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    元スレ上条「俺がジャッジメント?」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★
    タグ : - とある魔術の禁書目録 + - 上条 + - 初春 + - 御坂美琴 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 1 :

    …………orz

    54 :

    おもすれー。期待してます。

    55 :

    所々文章がおかしいと思うんだが、
    俺の理解力が足りないせいか?

    56 :

    脳内補完という言葉を知らない分理解力が足りない

    57 :

    とうとう理事長以外の上層部も幻想殺しに対して動き始めたか
    暗部じゃないだけよかったな

    58 :

    おい続きはまだか

    59 :


    「とうまー、ご飯まだー?」

    「おー、すぐ出来るぞ。箸並べといてくれるかー?」

    「うんっ、わかったんだよ」

     フライパンを転がし、ジュージューと音を立てて野菜を炒める。
    インデックスも待ちきれないかの様に急かすが、もうすぐ出来るという上条の言葉に目を輝かせて箸を並べはじめた。

     この日の帰りがけに、口頭でも伝えたのだが改めてジャッジメント志望の書類を黄泉川に提出した。
    その際、隣にいた小萌に「上条ちゃんは先生の補習を受けるのが嫌なんですね」なんて泣かれて必死になだめた。
    だが補習が嫌だったからという訳ではなく、先の事も踏まえしっかりと理由を説明した。説明したらしたで別の意味で涙を流させてしまい、また慰めるのに一苦労したのはいい思い出だ。

    「ごっ飯、ごっ飯♪」

    即興の歌を口ずさみ、夕食を今か今かと待ち焦がれているインデックスの様子に平和だなーと感じた今日この頃。

     そんな平和が、上条は好きだった。

    60 = 1 :


    「あっ」

     昼休みに初春が鞄から弁当箱を取り出すと、見た事がある布切れが落ちた。

    「あれ?初春こんなハンカチあったっけ。…………むむ、これは男物…………!?」

    水色を基調としたそのハンカチに、佐天は少し目を丸くしながらそれを拾い上げた。
    初春といえば年相応の可愛らしいハンカチしか持っていなかったはず。それを何故知っているのかと言えばまぁいつも一緒にいるからとしか答えようがないのだが、女の子はそういう所にも目を付けるのだろう。

    「ねね、これって初春が前に言ってた助けてくれたって人の?」

    「そうですよ」

    ──……返すの、忘れちゃってたなー…………。

    あの時。
    不良に突き飛ばされて、肘を擦りむいた際に差し出されたあのハンカチ。
    返そうと思って、洗濯してアイロンまで掛けていたのだが、突然の再会に少し戸惑い返す事を忘れてしまっていた。

    あの時はジャッジメントの仕事の時で、黒子が連れてきて話をして。
    その時、何故か「話しやすいな」という印象を受けて。
    美琴と黒子の知り合い、というのも相乗しているのかもしれないが、会ったばかりの、しかも年上の異性だというのに初春は気付けば色々な事を話していた。

    『楽しかった』

    結果的に残った感想は、何故かそれ。
    黒子からの話によると「たらし」だの「低脳」だのかなりの悪評だったのだが、自身が感じたそれは真逆だった。

    「初春って、最近何だか上の空だよね」

    「へ?そ、そうですか?」

     自分の真正面で少し心配そうな、また何故か期待をも込めた表情で佐天は呟いた。

    61 = 1 :


    「で、それ以降その人には会えたの?」

    「昨日会ったんですよー、また事件に巻き込まれていたみたいで。それでジャッジメントの支部で事情聴取という形で白井さんが連れてきて」

    「おお」

    「それで、色んな話もしたんですよー。ジャッジメントの仕事とか、なんで私がジャッジメントになったかとか」

    「そうなんだ。何だか初春、楽しそうだね」

    「へっ?」

    これは面白いおもちゃを見つけた!とばかりに佐天の目が光った気がした。
    こういう時、嫌な予感がするのは気のせいなのだろうか。

    「初春にも春の兆しが見えてきたのかなー?」

    ニヤニヤと口角を吊り上げた笑いを見せた佐天。

    「ち、違いますよー」

    だがまだ会ったばかりの相手に、そういう答えを出すのはまだ早い気がした。
    ぶっちゃけ佐天から言わせれば、そんな赤い顔を見せられれば大体の意味は分かってしまっていたのだが。

    62 = 1 :


    「お、上条。ちょっと来るじゃん」

    「あ、はい」

     翌日、昼休みに廊下で上条は黄泉川に呼び止められた。

    「くぅ~、カミやんあの乳を独り占めかいなー。羨ましいかぎりやdへぶし!」

    隣を歩いていた青ピにゲンコツを入れておき、先を歩いた黄泉川についていく。
    まぁ話はジャッジメントの事なのだろう。

    「書類は正式に受理されたみたいじゃん。あとは試験があるんだが、いつが都合がいい?」

    「え、いつがいいって……?」

    いつ?こういう試験は決められた日に行われるのが大体だろう。

    ──って言うか…………いつだ?

