元スレ八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
51 = 39 :
八幡「ああ、俺は沙希さんのクラスメートです。けーちゃん、京華ちゃんとも遊んだことがあります」
保育士「あ、そ、そうでしたか」
八幡(怪しい男の素性が知れてほっとしたようだ。まあ俺みたいなのが突然しゃしゃり出てきたら無理もないか)
八幡「それより今京華ちゃんは指を怪我したと聞きましたが?」
保育士「は、はい、指先を本のページの端っこで切っただけなのですが……あまりに痛いと泣くのでもしかしたら見えないところで何かあったのでは、と思いまして」
医者「子供は血を見ると大袈裟に泣くからね、仕方ないよ」
保育士「おおごとにしてしまってすいません」
八幡「いえ、こういう時に痛いのを我慢してしまう子も中にはいますから。むしろそこまで気にかけてくれてありがたいことです」
保育士「そう言っていただけると……」
八幡(クレームとかを恐れていたのか、保育士さんはひと安心といった表情になる。もしかしたらまだ新人なのかもしれない)
八幡「ところで京華ちゃんはどちらに?」
医者「御手洗いに行きたいと言ってうちの看護婦が連れて行ってる、すぐに来るよ」
「あー! はーちゃんだー!」
52 = 39 :
八幡(トテトテと駆け寄って来たのは指先に絆創膏を巻いた川崎の妹、川崎京華だった)
京華「さーちゃんもいるー! どうしたの?」
八幡「けーちゃんを迎えに来たんだ。あとここは病院だから静かにな」シー
京華「うん」シー
八幡(しゃがんで目線を合わせ、口に指を当てて『静かに』のジェスチャーをする俺を真似するけーちゃん、ええ子や……特に俺の目を見ても怖がらないところが最高)
八幡(ご褒美に頭を撫でてやるとにへへーと笑う……しまった、でしゃばりすぎたかな? そう思って川崎を窺うと、すでに立ち直ったか川崎は医者と保育士さんと話をしている。ならばもう少し面倒を見とくか)
八幡「けーちゃん、さーちゃんは先生達とお話してるから俺と待ってようか」
京華「うん」
八幡(小さく元気よく返事をしたけーちゃんは椅子に座る。この躾の良さは川崎家の育児の賜物だろう。俺はその隣に座った)
八幡「怪我をしたんだってな。平気か?」
京華「うん、ちがでてないちゃったけどばんそうこうしてもらったから」
八幡「そっか、大したことなくて良かった。でも怪我には気をつけような? さっきも走ったりして危ないぞ」
京華「あ、ごめんなさい……」
八幡(ペコリ、と下げた頭を俺はまたそっと撫でてやる。そうするとけーちゃんはもっと、と言わんばかりに頭をこちらに寄せてきた)
八幡(まあ話してるよりこっちの方が気楽だしな……べ、別に園児とはいえ女の子と何を話していいかわからないわけじゃないんだからねっ、いざとなれば俺にはプリキュアがあるんだからっ)
沙希「ごめん、待たせちゃったね」
八幡(どのプリキュアが好きか話し掛けるタイミングを見計らっているうちに、いつの間にか話を終えたらしい川崎が声を掛けてきた。保育士さんが出口の方で軽く頭を下げたので、こちらも同じように返しておく)
八幡「いや、大丈夫だ。この後はどうするんだ?」
沙希「園にも大した荷物はないし今日はこのまま連れて帰ることにしたよ……なんというか、その、ごめ「川崎」」
八幡(頭を下げて謝ろうとする川崎を俺は遮った。妹は姉のそんな姿を見たくはないだろう)
八幡「その話はまた今度だ」
沙希「あ……うん」
八幡(ちら、とけーちゃんを見た意図に気付いたのだろう。川崎は素直に頷いた)
53 = 39 :
八幡(しかし俺はどうしたもんかね? 今から学校に戻って授業を受けるなんてしたくない。体育が終わった頃を見計らってHRに何気なく参加するか……いや、由比ヶ浜がいるな、また目立ってしまう……とりあえず自転車を取ってくるか)
京華「はーちゃんもいっしょにかえるんだよね? ふたりでおむかえっていってたもん」
沙希「こら、比企谷はね……」
八幡「あー川崎、お前さえ良ければ、なんだが一緒にお前んちまで帰っていいか?」
沙希「え……?」
八幡「いや、今から戻るのも何だし、部活の時間までまだそれなりにあるしさ。まあ暇つぶしってことで」
沙希「ああ……うん、あたしは構わないけど」
京華「やったー、はーちゃん、かたぐるましてかたぐるまー!」
沙希「けーちゃん、ワガママばかり言わないの」
八幡「いや、構わねえよ。川崎、悪いけど俺の自転車頼んでいいか? 鍵はかけてないから。ほら、けーちゃんおいで」
京華「わーい!」
沙希「まったく……ごめん、ありがとね比企谷、すぐに自転車取ってくるから」
54 = 39 :
八幡(ここから川崎家までそんな大した距離でもないので歩いて帰ることになった。けーちゃんを肩車してる俺の横を、川崎が俺の自転車を押して一緒に歩いている)
沙希「それにしても随分子供の相手が手慣れてるね」
八幡「ウチは両親が昔から忙しいから小町の世話は俺がしていたからな。小町を泣かせたりすると怒られるし」
沙希「ご両親も小町が最優先なんだ……」
八幡「あんな可愛い妹なんだから仕方ない。むしろ当然だな」
沙希「シスコンと親バカか……」ハァ
京華「はーちゃんいもうといるのー?」
八幡「おう、けーちゃんよりずっと年上だけどな」
京華「かわいいの?」
八幡「ああ、すっげー可愛いぜ」
京華「さーちゃんとどっちがかわいいー?」
沙希「なっ!? けーちゃん、何を……」
八幡「んー、さーちゃんはどっちかって言うと可愛いってより美人さんだな」
沙希「ひっ、比企谷!?」
京華「さーちゃんびじんー?」
八幡「おう、美人さんだから結構モテるんだぞさーちゃんは。だからけーちゃんも大きくなったら美人さんになるぜー、なんたってさーちゃんの妹だからな」
京華「わーい! やったー! さーちゃんとおんなじびじんー!」
55 = 39 :
八幡(こんな会話を平然とやってのけている、なんて勘違いしないでもらいたい)
八幡(川崎は顔を真っ赤にしてうつむいてしまっているが、それに負けず劣らず俺も赤くなっていることだろう)
八幡(当たり前だ、あんな葉山みたいなイケメンが言いそうな甘ったるくて吐きそうなセリフがまともに話せるか!)
