のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:126,331,137人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報
    VIP以外のSS書庫はSS+をご利用ください。

    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」

    SS覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 魔王 + - CLANNAD + - けいおん! + - クラナド + - ドラクエ + - 朋也 + - 朋也「けいおん?うんたん + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    1 :

    4/5 月

    春。始まりの季節。
    春休みが明けた、その初日。
    体に気だるさの残るまま、通いなれた道を進む。
    辺りは閑散としていた。
    時刻はもう、正午に差し掛かっている。
    つまりは、遅刻。
    三年に進級しようが、俺の生活態度が改善されることはなかった。
    深夜に帰宅し、明け方に眠る。
    そうすると、起きるのは昼近くになってくる。
    高校に入ってからの俺は、ずっとそんな生活を続けていた。
    それも、父親を避けて、なるべく接点を持たないようにするためだ。
    親父とは、昔から折り合いが悪かった。
    小さい頃、俺の母親が交通事故で亡くなってしまったショックからなのか知らないが…
    親父は、日々を酒や賭け事に費やすようになっていった。
    そんな風だから、家ではいつも言い争いが絶えなかった。
    だが、今ではその関係も変わってしまった。
    親父が俺に暴力を振るい、怪我を負わせたことをきっかけに、急に他人行儀を感じさせるようになったのだ。
    俺の名前を呼び捨てではなく、『朋也くん』とくん付けで呼ぶようになり…
    まるで旧友であるかのように、世間話まで始めるようになった。
    それは、俺に怪我を負わせたことへの罪悪感から、俺と向き合うことを拒否した結果なのか…
    どういうつもりかわからなかったが、もう、親子じゃなかった。ただの他人だ。
    息子に向けるそれでない態度を取る親父をみると、胸が痛くなって、いたたまれなくなって…
    俺は家を飛び出すのだ。
    だから俺は、顔を合わせないよう、親父の寝入る深夜になるまで家に帰らないようにしていた。

    朋也「ふぅ…」

    一度立ち止まり、空を仰ぐ。

    2 = 1 :

    やたらと自然の多い町。
    山を迂回しての登校。
    すべての山を切り開けば、どれだけ楽に登校できるだろうか。
    直線距離をとれば20分くらいは短縮できそうだった。

    朋也(一日、20分…)

    朋也(すると、一年でどれぐらい、俺は時間を得することになるんだ…)

    計算しながら、歩く。

    朋也(ああ、よくわかんねぇ…)

    ―――――――――――――――――――――

    この時間、周囲を見回してみても、制服を着て歩くのは、俺ぐらいのものだった。
    だからだろう、通りかかる人はみな、俺に一瞥をくれていく。
    そんな好奇の視線を浴びながらも、学校を目指す。

    ―――――――――――――――――――――

    校門まで続く長い坂を登り終え、昇降口へ。

    ―――――――――――――――――――――

    始業式も終わり、生徒は教室へ戻っているはずだった。
    その教室は、クラス替えが行われ、新しく割り振られたもの。
    どこになったかは、ここに設置された掲示板で知ることができる。
    俺は自分の名前を探した。
    そして、しばらく目を通し、みつける。

    3 = 1 :

    朋也(D組か…)

    朋也(ん…あいつも同じクラスなのか)

    同じクラス。そこに、見知った名をみつけた。
    春原陽平。
    こいつの遅刻率は俺より高い。
    ふたり合わせて不良生徒と名指しされることも多かった。
    だからだろう、よく気が合う。

    朋也(いくか…)

    俺は掲示板を離れ、自分のクラスへ向かった。

    ―――――――――――――――――――――

    がらり。

    戸を開ける。
    すでにグループがいくつか出来上がり、各々が机を囲んで昼食を摂っていた。
    三年ともなれば、部活や、同じクラスだった等、すでに顔見知りになっている割合が高い。
    だから、最初からある程度空気が出来上がっていたとしても、別段不思議じゃなかった。
    教室内を見渡してみる。そこに春原の姿があることを期待して。
    だが、目に入ってくるのは、顔だけは知っているが、話したこともないような奴ばかり。
    居れば、昼に誘おうと思ったのだが…。
    諦めて、座席表で自分の席を確かめ、荷を降ろした。
    そして、ひとり学食に向かう。

    ―――――――――――――――――――――

    5 = 1 :

    適当なパンを買い、食事を済ませ、昼休みが終わるぎりぎりに教室に戻る。

    ―――――――――――――――――――――

    「こら、岡崎」

    教室前の廊下までやって来たとき、声をかけられた。

    さわ子「あんた、なにしょっぱなから遅刻してるのよ」

    さわ子「もう3年なのよ? いい加減にしとかないと、卒業できなくなるわよ」

    朋也「別に…いまさらだろ」

    さわ子「別にじゃないでしょ」

    さわ子「あんたと春原を3年に進級させるために、私と幸村先生がどれだけ苦労したか、ちょっとは考えなさい」

    朋也「まぁ、一応感謝してるよ」

    さわ子「なにが一応よ、まったく…」

    さわ子「まぁいいわ。ほら、もう席に着きなさい」

    そう言って戸を開け、俺を促す。

    朋也「って、なんだよ、このクラスの担任なのか」

    さわ子「そうよ。じゃなきゃ、あんたが今日遅刻したかどうかなんて断定できなでしょ」

    7 = 1 :

