元スレ朋也「軽音部? うんたん?」2
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
151 = 1 :
春原「なんだったら、今から探しに出る?」
春原「運よく見つけられたら、話しかけられるぜ?」
梓「い、行きたいです!」
澪「私も!」
律「おまえら、きのうちゃんと練習しろとか言ってなかったか?」
澪「い、今は緊急事態なんだから、しょうがないだろっ」
梓「そうですよっ」
律「めちゃ力強いな、おまえら…」
さわ子「…私も行くわ」
律「うえぇっ? さわちゃんもかよっ!? でも、いいの? 仕事ほっぽりだして」
さわ子「大丈夫。バレなければいいのよ」
さわ子「こんなこともあろうかと、用意しておいた衣装があるの」
立ち上がり、物置へ向かった。
そして、俺たちのよく見慣れた服を手に戻ってくる。
さわ子「これよ」
唯「あっ、光坂の制服だぁ」
152 :
まだ前スレ>>300辺りまでしか読んでないっつか50レス読むのに30分以上かかるww
もう前スレ書き込めないし落ちて読めなくなったらどうしよ…
153 = 5 :
さわ子「そうよ。これを着て、生徒に変装するの」
律「いや、変装っていうより、コスプレに近いんじゃ…」
さわ子「歳的な意味で言ってるなら、死ぬことになるわよ?」
律「とっても似合うと思いますっ」
さわ子「よろしい」
―――――――――――――――――――――
外へ出てきた俺たちは、早速芳野祐介を探し始めた。
といっても、闇雲に動き回っているわけじゃない。
琴吹の携帯…それも、なにか特殊な業務に使われているものらしいのだが…
それを使って、周辺の工事情報を集めてから、手分けして現場に当たっていた。
―――――――――――――――――――――
紬「あの中にいる?」
春原「いや、いないよ」
紬「そう…」
これで、回ってきたのも3件目。
まだ他の連中からも、目撃の連絡が来ない。
春原「今日は仕事ないのかもね」
154 :
春原安定
岡崎と春原のやり取りがまんまだww
155 = 1 :
春原「もう、このままフケちまって、どっか遊びにいかない?」
春原「僕とムギちゃんふたりでさ」
俺たちは、琴吹と組んでスリーマンセルで動いていた。
携帯という連絡手段を持ちあわせていないので、誰かしらと組む必要があったのだ。
春原「岡崎も、気ぃ利かせて帰るって言ってるしさっ」
朋也「そんなわけねぇよ、俺はいつだっておまえの死角に存在するんだからな」
春原「マジかよっ!? つーか、なにが目的だよっ!?」
朋也「おまえ、気づいたらティッシュ箱が自分から遠のいてることないか?」
朋也「そういうことだよ」
春原「あれ、おまえかよっ! めちゃくちゃうざい現象なんですけどっ!」
紬「くすくす」
―――――――――――――――――――――
一度全員で駅前に集まる。
律「全然いなかったんだけど」
唯「私たちがみてきた方面も全滅だったよ」
紬「こっちも、だめだったわ」
156 = 109 :
>>152
のくす牧場で読めばいいだろ
支
157 :
ほ だよちくしょー
158 = 152 :
>>156
その手があったか
159 = 13 :
お
休憩か
しえん
160 = 1 :
澪「この地区の外で仕事してるのかな…」
朋也「いや…」
一台の軽トラが停めてある。
その向こう側に、人の動く気配。
朋也「いた」
さわ子「どこ?」
朋也「あそこだよ。いこう」
俺たちは軽トラに近づいていった。
朋也「ちっす」
荷台に荷物を乗せ終えた作業員に声をかける。
春原「どもっ」
芳野「…ん?」
芳野「ああ…いつかの」
どうやら覚えていてくれたようだ。
芳野「どうした。今日はまた大道芸をしにきたのか」
春原「はい、そんな感じっすっ」
161 :
春原「それで、今日は、その仲間も連れてきてるんすよっ」
芳野「後ろのお嬢ちゃんたちか」
さわ子「お嬢ちゃんとはご挨拶ね」
さわ子さんが前に出る。
さわ子「久しぶりね、芳野祐介。私のこと、忘れたとは言わさないわよ」
春原「…へ?」
その場にいた全員が目を丸くする。
芳野「あー…すまん。どこかで会ったことあるか?」
さわ子「私よ、私っ!」
メガネを外し、頭を激しく振りながらエアギターを始める。
俺にはなにがなんだかさっぱりわからなかった。
芳野「まさか…あんた、キャサリンか。デスデビルの」
さわ子「はぁ…はぁ…ようやく思い出したようね…」
芳野「しかし…その制服…」
さわ子「あ、こ、これは…」
芳野「あんた…留年してたのか」
162 :
ずるぅっ!
