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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」2

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    みんなの評価 : ★★★×4
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    1 :

    前スレ

    http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285377812/

    2 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――

    昨日同様、食べ終わると、練習に向かった。

    春原「ふーい…なんか、やけに気合入ってるね、岡崎」

    キョン「確かにな。昨日、いなくなって、戻ってきたあたりからずっとこの調子だもんな」

    朋也「単に負けたくなくなっただけだよ」

    春原「でもさ、二年から聞いたけど、秋山としっぽりしてたんだろ?」

    春原「そん時なんかあったんじゃないの?」

    朋也「なにもねぇよ」

    春原「ふぅん…てっきり、平沢と二股かけてんじゃないかと思ったんだけどねぇ」

    キョン「え? 岡崎って、平沢さんとそんな仲なのか?」

    春原「まだそういうわけじゃないんだけどさ…」

    春原「でも、両思い臭いんだよね、朝も一緒に登校して来てるみたいだし」

    キョン「へぇ、あの岡崎がね…丸くなったもんだ」

    朋也「キョン、こいつの言うことなんて、8割嘘だって知ってるだろ。話半分に聞いとけよ」

    春原「でも、残り2割は事実だろ?」

    3 :

    あずにゃんってこんなキャラだっけ?

    5 :

    朋也「違う。現実逃避の妄想だ」

    春原「それ、もう発言全てが妄言ですよねぇっ!」

    キョン「ああ、そうだったな。危うくあっちの世界に連れてかれちまうとこだった」

    春原「病人みたくいうなっ! こいつが平沢と登校して来てんのはマジだよっ」

    朋也「あれ、また幻聴が聞える」

    キョン「俺も、かすかに耳に残ってるわ、なんだろ」

    春原「取り合ってももらえないんすかっ!?」

    朋也「キョン、今、う○こって言ったか?」

    キョン「まさか、そんなこと言うの、あいつくらいだろ、あの金髪の…」

    キョン「誰だっけ?」

    朋也「さぁ?」

    春原「ほんと、おまえら最低のコンビっすねっ!」

    春原「ちくしょう…これも、去年と変わんないのかよ」

    キョン「ああ、悪かった、悪ノリしすぎたよ。つい、懐かしくなってな」

    春原「つい、でやらないでほしんですけどねぇ…」

    6 :

    >>1乙 マジがんばれ 

    7 = 1 :

    そう、いつも春原をいじめた後は、こいつがこうしてアフターケアに入っていたのだ。
    この感じも久しぶりだったが、すぐに調子が戻ってきた。

    朋也「おい、明日は勝つぞ。わざわざ俺たち三人、雁首揃えてるんだからな」

    キョン「ああ、そうだな」

    春原「…ま、そうだね」

    朋也「春原の幻影も、どうやら納得したようだな」

    春原「ここまできて、まだ僕の存在はおぼろげなのかよっ!?」

    キョン「はははっ」

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    放課後。

    春原「なんなんだろうね、こんなとこで待機してろなんてさ」

    朋也「さぁな」

    キョン「あの人の考えは読み辛いからなぁ。突拍子もないことも割とするし」

    さわ子さんに退室するよう言われ、男三人、部室の前でだべっていた。

    8 = 5 :

    がちゃり

    さわ子「お待たせ~」

    間の抜けた声を伴って、室内を一望できるほどに扉が広く開け放たれた。

    さわ子「どう? この子たちは」

    「いぇい、似合う?」

    「動きやす~」

    「うん…ちょっと胸がきついかなぁ…」

    「うぅ…」

    「………」

    見れば、全員チア服を着ていた。
    限界まで短いスカート、ノースリーブの薄い服、動けばわかる、胸の揺れ…
    目のやり場に困るその姿に、逆に俺たちは釘付けとなり、言葉を発せなかった。

    さわ子「明日はこれで応援するのよ」

    「先生、やっぱり、やめませんか、これ…」

    「そ、そうですよ、恥ずかしいです…」

    「それに、岡崎先輩とかが、いやらしい目でみてくると思うんです」

    9 :

    まあけいおんの方は結構違和感あるね

    10 = 1 :