八幡(だが、家族が褒められるのは自分にとっても誇らしいことなのはすごくよくわかる)
八幡(だから俺はけーちゃんに喜んでもらおうと少しオーバー気味に褒めたのだ)
八幡(それに、まあ……嘘ってわけでもないしな…………)
京華「~~♪」
八幡(けーちゃんは上機嫌になったか俺の頭の上で歌を歌い始めた)
八幡(正直助かった、あの話を続けられると俺の精神が持ちそうにないからな)
八幡(そんなこんなで川崎家が見えてきた)
56 = 39 :
京華「ふぁ……」
八幡(家の前で肩から下ろしてやったところでけーちゃんは大きなアクビをした)
沙希「ああ、はしゃいじゃったしお昼寝してないから眠くなっちゃったんだね。ほら、手を洗ってうがいしたら着替えてお昼寝しようか」
京華「うん……はーちゃんは? いっしょにおひるねしないの?」
八幡「ああ、ごめんな。でもまた今度遊びに来るからその時は一緒にご飯食べたりお昼寝したりしような」ナデナデ
京華「うん! ぜったいきてね! ……ふわぁ」
沙希「ほら、行くよ。それと比企谷、少しだけ待っててくれない? その、話があるから」
八幡「ん、わかった。ここにいるからさ」
沙希「ごめんね、家にあげても良いんだけど……その」
八幡「わかってるよ、俺がいるとけーちゃんが興奮して寝れないんだろ? 時間とか気にしないでいいからちゃんと寝かしつけてやれ」
沙希「ごめ……ううん、ありがとう」
57 = 39 :
八幡(お、家の前の自販機にマックスコーヒーがあるとは川崎家は恵まれてるな)ピッガコン
八幡(ふう、やはり甘くて旨い。甘くないのは俺の人生だけで充分だ……いや、もうひとつあるか。人にはなかなか言えないが)
沙希「待たせちゃったかな?」
八幡「おっと。いや、随分早かったな」
沙希「はしゃぎすぎて疲れてたみたいでね、すぐに寝付いたから」
八幡「そっか」
沙希「うん」
八幡「…………」
沙希「…………」
八幡(何となく沈黙。いや、川崎は何かを話し出そうとしてはいるのだが、どう切り出したものかと悩んでいるようだ)
八幡(仕方ない、水を向けてやるか)
八幡「けーちゃん、大したことなくて良かったな。川崎があんなに狼狽えるなんて珍しいものが見れたし」
沙希「うん……」
八幡(あれ? 何でそんなにしおらしいの? ここはからかった俺に怒ったり恥ずかしがったりするとこだろ?)
沙希「本当にごめん、大したことなかったのに比企谷にこんなに迷惑をかけちゃって」
八幡「やめろ」
沙希「……比企谷?」
八幡「大したことなかったのを理由に謝るな。それだと大したことあった方が良かったみたいに聞こえかねないぞ」
沙希「! そ、そんなつもりはないよ!」
八幡「だろうな、だったら謝罪じゃなくてもっと別の言葉が聞きたい」
沙希「あ…………」
58 = 39 :
八幡(正直カッコつけすぎだと自分でも思う)
八幡(でも川崎に負い目を持たせたくないし、謝られるのも苦手なんだよ)
沙希「比企谷、本当にありがとう。すごく感謝してる」
八幡「お、おう、どういたしまして」
八幡(思っていた以上に真摯でまっすぐな感謝に戸惑ってしまった)
八幡(謝られるのは苦手だと言ったけど感謝されることにも慣れてないからな)
沙希「でもさ、何でここまでしてくれたの? あたしがあんたの立場だったら授業を抜け出してまで、なんてしたかどうか」
八幡「んー……理由なんか後付けでいくらでも出てくるが……身体と思考が勝手にそういう方向に行ってしまったんだよ」
沙希「勝手にって……」
八幡「まあ、もうしばらく弁当作ってきてくれるんだろ? それの礼としてタクシー代わりをしたってことにしといてくれ」
沙希「それっぽっちのことで……」
八幡「あとけーちゃんのことは俺も心配だったからな、川崎がタクシーやバスで向かっても自転車で駆け付けたと思うし。お前の弁当と一緒でついでだよついで。だからそんなに気にすんな」
沙希「うん。あんたがそう言うなら……でもあの子も随分あんたに懐いてるね」
八幡「ああ、川崎もフリとはいえ彼女だし今が人生最大のモテ期かもな、ははは」
沙希「ば、ばか」
沙希(本当はあんたのこと好きな女子はもっといるんだけどね……)
59 = 39 :
沙希「でも比企谷、あたしはあんたにちゃんとしたお礼をしたい」
八幡「いや、だから、アッシー君にしたくらいでそこまでかしこまるなって」
沙希「なんでそんな古い言葉を選ぶのさ……違うよ、それだけじゃない」
八幡「んん?」
沙希「あたしがほっとして力が抜けて倒れそうなとき、あんたは抱き止めてくれた」
八幡「…………」
沙希「まだ落ち着かなかったあたしに代わって冷静に先生達と話をしてくれた」
八幡「…………」
沙希「逆にあたしが話をしている間、さり気なくあの子の相手をして面倒を見てくれた。もちろん躾してくれたのも含めて」
八幡「…………」
沙希「帰ってる時だってそう。なんで……なんでここまで優しくしてくれるの?」
沙希(勘違い……しそうになるじゃない……)
60 = 39 :
八幡「……わかんねえ」
沙希「え?」
八幡「さっきも言ったように勝手に身体が動いたんだよ。あとは単純に俺がそうしたかったから、だ」
沙希「自分がそうしたかったから、か……それじゃあたしもそうしたいからそうする。あたしは比企谷にお礼がしたい」
八幡「う……」
沙希「自分だけ我を通して他人には通させない、ってことはないよね?」
八幡「くっ……でもお礼ってなんだよ? デートでもしてくれんの?」
沙希「あんたがそれを望むなら」
八幡「な……っ」
沙希「あたしに出来ることなら、あんたの言うことを一つ何でもしてあげる」
八幡「!!」
八幡(何でも!? 何でもだって!?)
