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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」2

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    151 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:44:13.18 ID:cUBlBpOS0 (+95,+30,-202)
    春原「なんだったら、今から探しに出る?」

    春原「運よく見つけられたら、話しかけられるぜ?」

    「い、行きたいです!」

    「私も!」

    「おまえら、きのうちゃんと練習しろとか言ってなかったか?」

    「い、今は緊急事態なんだから、しょうがないだろっ」

    「そうですよっ」

    「めちゃ力強いな、おまえら…」

    さわ子「…私も行くわ」

    「うえぇっ? さわちゃんもかよっ!? でも、いいの? 仕事ほっぽりだして」

    さわ子「大丈夫。バレなければいいのよ」

    さわ子「こんなこともあろうかと、用意しておいた衣装があるの」

    立ち上がり、物置へ向かった。
    そして、俺たちのよく見慣れた服を手に戻ってくる。

    さわ子「これよ」

    「あっ、光坂の制服だぁ」
    152 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:44:52.62 ID:gIsLHmZwO (+32,+29,-45)
    まだ前スレ>>300辺りまでしか読んでないっつか50レス読むのに30分以上かかるww

    もう前スレ書き込めないし落ちて読めなくなったらどうしよ…
    153 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:45:49.52 ID:1qYNd8dxO (+35,+30,-170)
    さわ子「そうよ。これを着て、生徒に変装するの」

    「いや、変装っていうより、コスプレに近いんじゃ…」

    さわ子「歳的な意味で言ってるなら、死ぬことになるわよ?」

    「とっても似合うと思いますっ」

    さわ子「よろしい」

    ―――――――――――――――――――――

    外へ出てきた俺たちは、早速芳野祐介を探し始めた。
    といっても、闇雲に動き回っているわけじゃない。
    琴吹の携帯…それも、なにか特殊な業務に使われているものらしいのだが…
    それを使って、周辺の工事情報を集めてから、手分けして現場に当たっていた。

    ―――――――――――――――――――――

    「あの中にいる?」

    春原「いや、いないよ」

    「そう…」

    これで、回ってきたのも3件目。
    まだ他の連中からも、目撃の連絡が来ない。

    春原「今日は仕事ないのかもね」
    154 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:46:22.36 ID:z6RGlBZJ0 (+24,+29,-10)
    春原安定
    岡崎と春原のやり取りがまんまだww
    155 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:46:28.59 ID:cUBlBpOS0 (+95,+30,-243)
    春原「もう、このままフケちまって、どっか遊びにいかない?」

    春原「僕とムギちゃんふたりでさ」

    俺たちは、琴吹と組んでスリーマンセルで動いていた。
    携帯という連絡手段を持ちあわせていないので、誰かしらと組む必要があったのだ。

    春原「岡崎も、気ぃ利かせて帰るって言ってるしさっ」

    朋也「そんなわけねぇよ、俺はいつだっておまえの死角に存在するんだからな」

    春原「マジかよっ!? つーか、なにが目的だよっ!?」

    朋也「おまえ、気づいたらティッシュ箱が自分から遠のいてることないか?」

    朋也「そういうことだよ」

    春原「あれ、おまえかよっ! めちゃくちゃうざい現象なんですけどっ!」

    「くすくす」

    ―――――――――――――――――――――

    一度全員で駅前に集まる。

    「全然いなかったんだけど」

    「私たちがみてきた方面も全滅だったよ」

    「こっちも、だめだったわ」
    156 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:46:41.87 ID:HW8IYUOD0 (+36,+29,-21)
    >>152
    のくす牧場で読めばいいだろ

    157 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:53:49.59 ID:O1epL/Ut0 (+19,+29,-1)
    ほ だよちくしょー
    158 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:54:46.64 ID:gIsLHmZwO (+27,+29,+0)
    >>156
    その手があったか
    159 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:57:59.94 ID:y1qBevVn0 (+22,+29,-14)

    休憩か

    しえん
    160 : 以下、名無しにか - 2010/09/25(土) 23:59:38.74 ID:cUBlBpOS0 (+95,+30,-201)
    「この地区の外で仕事してるのかな…」

    朋也「いや…」

    一台の軽トラが停めてある。
    その向こう側に、人の動く気配。

    朋也「いた」

    さわ子「どこ?」

    朋也「あそこだよ。いこう」

    俺たちは軽トラに近づいていった。

    朋也「ちっす」

    荷台に荷物を乗せ終えた作業員に声をかける。

    春原「どもっ」

    芳野「…ん?」

    芳野「ああ…いつかの」

    どうやら覚えていてくれたようだ。

    芳野「どうした。今日はまた大道芸をしにきたのか」

    春原「はい、そんな感じっすっ」
    161 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:01:31.43 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-169)
    春原「それで、今日は、その仲間も連れてきてるんすよっ」

