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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」2

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    みんなの評価 : ★★★×4
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    501 = 350 :

    んでんでんでwww

    502 = 161 :

    『んでっ! んでっ! んでっ!』

    …俗に言う電波ソングという奴なんだろうか。
    妙なインパクトを持っていた。

    がちゃり

    ドアが開き、店員がドリンクを持ってきた。

    『好きって言ったらジエンドにゃん』

    それでも、まったくひるむことなく歌い続ける中野。
    逆に、店員の方が仕事を終えると、恥ずかしそうにそそくさと退室していった。
    タフすぎる精神力だ…。

    ―――――――――――――――――――――

    「…ふぅ」

    マイクを置く。

    「いやぁ…梓って、こんな曲も歌うんだな…はは…」

    「変ですか?」

    「い、いや、別に…」

    「可愛かったよ、あずにゃん」

    「店員さん来ても続けられるなんて…すごいな、梓」

    503 = 162 :

    「ありがとうございます」

    「………」

    俺をじっと見てくる。

    朋也「? なんだよ」

    「なにか感想はないんですか」

    朋也「ああ? 俺か?」

    「はい。一応、参考までに」

    朋也「…まぁ、図太いよな、神経がさ」

    「なんですかそれ! もっと歌唱力とかの方に言及してくださいよっ!」

    朋也「いや、俺以外の感想も技術面には触れてなかっただろ」

    「じゃあ、ヘタだったって言うんですかっ」

    朋也「そうは言ってねぇけど…」

    「あずにゃんは可愛ければそれでいいんだよ。深く考えちゃだめだってぇ」

    朋也「ああ、そうだそうだ。オールオッケーだ」

    「…なんか投げやり気味で気に食わないです…」

    504 = 161 :

    「つっかさ、岡崎、あんた曲入れないの?」

    朋也「ああ、俺は別にいいよ」

    「ええ~、歌ってよ、岡崎くんも」

    朋也「さっきだんご大家族一緒に歌ったからもう満足だよ」

    「あれは私のでしょ~」

    「きっと、ヘタクソだから、恥かかないように逃げてるんですよ」

    朋也「ああ、まぁ、そんなところだ」

    「澪だって恥ずかしいの我慢して歌ったのに…根性ねぇなぁ。春原よりヘタレかもな、ははっ」

    春原「僕を引き合いに出すなっ!」

    春原より…ヘタレ? 俺が?
    ………。

    朋也「…リモコン貸してくれ」

    「お、やる気になったか? やっぱ、春原よりヘタレは嫌か」

    朋也「当たり前だ」

    春原「すげぇ気分悪いんですけどっ!」

    俺はアーティスト名で検索した。芳野祐介、と。

    505 = 162 :

    一件だけヒットする。あの芳野祐介であることを願ってタッチパネルを押す。
    すると、いくつか曲名が表示された。

    朋也(よし…)

    その中にお目当ての曲を見つける。
    それは、俺が春原の部屋で何度も聴き、そらで歌えるようにまでなっていた曲だった。
    決定ボタンを押し、端末に送信する。

    「あ…この曲…芳野さんのだ」

    「ほんとだ…でも、上手く歌えますかね、岡崎先輩に…」

    音楽が鳴り始める。
    俺は久しぶりに、怒声ではなく、歌うことを意識した大声を出した。
    ところどころ詰まってしまう場面もあったが、それも気にならないくらいに胸がすっとしていた。
    芳野祐介の歌は、技術云々じゃなく、ストレートに歌えるから、こんなにも気持ちがいいんだろう。

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「…こほん」

    マイクの電源を切り、腰を下ろす。
    俺は途中から立ち上がり、ガラにもなく熱唱してしまっていた。

    「ふぅん、なかなかいいじゃん」

    「岡崎くんが熱血になってたね。なんか、新鮮だったよ」

    朋也「そっかよ…」

    506 = 161 :

    「でも、いいなぁ、男の子は。芳野さんの曲が思いっきり歌えて」

    「ですよね。それに、ちょっとダサ目の男の人でも、芳野さん効果でかっこよくみえますし」

    遠まわしに俺がダサ男だと言っているんだろう、こいつは。

    春原「くぅ、岡崎。おまえ、合コン慣れしてるな。こんなタイミングで持ち歌使いやがって」

    朋也「一回もしたことねぇよ。つーか、別にベストなタイミングでもないだろ」

    春原「ふん、とぼけやがって…まぁいいさ、ここからは僕劇場の始まりだからね」

    春原「いくぜっ、ボンバヘッ!~リミックス~だっ」

    「って、また同じ曲かい…」

    ―――――――――――――――――――――

    全員の持ちネタが尽きたところで、カラオケボックスを出た。
    外はもう完全に陽も落ち切って、暗くなっていた。

    春原「ん…あー喉痛ぇ…」

    「んんっ…あ゛ー…あたしもだ…」

    終盤になると、このふたりが交互に歌うだけになっていたのだ。
    喉にかかる負担が大きいのも無理はない。

    「さすがにもうここでお開きですよね」

    507 = 162 :

