元スレ朋也「軽音部? うんたん?」2
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×4
1 :
前スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285377812/
2 = 1 :
―――――――――――――――――――――
昨日同様、食べ終わると、練習に向かった。
春原「ふーい…なんか、やけに気合入ってるね、岡崎」
キョン「確かにな。昨日、いなくなって、戻ってきたあたりからずっとこの調子だもんな」
朋也「単に負けたくなくなっただけだよ」
春原「でもさ、二年から聞いたけど、秋山としっぽりしてたんだろ?」
春原「そん時なんかあったんじゃないの?」
朋也「なにもねぇよ」
春原「ふぅん…てっきり、平沢と二股かけてんじゃないかと思ったんだけどねぇ」
キョン「え? 岡崎って、平沢さんとそんな仲なのか?」
春原「まだそういうわけじゃないんだけどさ…」
春原「でも、両思い臭いんだよね、朝も一緒に登校して来てるみたいだし」
キョン「へぇ、あの岡崎がね…丸くなったもんだ」
朋也「キョン、こいつの言うことなんて、8割嘘だって知ってるだろ。話半分に聞いとけよ」
春原「でも、残り2割は事実だろ?」
3 :
あずにゃんってこんなキャラだっけ?
5 :
朋也「違う。現実逃避の妄想だ」
春原「それ、もう発言全てが妄言ですよねぇっ!」
キョン「ああ、そうだったな。危うくあっちの世界に連れてかれちまうとこだった」
春原「病人みたくいうなっ! こいつが平沢と登校して来てんのはマジだよっ」
朋也「あれ、また幻聴が聞える」
キョン「俺も、かすかに耳に残ってるわ、なんだろ」
春原「取り合ってももらえないんすかっ!?」
朋也「キョン、今、う○こって言ったか?」
キョン「まさか、そんなこと言うの、あいつくらいだろ、あの金髪の…」
キョン「誰だっけ?」
朋也「さぁ?」
春原「ほんと、おまえら最低のコンビっすねっ!」
春原「ちくしょう…これも、去年と変わんないのかよ」
キョン「ああ、悪かった、悪ノリしすぎたよ。つい、懐かしくなってな」
春原「つい、でやらないでほしんですけどねぇ…」
6 :
>>1乙 マジがんばれ
7 = 1 :
そう、いつも春原をいじめた後は、こいつがこうしてアフターケアに入っていたのだ。
この感じも久しぶりだったが、すぐに調子が戻ってきた。
朋也「おい、明日は勝つぞ。わざわざ俺たち三人、雁首揃えてるんだからな」
キョン「ああ、そうだな」
春原「…ま、そうだね」
朋也「春原の幻影も、どうやら納得したようだな」
春原「ここまできて、まだ僕の存在はおぼろげなのかよっ!?」
キョン「はははっ」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。
春原「なんなんだろうね、こんなとこで待機してろなんてさ」
朋也「さぁな」
キョン「あの人の考えは読み辛いからなぁ。突拍子もないことも割とするし」
さわ子さんに退室するよう言われ、男三人、部室の前でだべっていた。
8 = 5 :
がちゃり
さわ子「お待たせ~」
間の抜けた声を伴って、室内を一望できるほどに扉が広く開け放たれた。
さわ子「どう? この子たちは」
唯「いぇい、似合う?」
律「動きやす~」
紬「うん…ちょっと胸がきついかなぁ…」
澪「うぅ…」
梓「………」
見れば、全員チア服を着ていた。
限界まで短いスカート、ノースリーブの薄い服、動けばわかる、胸の揺れ…
目のやり場に困るその姿に、逆に俺たちは釘付けとなり、言葉を発せなかった。
さわ子「明日はこれで応援するのよ」
澪「先生、やっぱり、やめませんか、これ…」
梓「そ、そうですよ、恥ずかしいです…」
梓「それに、岡崎先輩とかが、いやらしい目でみてくると思うんです」
9 :
