元スレ鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」
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アイギス「湊さん!!」
有里「や」
アイギス「どうして、湊さんがここに?というか、何故生きて……どういうことですか?」
有里「原因は僕にもわからない。だけど、どうやら今生きてここにいる事は確かみたいだ」
アイギス「……偽者では?」
有里「僕は僕だ。言っただろ?」
アイギス「うー……うーっ……!」
有里「ああまた煙が……」
風花「ああ、駄目よアイギス、壊れちゃったらここじゃ直せないんだから」
アイギス「でもっ!湊さんは、あの時いなくなったはずで、でもまたここにいて、私が会いたくて、会えなかった人は、会えないから、諦めてっ……!」
アイギス「私は!こんなに変わりました。こんなに、人間らしくなりましたって、言いたくてっ……でも、応えてくれる人はっ!」
風花「アイギス……」
アイギス「あなたは私を狂わせる。おかしくなってしまうんです。あなたがいると、あなたがいないと、私は」
有里「アイギス、もういい」
アイギス「でも、やっぱり、無理、嫌、もうどこにも、行かないで、そばにいて、声を聞いて、声を聞かせて、私の、あなたの……!」
有里「僕は、ここにいる。君が今見ている場所に。手を伸ばせば、届く場所に」
アイギス「湊さ……ん……」
有里「ごめんね。これから一杯聞いてあげるから。許して欲しい」
アイギス「……嫌です」
有里「……参ったな」
アイギス「湊さんとの約束は信用できません。湊さんが私の声を聞いて、声を聞かせて、触れて、触れられて、そうやって、ずっと過ごして……」
アイギス「その時、許してあげます。それまでは駄目です」
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有里「努力はしよう。とにかく、久しぶり」
アイギス「はい、お久しぶりです。……湊さん」
風花「ほら、アイギス。煙煙。落ち着いて、ね?」
アイギス「ありがとうございます。……ふぅ。でも、いい所ですね、八十稲羽」
有里「そうだね……良い人ばかりだよ」
風花「あ、そういえば。鳴上君のお帰り集会やるぞーって言ってたんですよね」
有里「うん。そのために二人を呼びに来たんだ」
アイギス「なんですか?それは」
有里「いつも集まってる場所があるんだけど、そこに友達が集まっていろいろするんだって」
アイギス「サプライズ!ですか?」
有里「いや、本人なんとなくわかってたみたいだけど」
アイギス「そうですか……残念です」
風花「じゃ、いこっか。アイギスも大丈夫?」
アイギス「はい。案内をお願いします」
【ジュネス内フードコート】
陽介「よーう有里。はやかっ……そこなお姉様は何者ですか?」
アイギス「はじめまして。私はアイギスと申します。鳴上さんと一緒にしばらくこちらに滞在しますので、よろしくお願いします」
陽介「こ、こちらこそ!俺っ花村陽介って言います!有里には仲良くしてもらってます!」
有里「皆はまだ?」
陽介「あん?おー、まだみたいだな」
有里「天城さんは今日旅館が忙しいみたい。参加できないって言ってたよ」
陽介「あー、まぁな。連休は仕方ねーよ。むしろいいんじゃねえか?繁盛してるってこったろ」
有里「そうだね。……あれ、アイギスは?」
陽介「山岸さんもいねーぞ」
有里「おかしいな……さっきまでここに……」
アイギス「これは……」
風花「あ、おいしそー」
陽介「女ってこういうとこで買い物モードに入んのはえーよな」
有里「見習いたいフットワークの軽さだね」
陽介「……とりあえず待つか。揃うの」
有里「そうだね」
>…………。
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【堂島宅】
鳴上「元気だったか菜々子」
菜々子「元気だったよ!」
鳴上「そうか。良かった……心配してたんだ」
菜々子「お兄ちゃんいなくてちょっと寂しかったけど、湊お兄ちゃんがいたから平気だったの」
鳴上「有里は良く遊んでくれるのか?」
菜々子「菜々子の代わりにお料理もお掃除もしてくれるんだよ」
鳴上「へぇ、意外だな」
菜々子「いろんなお話してくれるし、やさしいし、本当にお兄ちゃんみたいだった」
鳴上「そっか……お礼言わないとな」
菜々子「お兄ちゃん、今日からいつまでいるの?」
鳴上「日曜日までいるけど、日曜日の昼には帰らないといけないかな」
菜々子「そうなんだ……次は?次はいつ来れる?」
鳴上「んー、次はまたちょっと先かな。夏休みになったらもっと長い間いられるんだけど」
菜々子「そっかー……」
鳴上「そんな顔するな。寂しかったら電話してきてもいいから」
菜々子「ほんと?いいの?」
鳴上「菜々子からの電話ならいつでもいいぞ」
菜々子「やった!じゃあ今度電話するね!」
>ん?
>……メールだ。
『差出人:里中
件名:おーい
本文:みんな揃ってるよー!』
鳴上「菜々子、お兄ちゃんちょっと出かけないといけないみたいだ」
菜々子「……行っちゃうの?」
鳴上「ごめんな、帰ってきたらまたお話しよう」
菜々子「うん……」
堂島「こらこら菜々子。悠を友達にも貸してやれ」
菜々子「わかった、お留守番しとくから……ちゃんと帰ってきてね」
鳴上「ああ。ちゃんと帰ってくる。約束な」
菜々子「うん。じゃあいってらっしゃい!」
>ジュネスへ行こう。
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有里「……っと、自己紹介はこんなものかな」
アイギス「皆さんよろしくお願いします」
りせ「あのー、アイギスさん?」
アイギス「はい、なんでしょう?」
りせ「えっと……その耳って、どうなってるんですか?」
アイギス「どうとは?」
有里「あ、言ってなかったね。アイギスは……」
風花「機械なんです。わかりやすく言えばアンドロイドとかロボットになると思います」
陽介「えぇ!?あんな美人さんが……ロボット!」
千枝「うっそ……凄い時代になったもんだね……」
直斗「僕は以前同式の物を見た事があるのですが……やはり、信じられない技術ですよね」
完二「う、嘘だ!俺ぁ騙されねえぞ!田舎モンだからってバカにしてんだろ!」
アイギス「そんなつもりは無いし、本当なんです……」
陽介「完二ィ!アイギスさん辛そうだろ!謝れ!」
完二「お、俺っスか!?あ、あの、なんか……すんませんっした……」
アイギス「いいんです。わかっていただけたなら……」
陽介「天使だぜおい……機械仕掛けの天使が舞い降りたぜ……」
有里「あとは鳴上君を待つだけか。連絡してみた?」
千枝「あ、私がやっといたよー。多分そろそろ来るんじゃないかな?」
陽介「って言ってたら来たんじゃねえか?」
りせ「せんぱーい!ひさしぶりー!」
鳴上「皆来てるな。悪い、遅くなって」
陽介「菜々子ちゃんと遊んでたんだろ?ならしゃーねーって。俺らよりずっと待ってただろうからな」
りせ「私だって待ってたもん!」
千枝「……私だって、会いたかったよ」
直斗「ぼ、僕も……ですね」
完二「そんなん言ったら俺だって会いたかったっつーの!お久しぶりっス!」
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鳴上「ああ。久しぶりだな。皆元気そうで良かったよ」
陽介「俺はこの前会ったけどな」