    そういえば。
    上条は試験の日取りを知らない。
    まあ冬のごたごたした季節だ、来春辺りに試験はあるのだろうと思い、ゆっくりとそれに向けて勉強しようかなーなんて考えていた。

    「言い忘れてたじゃんよ。試験は」

    しかし試験内容に何が出るのか、あまり情報を掴んでなかったりする。
    体力面では…………一応自信はある。
    それはよしとして、あとは何だろうか。
    一般教養?専門知識?
    恐らく、いやきっとそれをも含めた13種類もの適正試験があるのだ、どんな内容が出るのかわからないとやはり不安になってくる。

    そんな事を考えていたら、話を聞き落としそうになっていたが次の黄泉川の言葉に上条の思考は停止を余儀なくされる事になる。







    「三日後、じゃんよ」






    「…………はひ?」




    うん、詰んだ。

    63 = 1 :


    「とほほ…………」

     上条は途方に暮れていた。
    夕焼け滲む栄えた町並みを、肩を落としながら家路に着いていて、彼の背中は少し煤けてみえるぜ状態であった。

    それもそうだ。いきなり三日後に試験があると言われれば焦るどころではない。
    なら今回のは諦めて次の試験に臨めばいいのでは?と普通は考えてしまうのだが、次の試験はどうやら来春頃になるらしく。
    ぶっちゃけ出席日数が足りない上条にとって、ジャッジメントになる=補習免除とはかなりのアドバンテージだったりする。

    出席日数が足りないのならば、『休まなければいい』のお考えはは常日頃、様々な事件に巻き込まれる不幸体質の彼にとって実に短絡的な極論なのかもしれない。
    巻き込まれたら巻き込まれたで放っておける様な立派な性格はしておらず、自身がいくら傷付こうが解決するまで奔走する。
    結果、長期の入院生活を送る事になるのはもはや彼にとって日常茶飯事になりつつあったりもしていた。
    だから、出席日数が足りない。
    学校が嫌いな訳ではない。むしろ好きだ。
    事情があるとはいえ、これ以上の欠席は死活問題だ。

    極端に言えば、進級がかかっている。

    故に、ジャッジメントになれるとすればなるべく、早めになっておきたかった。

     一応受けるか否かの判断は直前まで出来るらしく、どうしようかななんて考えながら、上条は通り道であるあの公園に差し掛かった。



    「…………か、上条さん」

    「ん?」

    するとまだあどけなさが残る少女の声が上条の耳に届き、上条は振り返った。

    「おー、初春さん。昨日ぶり」

    あの特徴的な花飾りを頭に乗せた、上条が目指すジャッジメントの初春がもじもじと腰の辺りで手を組み、立っていた。

    64 = 1 :


    「はい、昨日ぶりですね」

     彼のにこっとした笑顔を見ると、何だか少し嬉しい気分になった。
    やっぱり、この人は接しやすい。
    年上の異性は初春にとって少々苦手意識を持ってたりするのだが、この上条には不思議とそれがなかった。

    「あれ、初春さんこっちの方なの?」

    「これをお返ししようと、思いまして」

    「おー、そうか」

    鞄から水色のハンカチを出す。
    綺麗に折り畳まれたそれを差し出すと、上条は受け取った。

    「もう腕は大丈夫?」

    「あ、はい。包帯巻いてたんですけど、かすり傷くらいだったのでもう絆創膏だけで大丈夫ですよ」

    「ならよかった」

    長袖の制服なので捲って見せるまでもしないが、大した事はないと告げると上条も安堵の表情を見せた。

    「あの、本当にありがとうございました」

    ペコリと頭を下げる。
    あの時、彼がいなかったらどうなっていた事だろう。
    あの不良達を止めれたとは到底思えず、恐らく自分ももっと傷が増えていたのかもしれなかった。

    「はは、そういうのはよしてくれよ」

    笑いながらそう言う上条に、そういえば美琴からも同じ様な事言われたななんて思い返しつつ。
    少し、上条と美琴の関係が気になった。

    65 = 1 :


