    初春「はい! 説明は後でしますからとにかく!」


    そう言い切る瞬間に黒子は姿を消していた。


    『空間移動能力者』


    逃げる者からすれば、これほど嫌な追手はない。
    それはどれだけ逃げても、逃げても。








    黒子「ジャッジメントですの!!」








    「ひぃっ!!??」


    一瞬で追いつかれてしまうからだった。

    614 = 1 :


    「ごべんばざいいいいいいぃぃぃぃ…………ヒグッ、グスッ…………」

    上条「あの時の…………っつか被害者って俺だったのかよ…………」

    初春「こんな写真まで…………」

    佐天「あは、あはは…………」

    固法「こんな事してたのね…………」


     神妙に縄についた女子生徒を第一七七支部まで引っ張ってきたのはつい先ほど。
    女子生徒はさっきから泣きじゃくり、謝罪の言葉をただ延々と呟き続けるだけだった。

    見ていてこちらが痛々しいほど泣いていて、ちょっぴりやりすぎたかなと反省する。
    しかし初春にとって許す事のできないその所業と照らし合わせて、どうしたもんだかと頭を悩ませていた。

    とりあえず証拠物品を押収し、調書を取る。
    固法も苦笑いを浮かべながら事情聴取をしていたのだが、どうにもやりにくそうだ。


    「ごめ、ごめんなざいいぃぃぃぃうわあああああああああぁぁぁぁぁぁんっ!!」

    固法「うーん…………」


    一際大きい鳴き声が支部内を揺らす。
    捕まってしまったという気持ちと、好きな人にこんな姿を見られたという気持ちと、やってしまった事の後悔と。
    色んな感情がごった返して、くしゃくしゃに泣きじゃくるその顔を机に突っ伏して埋める女子生徒は、この中で一番年長にはとても見えなかった。

    …………固法先輩が一番上じゃないかって? そう書くと何やら明日生きられないような気がしt


    固法「うふふふふふふふふふふ…………」


    「「「「 」」」」ゾクッ


    ごめんなさい。

    615 = 1 :


    黒子「それで。結局被害者は上条さんという訳なのですが。あなたはどうするおつもりで?」

    上条「俺か?」

    佐天「盗撮された上に、不特定多数の人に見られる掲示板に貼られたわけですもんね…………」


     んーと上条は考える。
    自分が被害者、とはいっても特にこれと言った被害を被ったわけではない。
    それよりも、この目の前で思い切り泣かれるという状況の方が上条にとって気分的に辛かったりする。
    正直自分は本当になんともないし。


    初春「上条さん…………」


    初春の声が耳に届く。
    聞いた話で、初春が一番この件で動いてくれていたらしい。
    すると彼女の心境を考えるとどうか。

    どうすればいいのかという答えはわからない。
    わからないのだが、ここまで反省している女子生徒に対して糾弾できる度胸も持ち合わせてもいない。


    上条「まあ俺は気にしちゃいないし、許してやってもいいんじゃないか?」


    「っ!!?? ほ、ほんどうでずがぁぁぁ!?」

    黒子佐天「!?」

    初春「っ」


    初春に対して申し訳ない、という表情を見せながらそう言い放った。

     ただやはり、心を鬼にする事など上条にとってできる事ではなかった。
    誰かが傷ついたのなら上条としても許せない事だったのだろう。
    男女関係なく制裁を食らわせてきた上条だ、その辺りの分別はしてきているつもりだ。

    しかし心から反省している様子の相手に、これ以上言う言葉もないのだろう。
    これから直してくれれば、それでいい。

    616 = 1 :




    上条「ただ! もうこんな事は絶対しちゃダメだぞ。それが約束出来るのなら、俺は許す」



    「はい…………もう絶対に、しません…………」

    上条「そうか。ならいい」

    黒子「はぁ……………………この男は優しいのやら甘いのやら」

    佐天「これ、いいんですかね?」

    固法「まあ本人が許すって言っちゃってるから、調書も取ったし私達にはどうにも」




    女子生徒が今度は逆の意味の涙を流すと、上条は困り果てた顔を見せた。

    まさかこんな事が起きていたとは、とため息を吐く。

    なぜ黒子がため息を吐いたのかは知らないが、気にする事でもないのだろう。

    617 = 1 :