アイギス「鳴上さん、湊さんがこちらにいる事知ってたらしいですね」
鳴上「あ、はい。説明するタイミングが無くて」
アイギス「……まぁ、いいです」
風花「あと天城さんがいたらよかったんだけどね……」
直斗「それは仕方ありませんよ……」
鳴上「なんか、山岸さんが知らない間に随分なじんでますね」
陽介「いいお姉様だぜ山岸さん。っと、そうだお姉様で思い出したんだけどよ、お前この前の桐条さんとも同じ寮なんだろ?」
鳴上「ああ、そうだけど」
陽介「で、機械仕掛けの天使アイギスさんと?癒し系山岸さんとも?」
鳴上「そうだな」
陽介「しんっじらんねぇ……俺が一切女っ気の無い生活してる間にそんな事になってるヤツがいるってのが……」
りせ「私だって負けてないモン!アイドルだよアイドル!」
陽介「そ、そうだよな!りせちーは俺寄りだよな!」
りせ「え?まぁ先輩は……普通かな」
陽介「普通!?」
有里「僕も昔はそんな寮で住んでたんだよ」
陽介「あーあー聞きたくねぇ!」
鳴上「陽介だって、里中や天城と仲良くやってたんじゃないのか」
完二「そうっスよ。別に女っ気無いってわけでもねーでしょ」
陽介「天城はともかく、里中はなぁ……」
千枝「あ、何?蹴られたいって?」
陽介「だって……なぁ?」
千枝「そりゃねぇ、こっちだってアイドルのりせちゃんや雪子に比べられたらたまんないっつーのよ!」
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有里「直斗を忘れてる」
直斗「いっ、いえ、女性的な魅力という話では僕は……」
鳴上「直斗は可愛いぞ」
有里「直斗は可愛いよね」
完二「先輩方……ついてくっス!俺、二人についていくっス!」
千枝「私にはフォロー無しなのね……」
風花「そんな事ないよ。里中さん、可愛いと思う」
アイギス「私も、とても可愛らしい方だと思いますが」
千枝「あはは、ありがとうございます……」
有里「さて、けど天城さんがいないのはやっぱり寂しいね」
鳴上「俺達で旅館行ってもいいけど……忙しいなら迷惑だな」
千枝「……あ、電話。って雪子からだ。ちょっと待っててね」
>……。
千枝「もしもし?雪子?どうかしたの?……うん、うん。ああ、うん。えーと、今みんないるよ。うん、じゃあ希望者だけってことで。うん。わかった!」
陽介「何てよ?」
千枝「今日団体さんが宴会で入るから人手が足りないんだって。で、まあ今日手伝ってもいいよって人は良ければ手伝いに来て欲しいって」
鳴上「大変だな。よし、なら行こう」
有里「なら、僕も手伝おうか」
りせ「二人行くなら私も手伝う!」
完二「力仕事もあるんスかね。だったら俺も役立てるかもな」
直斗「裏方ならやらせてもらいます」
陽介「っし、んじゃ天城んとこ行くか!」
>雪子の手伝いに天城屋旅館へ行こう。
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【天城屋旅館】
雪子「千枝ごめんね、皆にも悪いんだけど……って、皆来てくれたんだね」
鳴上「忙しいんだろ?」
雪子「うん……ああ、でも山岸さんとアイギスさんにまで手伝いさせられないです!お客様なのに!」
風花「そんなの気にしないで……って訳にもいかないんだろうけど。出来る事だけでいいからやらせてもらえない?」
アイギス「何でもやります!」
有里「アイギスは座ってて」
鳴上「アイギスさんは座っててください」
アイギス「……でしたら、お部屋で待ってます」
有里「……鳴上君もわかったんだね」
鳴上「ええ。あの人は気合いを入れれば入れる程駄目になるタイプです」
完二「力仕事なら任せてくださいや!」
直斗「あまりお客さんの前に出る仕事は得意では無いですが……」
陽介「困った時はお互い様ってな!」
雪子「……うん、わかった。ありがとうね。えーと、それじゃ完二君は奥で荷物運んで、千枝は着替えて。それから山岸さんは……」
有里「キビキビしきるね」
鳴上「見習いでも本職だからな」
雪子「有里君と鳴上君はお風呂の掃除お願い。夕方には準備済ませないといけないから、急いで!」
>雪子がパンパンと手拍子を打つと同時に、それぞれは仕事についた……。
有里「温泉なんだね」
鳴上「ああ。広いぞ」
有里「温泉か……僕、実は温泉好きなんだよ」
鳴上「俺もだ。営業終わったら天城に頼んでみようか」
有里「いいね。混浴だと尚いいんだけど」
鳴上「ロマンだな」
有里「ロマンだね」
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>……。
鳴上「なぁ、有里」
有里「どうかした?鳴上君」
鳴上「ああ、それもなんだが。君付けはやめてくれないか。歳で言ったら俺の方が敬語使う側なわけだし」
有里「じゃあ、悠って呼んでもいいかな」
鳴上「ああ。俺も湊って呼んでいいか?」
有里「どうぞ。で、何?」
鳴上「湊、俺が帰る時に一緒に来ないか?」
有里「……寮に、戻れってこと?」
鳴上「別にずっといろってわけじゃない。ただ、あっちの仲間にも顔見せするべきだと思うんだ」
有里「……」
鳴上「今のところ、桐条さんと山岸さん、アイギスさんの三人か。全員、お前に会いたかったって言っただろ」
有里「そうだね」
鳴上「お前が何を考えているかは知らない。だけど、会いたいって言ってる人がいるんだ。会ってやってもいいんじゃないか」
有里「でも、僕は過去の遺物だ。君は勿論、寮の皆が前に進むことの妨げになるんじゃないかって思うんだけど」
鳴上「それでも、だ。だってお前は今ここにいる。もうどこにもいない存在じゃないんだ」
有里「……実を言うと、そろそろ会いに行かなきゃなって思ってた」
鳴上「それじゃ、いいのか?」
有里「数日だけ、ね。今僕には新しく仲間が出来た。君が向こうに居続けるなら、僕がこちらに残る必要があるように思う」
鳴上「それはどうしてだ」
有里「二つのチームが繋がるためさ。繋がっていれば協力できる。今回の事件、そうすることでしか終わらせられない……そんな気がするんだ」
鳴上「俺は、向こうで学校があるからな……じゃあ、数日ならいいんだな」
有里「うん。流石に逃げてばかりもいられないからね」
鳴上「ありがとう。俺は約束を守れそうだ」
有里「何の事かわからないけれど、それならよかった。君を嘘吐きにせずに済んだ」
鳴上「そういえば、湊の約束は信用できないってなんで言われてるんだ?」
有里「……いろいろ、あったんだよ。リバースしたりね」
鳴上「そ、そうか……大変だな」
有里「うん……」
>風呂掃除を終わらせた。
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【天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】
風花「お疲れ様。あとは本職に任せちゃっていいみたい」
アイギス「……結局、何のお手伝いも……」
完二「思ってたよりきついっスね……いやすげえわ」
陽介「なー。体力持たねえって」
有里「僕らは比較的楽だったね」
鳴上「ああ。ただの掃除だったしな」
陽介「女性陣は今何やってんのかね」
完二「あー、さっき見た感じ料理運んだり会場セッティングしたりしてるみたいっスよ」
風花「あれはあれで大変そうだよね……」
有里「あれ?じゃあ風花は何してたの?」
風花「私は軽くお掃除しただけで追い出されちゃった。お客様だからって」
鳴上「客商売の矜持か……いいな」
