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    元スレ八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」

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    みんなの評価 : ★★
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    1 :

    八幡「やめてください死んでしまいます」

    沙希「あんたが名前間違えるからでしょ」

    八幡「それより何か用じゃないのか?」

    沙希「そうだった、あんたにまた依頼があるんだけど」

    八幡「依頼なら雪ノ下に頼めよ」

    沙希「あんたにしか頼めない、個人的な頼みなの」

    八幡「めんどくせえ」

    沙希「答えは『はい』か『YES』なんなら『承知しました』でもいいよ」

    八幡「断る権利ねえじゃねえか」

    沙希「んじゃ付いて来て」

    八幡「なんなんだ一体」

    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1432441907

    2 = 1 :

    注釈

    以前似たようなタイトルで立て逃げされていたスレがあり、勝手に続きを書いていたら『乗っ取りは良くない』と注意されたので改めて立て直して投下することにしました
    なのでセリフなど少々いじってますが前半はほぼ同じような流れで進みます。前のを読んでいた方がいらっしゃったらすみません
    エロ展開は気が向いたらちょろっとだけ後半に

    よろしくお願いします

    5 = 1 :

    八幡「どこに向かってるのか知らねえけど依頼内容くらいは教えてくれても良いだろ?」

    沙希「そうだね。前もって言っておかないといけないか……そ、その、あたしの彼氏になって欲しいんだけど!」

    八幡「は? …………はああああ!?」

    沙希「か、勘違いしないで! フリだよフリ!」

    八幡「え? あ、ああ」

    沙希「実は最近ちょっとしつこく言い寄られてる相手がいてさ、その、断るのに『もう彼氏がいるから!』って言っちゃって……」

    八幡「ああ、お前外見いいもんな、可愛いっつーか綺麗系だけど。モテるのも大変だな」

    沙希「っ……また、あんたはそういう事を平然と……そ、それでしばらく彼氏のフリをしてほしいんだけど……」

    8 = 1 :

    八幡「なんで俺に依頼するんだよ? お前なら俺なんかより全然良い男に頼めるだろ」

    沙希「こんなこと頼める知り合いなんかいないよ」

    八幡「そういやお前もぼっちだったな……まあ困ってるみたいだし俺なんかでいいなら構わないが」

    沙希「ほ、ほんと!? もうキャンセルは効かないよ!?」

    八幡「有無を言わさず了承させようとしといて何を今更……」

    沙希「う……だってこんなにあっさり引き受けてくれるなんて思わなくて……じゃ、じゃあしばらくの間頼むよ」

    八幡「へいへい。んで、期間は?」

    沙希「とりあえず一週間くらいでいいかな」

    八幡「は? そんなもんでいいのか? いや、さっさと終わるに越したことはないが」

    沙希「相手はたぶんそこまで本気じゃないからね、無理だってわかったらすぐに対象が移るさ。以前他の女子に声をかけてるのも見たし」

    八幡「可愛いやつに手当たり次第声をかけてんのかそいつは……」

    沙希「か、かわっ……コホン、じゃあ早速あんたを見せに行くから」

    八幡「え、今からか?」

    沙希「『放課後に紹介する』って言ったからね。だからまあ……ちょっと強引だったのは謝る」

    八幡「いいさそのくらい。行こうぜ」

    9 :

    待ってたぜ!
    期待

    10 = 1 :

    八幡「……なんかすげえ悔しがってたなあいつ。『何でこんな野郎に!』みたいな顔をしてた。いや、気持ちは分かるが」

    沙希「そこはわかっちゃうんだ……」

    八幡「だって俺だぞ? どうやっても釣り合いが取れてねえよ。いや、俺なんかに釣り合う女がこの世に存在するかどうかも……」

    沙希「比企谷!」

    八幡「うわっ、な、何だよ?」

    沙希「あまり自分を卑下しないでよ。少なくともあたしはあんたの良いところをいっぱい知ってるし、釣り合いが取れてなくなんかない」

    八幡「お、おう」

    沙希「だから自分のことを『なんか』って言わないで。周りが何と言おうとあたしは比企谷を充分良い男だと思ってるから」

    八幡「そ、そうか……その、ありがとうな」

    沙希「う、うん」

    八幡(川崎は俺を励ましてくれてるだけ、だよなきっと……)

    沙希(あうう、勢いに任せてあたしは何てことを……)

    11 = 1 :