さわ子「そ、そんなわけないでしょっ! 今は教師をやってるのっ!」
さわ子「それで、この子たちは、私の教え子よっ」
芳野「そうか…でも、なんで教師のあんたが制服なんだ」
さわ子「それについては言及しないで。深い事情があるのよ…」
芳野「そうなのか…まぁ、いいが」
春原「……どうなってんの」
それは俺も知りたい。
芳野「それで…俺になにか用があるのか」
さわ子「あるのは、私じゃなくて、この子たちのほうよ」
芳野「あん?」
さわ子「みんな、あんたが芳野祐介ってこと、知ってるの」
さわ子「かつてアーティストとして活動していた、ね」
俺たちがひた隠そうとしていたことを、さらりと言ってのけていた。
芳野祐介はどんな反応をするのだろうか…
芳野「…そうか」
163 = 152 :
前スレで終わると思ってたけどこんな長編だったとはww
支援
164 = 161 :
芳野「………」
芳野「悪いが、俺はもう、昔の俺じゃない」
芳野「だから、あんたらの用向きには応えられない」
やはり、壁を作っていた。かつての自分に対して。
澪「ごめんなさい…」
秋山が、泣きそうな顔で、ぽつりと小さくつぶやいた。
澪「私、芳野さんの引退理由、知ってました」
澪「当時の事を思い出したくない気持ちも、大体想像できてました」
澪「それでも、この町にいるってことを聞いて、どうしても会いたくて…」
澪「こんな、押しかけるようなマネをして…」
澪「本当に、すみませんでした…」
梓「わ、私も同じです。自分のことばっかり考えちゃって…」
梓「でも、会えたらどうしても伝えたかったんです」
梓「ずっとファンだったこと…あ、今でも好きですけど…」
梓「うん…あと…芳野さんの歌に、何度も励まされたことを」
165 = 162 :
澪「私も…そうです。落ち込んだ時、辛い時、悲しい時…」
澪「それだけじゃなくて、上手くいった時なんかも、聴いてました」
澪「歌詞にあるような、まっすぐな綺麗さにも、すごく感動しました」
澪「芳野さんの歌を聴くと、救われたような気持ちになるんです」
澪「だから、その…ありがとうございましたっ」
梓「あ、ありがとうございましたっ」
芳野「………」
投げかけられる言葉。ただじっと受け止める。
芳野「…いい生徒を持ったな」
ふたりに答えるでもなく、さわ子さんにそう言った。
その表情には、幾分の柔らかさがあるようだった。
さわ子「まぁね。みんな、私の自慢の生徒よ」
律「春原も?」
さわ子「ええ…多分」
春原「そこは断定してくれよっ!」
芳野「おまえらも、最初から知ってたのか」
166 = 161 :
朋也「ああ。悪かったよ、変な芝居につき合わせちまって」
芳野「いや…それなりに楽しかったからな」
ふ、と一度微笑む。
芳野「今の俺に、礼の言葉なんか受け取れはしない」
芳野「だが…」
芳野「その気持ちだけは、しっかりと噛み締めておく」
クサい言い方だったけど、この人が口にすると様になった。
芳野「名前は?」
澪「秋山澪です!」
梓「中野梓です!」
芳野「そうか」
芳野「澪、梓。君たちがいつまでも前を向いて歩いていけるよう…」
芳野「どんな逆境でも耐え抜いて、真っ直ぐ歩いていけるよう…」
芳野「この俺も祈ってる」
芳野「………」
167 = 162 :
芳野「じゃあ、またな」
それだけ呟いて、去っていく。
車に乗り込み、エンジンをかける。
すぐにその音は遠ざかっていった。
春原「…どういうこと? 僕、なんか混乱してきたんですけど…」
さわ子「一度、部室に戻りましょう。そこで話してあげる」
―――――――――――――――――――――
さわ子「あんたらには話してなかったけど…」
さわ子「私、昔この学校の軽音部で、バンドやってたのよね」
春原「え? さわちゃんってここのOBなの?」
さわ子「そうよ」
春原「へぇ、じゃ、先輩じゃん」