    それもそうか…。

    ―――――――――――――――――――――

    さわ子「はい、それでは午前中に決まらなかった係を…」

    クラス担任となったこの山中さわ子という教師は、去年の担任だった。
    幸村は、一年の時の担任だ。
    その縁で、ふたりにはなにかと世話を焼いてもらっている。
    今まで無事進級してこれたのも、この人たちの計らいがあったからだった。

    さわ子「えー、なかなかクラス委員長が決まりませんでしたね…」

    委員長決めが難航しているようだった。
    それもそうだろう。
    なにかと面倒を押し付けられるような役を進んでやりたがる奴なんて、そういない。

    さわ子「それじゃあ、立候補じゃなくて、推薦でいきましょうか」

    こうなれば、もう決まったも同然だった。
    大方、おとなしい奴が推され、抗うこともなく、そのまま決定するのだろう。
    俺は頬杖をついて視線を下に落とした。
    特に興味はなかったが、他にすることもなかったので、配布されたプリントを読んでやり過ごした。

    ―――――――――――――――――――――

    さわ子「えー、もう時間がないので、配布係は…平沢さん」

    生徒「え!? わたし?」

    8 = 1 :

    一人の女生徒が身を乗り出し、声を上げた。
    少し大げさな反応に思える。

    さわ子「と、岡崎くんでお願いね」

    朋也「はぁ? なんでだよ…」

    いきなりのことで面食らう。
    俺の素行を知っていて、クラスの係に抜擢するその意図がわからない。

    さわ子「岡崎くんは遅刻してきたから知らないでしょうけど、午前中のうちに決まってたの」

    朋也「………」

    さわ子「だから、お願いね」

    ぎらり、と圧倒的目力でダメ押しされる。
    拒否権はないようだった。

    さわ子「係もすべて決まったので、今から席替えをします」

    さわ子「一人ずつクジを引きにきてください。じゃあ、一番右の列から…」

    ―――――――――――――――――――――

    すべての生徒がクジを引き終わり、移動が始まった。
    俺も自分の席、一番後ろの窓際へ向かう。

    生徒「あ…」

    9 = 1 :

    机を移動させてくると、俺と同じ係になった、あの女生徒とはち会った。
    向こうも同じように机を引いてきている。
    このあたりの席にでもなったのだろうか。

    生徒「あ…えっと、岡崎くん…だよね? もしかしてここの席?」

    机を定位置に定め、自分の隣を指さして言う。
    そこはまさに、俺の目指した場所。
    どうやらこいつと席を隣接することになるらしい。

    朋也「ああ、そうだ」

    机を移動させながら答える。

    生徒「そうなんだぁ。じゃ、隣同士だねっ」

    朋也「ああ」

    俺はそう無愛想に返し、席に着いた。

    生徒「…あ、あはは。えっと…」

    女も着席した。笑顔が少し曇っている。
    俺の非友好的な態度に戸惑っているのだろう。

    生徒「私、平沢唯っていうんだ。よろしくねっ」

    気を取り直したようで、再び話しかけてきた。
    なかなか気丈な奴だ。

    10 = 1 :

    朋也「…ああ」

    が、俺はまたそっけなく返す。
    これ以上会話するのも面倒だった。
    もう話しかけるな、と暗に示したつもりだ。

    「岡崎くん、自己紹介の時きてなかったよね。下の名前教えてよっ」

    …伝わらなかったようだ。

    朋也「…岡崎朋也だ」

    かといって無視するのも気が引けたので、一応答えておく。

    「へぇ~、朋也くんかぁ…ふぅ~ん、へぇ~」

    うんうん、と頷いている。
    これで満足してくれただろうか。

    「いっしょに頑張ろうねっ、配布係」

    ただ配布するだけなのに、どう頑張るというのだろう。

    「無呼吸でぜんぶ配り終えることを目標にしようっ!」

    意味がわからなかった。

    朋也「ひとりで達成してくれ」

    「えぇ~、ノリ悪いなぁ…」

    11 = 1 :

    朋也(変なのと隣り合っちまったな…)

    俺は少し、先行きに不安を覚え始めていた。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    SHRが終わり、放課となった。
    初日ということもあり、授業もなく、いつもより早い時間だ。
    結局、今日一日、春原が姿を現すことはなかった。
    サボリなのだろう。

    「部っ活ぅ~部っ活ぅ~♪」

    こいつは何かの部活動に入っているんだろうか。
    隣でひとり浮かれていた。
    俺はそんな平沢を尻目に、席を立った。

    「あ、岡崎くん、帰るの? それとも部活?」

    朋也「帰るんだよ」

    「部活はなにかやってないの?」

    かつてはバスケ部に所属していた。
    だが、親父との喧嘩で怪我をしてから、退部してしまっていた。

    12 = 1 :