    八幡「……で、今後はどうするんだ? あのフられ野郎がお前に興味をなくすまでは依頼が続くんだろ」

    沙希「フられ野郎って……まあそうだね、しばらくはあいつの前でだけでもそれっぽく振る舞ってくれるとありがたいんだけど」

    八幡「それっぽくって、その、恋人同士みたく、ってことだよな?」

    沙希「う、うん、無理に、とは言わないけど」

    八幡「いや、一度引き受けたんだ、やるだけやってみるさ。でも期待はするなよ? 今までそういうことなんてゲームか妄想でしか経験ないんだからな」

    沙希「あたしだって経験ないよ。その、ゲームとかだと何をするの?」

    八幡「えーっと、一緒に登下校したりメシ食ったり、休日にデートしたり、かな。まあ友達がもっと仲良くなった、くらいの感覚でいいんじゃねえか? 俺友達いないけど」

    沙希「デ、デート…………でも休日にあいつと出くわすことはないだろうしそこまでは……というか普段もそこまで気にする必要はないのかな」

    八幡「でも慣れておかないといざ本番って時に戸惑うかもしれないぜ。ソースは文化祭の劇で予行演習に呼ばれなかった村人Aの俺」

    沙希「なんで役割与えられてるのに呼ばれないのさ……じゃ、じゃあ適当に頼むよ。悪かったね、部活あるのに呼び出しちゃって」

    八幡「いいさ、これも依頼の一環だ。雪ノ下だってちょっと遅刻したくらいでそこまで怒ったりしないだろ」

    沙希「そうか、前もってあっちにも言っておくべきだったね。ホントごめん、あたしの名前出しちゃっていいから」

    八幡「まあその辺は上手くやるさ。んじゃそろそろ行くわ」

    沙希「うん、あたしは図書室寄って帰るから。またね」

    12 :

    待ってた!

    13 :

    読んでる

    14 = 1 :

     ~奉仕部~

    八幡「うっす」ガラガラ

    結衣「ヒッキー遅いよ!」

    雪乃「遅れるならその連絡くらいするべきでしょう。遅刻谷くんはその程度の配慮もできないのかしら?」

    八幡「あー、悪かったな。ちょっと色々あってさ、依頼を引き受けていたんだ」

    結衣「え、依頼? ヒッキーに? ヒッキーが?」

    八幡「疑問符多過ぎだろ……まあ相談を受けたんだが女子のお前らには言いにくい内容だったからな、俺個人に依頼が来たわけだ」

    雪乃「そう、とすると色恋沙汰関係かしら? 確かにあなたなら他に漏れる心配は少ないものね」

    八幡「それは俺の口が固いって意味だよな? 言いふらす相手がいないって意味じゃないよな?」

    雪乃「そんなの決まってるじゃない」ニコッ

    八幡「いい笑顔で曖昧にしようとするな。いややっぱりいい、何も言うな」

    雪乃「あなたには言いふらす友達がいないものね」

    八幡「言うなっつっただろ! ……まあそんなわけだから依頼内容は一応秘密な」

    雪乃「まああなたならともかく依頼人のプライバシーをおいそれと侵害するわけにはいかないわね」

    八幡「おいこら俺ならともかくってどういうことだ……まあ難しい内容でもないしお前らの手を煩わすことはないから」

    結衣「うん。でも何かあったら言ってね?」

    八幡「ああ」

    15 = 1 :

    平塚「全員揃ってるか?」ガラガラ

    雪乃「平塚先生、ノックを」

    平塚「おお、すまんすまん。ところで今晩急遽近隣学校の若手教師の集まりが催されることになってな、私もそちらに行かなければならなくなった。面倒くさいが若手だからな! 私は若手だから仕方ないのだ! どんな出逢いがあるかもわからんし一度帰宅して気合いを入れた格好にしないといかん」

    結衣「先生……」

    八幡(早く誰か貰ってあげてください)

    平塚「そんなわけで今日は部活はもう終わりでいいぞ。鍵は私がここで預かろう」

    雪乃「ではお願いします」

    結衣「ゆきのん一緒に帰ろー。ヒッキーも昇降口まで行こ」

    雪乃「ええ」

    八幡「へいへい」

    16 :

    合コンって言えばいいのに……

    17 = 1 :

    結衣「でさー」

    雪乃「そうなのね」

    八幡(廊下で前を行く二人が楽しそうにお喋りをしている。あれ? 俺いらなくね?)

    八幡(一緒にいる意味あんのかよ、って思ったがそれは部室でも同じことでしたね)

    八幡(まあぼっちなんて慣れてるし別に……って、あそこに歩いてるのは川崎?)

    八幡(図書室への用事が終わったのか。まあいちいち声をかける必要も……げっ、グラウンドにいるのあのフられ野郎じゃねえか。しかも目が合っちまった!)