八幡(クラスメートの女子に何でもしてあげるって言われた、すげえ勝ち組になった気分だ)
八幡(たぶん今の川崎なら多少無茶なお願いも聞いてくれるだろう……いやいや、変なことをさせる気は一切ないぞ?)
八幡(うん、ここはあれだ。あれにしよう。川崎ならきっと笑わずに俺の昔からの願いを叶えてくれる)
八幡「じゃあ川崎にしてほしいことがある。たぶんお前なら出来るし、お前以外には頼みにくい」
沙希「随分勿体ぶるね」
八幡「あと笑うなよ。いや、笑ってもいいけど誰にも言うなよ」
沙希「何かそこまで念押しされると怖いんだけど……」
61 :
前にまったく同じssを見たんだが、1は同一人物なのか?
それともパクりか?
62 = 61 :
前にまったく同じssを見たんだが、1は同一人物なのか?
それともパクりか?
63 :
んなSSねえから水さすんじゃねえ
てかそこでとめるとか>>1ひどくない!?
パンツ脱いだままなんだけど
64 = 61 :
最近これとまったく同じスレを見たんだけど、ここの1は同一人物?
違うなら
他人のssパクってんじゃねーよ。
65 :
>>64
全く同じスレを見てるならリメイクされた経緯もわかってるはずだけど?
66 = 61 :
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1429632180
ほらよ。
これでもまだパクってねーって言えんのか?
67 :
前回別人が立てて中途半端に放り出したスレを、>>1が書き継いだものの、乗っ取り警告で消化不良に終わる。
今回は>>1が同タイトルでスレ立てして最初からリメイク。後半から別展開になるらしい。期待。
68 = 63 :
>>66
i あっ…(察し
>>1からめんたま開いてしっかり見てこいよちゃんと書かれてるから
これだからもしもしはって馬鹿にされるんだよ
69 = 67 :
前回別人が立てて中途半端に放り出したスレを、>>1が書き継いだものの、乗っ取り警告で消化不良に終わる。
今回は>>1が同タイトルでスレ立てして最初からリメイク。後半から別展開になるらしい。期待。
70 = 63 :
>>69
あんた優しいな
目からうろこだよ
71 :
まあ鳥つけてないからしゃーない
72 :
>>2くらい読みなされ
73 :
更新きたと思った俺に謝ってくれ(横暴)
74 :
これは恥ずかしい
75 :
俺は主の続きを待ち続ける
支援
76 :
前回別人が立てて中途半端に放り出した、ってか元スレの1以外はここの1さんだよね?
77 :
>>2でトリ付けたけど元スレでも付けといたほうが良かったかな?
あと前半、というより前に投下したのとはだいたい同じ流れってことです。なんかいろいろすみません
~奉仕部~
八幡「うっす」ガラガラ
結衣「ヒッキー!! どこ行ってたの!? 先生も怒ってたよ!」
八幡「ああ、今職員室寄ってきたからすでにしこたま怒られてきた」
八幡(川崎の件を最初に伝えたから実際はそんなでもないけどな。平塚先生もフォローしてくれたし。なんであんな良い人が結婚できないんだろう?)
結衣「そんで結局どこ行ってたの?」
八幡「昼飯食ったあとに数学と体育なんて最悪だろ? ちょっとやる気出なくてサボったんだよ」
雪乃「ホラ谷君、さすがの由比ヶ浜さんでもその嘘は通用しないわよ」
結衣「ゆきのん!?」
八幡「うむむ、さすがの由比ヶ浜でもダメか」
結衣「ヒッキー!?」
雪乃「川崎さんの妹さんのことは由比ヶ浜さんから聞いたわ。そのタイミングでいなくなれば予想くらいつくのだけれど」
結衣「ちょっと! さっきのってどういう意味だし!?」
八幡「由比ヶ浜は正直者でいいやつだなってことだよ」
結衣「え、そ、そうかな?」エヘヘ
八幡(ちょろい)
雪乃(ちょろいわね)
78 = 77 :
雪乃「一応確認しておくけれど、川崎さんと一緒に病院へ行ったのかしら?」
八幡「ああ。怪我は全然大したことなかったが、やたら泣くから念のために病院に連れて行ったというのが真相だ。伝言ゲームよろしく大袈裟にこっちに伝わったんだな」
結衣「あ、そうなんだ。良かった……」
八幡(由比ヶ浜が安心したように溜め息をつく。やっぱりなんだかんだこいつはいいやつだ。さて、話は終わったし先週買った本でも……)
雪乃「比企谷君、まだ話は終わってないわよ」
八幡(ですよねー)
結衣「そうだよ! 何で昨日サキサキと一緒に帰ってたの!?」
八幡「あー……あまり吹聴して欲しくないんだがな、実は」
雪乃 ・結衣「……」ゴクリ
八幡「俺、昨日から川崎と付き合う……」
雪乃 ・結衣「!!?」
八幡「フリをすることになったんだ」
雪乃 ・結衣「………………え?」
八幡「まあそんなわけで昨日は一緒に帰ったんだ、以上」
結衣「ちょっと!? 全然説明になってないんだけど!」
八幡「いや、一応川崎のプライバシーに関わるかなと。リスクは減らしたいし」