    朋也「…やってねぇよ」

    「そうなんだ? じゃあさっ…」

    なにか言い始めていたが、俺は構わず歩き出した。

    「あ…」

    背中から小さく声が聞こえた。
    が、俺は気にも留めず、そのまま教室を出た。

    ―――――――――――――――――――――

    帰宅してすぐ服を着替え、また家を出る。

    ―――――――――――――――――――――

    向かう場所は、学校の坂下にある学生寮。
    うちの学校は部活動にも力を入れているため、地方から入学してくる生徒も多い。
    俺のように学生生活に夢も持たない人間とはまったく違う人種。
    関わり合いになることもなかったが、そんな場所にあいつ…春原は住んでいるのだ。
    春原は元サッカー部で、この学校にも、スポーツ推薦で入学してきた人間だ。
    しかし一年生の時に他校の生徒と大喧嘩をやらかし停学処分を受け、レギュラーから外された。
    そして新人戦が終わる頃には、あいつの居場所は部にはなかった。
    退部するしかなかったのだ。
    その後も別の下宿に移り住む金銭的余裕もなく、この体育会系の学生が集まる学生寮に身を置き続けているのだ。

    ―――――――――――――――――――――

    がちゃり。

    13 = 1 :

    俺はノックもなしに部屋のドアを開け放った。

    春原「うぉっ、いきなりなんだよっ」

    春原はなぜか上半身裸で焦っていた。

    朋也「なにって、俺だよ」

    ずかずかと上がりこむ。
    そして、もう春だというのに未だ設置されたままのコタツに潜りこんだ。
    というか、このコタツは季節に関わらず一年中設置されているのだ。

    春原「そういうことを言ってるんじゃないだろっ! ノックとかしろよっ」

    朋也「中学生かよ。俺の足音で察知できるようになれ」

    春原「できませんっ」

    朋也「なんでもいいけど、服着ろって。ほら」

    俺はその辺に散乱していた洗濯物のひとつを放った。

    春原「つーか、おまえ、ちょっとは僕のプライバシーを…ってこれズボンじゃん」

    朋也「おまえなら違和感ないよ」

    春原「上下ズボンで違和感ないってどういう意味だよっ!」

    朋也「いや、なんかおまえ、全体的に下半身っぽいしな…トータルでみて、オール下半身でもいいかなって」

    14 = 1 :

    春原「よくねぇよっ! 意味わかんないうえに変なコーディネイトするなっ!」

    春原「ったく…」

    ため息混じりに自分で上着を探し始める。

    朋也(ん…?)

    今気づいたが、春原の前、テーブルの上に鏡が置かれていた。

    朋也(ああ、なるほど…)

    今、上半身裸だった謎が解けた。
    こいつはおそらく、俺が来るまで自分の肉体美でも追及していたのだろう。

    朋也(ナルシストな野郎だ)

    そう結論づけ、雑誌を読み始めた。

    ―――――――――――――――――――――

    春原「あーあ、明日からまた学校かぁ…ちっ、めんどくせぇな…」

    朋也「明日からって…おまえ、今日からもう始まってるぞ」

    春原「え? マジ?」

    朋也「ああ」

    春原「………」

    15 = 1 :

    春原「はは、でもさ、あれだよね、時差があって一日ずれたってやつ?」

    この部屋だけ異空間にでも飲みこまれているのだろうか。

    朋也「ちなみにクラス発表の掲示板におまえの名前はなかったぞ」

    春原「えぇ? なんでよ?」

    朋也「知らねぇよ。留年でもしたんじゃねぇの。ああ、除籍かも」

    春原「あ…そ、そうかよ…」

    春原「………」

    春原「へっ、岡崎……僕、おまえと過ごしたこの二年間、楽しかったよ。達者でな…」

    朋也「俺、明日カツ丼食いたいんだけど」

    春原「唐突だな…こんな時だっていうのに、最後までおまえは…」

    春原「まあ、いいよ、僕がおごってやるよ。ほら」

    渋い顔で小銭を渡してくれる。

    朋也「お、サンキュ。これからも昼代、よろしくな」

    春原「はっ、なに言ってんだよ、これからはおまえ一人でやっていかなきゃならないんだぞ?」

    朋也「そんな寂しいこというなよ。同じクラスになったんだしさ」

    16 = 1 :

    春原「はい?」

    朋也「あったよ、お前の名前。俺と同じD組だ。んで、担任はさわ子さんな」

    春原「おまえ…金、返せよっ!」

    朋也「ちっ、しょうがねぇな…はぁ、ほらよ」

    春原「なんで加害者のおまえが不満そうなんだよっ!」

    春原「くそぅ…タチの悪い嘘つきやがって」

    朋也「いや、でもさ、お前の名前のうしろに(故)って書き加えといたし、あながち嘘でもないぞ」

    春原「勝手に殺すなっ!」

    朋也「つじつま合わせなきゃだろ?」

    春原「だろ? じゃねぇよっ! いらんことするなっ!」

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「ふぁ…」

    時計の針はすでに深夜の2時を指していた。
    テレビもないこの部屋で出来ることなんて、雑誌を読むか、話をするくらいの二択だったのだが…
    この時間にもなれば、さすがにどちらも飽和状態を迎えてしまう。
    帰るなら、ここいらが頃合だった。
    俺は無言でコタツから出た。

    17 = 1 :

    春原「帰るの? だったら、僕ももう寝るから電気消してってくれよ」

    春原「布団から出るのめんどうなんだよね」

    朋也「ああ、わかった」

    パチっ

    がちゃり

    俺は電気を消し、部屋を出た。
    廊下には、『ドアもちゃんと閉めていきしょうねっ!』と春原の声が響き渡っていた。

    ―――――――――――――――――――――

    18 = 1 :