    上条「初春さん…………ごめんな」

    初春「え?」


    ふとそこで上条が呟いた言葉に、初春は上条の顔を見た。
    本当に申し訳なさそうな、そんな表情。


    上条「いや、なんつーかその、頑張ってくれてたんだろ? 俺を助ける為に。なんかそれを無駄にしちまった様に許しちゃって」

    初春「ぃ…………ぁぅ…………///」

    上条「俺全然知らなかったんだ、こんな事が起きてたなんて。それに気付いて動いてくれてたっつーのに、情けないよな、俺」


    自嘲する様にため息混じりに苦笑いを見せる上条に、初春は気付けばその手を両手で包んでいた。


    初春「っ、そ、そんな事ないです! 許す事が出来るのは、上条さんが優しいからなんです!
       むしろ上条さんがそれほど優しいって事が知れて、嬉しいんです!
       そんな上条さんが……………………


       ……………………って、はっ!!」


    黒子「おぉ………………」

    佐天「わお………………」

    固法「ほう………………」

    「……………………グスッ」

    上条「お、おう……………………ありがとな、初春さん」


     自分が言おうとした事の重大さに途中で気付き、言葉を何とか止めた。
    周りからは感嘆とする声が響き、初春はその顔を一気に真っ赤に染め上げる。
    恥ずかしさでどうにかなってしまいそうなほど、初春の心は動揺していた。


    初春「はぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……………………///」


    上条「はは。でも本当にありがとう、初春さん」


    きゅっ―――――――――――


    更に手を握り返される感触が、初春を包み込む。
    その暖かな柔らかい彼の感触が、恥ずかしくもまた昇天しそうなほど嬉しかった。

    618 = 1 :


    初春「えへへ……………………」

    黒子「緩みきってますわね」

    佐天「うはー、見ているこっちが恥ずかしくなっちゃいそうな所見せつけちゃってー、この初春め」ニヤニヤ


     支部からの帰り道、隣を歩く佐天のくいくいと腕で腕を押されるのだが、その感触は恐らく初春に届いていないのだろう。
    黒子もなんだかなーという表情を見せているのだが、初春には届く事はない。
    先ほど味わったあの感触は、忘れたくない。

    上条の優しさをまた見れて、初春はそれがまるで自分の事のように喜んでいた。
    自分の好きな彼の優しさが見れて、本当に嬉しい。
    彼と一緒に仕事が出来る事になって、本当によかったと思える第一弾の事だった。


    佐天「でもさ、初春」

    初春「はい? なんですか?」




    佐天「浮かれるのもいいけど、鞄忘れちゃダメだよ」


    初春「えっ

       ああああああああああああああああああああああああああああああ」


    しまったーという声を上げる。
    というか気付いていたのなら早く言って欲しかったと佐天を恨めしげに睨むのだが、ふやけきってる彼女の表情は全くと言っていい程迫力はない。


    佐天「ごめんごめん、私も今気付いた。取りに行ってくる?」

    初春「あ…………はい、ごめんなさい、ちょっと行ってきます!」

    佐天「はーい、行ってらっしゃい」

    黒子「わたくし達はここで待っていますから、早く行ってらっしゃいな」

    初春「すみません、すぐ戻ります!」


    だだだーっと走っていく初春の後ろ姿を見て、黒子はもう一度ため息を大きく吐いていた。

    619 = 1 :



    初春「えへへ…………大好きです、当麻さん…………」


    一人になり、言いたいことをここぞとばかりに言う。
    ビルの間を小走りに駆けながら心の中は彼の事で埋め尽くされていた。



    「ほら、探せええええええええ!!」

    「うおおおおおおおお100万はもらったああああああああ!!」



    初春「…………なんか今日、スキルアウトの人達多いなぁ」


    すると初春の目の前を数人のスキルアウト達が横切っていく。
    駆けていた足を止め、去っていったスキルアウト達を横目で見ながらやり過ごすと、再びその足を動かし始めた。




    あの時。







    黒子達と離れなければよかった。








    そう思う事が身に起きる事はまだ知らずに、初春は第一七七支部への道を駆け足で向かっていった。


    620 = 1 :


    ここまで

    また次回!

    621 :

    はぁ?
    寸止めかよ!?