有里「プロだね」
>少し休むことにした……。
千枝「うっひゃー、しんどー!やっぱり慣れない事すると疲れるねー」
りせ「でも手際よかったですよぉ」
直斗「ふぅ……何とか終わらせられて良かったですね」
陽介「おーう、お疲れーぃ」
完二「な、直斗、そのカッコどうしたんだよ」
直斗「あ、制服らしくて。和服、余り得意じゃないんだけど……」
有里「いい」
鳴上「いいな」
完二「いいっスね」
風花「こうして見ると、やっぱり女の子なんだね」
雪子「お疲れさまー!すっごい助かった、ありがとう!」
千枝「全然手伝いになったの?って感じだったけどねぇ」
雪子「ううん、そんなこと……あ、良かったら晩御飯食べてって。それからお風呂、入りたい人は入ってもらってって」
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有里「温泉!」
鳴上「いいのか?」
雪子「バイト代替わりにって。そんな事くらいしかできないけど……」
有里「混浴は?」
雪子「え?」
有里「混浴……」
雪子「えっと……ごめん、家は混浴じゃない……んだ……」
有里「そう……」
陽介「まーまーまーいいじゃねえか!温泉だぜ温泉!俺着替え取ってこようかな!」
雪子「あ、浴衣だったらあるよ?」
陽介「つっても泊まるわけじゃねえし、着替えて帰んねーとさ」
有里「浴衣……?」
千枝「あー、そうだね。じゃあ着替え取りに帰って再集合?」
鳴上「待て、里中。天城、浴衣は明日返すって出来ないか?」
雪子「え?それは出来るけど……どうしたの?」
有里「浴衣で着替え取りに帰ればいいんじゃないかな」
完二「浴衣で街中歩くんスか?」
鳴上「陽介、完二、ちょっとこっちへ」
有里「……ここで解散したら……浴衣姿が……」
陽介「あ!なるほど……つまり……」
完二「くっだらねぇ、アンタらだけで企んどけよ……」
鳴上「直斗もだぞ……」
完二「……くっ……しゃーねーか」
千枝「まるっと聞こえてんね」
りせ「いいんじゃない?私も浴衣着たいし」
風花「私達は元々ここに泊まってるしね」
鳴上「と、いう事で協議の結果、浴衣に着替えた後解散、明日返却するという事になったがいいか?」
雪子「うん、わかった。じゃあお風呂の準備まだだから晩御飯にしよっか」
陽介「楽しみだな!いろいろ!」
完二「っスね!」
千枝「男ってさぁ……」
風花「あはは……」
>……。
361 = 346 :
雪子「元々大人数で使う部屋じゃないからちょっと狭いけど我慢してね」
陽介「いやぁ十分十分!さー食おうぜ!」
雪子「あ、山岸さんは一応お酒もありますけど……」
風花「あ、私お酒はあんまり……」
りせ「ねぇ先輩?私ちょっと飲んでみたいなー……?」
雪子「ええ?でも……」
完二「こら、無理言うんじゃねーよ。未成年に酒飲ませたっつったら色々問題だろうが」
りせ「むー、じゃあ山岸さんにちょっと分けてもらうもん!」
直斗「山岸さんも今断ろうとしていたような……」
風花「ふふ、いいよ。でもちょっとだけね?」
りせ「やったぁ!山岸さんありがとー!」
陽介「なになに?酒?俺もちょっともらっていいかな!」
風花「んー、じゃあ天城さん、お酒とあとお水多めに持ってきてもらえる?」
雪子「あ、はーい。わかりました」
鳴上「豪勢だな」
有里「料理か……思い出すな……」
鳴上「何をだ?」
有里「昔、風花の料理を食べた事があってね……」
鳴上「ああ、湊もか」
有里「悠も?」
鳴上「ああ。美味かったぞ」
有里「……君は、本当にすごいんだな」
鳴上「?」
雪子「はい、どうぞ。一応人数分コップも持ってきたよ」
風花「ありがとう。えーと、じゃあ皆で飲む?」
完二「俺ぁいいっス、あんま得意じゃないんで」
直斗「僕も遠慮させてもらいます。……いろいろ、嫌な予感がするので」
362 = 346 :
りせ「んもーう子供なんだからぁ。山岸さん!ささ、一杯」
風花「ん、どうも。じゃあご返杯」
りせ「あ、水割り?って、そんなちょっとですかぁ?」
完二「飲ませてもらえるだけありがたいと思えっての」
りせ「ぶー、そうやって子供扱いしてー!こんなのほとんど水じゃない!」
直斗「ああ、一気に……」
りせ「水みたいなもんよー!らいたいねぇ、このくらい飲んらくらいれ酔ったりしないっての」
風花「あれ?おかしいな、酔うほど入れてないんだけど……」
りせ「酔ってらいれすー!」
鳴上「俺もちょっと飲んでみたい」
風花「ん、どうぞ」
鳴上「ありがとうございます」
風花「えっと、他には?」
陽介「俺俺!俺もー!」
千枝「わ、私もちょっと……」
雪子「私も飲んでみたいかも」
完二「あーあ、知らねぇぞ俺」
直斗「巻き込まれない内に退避した方がいいかもしれませんね」
風花「有里君はどうする?」
有里「僕は割らなくて良い」
風花「まぁ、一応同い年だもんね……はい」
有里「ありがとう」
アイギス「わ、私も……」
風花「アイギスってお酒飲んで大丈夫なの?」
アイギス「えぅ、わかりません……」
風花「また熱暴走しないとも限らないから、気分だけって事で……ほんのちょっとだよ」
アイギス「ありがとうございます!」
363 = 346 :
【夜 天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】
雪子「あっはっはっはっはっは!」
陽介「なんつーか、よぉ……こう、ぐぁーっと熱くなる恋っつーの!?してみたいわけよ俺は!なぁ完二!聞いてっか完二!」
完二「ああ、もうウゼェ……」
千枝「私だってねぇ、私だって女の子だっつーの!いろいろさ、してみたいっての!女の子らしーこととかさ!」
りせ「あれぇ~また胸成長したぁ?ずるーい」
直斗「久慈川さん、やめ……ああもう!」
アイギス「ぽかぽかする、でありましゅぅ」
鳴上「皆、酔ってるのか?」
りせ「酔ってないれすってばぁ~」
鳴上「そうか。なら良い」
りせ「あぁ、そーだあれやりましょーよ!いつかみたいにぃ、王様ゲーム!」
完二「ああ!?んだそりゃ。やってらんねーって!酔っ払い同士でやってろ!ほら、行くぞ直斗!」
直斗「わ、は、はい!」
鳴上「雪子、割り箸」
風花「マジックあるよー、これで印つけて」
有里「あれ。もしかして風花も酔ってる?」
風花「私、お酒本当に苦手で。今かなり気持ち良いかも?」
有里「あ、そう……まぁ、どうでもいいか」
りせ「参加者はぁ~?王様は参加者誰でも好きにしていいんだよ~」
陽介「誰でも!?マジか!やるやるぅ!」
雪子「私もやるー!」
りせ「あれ~?里中先輩はぁ~?」
千枝「私はちょっと……」
りせ「駄目れーす。この場の全員強制参加なのだぁ~!」
364 = 346 :
有里「あれ、それって僕も入ってる?」
鳴上「勿論だ」
有里「じゃあそこでぐったりしてるアイギスは外してあげてよ。僕と風花が入るから」
りせ「ん~?このくらいでダウンしちゃうなんて情けないなぁ~。ま、いいでしょー。はい、人数分できたー!」
鳴上「くじは俺が持とう。よくシャッフルして……さぁ、引け」
千枝「もー、仕方ないなー」
陽介「王様こいっ!」
りせ「えーい」
風花「あはは、これかな?」
雪子「こーれっ!」
有里「はい」
鳴上「残ったのが俺か。さて……」
りせ「王様だーれだっ!」
【王様ゲーム 第一回戦】
365 = 346 :
たのしいやそいなば おうさまゲームへん
という事でガチ王様ゲーム直前で本日分は終わり。
SSWikiって書いた方がいいんですかね?原作キャラだけだしいらないかな?