さわ子「ええ、だから、今まで以上に慕いなさいよ」
春原「オッケー、わかったよ、さわちゃん」
さわ子「その、さわちゃん、っていうのが、慕ってるように見えないんだけどね…」
唯「ちなにみこれが当時のさわちゃんだよ」
168 = 162 :
一枚の写真。
そこには、仰々しいメイクと衣装で不敵に笑うさわ子さんと、その仲間たちが写っていた。
さわ子「あ、こら、唯ちゃんっ、まだそんなもの…」
律「んで、これが音源な」
小さめのラジカセを手に持ち、再生ボタンを押した。
凶悪な音楽と、叫ぶような歌声が聞えてくる。
さわ子「こら、やめなさいっ」
平沢からは写真を奪い、部長からはラジカセを取り上げた。
春原「…さわちゃんって、けっこうヤバい人だったんだね」
さわ子「これは格好だけよ。中身は普通だったわよ」
そうだろうか。
この人の現在の性格を鑑みるに、当時もやっぱりスレていたんじゃなかろうか。
さわ子「あんたらふたりのほうがよっぽどヤンチャよ」
さわ子「すぐ喧嘩してくるんだからね。去年は大変だったわよ」
思い返してみれば、確かにそうだった。
よそで喧嘩してくるたび、学年主任に呼び出され、その都度この人がかばってくれていたのだが…
その時のはぐらかし方が妙に手馴れていたような…そんな気もする。
まるで、そんな立場に立たされたことがあるかのようにだ。
なら、やっぱり、この人も昔は無茶していたんだ。
169 :
先生と芳野がくっつくのかなー
170 :
がんばってくれ!
171 = 161 :
俺たちに目をかけてくれるのも、そんな時代の自分と重ねてみているからなのかもしれない。
さわ子「ま、それはいいとして…芳野祐介だったわね」
梓「そうですよっ。どうやって知り合ったんですか?」
さわ子「対バンよ、対バン。この町のハコでずいぶん演ったわ」
梓「って、もしかして、芳野さんも、この町の出身なんですか?」
さわ子「そうよ。高校生の時に知り合ったんだけどね…私は光坂で、あっちは北高だったの」
梓「へぇ…」
澪「そうだったんですか…知りませんでした」
澪「公式プロフィールには、そういうこと書いてなかったですから」
律「よかったじゃん、マニア知識がひとつ増えてさ」
澪「うん…嬉しい…」
さわ子「まぁ、第一印象は最悪だったんだけどね」
さわ子「いきなり乱入してきて、マイク奪って、乗っ取ってくるし」
春原「…マジ?」
さわ子「大マジよ」
172 = 162 :
俺もにわかには信じられない。
あのクールな印象からはかけ離れすぎていた。
さわ子「あの頃のあいつは、そりゃもう、ヤバイぐらい暴れまわってたんだから」
さわ子「そのせいで、いろんなバンドから恨み買って、敵作って…」
さわ子「それでも、ずっと歌い続けてたわ」
さわ子「そんな姿が、若い私には、かっこよく映ったんでしょうね」
さわ子「次第に興味を持つようになっていったの」
さわ子「そして、あるライブの後、思い切って話しかけてみたの」
さわ子「粗野で荒々しい奴かと思ってたんだけど、話してみると、意外とシャイな上に無口でね」
さわ子「それに加えて、無愛想で…そうね、ちょうど岡崎みたいな感じだったわ」
春原「こいつ、悪人顔だもんね」
朋也「黙れ」
さわ子さんは続ける。
さわ子「でも、言葉数は少なかったけど、音楽に対する情熱はすごく持ってるってことがわかったの」
さわ子「そこからよ、よく話すようになったのは」
そこまで言って、紅茶を飲み、一呼吸入れた。
173 = 162 :
さわ子「…多分恋してたんでしょうね」
さわ子「気づいたら、あいつのことばかり考えるようになってたの」
さわ子「そして、3年生になって、進路も大方決めなきゃいけない時期がきて…」
さわ子「あいつにどうするか訊いてみたの」
さわ子「そしたら、卒業後は、上京して、プロのミュージシャンになるなんて言うのよ」