雪乃「比企谷君、それは奉仕部としてのあなたに依頼したのでしょう? だったら同じ奉仕部である私達はある程度知っておいたほうがいいと思うわ」
八幡「うーん、まあ川崎もお前らならって言ってたしいいか。実はな~~(説明中)~~ってことなんだ」
79 = 77 :
結衣「へー……でもやっぱサキサキ美人だからね、無理ないか」
八幡「なんか相手がやたらしつこくてな、追い払うためについ彼氏がいると言ってしまったらしい。まああの様子だと外見だけに惚れたみたいだからしばらくすれば興味無くすだろ、それまでは適当に彼氏役を務めるさ」
結衣「ヒ、ヒッキー、実はあたしも時々男子に告白されて困ることがあるんだけど…………」チラ
雪乃「私もそういった声をかけられることはよくあるわ。断ってもしつこかったりして困るわね、決定的な理由があれば楽なのだけれど……」チラチラ
八幡「ああ、お前らは可愛いし俺とは正反対でモテるからな、俺なんか『なんでこんなやつが……』って視線で見られたぞ」
結衣「かっ、かわっ……ヒッキーの変態!」
八幡「ええー……なんで俺今罵倒されたの?」
雪乃「コホン……まああなたの場合仕方ないでしょうね。目が腐敗しているし悪い評判の方が広まっているでしょうし目が腐敗しているし」
八幡「ねえ、なんで目のことを二回言ったの? 大事なことなの?」
雪乃「事実でしょう?」
八幡「そうだけどさ……だからこんな依頼俺が引き受けるのは今回限りだな」
雪乃 ・結衣「えっ」
八幡「川崎もぼっちだから他に頼める男がいなくて、って感じで俺にお鉢が回ってきた感じだし。今度から似たような依頼はお前らに回すから適当な断り方を教えてやってくれ。さっきも言ってたけど慣れてるんだろそういうの?」
雪乃 ・結衣「…………」
八幡(まあ川崎は俺をいい男と言ってくれたけどな。でも他に仲が良い男子がいないから相対的に良く見えるだけかもしれん。勘違いは禁物)
結衣「う、えと……ううう」
八幡「どうした由比ヶ浜、唸りだして? トイレなら早く行ってこい」
結衣「違うし! ヒッキーの馬鹿!」
雪乃「あなたは一度生まれ変わった方がいいわね。もっとも一回の転生でその目が持つカルマをすべて浄化できるとは限らないけれど」
八幡「なんか今日は俺に厳しくない?」
80 :
はぁ……俺歓喜。
81 = 77 :
~♪~♪~♪
八幡「おい、どこかでなんか鳴ってんぞ。誰かの携帯じゃねーの?」
雪乃「私ではないわよ」
結衣「あたしでもないよ。てかヒッキーじゃないの? そのカバンから鳴ってるけど」
八幡「ああ、俺のカバン持ってきててくれてたのね、サンキュ。スマホ入れっぱなしだったか……というか俺に電話するやつがいるのか?」ゴソゴソ
結衣「それ自分で言っちゃうんだ……」
八幡「よっと、はいもしもし」ピッ
???『あ、あの、かわさきけいかといいます。こんにちは。その、はーちゃん、ですか?』
八幡「ああ、けーちゃんか、俺だよ。お昼寝の時間は終わったのかな?」
雪乃 ・結衣「!!?」
京華『うん、あのね、はーちゃんにいいたいことがあったの!』
八幡「ん? なんだい?」
結衣(な、なに、あのヒッキーの表情……)
雪乃(腐ってる目が気にならないほど優しい表情ね……)
結衣(声もすっごく柔らかくて……)
雪乃(私達はあんなのを向けられたことないわね……)
京華『その、きょうは、ありがとうございました!』
八幡「どういたしまして。もしかしてそれを言うために電話してくれたのか?」
京華『うん! あ、ちょっとさーちゃんにかわるね』
沙希『ごめんね、今大丈夫だった?』
八幡「ああ、益体もない部活中だ」
沙希『今度会ったらちゃんとけーちゃんもお礼を言わないとねって言ったらすぐに伝えたいって主張してきてさ。迷惑かなと思ったけど電話させてもらったの』
82 = 77 :
八幡「そっか、じゃあそれに対するお礼を言わないとな、ちょっとけーちゃんに代わってくれ」
沙希『はいはい』
京華『けいかです!』
八幡「ああけーちゃん、電話してくれてありがとう、凄く嬉しいよ。けーちゃんはお利口さんで良い子だな」
京華『えへへー、だったらまたあそんでくれる?』
八幡「ああ、ちゃんといい子にしてたら絶対遊びに行くよ、じゃあまたさーちゃんと代わってくれるかな?」
京華『うん! ぜったいだよ!』
沙希『もしもし、なんか本当に色々と悪いね……代わりってわけでもないんだけど例の件、頑張るから』
八幡「いや、そんなに気合い入れなくてもいいぞ? いつも通りでいいから」
沙希『そう……なら程々に頑張るよ』
八幡「ああ、よろしく。それと雪ノ下と由比ヶ浜にお前から依頼されたっての伝えたから」
沙希『あ、そう……その、二人はなんか言ってた?』
八幡「やっぱ川崎もモテるんだなって。それ関係は慣れてるから今後そっち方面で困ったらいつでも相談に乗るってさ。やっぱり俺じゃ頼りないってことだな」
雪乃(言ってないわよ)
結衣(言ってないし!)