    まあ楽しませて頂いてますから^ ^

    はげしくおつ

    622 :

    乙!
    シリアスの予感

    623 :


    女子生徒の名前ワロタww

    624 :

    乙。建てたフラグのメンテナンスも大丈夫な上条さんの巻。相変わらず初春がかわいいなぁ

    マジ浜面がどう関わるのか気になる

    626 :

    警告書き込みにですののAA使って直後にですのに逮捕されたら
    最強の警備員の正体はですのだと勘違いされそうだww

    628 :

    初春がかわいい・・・だと・・・
    しかし俺には五和がいるんだくそおおおおおおおおお

    629 :

    ならねーちんとルチアは頂こう

    630 :

    なら絹旗はおれが

    631 :

    なら遠慮なくオルソラを…

    632 :

    じゃあ僕はアンジェレネちゃんで

    633 :

    ではわたくしはおn、御坂さんを

    634 :

    では建宮は貰うのである

    635 :

    麦野はもらったって訳よ

    636 :

    お前ら無駄レスしすぎ

    637 :

    あげてるわけじゃないし
    VIPでもないんだし別にいいだろ

    638 :


    初春「鞄忘れちゃうなんて、私おっちょこちょいだなぁ」


     誰に言い聞かせる訳でもなく、自分で自分に苦笑いをしつつ置き去りになっていた鞄を持ち第一七七支部から室外に出る。
    扉を閉めた一秒の後、電子ロックが掛かった音を確認すると初春はビルの出口の方向へと足を進めていた。


    初春「………………………………」


     完全下校時刻が近い時間帯で、冬の夕方は夜の帳が下りるのが早い。
    人気が少なくなった――――いや、無くなったと言っていい程このビルは静かになっていて、閑散とした静けさに少々心細くなってくる。
    タッタッと駆け足気味に歩く自分の足音がやけに大きく感じられた。


    ―――早く戻らなきゃ。


    人気がなくなったとは言えども、ビル内を照らす灯りはきちんと灯っていてそれがせめてもの気持ちの救いになっていた。

     初春にとって大きな事件は、本日あっけなく幕を下ろした。
    事件が発覚してからの翌日スピード解決。
    それについては一安心、と胸をなで下ろしていた。

    自分が解決させた云々よりも、彼の力になれたという事が何よりも嬉しい。
    結局彼は犯人を許したとしても、何ら不満はない。
    むしろそんな彼の優しさが見れて、非常に嬉しかったのだ。


    初春「当麻、さん…………」


    胸がトクン、と脈を打つ。
    会いたい。声が聞きたい。
    抱きしめたい。抱きしめて欲しい。
    強く、強く。ふわわ……

    明日はジャッジメント非番の日だ。
    今までの初春なら、休暇を喜んでいたのだが、今は違う。
    また明日会えるかな、会いたいなとボソリと呟きながらビルの外へと出て行った。

    639 = 1 :


    しかしビルの玄関の外に出た矢先に機嫌が悪そうな野蛮な声が初春の耳に届き、足が止まってしまった。


    「んで? データカードは見つかったのかって聞いてんだよ」

    「い、いえ…………す、すみません…………まだd」

    「見つけて来いって言っただろうがよ!?」ゴッ

    「ぐはっ!! す、すみませ…………」

    「おらぁっ、てめぇもだよ!」バキッ

    「そ、そんな……ごふっ!!」


    初春「っ」


     ビルの柱の陰に隠れるようにしてそこから覗き込む初春の目に届いたのは、ビルの駐車場で数人の男達が一人の男に次々に殴られていく場面。
    何かグループ内で揉め事でも起きたのか、リーダー格らしき体格のいい男が数人の男達に罵倒を浴びせ暴行を働いていた。
    無抵抗の相手を殴り倒した所で、それでもまだ機嫌は収まらないのか鉄パイプを手にして側に駐車してあった白いセダンの車の窓ガラスを割る。

    ガシャン! という音が一際大きく響き、窓ガラスはあっけなく粉々になっていった。


    「あー、ムカつくなぁおい。クソむかつく。聞けば浜面の野郎が動き出したらしいじゃねえか。ああ?」

    「は、はい…………そ、そうみたいですね!」

    「あいつ俺達のグループ見捨てやがったと思ったら女達に囲まれてヘラヘラしやがって…………クソ!」バゴッ!!