    「だな。腹も減ったし…帰って飯にしたいしな」

    「はい、解散解散~」

    ぱんぱん、と二度手を叩く。

    「じゃあね」

    「おう、そんじゃな」

    「また明日」

    「それでは」

    春原「じゃな」

    部長、秋山、中野の三人組は、残る俺たちとは別方向の帰路についた。
    こちらに背を向けて、話しながら歩いていく。

    春原「僕、この辺で晩飯食ってくけど、おまえどうする?」

    朋也「俺は適当にコンビニでなんか買ってく」

    春原「あっそ。まぁ、なんでもいいけど、僕の部屋、荒らしたりするなよ」

    そう言い残し、人込みの中に消えていった。
    平沢とふたりだけになる。

    「今からまた春原くんの部屋にいくんだ?」

    508 = 161 :

    朋也「ああ、まぁな」

    「仲いいよね、ほんとに」

    朋也「別に…惰性だよ。それよか、もう暗いしさ…送っていこうか」

    それはただの口実で、単にまだ一緒にいたかっただけなのだが。

    「いいの?」

    朋也「ああ」

    「でも…私、結構重いし…分割発送されたりしないよね?」

    朋也「意味がわからん。変なボケはいいから、いくぞ」

    「うんっ、えへへ」

    ―――――――――――――――――――――

    「この辺は、暗いよね。外灯ないし」

    朋也「そうだな」

    いつも待ち合わせている場所の付近までやってくる。
    この後、ひとつ角を曲がれば、それだけで俺の自宅が見える。

    「はぐれないように、手つなごっか? なんて…」

    朋也「つないでいいのか?」

    509 = 162 :

    「え? あ…えあ?」

    朋也「なんだよ…嫌なら、言うなよ」

    「い、いや…そういうわけじゃ…まさか、いい返事がくるとは…」

    「えっと…あの…つないでいこう…か?」

    朋也「ああ」

    そっと手を伸ばす。向こうからも同じように来て、中間地点で触れ合う。
    そして、その手を握った。小さな手から温もりが伝わってくる。

    「手、おっきいね、岡崎くん」

    朋也「普通だよ」

    「そうかな? おっきいと思うけど。なんか、安心できるサイズだよ」

    朋也「そっかよ」

    「うん」

    それは…むしろ俺の方だった。
    こんなにも心が落ち着いていられるんだから。
    サイズ云々の話ではなかったが。

    「なんか…いいね。朝もこんな感じで行っちゃう?」

    朋也「おまえがよければ、いいけど」

    510 = 161 :

    「ほんとに? っていうか、岡崎くん、今日はすごく素直ないい子だよね」

    「なんかあったの?」

    朋也「まぁな」

    それが言えればどれだけ楽だろうか。

    「なに? 教えてよぉ」

    朋也「また今度な」

    「ぶぅ、けちぃ…今教えてくれたっていいじゃん…」

    月明かりを頼りに、手をつないで歩く俺たち。
    もう、うちの目の前までやって来ていた。
    そして、通り過ぎようとした、その時…

    がらっ

    玄関の戸が開く。
    そこから出てきたのは、当然、親父だ。

    「あ…」

    平沢が立ち止まる。
    手をつないでいたため、俺もその場に留まることになった。

    親父「ああ…お帰り、朋也くん」

    511 = 162 :

    朋也「…ああ」

    「あの…お久しぶりですっ」

    親父「君は…いつかの」

    「あ、平沢唯です」

    親父「ああ、そうだったね。すまないね、すぐに思い出せなくて」

    「いえ、全然…」

    親父「おや…」

    つないでいたその手に目がいく。

    親父「これは、これは…朋也くんも、ついに…」

    吐き気がした。この人にそんなこと、勘ぐられたくもない。

    親父「平沢さんは、朋也くんの、そういう人だったんだね」

    「え? あ…これは、その…」

    俺は手に力をこめて、強く握った。

    「え? 岡崎くん…」

    今離してしまえば…俺は耐えられそうになかったから。
    この、責め苦のような時間に。

    512 :

    >>1は寝ないのか?

    513 = 161 :

    親父「私が言うのもなんだが…朋也くんをお願いするよ」

    親父「彼は、真面目で誠実な人柄をしているからね」

    親父「きっと、いい友人のような付き合いができると思うから」

    親父「私も、そうだからね」

    なんて優しい顔で…
    なんて、辛いことを言うのだろう、この人は…。
    ………。
    そう…
    俺は、それを確かめたくなかったのだ。
    親父と俺が、家族ではない、他人同士でいること…。
    それは俺と親父だけのゲームなのか…。
    ふたりきりの時だけに行われるゲームなのか…。
    でも、もし…
    第三者も交えて…
    そんなゲームが行われたなら…
    それはもうゲームなんかじゃない。
    現実だ。