    なぜ俺限定なんだ…。

    さわ子「あら、でもそういう衣装の方が、男は喜んで、力が発揮できるものなのよ?」

    さわ子「そうでしょ?」

    俺たちに振ってきた。

    朋也「いや、まぁ…」

    キョン「でも、これはさすがに…」

    春原「さわちゃん、やっぱわかってるねっ」

    欲望に忠実な変態が一匹。

    さわ子「ふふ、まぁね。だてに二十数年生きてないわ」

    さわ子「って、歳のこと言うなっ」

    ぽかっ

    春原「ってぇっ! 自分で言ったんでしょっ!」

    さわ子「あら、そうだったわね、ごめんなさい」

    春原「誰かさん並に理不尽だよ、この人…」

    「ねぇねぇ、どう? 可愛くない? この服」

    11 :

    キョンって何気に良いキャラだよな。
    人当たりというか世渡り上手というか……

    12 = 5 :

    言って、くるくると回った。

    朋也「わ、馬鹿、おまえ、んな激しく動くなっ」

    「え? なんで?」

    朋也「いや、それは…」

    「あーっ! この人、見たんですよ、絶対っ!」

    「何を?」

    「唯先輩の下着ですっ!」

    「…いやん」

    朋也「不可抗力だろっ」

    「目をそらせばよかったじゃないですかっ! ガン見することないでしょっ!」

    朋也「してねぇよ…」

    「嘘つきっ! 目にしっかり焼き付けてましたっ!」

    朋也「だぁーっ、なんなんだこいつはっ!」

    キョン「先生、こういうことにならないためにも、チアはやめたほうが…」

    さわ子「あら、そう?」

    13 :

    あずにゃんと一緒にハンバーガー食べたり猫とじゃれたりした日が懐かしいぜ…

    14 = 1 :

    春原「あ、てめぇキョン、余計なこと言うなよっ」

    キョン「いや、でもだな…」

    さわ子「じゃあ、バニーガールなんてどうかしら?」

    キョン「ぶっ!」

    春原「なに過剰反応してんだよ、むっつり野郎」

    キョン「ち、違う、二年前のトラウマが蘇っただけだ…」

    「先生、私もこの衣装を着るのはやめたほうがいいと思います」

    「絶対、岡崎先輩が本能をむき出しにして、警察沙汰になると思いますから」

    朋也「だから、なんで俺だけを槍玉に挙げるんだ…」

    「私も、普通に応援したいです…」

    「私はこれ着て応援したいな~」

    朋也「いや、やめてくれ…」

    「ええ? なんで?」

    朋也「普通にしてくれてたほうが、いろいろと助かる」

    「えぇ…なら、しょうがないかぁ…ちぇ」

    15 = 5 :

    春原「ムギちゃんは、それ着てくれるよね? ていうか、もう普段着にしようよっ」

    「やらしいやっちゃなー、このエロ原め」

    春原「っせぇよ、おまえは一年中ジャージでも着てろ」

    「おまえならジャージの上からでも欲情してきそうだけどな、こわいこわい」

    春原「はっ、ジャージの上着をズボンにインしてる奴なんかにするかよ」

    「そんな着こなし方しねぇよっ、ヘタレっ!」

    春原「ヘタレは今関係ないだろっ!」

    一応ヘタレという自覚はあったらしい。

    16 = 1 :

    朋也「春原、落ち着つけ。まず自分の足元をよく見てみろ」

    春原「あん? なんだよ…」

    春原「って、なんで靴下にズボンがインされてるんだよっ!?」

    朋也「いつも社会の窓がアウトしてる分、細かいところで取り戻しておこうと思って…」

    春原「まずその前提がおかしいだろっ!」

    「わはは!」

    この後、結局コスプレは取りやめとなった。
    当日は普通に制服で応援してくれるらしい。
    さわ子さんや平沢、春原なんかは不満そうにしていたが、これでよかったんだと思う。
    …俺も、少しだけ名残惜しかったが。

    ―――――――――――――――――――――


    17 = 6 :

    岡崎涙目wwwwwwwwwwwww あずにゃん自重しろww

    18 = 5 :

    4/24 土

    試合当日。ついにこの日がやってきた。
    向こうの話によれば、試合は放課後になってからすぐ行われるとのことだった。
    昼食を摂ってからでは、バスケ部の練習に差し支えがあるらしい。
    だが、試合時間自体は10分と短く、多少腹が減っていても問題なさそうだった。