沙希(言ってないんだろうなあ……)
八幡「それとけーちゃんが無事で良かったって」
沙希『うん、二人にも礼を言っといてくれる?』
八幡「ああ」
沙希『それじゃ、あたしは家の用事をするからこのへんで。また明日ね』
八幡「おう、また明日な」ピッ
雪乃 ・結衣「…………」
八幡「川崎が、二人に心配かけてすまなかった、ありがとうってさ……って何だよその顔」
83 = 77 :
結衣「その、さ……ヒッキーって、ロリコンなの?」
八幡「はぁ? 突然何を言い出してんだこのアホヶ浜は」
結衣「アホって言うなし! だ、だって最初電話してたのサキサキの妹でしょ? あたしたちとは全然態度が違うじゃん! すごく優しかったし!」
八幡「子供に優しくするのは当たり前だろ……というか園児と同じ扱いされるのって逆に嫌じゃね? 頭撫でられたり肩車されたりするんだぞ?」
雪乃 ・結衣(むしろ撫でられたい)
八幡「あと俺の目を見ても怖がらないしな。それだけで小町と戸塚にしか出さない微粒子レベルで存在してる俺の優しさを分け与える価値はある」
結衣「ちょっとしか持ってないんだ……」
雪乃「どれも手を出したら問題になる人選ね」
八幡「いずれにせよ俺はロリコンじゃないからな。そもそも懐いてくれたり優しかったりする相手にこっちも優しくするのは当然だろ?」
結衣「じゃ、じゃあさ、あたしにももっと優しくしてよ!」
八幡「なんだよ突然」
結衣「あたしだってヒッキーに優しくしてるじゃん!」
雪乃「それを言うなら私もよね」
八幡「普段から腐ってるとかキモいとか散々吐き出してる口がそれを言うのか……あれだろ、お前らの言う優しさってのはぼっちの俺と会話してあげてるとかそういうレベルだろ」
結衣「そんなことないもん! あたしだってヒッキーとお話するのは楽しい……って何言わせるの!? ヒッキーの馬鹿! ……あっ」
八幡「フォローすると見せかけて流れるように悪口を言うとはさすがだな」
結衣「違うし! うう……そ、そうだ、あたしが明日お弁当作ってきてあげる! どう、優しいでしょ!?」
八幡「すまん、まだ俺は死にたくないんだ。この苦しい世の中から解き放ってくれるという優しさは気持ちだけ受け取っとく」
結衣「どういう意味だし!?」
雪乃「由比ヶ浜さん、あなたはもう少し練習してからの方がいいと思うわ…………なら比企谷君、私が作ってきたら嬉しいと思うかしら?」
八幡「ああ、お前は料理上手いもんな。嬉しいっちゃ嬉しいが……しばらくは川崎が作ってきてくれるからいらんぞ」
84 = 77 :
結衣「えっ、サキサキが!?」
八幡「ああ、少なくとも彼氏役の間は作ってくれるってよ。あいつも料理スキルは高いからな」
雪乃「あなた……依頼にかこつけて何を命令しているのよ」
八幡「ちげーよ、川崎の方から言ってきたんだよ。元々自分や家族のも作るから手間は掛からないって言ってるし」
雪乃「やめておきなさい。女子が男子にお弁当を作ってくるなんて周囲にどんな誤解を産むかわからないの? 川崎さんが可哀想じゃない、自分の立ち位置を忘れたのかしら?」
八幡(じゃあ今お前らが作ってきてくれそうな言い方したのは何だったんですかね?)
八幡「あのな雪ノ下、お前こそ忘れてんのかもしれねーが、今回の依頼はその誤解を産むことなんだぞ。おおっぴらに撒き散らすことじゃないし対象は特定の人物だが、ある程度の下地は必要なんだから」
雪乃「それは……そうなのだけれど……」
結衣「じゃ、じゃあさ、ヒッキーとサキサキってどこでお昼食べる予定なの?」
八幡「特に決めてるわけじゃないが……どこだっていいだろ」
雪乃「よくないわ、あなたと二人きりだなんて川崎さんの身が危ないもの」
八幡「どんだけ信用ねーんだよ俺は……お前らと二人きりになったこともあるけど何にもしてないだろうが」
雪乃「あら、直接手は出さなくともその腐ってる下卑た目でいつも私達の身体を舐めるように視姦しているじゃない」
結衣「なっ……最低! ヒッキーのスケベ!」
八幡「俺は今痴漢冤罪の過程をありありと目にした」
85 = 77 :
八幡(まあそういう目で見たことがないわけじゃないんですけどね。でも巨乳の由比ヶ浜や、スレンダーだけど姿勢良くピシッとしてる雪ノ下を男ならそう見ちゃうこともあるでしょ)
八幡(そういや川崎もスタイルはいいんだよな。身長は女子にしては高めだし胸もそれなりにあるみたいだし。二人乗りの時や抱き止めた時の感触は正直忘れられん……)
雪乃「なにか妙なことを考えている表情ね……あなたやっぱり」
八幡「ないから」
雪乃「ふむ、同年代に欲情しないとなると……ロリコン?」
八幡「もっとねえよ。てかそういう目で見ると罵倒するくせに見なきゃ見ないで貶されるなら俺はどうすりゃいいんだ」
結衣「あ、あたしは別にヒッキーなら……」ゴニョゴニョ
~♪~♪
八幡「ん、俺にメール……って今気付いたけどこの由比ヶ浜からの不在着信やメールの山は何だよ。あんな短時間でどんだけ送ってきてんだ」
結衣「だ、だって気になったし……」
八幡「てことは何だ、カバンの中で延々と着信音が鳴ってたのか、気付けよ」
雪乃「それは無理よ、誰もあなたの席なんて見ないもの。音が鳴っててもどこかで鳴ってるな、くらいにしか思わないわ」
八幡「まあそれは否定しないが」
結衣「しないんだ……」
86 = 77 :
雪乃「ところでそのスパムメールはどんな内容だったのかしら?」
八幡「なんでスパムって決め付けてんだよ、小町や戸塚から来ることもあるから三割くらいは違うぞ」
雪乃「七割はスパムメールなのね……」
結衣「ヒ、ヒッキー、もっとあたしがメールしてあげるね!」
八幡「いや、いらないから。お前のメール顔文字絵文字多くて目に良くないし」
雪乃「あら、それ以上悪くなりようが…………いえ、そういえば今日はいつもより濁っているような……」
八幡「ああ、これは単に寝不足なだけだ。てかよく気付いたな」