    「あれ、上条さん、それって」

    しかしふとそこで上条が手にしていた茶色い封筒が初春の目に留まり、気付けば尋ねていた。
    その茶色の封筒は、初春も見覚えがあるものだったりする。

    「ああ、これか」

    「それは…………ジャッジメントの……?」

    「ん、まあ、そうだね」

    上条は困った様に苦笑いをしながら後頭部をぽりぽりかいて見せた。
    初春もジャッジメントだ、これが何か分かったらしく、言い当てると少し恥ずかしそうにして上条は答えた。

    「上条さん、ジャッジメントに?」

    「んー、まあなれるかどうかはわかんないけど、一応受けてはみようかなと…………ん?あ、そうだ」

    「?」

    言葉を出している途中で、何かに気付いた上条は初春の方に向き直った。

    「試験、どんなのが出るんだ?」

    「あ、試験ですか」

    初春は顎に指を当て、思い返す仕草を見せた。

    「んー…………」

    「…………」

    「えっと…………」

    「……………………」

    「んーと……………………」

    「…………………………………………」

    そういえば試験、どういうのが出たんだっけと思い返してみる。
    とはいえ初春が試験を受けた時も、緊張しからかがむしゃらだったりしていたので、試験内容は…………そういえば、あまり覚えていなかった。

    66 = 1 :


    「あー、ごめん。やっぱそういうの言えないよな…………?」

    「あ、そ、そんな事ないですよ」

    少し答えるのが遅くなった初春に上条が申し訳なさそうな表情をして謝ってきた。

    「あ」

     そこで初春はある考えが思い付く。そういえば上条に、まだきちんとしたお礼をしていない。
    それを踏まえて、初春はある提案をする事にした。

    「上条さん」

    「はい」




    「私の部屋に、来ませんか?」



    「……………………はい?」


    そこで上条の思考は本日二回目だが飛ばされる事になった。

    67 = 1 :

    遅くなっちゃった、ごめんなさい
    次は早めに投下するよ、また次回!

    68 :

    >>1乙~

    あせらなくてもいいのでございますよー

    69 :

    乙乙!!
    さあさあどうなる上条さん
    てか初春さん急にそれは凄いですよ……

    70 :

    初春が初心なのに大胆で可愛すぎるんだが

    71 :


    初春さん特になんも考えてないんだろーな
    きゃわいーよー

    72 :

    部屋に行く→ご飯→お泊まり→せく(ry
    この流れですねわかります

    73 :

    ネットで過去問見つけようとして初春が頑張ると勢い余って
    今回の試験問題まで見つけ出しそうだww

    74 :

    てめーおい上条当麻きさまなに初春さんの部屋でイチャコラしようとしてんだぁん
    とにかくいいから代われ俺と代われっていうか代わってくだしあ

    75 :


    ──えーと…………この状況は一体…………。

     見慣れない部屋で、出されたお茶に口をつけつつ上条はそわそわしていた。
    目の前には白を基調とした座卓と可愛らしいティーカップ。
    そして本棚にてゴソゴソと何やら探す仕草を見せる初春。
    その本棚の横に設置されている学習机の上には、彼女の特徴的ともいえるあの花飾り。

    「うーむ…………」

    なぜこんな事になったんだと考えるが、まあホイホイついてきてしまったのは何より自分だ。
    しましここに来てすぐに初春は本棚と向き合った為、上条はただ座ってお茶の中に写る自分と睨めっこをするしかなかった。

    出されたお茶に、少し口を付けるのを躊躇ったのだが出された物を遠慮する訳にもいかず、また貧乏性がここで発動してゴキュゴキュとまではいかないがチビチビ飲んでいた。

     どうにも慣れない女の子の部屋。それに寮だったのだが、何故かここの寮監は上条の姿を見てもスルーしたし。
    …………まあそれは仕方がない、結構なヨボヨボのお婆さんだったのだから。

    しかし最早そんな事はこの際どうでもいい。
    問題はこの小さな女の子の部屋で、思春期真っ盛りの男子学生がいる事だった。

    「えーと、確かここに…………あ、あった」

    この小さな部屋に二人きりという状況。
    しかもそこまで仲良いという訳でもない、というかまだ会って間もない間柄なのだ。
    人見知り、という性格でもないのだが、状況が状況であって、さすがの上条もどう対処すればよいのかわからなかった。