    春原「でも、ちょっと計算外だったよね」

    春原「まさか、うちのバスケ部の、ほぼ全体を揃えてくるなんてさ」

    朋也「ああ、そうだな」

    つまり、その中には当然レギュラー陣も入っているわけで。
    そいつらが出てくるなら、俺たちが勝てる可能性は限りなく低いだろう。
    本当に、さわ子さんという保険があってよかった。つくづくそう思う。

    春原「ま、僕たちが勝つことに変わりはないけどさ」

    朋也「そうなりゃいいけどな」

    春原「へっ、なるさ」

    ―――――――――――――――――――――

    放課後。
    メンバー全員で体育館に集まる。憂ちゃんも、少し遅れて駆けつけてくれた。
    ふと、入り口から覗けた館内は、閑散として見えた。
    広さに対して、居る人間の数が少ないからだ。
    集まったのは、俺たちと、バスケ部、それと、ファンクラブの連中のみだった。

    19 = 1 :

    他に体育館を使うクラブの姿はない。
    この時間は本来、大多数の生徒にとって、昼休憩になっているはずだからだろう。

    子生徒「ああ、来た?」

    体育館に足を踏み入れると、すぐにファンクラブの男がやってきた。
    この試合の段取りを組んだ奴だ。
    薄々思っていたが、やっぱり、こいつが現代表なんだろう。

    春原「おう、来てやったぜ」

    子生徒「絶対あの約束は守れよ」

    春原「わかってるっての。おまえらこそ、破んなよ」

    子生徒「そんなことしないよ。そこは安心してくれ」

    自信たっぷりに言って、また仲間の輪に戻っていった。

    「マジで頼んだぞ、おまえら。あんなのに調子乗らせたくないからな」

    春原「任せとけって」

    キョン「やれるだけの全力は尽くすよ」

    俺も口を開こうとした時、向こうから、ボールの跳ねる音がした。
    見れば、相手のバスケ部がアップを始めていた。
    定位置からシュートをする者、ドリブルをして、動きを確かめる者…様々だった。
    …懐かしい風景。
    俺もかつてはその中の一人だったのだ。

    20 = 5 :

    けど、今は…
    俺は自分の体を見下ろす。
    制服のままの格好。
    こんな姿で、かつて情熱を燃やしていたバスケをやるなんて、皮肉だ。滑稽すぎる。

    「…なんか、緊張してきた」

    朋也「おまえがかよ。でも、今となっては、遊びの延長だぞ」

    「む、遊びとはなんだ、遊びとはっ! 真剣にやれっ!」

    春原「そうだぞ。おまえ、奴らにバカ呼ばわりされたままで悔しくないのかよっ」

    朋也「それはおまえだけだろ」

    春原「僕がバカにされたら、おまえがバカにされたも同然なんだよっ」

    春原「一人はみんなのために、みんなは一人のためにだっ」

    こいつの背負う業が重過ぎて、輪に入れられた俺が一方的に損していた。

    「でも、バスケ部の人たちと試合するんだから、それはやっぱりすごいことなんだよね」

    「ほら、みんなすごく上手だし」

    聞かれていたら、怒られそうなことを言う。

    「こうやって毎日練習してるんだよね」

    「私たちも、あれくらい真面目にやりたいです…」

    21 = 1 :

    「わかるぞ、その気持ち」

    「まぁまぁ、今はそれは置いといて…」

    手でどけるようなジェスチャーを入れる。

    「そんな人たちと、集まったばっかりの私たちが戦うんだよ」

    「今まで違う道を歩いてきた、私たちがね」

    「もし勝てたとしたら…」

    「この短い時間の中で、バスケ部の人たちよりも固い絆で結ばれたってことだよね」

    「だとしたら、すごいことだよ」

    「いつもは、まったりしてる私たち軽音部…時々、そのことで怒られちゃうこともあるよね」

    「それと…不器用に、皆から離れていっちゃった、岡崎くんと春原くん」

    「そのふたりと、今は仲良しだけど、出会う前は接点がまったくなかった、キョンくん」

    「こんなにも、ばらばらで…みんなが一緒に、ひとつの目標に向かってるわけでもなくて…」

    「もしかしたら、話すことさえなかったかもしれない私たちだけど…」

    「それでも、力を合わせれば、頑張ってる人たちとだって、同じことが出来るってことだよね」

    「普段は、ちょっと真剣さが足りない私たちでも、ね」

    22 = 5 :