    八幡(ここで川崎に声をかけないのは恋人として不自然すぎる……雪ノ下達がいるが仕方ない、あとでワケを話すとして今は川崎だ)

    八幡「おーい川崎、一緒に帰ろうぜ!」

    結衣「えっ!?」

    雪乃「!?」

    川崎「比企谷? あ……」

    八幡(あいつに気付いたみたいだな)

    八幡「自転車取ってくるから校門で待っててくれよ」

    沙希「あ、いや、一緒に行くよ」

    八幡「そっか、よし行こうぜ。じゃあな雪ノ下、由比ヶ浜」

    雪乃「」

    結衣「」

    八幡(二人とも固まってやがる……ま、当然だろうな)

    18 = 1 :

    沙希「いいのかい、二人を置いて来ちゃって」

    八幡「あそこであいつらに構ってる方が不自然だろ」

    沙希「でも二人にはちゃんと説明してないんでしょ、勘違いされるんじゃない? その、あたしたちがそういう仲だって」

    八幡「まあ明日あたり適当に説明しとくさ、川崎が俺なんかとそういう……」

    沙希「だから! なんかって言うのは禁止!」

    八幡「お、おう」

    沙希「それと勘違いってのはあたしじゃなくてあんたのことなんだけど」

    八幡「ああ、どんな弱みを握ったんだとか罵倒される姿が目に浮かぶぜ」

    沙希「もう……わざと言ってないかい?」

    八幡「?」

    沙希「ま、いいや。説明するのはいいけど演技ってのは外に漏れないようにしてね。あいつの耳に入るとやっかいだし」

    八幡「ああ、その辺は言い含めておくさ。俺は言いふらす相手もいないが」

    19 :

    SSのサキサキは何でいつも変な姉御口調なんだろ

    20 = 1 :

    八幡「そういえば川崎も自転車通学じゃなかったか? さっき歩いて校門に向かってたけど」

    沙希「ああ、実はあたしの自転車壊れちゃってね。バイトでもして新しいのを買おうかと思ってるんだけどしばらくはバスか徒歩だよ」

    八幡「そうなのか……よっ、と。どうする? 今なら妹限定の後ろの席に乗せてやってもいいぞ?」

    沙希「シスコンめ……いや、いいよ。学校を出てちょっと先まで一緒にいれば大丈夫でしょ」

    八幡「そうか、なら……悪ぃ、やっぱり後ろに乗ってくれるか?」

    沙希「え?」

    八幡「校門のとこで雪ノ下たちが待ち構えてやがる。たぶん俺達に話を聞こうとしてるんだろうが……あそこじゃマズい。突っ切るから」

    沙希「わ、わかった……よいしょ、と」

    八幡「よし、ちゃんと掴まっとけよ」

    沙希「うん」ギュ

    八幡(う、柔らかいモノが背中に……平常心平常心)

    沙希(比企谷の背中……大きくてあったかいな)

    21 = 1 :

    八幡「じゃ、行くぞ」

    沙希「ん」

    八幡(漕ぎ出すと雪ノ下たちはこっちに気付いたようだが、構わずに突進だ)

    八幡「話は明日だ! じゃあな!」

    雪乃「比企谷くん!」

    結衣「ヒッキー!」

    沙希(あたしは眼中にないんだろうか? ……いやまあ当然といえば当然か、だって……)

    八幡「ふう、脱出成功だな。ついでだしこのままお前の家まで送ってってやるよ」

    沙希「いや、それはさすがに悪いよ。確かあんたんちからウチまではそんなに遠くないからあんたんちで降ろしてくれればいいって」

    八幡「遠慮しねえでもいいのに。ま、了解したよ。依頼主の言うことなら聞いときますかね」

    沙希「依頼主……」ズキン

    八幡「どうした?」

    沙希「何でもないよ、それより随分二人乗りに慣れてるみたいだね」

    八幡「ああ、小町をよく送り迎えしてるからな。いや、むしろ送り迎えさせてもらってる」

    沙希「なんでへりくだってんのさ……」

    八幡「あんな可愛い妹が後ろに乗ってくれるんだぞ、こっちからお願いするレベルだ」

    沙希「やれやれ、ホントにシスコンなんだから」

    八幡「千葉では普通だろ。悪いかよ」

    沙希「いや、いいんじゃない? 家族を大切に思うのは当然のことだし」

    八幡「……そ、そうか」

    八幡(いつもなら『キモい!』とか『気持ち悪い』とか『通報するわ』と言われて引かれるのに……あ、そういやこいつもブラコンだったな、気持ちは解るってことか)

    22 = 1 :