さわ子「それを聞いて、私も血がたぎったわ」
さわ子「じゃあ、自分もミュージシャンになって、こいつと同じ道を歩くぞ、って…」
さわ子「そう、思ったんだけど…」
さわ子「………」
さわ子「その後に続けて、『プロになれたら、好きな人と一緒になる』って、そう言ったの」
さわ子「聞けば、新任の女教師に惚れてるってことらしかったわ」
さわ子「失恋よ、失恋」
さわ子「そこで、私の恋は終わって、進む道も、てんで別方向に分かれちゃって…」
さわ子「それっきりになっちゃったのよ」
この人にそんな過去があったなんて知らなかった。
付き合いは長いつもりだったが、まだ踏み込めていなかった領域だ。
174 = 161 :
でも…今回、こんな話をしてくれるほどに、俺たちは想われている。
こそばゆいやら、うれしいやら…。
さわ子「ま、こんなとこかしら」
梓「先生…すごすぎます…尊敬ですっ」
澪「かっこいいです、先生っ」
紬「ドラマチックですね」
さわ子「そう? おほほほ、もっと褒めなさい」
律「ま、でも、要は、失恋しちゃったよ~って話だよな」
ビシッ ビシッ ビシッ
律「うぎゃっ痛っ、さわちゃ、痛いっ」
ビシッ ビシッ ビシッ
部長の額に容赦なくデコピンが次々に繰り出されていた。
唯「りっちゃんは一言多いよね」
律「唯にまともな突っ込みされるあたしって一体…」
額を押さえながら言う。攻撃はもう止んでいた。
さわ子「そうそう、これは余談なんだけどね…」
175 = 162 :
ゆっくりと口を開く。
さわ子「あいつが好きだった先生っていうのが、この学校で教師をされてたのよ」
澪「え? だ、誰ですか?」
さわ子「あなたたちは知らないと思うわ。3年前に退職されてるからね」
さわ子「伊吹公子さんっていうんだけど…」
唯「え? 伊吹さん?」
唯「もしかして、ショートヘアで、おっとりした感じの人?」
さわ子「え、ええ…今はどうかしらないけど、髪はショートだったわ」
唯「じゃあ…やっぱり、あの伊吹さんだ。先生してたって言ってたし」
梓「ゆ、唯先輩、知り合いなんですか?」
唯「うん。私がよくいくパン屋さんの常連さんだから、会えばお喋りしてるよ」
さわ子「へぇ…世間は狭いものねぇ…」
澪「で、どんな人なんだ?」
唯「えっとね、綺麗で、優しくて、それで…」
話し始める平沢。
そこへ熱心に耳を傾ける秋山と中野。
176 = 161 :
人の繋がりとは、不思議なものだ。
どこでどう交差するかわからない。
今回のように、意外な交流があったりする。
小さい町だったから、とくにそれが顕著なのかもしれない。
…ふと、思う。
俺も、そんな人と人の繋がりの中に入っていっているのではないか。
あんなにも人付き合いが嫌だった、この俺がだ。
なんでだろう。なにが始まりだったろう。
思い起こせば、それは、やっぱり…平沢からだったように思う。
唯「でね、そのパンが爆発して、周りにチョコが飛び散ったんだよ」
澪「…話が脱線していってないか」
唯「あ、ごめん。えへへ」
無邪気に笑う平沢。
できることなら、その笑顔を、ずっとそばで見ていたいと…
そう思う。
朋也(…俺、こいつのこと、好きなのかな…)
よくわからなかった。
でも…一人の人間としては、間違いなく好きだった。
―――――――――――――――――――――
177 = 162 :
4/28 水
唯「ふぁ~…んん」
朋也「眠そうだな」
唯「うん…きのうは遅くまで漫画読んでたから、寝不足なんだぁ…」
唯「ふぁあ~…」
大きくあくび。
唯「ほんとはすぐにやめるつもりだったんだけどさ…」
唯「読んでる途中で2、3冊なくなってることに気づいて、探し始めちゃって…」
唯「続きが読めないってなると、逆にすごく読みたくなって、必死だったよ」
憂「鬼のような形相で探してたもんね、お姉ちゃん」