    朋也「ああ…そうだな」

    平沢の言いたいことはよくわかる。
    俺も、春原もそんなふうに生きてきたから。
    キョンの奴だって、きっと似たような感情を持ったことがあるはずだ。
    所属している部のことを聞くたび、俺たちに近かったことがわかっていったから。
    けど…現実はそんなに甘くない。
    気持ちだけでは超えられない壁も、確かにあるのだ。

    バスケ部員「話は聞いてるけど…おまえらが相手?」

    ひとりのバスケ部員がやってくる。

    春原「ああ、そうだよ」

    バスケ部員「俺たち、もう始めたいんだけど」

    春原「準備運動するから、ちょっと待っててくれよ」

    バスケ部員「早くしろよ。さっさと終わらせて、飯にしたいんだからな」

    機嫌悪く言い放ち、戻っていく。

    春原「ちっ、感じ悪ぃな…」

    朋也「昼飯前に駆り出されてんだ、気が立ってるんだろ」

    屈伸しながら言う。

    春原「だからってさぁ…言い方ってもんがあるだろ」

    23 = 1 :

    キョン「試合でその鬱憤を晴らすってのはどうだ?」

    腕を伸ばしながら、ついでのように助言する。

    春原「ま…そうだね」

    春原も、手首、足首とひねりを加えてほぐしていた。
    三人とも、好きなように柔軟をしている。
    決まった順序なんかない。全員で同じ動きを強要することもない。
    そんな無秩序さが、実に俺たちらしかった。
    ひいては、軽音部の連中を含めた、このチーム全体の有りようを表しているようだった。

    朋也「いくか」

    キョン「おう」

    春原「うしっ」

    気合十分でコートに踏み入っていく。
    向こうは、すでに三人揃っていた。
    軽く体を動かしたりしている。

    バスケ部員「ハーフコートじゃなくて、全面使うからな」

    審判を務めるらしい部員が、ボールを持ったままそう伝えてきた。

    朋也「ああ、わかった」

    バスケ部員「ジャンプボールだ。そっちは誰がやるんだ」

    24 = 5 :

    朋也「キョン、頼む」

    キョン「俺か?」

    朋也「ああ。俺は無理だし、春原は背が低い。おまえが適任だ」

    キョン「そうか。わかった」

    センターサークルの中に両者陣取る。
    そして、ボールが高く放られた。

    キョン「岡崎っ」

    最高到達点に達したところで、キョンがボールを叩き落とした。
    俺の前に落ちてくる。
    すぐさま拾い、そのままドリブルで切り込んでいく。
    俺のマークはスピードで振り切ることができた。
    だが、相手も一人ディフェンスに戻っていて、ゴール前で膠着する。
    春原の姿を探す。反対サイドから走りこんでいるのが見えた。
    それも、フリーで。
    俺は一度ドリブルで突破するような素振りを見せ、パスを出した。
    春原が受け取る。

    春原「庶民シューっ!」

    二、三歩ほどドリブルで距離をつめ、レイアップを決めていた。

    キョン「ナイッシュ」

    「いいぞぉーっ、春原ぁ!」

    25 :

    面白すぎて勉強できないぜ

    26 = 1 :

    「すごぉい、春原くんっ」

    「春原さん、かっこいいですっ」

    「ナイスシュートっ」

    「先取点だよっ」

    春原「へへ…」

    にやついた表情を浮かべる春原。
    その横から、ボールを持った敵がドリブルで抜き去っていった。

    春原「あ、やべ…」

    朋也「余所見すんなっ、この馬鹿っ」

    「死ねーっ、春原ーっ!」

    「最悪だよぉ、もう」

    春原「おまえら、てのひら返すの早すぎだろっ!」

    「…はぁ…マジで、はぁ…」

    春原「ムギちゃんまでっすかっ!? つーか、キャラまで変わってるしっ」

    朋也「春原、いいから戻れっ」

    春原「わかってるよっ」

    27 = 5 :