    沙希「でもさ」

    八幡「あん?」

    沙希「家族を思いやるのもいいけど……少しは自分のことも大事にしなよ」

    八幡「…………何のことだかわかんねえな」

    沙希「わざとにしろそうでないにしろその答えはズルいって理解してる?」

    八幡「……………」

    沙希「ま、あんたがそうしたくてやってるなら止めはしないけどさ、本当にイヤなことからは逃げたっていいんだよ?」

    八幡「ははは、むしろ逃げに逃げ回って今の俺があるんだぜ。労働から逃げたくて専業主夫希望の俺をなめんなよ」

    沙希「…………馬鹿」ギュッムニュッ

    八幡「かかか川崎さん!? その、そんなにくっつかれるとですね!」

    沙希「いいでしょ別に、減るもんじゃないし」ムニュムニュ

    八幡(減ってます! 俺の精神がゴリゴリ減ってますから! あとそういうセリフって男が言うものじゃないですかね!?)

    沙希「なんなら依頼料とでも思っときなって」ムニュムニュ

    八幡「ホントに止めて! 運転に集中できなくなるから!」

    沙希「ふふっ」

    23 = 1 :

    八幡「くそ、無駄に疲れた……もうちょいかかるのに」

    沙希「いい思いが出来たでしょ?」

    八幡「うるせえ」

    沙希(否定はしないんだ)クスクス

    沙希「ああ、言っとくけどこんなこと誰にもしたことないからね。比企谷だけだから」

    八幡「っ! ……そ、そうか」

    八幡(なにそのセリフ!? 勘違いしちゃうじゃないか!)

    沙希(ちょっと大胆だったかな……でも比企谷も嫌がってないし……)

    八幡「ああ、ウチが見えてきたぞ。どこで降ろす?」

    沙希「この道をそのまんま行くから家の前でいいよ」

    八幡「アイアイサー」

    沙希(もうこの時間も終わっちゃうのか……)

    八幡「到着、っと」キキッ

    沙希「ああ、ありがとう」ヒョイ

    八幡「んじゃまた明日な」

    沙希「うん、また明日」

    小町「残念ながらそれは叶わないのです! ババーン!」

    沙希「!?」

    八幡「突然出てきて何を言ってる。あと擬音を口で出すな」

    小町「沙希さん、こんにちは! いつも兄がお世話になってます!」

    沙希「あ、いや、むしろこっちが世話になってるくらいで」

    小町「女の子を家まで送らないなんて男としてゴミにも程があるよゴミいちゃん! 小町的にポイント低い!」

    24 = 1 :

    八幡「いや、ちゃんと送るかどうかは聞いたから。それで断られたなら仕方ないだろ」

    小町「そういう時はわざわざ聞かずに黙って実行すればいいの! さりげない優しさってやつだよ!」

    八幡「そんなのこそ逆に迷惑だろ。ソースは女子の運ぼうとしてるプリントを半分持ってやったら仕事を邪魔されたと先生に言いつけられた俺」

    小町 ・沙希「うわぁ……」

    八幡「そんなわけだから……「ひ、比企谷!」……あん?」

    沙希「や、やっぱり……その、送って行ってくれない、かな?」

    八幡「お、おう」

    八幡(なにその申し訳なさそうな表情での上目遣い。好きになっちゃうよ?)

    八幡「じゃ、じゃあちょっとカバンだけ置いてくるから待っててくれ」

    小町「あ、小町が預かっとくよ。それよりちゃんと送り届けないと夕飯抜きだからね」

    沙希「なんかごめんね」

    八幡「別に謝るようなことじゃないだろ、とりあえず乗れよ」

    小町「あ、ストップストップ。その前に沙希さん、メルアド教えてもらってもいいですか?」

    沙希「え、ああ、構わないけど……ほら、赤外線」ピロリン

    小町「はい、確かに受け取りました。あとで小町から連絡しますねー」

    25 = 1 :

    八幡「騒がしい妹で悪かったな」キコキコ

    沙希「そんなことないよ(おかげでこうしている時間が増えたし)

    八幡「そういえば俺達も連絡先交換してなかったな。あとで……その、するか?」

    沙希「そうね、しとかないとね。なんでそんなおそるおそる聞くのさ?」

    八幡「いや、だって女子と連絡先交換なんて断られるか宛先不明かばっかで……」

    沙希「由比ヶ浜や雪ノ下がいるじゃない」

    八幡「由比ヶ浜は向こうから言ってきたし雪ノ下は未だに知らんぞ」

    沙希「あんだけ一緒にいて知らないんだ……じゃああたしが第一号かな?」

    八幡「おう、光栄に思え」

    沙希「何それ。逆じゃない?」フフッ

    八幡「…………」キコキコ

    沙希「…………」キュ

    八幡「…………」キコキコ

    沙希「…………」ギューッ

    八幡(なんとなく沈黙してしまったな……でも)

    沙希(気まずくもないし苦痛でもない、むしろ)

    八幡 ・沙希(くすぐったい感じだけど居心地が良い……)

    八幡(もうすぐ目的地に着きそうだけど……言ってみようか)

    八幡(ええい! 失敗したって黒歴史が一個増えるだけだ! それにこいつには言いふらすような友達もいない! ぼっちでありがとう川崎!)