    「っひぃ!?」


    初春「っ!」


    そう言ったと思えば鉄パイプで怒りに任せてボンネットを一心不乱に叩き、壊していく。
    その様子はまさに野蛮の一言で尽きてしまうほど荒れ狂っていた。

    640 = 1 :


    「あー…………クソだな、本当にクソだ。最近ヤレてねえし、女でも犯してスッキリしてぇなおい」




    「おい、君達何をしているんだ!? ああ、私の車が…………!?」




    すると、ビルの自動ドアが開き中からスーツ姿の中年の男性が出てくる。
    駐車場から聞こえる物々しい大きな音に気付き、出てきたのだろうか。
    男性はその車を見ると、怒りの視線をリーダー格の男に向ける。
    どうやらその車は、その人の車だった様だ。


    「ああ? ……………………はん、いいカモ見つけた」

    「どうしてくれるんだ! 私の車を…………弁償してもらうぞ!?」

    「おっさん、カネ持ってますかあ?」

    「ふざけるな! いいかお前ら、通報してやる!」

    「あ?」


    自分が潜む柱を通り過ぎ、車の元へと向かう。
    その人も怒りで冷静になれないのか、出てしまえばどうなるのか考える余裕はなかったらしい。
    寄ってくる男性を一瞥すると、リーダー格の男はその仲間達に視線を向け、首でちょい、と何かを指図するように動かしていた。


    「黙らせろ」

    「「「は、はい!」」」

    「な、なんだ君達は!?」


    そのリーダー格の男の命令を元に、男達がすぐさま男性を囲むように動く。
    …………マズイ、このままでは。

    641 = 1 :



    初春「あ…………ダメ…………!」


    このままでは、男性が暴行を受けてしまう。
    下手をすれば殺されてしまうかもしれない。
    学園都市では頻繁に、という訳でもないのだがそんな物騒な事件が度々起きる。
    ジャッジメントの自分としては、そんな状況を見逃せるものではなかった。

    応援を呼んでいる暇はないのだろう。
    早くどうにかせねば、どうなるか想像に難くなかった。
    恐怖はないのかと聞かれれば勿論そんな事はない。
    しかし、そんな悠長な事は言ってられる状況ではなかった。

    弱者の味方に、弱者の救済に。
    自身が掲げた正義の元に、初春は動く。





    初春「ジャッジメントですっ!」


    「あん?

















     …………………………………………ぐへ、女か」




    初春「…………………………………………っ!!」





    姿を現した初春の姿に、リーダー格の男の目が光った様な気がした。

    642 = 1 :



    「ちょうどいいトコに現れたなあ、おい」

    初春「そ、その人を離してください!」

    「ああ? 俺達はまだなぁんにもしてねえぞ、可愛い風紀委員サン?」

    「な、何を言っているんだね!? 私の車をこんな風にしておいて!」



     リーダー格の男が初春に近づいてくる。
    腕に付けた腕章に目をやると、初春がジャッジメントだと気付いたのか更にその目を狡猾に細めていた。
    後ろでは男性のそんな声が上がっていたのだが、リーダー格の男の下っ端らしき男達が取り囲む様に男性との距離を縮めると、男性の威勢よく上がっていた声が情けなく萎んでいく。
    自身の身に降りかかるであろう危機にようやく気が付いた様子だった。



    初春「っ…………!」



    近づいてくる男に、初春はその身を強張らせた。
    男の表情は、まさに卑猥に歪んでいる。
    自分が風紀委員だろうが何だろうが、そんな事はお構いなしにただ自分の欲求を満たしたいという気持ちさえ感じ取れてしまう雰囲気に、初春は息を飲んだ。


    まずい。
    周りに目を向けるが、自分の力になれそうなものは何一つない。
    ただ男と、今更恐れる男性とそれを囲む男達と。



    「ま、確かに捕まるような事をしちゃうかもしれねえけどなぁ?」



    ガッ――――――と腕を掴まれ、身動きを取れなくされてしまった。

    643 = 1 :