まあけいおんの方は結構違和感あるね
10 = 1 :
なぜ俺限定なんだ…。
さわ子「あら、でもそういう衣装の方が、男は喜んで、力が発揮できるものなのよ?」
さわ子「そうでしょ?」
俺たちに振ってきた。
朋也「いや、まぁ…」
キョン「でも、これはさすがに…」
春原「さわちゃん、やっぱわかってるねっ」
欲望に忠実な変態が一匹。
さわ子「ふふ、まぁね。だてに二十数年生きてないわ」
さわ子「って、歳のこと言うなっ」
ぽかっ
春原「ってぇっ! 自分で言ったんでしょっ!」
さわ子「あら、そうだったわね、ごめんなさい」
春原「誰かさん並に理不尽だよ、この人…」
唯「ねぇねぇ、どう? 可愛くない? この服」
11 :
キョンって何気に良いキャラだよな。
人当たりというか世渡り上手というか……
12 = 5 :
言って、くるくると回った。
朋也「わ、馬鹿、おまえ、んな激しく動くなっ」
唯「え? なんで?」
朋也「いや、それは…」
梓「あーっ! この人、見たんですよ、絶対っ!」
唯「何を?」
梓「唯先輩の下着ですっ!」
唯「…いやん」
朋也「不可抗力だろっ」
梓「目をそらせばよかったじゃないですかっ! ガン見することないでしょっ!」
朋也「してねぇよ…」
梓「嘘つきっ! 目にしっかり焼き付けてましたっ!」
朋也「だぁーっ、なんなんだこいつはっ!」
キョン「先生、こういうことにならないためにも、チアはやめたほうが…」
さわ子「あら、そう?」
13 :
あずにゃんと一緒にハンバーガー食べたり猫とじゃれたりした日が懐かしいぜ…
14 = 1 :
春原「あ、てめぇキョン、余計なこと言うなよっ」
キョン「いや、でもだな…」
さわ子「じゃあ、バニーガールなんてどうかしら?」
キョン「ぶっ!」
春原「なに過剰反応してんだよ、むっつり野郎」
キョン「ち、違う、二年前のトラウマが蘇っただけだ…」
梓「先生、私もこの衣装を着るのはやめたほうがいいと思います」
梓「絶対、岡崎先輩が本能をむき出しにして、警察沙汰になると思いますから」
朋也「だから、なんで俺だけを槍玉に挙げるんだ…」
澪「私も、普通に応援したいです…」
唯「私はこれ着て応援したいな~」
朋也「いや、やめてくれ…」
唯「ええ? なんで?」
朋也「普通にしてくれてたほうが、いろいろと助かる」
唯「えぇ…なら、しょうがないかぁ…ちぇ」
15 = 5 :
春原「ムギちゃんは、それ着てくれるよね? ていうか、もう普段着にしようよっ」
律「やらしいやっちゃなー、このエロ原め」
春原「っせぇよ、おまえは一年中ジャージでも着てろ」
律「おまえならジャージの上からでも欲情してきそうだけどな、こわいこわい」
春原「はっ、ジャージの上着をズボンにインしてる奴なんかにするかよ」
律「そんな着こなし方しねぇよっ、ヘタレっ!」
春原「ヘタレは今関係ないだろっ!」
一応ヘタレという自覚はあったらしい。
16 = 1 :
朋也「春原、落ち着つけ。まず自分の足元をよく見てみろ」
春原「あん? なんだよ…」
春原「って、なんで靴下にズボンがインされてるんだよっ!?」
朋也「いつも社会の窓がアウトしてる分、細かいところで取り戻しておこうと思って…」
春原「まずその前提がおかしいだろっ!」
律「わはは!」
この後、結局コスプレは取りやめとなった。
当日は普通に制服で応援してくれるらしい。
さわ子さんや平沢、春原なんかは不満そうにしていたが、これでよかったんだと思う。
…俺も、少しだけ名残惜しかったが。
―――――――――――――――――――――
17 = 6 :
岡崎涙目wwwwwwwwwwwww あずにゃん自重しろww
18 = 5 :
4/24 土
試合当日。ついにこの日がやってきた。
向こうの話によれば、試合は放課後になってからすぐ行われるとのことだった。
昼食を摂ってからでは、バスケ部の練習に差し支えがあるらしい。