唯「うん、あの時の私は、触れるものすべてを傷つけてたよ」
唯「そう…自分さえも、ね」
悲しい過去を持っていそうに言うな。
唯「それで、やっとみつけたんだけど、その喜びで、全巻読破しちゃったんだよねぇ」
朋也「寸止めされると、逆に、ってやつか」
178 = 161 :
唯「そうそう、そんな感じ。これ、なにかに応用できないかなぁ」
憂「勉強は?」
唯「だめだめ、止められたら、そのままやめちゃうよ」
朋也「練習はどうだ。部活でさ。逆にやりたくなるんじゃないのか」
唯「おお!? それ、いいかもしれないねっ」
朋也「じゃあ、今日は春原の奴に、妨害させるな」
朋也「隣で発狂したように、唯~唯~って言わせてさ」
唯「それ、なんかすごくやだ…」
朋也「そうか?」
唯「うん。練習より先に、春原くんが嫌になっちゃうよ」
朋也「それもそうだな」
言いたい放題だった。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
179 = 161 :
昼。
春原「へへ…みろよ、手に入れてやったぜ」
その手の中にあるものは、パンだった。
今日のこいつは、定食の他にパンも買いに走っていたのだ。
春原「謎のパン…竜太サンドだ」
朋也「どうでもいいけど、おまえボロボロな」
春原「しょうがないだろ、紛争地帯に突っ込んでたんだからよ」
確かに、今日のパン売り場は、そう表現していいほどに混み合っていた。
なんでも、学食erの間では、先週の告知以来、竜太サンドの話題で持ちきりだったらしい。
俺はこいつに聞いて初めてその存在を知ったのだが。
春原「生還できただけでも奇跡なんだよ」
春原「僕の目の前で、何人も志半ばにして力尽きていったからね」
春原「今でも、その浮かばれない霊が成仏できずに彷徨ってるって話さ」
そんなパン売り場はない。
澪「れ、霊…?」
律「真に受けるなよ、澪…」
春原「だから、売り子のおばちゃんにたどり着けた時は、本当に嬉しかったよ」
180 = 162 :
春原「もう、ゴールしてもいいよね…? って思わず口走っちゃったし」
自ら死亡フラグを立てていた。
律「でもさ、それって、竜田の誤植だろ。中身はどうせ普通のパンだよ」
春原「んなことねぇよっ! 竜太の味がするに決まってんだろっ」
律「いや、どんなだよ、それ…」
春原「それを今から解き明かしてやろうっていうんだろ」
意気揚々と包装紙を破り捨てる。
ぼろぼろぼろ
春原「げぇっ」
ぐちゃぐちゃになったパンが手にこぼれ落ちてきていた。
死亡フラグはパンに立っていたようで、しっかりここでイベントが起きていた。
春原「あ…ああ…」
朋也「もみくちゃになりながら戻ってきたからだな」
律「はは、おまえらしいオチだよ」
春原「ちくしょーっ! ふざけやがってっ!」
ゴミ箱に向かって竜太の塊を遠投する。
181 = 161 :
べちゃっ
春原「あ、やべ…」
男子生徒「………」
ひとりの男子生徒の後頭部に直撃していた。
ゆっくりと振り返る。
ラグビー部員「今の…てめぇか、春原」
ラグビー部員だった。
ラグビー部員「なんか叫んでたよなぁ? 俺がふざけてるとかなんとか…」
言いながら、どんどん近づいてくる。
春原「い、いや、違うんです、これは…」
ラグビー部員「言いわけはいいんだよっ! ちょっと顔かせやっ!」
首根っこを掴まれる。
春原「ひぃっ! 助けてくれ、岡崎っ」
朋也「それでさー、この前、春原とかいう奴がさー」
春原「他人のフリするなよっ」
春原「う…うわぁあああああああ」
182 = 162 :
あああああああぁぁぁ…
引きずられ、消えていく。
この後、春原は両頬を押さえ、泣きながら戻ってきていた。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。部室に集まり、いつものように茶会が始まった。