    芳野「後ろのお嬢ちゃんたちか」

    さわ子「お嬢ちゃんとはご挨拶ね」

    さわ子さんが前に出る。

    さわ子「久しぶりね、芳野祐介。私のこと、忘れたとは言わさないわよ」

    春原「…へ?」

    その場にいた全員が目を丸くする。

    芳野「あー…すまん。どこかで会ったことあるか?」

    さわ子「私よ、私っ!」

    メガネを外し、頭を激しく振りながらエアギターを始める。
    俺にはなにがなんだかさっぱりわからなかった。

    芳野「まさか…あんた、キャサリンか。デスデビルの」

    さわ子「はぁ…はぁ…ようやく思い出したようね…」

    芳野「しかし…その制服…」

    さわ子「あ、こ、これは…」

    芳野「あんた…留年してたのか」
    162 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:02:11.86 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-182)
    ずるぅっ! 

    さわ子「そ、そんなわけないでしょっ! 今は教師をやってるのっ!」

    さわ子「それで、この子たちは、私の教え子よっ」

    芳野「そうか…でも、なんで教師のあんたが制服なんだ」

    さわ子「それについては言及しないで。深い事情があるのよ…」

    芳野「そうなのか…まぁ、いいが」

    春原「……どうなってんの」

    それは俺も知りたい。

    芳野「それで…俺になにか用があるのか」

    さわ子「あるのは、私じゃなくて、この子たちのほうよ」

    芳野「あん?」

    さわ子「みんな、あんたが芳野祐介ってこと、知ってるの」

    さわ子「かつてアーティストとして活動していた、ね」

    俺たちがひた隠そうとしていたことを、さらりと言ってのけていた。
    芳野祐介はどんな反応をするのだろうか…

    芳野「…そうか」
    163 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:02:57.42 ID:gIsLHmZwO (+27,+29,-19)
    前スレで終わると思ってたけどこんな長編だったとはww

    支援
    164 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:03:57.64 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-204)
    芳野「………」

    芳野「悪いが、俺はもう、昔の俺じゃない」

    芳野「だから、あんたらの用向きには応えられない」

    やはり、壁を作っていた。かつての自分に対して。

    「ごめんなさい…」

    秋山が、泣きそうな顔で、ぽつりと小さくつぶやいた。

    「私、芳野さんの引退理由、知ってました」

    「当時の事を思い出したくない気持ちも、大体想像できてました」

    「それでも、この町にいるってことを聞いて、どうしても会いたくて…」

    「こんな、押しかけるようなマネをして…」

    「本当に、すみませんでした…」

    「わ、私も同じです。自分のことばっかり考えちゃって…」

    「でも、会えたらどうしても伝えたかったんです」

    「ずっとファンだったこと…あ、今でも好きですけど…」

    「うん…あと…芳野さんの歌に、何度も励まされたことを」
    165 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:06:14.78 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-214)
    「私も…そうです。落ち込んだ時、辛い時、悲しい時…」

    「それだけじゃなくて、上手くいった時なんかも、聴いてました」

    「歌詞にあるような、まっすぐな綺麗さにも、すごく感動しました」

    「芳野さんの歌を聴くと、救われたような気持ちになるんです」

    「だから、その…ありがとうございましたっ」

    「あ、ありがとうございましたっ」

    芳野「………」

    投げかけられる言葉。ただじっと受け止める。

    芳野「…いい生徒を持ったな」

    ふたりに答えるでもなく、さわ子さんにそう言った。
    その表情には、幾分の柔らかさがあるようだった。

    さわ子「まぁね。みんな、私の自慢の生徒よ」

    「春原も?」

    さわ子「ええ…多分」

    春原「そこは断定してくれよっ!」

    芳野「おまえらも、最初から知ってたのか」
    166 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:08:07.62 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-141)
    朋也「ああ。悪かったよ、変な芝居につき合わせちまって」

    芳野「いや…それなりに楽しかったからな」

    ふ、と一度微笑む。

    芳野「今の俺に、礼の言葉なんか受け取れはしない」

    芳野「だが…」

    芳野「その気持ちだけは、しっかりと噛み締めておく」

    クサい言い方だったけど、この人が口にすると様になった。

    芳野「名前は?」

    「秋山澪です!」

    「中野梓です!」

    芳野「そうか」

    芳野「澪、梓。君たちがいつまでも前を向いて歩いていけるよう…」

    芳野「どんな逆境でも耐え抜いて、真っ直ぐ歩いていけるよう…」

    芳野「この俺も祈ってる」

    芳野「………」
    167 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:08:48.70 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-193)
    芳野「じゃあ、またな」