    親父「それじゃ…もう暗いから、気をつけて帰るんだよ」

    「あ…はい…」

    親父は郵便受けから新聞を取り出すと、それを手に家の中へと戻っていった。

    「………」

    514 = 162 :

    平沢もじっとその様子を見ていた。

    朋也「なぁ、平沢…」

    朋也「おまえは、喧嘩してても、わかり合えてるならいいって言ってたよな…」

    「うん…」

    朋也「喧嘩すらできないんだよ、俺とあの人は…」

    朋也「見ただろ、あの他人のような物言いをさ…」

    朋也「あの人の中ではさ…俺は息子じゃないんだ」

    朋也「もうずっと前から…」

    朋也「自分の中で放棄したままでさ…」

    朋也「もう、何年も経ってるんだ…」

    「………」

    朋也「それをさ、時間が解決してくれるのか…?」

    朋也「なぁ、平沢…」

    朋也「なんとか言ってくれよ…」

    「………」

    515 = 161 :

    「ごめんなさい…」

    「事情も知らないで…軽率だったよね…」

    違う…
    謝って欲しくなんてないんだ、俺は…。
    支えて欲しいんだ。
    今、崩れそうな俺を支えて欲しいんだ。

    「岡崎くん…」

    俺の腰に手を回してくる。
    正面から優しく抱きしめてくれていた。

    「こんなことしか、私にはしてあげられないよ…」

    朋也「…十分だよ」

    俺も平沢を抱きしめた。

    朋也「なぁ、平沢…俺、おまえのことが好きだよ」

    朋也「それも、ひとりの女の子としてだ。言ってる意味、わかるか?」

    こんな時に言うのも卑怯な気がしたが…もう抑えることができなかった。
    そばにいて欲しかった。
    誰かに後ろ指をさされることになっても…それでも、俺はこいつと一緒に居たい。

    「…うん、わかるよ」

    516 = 162 :

    朋也「じゃあさ、言うよ……俺の彼女になってくれないか」

    「…いいの? 本当に私で…」

    朋也「おまえじゃなきゃ、嫌だ」

    「…うれしいよ…すごく…」

    「私…私もね…岡崎くんのこと、ずっと好きだった気がする…」

    「岡崎くんがね、澪ちゃんとか、あずにゃんとか、憂とかと仲良くしてたでしょ?」

    「それって、すごくいいことなのに…私、あんまり見てたくなかったんだ」

    「これって、嫉妬だよね…最低だよね、私…」

    朋也「そんなことない。俺は、嬉しいよ。それだけおまえに想われてたってことがさ」

    「………」

    517 = 161 :

    朋也「おまえが、俺のことを好きでいてくれたなら…俺も、それに応えたい」

    朋也「ずっと好きでいてくれるように、頑張り続けるよ」

    「そんな…私だって、頑張るよ。頑張りたいよ」

    朋也「そっか。じゃあ、平沢…頷いてくれ、俺の問いかけに」

    いつかまったく同じセリフを言ったことがある。
    みんなで王様ゲームをやっていた時だ。
    あんな遊びでやったことが、実現する日がくるなんて…誰が予想できたろうか。

    「………」

    朋也「俺の彼女になってくれ」

    ここまでも、まったく同じ流れ。
    平沢もわかっているだろうか。
    なら、最後には…

    「よろしくお願いします…」

    俺の胸の中で、そう小さな声が聞えてきた。

    ―――――――――――――――――――――

    518 = 169 :

    澪ちゃん泣いちゃう・・・(´;ω;`)

    519 = 162 :

    5/6 木

    朋也(眩しい…)  

    布団の中に頭を埋めなおし、まどろむ。
    ………。
    突然、平沢の顔が思い出された。
    俺の腕の中にいた。
    その場の陰影や、夜風の肌触りまで、克明に思い出された。
    抱いた平沢の肩の小ささ。
    近くで嗅いだあいつの髪の匂いまでも。
    そして、腕の中で平沢は小さく頷く。
    よろしくお願いします、と。
    がばりと、俺は飛び起きていた。

    朋也(そうか…)

    俺はあいつに告白したんだ…。
    それで、あの時から俺たちは恋人同士で…。

    朋也(………)

    いまいち実感がない。
    昨夜は、ずっと手をつないだまま家まで送っていったのに。

    朋也(本当かよ…)

    壁の時計を見る。

    朋也「まずい…」

    520 = 161 :

    ―――――――――――――――――――――

    準備を進め、時間に余裕が出来てからも、俺は急ぐことをやめなかった。
    足を止めたら、そのまま、立ち止まってしまいそうだった。
    あいつが俺の彼女…
    それは深く考えてしまうと、厄介なものである気がしたからだ。
    けど、心のどこかでこそばゆいような、嬉しい気持ちもある。
    ああ、考えるな。
    急げ。
    勢いでいくしかなかった。

    ―――――――――――――――――――――

    今日も同じ場所で、変わらず平沢姉妹の姿があった。

    朋也(いた…)