雪乃「元が最悪だから気付きにくいけれど隈が広がっているわよ。ゲームや漫画は早めに切り上げて睡眠をきちんと取りなさい」
八幡「いや、昨晩は川…………そうだな、今日は早く寝ることにするわ」
結衣「ヒッキー! 今サキサキのこと言いかけたでしょ!? 何、まさか一緒にいたの!?」
八幡「んなわけねーだろ、ちょっとメールのやり取りしてたら寝るのが遅くなっちまっただけだよ」
雪乃「なら何故今隠そうとしたのかしら? 疚しいことがないならきちんと説明できるはずよ」
八幡「お前らがそうやって問い詰めてくるのが面倒だからだろうが……今来たのだって川崎からだが、明日の弁当についてのことなだけで大したもんじゃない」
雪乃「本当でしょうね」
八幡「こんなことで嘘ついてどうすんだよ……疑うなら川崎にも聞いてみろ」
結衣「うー、あたしも! あたしも今晩ヒッキーとメールする!」
八幡「勘弁してくれ、今日は早く寝るって決めたんだよ。だいたい何の用もないだろ」
結衣「少しくらいいいじゃん!」
八幡「はあ……わかったわかった、少しだけだからな」
結衣「うん! 絶対だからね!」
八幡「へいへい」
87 :
ガハマちゃん健気過ぎて泣けてくる…
88 :
雪ノ下とガハマうざったい
89 :
ガハマさんは可愛いけどゆきのんはウザいなw
90 = 75 :
ゆきのんも心の裏ではサキサキに嫉妬してるんだよ
口に出ないだけなんだよ><
91 = 77 :
~ 翌朝 ~
八幡(眠ぃ…………)
八幡(ちょっとだけって言ったのに由比ヶ浜は日が変わる頃まで延々とメールを送り続けてきた。返信しないと催促が何度も来るし、それでも無視をすると小町経由で注意してきやがった)
小町「おはようお兄ちゃん、夕べはお楽しみでしたね」
八幡「どこの宿屋の主人だよ。いや、楽しんでねーから。早いとこ寝たかったのに由比ヶ浜のやつ小町まで使いやがって。おかげで2日連続で寝不足だぜ」
小町「えー、女の子とメールしてて寝不足だなんてリア充みたいじゃん」
八幡「睡眠時間を削ってまですることじゃないだろ、健康にも悪いし。やはりぼっちが最高だということが改めて証明されてしまったな……ふわああ」
小町「ありゃ、本当に眠たそうだね。今日サボっちゃう? そんなお兄ちゃん小町的にポイント低いよ」
八幡「サボんねーよ、多分いなくてもバレねーけど。川崎との約束もあるしな」
小町「バレないんだ……ん、沙希さんとの約束?」
八幡(やべっ)
八幡「小町、そんなわけだから今日は小町の送迎はなしだ。寝不足で運転誤って小町に怪我でもさせたら大変だからな」
小町「そこまで小町のことを思ってくれるお兄ちゃんはポイント高い! だから今は話を逸らそうとしたのを黙認してあげる。帰ったら聞かせてもらうけどね!」
八幡(それ黙認って言わなくね?)
92 = 77 :
彩加「おはよう八幡。なんだか眠そうなだね、大丈夫?」
八幡(教室に入ると天使が話しかけてきた、いや違った、戸塚だった。あれ、じゃあ天使で合ってるんじゃね?)
八幡「おはよう戸塚、ちょっと寝不足でな」
彩加「何かあったの? 昨日も午後からいなくなっちゃってたし……また変な問題でも抱えてるんじゃ……」
八幡「ああいや、何か起こってるわけじゃない。眠いのは遅くまで本を読んでただけだし、昨日の午後は……ちょっとしたことがあったんだけどすぐに解決したから。心配かけてすまないな」
彩加「それならいいけど……あ、だったら知らないかも。今日の授業って午前中はこんなふうに変更になったんだよ」ピラ
八幡「なん……だと……?」
八幡(戸塚が見せてくれたプリントには今日の授業日程が書いてあった)
八幡(幸い必要な教科書やノートは用意できているが、多大な問題が発生していた)
八幡「寝れそうな時間がねえ……」
八幡(授業態度が厳しい教師の教科だったり移動教室だったりで結構面倒だ、本気でサボってしまおうか……)
彩加「だめだよちゃんと授業は受けないと」
八幡「お、おう」
八幡(仕方ない、頑張るか)
93 = 77 :
八幡(なんとか昼休みまで乗り切った……正直昼飯を食わずに寝たい気持ちもあったが、川崎との件があるからな)
八幡(由比ヶ浜が時折チラチラとこっちを見ていたが、ステルスヒッキーの能力を最大限に発揮して教室から抜け出す)
八幡(川崎とは昨日メールで指定した現地で落ち合う約束だ。眠気覚ましに顔を軽く洗って自販機に寄ってから行くか)
八幡(………………………)
八幡(やべえ……川崎との弁当の時間にドキドキしてる俺がいる)
八幡(昨日川崎にお願いしたことが、俺の希望が叶えられる時が一刻一刻と近付いている)
八幡(今は眠気よりそっちの期待の方が強くなってきた)
八幡(えっと、川崎はっと…………いた、もうベンチに座ってたか)
94 = 77 :
八幡(近付いていくとこちらに気付いたか川崎が軽く手を上げる。俺もひらひらと手を振って返した)
八幡「すまん、待ったか?」
沙希「いや、それほどでもないよ」
八幡「そっか、ほらお前の分」
沙希「ありがと」
八幡(自販機で購入した川崎の分の飲み物を渡し、俺は川崎の隣に座る)
沙希「はい、こっちがあんたの分ね」
八幡「おう、サンキュ」
八幡(包みをほどいて差し出された、川崎のより一回り大きい弁当箱を受け取る。この中に……)ゴクリ
八幡「じゃ、腹も減ったし早速いただくか」パカ
八幡(蓋を開けるとごくごく一般的な手作り弁当が目に入る。変わったことといえば玉子焼きが多めにあることだろうか)
八幡「い、いただきます……」
沙希「うん……そんなに緊張されるとこっちまでしてきちゃうんだけど……」
八幡(俺は玉子焼きを箸で一口サイズにし、口に放り込む)
八幡「美味い……マジで、美味しい……」
八幡(じっくり味わい、咀嚼して飲み込んだ俺の口から出た言葉はそれだった)
沙希「良かった……」
八幡(川崎は心底安堵したような表情になる。ちょっとプレッシャーかけすぎたか?)