とにかく、また後日。
366 :
王様ゲームだと・・・!?
wktk
368 :
乙
ところどころ、キャラのいいところをうまくアピールするのはすごいと思う。
369 = 346 :
たのしいやそいなば おうさまゲームへん
第二話
たのしいやそいなば みんなでおふろへん
王様ゲーム編はMass Destructionを聞きつつ読むとP4Aな気分かもしれません。
違うかもしれません。
というわけで本日分。
370 = 346 :
【王様ゲーム 第一回戦】
「王様は……」
>かつて誰かが召喚機をそうしたように、割り箸を回転させ、こめかみに突きつける。
有里「僕だ」
>王様ゲーム、その始まりの一戦。赤いラインの入った割り箸は有里の手に渡った。
有里「といっても最初だし、軽くジャブからいこう」
>全員が次の言葉を待つ。王の命令は絶対であり、参加者に拒否権は無い。
>……有里の言葉一つで彼等は様々な物を捨てねばならない。
有里「……2番が1番の椅子になる。これでどう?」
>一度確認した番号を再度見る。
>椅子になる者、2番を引いたのは……
鳴上「俺だ」
>鳴上だった。
鳴上「俺に座るのは誰だ?」
雪子「あ、私だ」
りせ「あー、いいなぁ~!」
>りせが羨望の眼差しを向ける。
>手を上げたのは雪子。
雪子「じゃ、失礼して……ごめんね、重くない?」
鳴上「むしろいい」
>四つん這いになった鳴上の背中に雪子が体重を預ける。
>一種背徳的でもある行為だ。
りせ「は、早く!次やろっ次っ!次は王様引いちゃうから!」
有里「悠はもう1ゲームそのままね」
鳴上「キングの言う事は絶対だ……屈辱だが甘んじて受けよう」
風花「鳴上君、むしろ嬉しそうじゃない?」
陽介「気持ちはわかるぜ、悠……!」
有里「じゃあ、次は僕がくじを混ぜよう。……さぁ、引いて」
りせ「次こそは!」
雪子「鳴上君はどうやって引くの?」
鳴上「問題ない。届く」
風花「人間椅子って、なんかいやらしいね」
千枝「変な命令されたくなけりゃ王様になれってことね!」
陽介「そういうこ……とっ!これだぁ!」
有里「じゃあ残りが僕と。さて……」
陽介「王様だーれだっ!」
371 = 346 :
【王様ゲーム 第二回戦】
「王様は……」
>皆が固唾を呑んで自分の割り箸を見る。
陽介「俺だぁあああああ!」
>高々と掲げられる勝利の割り箸。
千枝「うげ、花村かぁ。変な事言わないでよ」
りせ「あーんまた引けなかったぁ」
陽介「へへへへ……行くぜ!相棒!」
鳴上「俺は関係ない」
>陽介は懸命に命令を考える。
>如何にすれば美女揃いの女性陣と美味しい思いが出来るか……。
陽介「っしゃ決まった!4番が王様に『大好き』って言う!言って!お願い!」
千枝「うわ、何それ……」
雪子「4番誰~?」
風花「あ」
陽介「山岸さん!?山岸さんなの!?」
鳴上「俺だ」
>雪子の尻の下で四つん這いになっている鳴上が割り箸を掲げた。
陽介「お前かよ!!」
風花「ごめんなさい、見間違いだった」
鳴上「陽介……大好きだ」
陽介「……おう」
風花「これ……結構アリだと思う」
りせ「花村せんぱいも黙ってたらかっこいいしね~」
千枝「アリって何が?」
雪子「だからぁ、花村君と鳴上君がね……」
陽介「って、女の尻に物理的に敷かれてる男に言われても嬉しくねーっつの!ちくしょ、ミスった!」
千枝「はーい次いきまショー」
りせ「お、里中せんぱいもノってきたにゃ?」
陽介「じゃ、次は俺がくじ持つわ……ほら、引けよ」
鳴上「俺はもう良いんだろ?」
有里「うん」
風花「心なしか残念そう?」
雪子「皆引いた?それじゃ、王様だーれだ!」
372 = 346 :
【王様ゲーム 第三回戦】
「王様は……」
雪子「私ー!」
りせ「くじ運無いぃ~……」
千枝「雪子だったら安心かな?」
>雪子は割り箸を唇に当てて何か考えている。
風花「天城さんってやっぱり色気があるよね、しっとりした感じ」
りせ「流石にその方面だと勝てないカモ……」
雪子「決まった!」
>不意に立ち上がり決めポーズ付きで宣言する。
雪子「えっと~、6番が王様のほっぺにちゅー!」
千枝「ええ!?」
陽介「何っ!?」
>陽介が何度も自分の割り箸を確認する。
千枝「6番私だ……」
雪子「なーんだ、千枝なのぉ?」
千枝「なによ、嫌なの?」
雪子「んーん。じゃあ、はい。どーぞ!」
有里「陽介、良く見ておくんだ」
陽介「わかってるぜ、見逃すもんかよ!」
鳴上「顔真っ赤だな」
千枝「うー、……はい!」
>一瞬頬に触れるか触れないかですぐに唇を離す千枝。
雪子「ええ?今ちゃんとちゅってした?もっかい!」
千枝「やったって!そんな何回も……恥ずかしいっての!」
鳴上「里中」
有里「王様の命令は」
雪子「絶対だよ?」
千枝「あーもう、わかったってば。じゃ、もっかいイクね?」
>今度はゆっくりと、雪子の頬にかかる髪をかき上げて……。
千枝「……ん」
雪子「ふふ、くすぐったい」
千枝「はい、終わり!ちゃんとやったかんね!」
鳴上「アリだな」
有里「アリだね」
陽介「あれ?里中って意外と……」
風花「良い物見たし次行こっか」
雪子「じゃあ次私がくじ持ったらいいのかな。……はい、どーぞ!」
りせ「次こそ引く!絶対引くんらから!」
風花「あはは、それじゃ王様だーれだ?」
373 = 346 :
【王様ゲーム 第四回戦】
「キングは……」
鳴上「俺だ」
>割り箸をゆっくりと目の前に持ち上げ、振り下ろす。
鳴上「命令は決まっている……さっき陽介の命令を聞いて思いついた」
>一拍置いて、全員の注視を待つ。
鳴上「女性陣は王様に『大好き』と」
陽介「待て!番号使え番号を!」
有里「陽介」
陽介「あんだよ!」
有里「王様の命令は……絶対なんだよ」
陽介「そんなんアリかよぉ!」
鳴上「キングが言う以上、アリだ」
>女性陣はお互いに顔を見合わせている。
千枝「な、鳴上君に?」
雪子「流石にちょっと恥ずかしいね」
風花「ちょっと、ね」
りせ「ふふん、みんなぐずぐずしてたら私が全部もってっちゃうんだから!せーんぱいっ」