だが、試合時間自体は10分と短く、多少腹が減っていても問題なさそうだった。
春原「でも、ちょっと計算外だったよね」
春原「まさか、うちのバスケ部の、ほぼ全体を揃えてくるなんてさ」
朋也「ああ、そうだな」
つまり、その中には当然レギュラー陣も入っているわけで。
そいつらが出てくるなら、俺たちが勝てる可能性は限りなく低いだろう。
本当に、さわ子さんという保険があってよかった。つくづくそう思う。
春原「ま、僕たちが勝つことに変わりはないけどさ」
朋也「そうなりゃいいけどな」
春原「へっ、なるさ」
―――――――――――――――――――――
放課後。
メンバー全員で体育館に集まる。憂ちゃんも、少し遅れて駆けつけてくれた。
ふと、入り口から覗けた館内は、閑散として見えた。
広さに対して、居る人間の数が少ないからだ。
集まったのは、俺たちと、バスケ部、それと、ファンクラブの連中のみだった。
19 = 1 :
他に体育館を使うクラブの姿はない。
この時間は本来、大多数の生徒にとって、昼休憩になっているはずだからだろう。
男子生徒「ああ、来た?」
体育館に足を踏み入れると、すぐにファンクラブの男がやってきた。
この試合の段取りを組んだ奴だ。
薄々思っていたが、やっぱり、こいつが現代表なんだろう。
春原「おう、来てやったぜ」
男子生徒「絶対あの約束は守れよ」
春原「わかってるっての。おまえらこそ、破んなよ」
男子生徒「そんなことしないよ。そこは安心してくれ」
自信たっぷりに言って、また仲間の輪に戻っていった。
律「マジで頼んだぞ、おまえら。あんなのに調子乗らせたくないからな」
春原「任せとけって」
キョン「やれるだけの全力は尽くすよ」
俺も口を開こうとした時、向こうから、ボールの跳ねる音がした。
見れば、相手のバスケ部がアップを始めていた。
定位置からシュートをする者、ドリブルをして、動きを確かめる者…様々だった。
…懐かしい風景。
俺もかつてはその中の一人だったのだ。
20 = 5 :
けど、今は…
俺は自分の体を見下ろす。
制服のままの格好。
こんな姿で、かつて情熱を燃やしていたバスケをやるなんて、皮肉だ。滑稽すぎる。
唯「…なんか、緊張してきた」
朋也「おまえがかよ。でも、今となっては、遊びの延長だぞ」
律「む、遊びとはなんだ、遊びとはっ! 真剣にやれっ!」
春原「そうだぞ。おまえ、奴らにバカ呼ばわりされたままで悔しくないのかよっ」
朋也「それはおまえだけだろ」
春原「僕がバカにされたら、おまえがバカにされたも同然なんだよっ」
春原「一人はみんなのために、みんなは一人のためにだっ」
こいつの背負う業が重過ぎて、輪に入れられた俺が一方的に損していた。
唯「でも、バスケ部の人たちと試合するんだから、それはやっぱりすごいことなんだよね」
唯「ほら、みんなすごく上手だし」
聞かれていたら、怒られそうなことを言う。
唯「こうやって毎日練習してるんだよね」
梓「私たちも、あれくらい真面目にやりたいです…」
21 = 1 :
澪「わかるぞ、その気持ち」
唯「まぁまぁ、今はそれは置いといて…」
手でどけるようなジェスチャーを入れる。
唯「そんな人たちと、集まったばっかりの私たちが戦うんだよ」
唯「今まで違う道を歩いてきた、私たちがね」
唯「もし勝てたとしたら…」
唯「この短い時間の中で、バスケ部の人たちよりも固い絆で結ばれたってことだよね」
唯「だとしたら、すごいことだよ」
唯「いつもは、まったりしてる私たち軽音部…時々、そのことで怒られちゃうこともあるよね」
唯「それと…不器用に、皆から離れていっちゃった、岡崎くんと春原くん」
唯「そのふたりと、今は仲良しだけど、出会う前は接点がまったくなかった、キョンくん」
唯「こんなにも、ばらばらで…みんなが一緒に、ひとつの目標に向かってるわけでもなくて…」
唯「もしかしたら、話すことさえなかったかもしれない私たちだけど…」