八幡「いや、本当に、他に言葉が出なくて申し訳ないけど、マジで美味い」
八幡(おかげでめっちゃご飯が進む)ガツガツ
沙希「あー、なんだったらあたしの分の玉子焼きも食べていいよ」
八幡「本当か!? いや、でもそれはさすがに……」
沙希「そんなに美味しく食べてもらえるならその方があたしも嬉しいから遠慮しないで」スッ
八幡「じゃあ悪いけど貰うな」ヒョイ
沙希「ふふ、たくさん召し上がれ」
95 = 77 :
八幡「ふう……ごっそさん」
沙希「お粗末様でした。気持ちいいくらいの食べっぷりだったね」
八幡「俺の夢が叶った瞬間だしな」
沙希「夢ってそんな大袈裟な……だいたい『甘くない玉子焼きを作ってくれないか』なんて普通に言ってくれれば作ってくるのに。こんなお礼なんてノーカウントでいいよ」
八幡「いやいやそうは言うけどな、うちの家庭内では甘くない玉子焼き好きに人権はないんだ。俺にはもともとないけど」
沙希「ないんだ……」
八幡「昨日も言ったけど小町が甘いの大好きだからな、それが拍車をかけてるんだ。もしバレたらどんな迫害を受けるか……」
沙希「そんなオーバーな」
八幡「だから誰にも言うなよ。そのせいで家を追い出されたらお前んちで養ってもらうからな」
沙希「なっ……」////
八幡「甘くないのは俺の人生と玉子焼きだけでいい……ん、どうした?」
沙希「な、なんでもない! それより意外だね、あんたが甘くない方が好きだなんて」
八幡「ああ、俺も不思議に思ってる。何でか玉子焼きだけは甘くない方が好みなんだよな。食べる機会がほとんどないし、うちじゃ作れないけど」
沙希「うちはみんなどっちも好きみたいでね、気分によって変えてるよ」
八幡「いやー、本当に美味かった。味付けもしっかりしてたし」
沙希「あんまり手放しで誉められるとくすぐったいからその辺にしてほしいんだけど……なんなら毎日作って来ようか?」
八幡「マジで!? あーでも、毎日だと有り難みがなくなっちゃうかな……くそっ、どうするか?」
沙希「そんな真剣に悩まなくても……じゃああたしの気分次第ってことにするよ。甘いのも嫌いじゃないんでしょ?」
八幡「ああ、じゃあそれでよろしく頼む」
96 = 77 :
八幡「さて、まだ昼休みあるな……ふぁ」
沙希「なんだか今日は随分眠そうだね、授業中にも寝そうになっては飛び起きてたし」
八幡「見てたのか……今日の授業は寝れないのばっかだったからな。くそ、由比ヶ浜のやつめ」
沙希「…………由比ヶ浜がどうかしたの?」
八幡「ああ、一昨日お前と遅くまでメールのやり取りしただろ。それを聞いた由比ヶ浜が自分もするって言ってきかなくて。あいつも変なところで負けず嫌いだからな」
沙希「そ、そう」
八幡「あふ……仕方ない、教室戻って席で寝とくかな」
沙希「ぼっちは教室にいると邪魔なんじゃなかったかい?」クス
八幡「しょうがねえだろ、このベンチじゃ背もたれ低くてよく寝れねえし」
沙希「…………ねえ、ここって人通りないの?」キョロキョロ
八幡「ん? ああ、メシを食うだけなら結構良スポットなんだけどどこへ行くにしてもここを通ると遠回りになるんだ。ここで食ってて人が通ったことなんて2、3回あったかどうか。昨日の場所は人もここより通るし由比ヶ浜も知ってるし、万一誰か邪魔者が来たら厄介だからな」
沙希(邪魔者って、あたしとの時間を大事にしてくれてるってことなのかな)ドキドキ
八幡(甘くない玉子焼き食べてるのバレてどこからか小町に伝わったら生きていけないからな。ちなみにここがベストでない理由はあっちと違って戸塚が昼休みに練習しているのを見れないからだ。それさえ満たせば最高の場所なのに!)
97 = 77 :
八幡「んで、それがどうかしたのか? 別に所有権を主張する気はないから川崎も使いたきゃ使っていいんだぞ」
沙希「いや、そういうわけじゃないさ」ススス
八幡(え? なんで少し距離を取るの? もしかして眠気が増したことによって俺の目の腐り具合がまたアップしたの?)
沙希「ほら、使っていいよ」ポンポン
八幡「…………」
八幡(あの、川崎さん、なぜ御自分の太ももを叩いてらっしゃるのでしょうか?)