    それだけ呟いて、去っていく。
    車に乗り込み、エンジンをかける。
    すぐにその音は遠ざかっていった。

    春原「…どういうこと? 僕、なんか混乱してきたんですけど…」

    さわ子「一度、部室に戻りましょう。そこで話してあげる」

    ―――――――――――――――――――――

    さわ子「あんたらには話してなかったけど…」

    さわ子「私、昔この学校の軽音部で、バンドやってたのよね」

    春原「え? さわちゃんってここのOBなの?」

    さわ子「そうよ」

    春原「へぇ、じゃ、先輩じゃん」

    さわ子「ええ、だから、今まで以上に慕いなさいよ」

    春原「オッケー、わかったよ、さわちゃん」

    さわ子「その、さわちゃん、っていうのが、慕ってるように見えないんだけどね…」

    「ちなにみこれが当時のさわちゃんだよ」
    168 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:09:43.05 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-255)
    一枚の写真。
    そこには、仰々しいメイクと衣装で不敵に笑うさわ子さんと、その仲間たちが写っていた。

    さわ子「あ、こら、唯ちゃんっ、まだそんなもの…」

    「んで、これが音源な」

    小さめのラジカセを手に持ち、再生ボタンを押した。
    凶悪な音楽と、叫ぶような歌声が聞えてくる。

    さわ子「こら、やめなさいっ」

    平沢からは写真を奪い、部長からはラジカセを取り上げた。

    春原「…さわちゃんって、けっこうヤバい人だったんだね」

    さわ子「これは格好だけよ。中身は普通だったわよ」

    そうだろうか。
    この人の現在の性格を鑑みるに、当時もやっぱりスレていたんじゃなかろうか。

    さわ子「あんたらふたりのほうがよっぽどヤンチャよ」

    さわ子「すぐ喧嘩してくるんだからね。去年は大変だったわよ」

    思い返してみれば、確かにそうだった。
    よそで喧嘩してくるたび、学年主任に呼び出され、その都度この人がかばってくれていたのだが…
    その時のはぐらかし方が妙に手馴れていたような…そんな気もする。
    まるで、そんな立場に立たされたことがあるかのようにだ。
    なら、やっぱり、この人も昔は無茶していたんだ。
    169 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:11:03.94 ID:LXRyRTn+0 (+24,+29,-28)
    先生と芳野がくっつくのかなー
    170 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:11:06.90 ID:lUITvkE60 (+17,+24,-2)
    がんばってくれ!
    171 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:12:15.12 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-189)
    俺たちに目をかけてくれるのも、そんな時代の自分と重ねてみているからなのかもしれない。

    さわ子「ま、それはいいとして…芳野祐介だったわね」

    「そうですよっ。どうやって知り合ったんですか?」

    さわ子「対バンよ、対バン。この町のハコでずいぶん演ったわ」

    「って、もしかして、芳野さんも、この町の出身なんですか?」

    さわ子「そうよ。高校生の時に知り合ったんだけどね…私は光坂で、あっちは北高だったの」

    「へぇ…」

    「そうだったんですか…知りませんでした」

    「公式プロフィールには、そういうこと書いてなかったですから」

    「よかったじゃん、マニア知識がひとつ増えてさ」

    「うん…嬉しい…」

    さわ子「まぁ、第一印象は最悪だったんだけどね」

    さわ子「いきなり乱入してきて、マイク奪って、乗っ取ってくるし」

    春原「…マジ?」

    さわ子「大マジよ」
    172 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:13:16.91 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-227)
    俺もにわかには信じられない。
    あのクールな印象からはかけ離れすぎていた。

    さわ子「あの頃のあいつは、そりゃもう、ヤバイぐらい暴れまわってたんだから」

    さわ子「そのせいで、いろんなバンドから恨み買って、敵作って…」

    さわ子「それでも、ずっと歌い続けてたわ」

    さわ子「そんな姿が、若い私には、かっこよく映ったんでしょうね」

    さわ子「次第に興味を持つようになっていったの」

    さわ子「そして、あるライブの後、思い切って話しかけてみたの」

    さわ子「粗野で荒々しい奴かと思ってたんだけど、話してみると、意外とシャイな上に無口でね」

    さわ子「それに加えて、無愛想で…そうね、ちょうど岡崎みたいな感じだったわ」

    春原「こいつ、悪人顔だもんね」

    朋也「黙れ」

    さわ子さんは続ける。

    さわ子「でも、言葉数は少なかったけど、音楽に対する情熱はすごく持ってるってことがわかったの」

    さわ子「そこからよ、よく話すようになったのは」

    そこまで言って、紅茶を飲み、一呼吸入れた。
    173 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:13:53.44 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-211)
    さわ子「…多分恋してたんでしょうね」