唯「それでも、力を合わせれば、頑張ってる人たちとだって、同じことが出来るってことだよね」
唯「普段は、ちょっと真剣さが足りない私たちでも、ね」
22 = 5 :
朋也「ああ…そうだな」
平沢の言いたいことはよくわかる。
俺も、春原もそんなふうに生きてきたから。
キョンの奴だって、きっと似たような感情を持ったことがあるはずだ。
所属している部のことを聞くたび、俺たちに近かったことがわかっていったから。
けど…現実はそんなに甘くない。
気持ちだけでは超えられない壁も、確かにあるのだ。
バスケ部員「話は聞いてるけど…おまえらが相手?」
ひとりのバスケ部員がやってくる。
春原「ああ、そうだよ」
バスケ部員「俺たち、もう始めたいんだけど」
春原「準備運動するから、ちょっと待っててくれよ」
バスケ部員「早くしろよ。さっさと終わらせて、飯にしたいんだからな」
機嫌悪く言い放ち、戻っていく。
春原「ちっ、感じ悪ぃな…」
朋也「昼飯前に駆り出されてんだ、気が立ってるんだろ」
屈伸しながら言う。
春原「だからってさぁ…言い方ってもんがあるだろ」
23 = 1 :
キョン「試合でその鬱憤を晴らすってのはどうだ?」
腕を伸ばしながら、ついでのように助言する。
春原「ま…そうだね」
春原も、手首、足首とひねりを加えてほぐしていた。
三人とも、好きなように柔軟をしている。
決まった順序なんかない。全員で同じ動きを強要することもない。
そんな無秩序さが、実に俺たちらしかった。
ひいては、軽音部の連中を含めた、このチーム全体の有りようを表しているようだった。
朋也「いくか」
キョン「おう」
春原「うしっ」
気合十分でコートに踏み入っていく。
向こうは、すでに三人揃っていた。
軽く体を動かしたりしている。
バスケ部員「ハーフコートじゃなくて、全面使うからな」
審判を務めるらしい部員が、ボールを持ったままそう伝えてきた。
朋也「ああ、わかった」
バスケ部員「ジャンプボールだ。そっちは誰がやるんだ」
24 = 5 :
朋也「キョン、頼む」
キョン「俺か?」
朋也「ああ。俺は無理だし、春原は背が低い。おまえが適任だ」
キョン「そうか。わかった」
センターサークルの中に両者陣取る。
そして、ボールが高く放られた。
キョン「岡崎っ」
最高到達点に達したところで、キョンがボールを叩き落とした。
俺の前に落ちてくる。
すぐさま拾い、そのままドリブルで切り込んでいく。
俺のマークはスピードで振り切ることができた。
だが、相手も一人ディフェンスに戻っていて、ゴール前で膠着する。
春原の姿を探す。反対サイドから走りこんでいるのが見えた。
それも、フリーで。
俺は一度ドリブルで突破するような素振りを見せ、パスを出した。
春原が受け取る。
春原「庶民シューっ!」
二、三歩ほどドリブルで距離をつめ、レイアップを決めていた。
キョン「ナイッシュ」
律「いいぞぉーっ、春原ぁ!」
25 :
面白すぎて勉強できないぜ
26 = 1 :
唯「すごぉい、春原くんっ」
憂「春原さん、かっこいいですっ」
紬「ナイスシュートっ」
澪「先取点だよっ」
春原「へへ…」
にやついた表情を浮かべる春原。
その横から、ボールを持った敵がドリブルで抜き去っていった。
春原「あ、やべ…」
朋也「余所見すんなっ、この馬鹿っ」
律「死ねーっ、春原ーっ!」
唯「最悪だよぉ、もう」
春原「おまえら、てのひら返すの早すぎだろっ!」
紬「…はぁ…マジで、はぁ…」
春原「ムギちゃんまでっすかっ!? つーか、キャラまで変わってるしっ」
朋也「春原、いいから戻れっ」
春原「わかってるよっ」
27 = 5 :
3対2の状況も、春原が戻ったことで、やっとイーブンに戻った。
敵全員に俺たちのマークがつく。
キョン「っと…」
キョンがパスカット。
すぐに走り出す俺と春原。
カウンターの速攻だ。