八幡「え、えっと、その」
沙希「ああもう、じれったいね」グイッ
八幡「うわっ」ポスン
沙希「まったく、目の前で頭フラフラされてるほうが気になるっての。素直にこのまま少し寝ときなって」
八幡「あ、あの、これ、膝枕ってやつ、ですよね?」
沙希「か、彼氏彼女の関係ならこれくらいするでしょ、一応そういうことなんだし」
八幡「そ、それはそうなんだけど」
沙希「ほら、少しでも寝とかないと午後の授業がツラいよ?」ナデナデ
八幡「あ……」
八幡(お腹いっぱいで、柔らかい枕があって、頭撫でられて)
八幡(すげー心地良い……目蓋が重い……眠……)スゥ
沙希「比企谷……もう寝ちゃったの?」ナデナデ
八幡「zzz……」
沙希(こうして見るとやっぱり比企谷って顔立ちは整ってる方だよね)ナデナデ
沙希(目が腐ってどうこう言ってるけど……もし腐ってなかったら外見だけに惚れた女とかが寄ってきたのかなやっぱり)ナデナデ
沙希(あたしは見てくれだけに惚れられても嬉しくないけどね、ちゃんと中身も一緒に見て欲しい…………比企谷みたいに)ナデナデ
沙希(……比企谷が今の比企谷で良かった。比企谷にはあんまりモテてほしくない)ナデナデ
沙希(あたし、卑怯者だ……)ナデナデ
沙希(比企谷……)
???(…………)コソコソ
98 = 77 :
沙希「比企谷、そろそろ起きなよ」
八幡(そんな声とともに身体を揺すられ、俺は目を覚ます。そういや川崎に膝枕してもらってたんだったな)
八幡「ん、ああ……あ…………」
八幡(思わず言葉が出なかった。仰向けで見上げる形の俺とこちらを見下ろす形の川崎。その間にある女性の象徴)
八幡(え、あれ? こんな体勢で見るの初めてだけどひょっとして川崎ってめっちゃ巨乳なんじゃね?)
八幡(そうか、俺の頭に上着の裾が挟まって引っ張られて強調されてるのか)
沙希「どうかしたの? まだ微睡んでる?」
八幡「ああ、いや……心地良くて名残惜しいかなって」
八幡(誤魔化すためにとっさにそんなセリフが出たが、嘘ってわけじゃない)
沙希「そっか、じゃあギリギリまでこうしてていいよ」
八幡(あれ? いつもならこういうことを言うと恥ずかしがって色々言ってくるのに、多少顔を赤くしただけで流された。何か心境の変化でもあったか?)
八幡「そういや今何時だ? どれくらい寝てた?」
沙希「もうすぐ五限が終わるってとこだね」
八幡「そっか……って何だと!? 思いっきり授業サボっちまったじゃねえか!」
沙希「ああ、それなら大丈夫。さっき海老名からメール来てさ、五限は完全自習になったから教室にいなくても平気だってさ」
八幡「ああ、そうなのか……びっくりした」
沙希「それと比企谷によろしくって」
八幡「…………なんで俺の名前が出んの?」
沙希「自転車二人乗りしてんの見られたみたいでね、関係を聞かれたから想像に任せるって返したんだけど何となく察してるみたい。さすがにフリってのは思ってないだろうけど」
八幡「そうか……」
沙希「一応秘密にはしてくれてるみたいだけどね。それと『はや×はち』は諦めない、だってさ」
八幡(…………何も言うまい)
99 = 77 :
沙希「…………ねえ、比企谷」
八幡「なんだ?」
沙希「依頼のことなんだけど、さ」
八幡「ああ、彼氏役のことか」
沙希「うん、その……期間、変更してもいいかな?」
八幡「……どの程度?」
八幡(もうお役御免だったりするんだろうか……もしくはやっぱり俺が相手じゃ……)
沙希「あたしかあんた、どっちかが嫌になるまで」
八幡「!!?」
沙希「相手のことが嫌になったり、他に好きな人ができたり、そんなふうになるまで」
八幡「…………意味、わかってるのか?」
沙希「さあ? ただ煩わしいことをかわすのに彼氏役がいるってのは思いのほか便利なんだよ。もちろんあんただってあたしを彼女役として使っていい」
八幡「……俺でいいのか? 校内有数の嫌われ者なんだぜ。お前だって何を言われることか」
沙希「言いたいやつには言わせておけばいいよ。むしろそれであたしに関わらなくなる人が出るなら歓迎だし。どっちかといえばそんなのを理由にあんたが身を引いたりしないかの方が心配」
八幡「…………」
沙希「それにあたしだって離れていくような友達がいるわけじゃない。その辺はむしろ共感出来るでしょ?」
八幡「そりゃまあ……な」
100 = 77 :
沙希「で、この依頼は引き受けてくれるの?」
八幡「……俺に気を使ったりせず言いたいことをちゃんと言ってくれるなら考えないでもない」
沙希「それはむしろあんたの方でしょ。いつも他人に気を使って、自分を犠牲にして傷付いて、そんで雪ノ下や由比ヶ浜達にもっと自分を大事にしろって怒られるんだ」
八幡「いや、別に気を使ってるわけじゃ……」
沙希「いいんだよ」
八幡「え?」
沙希「比企谷がそうしたくてやってるなら、いくら傷付いてもあたしは止めないし怒りもしない。もちろん明らかに間違ったことをしたら叱ったりはするけど」
八幡「…………」
沙希「でももし、泣きそうなほどに傷付いて、立ち上がれない程に疲れたら、あたしのところに来てよ。いつだってあたしの膝で良ければ休ませてあげるから」
八幡(そう言って俺の顔を撫でる川崎の表情はとても優しいものだった)
八幡(俺はその手をそっと握り締め、川崎に返事をする)
八幡「じゃあ、これからもよろしくな、彼女役さん」
沙希「うん、これからもよろしく、彼氏役さん」
みんなの評価 : ★★
類似してるかもしれないスレッド
- 八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」2 (1001) - [96%] - 2015/8/10 16:00 ★★
- 八幡「…なぁ今これ落としたぜ」梓「え?ありがとうございます」 (169) - [44%] - 2013/10/23 9:15 ★★
- 八幡「アタシはぼっちよりもビッチになりたかったのよ!」 (251) - [42%] - 2014/12/9 6:45 ☆
- 八幡「川崎家に居候することになった」沙希「遠慮しないでいいから」 (982) - [41%] - 2015/11/16 13:15 ★★★
- モバP「なんだこれ…光線銃?」 ちひろ「なんでこっち向けるんですか」 (197) - [41%] - 2015/11/28 4:15 ☆
- 八幡「建てたフラグから全力で逃げる」雪乃「させないのだけれど」 (137) - [40%] - 2013/12/21 3:30 ★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について