    八幡「なあ川崎」

    沙希「な、何?」

    八幡「知っての通り俺は奉仕部でさ、あんまり身体を動かさないんだ」

    沙希「そうだね」

    八幡「休日もだいたい家でゴロゴロしてるし」

    沙希「そんな感じっぽいよねあんたは」

    八幡「たまには少し運動をしないとなってふと思ってさ」

    沙希「? うん」

    八幡「こ、この自転車漕ぐの、もうちょい続けたいから、す、少し遠回りしても、いいか?」

    沙希「!! 夕飯まで時間がまだあるし、か、構わないよ」

    八幡「お、おう、ありがとな」

    26 = 1 :

    八幡(あれからしばらく自転車でブラブラ徘徊したあと川崎を家まで送り届けたわけだが)

    八幡(別れ際の川崎の顔が赤かったのは夕日のせいだな)

    八幡(だからもし俺の顔も赤かったとしても夕日が悪い)

    八幡(やはりぼっちは日の当たるところで生きてはいけないのである)

    27 = 1 :

    八幡「たでーまー」

    小町「お帰りなさいお兄ちゃん、遅かったね。まさかデートしたり沙希さんの家にお邪魔したり!」

    八幡「なんで疑問符じゃなくて感嘆符で決め付けてんだよ……お邪魔とかねーから。自転車で家まで送ってってすぐに引き上げたから」

    八幡(嘘は言ってない)

    小町「はあ……ま、そうだよね。ヘタレなお兄ちゃんから何か言ったり誘ったりするわけないか」

    八幡「………………」プイッ

    小町「え、なにその反応。まさか、え……?」

    八幡「そ、それより小町、川崎の連絡先教えてくれ。交換しようと思ったらカバンの中にスマホ入れっぱなしだったんだ」

    小町「うわあ、話すり替えるの下手すぎ……でもそっか、だから結衣さんからメール来たんだ」

    八幡「は? 由比ヶ浜から?」

    小町「うん、聞きたいことがあるのにお兄ちゃんが電話に出ないって」

    八幡「マジかよめんどくせえな、明日話すっつったのに」

    小町「あと沙希さんと一緒に帰ってたけど何か知らないかって」

    28 = 1 :

    八幡「あー……実は川崎と付き合うフリをすることになってな」

    小町「ええっ!? お兄ちゃんと沙希さんが……ってフリ?」

    八幡「ああ、一緒に帰ったのもそれ関係だ。しばらくの間だけどな。バレたら色々面倒だから秘密にしといてくれ」

    小町「付き合ってるのを? それともフリってのを?」

    八幡「どっちもだよ。特にフリって方をな。まあぼっち同士が付き合ったところでそんなに気にするやつもいないだろうが一応な。由比ヶ浜達には明日説明するつもりだ」

    小町「うむむ、これは修羅場の予感」

    八幡「だよなぁ……どんな罵詈雑言が飛んでくるかわかったもんじゃないぜ」

    小町「……お兄ちゃんもしかしてわざと言ってる?」

    八幡「何のことだよ? 川崎も似たようなこと言ってたけど」

    小町「小町はなーんにも知りませーん。それよりお兄ちゃんのスマホに沙希さんのアドレス添付して送っといたから。フリであるにしろ彼氏役なんだったら何かしらメールを出すこと、わかった?」

    八幡「へいへい、まあ打ち合わせとかもあるしな。夕飯出来たら呼んでくれ」

    小町「ラジャー。あと三十分くらいだから」

    八幡「おう」

    30 = 1 :

    八幡「…………」

    八幡(やべ、すっげえ眠い)

    八幡(昨晩由比ヶ浜に一報入れたあと、川崎と綿密な打ち合わせをメールでやり取りした。それはいい)

    八幡(ただぼっち同士、メールの止めどころというのがわからなくて本来必要のない話題や世間話に花を咲かせてしまった)

    八幡(慣れないことをしている上に深夜のテンションも加わって俺のいくつかの黒歴史まで暴露してしまったのは後悔している)