>りせが鳴上の前に座る。
鳴上「最初はりせか」
りせ「うん。えっと、そのね……先輩!だーい好きだよっ!」
雪子「ああ!それはずるい!」
陽介「りせちー大胆だな!」
千枝「ほっぺにちゅーはさっきの命令でしょ!」
りせ「じしゅてきにやるのはいーの!悔しかったらやってみたらいいじゃない?」
雪子「じゃあ私は逆のほっぺもらうね」
>雪子が鳴上の右側に座り、鳴上の右手を両手で包むように握る。
雪子「鳴上君……大好き、です。ん……」
りせ「あー!私手は握ってない!」
雪子「悔しかったらやってみればぁ?あ、でもりせちゃんのターン終わっちゃったかぁ」
りせ「あんなこと言ってぇ!」
374 = 346 :
千枝「……」
>千枝が左側に座る……。
千枝「あ、あの、鳴上君。その……」
鳴上「恥ずかしがらなくていい。キングの命令だからな」
千枝「そ、そうだね。じゃあ……えっと」
>鳴上の左腕を抱くように抱えて、密着する。
千枝「大好きです……し、失礼して……」
>前髪を上げると、鳴上の額に一つキスをした。
雪子「あー!」
りせ「あー!」
風花「あれ、私の番かな?」
鳴上「どうぞ」
雪子「あんな密着して!千枝ずるいよ!」
りせ「おでこは思いつかなかった……先輩やるぅ!」
千枝「恥ずかしいからあんまり言わないでってば!」
>女性陣は盛り上がっている。
風花「今、あの子達見てないよね?」
鳴上「みたいですね」
風花「……ちょっとからかってみようか。あ、その前に命令だったね。鳴上君」
鳴上「あ、はい」
風花「大好きです。んしょ」
鳴上「ちょっと、山岸さ」
>鳴上と風花の顔が近付く……。
375 = 346 :
千枝「ん……?あー!」
りせ「ちょ、山岸さん何して……えー!?」
雪子「それは駄目!流石にそれは駄目です!」
陽介「……」
有里「へぇ」
風花「だって、皆があんまり大胆だから残ってる場所が思いつかなかったの」
千枝「だ、だからってそんな、本人は良いって言ったんですか!?」
鳴上「……」
りせ「何でちょっと照れてるの!?ねぇ!先輩!」
陽介「何か酔い覚めてきたわ」
有里「まぁ元々酔うほど飲んでなかったしね」
>女性陣が大荒れなので、王様ゲームは自然と終了になった……。
完二「そろそろ落ち着いたか?」
直斗「まだ騒いでるみたいです。あ、巽君」
完二「あ?どうしたよ」
直斗「いや、助けてくれてありがとうございます」
完二「別に助けたっつーか、まぁお前しか冷静そうなヤツがいなかったからよ」
直斗「それでもありがとう……あ、そろそろ落ち着いたかな?」
完二「おお、みてーだな。……ま、お前が困ってんの見たくねぇしよ」
直斗「今何か……?」
完二「何でもねーよ。ほら、もどんぞ」
直斗「そうですね。お風呂の準備も出来たみたいですし」
完二「……っしゃぁ!」
376 = 346 :
【浴場】
陽介「ふぃー癒されるぜー。体も心もよー」
完二「なんでアンタは何かある度に心に傷負うんスか」
陽介「なんつーかさ、あいつらだよ。あいつらと比べるとさ……俺って、ちっぽけだなぁって思う瞬間がね……」
完二「そんな壮大なスケールで悩むことでも無いだろ……」
陽介「……そういや、お前何で満足そうな顔して帰ってきたんだ?」
完二「あァ!?誰がいつんな面したよ!?」
陽介「いや、直斗と二人で帰って来た時……あ、何かあったな!?」
完二「べ、べ別に何もねーっつんだよ!キュッと締めんぞ!?」
陽介「その反応が怪しいっつんだよ!吐け!何した!お父さん許しませんよ!」
完二「テメェの息子になった覚えはねぇっつんだよ!」
鳴上「二人とも騒がしいぞ」
有里「温泉は……静かに楽しむものだ」
陽介「あ、悪ぃ……」
完二「すんまセん……」
陽介「あの二人ってよぉ……」
完二「妙にコンビネーションいいっスよね……」
有里「……いい湯だね」
鳴上「ああ」
>……。
陽介「あー気持ちよかった!いやいいな温泉」
完二「そっスね」
陽介「俺あがるけど、お前らどうする?」
完二「あ、俺もそろそろのぼせそうなんで」
陽介「お前、俺が着替えるの見るつもりだろ」
完二「なわけねェだろ……」
有里「僕はもう少し」
鳴上「俺ももうちょっと後で出る」
陽介「そうか。んじゃごゆっくり~」
有里「悠、さっき酔って無かったよね?」
鳴上「最初はちょっと気持ちよかったんだがな」
有里「まぁ、あの量じゃね……」
鳴上「湊こそ全然だったな」
377 = 346 :
有里「あ、気付いて無かった?僕飲んでないよ」
鳴上「あれ?でも普通に……」
有里「飲み終わった風花のコップと入れ替えておいたんだけど、どうも風花は気付かなかったみたいだ。あれ?私今飲んだのになって顔しながらもう一杯いってた」
鳴上「なんでそんな事を」
有里「……彼女はあまり本音を出さない人だからね。お酒の力で少し後押ししてあげようと思って」
鳴上「へぇ。それで収穫は?」
有里「それなんだけどね。最後のアレ、どうだったの?」
鳴上「何がだ?」
有里「僕からじゃ良く見えなかったんだけど、風花との、ほら」
鳴上「ああ、アレか。アレはな……」
りせ「温泉温泉~」
雪子「あ、りせちゃん、足元気をつけて」
千枝「うー、なんか頭痛い」
直斗「気のせいでは?酔うほどの量飲んでませんよ」
風花「プラシーボってヤツかな?雰囲気に酔うとか」
鳴上「!?」
有里「今、陽介達出ていったよね?」
鳴上「ああ。まだ入ってるって伝えてくれると思ってたが」
有里「陽介だからね……」
鳴上「どうする」
有里「隠れられるような所は……この岩の裏にいよう」
鳴上「それで大丈夫なのか」
有里「昔は処刑されたけど、今日はそうは行かない」
鳴上「何かわからんが急げ!」
りせ「ひろーい!」
千枝「雪子んとこのお風呂、久しぶりだね」
雪子「そうだねー……あ、山岸さん、さっき言ってたの教えてください」
直斗「さっき?何かあったんですか?」
りせ「山岸さんってば、鳴上先輩にちゅーしたんだよちゅー!」
直斗「な、ええっ!?」
378 = 346 :
風花「ふふふ、違うの。フリだけ。ちょっと顔が近くて恥ずかしかったけどね」