    ふとそこでそんな声がしたので、上条はそっちの方に向くと、何やらこの部屋の主の初春は教科書サイズの本の様な物を手にしていた。

    76 = 1 :


    「はい、上条さん。これ、ジャッジメントの試験の過去問です」

    「お、おお…………ど、どうも」

    可愛らしく微笑みながら差し出されたそれを受け取ると、上条はしどろもどろながら礼を告げる。
    なるほど、自分がここに連れて来られたのはこれを渡す為だったのかと少し納得した。

    「…………」

    「……………………」

    「…………………………………………」

    しかし、それっきり沈黙状態に陥った。

    「…………………………………………へ、へー。こんなのが試験で出るんだな、うん」

    それに初春はそれっきり、何やらモジモジし出してしまったし。
    この状況に慣れていない上条は、どうすればいいのかわからず。

    そして何より、沈黙が痛い。

    気を紛らわそうとピラ、と中身を少し確認する。

    「…………」

    だがこの状況で内容などしっかりと頭に入る訳でもなく、ただ羅列された文字を見るだけ。

    「…………ぁの…………ぇと…………」

    「そ、それじゃこれ借りるとして、そ、そろそろおいとましようかな、はは…………」

    初春が何かを呟きかけた所だったが、上条の耳には届かず そそくさとそれを鞄の中にしまってしまった。

    「ぁ……………………」

    それにハッとした初春は、少し寂しそうな表情を浮かべていた。

    77 = 1 :


     ジャッジメント試験の過去問を探していた時、背中を向けていて助かったのだがその時の初春の顔は真っ赤であった。
    実際、キチンと整頓された本棚にあった為、すぐさま渡す事も出来たのだが、気を落ち着かせる為わざと探すフリをして少し時間を稼いでいた。
    ぶっちゃけ首元まで真っ赤だったのだが、上条は気付かなかったか、キョロキョロと意識が別の方に行っていたかある意味助かっていた。

    しかしそこからは…………沈黙だ。
    何より、話題がない。
    異性と話すのにも慣れていない初春だ、なかなかに積極的に話し掛ける、という事まで出来やしない。
    相手が佐天や黒子だったら気も楽なのだが、恩人の上条だ。

    そもそも。

    ──何で部屋に来ませんかなんて言っちゃったの私────────!

    ぶっちゃけ、無意識だった。
    お礼をしなくちゃいけない、という強迫観念からだったのだろうか。
    それともまた別の意図があったからなのだろうか。

    それはまだ、初春自身も分かっていない。

    「……………………」

    「……………………」

    二人して沈黙を守りながら、時間が過ぎる。
    カチコチ、という時計の針の音だって脳にまで響き渡る程の沈黙。

    いや、でも初春にはお礼をするという自身に科した任務がまだ残っている。
    いや、お礼をしなければいけないのではない。


    お礼を、したかった。

    78 = 1 :



    「ぁの…………ぇと…………」

    しかし。

    「そ、それじゃこれ借りるとして、そ、そろそろおいとましようかな、はは…………」

    そういい、上条は過去問を鞄の中にしまい、立ち上がってしまった。

    「ぁ……………………」

    「まあ、試験明けたらこれ返すよ。ジャッジメントの支部に行けばいいか?」

    彼が、帰ってしまう。
    どうすればいい。このまま帰してしまうのか。

    「これ、ありがとな。ジャッジメントになれたら、その時はよろしくな。はは、でも受かったとしてもどこの支部の配属になるかわかんないけど」

    「ぁの……………………」

    喉の奥まで出かかった言葉。

    「あー、それと一つ。お礼とか、そういうのは本当にいいからな。…………って言うか、この過去問借りれるだけで十分にお礼貰ったぞ」

    「ぁ…………は、はい…………」

    そうじゃない。
    自分だってそれはお礼のつもりじゃない。
    そうじゃなくて、もっといいものでお礼をしたい。
    こう…………心に残るものを、彼に。

    「うん、それじゃ。お邪魔しました」

    しかし────────。


    「あ、はい…………さようなら…………」


    自分の口から出た言葉は、それだった。

    79 = 1 :





     バタンと音を立てて閉められたドアに、じっと視線を送り続ける初春。
    先程の沈黙の静寂より、更に深い音無き世界が初春を包み込んだ。

    どうしてだろう。

    どうして。


    「行っちゃった…………」


    どうして、こんなにも寂しさが込み上げてくるのだろう。



    「私の……………………意気地無し」



    出会って間もない彼なのに。
    どうしてこんなに、気にしてしまうのだろうか。



    初春の言葉をも、その静寂が飲み込んでしまっていた。

    80 = 1 :