がちゃり
梓「すみません、ちょっと遅れま…」
梓「って、唯先輩、その席はだめですっ」
唯「え、ええっ?」
梓「ていっ!」
俺の隣に座っていた平沢を椅子から引っ張り降ろす中野。
唯「うわぁっ…」
唯「って、なんでぇ? 席決まってるわけじゃないのに…」
梓「この人の隣は危険だって言ったじゃないですかっ」
183 :
あずにゃんwwwwwww
184 = 161 :
唯「でも、いつも隣に座ってるあずにゃんはなんともないんだし…」
梓「そんなことないです! 常にいやらしい視線を感じてますっ」
朋也「おい…」
春原「おまえ、けっこうむっつりなんだね」
がんっ
春原「てぇな、あにすんだよっ」
朋也「すまん、故意だ」
春原「わざとで謝るくらいなら、最初からやらないでくれますかねぇっ」
律「まぁまぁ、梓。ここはひとつ、席替えしてみようじゃないか」
梓「え?」
律「いやさ、席決まってるわけじゃないっていっても、大体いつも同じじゃん?」
律「だからさ、ここいらでシャッフルしてみるのいいと思うんだよな」
紬「おもしろそうね」
律「だろん?」
澪「いや、そんなことより先に練習をだな…」
185 = 162 :
梓「席替えなんて嫌ですっ! リスクが高すぎますっ」
律「でもさ、リターンもでかいぞ」
律「おまえは唯と岡崎を離したいんだろ?」
律「もしかしたら、端と端同士になって離れるかもしれないじゃん」
梓「で、でも…」
唯「私、やりたい」
梓「唯先輩…」
唯「あずにゃん、これで決まったら、私も文句言わないよ」
唯「だから、やろ?」
梓「うう…」
梓「………」
梓「…はい…わかりました」
律「よぅし、決まりだな。じゃ、クジ作るか」
春原「なんか、合コンみたいだよね、この人数で席替えってさ」
律「あんた、めちゃ俗っぽいな…」
186 = 161 :
―――――――――――――――――――――
全員クジを引き終わり、席が決まった。
俺の両隣には、秋山と平沢。
俺の対面に位置する春原の両隣には、部長と琴吹。
そして、議長席のような、先端の位置に中野。
そこは、元琴吹の席だった場所だ。
唯「隣だねぇ、岡崎くん。教室とおんなじだよっ」
朋也「ん、ああ…だな」
澪「よ、よろしく…岡崎くん」
朋也「ああ…こちらこそ」
春原「ヒャッホウっ! ムギちゃんが隣だ!」
春原「…けど、部長もいるしな…右半身だけうれしいよ」
律「なんだと、こらっ! あたしの隣なんて、すべての男の夢だろうがっ」
律「全身の毛穴から変な液噴射しながら喜びに打ち震えろよっ!」
春原「あーあ、しかもここ、おまえがさっきまで座ってたとこだし…」
春原「なんか、生暖かくて、気持ち悪いんだよなぁ」
律「きぃいいっ、こいつはぁああっ! 心底むかつくぅううっ!」
187 = 162 :
梓「こんなの、納得いきませんっ! やり直しましょうっ!」
唯「ええ~、ダメだよ、あずにゃん。もう決まったんだしぃ」
梓「唯先輩は黙っててくださいっ!」
唯「ひえっ、ご…ごめんなさい…」
律「あー、わかったよ、梓。あたしも、この金猿が隣なんて嫌だしな」
律「今日だけにしとくよ。次回からは自由席な。それでいいか?」
梓「…わかりました…それでいいです」
春原「じゃ、次は王様ゲームしようぜ」
律「王様ゲームぅ?」
春原「せっかく合コンっぽくなってきたんだし、やろうぜ」
律「うーん…ま、そうだな、おもしろそうだし、やるか」
唯「いいね、王様ゲーム。久しぶりだなぁ」
紬「噂には聞いたことがあるけど、私、やったことないなぁ…」
春原「大丈夫、僕が手取り足取り、優しく教えてあげるよ」
紬「ほんと?」
188 = 161 :
春原「うん、もちろんさ」
律「ムギ、めちゃ簡単だから、なにも教わらなくても大丈夫だぞ」