キョン「いくぞっ」
キョンは一度春原の方を向いてフェイントを入れ、俺にロングパスを出した。
相手のコート、ツーポイントエリアで拾う。
俺がいるのは左サイド。
ここからレイアップに持っていきたいが、マークがしつこい。
春原もマンツーマンでつかれていた。
仮に今、俺についたこのディフェンスを突破できても、すぐにヘルプがくるだろう。
それくらいゴールに近い位置での攻防だった。
だがこれは、チャンスでもある。ヘルプが来たら、春原がフリーになるのだ。
そこで上手くパスを回せればいいが…
ここまで走ってきた疲労もあって、体がいうことを聞いてくれるかどうか自信が持てない。
朋也(キョンは…)
敵に背を向けて確認すると、自陣から上がってきているのが見えた。
ドリブルでキープしたまま、3対3の状況になるのを待つ。
これで、少し息も整えることができるだろう。
朋也(よし…)
28 :
どうでも良いけど
CLANNAD×ヒトリノ夜のMADを思い出した
29 = 1 :
その時が来て、まず一人、俺のマークをドリブルで抜き去った。
案の定、すぐにヘルプが来る。
俺は近くにいた春原にパスを出した。
が、今度はキョンについていたマークが春原をチェックしに来た。
必然的に、キョンはフリーになる。
春原「おし、キョン、いけっ」
春原がワンバンさせてパスを回す。
キョンはそれをしっかりと胸で受け取った。
スリーポイントラインの、外側で。
その位置から、ゴールに向けてボールを放つ。
綺麗な放物線を描き、ゴールに吸い込まれていった。
得点表がめくられる。
3点だ。
春原「うっしゃっ、ナイッシュゥ、キョンっ」
朋也「ナイッシュ。押してるぞ、俺たち」
キョン「おう」
ハイタッチを交わす三人。
律「うおー、すげーっ!」
唯「あんな遠い所からだからかな、3点も入ってたよっ」
憂「お姉ちゃん、スリーポイントっていうのがあるんだよ」
30 = 5 :
唯「え? そうなの? すごいシステムだねっ」
外野からは、のんきなやり取りが聞えてきていた。
バスケ部員「………」
対照的に、コート内はそう穏やかじゃなかった。
今のプレイで、部員たちの目の色が変わっていた。
おそらく、今まではキョンの動きを見て、素人に近いと踏んでいたんだろう。
だから、スリーポイントなんか、端から警戒していなかったのだ。
実際、キョンは、ドリブルやパスはそこまで上手くない。
だが、シュートには素質が感じられた。練習も、シュートを重点的にやっていた。
その成果が、今のスリーポイントだ。
プレッシャーのかかっていないドフリーからのシュートとはいえ、上出来だった。
しかし、これからはシュートもあると、相手も警戒してくるだろう。
まぁ、それを逆手に取ることも、もちろんできるのだが。
朋也(奇襲はもうやれないか…)
朋也(ま、なんとかなるか…)
朋也(こいつら、レギュラーってわけでもなさそうだしな…)
俺の予想はおそらく当たっているはずだ。
ここまでの試合運びが、楽にいきすぎている。
それは、あの二人も肌で感じていることだろう。
出し惜しみしているのか知らないが、このままいけば十分勝機はある。
朋也(よし…いくか)
31 :
>>25
お前は俺か
32 = 1 :
その後も、パス回しからの連携や、春原の個人技、キョンのシュートなどで得点を重ねていった。
俺も、左からのレイアップのみだったが、なんとか得点に貢献できていた。
こっちもそれなりに失点していたが、まだまだ優勢だ。
バスケ部員「メンバーチェンジ!」
ボールがコート外に出たとき、タイムを入れて、そう宣言された。
選手が総入れ替えになる。身長が軒並み上がっていた。
ガタイも、ずいぶんとよくなっている。
春原「おいおい、あいつらってさ、やっぱ…」
キョン「だろうな…」
朋也「ああ…レギュラー陣だ」
春原「ちっ、ここにきてか」
キョン「後半分だ。やれないことはないさ」