    ようやくそこで肩の力を抜いて、息を整える。

    朋也(ああ…なんかどきどきする)

    これからの彼女の元へ…俺は歩いていく。

    朋也「………」

    朋也「よぅ…おはよ」

    「あ、おはようございます、岡崎さん」

    「お、おは…おはおは…よう…」

    521 = 162 :

    つっかえながら言って、俺から目を逸らすように段々と視線を下げていった。
    らしくない挙動。こいつも、俺と同じで、意識してくれているんだろうか。

    「お姉ちゃん、本当にどうしたの? きのうからちょっとおかしいよ?」

    「なな、なんでもないよっ…」

    ぷるぷると顔を振る。

    「あ、ほら、もう行こうよっ」

    「手と足の動きがシンクロしちゃってるよぅ…」

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「………」

    「………」

    …気まずい。
    こんなに沈黙が続いたことが、かつてあっただろうか…。
    何か話さないと、息苦しいままになってしまう…。
    しかし、俺から振れる気の利いた話題なんて、ぱっと思いつかない。

    朋也(う~ん…)

    「岡崎さん」

    悶えていると、憂ちゃんから声をかけられた。

    522 = 161 :

    朋也「ん…なんだ」

    「岡崎さんもきのう、律さんたちと一緒に遊んでたんですよね?」

    朋也「ああ、まぁ…」

    「あの、その時、お姉ちゃんになにかありませんでしたか?」

    「帰ってきてから、ずっとぼーっとしてて…今朝もずっとこの調子なんです」

    それは…やっぱり、俺の告白のせいなんだろう。

    朋也「えっと…」

    憂ちゃんには、言っておいたほうがいいんだろうか…。
    ほとんど平沢の保護者のようなものだし…。

    「岡崎くんっ」

    急に声を上げる平沢。俺も憂ちゃんも、ほぼ同時に振り向く。
    その表情からは、さっきまでのぎこちなさが立ち消え、今はなにか意を決したように目に力が入っていた。

    「手、つないで行ってもいいって言ってたよね?」

    朋也「あ、ああ…」

    「じゃあ…つないでいこうよっ」

    俺の側にあった手を差し出してくる。

    523 = 162 :

    朋也「………」

    どうするべきか…。
    あの時は軽い気持ちで言ったのだが…いざその時を前にしてみると、人目もあって、かなり恥ずかしい。
    大体、手をつないで登校するなんて、考えてみれば相当な暴挙だ。
    自分たちはラブラブです、なんてことをアホのように宣伝して回っているようなものじゃないか。
    そんなの、プライベートでならまだしも、学校という狭い世間の中でやるのは危険すぎる。

    朋也「…いや、さすがにやっぱ、無理かな。すまん」

    「えぇ…そんなぁ…」

    朋也「手つないで歩くのは、ふたりで遊びに行った時くらいにしてくれ」

    「う~ん…でも、今だけはつないで欲しいなぁ。それで、実感したいんだ…」

    「岡崎くんが…本当に私の彼氏になってくれたこと」

    ああ…そうか。こいつも、まだ俺たちの関係にピンときていないところがあったのか。
    ………。

    「あ…」

    俺は黙って平沢の手を取り、しっかりと握っていた。

    朋也「今日だけな」

    「えへへ…ありがとう」

    うれしそうに微笑む。俺も同じように返した。

    524 = 161 :

    こんなことで喜んでくれるなら…毎朝でも悪くないかもしれない。
    一瞬で考えが覆るほどに、俺は平沢の笑顔が見ていたかった。

    「なぁんだ…そういうことだったんですね」

    憂ちゃんが俺たちを見て、何度も頷いていた。

    「それでお姉ちゃん、ソファーでバタバタしたり、うーうー唸ってたりしたんだね」

    「あはは…お恥ずかしい…」

    「可愛いなぁ、もう」

    「いやぁ…あはは~…」

    「でも、よかったね、お姉ちゃん。おめでとう。ずっと、岡崎さんのこと好きだったもんね」

    「ええ!? なぜ憂がそれを…」

    「わかるよ、それくらい。ご飯食べてる時も、岡崎さんの話が多かったし…」

    「その時のお姉ちゃんの顔、すっごく生き生きしてたんだよ?」

    「そ、そんな…私のポーカーフェイスの裏側を読み取るなんて…さすが憂だよ…」

    「顔中にごはんつぶつけて、ポーカーフェイスもなにもないけどね」

    「でも、お姉ちゃん、えらいよね。勇気出して、告白できたんだもん」

    朋也「いや…俺からなんだ、告白したのは」

    525 = 162 :