    「ふぃー…………」

     自宅に戻り、夕食と入浴も済ませ上条はテーブルの前に座っていた。
    インデックスはどうやら小萌にお呼ばれしたらしく、

    『こもえの所に焼肉パーティ行ってくるんだよ』

    という書き置きがあっただけでインデックスの姿はなかった。
    普段ならエネルギー摂取だとここぞとばかりに上条も相伴にあずかっていた所なのだが。

    「せっかく借りたんだし、やる事しっかりやっとかなねーとな」

    テーブルの上に広げられたジャッジメントの過去問とノート。
    所々可愛らしい文字で注釈など書かれていたりしていて、結構使い込まれた様だった。

    「初春さん、か…………」

    小さな女の子。下の名前は、まだ知らない。
    美琴や黒子の友達で、ジャッジメント。

    「自分の信じた正義は決して曲げない、か」

    あの時話してくれた初春の事。あんなに小さな女の子なのに、信念をしっかり持っていて。
    黒子の様な戦闘能力は持たずとも、あの時もそれに従いあの不良達を制しようとした。

    81 = 1 :


    思い返す。
    インデックスの事、美琴の事、天草式、イギリス清教、その他にも色々と。

    その時、自分は何を信念として守ろうとしたのか。
    激情に駆られて体当たりをするだけの時もあった。
    結果的にはよかったのかもしれない。結果だけを見れば。

    異能をなんでも打ち消すこの幻想殺しが、運を掴んだだけなのかもしれない。
    次何かあったとき、果たして自分は生き残れるか、それもわからない。

    わからないのだが────。

    「でも、やっぱ…………。守りてーよな、この平穏な日常を」

    たくさんの笑顔を、守りたい。
    やはりそれが自分にとっての、信念、なのだろう。

    「……………………よし、やるか」

    パンパンと二回頬を叩いた上条は、再びノートの上にペンを走らせはじめた。

    82 = 1 :


    「ええええええええええ、その人を部屋に呼んだああああああああ!!??」

    「ちょっ、佐天さん……声が大きいです!」

     昼休み、初春の目の前の佐天が絶叫の様な声を上げた。
    咀嚼していたご飯粒をも撒き散らす様から驚いた様子が実に大きいことを表していた。
    当然クラス内の視線は二人に集まり、初春は恥ずかしそうに苦笑いを浮かべ、佐天は別段気にしていない様子だった。

    「うっわー…………初春ったら大胆…………」

    「あはは…………ですよねー……」

    とは言うものの、初春は部屋に上条を呼んだ事よりも、結局お返しも何も出来なかった自分への落胆の様なものの方が大きかったりしていた。

    「でさ、初春。向こう、高校一年生の男の訳でしょ?何もされなかったの?」

    「何もしてませんよ!へっ変な事言わないで下さいっ」

    ニヤニヤしだした佐天を非難するかのように真っ赤になって反論するが、佐天にはあまり効果はないようだ。

    「でもさー、初春。やっぱり危なかったんじゃないの?それって」

    「あ、危ないって…………上条さんはそんな人じゃないですぅ」

    プクーッと頬を膨らまして怒る仕草を見せる初春だが。
    だが佐天は上条の事を知らないのだ、親友として心配するのは当然に決まっている。
    それを感じた初春は感傷的にならずに、そんな佐天に感謝をしながら卵焼きに箸を伸ばした。

    83 = 1 :


    「けど、初春って男子と話すのにも慣れてない感じじゃん?よくそんな事したよねー」

    「それは…………その、勢いって感じで…………」

    いまだに何故自分が上条を部屋まで招き入れる行為をしたのかは分かっていない。
    異性の上に、会って間もない人物。
    自分を助けてくれたとはいえ、上条も男なのだから初春も自身のした事に少し恥ずかしくなってきた。

    「で?」

    「…………?」

    「何しに呼んだの?初春は」

    「あ、はい。上条さん、どうやらジャッジメント志望みたいなので、試験の過去問を渡そうと思いまして」

    「それだけ?」

    「……………………いえ。本当は助けてくれたお礼もしようと思いましたけど…………」

    「そこで帰っちゃったんだ?」

    「…………はい」

    あの時の上条の帰ってゆく後ろ姿を思い出して、初春は少し憂鬱な気分になったり。
    佐天もむむむ、と腕を組んで考え事をしはじめたのか、黙りこくってしまった。

    だが実際、お礼をするといっても具体的に何かをするという考えもそこまである訳でもなかった。
    何かしたい、という思いはあっても何をしようか決まらず、それも結局あの時何も言い出せなかった原因に起因しているのかもしれなかった。