    3対2の状況も、春原が戻ったことで、やっとイーブンに戻った。
    敵全員に俺たちのマークがつく。

    キョン「っと…」

    キョンがパスカット。
    すぐに走り出す俺と春原。
    カウンターの速攻だ。

    キョン「いくぞっ」

    キョンは一度春原の方を向いてフェイントを入れ、俺にロングパスを出した。
    相手のコート、ツーポイントエリアで拾う。
    俺がいるのは左サイド。
    ここからレイアップに持っていきたいが、マークがしつこい。
    春原もマンツーマンでつかれていた。
    仮に今、俺についたこのディフェンスを突破できても、すぐにヘルプがくるだろう。
    それくらいゴールに近い位置での攻防だった。
    だがこれは、チャンスでもある。ヘルプが来たら、春原がフリーになるのだ。
    そこで上手くパスを回せればいいが…
    ここまで走ってきた疲労もあって、体がいうことを聞いてくれるかどうか自信が持てない。

    朋也(キョンは…)

    敵に背を向けて確認すると、自陣から上がってきているのが見えた。
    ドリブルでキープしたまま、3対3の状況になるのを待つ。
    これで、少し息も整えることができるだろう。

    朋也(よし…)

    28 :

    どうでも良いけど
    CLANNAD×ヒトリノ夜のMADを思い出した

    29 = 1 :

    その時が来て、まず一人、俺のマークをドリブルで抜き去った。
    案の定、すぐにヘルプが来る。
    俺は近くにいた春原にパスを出した。
    が、今度はキョンについていたマークが春原をチェックしに来た。
    必然的に、キョンはフリーになる。

    春原「おし、キョン、いけっ」

    春原がワンバンさせてパスを回す。
    キョンはそれをしっかりと胸で受け取った。
    スリーポイントラインの、外側で。
    その位置から、ゴールに向けてボールを放つ。
    綺麗な放物線を描き、ゴールに吸い込まれていった。
    得点表がめくられる。
    3点だ。

    春原「うっしゃっ、ナイッシュゥ、キョンっ」

    朋也「ナイッシュ。押してるぞ、俺たち」

    キョン「おう」

    ハイタッチを交わす三人。

    「うおー、すげーっ!」

    「あんな遠い所からだからかな、3点も入ってたよっ」

    「お姉ちゃん、スリーポイントっていうのがあるんだよ」

    30 = 5 :

    「え? そうなの? すごいシステムだねっ」

    外野からは、のんきなやり取りが聞えてきていた。

    バスケ部員「………」

    対照的に、コート内はそう穏やかじゃなかった。
    今のプレイで、部員たちの目の色が変わっていた。
    おそらく、今まではキョンの動きを見て、素人に近いと踏んでいたんだろう。
    だから、スリーポイントなんか、端から警戒していなかったのだ。
    実際、キョンは、ドリブルやパスはそこまで上手くない。
    だが、シュートには素質が感じられた。練習も、シュートを重点的にやっていた。
    その成果が、今のスリーポイントだ。
    プレッシャーのかかっていないドフリーからのシュートとはいえ、上出来だった。
    しかし、これからはシュートもあると、相手も警戒してくるだろう。
    まぁ、それを逆手に取ることも、もちろんできるのだが。

    朋也(奇襲はもうやれないか…)

    朋也(ま、なんとかなるか…)

    朋也(こいつら、レギュラーってわけでもなさそうだしな…)

    俺の予想はおそらく当たっているはずだ。
    ここまでの試合運びが、楽にいきすぎている。
    それは、あの二人も肌で感じていることだろう。
    出し惜しみしているのか知らないが、このままいけば十分勝機はある。

    朋也(よし…いくか)

    31 :

    >>25
    お前は俺か

    32 = 1 :

    その後も、パス回しからの連携や、春原の個人技、キョンのシュートなどで得点を重ねていった。
    俺も、左からのレイアップのみだったが、なんとか得点に貢献できていた。
    こっちもそれなりに失点していたが、まだまだ優勢だ。

    バスケ部員「メンバーチェンジ!」

    ボールがコート外に出たとき、タイムを入れて、そう宣言された。
    選手が総入れ替えになる。身長が軒並み上がっていた。
    ガタイも、ずいぶんとよくなっている。

    春原「おいおい、あいつらってさ、やっぱ…」

    キョン「だろうな…」

    朋也「ああ…レギュラー陣だ」

    春原「ちっ、ここにきてか」

    キョン「後半分だ。やれないことはないさ」

    春原「へっ、そうだね…」

    しかし、そう楽観的にもみていられない。
    あっちはスタミナが満タンな上に、技量も体格も上だ。
    対して、こっちは消耗が激しく、素人が二人に、肩が壊れている男が一人。
    ここまではなんとかやってこれたが、この後どこまでやれるか…。