    八幡(ただこのやり取りで俺の事をもっと川崎に知ってもらえただろうし、俺も知らなかった川崎の面を知ったのは嬉しいと思った)

    八幡(中には不躾な質問もあっただろうに、少なくとも文章上では不快感を表さずに答えてくれた)

    八幡(フリ、なんだよなあ……)

    八幡(なんかもやもやするな)

    八幡「起きるか……」

    31 = 1 :

    小町「あ、おはようお兄ちゃ……うわっ、どしたのいつも以上に目が腐ってるよ! 二割増くらい!」

    八幡「たかだか二割くらいでそこまで驚くのかよ元々の腐りっぷりが尋常じゃねえな俺の目」

    小町「でも本当に大丈夫? 心なしか元気もなさそうだけど」

    八幡「寝不足なだけだから気にすんな、体調とかは問題ない」

    小町「それならいいけど……今はお兄ちゃん一人だけの身体じゃないんだからね。お兄ちゃんに代わって沙希さんのことも考えてあげるあたり小町的にポイント高い!」

    八幡「はいはい高い高い、良く出来た妹で幸せです、愛してるぜ小町…………あっ!」

    32 = 1 :





    『愛してるぜ、川崎!』



    33 = 1 :

    八幡「あ、あ、ああ、あああああ」

    小町「ど、どしたのお兄ちゃん!? とうとう頭まで腐っちゃったの?」

    八幡(文化祭のあの時、お、俺は川崎に!)

    八幡(し、しかしそれ以降のあいつの反応は別に……いや、でも)

    八幡(本人に確認してみたいが藪蛇になりかねん……)

    八幡(いや落ち着け比企谷八幡。クールになれ)

    八幡(今は悩んでる場合じゃない、やるべき事を考えろ!)

    八幡(とりあえず今やるべき事は……)

    八幡「ちょっと部屋で枕に頭埋めて足をバタバタさせてくる」

    小町「お兄ちゃん!? お兄ちゃーん!?」

    34 :

    素晴らしい、川崎SSは増えるべき

    35 :

    >小町「ど、どしたのお兄ちゃん!? とうとう頭まで腐っちゃったの?」

    ひでえwwwwww
    元スレ気になるけど我慢してここで見よう

    36 = 1 :

    八幡(一通り奇行を終え、数々の黒歴史を持つ俺は持ち前の精神力でさっさと立ち直り、登校の準備をする)

    八幡(ただ小町には憐れみの視線を向けられて気を使われ、送迎を遠慮されてしまった)

    八幡(むしろこっちがしたいくらいなのに! 妹を後ろに乗せて自転車で走りたい!)

    八幡(もちろんそんなことを口にしたら憐れみの視線がゴミを見る目に変わるだろうが)

    八幡(そんなふうにぼんやり考えながら登校してたら遅刻ギリギリになってしまい、なんとか担任より早く教室に飛び込めた)

    八幡(そしてまず目に付いたのがこっちを振り向いた川崎沙希さんである)

    八幡(表情を変えずに、ちょっとだけ視線を逸らして手を軽く上げて挨拶っぽいのをしてきた)

    八幡(俺も少しだけ手を振り、声を出さずに口の動きだけで挨拶をする)

    八幡(いや、こんくらい友達なら誰だってやることだろ。俺友達いないけど)

    八幡(だから今にも唸り声を上げそうな表情でこちらを睨むのをやめてくれませんかね由比ヶ浜さん。部活の時間に説明するって昨日言ったじゃないですか)

    39 :

    八幡(さて、幸いにもあのフられ野郎は別クラスだから教室では特に気にすることもない)

    八幡(カップルだからって常日頃からイチャイチャベタベタくっついてるわけじゃないしな。いや、そんなカップルもいるけど。何なの? 病気なの? 離れると死んじゃうの?)

    八幡(少なくとも俺には考えられん……さて、昼休みだし購買寄っていつものベストプレイスに向かうか)

    沙希「ひ、比企谷」

    八幡「なんだ、かわ……川島?」

    沙希「川崎なんだけど、ぶつよ」

    八幡「すまんすまん、どうした廊下で待ち伏せなんかして?」

    八幡(よく考えたら今日初めてのこいつとの会話か。実にカップルらしくねえな、いや、フリなんだけど)

    沙希「い、今から昼ご飯でしょ、一緒に食べない?」

    八幡「え、あ、お、おう」

    八幡(そうだな、昼を一緒するくらいはしとかないと不自然か)