春原「へっ、そうだね…」
しかし、そう楽観的にもみていられない。
あっちはスタミナが満タンな上に、技量も体格も上だ。
対して、こっちは消耗が激しく、素人が二人に、肩が壊れている男が一人。
ここまではなんとかやってこれたが、この後どこまでやれるか…。
朋也(とにかく、今はこっちボールだ)
朋也(攻めていくか…)
33 = 5 :
思いとは裏腹に、ボールをコートに戻すことさえそう簡単にさせてもらえない。
俊敏な動きでぴったりとつかれていた。
俺は苦し紛れにボールを投げ放ったが、すぐにカットされてしまった。
そのままの勢いで、一気に押し込まれ、得点を許してしまっていた。
朋也「わりぃ…」
キョン「いや、しょうがないさ。ああも、くっつかれちゃな…」
春原「まだ2点返されたただけじゃん。余裕だって」
朋也「すまん…」
キョン「謝らなくていい。いくぞ」
ぱんっと肩を叩かれる。
春原「おまえが謝るとか、らしくねぇっての」
朋也「ああ…そうだな」
再び気を奮い立たせる。
俺も、春原も、キョンも、必死になって食らいついていった。
朋也(くそ、俺に左からのレイアップしかないことがわかってやがる…)
相手には、俺たちの攻撃パターンも、ほぼ読まれていた。
それでも、レギュラー陣相手に、同等以上の戦いを演じて見せた。
だが、それも、終盤に差し掛かってから、かげりが見え始める。
34 = 1 :
春原「あ…ぐっ…はぁ…はぁ…」
キョン「はぁー…はぁ、っく…はぁ…」
二人の体力が底をつき始めていた。
それは、俺にしても同じことだったが…。
朋也「大丈夫か?」
春原「ああ、余裕すぎて、なんか眠いよ」
朋也「それ、死にかけてるからな」
朋也「キョンは?」
キョン「ああ…まだ、いけるぞ」
朋也「そうか…」
とてもそうは見えない。
肩で息をしていた。
強がりだということが、すぐにわかる。
朋也「残り30秒で、こっちボールだ。もう、このワンプレイで終わるぞ」
得点差は一点のみ。
俺たちが負けていた。
春原「泣いても笑っても、最後ってわけね…」
35 = 5 :
キョン「どうする? もう、パターンだいぶ読まれてるぞ…」
バスケ部員「おまえら、早く始めろよっ!」
怒声が届く。
朋也「ああ、すぐ始める」
そう冷静に返した。
朋也「いいか、ふたりとも」
俺は二人を抱き寄せて、最後の指示を出す。
キョン「了解」
春原「うまくいくといいけどねぇ」
コートに散る。
最初のパスでカットされればそれでゲームオーバー。
相手もそれがわかっているから、今まで以上に必死のディフェンスだ。
ぐるぐるとめまぐるしく変わる陣形…。
俺はボールを投げ入れた。
キョンの手に渡る。
不意に取られないよう、囲まれる前に俺に戻した。
ドリブルで中央に割って入る。
相手は意表を突かれた形になった。
俺は今まで左サイドからしかゴール下に入ることはなかったからだ。
一、二…
レイアップ! …の振りだけしてみせる。
36 = 1 :
思惑通り、目の前に影がよぎった。
俺は胸の前でボールを左手に移した。
そして、背後にいるのが春原だと信じてボールを浮かせる。
春原「よし、きたぁぁっ!」
春原の声。
振り返ると、ボールを両手に掴んだ春原が着地したところだった。
それに、春原についていたディフェンスが覆い被さる。
フェイントで振った後、ボールを床に打ちつけた。
高くバウンドしたボール。
助走と共に拾っていたのはキョン。
自分についたディフェンスを振り切って、そして…
ゴールとは反対方向にボールを投げていた。
ゴール正面のフリースローポイント。
そこで俺はボールを受け取っていた。
すべてのディフェンスを振り切って。
コートに立つ全員が俺を振り返っていた。
相手の、唖然とした顔が滑稽だった。
37 = 1 :
唯「岡崎くん、シュートだよっ」
平沢の声だけが、一際大きく聞えた気がした。