    初春「っ!!」

    「さぁて、俺達はお楽しみタイムにでも洒落込もうかぁ」

    初春「そ、そんな事したら自分がどうなるかわからないんですか!?」

    「あぁ? 俺を捕まえようってか? はは、安心しろ嬢ちゃん。そんな事気にならない程の快楽の世界に連れてってやるからよ?」

    初春「!? い、いや…………離して!!」

    「ま、恨むんなら自分の運のなさに恨むんだな。はっ、いや寧ろ幸せだって思えるようにしてやんぜ?」

    初春「ぃ、いや…………!」


    なぜ、この男はそんなに血走った目をしているのだろう。
    なぜ、自分は力がないのに飛び出してしまったんだろう。
    なぜ、自分は力がないのだろう。


    なぜ、こんな事になったんだろう…………………………………………。




    「ほらぁ! さっさと入れや!」





    初春「きゃっ……………………い、いや…………と、当麻さん……………………!」



    乱暴に引っ張られ、男達が乗ってきたと思われるワゴン車に押し込まれる。


    初春の力では、到底跳ね返せるものではなかった。

    644 = 1 :


    佐天「なんか初春おそいなぁ…………」

    黒子「鞄が見つからないのでしょうか?」


     先ほど別れた道の途中で、大分時間が経つのだが初春が戻ってくる気配がない事に佐天と黒子は疑問を持ち始めていた。
    場所は第七学区の彼女らが度々訪れているファミレスの真ん前。
    暗くなった空の黒に反発しあうような明るさは、まだまだ少女である彼女達にとって少しでも気分を休めてくれるのだが今は違う。


    「いいからさっさと来る。わかった? 30秒だけ待っててあげるから。遅れたら壁のシミよ?」pi

    「全く、超馬鹿面の癖に私達の呼び出しに応じないとは超お仕置きの必要がありますね」

    「大丈夫、私はそんなはまづらが一週間床に伏す事になっても看病する」


    ふとそんな会話がファミレスから出てきた女の子達三人から聞こえる。
    初春と同年代くらいの女の子の声がして、彼女がもしかしたらいるのではないだろうかとそちらに目を向けるのだが当然彼女の姿はそこにはなかった。

    何か、嫌な予感が抜け切らない。

    基本的にしっかりしている初春の事だ、どこに鞄を置いたのだろうとか、道に迷ったとかそんな事にはならずにそんなに時間もかからずに戻ってくるだろうと予想していたのだが。
    しかしあれから何十分が過ぎようとしていたのだろうか。
    ここからなら、支部は五分もかからずに着ける距離のはず。
    鞄を取って戻ってくるだけの話だ、10~15分もあれば十分なのに。
    最近幸せに浸って上の空の時が多いといえども、ものの分別はしっかり出来る子だ、それなのに。

    まだ、彼女は戻ってこない。


    黒子「何かあったのでしょうか……………………」

    佐天「私、電話掛けてみます」


    妙な嫌な予感を感じたまま、佐天はおもむろに携帯電話を取り出す。
    初春の番号はショートカットに登録してあるため、彼女の番号を呼び出すのは造作も無い。
    pi、piと二回ほど携帯のボタンを押すとすぐさま電話を耳に当てた。

    645 = 1 :


    ―――初春……………………!


    prrrrrrrr、prrrrrrrrrrr………………


     相手の応答を待つ音が佐天の耳に響く。
    1コール、2コール、3コール。
    早く、早く出て。

    prrrrrrrrrっ

    そして5コール目で、その音は止まった。


    佐天「もしもしっ、初春っ!?」


    しかし。


    『おかけになった電話は、電波の届かない所にあるか電源が入っていないため、かかりません』


    『もしもし』と可愛らしいいつもの声とは違った。
    顔も知らないのに聞きなれた女性のアナウンス音が佐天の耳に届くと、佐天の表情もいよいよ険しくなる。

    おかしい。
    彼女は自分からの着信は必ず取ってくれていたのに。
    今まで時間がない時でも、それでも出て返答をしてくれていた。
    だが今は、出ない。

    バッと初春が歩いていった方向に目を向ける。
    もう近くまで来ていたから、応対する必要がないために出なかったのではないだろうかと期待を寄せてそちらを見たのだが。
    しかし、あってほしいものはなかった。