    4/6 火

    今日も遅刻しての登校。ともかく、自分の席までやってくる。

    「あ、おはよ~、岡崎くん」

    朋也「………」

    すると、平沢を囲むようにして3人の女生徒が集まっていた。
    その内の一人は、図々しくも俺の席に座っている。
    そして、全員が来訪した俺に注目していた。
    なんとも居心地が悪い…。

    「あ、ほらりっちゃん、どかないと岡崎くんが座れないよ」

    生徒「おっと、悪いね」

    その女生徒と入れ替わりに着席する。
    だというのに、まだ注視され続けていた。
    息苦しくなって、俺は机に突っ伏した。

    朋也(って、なんで俺が弱い立場なんだよ…)

    朋也(くそ、なんか納得いかねぇぞ。睨み返してやろうか…)

    「それでね…」

    と、思ったが、すぐに平沢たちの声が聞こえてきた。
    会話を再開したのだろう。
    その気はなかったが、嫌でも耳に入ってくる。

    19 = 1 :

    軽音部の新入部員がどうのとか、そんな話だった。

    朋也(こいつら、軽音部の奴らなのか)

    朋也(まぁ、なんでもいいけど…)

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    「起立、礼」

    生徒が号令をかける。
    ありがとうございました、と一つ響いて授業が終わった。
    ややあって、教師に質問をしにいく者や、談笑し始める者が現れ始めた。

    朋也(ふぁ…あと一時間で昼か)

    次の授業は英語。英作文だ。
    担当教師の名前を見てみると、堅物で知られる奴のものだった。
    授業を聞いていなかったりすると、その場で説教を始めるのだ。
    その最後に、みんなの授業時間を使ったことを謝罪させられる。
    俺みたいな奴にとっては、まさに天敵と言っていい存在だった。

    朋也(たるいな…サボるか)

    「ねぇねぇ、岡崎くん」

    20 = 1 :

    サボリの算段を立てていると、平沢に肩をつつかれた。

    朋也「…なに」

    「じゃんっ。これ、すごくない?」

    平沢が俺に誇示してきたのは、シャーペンだった。
    ノックする部分が、球体に目が入った謎の物体になっていた。
    どこかで見たことがあるような気がするが…。

    朋也「…別に」

    「なんで!? これ、だんご大家族シャーペンだよ!? レア物だよ!?」

    そうだ、思い出した。だんご大家族。
    もうずいぶん前に流行ったアニメだか、歌だかのキャラクターだ。

    朋也「なんか、汚ねぇよ」

    「うぅ、ひどいっ! 昔から大切に使ってるだけだよっ」

    「っていうか、私の愛するだんご大家族にそんな暴言吐くなんて…」

    「もういいよっ。ふんっ」

    朋也(なんなんだよ、こいつは…)

    なんとなく気力がそがれ、サボる気も失せてしまった。

    朋也(はぁ…聞いてるフリだけでもするか…)

    21 = 1 :

    結局、俺はサボリを断念することにした。
    こんな奴に影響を受けて気分を左右されるのは、少しシャクだったが…。

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    授業が終わり、昼休みに入った。

    「ねぇ、岡崎くん」

    学食へ出向くため、席を立とうとした時、呼び止められた。

    朋也「なんだよ」

    「部活入ってないんだよね?」

    朋也「昨日言わなかったか」

    「だったね。じゃあさ、軽音部なんてどうかなっ? 入ってみない?」

    朋也「はぁ? 俺、もう三年なんだけど」

    朋也「入ってすぐ引退するんじゃ、意味ないだろ」

    「う…あ…そうだったね…ごめん」

    朋也「別に謝らなくてもいいけどさ…」

    22 = 1 :

    「うん…」

    そんなにも新入部員が欲しいのだろうか。
    学年も見境なく勧誘してしまうほどに。

    ―――――――――――――――――――――

    春原「よぅ、今から昼?」

    廊下に出ると、ちょうど登校してきた春原と顔を合わせた。

    朋也「まぁな」

    春原「どうせ学食だろ? 一緒に食おうぜ」

    春原「鞄置いてくるから、ちょっと待っててよ」

    俺の返事を聞かず、そう言うなりすぐさま教室に足を踏み入れる。
    が、そこで動きを止めて振り返った。

    春原「あのさ、おまえ、僕の席どこか知らない?」

    こいつは先日サボったせいで、自分がどこの席かわからないのだ。
    俺がいなければ、クラスさえわからなかっただろう。

    朋也「あそこだよ。ほら、あの、気軽に土足で踏み荒らされてる机」

    朋也「みんな避けずに上を通って行ってるな」

    朋也「お、座ってたむろしてるやつまでいる。あ、ツバ吐いた」

    23 = 1 :