雪子「なんだ、そうだったんですね……」
りせ「本当ですかぁ?」
風花「うん、本当」
有里「本当なの?」
鳴上「ああ」
風花「でも、みんなおかしかったー。すっごい慌てちゃって」
千枝「あ、あれはびっくりしちゃっただけですって!」
風花「そういうことにしとこっかな。でも、私はフリだけど皆はほんとにしてたよね?」
直斗「く、詳しく聞かせてください!」
>バチャン
風花「ん?」
鳴上「湊、お前……!」
有里「しまった」
千枝「あれ、私達以外に誰かいるのかな?」
雪子「お客さんはいないと思ったけど……」
りせ「え、まさか覗き?アイドル的にまずいかも……」
風花「あ、なんか前もこんな事あった気が……」
鳴上「ど、どうする」
有里「落ち着くんだ……落ち着いて彼女達の探索をやり過ごす。その後、彼女達があがったのを確認して僕達もあがろう」
鳴上「それでいいのかはわからんが、それしかないような気もするな」
有里「水音を立てないように集中するんだ……いくよ」
379 = 346 :
りせ「あ、先輩と有里さんの服あるよ」
有里「!?」
千枝「うそっ!てことは今二人いるの!?」
鳴上「おい」
有里「この命、天に預ける……!」
鳴上「お、おい。何天運に賭けてるんだ。何か策は無いのか」
有里「どうでもいい」
風花「服があるって事はまだ中にいるよね」
雪子「それで隠れられそうな場所っていうと、あの裏とかかな?」
りせ「んー、でもあの二人なら別に見られてもいいカモ」
直斗「冗談じゃない、恥ずかしいですよ!」
風花「えっと……有里君、鳴上君。いるんなら返事して?」
有里「……にゃーお」
雪子「あれ?キツネ?」
鳴上「猫だろ!……あ」
有里「悠……」
風花「あのー、ごめんね?入ってるの気付かなくて……」
有里「いや、こっちこそ」
風花「私達一回出てタオル巻いておくから、その間に出てもらえるかな?」
鳴上「あ、はい。すみません」
りせ「えー、先輩達とお風呂……」
千枝「む、無理無理!恥ずいって!」
風花「大丈夫?ん、はい。今のうちにどうぞー」
>……。
380 = 346 :
鳴上「窮地は脱したな」
有里「つれてきたのが風花でよかった」
鳴上「誰だったら駄目だったんだ?」
有里「美鶴」
鳴上「ああ……」
風花「二人とも、着替えた?」
鳴上「はい、一応」
有里「どうかしたの?」
風花「うん、私の服の横にチューブがあると思うんだけど、よかったら取ってくれない?」
鳴上「ああ、これですか?」
風花「うん、いつも使ってる洗顔料なんだけどね。それじゃないと荒れちゃって」
鳴上「えーと、あんまりそっち行くとアレなんで、投げていいですか?」
風花「え?タオル巻いてるから平気だよ?」
鳴上「いや、他の連中が見えちゃうんで。位置的に」
風花「あ、そっか。ん、じゃあ投げて」
鳴上「はい。よ、っと」
風花「ありがとー……あっ」
>風花の手から洗顔料のチューブが滑り落ちる。
有里「あっ」
>タオルを抑えていた手でキャッチしようとした為、バスタオルが落ちる。
アイギス「すみません風花さん、どうやら寝てしまっていたようで……」
>アイギスが目を覚まして脱衣所に入ってくる。
風花「ひぁっ……!あ、あの、見えてないよね!?」
有里「う、うん。全然」
鳴上「そうだな、一瞬しか」
アイギス「……あなた達は、駄目です」
鳴上「お、落ち着け」
アイギス「唸れ、パピヨンハート!」
有里「ああ……結局こうなるのか……」
>…………。
381 = 346 :
【天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】
鳴上「生きてるか、湊」
有里「なんとか、悠」
陽介「悪い悪い、お前らまだ入ってるって言うの忘れちまってたわ」
完二「そのせいで酷い事になったみたいっスよ」
鳴上「いいさ、ただの事故だ……」
有里「事故だし仕方ないね……」
陽介「お、帰って来たんじゃねーか?」
りせ「いやーいいお湯だった!」
千枝「ほんと。やっぱいいねー温泉ってさ」
雪子「皆すっきりした?」
直斗「ええ、随分リフレッシュできました」
風花「もう、アイギスったら。危ない事しちゃ駄目よ?」
アイギス「申し訳ありません……」
完二「おお……」
陽介「なんつーか、風呂上りっていいよな」
有里「体温が上がり上気した肌と、水分の残る髪」
鳴上「芸術だな」
アイギス「あ、すみませんお二人とも……あれはただの事故だったと言われて……」
有里「いいよ、慣れてるし」
鳴上「大丈夫ですよ、慣れてますし」
風花「それはそれでどうして慣れてるの……?」
陽介「さて、とりあえず目的は達されたわけだけどどうするよ?」
鳴上「あ、俺はそろそろ帰る。菜々子と約束してるんだ。随分遅くなってしまったし」
有里「じゃあ僕も帰ろう。皆はどうする?」
陽介「そんじゃ俺らも適当に解散すっか」
りせ「私達はちょっとガールズトークしてから帰るね。ねー山岸さん」
完二「そんじゃ俺も帰っかな」
鳴上「じゃあ、皆また明日」
千枝「ん、また明日!」
雪子「またね」
直斗「お疲れ様でした」
>皆と別れて帰った……。
382 = 346 :
有里「菜々子は何て?」
鳴上「ああ、俺がいなくて寂しかったけど、お前がいたから平気になったんだってさ」
有里「そう。変わった子だね」
鳴上「気に入られてるみたいだぞ。ありがとうな、俺がいない間」
有里「こちらこそ。こっちの皆には本当に世話になってるよ」
鳴上「明日は、何しようか……」
有里「明日は明日考えようよ」
鳴上「それもそうだな……」
【堂島宅】
鳴上「ただいま」
有里「ただいま」
菜々子「おかえりなさい!菜々子待ってたよ!」
鳴上「遅くなってごめんな」
堂島「おう、布団上げといたからいつでも寝れる……なんで浴衣なんだ?」
有里「いろいろあって、旅館でお風呂いただきまして」
堂島「そうか。明日も休みだからって菜々子あんまり遅くまで起きとかせるなよ」
鳴上「わかってますよ」
有里「菜々子、じゃあ悠お兄ちゃんに遊んでもらう?」
菜々子「湊お兄ちゃんと三人がいい!」