    『ご用件の方は、ピーッと言う発信音の後にお名前とご用件をお話ください…………』

    佐天「もしもし初春!? 気付いたら、すぐ電話して!」


    そのままでいた佐天の耳にアナウンスの続きが聞こえると、佐天はそう言うとすぐさま電話を切った。


    黒子「出ませんでしたの?」

    佐天「はい……………………初春…………」

    黒子「大丈夫でしょうか…………?」

    佐天「早く戻ってきて…………!」


    半ば嘆願するかのように呟く佐天。黒子も勿論心配の色が取れずに初春の身を案じていた。
    いつ彼女がここに戻ってくるのかはわからない。
    電話が繋がらない以上、下手に動いてもすれ違ってしまうだけだろう。

    646 = 1 :


    「しかしこのクソ広い学園都市の中で一枚のそのメモリーカードを探すなんて無理なんじゃねえか?」

    「最初は俺もそう思ったんだがな。だがこの有力情報をあたってみてから考えようぜ?」

    「ま、それもそうだな。たったそれだけで50万な訳だもんな」

    「50万もあれば女何人喰えるんやら…………へへ、楽しくなってきたぜ!」

    「……………………そろそろお前も特定の相手を見つけろよ」

    「うるせぇ! スキルアウトやめて三人もの女に囲まれてるテメェには言われたくねえよ!」

    「俺は一人に絞ってるんだって!」

    「は、それはどうだか。前に聞いた女三人全員を食っちまってr 「はーまづらぁ……………………?」 ひっ、だ、誰!?」

    「げ、む、麦野!? ファミレスん中で待ってるんじゃなかったのかよ!?」

    「そりゃあんたが来るの遅かったからねえ……………………?」

    「ってかその隣の超見てくれの悪いヤンキー男は誰ですか?」

    「み、見てくれの悪いヤンキーって…………」グサ







    佐天「……………………」

    黒子「……………………佐天さん、初春はもしかして」


    『スキルアウト』という単語が佐天と黒子の身を一瞬震えさせた。

    スキルアウト―――原則的には無能力者の武装集団を指す。
    もっと簡単に言えば、不良やチンピラの様なもの。
    そしてそんなスキルアウトによる残虐な事件や抗争の仰々しさを物語るニュースが、この学園都市では後を絶たない。

    『普通』の世界の者達からすれば、絶対に関わりたくない存在だ。

    647 = 1 :


    そんな騒がしい会話を横で聞いていた佐天と黒子の嫌な予感が更に強くなる。
    もしかしたら、初春は……………………

    佐天は嫌な予感が更に強くなっていったのを感じた。
    初春が、初春が。

    そうであってほしくない。
    大切な友人の身に、なにかあってほしくなんかない。



    「ってかおい、まじでカワイイ子達じゃねえか……………………それより浜面、『ブル』の奴からなんかさっきメールが来たんだけどよ、女捕まえたとか言ってやがったぞ?」

    「はあ?」

    「浜面…………滝壺さんという人が超ありながら…………」

    「はまづら…………? どういう事…………?」

    「た、滝壺、ち、違う俺じゃない! ってかなんでお前今そんな事言い出すんだよ!」

    「いや、なんかここで言えばお前が面白い事になりそうでな?
     なんか『土下座したら浜面も参加させてやる』とかなんとか書いてあったぜ?」

    「浜面ぁ…………………………………………?」

    「これはもう超言い逃れできませんね…………?」

    「はまづら…………もう、応援できないよ…………」

    「違うんだ! 滝壺おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

    「にしても、『ブル』の奴。写メも送ってきやがったんだが、まだ子供じゃねえか。ほら浜面、見てみろって」

    「見ねえよ!?」

    「浜面に余計なもの超見せないで下さい」パシッ

    「なになに? どんな子なの?」

    「俺も…………参考までに…………」

    「はまづら…………………………………………」

    「ウソウソ! 冗談だって滝壺!」

    648 = 1 :






    ただやはり悪い予感というものは。





    「うわ、まだ小さな子じゃない!」

    「私と同じくらいでしょうか…………? あれ、この子超ジャッジメントですか?」

    「頭に花飾り、カワイイね。それより、捕まえたって何?」

    「ん、んぅんん!! 滝壺は気にしなくてもいいからな?」














    佐天「え………………………………………………………………?」

    黒子「…………………………………………っ……………!!??」



    どうして、こんなにも的中してしまうものなのだろうか。


    649 = 1 :


    モタモタしちまった、ごめん

    また次回!


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