春原「てめぇ、なにムギちゃんにいらんこと吹き込んでくれてんだよっ」
律「それはおまえがやろうとしてたことだろがっ」
澪「わ、私はやらないぞ…っていうか、練習しなきゃだろ」
澪「遊んでる場合じゃ…」
律「おまえが王様になって、練習しろって命令すればいいじゃん」
律「そしたら、そこでゲーム終了でいいからさ。素直に言うこと聞くよ」
澪「…ほんとだな? 絶対、言う通りにしてもらうからなっ」
律「へいへい」
朋也「ああ、俺はやらないから、頭数に入れないでくれよ」
春原「なんでだよ、女の方が多いんだぜ?」
春原「王様になれば、あんなことや、こんなことが…」
春原「やべぇ、興奮してきたよっ!」
朋也「おまえ、今めちゃくちゃ引かれてるからな」
189 = 162 :
春原「へ?」
春原は女性陣の冷たい視線を余すことなく集めていた。
春原「…こほん」
春原「まぁさ、こんな、みんなで盛り上がろうって時に、抜けることないだろ」
朋也「知るかよ…」
春原「ま、嫌ならいいけど。僕のハーレムが出来上がるだけだしね」
春原「むしろ、そっちの方が都合がいいかも、うひひ」
いやらしい笑みをこれでもかと浮かべる。
朋也(ったく、こいつは…)
春原の変態願望を押しつけられた奴には同情を禁じえない。
朋也(…待てよ)
それは、平沢にも回ってくる可能性があるんじゃないのか。
というか、普通にある。
………。
朋也「…いや、やっぱ、俺もやる」
春原「あん? なんだよ、いまさら遅ぇよ」
190 = 161 :
朋也「まだセーフだ。いいだろ、部長」
律「ああ、全然オッケー」
朋也「だそうだ」
春原「ふん、まぁ、いいけど」
これで少しは平沢に被害が及ぶ確率を下げられた。
よかった…
朋也(って、なにほっとしてんだよ、俺は…)
なんで俺がここまで平沢のことを気にかけているんだ…。
別に、いいじゃないか。俺には関係のないことだ。
………。
でも…どうしても耐えられない。
朋也(はぁ…くそ…)
厄介な感情だった。
律「で、梓はどうすんの? ずっと黙ってたけど」
梓「…やってやるです」
めらめらと灯った憎悪の眼差しを俺に向けながら答える。
朋也(俺をピンポイントで狙ってくる気かよ…)
191 = 162 :
だが、あくまでランダムなので、特定の個人を狙うなんて、まず無理だ。
そこは安心していいだろう。
律「うし、じゃ、全員参加だな。そんじゃ、番号クジ作るかぁ」
―――――――――――――――――――――
ストローで作った番号クジ。
部長が握り、中央に寄せる。
そして、各々クジを引いていった。
「王様だ~れだ?」
皆一斉に手持ちのストローを確認した。
俺は4だった。
春原「きたぁあああああああっ!!!」
律「げっ、いきなり最悪な野郎がきたよ…」
春原「いくぜぇ…じゃあ、4番が王様の…」
朋也(げっ…)
春原「ほっぺたにチュウだっ!」
朋也「ぎゃぁああああああああああああ!!!」
春原「うわっ、どうしたんだよ、岡崎…」
193 = 161 :
春原「って、まさか…まさか…」
朋也「てめぇ、ふざけんなよ、春原っ! 俺にそんな気(け)はねぇっ!」
春原「おまえかよ…4番…」
律「わははは! いきなりキツいのいくからそういうことになるんだよ」
澪「岡崎くんと…春原くんが…キ、キキキス…ぁぁ…」
唯「ふんすっ、なんか興奮するね、ふんすっ」
紬「そういうのもアリなのね…なるほど…」
梓「…不潔」
にわかに外野が盛り上がり始めていたが…
対照的に、俺と春原は肩を落としてうなだれていた。
朋也「…いくぞ、こら」
春原「おう…こい」
朋也「陽平、愛してる」
春原「ひぃっ」
朋也「あ、その顔大好き!」
春原「ひぃぃっ」
194 = 162 :
朋也「次その顔したらキスするからな」
春原「ひぃぃぃっ」
朋也「あ、今した。ぶちゅっ」