    「それで、明後日には試験があるって言ってましたし…………早く帰って勉強でもしたかったのかも、だから無理に引き止めるのもどうかな、なんて……」

    とは言い繕うが、実際はどうだろうか。
    あれだけの寂しさが胸に去来したのだ、本当は引き止めたかったはず。
    だから何度も何かを口にしかけたし、背中をじっと見つめていた。

    どうしたんだろ、私──とタコさんウインナーを口に運ぼうとすると。

    84 = 1 :



    「ねね、初春」


    「あ、はい」


    そこで佐天がパッと組んだ腕を外し、ズイッと初春の顔を覗き込んだ。








    「初春。その人に、恋、しちゃったんじゃないの?」






    「………………………………ふぁい?」



    タコさんウインナーが、ポロッとこぼれた。


    85 = 1 :

    ここまで
    また次回!

    86 :

    >>1

    またスレタブが増えた……

    88 :


    あの、別にケチつける訳でもないんだけど、初春の部屋って春上さんいたよね?
    他のSSとかでも佐天さんが部屋に来たりしてるけど春上さんどこいっちゃってるんだろか?

    89 :

    だってアニレーはパラレルだし

    90 = 88 :

    パラレルってわけじゃないと思うけど…
    あぁ退院した絆理ちゃんと一緒に暮らしてるのかもしれんねって事で自己完結しとく
    しょうもない疑問流してゴメンなさい

    91 :


    やっと初春は自覚できたのかな?
    上条さんが家に来た時のくだりは2828が止まらんかった
    「彼の心に残るような」とかねえ

    92 :

    ある意味既に上条さんの心に残っているけどな

    93 :



    初春が初春らしいな
    続きがすごく気になります

    そして、インさんを追い出す理由はどの作者も大体小萌の家で焼き肉パーリィだなwwwwww

    94 = 88 :

    イン「べ、別に焼肉が食べたい訳じゃないんだよ!私は空気が読めるシスターなんだもんね」

    95 :

    >>88
    こまけぇこたぁry
    二次創作なんだからもっと柔軟に受け止めようぜ

    >>89
    原作の何巻か忘れたけど、見開きのカラーページに初春・佐天・春上が並んでるシーンがあったぞ
    かまちー的にはパラレルする気はないんじゃね?

    96 = 91 :

    >>95
    新約一巻でそれだったからかまちーはもう正史に組み込んでるよね

    97 :

    ただのファンサービスってやつじゃ……
    というか、時系列の矛盾とか発生してなかったっけ?

    98 :

    エリーもどっかで焼き肉に呼ばれたって事でいいじゃんwww

    99 :

    >>97
    一応、時系列的にはアニレーオリジナルの話は8/2~9の間だと思われてる
    ちなみに妹達編は8/10から
    つまり美琴さん超過密スケジュール

    つかそろそろこのスレと関係ない話をgdgdとするのはやめようぜ
    春上は>>98で良いんじゃね?ww

    100 :


     恋、恋、恋────────。

     特定の人物に強く惹かれる様。切ないまでに深く想いを寄せる事。
    気付けば、自室でキーボードを叩いてその意味を何度も熟読していた。

    『初春。その人に、恋、しちゃったんじゃないの?』

    佐天の言葉が脳裏に蘇る。
    自分が、恋。
    とても、不思議な感覚。

    テレビで役者が演じる恋愛ドラマも見た事あるし、ネットで恋愛小説も読んだ事もある。
    だがそれに示されていたのは、主に客観的なもので主観的なものはそこまで深くは伝わってはこなかった。

    相手を思うと、胸の動悸が収まらない。
    頬が熱を帯び、紅潮している。
    切ないほどに、もう一度会いたい。



      これが、恋なのか。



    初春はマウスから手を離し、少し息を吐いて天井を仰ぐ。
    昨日は、この部屋に彼がいた。
    そうか、彼を呼んだのも、引き止めたかったのもこれが理由なのか。
    そう思えば、実に簡単な答えだった。
    そう思えば、昨日感じた寂しさだってちょっぴり愛しさが込み上げてきた。

    不思議な感覚。不思議な胸の痛み。
    でも、嫌な気分ではない。

    一人の少女が、はっきりと想いを自覚した瞬間であった。


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