    さわ子「気づいたら、あいつのことばかり考えるようになってたの」

    さわ子「そして、3年生になって、進路も大方決めなきゃいけない時期がきて…」

    さわ子「あいつにどうするか訊いてみたの」

    さわ子「そしたら、卒業後は、上京して、プロのミュージシャンになるなんて言うのよ」

    さわ子「それを聞いて、私も血がたぎったわ」

    さわ子「じゃあ、自分もミュージシャンになって、こいつと同じ道を歩くぞ、って…」

    さわ子「そう、思ったんだけど…」

    さわ子「………」

    さわ子「その後に続けて、『プロになれたら、好きな人と一緒になる』って、そう言ったの」

    さわ子「聞けば、新任の女教師に惚れてるってことらしかったわ」

    さわ子「失恋よ、失恋」

    さわ子「そこで、私の恋は終わって、進む道も、てんで別方向に分かれちゃって…」

    さわ子「それっきりになっちゃったのよ」

    この人にそんな過去があったなんて知らなかった。
    付き合いは長いつもりだったが、まだ踏み込めていなかった領域だ。
    174 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:15:37.82 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-192)
    でも…今回、こんな話をしてくれるほどに、俺たちは想われている。
    こそばゆいやら、うれしいやら…。

    さわ子「ま、こんなとこかしら」

    「先生…すごすぎます…尊敬ですっ」

    「かっこいいです、先生っ」

    「ドラマチックですね」

    さわ子「そう? おほほほ、もっと褒めなさい」

    「ま、でも、要は、失恋しちゃったよ~って話だよな」

    ビシッ ビシッ ビシッ

    「うぎゃっ痛っ、さわちゃ、痛いっ」

    ビシッ ビシッ ビシッ

    部長の額に容赦なくデコピンが次々に繰り出されていた。

    「りっちゃんは一言多いよね」

    「唯にまともな突っ込みされるあたしって一体…」

    額を押さえながら言う。攻撃はもう止んでいた。

    さわ子「そうそう、これは余談なんだけどね…」
    175 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:16:45.99 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-240)
    ゆっくりと口を開く。

    さわ子「あいつが好きだった先生っていうのが、この学校で教師をされてたのよ」

    「え? だ、誰ですか?」

    さわ子「あなたたちは知らないと思うわ。3年前に退職されてるからね」

    さわ子「伊吹公子さんっていうんだけど…」

    「え? 伊吹さん?」

    「もしかして、ショートヘアで、おっとりした感じの人?」

    さわ子「え、ええ…今はどうかしらないけど、髪はショートだったわ」

    「じゃあ…やっぱり、あの伊吹さんだ。先生してたって言ってたし」

    「ゆ、唯先輩、知り合いなんですか?」

    「うん。私がよくいくパン屋さんの常連さんだから、会えばお喋りしてるよ」

    さわ子「へぇ…世間は狭いものねぇ…」

    「で、どんな人なんだ?」

    「えっとね、綺麗で、優しくて、それで…」

    話し始める平沢。
    そこへ熱心に耳を傾ける秋山と中野。
    176 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:18:24.24 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-178)
    人の繋がりとは、不思議なものだ。
    どこでどう交差するかわからない。
    今回のように、意外な交流があったりする。
    小さい町だったから、とくにそれが顕著なのかもしれない。
    …ふと、思う。
    俺も、そんな人と人の繋がりの中に入っていっているのではないか。
    あんなにも人付き合いが嫌だった、この俺がだ。
    なんでだろう。なにが始まりだったろう。
    思い起こせば、それは、やっぱり…平沢からだったように思う。

    「でね、そのパンが爆発して、周りにチョコが飛び散ったんだよ」

    「…話が脱線していってないか」

    「あ、ごめん。えへへ」

    無邪気に笑う平沢。
    できることなら、その笑顔を、ずっとそばで見ていたいと…
    そう思う。

    朋也(…俺、こいつのこと、好きなのかな…)

    よくわからなかった。
    でも…一人の人間としては、間違いなく好きだった。

    ―――――――――――――――――――――
    177 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:19:12.24 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-222)
    4/28 水