    「え? じゃあ、岡崎さんも、お姉ちゃんのこと好きでいてくれたんですか?」

    朋也「まぁ…そうなるな」

    「…あぅ」

    「うわぁ、じゃあ、両思いだったんだぁ…いいなぁ、素敵だなぁ」

    きゃぴきゃぴとはしゃぐ憂ちゃん。
    対照的に、俺たちは互いの感情を再確認させられ、恥ずかしさが蘇り、もどかしく相手の表情を窺い合っていた。

    「岡崎さん、これ、言うの二回目ですけど…お姉ちゃんを末永くよろしくお願いしますね」

    そういえば、前にも言われた覚えがある。その時は、冗談交じりだった気がする。
    でも、今は違う。

    朋也「こっちこそだよ。愛想つかされないようにしないと」

    はぐらかすことなく、素直にそう答えていた。

    「愛想つかされるなんて、そんなこと、絶対ないです」

    はっきりと言い切る。
    やっぱり、俺はこの子も大好きだった。

    「ね? お姉ちゃん」

    「うん、でも…私の方が、飽きられちゃうんじゃないかって、それだけが心配なんだけどね…」

    「岡崎くん、かっこいいし、優しいし…可愛い女の子がたくさん寄ってくるだろうから…」

    526 = 161 :

    朋也「馬鹿…飽きるなんて、そんなことあるわけないだろ」

    朋也「それに、俺は別にかっこよくもないし、性格がいいわけでもないからな」

    朋也「こんな俺に、おまえみたいな可愛い彼女ができたんだ。大事にするに決まってる」

    朋也「だから、変な心配するな」

    「…うん。ありがとう」

    「う~ん、ラブラブですねぇ。なんか、みせつけられちゃったなぁ」

    「えへへ…」

    朋也「う、憂ちゃん、茶化すのは勘弁してくれ…」

    「えへ、ごめんなさぁい」

    「あ、でも、私思ったんですけど、付き合ってるなら、下の名前で呼び合ったらどうです?」

    「それ、いいかもっ。そうしようよ、岡崎くんっ」

    朋也「まぁ、いいけど…」

    「じゃあ、一回私のこと呼んでみて?」

    朋也「ああ、じゃあ…えーと…唯」

    「なぁに、朋也?」

    527 = 162 :

    朋也「なんでもないよぉ、唯」

    「そっかぁ、わかったよぉ、朋也」

    朋也「あははは」
     「あははは」

    朋也「って、アホかっ」

    「くすくす…」

    ―――――――――――――――――――――

    学校に近づくにつれ、生徒の姿が増えていく。
    だけど、俺たちはずっと手をつないだまま歩いた。
    こちらに目をくれて、ひそひそと話す連中もいたが、それでも離すことはなかった。
    そんなこと、いちいち気にならないくらいに、俺の足取りは軽かった。

    ―――――――――――――――――――――

    坂の下。ここまでくれば、もう周りはうちの生徒だらけになっていた。
    皆、どんどん上を目指して上っていく。
    これももう、見慣れた光景だった。
    ちょっと前までは、誰もいない坂をひとりで上っていたのに。
    何も変わらない日々にうんざりしながら、重い体をひたすら動かしていたのに。
    今は、すぐ隣に俺を想ってくれる奴がいる。慕ってくれる子がいる。
    それだけで、俺は前向きでいられた。
    まさか、こんな気持ちでこの坂を上る日がくるなんて、思いもしなかった。

    朋也(はぁ…なんていうか)

    528 = 161 :

    唯と出会ってからいろんなことが変わった。
    それは俺だけじゃない。
    今の春原もだ。
    唯と出会った人間はみんな変わっていく。
    どんな方向かはわからなかったが…少なくとも最低から違う場所に向けてだ。

    ―――――――――――――――――――――

    玄関をくぐり、昇降口に入る。
    憂ちゃんは二年の下駄箱に向かい、俺たちは三年の下駄箱に足を向けた。
    そろそろ手を離そうと、そう思っていた矢先…

    バシィッ

     「うわっ」
    朋也「うおっ」

    後ろから繋ぎ目にチョップを落とされ、無理やり切られてしまった。

    朋也(まさか…)

    振り返る。

    「ななななな…」

    やはり中野だった。

    「なに手なんかつないぎゃーっ!」

    日本語になっていなかった。

    529 = 162 :

    「じゃなくて…岡崎先輩っ! どういうことなんですかっ! 唯先輩の手だけを襲うなんてっ!」

    「唯先輩そのものじゃなくても、襲ったってだけで犯罪なんですよっ!」

    「違うよ、あずにゃん。これは、私たちが付き…」

    咄嗟に唯の口を塞ぐ。

    「むん…」

    朋也「襲ったってわけじゃねぇよ。ただ、手がなんとなく寂しくてな…」

    朋也「俺、いつもはリラックスボール握りながら登校してるんだけど、今日は忘れちゃってさ…」

    朋也「その代わりに、平沢の手を借りてたんだよ」

    「それなら、自分の手を握ってればいいじゃないですかっ」

    朋也「それだと、異様に不安になってな…リラックスどころか、ストレスが溜まりだしたんだ」

    朋也「でも、経験上、他人の手を握れば解決できることを知ってたからな。それでだよ」

    「…なんか、すごく嘘臭いです…」

    朋也「納得してくれよ、あずにゃん」

    「あ、あずにゃんって呼ばないでくださいっ! 馬鹿っ」

    ぷい、と顔を背けて立ち去っていった。

    530 = 161 :