    春原「そんな一昔前のコンビニ前みたいな席あるかっ! 適当なこと言うなっ」

    春原「ったく…おまえに訊いた僕がアホだったよ…」

    朋也「うん」

    春原「いちいち肯定しなくていいです」

    春原「で…担任、さわちゃんなんだよな?」

    朋也「ああ、そうだよ」

    春原「そっか。ま、さわちゃんなのはいいけど…今から職員室まで訊きにいくの、たるいなぁ…」

    朋也「いや、座席表見ろよ。教卓の中に入ってるぞ」

    春原「最初から言いましょうねっ!」

    ―――――――――――――――――――――

    春原「でもさ…むぐ…担任がさわちゃんって、運いいよね、僕ら」

    カレーを口に含ませたまま、もごもごと喋る。

    朋也「かもな」

    春原「僕、三年連続あの人だよ」

    春原「おまえは二年からで、一年のときは幸村のジジィだったよな」

    24 = 1 :

    朋也「ああ」

    春原「僕らに甘いって点ではジジィでもよかったけど、やっぱさわちゃんでよかったよ」

    春原「女教師のが目に優しいし、その上、なんだかんだいって、可愛いしね、あの人」

    朋也「そうだな」

    購入したうどん定食、そのメインである麺をすする。

    朋也「でも、あの人よくわかんないとこあるからな」

    春原「ああ、素を隠してるとことか?」

    朋也「まぁ、それもあるけど、なんか俺クラスの係にされちまってたし」

    春原「マジ? おまえが? ははっ、こりゃ荒れるぞ。学級崩壊するかもな」

    朋也「ちなみにおまえもされてたぞ」

    春原「マジで? なんの係?」

    朋也「駆除係」

    春原「なにそれ」

    朋也「この学校って周りに自然が多いだろ?」

    朋也「だからさ、時たま教室にゴキブリとか、ハチとかが襲撃してくるじゃん」

    25 = 1 :

    朋也「それで、おまえはそいつらと戦うんだよ」

    春原「へぇ、なるほど。そりゃ、おもしろそうだね」

    真に受けてしまっていた。

    春原「なら、有事に備えて、全盛期の動きを取り戻しとこうかな」

    朋也「どうせたいしたことないだろ」

    春原「ふん、あんまり僕を侮るなよ。壁走りとかできるんだぜ?」

    ゴキブリのような男だった。

    朋也「まぁ、おまえ一回スズメバチに刺されてリーチかかってるしな」

    朋也「さわ子さんも、おまえを始末したくて選んだのかもな」

    春原「そんな裏あるわけないだろっ! っていうか僕、スズメバチに刺された過去なんかねぇよっ」

    春原「選ばれたのは、純粋に僕の戦闘力を見て、だろ?」

    朋也「はいはい…」

    ―――――――――――――――――――――

    ………。

    ―――――――――――――――――――――

    26 = 1 :

    清掃が終わってからSHRまでの時間。
    配布係は、この間に職員室まで配布物を取りに行くことになっていた。

    「うぅ~、初仕事、緊張するね」

    相変わらずこいつはよく話しかけてくる。
    授業間休憩の時も、しょっちゅう話を振ってきた。
    人と会話するのが好きなんだろうか…。
    俺のような無愛想な男に好き好んで絡んでくるくらいだから、そうなのかもしれない。
    ただ単に、席が隣同士だから、良好な関係を築いておきたいだけ、という線もあるが。

    「岡崎くんは、緊張しないの?」

    朋也「しようがないだろ」

    「へぇ、すごいねっ。いい心臓持ってるよっ」

    よくわからないが、褒められてしまった。
    もしかすると…
    こいつはただ単に思ったことを言っているだけで、他意はないのかもしれない。

    ―――――――――――――――――――――

    各学年、クラス毎に設置されたボックスの中に配布物が入っている。
    俺たちはD組のボックスを開けると、中にあったプリントを出し始めた。

    「よいしょっと…」

    なかなかに量が多い。
    生徒に勉学を奨励するような新聞の記事やら、偉人の格言など、そんな類のものも混じっている。

    27 = 1 :

    進学校だからなのかどうか知らないが、こういう事になにかと熱心なのだ。
    進学するつもりもない俺にとっては、余計なお世話でしかなかったが。

    「っわ、ととっ」

    プリントを抱え、よろめく。
    見ていて少し危なっかしい。
    バランス感覚に乏しいやつなんだろうか。

    朋也「おまえ、大丈夫なのか。少し俺が持つか?」

    「ううん、大丈夫だよ。いこ?」

    なんでもないふうに言って、職員室の出入り口に向かう。
    俺もその背を追った。
    その間も足元がおぼついていなかったが、かろうじてこけることはなかった。
    何事もなく教室まで辿り着ければいいのだが…。

    ―――――――――――――――――――――

    「ふぃ~、あとちょっとだね…」

    俺に振り向きながら言う。
    その時…

    「わっ」

    子生徒1「痛っ…」

    ばさっ、と平沢の抱えていたプリントが舞い落ちて、床に散らばった。

    28 = 1 :

    俺の方を向いたのと、向かいから来た男が脇見したタイミングが重なってのことのようだった。

    子生徒1「…あ~、ごめん」

    肩を軽く抑えている。

    子生徒2「うわ、おまえ最悪っ」

    隣にいた男が意気揚々と囃し立てる。

    子生徒1「いや、おまえじゃん。俺の注意力をそらしたのが主な原因だから」

    子生徒2「はははっ、マジおまえ」

    朋也「………」

    なんとなく気に入らない奴らだった。

    「私も、よく見てなかったから、ごめんなさ…」

    「あ…」

    その男たちは、平沢の言葉を聞くことなく、プリントを拾いもせずに立ち去ろうとしていた。

    「あはは…ごめん、岡崎くん。先にいってて」

    ひとり、散らばったプリントを集め始める平沢。

    朋也「………」

    29 = 1 :