    「ふぁ~…んん」

    朋也「眠そうだな」

    「うん…きのうは遅くまで漫画読んでたから、寝不足なんだぁ…」

    「ふぁあ~…」

    大きくあくび。

    「ほんとはすぐにやめるつもりだったんだけどさ…」

    「読んでる途中で2、3冊なくなってることに気づいて、探し始めちゃって…」

    「続きが読めないってなると、逆にすごく読みたくなって、必死だったよ」

    「鬼のような形相で探してたもんね、お姉ちゃん」

    「うん、あの時の私は、触れるものすべてを傷つけてたよ」

    「そう…自分さえも、ね」

    悲しい過去を持っていそうに言うな。

    「それで、やっとみつけたんだけど、その喜びで、全巻読破しちゃったんだよねぇ」

    朋也「寸止めされると、逆に、ってやつか」
    178 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:20:21.11 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-197)
    「そうそう、そんな感じ。これ、なにかに応用できないかなぁ」

    「勉強は?」

    「だめだめ、止められたら、そのままやめちゃうよ」

    朋也「練習はどうだ。部活でさ。逆にやりたくなるんじゃないのか」

    「おお!? それ、いいかもしれないねっ」

    朋也「じゃあ、今日は春原の奴に、妨害させるな」

    朋也「隣で発狂したように、唯~唯~って言わせてさ」

    「それ、なんかすごくやだ…」

    朋也「そうか?」

    「うん。練習より先に、春原くんが嫌になっちゃうよ」

    朋也「それもそうだな」

    言いたい放題だった。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――
    179 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:21:49.43 ID:jpDSDOMkO (+58,+30,-262)
    昼。

    春原「へへ…みろよ、手に入れてやったぜ」

    その手の中にあるものは、パンだった。
    今日のこいつは、定食の他にパンも買いに走っていたのだ。

    春原「謎のパン…竜太サンドだ」

    朋也「どうでもいいけど、おまえボロボロな」

    春原「しょうがないだろ、紛争地帯に突っ込んでたんだからよ」

    確かに、今日のパン売り場は、そう表現していいほどに混み合っていた。
    なんでも、学食erの間では、先週の告知以来、竜太サンドの話題で持ちきりだったらしい。
    俺はこいつに聞いて初めてその存在を知ったのだが。

    春原「生還できただけでも奇跡なんだよ」

    春原「僕の目の前で、何人も志半ばにして力尽きていったからね」

    春原「今でも、その浮かばれない霊が成仏できずに彷徨ってるって話さ」

    そんなパン売り場はない。

    「れ、霊…?」

    「真に受けるなよ、澪…」

    春原「だから、売り子のおばちゃんにたどり着けた時は、本当に嬉しかったよ」
    180 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:22:12.11 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-225)
    春原「もう、ゴールしてもいいよね…? って思わず口走っちゃったし」

    自ら死亡フラグを立てていた。

    「でもさ、それって、竜田の誤植だろ。中身はどうせ普通のパンだよ」

    春原「んなことねぇよっ! 竜太の味がするに決まってんだろっ」

    「いや、どんなだよ、それ…」

    春原「それを今から解き明かしてやろうっていうんだろ」

    意気揚々と包装紙を破り捨てる。

    ぼろぼろぼろ

    春原「げぇっ」

    ぐちゃぐちゃになったパンが手にこぼれ落ちてきていた。
    死亡フラグはパンに立っていたようで、しっかりここでイベントが起きていた。

    春原「あ…ああ…」

    朋也「もみくちゃになりながら戻ってきたからだな」

    「はは、おまえらしいオチだよ」

    春原「ちくしょーっ! ふざけやがってっ!」

    ゴミ箱に向かって竜太の塊を遠投する。
    181 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:23:22.84 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-217)
    べちゃっ

    春原「あ、やべ…」

    子生徒「………」

    ひとりの男子生徒の後頭部に直撃していた。
    ゆっくりと振り返る。

    ラグビー部員「今の…てめぇか、春原」

    ラグビー部員だった。

    ラグビー部員「なんか叫んでたよなぁ? 俺がふざけてるとかなんとか…」

    言いながら、どんどん近づいてくる。

    春原「い、いや、違うんです、これは…」

    ラグビー部員「言いわけはいいんだよっ! ちょっと顔かせやっ!」

    首根っこを掴まれる。

    春原「ひぃっ! 助けてくれ、岡崎っ」

    朋也「それでさー、この前、春原とかいう奴がさー」

    春原「他人のフリするなよっ」

    春原「う…うわぁあああああああ」
    182 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:23:45.55 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-126)
    あああああああぁぁぁ…