ひいいいぃぃぃぃ…
BAD END
朋也(おえ゛…)
今の大惨事を目の当たりにして、きゃっきゃと騒ぎ出す女たち。
こっちはそれどころじゃなかった。
春原「うう…変な芝居入れないでくれよ…」
春原は涙を流してい泣いていた。
朋也「ああ…俺も、やってて吐き気がこみあげてきたよ…」
春原「うう…じゃあ、やるなよぉ…」
とぼとぼと自分の席に戻るふたり。
律「あんたら、ほんとはデキてんじゃないのぉ?」
唯「アヤシイよねぇ」
澪「あ…あうあう…」
195 = 161 :
紬「くすくす」
梓「…ふ、不潔です…」
朋也「忘れてくれ…」
律「あーあ、写メ撮っとけばよかった」
唯「あ、そうだね。見入っちゃってたよ」
朋也「保存しようとするな…」
春原「…早く次いこうぜ。ムギちゃんで中和しなきゃ、精神が持たねぇよ」
律「わはは。はいはい、わかったよ」
―――――――――――――――――――――
「王様だ~れだ?」
俺は6を引いた。
紬「あ、私だ」
唯「おお、ムギちゃんかぁ」
律「ムギは初心者だからなぁ、何がくるやら…」
春原「ムギちゃん、僕を引き当ててねっ」
196 = 162 :
そういうゲームでもない。
紬「じゃあ…3番の人と、5番の人」
紬「正面から、愛しそうに抱き合って♪」
律「おお、大胆だな…で、だれだ、3と5は」
唯「私、3番だよ」
澪「私…5番」
紬「まぁ…これは、これは…うふふふ…ひひ」
唯「えへへ、よろしくね、澪ちゃん」
澪「う、うん…」
席を立ち、向かい合う。
身長差があり、視線を合わすのに、平沢が上目遣いになっていた。
春原「…なんか、周りにバラ描きたいね」
朋也「…ああ」
唯「澪ちゃん…」
澪「唯…」
ごくり…
197 = 161 :
唯「…好きっ」
澪「唯…唯っ!」
ひし、っと抱きしめあう。
唯「ああ、澪ちゃん、おっぱい大きいよ…」
澪「唯…すごくいい匂いがする…」
唯「澪ちゃん…」
澪「唯…」
目を閉じて、お互いの鼓動を感じ合っていた。
紬「…ゴッドジョブ」
ゴッド…神?
びしぃ、と親指を立てていた。
左手には、携帯を持ち、カメラのレンズを向けている。
ムービーでも撮っているんだろうか…。
―――――――――――――――――――――
「王様だ~れだ?」
俺は5。
律「お、私だ」
198 = 162 :
唯「りっちゃんかぁ、これは覚悟しなきゃかもね」
春原「なんだ、ハゲか」
律「な、てめ…」
律「………」
律「…後悔するなよ」
春原「あん?」
律「じゃ、いくぞ」
律「1番が…」
言って、素早く目だけ動かし、周りを確認していた。
律「いや、やっぱ、2番が…」
また、同じ動き。
律「うん…2番が、3番を…」
律「いや、やっぱ、4番かな…」
律「うんそうだ。2番が4番に、思いっきり左鉤突きを入れる!」
唯「ひだりかぎづき?」
199 = 183 :
おもしろすぎんだよおおえぉお!!
200 = 161 :
朋也「打撃のことだ。つまり、殴れっていってるんだ」
唯「うえぇ!? な、殴るの!?」
律「さ、誰かな、2番と4番は~」
入れられる側に春原を狙っているんだろう。
あの、『後悔するな』という言動からしても、そのはずだ。
だが、そんなことが可能なのか…?
やけに余裕のある佇まいだ。
あの目の動き、何かを探っているように見えたが…
そこまで精度に自信があるということなのか…?
紬「私、2番…」
春原「…4番…」
…どんぴしゃだった。
律「おおう、こりゃ、春原、死んだかなぁ?」
紬「ごめんね、春原くん…」
春原「いや…ムギちゃんになら、むしろ本望だよ」
席を立ち、向かい合う。
さっきの甘い雰囲気とは違い、殺気立った空気。
紬「ショラァッ!」
みんなの評価 : ★★★×4
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