鳴上「だそうだ」
有里「……じゃあ、そうしようか」
菜々子「やった!」
鳴上「菜々子は俺と湊どっちが好きだ?」
菜々子「えー……うーん……」
有里「君は酷な質問をするね……」
菜々子「どっちも大好きだよ?それじゃ駄目なの?」
鳴上「いや、いいんだ。それで」
有里「……」
菜々子「あ、湊お兄ちゃんまた笑ってる。菜々子変な事言ったかなぁ」
鳴上「へぇ、湊はそんな顔で笑うんだな」
有里「変な顔かな?」
鳴上「いや。いい顔だ」
>菜々子と遅くまで遊んだ……。
383 = 346 :
【自室】
鳴上「変な気分だな」
有里「何が?」
鳴上「いや、こうして二人で同じ部屋で寝る事になるとは」
有里「そうだね、不思議といえば不思議だ」
鳴上「……なぁ」
有里「ん?」
鳴上「あの寮のメンバーで、お前と……その、特別な関係だったのって誰だ?」
有里「皆さ。大切な仲間だよ」
鳴上「そうじゃない。その、男女の仲というか」
有里「……聞きたい?」
鳴上「まぁ、皆の反応を見たらちょっと気になるな。どうなんだ?」
有里「例えば、恋人っていう意味なら……誰もいない。僕と彼女達には、具体的な事は何も無かった」
鳴上「そうなのか?」
有里「うん。でも、好きだったっていうなら……あの寮にいる、アイギス以外の女子は、皆僕の事を好きだったと思う」
鳴上「すごい自信だな」
有里「というか、実際言われたからね」
鳴上「けど、恋人じゃないんだろ?フったのか?」
有里「そういうわけじゃないけど……僕は誰かを選べなかったから」
鳴上「陽介辺りが聞いたら激昂しそうな話だな」
有里「それは君だってそうじゃないの?」
鳴上「俺はそんなにモテた事無いぞ」
有里「……あ、そう。でも、もしだ。自分の道と誰か他人を選ばなければならない時、君はどうする?」
鳴上「どういうことだ」
有里「僕は、彼女達は勿論、仲間達は皆好きだ。大好きだ。けれど、一緒に暮らしていくなら、自分の進む道を歪めなければならない」
鳴上「そうか?」
有里「他人の道と自分の道は決して重ならない。そこには既にお互いが立っているから。だから、もし同じ道を行こうとすれば、自分か相手の道を歪ませる必要があるだろう」
鳴上「……俺は、そうは思わない。相手に近付こう、寄り添おうって時は歪めるんじゃなく歩み寄るって言うんだ」
有里「僕にとっては同じ事さ。彼女達と出会ってから一年も無かった。彼女達に好意を伝えられた時には僕のこたえは見つかってたんだ」
鳴上「命のこたえ、か」
有里「そう、僕という物語の締め括り。大好きだったから、守る為に自分を捧げようと思った。それが彼女達を傷付けるとわかって。そんな僕が誰を選べるっていうんだ」
有里「自分の考える一番のフィナーレを飾ったのに、何故か僕はここにいる。これはおまけか?違う、蛇足だ。僕の今は、あの時の僕からすれば蛇足でしかない」
鳴上「……お前は凄いよ。けど、そんな風に言うのはやめろ」
384 = 346 :
有里「……わかってるさ、本当は。でも、僕は少なくとも納得して命を終えたんだ。それを引き摺り出されて……良い気はしない」
鳴上「これからだろう、お前も、俺も。前回はお前が納得しても、皆が納得できるこたえじゃなかった。もう一度だ。チャンスだと思えよ」
有里「……君に、かっこつけて退場して、また舞台に上がる時の気まずさがわかるかい?」
鳴上「だから、もうかっこつけなくていい。前はお前にしか出来なかったとしても、今は俺がいる。……付き合うさ、これも縁だ」
有里「悠……なら、足掻くよ?みっともなく、無様に」
鳴上「ああ、いいさ。俺だってそうする。手段を選べるような立場じゃないんだ、本当は」
有里「……ところで、強いて言えば彼女達と特別な関係だったのは確かだよ」
鳴上「つまり、どういうことだ?」
有里「誰も選べない代わりに、皆の想いになるべく応えようとしたからね。それはいろいろあったさ」
鳴上「だから、どういうことだ?」
有里「それは……一緒に部屋で長い時間を過ごした、とか」
鳴上「なんだ、一緒にいただけか」
有里「……君は、鈍いというか純というか、今時珍しいタイプだね」
鳴上「そうかな」
有里「陽介の方がからかい甲斐がある」
鳴上「そりゃ、悪かった……メールだ」
有里「あれ、僕もだ」
>……。
有里「どうも、明日の予定は決まったみたいだ」
鳴上「俺もだ。また菜々子は留守番か……」
有里「じゃあ明日は別行動だね」
鳴上「ああ。じゃあ寝るか……流石に少し疲れた」
有里「移動も長かっただろうし、今日は一仕事したしね。……おやすみ」
鳴上「ああ、おやすみ……また明日な」
>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが3になった。
>『No.13 死神 有里湊』のランクが3になった。
美奈子「……今の内に、考えておかないといけないよ」
美奈子「自分、誰か、隣にいる彼。誰を信じて、誰の為に動くのか……」
美奈子「選ぶ時は、きっと来る。きっと、ね」
385 = 346 :
たのしいやそいなば いちにちめ おわり
つぎは→たのしいやそいなば ふつかめ
連休最後まで楽しい八十稲羽で済めばいいけど。
済むかなあ。済まねえだろうなあ。
ということで本日分は終わり。
では、また後日。
386 :
メギドラ乙。
388 :
乙
面白いまま持続する珍しいスレに会えて嬉しい。
それはともかく、陽介だけ取り残されていくwある部分だけの話だけどww
頑張れ陽介ww応援だけはしてるwww
そしてダブル主人公男気ありすぎwwww
389 :
今更だけど主人公ズはサークルクラッシャー的要素満載なのに、むしろ結束を高めるんだから凄い
というわけで本日分。
390 = 389 :
【2012/5/4(金) 晴れ 天城屋旅館】
鳴上「お待たせしました」
風花「あ、おはよう。ごめんね、朝から……お友達ともっと遊びたいと思うんだけど」
鳴上「いえ、それは構わないんですけど、アイギスさんは?」
アイギス「もう準備は出来ています!」
風花「だって。じゃあ、今日はお願いします」