    引きずられ、消えていく。
    この後、春原は両頬を押さえ、泣きながら戻ってきていた。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    放課後。部室に集まり、いつものように茶会が始まった。

    がちゃり

    「すみません、ちょっと遅れま…」

    「って、唯先輩、その席はだめですっ」

    「え、ええっ?」

    「ていっ!」

    俺の隣に座っていた平沢を椅子から引っ張り降ろす中野。

    「うわぁっ…」

    「って、なんでぇ? 席決まってるわけじゃないのに…」

    「この人の隣は危険だって言ったじゃないですかっ」
    183 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:25:35.01 ID:tTDNEF4XO (+7,+19,-1)
    あずにゃんwwwwwww
    184 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:26:45.14 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-201)
    「でも、いつも隣に座ってるあずにゃんはなんともないんだし…」

    「そんなことないです! 常にいやらしい視線を感じてますっ」

    朋也「おい…」

    春原「おまえ、けっこうむっつりなんだね」

    がんっ

    春原「てぇな、あにすんだよっ」

    朋也「すまん、故意だ」

    春原「わざとで謝るくらいなら、最初からやらないでくれますかねぇっ」

    「まぁまぁ、梓。ここはひとつ、席替えしてみようじゃないか」

    「え?」

    「いやさ、席決まってるわけじゃないっていっても、大体いつも同じじゃん?」

    「だからさ、ここいらでシャッフルしてみるのいいと思うんだよな」

    「おもしろそうね」

    「だろん?」

    「いや、そんなことより先に練習をだな…」
    185 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:27:06.76 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-166)
    「席替えなんて嫌ですっ! リスクが高すぎますっ」

    「でもさ、リターンもでかいぞ」

    「おまえは唯と岡崎を離したいんだろ?」

    「もしかしたら、端と端同士になって離れるかもしれないじゃん」

    「で、でも…」

    「私、やりたい」

    「唯先輩…」

    「あずにゃん、これで決まったら、私も文句言わないよ」

    「だから、やろ?」

    「うう…」

    「………」

    「…はい…わかりました」

    「よぅし、決まりだな。じゃ、クジ作るか」

    春原「なんか、合コンみたいだよね、この人数で席替えってさ」

    「あんた、めちゃ俗っぽいな…」
    186 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:28:16.82 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-233)
    ―――――――――――――――――――――

    全員クジを引き終わり、席が決まった。
    俺の両隣には、秋山と平沢。
    俺の対面に位置する春原の両隣には、部長と琴吹。
    そして、議長席のような、先端の位置に中野。
    そこは、元琴吹の席だった場所だ。

    「隣だねぇ、岡崎くん。教室とおんなじだよっ」

    朋也「ん、ああ…だな」

    「よ、よろしく…岡崎くん」

    朋也「ああ…こちらこそ」

    春原「ヒャッホウっ! ムギちゃんが隣だ!」

    春原「…けど、部長もいるしな…右半身だけうれしいよ」

    「なんだと、こらっ! あたしの隣なんて、すべての男の夢だろうがっ」

    「全身の毛穴から変な液噴射しながら喜びに打ち震えろよっ!」

    春原「あーあ、しかもここ、おまえがさっきまで座ってたとこだし…」

    春原「なんか、生暖かくて、気持ち悪いんだよなぁ」

    「きぃいいっ、こいつはぁああっ! 心底むかつくぅううっ!」
    187 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:28:37.57 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-173)
    「こんなの、納得いきませんっ! やり直しましょうっ!」

    「ええ~、ダメだよ、あずにゃん。もう決まったんだしぃ」

    「唯先輩は黙っててくださいっ!」

    「ひえっ、ご…ごめんなさい…」

    「あー、わかったよ、梓。あたしも、この金猿が隣なんて嫌だしな」

    「今日だけにしとくよ。次回からは自由席な。それでいいか?」

    「…わかりました…それでいいです」

    春原「じゃ、次は王様ゲームしようぜ」

    「王様ゲームぅ?」

    春原「せっかく合コンっぽくなってきたんだし、やろうぜ」

    「うーん…ま、そうだな、おもしろそうだし、やるか」

    「いいね、王様ゲーム。久しぶりだなぁ」

    「噂には聞いたことがあるけど、私、やったことないなぁ…」

    春原「大丈夫、僕が手取り足取り、優しく教えてあげるよ」

    「ほんと?」
    188 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:30:00.56 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-239)
    春原「うん、もちろんさ」