    朋也(ふぅ…)

    なんとか事なきを得たようだ。
    俺は唯の口を塞いでいた手を離す。

    「っぷはぁ…なにするのぉ、朋也…」

    朋也「いや、俺たちが付き合ってるって言おうとしてただろ、おまえ」

    「そうだけど…だめなの?」

    朋也「だめっていうか…一応、黙っておいて欲しいな、俺は。部長とかがうるさそうだし」

    部長も春原もそうだが、一番知られたくないのは中野だ。
    何をされるかわかったもんじゃない。

    「ええー…いいじゃん。私はみんなに言いたいよぉ」

    朋也「頼むから、大人しくしておいてくれ」

    「ぶぅ…わかったよ…」

    不満そうに頬を膨らませていたが、しぶしぶ了承してくれた。

    朋也(憂ちゃんにも言っておかなきゃな…)

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    531 = 162 :

    ―――――――――――――――――――――

    昼。

    「ムギ、これ、なんだ? 弓と矢みたいだけど…」

    「それはね、その矢で射抜かれると新しい能力が発現するっていう触れ込みで売られていたの」

    「なんだかおもしろかったから、買ってきたんだけど…だめだったかな…」

    「いや、そんなことないぞ。イタリー製だし、オシャレな感じするしな」

    「うん、すぐにでも鞄につけておきたいな。ありがとう、ムギ」

    「ありがとう~、ムギちゃん」

    春原「ムギちゃん、僕、これ家宝にするよっ」

    「ふふ、よろこんでもらえて、よかった」

    俺の手元にもそれはあった。
    琴吹が買ってきたイタリア土産のキーホルダー。
    今しがた全員に配られたのだ。

    「でも、よかったのかしら? これ、高かったんじゃないの?」

    作りはあくまで精巧で、職人のそれを思わせた。
    確かに、値が張りそうだ。

    「お金のことは言いっこなしよ。気持ちを受け取って欲しいな」

    532 = 161 :

    ということは、やはり、それなりにしたんだろう。
    真鍋もそれを察したはずだ。

    「…そう。じゃあ、ありがたく使わせてもらうわね」

    その上での、この答えだった。俺もそれで正解だと思う。

    「うん」

    「でもさぁ、やっぱ、ブランドものだったりするのか? ヴィトンとかの」

    「う~ん、露店で買ったから、手作りじゃないのかなぁ」

    「ジョルノ・ジョバァーナさんっていう人が個人で売ってたから」

    「そか。ブランドものを身につけるあたしっていうのも、共鳴現象でより可愛さに滑車がかかったんだけどなぁ」

    春原「トップバリュみたいな顔してなに言ってんだろうね、こいつは」

    「誰が安さ重視な顔だ、こらっ!」

    春原「おまえはカップラーメンとかと共鳴しとけばいいんじゃない? ははっ」

    「てめぇ…負け原のクセに」

    春原「僕は別にプロボウラーでもないしね。ボーリングで負けても悔しくないんだよ」

    朋也「ああ、おまえの本業は……だもんな」

    春原「なんで悲しそうな顔して僕を見てくるんだよっ!?」

    533 = 162 :

    「わははは!」

    「ふふ、でも、私もみんなと行きたかったなぁ、ボウリング」

    「あん? いや、絶対イタリーのがいいって。楽しかっただろ、旅行」

    「うん、そうだけど…やっぱり、みんなといたほうが楽しいから」

    春原「それ、つまりは僕と一緒に居たいことだよね」

    「凄まじく自分に都合のいい解釈の仕方するな、アホっ」

    「うれしいこといってくれるねぇ、ムギちゃんは」

    「ちょっとご両親がかわいそうだけどな」

    「いいのよ、お父さんとは、イタリアに行く前に喧嘩しちゃってたくらいだし」

    「え、そうなのか?」

    「うん。一応、仲直りは出来て、旅行自体は楽しめたんだけどね」

    「そっか。なら、なんにせよ、いい連休が過ごせたってわけだな」

    「そうね。初日に、岡崎くんとデートもできたし」

    その一言で、しんと静まり返るテーブル。

    534 = 169 :

    修羅場ルートになるのかなハラハラ

    535 = 430 :

    もうひと波乱起きそうだな マジ面白いww

    536 = 350 :

    そろそろエンディングかと思ったのにww

    537 = 162 :

    春原「え…」
     「え…」
     「え…」
     「え…」
     「………」

    春原「え゛ぇ゛ーっ!?」
     「え゛ぇ゛ーっ!?」
     「えぇ!?」

    悲鳴に近い驚きの声が上がる。

    「どういうこと? 琴吹さん」

    そんな中、冷静に真鍋が琴吹に問いかけていた。

    「ふたりは、付き合ってるの?」

    「ううん、そういうわけじゃないの。えっとね…」

    琴吹は、あの日あった事の経緯を至極穏やかに話していた。
    対して、話が進むたび、俺の心中は焦りと動揺で満たされていった。
    唯と付き合うことになったばかりなのに…俺のうかつな行動が招いた結果だった。