    俺はその場に自分の持っていたプリントの束を置いた。

    朋也「おい、待てって」

    男たちの背に怒気を含んだ声を浴びせる。

    子生徒1「………は?」

    子生徒2「………」

    どちらも怪訝な顔で振り向いた。

    朋也「おまえらも拾え」

    言いながら、近寄っていく。

    子生徒1「いや…は?」

    子生徒2「…なにこいつ」

    朋也「むかつくんだよ、おまえらはっ」

    俺は平沢にぶつかった方の胸倉をつかんだ。

    子生徒1「っつ…は?」

    子生徒2「は? なにおまえ…なにしてんの? やめろって」

    もう片方が引き離そうとしてくる。

    30 = 1 :

    「私のことはいいよ、岡崎くんっ、落ち着こう! ね?」

    平沢も俺の袖を引いて止めに入ってきた。

    朋也「…ちっ」

    掴んでいた手を離す。

    子生徒1「意味わかんね、バカだろ普通に」

    子生徒2「頭おかしいわ、もうだめだろあいつ」

    罵りの言葉を吐きながら立ち去っていく。
    俺はその後姿を睨み続けていた。

    「ごめんね…岡崎くんにまで嫌な思いさせちゃって…」

    袖を持ったまま、俺を見上げてそう謝った。
    初めて見た、こいつの悲しそうな顔。
    いくら俺の応答が悪くても、まったく見せなかったその表情。
    巻き込んでしまったことが、そんなに辛いのだろうか。
    そんなの、俺が勝手に首を突っ込んだだけなのに。
    ………。

    朋也「…プリント拾って帰るぞ」

    せめて今だけは助けになってやりたい。
    そう思えた。

    「あ…うん」

    31 = 1 :

    ―――――――――――――――――――――

    配布物も無事配り終え、SHRが終わった。

    「岡崎くん」

    直後、平沢に声をかけられる。

    朋也「なんだよ」

    「さっきはありがとね。私…ほんとはうれしかったよ」

    「プリントも一緒に拾ってくれたしさ」

    朋也「…そっかよ」

    「あ、でも乱暴なのはだめだよ? 愛がないとね、愛が!」

    「それじゃあねっ」

    一方的にそれだけ言うと、うれしそうにぱたぱたと教室を出て行った。

    朋也「………」

    俺はなにをあんなに怒っていたんだろう。
    俺だって、あいつらと大して変わらないだろうに。
    無神経に振舞って、冷たく接して…
    ………。
    それでも…平沢はずっと話しかけてくるんだよな…。
    そして、最後には、俺に礼まで言っていた。

    32 = 1 :


    朋也(なんなんだろうな、あいつは…)

    春原「岡崎、帰ろうぜ」

    ぼんやり考えていると、春原が俺の席までやってきた。

    朋也「ああ、そうだな」

    さわ子「あ、ちょっと待って、そこのふたりっ」

    小走りで俺たちのもとに駆け寄ってくる。

    春原「なに? さわちゃん」

    さわ子「話があるの。ちょっとついてきてくれる?」

    春原「え、なに? 僕、告られるの? さわちゃんに?」

    さわ子「そんなわけないでしょっ」

    さわ子「というか、さわちゃんって呼ぶのはやめなさいって、いつも言ってるでしょ」

    春原「じゃ、なんて呼べばいいの? さわ子・オブ・ジョイトイ?」

    さわ子「なんでインリンから取るのよ…」

    春原「M字開脚見たいなぁ、って…」

    ぽか

    33 = 1 :

    持っていたファイルで軽く頭を殴られる。

    春原「ってぇ…」

    さわ子「変なこと言わないの。私のことは、普通に山中先生と呼ぶように」

    春原は頭をさすりながら、はいはい、と生返事をしていた。

    さわ子「さ、とにかくついてきて」

    ―――――――――――――――――――――

    さわ子「あんた達ねぇ…」

    俺たちは人気のない空き教室に連れてこられていたのだが…

    さわ子「遅刻、サボリ…それも初日から連続で…」

    さわ子「ほんとにもう、大概にしなさいよっ」

    その途端、素に戻って荒い言葉遣いになるさわ子さん。
    変わり身の早い人だった。

    春原「んなに怒んなくてもいいじゃん。なんとかなるって」

    さわ子「ならないわよ、バカ」

    春原「え、もしかして…ヤバいの?」

    さわ子「まぁ、けっこうね」

    34 = 1 :