    八幡「じゃあちょっと購買寄ってくるから待っててくれ」

    沙希「いや、大丈夫、その……あんたの分も作ってきたから」スッ

    八幡「!! マ、マジで?」

    沙希「う、うん、でもちょっと恥ずかしいからさ、できれば人目につかないとこで……」

    八幡「わかった、俺のベストプレイスを紹介するぜ」

    40 = 39 :

    沙希「いつもここで食べてんの?」

    八幡「おう、雨じゃない限りな。人もあんま来ないし風も吹かないし」

    沙希「そう……じゃあ、あ、あり合わせで作ったもので悪いんだけど、はい」

    八幡「(パカ)…………いや、絶対嘘だろそれ。なんで俺の好物ばっかで構成されてんの? 確かに昨日好きなものは少し話したけど、全部話した覚えはないぞ」

    沙希「う……その、小町に聞いたんだよ」

    八幡「え? てか小町って……」

    沙希「昨日小町ともやり取りしててさ、今日は比企谷は弁当じゃないからって聞いて……あと自分のことは『小町って呼んで』って言われた」

    八幡「あー、あいつ稀に『姉も持ってみたかった』とか言うからな、川崎みたいなのがいると嬉しいんじゃねえの? 小町の姉になってくれね?」

    八幡(雪ノ下や由比ヶ浜は姉って感じはしねえしな)

    沙希「え……そ、それって」

    八幡「ん……あっ! い、いや、今のは言葉の綾っつーか、その、変な意味じゃなくてだな!」

    沙希「わ、わかってるから!」

    八幡「そ、それより弁当食おうぜ! 美味そうでもう我慢できそうにない!」

    沙希「うん、め、召し上がれ!」

    41 = 39 :

    八幡「ふう、御馳走様でした」

    沙希「お粗末様でした」

    八幡(緊張と恥ずかしさのあまり味がよくわからなかった)

    八幡(なんてことは一切なく、普通に、いや、すげえ美味かった)

    八幡(雪ノ下みたいに一人暮らしをして家事スキルが高いのとは違い、たくさんの家族の長女だからこそ家事スキルが高い)

    八幡(特に家族思いの川崎なら苦に感じることもなく嬉々として日々研鑽を積むことだろう。面倒見のいいオカンといったところか)

    八幡(俺を養ってくんねえかなあ……主婦業スキルですら負けているが。でもどっちにしても)

    八幡「いい嫁になりそうだな」

    沙希「えっ!?」

    八幡「えっ」

    八幡(あれ?)

    八幡「い、今、俺、何か言ってたか?」

    沙希「ううん! 何も! 何も言ってない! もし何か言っててもあたしには聞こえなかった!」

    八幡「そ、そうか、ならいいんだ」

    八幡(嘘だ、その反応は絶対聞かれてた。てか俺がおかしくね? 寝不足のせい?)

    42 = 39 :

    沙希「昼休みはもう少しあるけどいつも何してんの?」

    八幡「だいたいここでギリギリまでボーっとしてる。ぼっちが一人で教室にいたって邪魔なだけだからな」

    沙希「あんたの場合邪魔どころか認識すらされないんじゃないの?」クス

    八幡「うるせえ、同じクラスなのに『え、誰コイツ?』みたいな反応をされる辛さがわかるのか? わからないだろ? だから俺も同じことを周りにやり返す」

    沙希「それは周りに興味がないから覚えないだけでしょ。由比ヶ浜のことも初めて奉仕部に来たときに存在を知ったってのに」

    八幡「なんでそれ知ってんだよ俺のプライバシーどこ行ったの? いや、すまん、昨晩俺が言ったんだったわ……深夜のテンションは恐ろしい」

    沙希「でもあたしは楽しかったよ。ちょっと寝不足にはなっちゃったけど。その、時々はああいう相手してくれると嬉しい……かな?」

    八幡「なんで疑問文なんだよ。まあ俺なんかで……じゃない、俺で良かったら、その、また、な」

    沙希「うん」ニコッ

    八幡「!!」ドキッ

    八幡(なんだよ今の笑顔、反則だろ!)