    「…というわけなの」

    「はぁ…偽の恋人役ねぇ…なんか、漫画みたいだな」

    春原「てめぇ、あの日遅かった理由はこれだったのかよっ!」

    538 = 162 :

    朋也「帰りを待つ妻みたく言うな」

    春原「なんでそん時僕も誘ってくれなかったんだよっ! つーか、恋人役なら僕にやらせろよっ!」

    朋也「俺の?」

    春原「ムギちゃんのだよっ! 決まってるだろっ」

    朋也「いや、今みたいに騒がれたら面倒だと思ったから、おまえは避けたんだけどな」

    春原「くそぉおおおおジェラシイィイイイッ!」

    「しっかし岡崎、おまえはほんとすげぇなぁ…ムギまで攻略中かよ。でも、ちょっと同時にいきすぎてないか?」

    朋也「いや、別にそんなやましい考えはなかったけどな。ただ遊んでただけだって」

    「岡崎くんったら、ただ遊んでただけだなんて…キス未遂までいったじゃない、私たち」

    朋也(ぐあ…)

    春原「え゛ぇ゛ーっ!?」
      「え゛ぇ゛ーっ!?」
      「えぇ!?」

    「………」

    唯の視線が痛い…。
    むすっとして頬を膨らませている。

    春原「てめぇええええ!! うらやま死ねぇええええっ!」

    539 = 161 :

    朋也「落ち着け、未遂だ、未遂。ただの空砲だ」

    「岡崎くん、ムギのこと…もしかして、その…」

    朋也「待て、違うぞ、俺は別に…」

    「岡崎くん、私のこと、嫌い?」

    朋也「い、いや、そんなことないぞ…好きか嫌いかでいえば、好きだよ」

    「うれしいっ」

    春原「岡崎ぃいいいいいいいいいっ!!」

    「やっぱり、岡崎くんは…」

    朋也「だぁーっ、どうすりゃいいんだよっ」

    「くすくす…」

    琴吹は困惑する俺を見て、悪戯っぽく笑っていた。
    最初からこうしてからかうつもりで話したんだろう。

    「これがフラグを立てすぎて処理しきれなくなった男の末路か…ふ、成仏しろよ岡崎」

    「まったく…はっきりしないからこういうことになるのよ。少しは反省なさい」

    この場に俺の味方はいないようだった。
    それよりも…

    540 = 169 :

    ハラハラBadendじゃないよね・・・

    541 = 162 :

    「……ふん」

    唯へのフォローはどうしようかと、それだけが心配だった。

    ―――――――――――――――――――――

    「………」

    朋也「なぁ…違うんだよ、あれは…」

    「………」

    朋也(はぁ…)

    教室に戻ってきても、まったく口をきいてくれなかった。
    そもそも、琴吹とふたりきりで遊んだのは、唯と付き合う前だから、セーフじゃないのか…?
    そうは思いながらも、途方に暮れる俺。

    朋也「どうすればいいんだ、俺は」

    「…知らない」

    一蹴されてしまう。

    朋也「そ、そうだ、日曜に遊びに行こう。おまえの好きなところ、回ってさ」

    朋也「どこでもいいぞ。寄生虫館とか、全力坂とか、チンさむロードでもオッケーだ」

    「…どれも興味ないよ」

    542 :

    朋也は律以外全員とフラグ立ててんじゃんw

    543 = 161 :

    朋也「そ、そうか…」

    冷たい…あの唯が…。思いのほかショックだった。
    でも、俺も最初はこんな感じで唯に接していたんだよな…。
    される側になって初めてわかる…なんて嫌な野郎なんだ、俺は。

    朋也(仕方ない…)

    俺はそっと唯の耳元に口を近づけ…

    朋也「好きだ…」

    そう囁いた。

    「…あ、ありがと」

    照れたように顔を伏せた。

    朋也(よし、手ごたえありっ)

    朋也「好きだ、好きだ、好きだ、好きだ…」

    ここぞとばかりに連呼した。
    すると、俯いていた唯がぷっと吹き出した。

    「もう…わかったよ、それは」

    朋也「そっか。そりゃ、よかった」

    「変なの」

    544 = 162 :

    朋也「そうか?」

    「うん…えへへ」

    笑顔を向けてくれる。
    機嫌を直してくれたようなので、俺はひとまず安心した。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    放課後。軽音部部室。

    春原「ねぇ、ムギちゃん、今度は僕とデート行こうよ。擬似じゃなくて、本物のさ」

    春原「それで、最終的には、あんなことや、こんなことに発展して…い、いやら…」

    「アホかっ」

    スパコーンッ

    上履きで頭をはたかれる春原。

    春原「ってぇなっ! あにすんだよっ」

    「おまえが生粋の変態だから、人の道を叩き込んでやったんだよっ」

    春原「余計なお世話なんだよっ! つか、そんなくっせぇ武器で攻撃するんじゃねぇよっ」

    545 = 161 :