    朋也(とにかく、今はこっちボールだ)

    朋也(攻めていくか…)

    33 = 5 :

    思いとは裏腹に、ボールをコートに戻すことさえそう簡単にさせてもらえない。
    俊敏な動きでぴったりとつかれていた。
    俺は苦し紛れにボールを投げ放ったが、すぐにカットされてしまった。
    そのままの勢いで、一気に押し込まれ、得点を許してしまっていた。

    朋也「わりぃ…」

    キョン「いや、しょうがないさ。ああも、くっつかれちゃな…」

    春原「まだ2点返されたただけじゃん。余裕だって」

    朋也「すまん…」

    キョン「謝らなくていい。いくぞ」

    ぱんっと肩を叩かれる。

    春原「おまえが謝るとか、らしくねぇっての」

    朋也「ああ…そうだな」

    再び気を奮い立たせる。
    俺も、春原も、キョンも、必死になって食らいついていった。

    朋也(くそ、俺に左からのレイアップしかないことがわかってやがる…)

    相手には、俺たちの攻撃パターンも、ほぼ読まれていた。
    それでも、レギュラー陣相手に、同等以上の戦いを演じて見せた。
    だが、それも、終盤に差し掛かってから、かげりが見え始める。

    34 = 1 :

    春原「あ…ぐっ…はぁ…はぁ…」

    キョン「はぁー…はぁ、っく…はぁ…」

    二人の体力が底をつき始めていた。
    それは、俺にしても同じことだったが…。

    朋也「大丈夫か?」

    春原「ああ、余裕すぎて、なんか眠いよ」

    朋也「それ、死にかけてるからな」

    朋也「キョンは?」

    キョン「ああ…まだ、いけるぞ」

    朋也「そうか…」

    とてもそうは見えない。
    肩で息をしていた。
    強がりだということが、すぐにわかる。

    朋也「残り30秒で、こっちボールだ。もう、このワンプレイで終わるぞ」

    得点差は一点のみ。
    俺たちが負けていた。

    春原「泣いても笑っても、最後ってわけね…」

    35 = 5 :

    キョン「どうする? もう、パターンだいぶ読まれてるぞ…」

    バスケ部員「おまえら、早く始めろよっ!」

    怒声が届く。

    朋也「ああ、すぐ始める」

    そう冷静に返した。

    朋也「いいか、ふたりとも」

    俺は二人を抱き寄せて、最後の指示を出す。

    キョン「了解」

    春原「うまくいくといいけどねぇ」

    コートに散る。
    最初のパスでカットされればそれでゲームオーバー。
    相手もそれがわかっているから、今まで以上に必死のディフェンスだ。
    ぐるぐるとめまぐるしく変わる陣形…。
    俺はボールを投げ入れた。
    キョンの手に渡る。
    不意に取られないよう、囲まれる前に俺に戻した。
    ドリブルで中央に割って入る。
    相手は意表を突かれた形になった。
    俺は今まで左サイドからしかゴール下に入ることはなかったからだ。
    一、二…
    レイアップ! …の振りだけしてみせる。

    36 = 1 :

    思惑通り、目の前に影がよぎった。
    俺は胸の前でボールを左手に移した。
    そして、背後にいるのが春原だと信じてボールを浮かせる。

    春原「よし、きたぁぁっ!」

    春原の声。
    振り返ると、ボールを両手に掴んだ春原が着地したところだった。
    それに、春原についていたディフェンスが覆い被さる。
    フェイントで振った後、ボールを床に打ちつけた。
    高くバウンドしたボール。
    助走と共に拾っていたのはキョン。
    自分についたディフェンスを振り切って、そして…
    ゴールとは反対方向にボールを投げていた。
    ゴール正面のフリースローポイント。
    そこで俺はボールを受け取っていた。
    すべてのディフェンスを振り切って。
    コートに立つ全員が俺を振り返っていた。
    相手の、唖然とした顔が滑稽だった。

    37 = 1 :