    八幡(普段つり上がり気味の目尻があんなにふわっと柔らかく……ちくしょう)

    八幡「ああ、弁当、本当にありがとな。箱は洗って明日返すよ」

    沙希「何言ってんの、それじゃ明日作って来れないじゃない」

    八幡「え、明日も作ってきてくれるのか?」

    沙希「少なくとも依頼中はね。どうせ自分の分は作るからそんな手間じゃないし」

    八幡「マジか、ありがとう。本当に美味かったから遠慮なく頂戴するぜ」

    沙希「そこまで褒められると明日からのがプレッシャーかかるんだけど……」

    八幡「いやいや自信持っていいって。そうなると依頼が終わる時が残念なくらいだ」

    沙希「!! そ、そう……」

    八幡「はあー、これで午後の授業が数学と体育でなけりゃな」

    沙希「このままここでサボっちゃう?」

    八幡「ばっか、ぼっちは目立たないことが重要なんだよ。移動教室や体育ならともかく数学の時間はさすがにバレるだろ、俺の経験上」

    沙希「体育とかでもバレない方が不思議なんだけど……」

    43 = 39 :

    八幡(そんなたわいもない話をしてると予鈴が鳴り、俺達は教室に向かう)

    八幡(万が一にでも好奇の目で見られないように入るタイミングをずらす)

    八幡(これも目立たない為の配慮だったのだが、その気遣いは由比ヶ浜のせいで無駄になった)

    結衣「どこ行ってたのヒッキー!? ゆきのんと一緒に聞きたいことがあったのに!」

    八幡「どうどう、落ち着け由比ヶ浜。話なら放課後にするって昨晩メールしただろ」

    結衣「う……そうだけど、でも、待ちきれなくて」

    八幡「何、俺の話が気になるの? お前そんなに俺のこと好きなの?」

    結衣「好っ……! ヒッキーの馬鹿! キモい! 死んじゃえ!」

    八幡「おいやめろ、大声で俺の評判を貶めるな。もうすでに地の底まで落ちてるのにさらに穴を掘らなきゃいけなくなるだろ」

    44 = 39 :

    沙希「あのさ、入口で留まれると邪魔なんだけど」

    結衣「あ、サキサキ、ごめん」

    沙希「サキサキ言うなって……」

    結衣「えー、可愛いし言いやすいじゃん」

    沙希「そんなこと思ってるのはあんたと海老名だけだよ」

    八幡「そうだぞ、こいつには川原沙希っていう立派な名前がだな」

    沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」

    八幡「ごめんなさい」

    結衣「むー……え、えっとその、二人ってさ……」

    担任「川崎! 川崎はいるか!?」

    沙希「!? はい!」

    八幡(なんだ? 血相変えて駆け寄ってくるなんてただ事じゃないぞ)

    担任「今お前の妹さんが通ってる保育園から連絡があった! 妹さんが怪我をして病院に運ばれたらしい」

    沙希「えっ!?」

    八幡「!!」

    担任「詳しくはわからないが御両親とは連絡が取れなかったらしい。そこのバス停のそばにタクシーがよく留まってるからそれでこのメモの病院に向かうんだ」

    沙希「は、はい! 今日は早退します!」ダッ

    結衣「サキサキ……大丈夫かなぁ…………あれ? ヒッキー?」キョロキョロ

    46 = 39 :

    沙希(っ……なんでっ! なんで今日に限ってタクシーがいないの!?)

    沙希(どうする……バスを乗り継いで行く? それとも大通りに出てタクシーを上手く拾う?)

    八幡「川崎!!」キキッ

    沙希「!! 比企谷!? なんで! それに自転車……」

    八幡「後ろ乗れ! その病院なら通ったことあるし裏道知ってる! 上手く行きゃバスやタクシーより早い!」

    沙希「で、でもあんたは授業が……」

    八幡「数学と体育はサボることにしてんだ! 早く!」

    沙希「っ! ごめん! ありがと!」

    八幡「よし! 安全運転しつつ飛ばすぞ! しっかり掴まってろ!

    沙希「お願い!」

    沙希(京華……無事でいて……)

    49 :

    「期待」か「支援」しかしゃべれないやつ大杉ワロタ

    期待

    50 = 39 :

    「えっ! 指先を紙の端でちょっと切っただけ!?」

    八幡(病院の入口で川崎を下ろして先に向かわせ、駐輪場に自転車を置いてから後を追った俺の耳に入ったのはそんなセリフだった)

    八幡(いや、確認するまでもなく川崎なんだが。そちらを見ると川崎と初老の医者と保育士っぽい若い男性が話をしていた)

    八幡(俺がそちらに駆け寄ると同時に気が抜けたのか川崎がフラッと崩れ落ちそうになる)

    八幡「おっと、大丈夫か川崎?」ガシッ

    沙希「あ……比企谷、ごめん、その」

    八幡「いいから。とりあえず座れ、な?」

    沙希「あ、うん」

    八幡(川崎を待合室の椅子に座らせ、医者と保育士の方に顔を向ける。あの、保育士さん、なんでそんなにビクッとしたんですか? 俺の顔に何か付いてますか? あ、付いてましたね腐った目が二つ)


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