ああ…了解。
俺は上がらない肩もお構いなしに打った。
バスケ経験者とはほど遠い、不恰好な姿勢で。
それがすべてを象徴していた。
不恰好に暮らしてきた俺たち。
そんな奴らでも、辿り着くことができる。
道は違っても… 同じ高みに。
ぱすっ、と音がして、ネットが揺れていた。
一瞬の静けさ…
直後、割れんばかりの大歓声が起きた。
春原「よくやった、岡崎!」
キョン「岡崎ぃ、すごいじゃないかっ!」
律「やるじゃん、岡崎っ」
38 = 5 :
唯「岡崎くん、MVP賞受賞だよっ!」
憂「岡崎さんっ」
澪「岡崎くん…すごいよっ、ほんとに…」
紬「やったね、逆転よっ」
梓「まぁ…認めます。おめでとうございます」
みんなが駆け寄ってくる。
澪「みんな…すごいよ」
澪「唯が言ってた通り…力を合わせれば、こんなこともできるんだって…」
澪「わだし…ぐす…感動だよ…」
朋也「泣くな。これくらいのことで」
春原「そうそう。当然のこと」
キョン「ははっ、だな」
しばし、みんなで喜びを分かち合う。
俺たちとやりあっていたバスケ部員たちは、仲間に非難され始めていた。
そいつらも、手でバツを作ったり、首を横に振ったりして、抵抗を示しているようだった。
だが、そんな中にも、俺たちに拍手を送ってくれる奴らもいた。
本気で戦っていたことを、本物たちに認められたようで、それが少しうれしかった。
39 = 1 :
朋也「じゃあ、本題に移るか」
朋也「おい、つっ立ってないで、こっちこい」
ファンクラブの男を呼びつける。
しぶりながらもやってきた。
朋也「これで、文句ねぇだろ」
男子生徒「…文句っていうかさ…澪ちゃんは別に迷惑してなかったからいいだろ」
澪「え…」
男子生徒「そうだったじゃん。そんな嫌でもなかったんでしょ?」
春原「てめぇな、このごに及んで、なに言って…」
朋也「春原…」
手で制す。
春原「あん? なんだよ」
朋也「いいから、ちょっと黙ってろ」
春原「なんなんだよ…」
朋也「秋山、おまえはどうなんだ」
途中で止められ、怒りのやり場を失った春原をよそに、秋山にそう訊いた。
40 = 5 :
澪「そ、それは…」
朋也「嫌だったんだろ。はっきり言ってやれ」
澪「………」
男子生徒「おまえが言わそうとしてるだけだろどうみても。馬鹿か」
朋也「正直に言え。なにを言ったって、俺たちがついてるから」
俺は男の暴言に言い返すことはしなかった。
じっと、秋山の答えを待った。
澪「……です…」
男子生徒「え?」
澪「嫌です。もう、私に…」
澪「私に…」
澪「………」
澪「軽音部のみんなに、近づかないで」
最後には顔を上げ、しっかりと相手の目を見据え、はっきりと言った。
男子生徒「………」
男子生徒「ビッチすぎだろ…」
41 = 1 :
捨て台詞を吐き、残していた仲間と共に体育館から出ていく。
春原「ったく、拒否られたからって、最後に変なこと言っていきやがってよ」
朋也「あんな奴の言うことなんて、気にするな」
澪「う、うん…」
春原「今度見かけたら、ぶっ飛ばしといてやるよ」
澪「そ、それはダメだよ」
春原「遠慮すんなって」
澪「気持ちだけ、受け取っておくよ。ありがとう」
春原「…ま、いいけどね」
キョン「おまえは喧嘩したかっただけだろ」
春原「ちがわい」
律「いやぁ、でも、驚いたわ。あの澪が、あんなはっきり断り入れるなんてな」
律「幼馴染のあたしでも、今までみたことなかったのにさ」
澪「岡崎くんが、背を押してくれたから…」
俺を一瞬だけ見て、顔を伏せる。
俺も、あんな恥ずかしいセリフを吐いてしまった手前、なにか気恥ずかしかった。
42 = 5 :
勝って気分がよくなっていたとはいえ…猛省。
春原「おお? なに、いい雰囲気?」
律「初々しいねぇ、おふたりさん」
澪「え? ちちち、ちが…」
律「こぉのフラグ立て夫がぁ。略して立て夫がぁ」
俺を肘でつついてくる。