    「岡崎くん、シュートだよっ」

    平沢の声だけが、一際大きく聞えた気がした。

    ああ…了解。

    俺は上がらない肩もお構いなしに打った。

    バスケ経験者とはほど遠い、不恰好な姿勢で。

    それがすべてを象徴していた。

    不恰好に暮らしてきた俺たち。

    そんな奴らでも、辿り着くことができる。


    道は違っても… 同じ高みに。


    ぱすっ、と音がして、ネットが揺れていた。
    一瞬の静けさ…
    直後、割れんばかりの大歓声が起きた。

    春原「よくやった、岡崎!」

    キョン「岡崎ぃ、すごいじゃないかっ!」

    「やるじゃん、岡崎っ」

    38 = 5 :

    「岡崎くん、MVP賞受賞だよっ!」

    「岡崎さんっ」

    「岡崎くん…すごいよっ、ほんとに…」

    「やったね、逆転よっ」

    「まぁ…認めます。おめでとうございます」

    みんなが駆け寄ってくる。

    「みんな…すごいよ」

    「唯が言ってた通り…力を合わせれば、こんなこともできるんだって…」

    「わだし…ぐす…感動だよ…」

    朋也「泣くな。これくらいのことで」

    春原「そうそう。当然のこと」

    キョン「ははっ、だな」

    しばし、みんなで喜びを分かち合う。
    俺たちとやりあっていたバスケ部員たちは、仲間に非難され始めていた。
    そいつらも、手でバツを作ったり、首を横に振ったりして、抵抗を示しているようだった。
    だが、そんな中にも、俺たちに拍手を送ってくれる奴らもいた。
    本気で戦っていたことを、本物たちに認められたようで、それが少しうれしかった。

    39 = 1 :

    朋也「じゃあ、本題に移るか」

    朋也「おい、つっ立ってないで、こっちこい」

    ファンクラブの男を呼びつける。
    しぶりながらもやってきた。

    朋也「これで、文句ねぇだろ」

    子生徒「…文句っていうかさ…澪ちゃんは別に迷惑してなかったからいいだろ」

    「え…」

    子生徒「そうだったじゃん。そんな嫌でもなかったんでしょ?」

    春原「てめぇな、このごに及んで、なに言って…」

    朋也「春原…」

    手で制す。

    春原「あん? なんだよ」

    朋也「いいから、ちょっと黙ってろ」

    春原「なんなんだよ…」

    朋也「秋山、おまえはどうなんだ」

    途中で止められ、怒りのやり場を失った春原をよそに、秋山にそう訊いた。

    40 = 5 :

    「そ、それは…」

    朋也「嫌だったんだろ。はっきり言ってやれ」

    「………」

    子生徒「おまえが言わそうとしてるだけだろどうみても。馬鹿か」

    朋也「正直に言え。なにを言ったって、俺たちがついてるから」

    俺は男の暴言に言い返すことはしなかった。
    じっと、秋山の答えを待った。

    「……です…」

    子生徒「え?」

    「嫌です。もう、私に…」

    「私に…」

    「………」

    「軽音部のみんなに、近づかないで」

    最後には顔を上げ、しっかりと相手の目を見据え、はっきりと言った。

    子生徒「………」

    子生徒「ビッチすぎだろ…」

    41 = 1 :

    捨て台詞を吐き、残していた仲間と共に体育館から出ていく。

    春原「ったく、拒否られたからって、最後に変なこと言っていきやがってよ」

    朋也「あんな奴の言うことなんて、気にするな」

    「う、うん…」

    春原「今度見かけたら、ぶっ飛ばしといてやるよ」

    「そ、それはダメだよ」

    春原「遠慮すんなって」

    「気持ちだけ、受け取っておくよ。ありがとう」

    春原「…ま、いいけどね」

    キョン「おまえは喧嘩したかっただけだろ」

    春原「ちがわい」

    「いやぁ、でも、驚いたわ。あの澪が、あんなはっきり断り入れるなんてな」

    「幼馴染のあたしでも、今までみたことなかったのにさ」

    「岡崎くんが、背を押してくれたから…」

    俺を一瞬だけ見て、顔を伏せる。
    俺も、あんな恥ずかしいセリフを吐いてしまった手前、なにか気恥ずかしかった。

    42 = 5 :