    「ムギ、めちゃ簡単だから、なにも教わらなくても大丈夫だぞ」

    春原「てめぇ、なにムギちゃんにいらんこと吹き込んでくれてんだよっ」

    「それはおまえがやろうとしてたことだろがっ」

    「わ、私はやらないぞ…っていうか、練習しなきゃだろ」

    「遊んでる場合じゃ…」

    「おまえが王様になって、練習しろって命令すればいいじゃん」

    「そしたら、そこでゲーム終了でいいからさ。素直に言うこと聞くよ」

    「…ほんとだな? 絶対、言う通りにしてもらうからなっ」

    「へいへい」

    朋也「ああ、俺はやらないから、頭数に入れないでくれよ」

    春原「なんでだよ、女の方が多いんだぜ?」

    春原「王様になれば、あんなことや、こんなことが…」

    春原「やべぇ、興奮してきたよっ!」

    朋也「おまえ、今めちゃくちゃ引かれてるからな」
    189 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:30:22.29 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-212)
    春原「へ?」

    春原は女性陣の冷たい視線を余すことなく集めていた。

    春原「…こほん」

    春原「まぁさ、こんな、みんなで盛り上がろうって時に、抜けることないだろ」

    朋也「知るかよ…」

    春原「ま、嫌ならいいけど。僕のハーレムが出来上がるだけだしね」

    春原「むしろ、そっちの方が都合がいいかも、うひひ」

    いやらしい笑みをこれでもかと浮かべる。

    朋也(ったく、こいつは…)

    春原の変態願望を押しつけられた奴には同情を禁じえない。

    朋也(…待てよ)

    それは、平沢にも回ってくる可能性があるんじゃないのか。
    というか、普通にある。
    ………。

    朋也「…いや、やっぱ、俺もやる」

    春原「あん? なんだよ、いまさら遅ぇよ」
    190 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:31:47.62 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-267)
    朋也「まだセーフだ。いいだろ、部長」

    「ああ、全然オッケー」

    朋也「だそうだ」

    春原「ふん、まぁ、いいけど」

    これで少しは平沢に被害が及ぶ確率を下げられた。
    よかった…

    朋也(って、なにほっとしてんだよ、俺は…)

    なんで俺がここまで平沢のことを気にかけているんだ…。
    別に、いいじゃないか。俺には関係のないことだ。
    ………。
    でも…どうしても耐えられない。

    朋也(はぁ…くそ…)

    厄介な感情だった。

    「で、梓はどうすんの? ずっと黙ってたけど」

    「…やってやるです」

    めらめらと灯った憎悪の眼差しを俺に向けながら答える。

    朋也(俺をピンポイントで狙ってくる気かよ…)
    191 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:32:08.22 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-175)
    だが、あくまでランダムなので、特定の個人を狙うなんて、まず無理だ。
    そこは安心していいだろう。

    「うし、じゃ、全員参加だな。そんじゃ、番号クジ作るかぁ」

    ―――――――――――――――――――――

    ストローで作った番号クジ。
    部長が握り、中央に寄せる。
    そして、各々クジを引いていった。

    「王様だ~れだ?」

    皆一斉に手持ちのストローを確認した。
    俺は4だった。

    春原「きたぁあああああああっ!!!」

    「げっ、いきなり最悪な野郎がきたよ…」

    春原「いくぜぇ…じゃあ、4番が王様の…」

    朋也(げっ…)

    春原「ほっぺたにチュウだっ!」

    朋也「ぎゃぁああああああああああああ!!!」

    春原「うわっ、どうしたんだよ、岡崎…」
    192 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:32:41.23 ID:KuWFpRSfO (-9,-2,-3)
    追いついた

    支援
    193 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:33:18.03 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-227)
    春原「って、まさか…まさか…」

    朋也「てめぇ、ふざけんなよ、春原っ! 俺にそんな気(け)はねぇっ!」

    春原「おまえかよ…4番…」

    「わははは! いきなりキツいのいくからそういうことになるんだよ」

    「岡崎くんと…春原くんが…キ、キキキス…ぁぁ…」

    「ふんすっ、なんか興奮するね、ふんすっ」

    「そういうのもアリなのね…なるほど…」

    「…不潔」

    にわかに外野が盛り上がり始めていたが…
    対照的に、俺と春原は肩を落としてうなだれていた。

    朋也「…いくぞ、こら」

    春原「おう…こい」

    朋也「陽平、愛してる」

    春原「ひぃっ」

    朋也「あ、その顔大好き!」

    春原「ひぃぃっ」
    194 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:33:36.86 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-214)
    朋也「次その顔したらキスするからな」