    「な、臭いだとぉ!? 失敬なっ! めちゃフローラルな香りがするんだぞっ!」

    春原「うそつけっ! 痛いっていうより、むしろ臭いって感覚の方が大きかったわいっ」

    「な、こぉの野郎っ」

    バシバシバシッ

    席を立ち、春原に上履きの連打を与える部長。

    春原「うぁっ、おま、や、やめ…ぎゃあああああっ」

    「ふりゃふりゃふりゃっ! この、薄汚い豚めっ!」

    床にうずくまる春原に向かって、女王様のように上履きをしならせていた。

    がちゃり。

    「こんにちはー」

    扉を開け、中野が姿を現した。

    「………」

    「お、おう、梓。やっと来たか…」

    攻撃の手を止める部長。

    「はぁ…いい汗かいてますね、律先輩…」

    546 = 162 :

    「まぁな、ははっ。ま、とりあえずおまえも座れよ」

    言って、自分の席に戻る部長。

    「そうさせてもらいます」

    中野は鞄を置きにソファへと歩いていった。

    春原「くそぅ…暴力デコめ…」

    春原もなにか小さく呟きながら起き上がり、もとの席についた。

    「って、唯先輩っ! またそんなとこに座ってっ!」

    荷を降ろして身軽になると、真っ先に唯のもとへ歩み寄っていく。

    「あ、あずにゃん、思い出して? 自由席なんだよ?」

    「でもっ…」

    「梓、諦めろ。あの時決めて、おまえも頷いてただろ?」

    「うぅ…」

    「そんなに岡崎の隣がいいなら、もっと早くに来るんだな、うひひ」

    「な…別にそういうつもりで言ってるんじゃないですっ! 変に取らないでくださいっ」

    「あーはいはい、わるぅござんしたね~、ふへへ」

    547 = 161 :

    「もう…」

    ため息混じりに、空席へ腰を下ろす中野。

    「梓ちゃん、どうぞ」

    そこへ、琴吹がティーカップとケーキを差し出した。

    「ありがとうございます」

    「それと、これ」

    キーホルダーを手渡す。

    「これは…?」

    「お土産よ」

    「あ、イタリアのですか?」

    「うん」

    「へぇ…なんだか神秘的ですね」

    「お気に召してくれたかしら?」

    「はい、すごく。ありがとうございます、ムギ先輩」

    「いえいえ」

    548 = 162 :

    中野はしばらくの間、キーホルダーのギミックに夢中になっていた。
    一応、矢を発射できるようになっているのだ。さすがに刺さるほどの威力はなかったが。

    「なんだ? そんなに楽しいのかぁ、梓。けっこう子供だなぁ」

    「う…ほ、ほっといてください」

    言って、胸ポケットにしまう。

    「…こほん。それはいいとして、今日はおやつを頂いたらすぐに練習しますよ」

    「もう、創立者祭までの猶予もそんなにありませんからね」

    「そうだな。気合入れていかないとな、うん」

    「え~、キワキワまでゆっくりして、その白刃取り感を楽しもうよ~」

    「キワキワたぁ~いむ♪ キワキワたぁ~いむ♪ ってね」

    「そんなことしてたら、ばっさり切られちゃうくらいの段階まできてるんだぞ」

    「そうですよ。唯先輩も、できるだけ早く食べ終わってくださいね」

    「はぁ~い」

    「でも、なぁんか今日の梓は積極的だよなぁ。いつもは澪が練習のこと一番に言い出すのにさ」

    「私だっていつも言ってるじゃないですか、練習しましょうって」

    「でも、最近はなぁなぁになってて、あんま言わなかったじゃん」

    549 = 161 :

    「う…それは…」

    「やっぱさ、目の前で岡崎の隣に他の女がいるのが嫌なのかぁ?」

    「ち、違いますっ! 絶対にありえないですっ!」

    「おーおー、顔赤くしちゃって…うしし」

    「うふふ、梓ちゃん、可愛いわぁ」

    「か、からかわないでくださいっ」

    「もうっ…」

    拗ねたように嘆息すると、口直しとばかりにケーキを一切れ食べていた。

    「むぐ…みなさんも、早く食べてください」

    「はは、わかってるから、食べながら喋るなって」

    ―――――――――――――――――――――

    春原「う~ん、練習頑張ってるムギちゃんも可愛いなぁ」

    春原は練習が始まって以来、視姦といっていいレベルで琴吹を見つめ続けていた。
    その被害者である当の琴吹本人は、まるで意に介した様子はなく、自身の演奏に集中していた。
    賞賛に値する精神力だ。

    「ふわふわタ~ァイム…っと」

    550 :

    すげーな!
    面白すぎるww


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