朋也「なにが立て夫だ…っ、あでででっ」
何者かに太ももをつねられる。
梓「………」
何食わぬ顔で中野が横に立っていた。
朋也「って、やっぱおまえかっ! なにすんだ、こらっ」
梓「すみません、ぎょう虫がいたもので、つい」
そんなのケツにしかいない。
律「あ~、立て夫が澪に優しくするもんだから…」
唯「ほらぁ、唯が元気なくしちゃってるじゃん」
43 :
めっちゃおもろい
けどぶっ続けだろ少し休めよ
保守ならみんなやるで多分
44 = 1 :
唯「そ、そんなことないよぉ…ないよ…」
紬「ふふ、唯ちゃん可愛い」
憂「お姉ちゃん頑張ってっ」
唯「え、ええ? なんのことか、わかんないっ」
律「はは、まぁいいや。とにかく、祝勝会だっ」
律「部室行くぞぉ」
がし、っと秋山の肩に手を回した。
澪「あ、こら律、歩きにくいっ」
律「細かいことは気にすんなっ」
―――――――――――――――――――――
キョン「じゃ、俺はここで」
体育館から直接旧校舎の一階までやってくると、そう言った。
朋也「おまえ、こないのか」
キョン「ああ、バスケ終わるまでって、言ってあるからな」
春原「いいじゃん、ちょっとくらい」
45 = 5 :
キョン「そのちょっとが許されてたら、苦労してないんだけどな」
朋也「なんか、大変そうだな、おまえも」
あの日、文芸部室から出てきた時のこいつの顔を思い出す。
眉間にしわを寄せ、難しそうな顔をしていた。
いろいと複雑な環境なんだろう、きっと。
キョン「ああ、まぁな。でも…」
言いかけて、やめる。
キョン「…いや、なんでもない」
キョン「それじゃ」
唯「キョンくん、いつでも軽音部に遊びに来てね」
キョン「ありがたいけど…多分、顔を出すことはないと思う」
キョン「俺の居場所は、なんだかんだいって、あそこだからな」
親指で文芸部室をさす。
唯「そっか…そうなんだね」
キョン「ああ」
朋也「悪かったな、なにも見返りがなくて」
46 = 1 :
キョン「あったさ。久しぶりにおまえらとつるんで馬鹿やれたっていうな」
春原「うれしいこと言ってくれるじゃん」
朋也「ちょっと臭いけどな」
キョン「はは、最後までキツいな、岡崎は」
キョン「まぁ、それが、らしくていいよ。それじゃな。また機会があれば」
朋也「ああ、またな」
春原「じゃあね」
唯「ありがとう、キョンくん」
律「おつかれさん」
紬「ありがとう。おつかれさま」
澪「ありがとう、一緒に頑張ってくれて」
梓「ありがとうございました」
憂「おつかれさまでした」
俺たちの言葉を聞き終えると、部室に入っていった。
ドア越しに、また女と言い争うような声が聞えてくる。
だが、その声色に怒気は含まれていなかった。
どころか、生き生きとしているような印象さえ受けた。
47 :
全スレ余ってるぞ?なんで放棄した?
48 = 5 :
俺も詳しくは知らないが、それだけでわかった。
あそこが、あいつの収まるべき場所なんだろう、と。
―――――――――――――――――――――
律「かんぱ~い」
唯「いぇい、かんぱ~い」
中央にティーカップを寄せ集め、チンッ、と軽く触れ合わせた。
律「しっかし、本業のバスケ部相手に…」
唯「えいっ」
パンッ!
律「っいっつ…って、なぁにすんだよ、唯っ」
唯「このクラッカー、試合中に使おうと思ってたんだけど、使い時がわからなくて…」
まだ持っていたのか…。
唯「それで、今使ってみました」
律「今もタイミングずれてるってのっ! 私のトークが始まろうとしてただろがっ」
律「しかも、こんな近くで放ちやがって…」
唯「えへへ、ごめんね。みんなの分もあるよ?」
49 = 43 :
>>47
容量いっぱいになったんだろ
50 = 1 :
>>47容量オーバー
みんなの評価 : ★★★×4
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