    勝って気分がよくなっていたとはいえ…猛省。

    春原「おお? なに、いい雰囲気?」

    「初々しいねぇ、おふたりさん」

    「え? ちちち、ちが…」

    「こぉのフラグ立て夫がぁ。略して立て夫がぁ」

    俺を肘でつついてくる。

    朋也「なにが立て夫だ…っ、あでででっ」

    何者かに太ももをつねられる。

    「………」

    何食わぬ顔で中野が横に立っていた。

    朋也「って、やっぱおまえかっ! なにすんだ、こらっ」

    「すみません、ぎょう虫がいたもので、つい」

    そんなのケツにしかいない。

    「あ~、立て夫が澪に優しくするもんだから…」

    「ほらぁ、唯が元気なくしちゃってるじゃん」

    43 :

    めっちゃおもろい


    けどぶっ続けだろ少し休めよ
    保守ならみんなやるで多分

    44 = 1 :

    「そ、そんなことないよぉ…ないよ…」

    「ふふ、唯ちゃん可愛い」

    「お姉ちゃん頑張ってっ」

    「え、ええ? なんのことか、わかんないっ」

    「はは、まぁいいや。とにかく、祝勝会だっ」

    「部室行くぞぉ」

    がし、っと秋山の肩に手を回した。

    「あ、こら律、歩きにくいっ」

    「細かいことは気にすんなっ」

    ―――――――――――――――――――――

    キョン「じゃ、俺はここで」

    体育館から直接旧校舎の一階までやってくると、そう言った。

    朋也「おまえ、こないのか」

    キョン「ああ、バスケ終わるまでって、言ってあるからな」

    春原「いいじゃん、ちょっとくらい」

    45 = 5 :

    キョン「そのちょっとが許されてたら、苦労してないんだけどな」

    朋也「なんか、大変そうだな、おまえも」

    あの日、文芸部室から出てきた時のこいつの顔を思い出す。
    眉間にしわを寄せ、難しそうな顔をしていた。
    いろいと複雑な環境なんだろう、きっと。

    キョン「ああ、まぁな。でも…」

    言いかけて、やめる。

    キョン「…いや、なんでもない」

    キョン「それじゃ」

    「キョンくん、いつでも軽音部に遊びに来てね」

    キョン「ありがたいけど…多分、顔を出すことはないと思う」

    キョン「俺の居場所は、なんだかんだいって、あそこだからな」

    親指で文芸部室をさす。

    「そっか…そうなんだね」

    キョン「ああ」

    朋也「悪かったな、なにも見返りがなくて」

    46 = 1 :

    キョン「あったさ。久しぶりにおまえらとつるんで馬鹿やれたっていうな」

    春原「うれしいこと言ってくれるじゃん」

    朋也「ちょっと臭いけどな」

    キョン「はは、最後までキツいな、岡崎は」

    キョン「まぁ、それが、らしくていいよ。それじゃな。また機会があれば」

    朋也「ああ、またな」

    春原「じゃあね」

    「ありがとう、キョンくん」

    「おつかれさん」

    「ありがとう。おつかれさま」

    「ありがとう、一緒に頑張ってくれて」

    「ありがとうございました」

    「おつかれさまでした」

    俺たちの言葉を聞き終えると、部室に入っていった。
    ドア越しに、また女と言い争うような声が聞えてくる。
    だが、その声色に怒気は含まれていなかった。
    どころか、生き生きとしているような印象さえ受けた。

    47 :

    全スレ余ってるぞ?なんで放棄した?

    48 = 5 :

    俺も詳しくは知らないが、それだけでわかった。
    あそこが、あいつの収まるべき場所なんだろう、と。

    ―――――――――――――――――――――

    「かんぱ~い」

    「いぇい、かんぱ~い」

    中央にティーカップを寄せ集め、チンッ、と軽く触れ合わせた。

    「しっかし、本業のバスケ部相手に…」

    「えいっ」

    パンッ!

    「っいっつ…って、なぁにすんだよ、唯っ」

    「このクラッカー、試合中に使おうと思ってたんだけど、使い時がわからなくて…」

    まだ持っていたのか…。

    「それで、今使ってみました」

    「今もタイミングずれてるってのっ! 私のトークが始まろうとしてただろがっ」

    「しかも、こんな近くで放ちやがって…」

    「えへへ、ごめんね。みんなの分もあるよ?」

    49 = 43 :

    >>47
    容量いっぱいになったんだろ

    50 = 1 :

    >>47容量オーバー


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