    この人が言うのだから、本当にマズイのだろう。
    教師の中で味方といえるのは、さわ子さんと幸村ぐらいのものなのだから。

    さわ子「助かるかもしれない方法がひとつだけあるわよ」

    春原「校長でも校舎裏に呼び出すの?」

    さわ子「あんたは私の話が終わるまでちょっと死んどきなさい」

    春原「ちょっとひどくないっすか、それ?」

    朋也「早く仮死れ」

    春原「ああ、やっぱあんたが一番鬼だよ…」

    朋也「で…方法って、なんだよ」

    さわ子「一番いいのは生活態度をまともにすることだけど、あんた達には無理でしょうからね…」

    さわ子「他の事で心証をよくするしかないわ。気休めかもしれないけど」

    朋也「ボランティアしろとかいわないだろうな」

    さわ子「まぁそれに近いわね」

    春原「えぇぇ? やだよ、献血とかするんでしょ? 痛いじゃん」

    さわ子「だから、あんたは少し黙ってなさいって」

    朋也「そうだぞ。それに、おまえの血なんか輸血されたら、助かるはずの患者も即死するだろ」

    35 = 1 :

    朋也「仮に助かっても、脳に重大な後遺症が残るだろうし」

    春原「しねぇよっ! 毒みたくいうなっ!」

    さわ子「とにかく! あんた達には部活動の手伝いをしてもらうから」

    朋也「はぁ?」
    春原「はぁ?」

    同時に素っ頓狂な声を上げる俺たち。

    さわ子「今日から軽音部の新入部員集めに協力しなさい」

    軽音部…というと、平沢が所属しているところか…。

    さわ子「さぁ、今から行くわよ。ついてきなさい」

    呆然とする俺たちを残し、教室を出ていく。

    春原「おい…どうすんだよ」

    朋也「どうするって…やんなきゃ、卒業がやばかったり、退学処分だったりが現実味を帯びてくるんじゃねぇの」

    春原「じゃあ、やんのかよ、おまえ」

    …なにも知らなければ、抵抗があっただろう。
    だが、もう平沢のことを知ってしまっていた。
    会ってまだ間もないが、悪い奴ではないように思う。
    だから、協力してやれるなら、それでもよかった。

    36 = 1 :

    春原「…ふーん、部活なんかしてる連中とは関わりたくもないって、そういう奴だと思ってたんだけど」

    春原「それが最初に僕たちが意気投合したところだしねぇ」

    さわ子「なにやってんの? 早く来なさい」

    ドアから顔を覗かせ、手招きする。

    春原「…ま、いいや」

    呼びかけに応え、春原が教室を出ていく。
    遅れて俺もその後を追った。

    ―――――――――――――――――――――

    さわ子「みんなやってるぅ?」

    生徒「あ、さわちゃん…って、そっちのふたりは…」

    「あれ…」

    さわ子「新入部員獲得のための新兵器よ。ま、こき使ってやって」

    さわ子「そんじゃねー、がんばってー」

    ばたん

    朋也「………」
    春原「………」

    37 = 1 :

    あれだけしか言わずにちゃんと伝わったのだろうか…。
    軽音部の連中…見れば女生徒ばかりだった。
    彼女たちも事情を飲み込めずにいるのか、ポカンとしている。

    生徒「あんたら…同じクラスの岡崎と…そっちの金髪、名前なんだっけ」

    春原「ちっ…春原だよ。覚えとけっ」

    生徒「なっ…なんだこいつ、態度悪いな…」

    「岡崎くん、新兵器って…?」

    朋也「ああ、いろいろあって俺たち、軽音部の新入部員集め手伝うことになったから」

    「え!? ほんとに?」

    春原「ありがたく思えよ、てめぇら」

    生徒「なっ…あんたなぁっ」

    「まぁまぁ、りっちゃん。せっかく手伝ってくれるんだから感謝しようよ」

    生徒「うぐぐ…」

    さっそく春原は不協和音の引き金となっていた。

    朋也(しかし…部員はこいつらだけなのか…?)

    朋也(だとすると、1、2…5人か…少ないな)

    38 = 1 :

    俺の見立てが正しいなら、駆り出された理由は、この人手の足りなさからなのかもしれない。

    「そうだ、自己紹介しよう! ね! まず私から!」

    「ボーカルとギターの平沢唯です! よろしく! はい、つぎ澪ちゃん!」

    生徒「あわ、わ、わたし…?」

    生徒「………」

    生徒「…秋山澪です…」

    「はい、澪ちゃんはベースやってます! 美人です! 恥ずかしがり屋です! つぎ、ムギちゃん!」

    生徒「琴吹紬です。担当はキーボードです。よろしくね」

    「ムギちゃんはお嬢様です! 毛並みも上品です! でもふわふわしてます! そこがグッドです!」

    「はい、つぎあずにゃん!」

    生徒「はあ…」

    生徒「えっと…二年の中野梓です」

    「あずにゃんはみたとおり可愛いです! 担当はギターです! あずにゃんにゃん! あずにゃんにゃん!」

    平沢が奇声に近い声を発し、中野という子に頬をすり寄せ始めた。

    「ちょっと…唯先輩、やめてください…」

    39 = 1 :

    「でひゃっひゃっ」

    ひとしきりじゃれついた後、ようやく離れた。

    「…うおほん。では最後に、われらが部長、りっちゃん!」

    生徒「あー、田井中律。部長な。終わり」

    「りっちゃんはみたとおり、おデ…」

    「その先はいうなっ」

    パシっ

    「コッ! った~い…」

    妙な連中だった。
    それは、平沢が中心になっているからそう見えたのかもしれないが…。

    「それじゃ、次は岡崎くんたちね」

    朋也「岡崎朋也」

    春原「…春原陽平」

    朋也「こいつの担当は消化音だ。ヘタレだ」

    春原「変な補足入れるなっ! つーか、消化音って、どんな役割だよっ!」

    朋也「胃で食い物が消化されたらさ、ピ~、キュ~って鳴るだろ。あれだよ」

    40 = 1 :