    春原「ひぃぃぃっ」

    朋也「あ、今した。ぶちゅっ」

    ひいいいぃぃぃぃ…

    BAD END

    朋也(おえ゛…)

    今の大惨事を目の当たりにして、きゃっきゃと騒ぎ出す女たち。
    こっちはそれどころじゃなかった。

    春原「うう…変な芝居入れないでくれよ…」

    春原は涙を流してい泣いていた。

    朋也「ああ…俺も、やってて吐き気がこみあげてきたよ…」

    春原「うう…じゃあ、やるなよぉ…」

    とぼとぼと自分の席に戻るふたり。

    「あんたら、ほんとはデキてんじゃないのぉ?」

    「アヤシイよねぇ」

    「あ…あうあう…」
    195 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:34:48.47 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-168)
    「くすくす」

    「…ふ、不潔です…」

    朋也「忘れてくれ…」

    「あーあ、写メ撮っとけばよかった」

    「あ、そうだね。見入っちゃってたよ」

    朋也「保存しようとするな…」

    春原「…早く次いこうぜ。ムギちゃんで中和しなきゃ、精神が持たねぇよ」

    「わはは。はいはい、わかったよ」

    ―――――――――――――――――――――

    「王様だ~れだ?」

    俺は6を引いた。

    「あ、私だ」

    「おお、ムギちゃんかぁ」

    「ムギは初心者だからなぁ、何がくるやら…」

    春原「ムギちゃん、僕を引き当ててねっ」
    196 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:35:11.23 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-151)
    そういうゲームでもない。

    「じゃあ…3番の人と、5番の人」

    「正面から、愛しそうに抱き合って♪」

    「おお、大胆だな…で、だれだ、3と5は」

    「私、3番だよ」

    「私…5番」

    「まぁ…これは、これは…うふふふ…ひひ」

    「えへへ、よろしくね、澪ちゃん」

    「う、うん…」

    席を立ち、向かい合う。
    身長差があり、視線を合わすのに、平沢が上目遣いになっていた。

    春原「…なんか、周りにバラ描きたいね」

    朋也「…ああ」

    「澪ちゃん…」

    「唯…」

    ごくり…
    197 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:36:36.01 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-124)
    「…好きっ」

    「唯…唯っ!」

    ひし、っと抱きしめあう。

    「ああ、澪ちゃん、おっぱい大きいよ…」

    「唯…すごくいい匂いがする…」

    「澪ちゃん…」

    「唯…」

    目を閉じて、お互いの鼓動を感じ合っていた。

    「…ゴッドジョブ」

    ゴッド…神?
    びしぃ、と親指を立てていた。
    左手には、携帯を持ち、カメラのレンズを向けている。
    ムービーでも撮っているんだろうか…。

    ―――――――――――――――――――――

    「王様だ~れだ?」

    俺は5。

    「お、私だ」
    198 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:37:00.52 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-149)
    「りっちゃんかぁ、これは覚悟しなきゃかもね」

    春原「なんだ、ハゲか」

    「な、てめ…」

    「………」

    「…後悔するなよ」

    春原「あん?」

    「じゃ、いくぞ」

    「1番が…」

    言って、素早く目だけ動かし、周りを確認していた。

    「いや、やっぱ、2番が…」

    また、同じ動き。

    「うん…2番が、3番を…」

    「いや、やっぱ、4番かな…」

    「うんそうだ。2番が4番に、思いっきり左鉤突きを入れる!」

    「ひだりかぎづき?」
    199 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:38:07.12 ID:tTDNEF4XO (+22,+29,-4)
    おもしろすぎんだよおおえぉお!!
    200 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:38:12.11 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-182)
    朋也「打撃のことだ。つまり、殴れっていってるんだ」

    「うえぇ!? な、殴るの!?」

    「さ、誰かな、2番と4番は~」

    入れられる側に春原を狙っているんだろう。
    あの、『後悔するな』という言動からしても、そのはずだ。
    だが、そんなことが可能なのか…?
    やけに余裕のある佇まいだ。
    あの目の動き、何かを探っているように見えたが…
    そこまで精度に自信があるということなのか…?

    「私、2番…」

    春原「…4番…」

    …どんぴしゃだった。

    「おおう、こりゃ、春原、死んだかなぁ?」

    「ごめんね、春原くん…」

    春原「いや…ムギちゃんになら、むしろ本望だよ」

    席を立ち、向かい合う。
    さっきの甘い雰囲気とは違い、殺気立った空気。

    「ショラァッ!」
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