    春原「恥ずいわっ!」

    「春原くん、消化音でドの音出してみてっ!」

    春原「できねぇよっ!」

    「しょぼっ…」

    春原「あんだとっ、てめぇデコっ」

    「はぃい? なんだってぇ?」

    間を詰めて、今にも掴みかかっていけそうな距離で火花を散らし始めるふたり。

    「ストップストップ!」
    「りっちゃん、どうどう」

    部員に両脇を固められ、その態勢のままなだめられる部長。

    「んむぅ~…むぅかぁつぅくぅ」

    「あの…ちょっといいですか?」

    場が落ち着いたところを見計らったように、控えめな声が上がる。

    「なんだよっ、梓」

    「律先輩たちって同じクラスなんですよね?」

    「? そうだけど」

    41 = 1 :

    「その…岡崎先輩と、春原先輩もそうだって言ってましたよね?」

    「ああ、いったけど」

    「じゃあ、なんで今自己紹介なんですか?」

    「それはね、最初の自己紹介の時に、ふたりともきてなかったからだよ」

    「え、そうだったんですか…」

    「春原くんにいたっては、今日初めて見たんだよね」

    「ああ、昼休みにいきなり派手な金髪が現れたからびっくりしたよな」

    春原「いや、そっちの琴吹ってのも金…」

    「私が…なに?」

    その時、なんだかよくわからないが、すさまじい闘気のようなもを感じ取った。

    春原「ひぃっ」

    そしてすぐにわかった。それが春原に向けられたものであるということが。

    春原「なんでもないです…」

    そう、こいつには黙る以外の選択肢はなかったはずだ。
    それぐらい有無を言わせないほどの圧力だった。
    …何者だよ、あいつは。

    42 = 1 :

    「昼…?」

    「ああ、前にこのふたりと同じクラスだった奴から聞いたんだけどさ、こいつら、不良なんだと」

    「それで、サボりとか、遅刻が多いんだってさ」

    「ふ、不良ですか…」

    俺と春原に恐る恐る目を向ける。
    やがてその視線は春原の頭で止まっていた。

    春原「ああ? なんだよ?」

    「い、いえ…」

    春原「ちっ、さっきからチラ見してきやがって…」

    無理もない。今時金髪で、そんな奴がこんな進学校の生徒なのだから。
    普通の奴からしてみれば、物珍しいはずだ。

    「………ぅぅ」

    怯えたように後ずさっていく。

    「澪ちゃん、怖がらなくて大丈夫!」

    「岡崎くんはいい人だよっ。私が保証するよっ!」

    …保障されてしまっていた。
    まさか、あの廊下での出来事を根拠に言っているんだろうか…。

    43 :

    44 :

    この投稿密度は評価に値する

    45 = 43 :

    規制

    46 :

    さるでも喰らったか

    47 = 43 :

    それ以外、この評価に繋がりそうなことなんて、思い浮かばないのだが…
    でも、そうだとしたら、安易過ぎる…。

    「え?」

    「あら…」

    「………」

    「唯…おまえ、岡崎となんかあったのか?」

    「ん? なにが?」

    「いや、なにって…そりゃ…その…男女の…いろいろとか…」

    「へ? 男女のいろいろって?」

    「だから、惚れた腫れたのあれこれだよ。つまり、おまえが岡崎に気があるってことな」

    「え、あ…そ、そういうのじゃないけど…」

    48 = 43 :

    「う~む…こいつ、顔立ちは整ってるけど…不良だぞ?」

    「だから違うってぇ~…」

    春原「………」

    無言でそのやり取りを眺める春原。
    こいつは今、なにを思っているんだろうか…。

    49 = 46 :

    携帯からじゃ大変だろうけど期待してるから頑張れ

    50 = 43 :

    春原「へぇ…そういうこと」

    俺に向き直り、口を開いた。

    朋也「…なにがだよ」

    なにか、あらぬことを邪推されている気がする…。

    春原「いや、ずいぶんなつかれてるなと思ってね」

    朋也「言っておくけど、なにもないからな」

    春原「ああ…そうだね」

    その含み笑いが腹立たしかった。

    朋也(勘違いしてんじゃねぇよ…)

    ―――――――――――――――――――――

    「えー、おほん。それでは新入部員捕獲作戦ですが…こちら」

    そこに並べられていたのは、犬、猫、馬、豚、ニワトリ…等、動物の着ぐるみ。
    どれも微妙にリアリティがあって少し不気味だった。

    「この着ぐるみを着てやりたいと思います」

    「えぇ…それ着なきゃだめか?」

    「だめだよ。普通にやったんじゃインパクトに欠けるからねっ」


    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - 魔王 + - CLANNAD + - けいおん! + - クラナド + - ドラクエ + - 朋也 + - 朋也「けいおん?うんたん + - 涼宮ハルヒの憂鬱 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について