アイギス「お願いします」
鳴上「はい。それじゃ行きましょうか」
風花「私は一応一通り案内してもらったんだけどね」
鳴上「あ、そうですか。じゃあどこから行きましょうか……」
風花「商店街とかでどうかな?」
鳴上「俺が言うのも変ですけど、他に見るような所無いですしね」
アイギス「では早速行きましょう!」
>アイギスと風花を連れて町内案内をしよう。
【商店街】
鳴上「ええと、じゃあまず南側から……」
風花「南側と北側に別れてるんだよね」
アイギス「はー、そうなのですか?」
鳴上「ええ。南側には俺がよくお世話になった店が一杯あるんです」
>アイギスは珍しそうに周りを眺めている。
391 = 389 :
鳴上「ここがだいだらぼっち……あの点はぼっちって読みます。親父さんがアートを作ってるんです」
アイギス「アートですか。……アート?」
>店先には鎧兜からジェラルミンの盾、何故か革靴まで様々な物が置いてある。
アイギス「アートとは難しいのですね……」
鳴上「親父さんが手に入った素材で即興で作ってるらしいんで、素材によって色んな物が……」
風花「あんまり大きい声では言えないんだけど、普通に刃物とかも置いてるんだって」
アイギス「……ああ、つまり交番ですか」
風花「そういう事みたい」
鳴上「かなりお世話になりましたね。次行きましょうか」
>……。
鳴上「こっちが、四六商店。まあ薬屋みたいなものです」
アイギス「ヒットポイント回復するなら」
風花「傷薬に宝玉でー」
鳴上「……?」
アイギス「どこで聞いたかわからないけど、妙に耳に残っている薬局のテーマソングです」
風花「ね。知らない間に覚えてたの」
鳴上「そうですか。ここはおばちゃんが良い人で、探索用に変な薬ばかり買っていく俺の事を心配してくれたりもして」
アイギス「人情ですね!すばらしいです!」
鳴上「あと、雨の日はわざわざ買いに来る人もいないって事で割引に……いや、これは知ってもしょうがないですかね」
風花「私達こっちに住んでないしね」
鳴上「じゃあ、次……」
>……。
392 = 389 :
鳴上「ここが、四目内書店。あ、今日もだ……」
アイギス「平積みの一冊だけが残っていますね」
鳴上「俺が来る時はいつもこんな感じなんです。何故か」
風花「けど、色んな本あるよ。品揃えが多いってわけじゃないけど、こだわりがあっていい感じ」
鳴上「ええ、どれもいい本ですよ。精神的に成長しそうな」
アイギス「是非読んでみたいですね」
風花「また今度ね」
>……。
鳴上「えーと、ここが愛家です」
アイギス「食べ物屋さんですか?」
風花「中華料理屋さんだって」
鳴上「里中が常に欲している肉丼はここのメニューです。出前もあります」
アイギス「……」
>アイギスはわかりやすく物欲しそうにこちらを見ている。
風花「お昼にね、アイギス」
アイギス「わかりました!」
鳴上「ここも、雨の日は特別メニューが出たりします。すごいですよ」
風花「へぇ、食べてみたいかも」
鳴上「山岸さんじゃちょっと厳しいかも……」
風花「え?どうして?」
鳴上「まぁ、いろんな意味で。次行きましょう」
>……。
鳴上「で、ここが……良かった、まだ惣菜大学だ」
風花「まだ?」
鳴上「店主が趣味でやってるらしくて、定期的に店の種類が変わるんです」
アイギス「それはまた……不思議な話ですね」
鳴上「ここのビフテキ串っていうのが結構人気ですね」
アイギス「ビフテキ?」
風花「ちょっと買ってみる?」
アイギス「いいんですか!?」
風花「うん、じゃあ一本ずつもらおうか」
>……。
393 = 389 :
風花「正直、お肉硬かったけど……なんだろう、美味しくないんじゃなくて、妙に癖になるかも」
アイギス「やわらかくて美味しかったですよ?」
鳴上「……やっぱり、個人差あるのか。えっと、で、ここが辰姫神社です」
アイギス「神社ですか」
風花「あ、ここが噂の」
鳴上「噂?」
風花「うん。りせちゃんに教えてもらったの。絵馬に書いた願い事が必ず叶うんだって」
鳴上「……へぇ。スゴイデスネ」
風花「あれ、どうかした?」
鳴上「いや、別に。じゃあ何か書いていきます?」
風花「んー、恥ずかしいから今度一人で来ます」
アイギス「あ、あれなんですか?」
風花「あれ?あ、狐じゃない?」
アイギス「初めて見ました」
>狐に手を振っておいた……。
鳴上「じゃあ、次は北側行きますか」
風花「北側にはりせちゃんと完二君のお家があるんだよね」
鳴上「ええ。ただ、店としてはあんまり用事がある方じゃないので……」
風花「あれ、そうなの?」
鳴上「まぁ、行ってみましょう」
>……。
風花「ああ、これは、確かに……」
鳴上「時流には勝てないというか、結構なお店が店じまいしてて……」
アイギス「少し寂しいですね……」
鳴上「それで、ここが完二の実家です」
風花「巽屋……染物屋さんなんだ」
アイギス「はぁー、綺麗ですねー」
鳴上「かなり有名らしいですよ。天城屋にも卸してるとか」
風花「お値段もそこまでしないし、お土産に買って帰ろうかな」
鳴上「ああ、いいかも知れませんね」
完二「あ、誰かと思ったら先輩方っスか」
鳴上「完二。おはよう」
完二「はよっス。家に何か用スか」
風花「うん。寮の皆にお土産買って帰ろうと思って。これ、誰が染めてるの?」
完二「今はお袋っス。昔は親父だったんスけどね」
アイギス「すごく綺麗です。お母様は見事な腕前なんですね」
完二「……へへ、で、どんな人に買うんスか」
風花「あ、うん。女の人が二人で、男の人が……」
>……。
394 = 389 :
風花「完二君、安くしてくれて良かったね」
アイギス「本当に綺麗……これが職人のワザというヤツですか」
鳴上「大量生産じゃ無理だって言ってましたね。で、ここがマル久豆腐店」
風花「りせちゃんのお家だね。今はお祖母さんがやってるみたい」
アイギス「お豆腐ですか」
りせ「あ、先輩達来てたんですか」
鳴上「ああ。二人の案内をな」
りせ「へぇ~……山岸さん!」
風花「へ、な、何?」
>りせはウィンクしながら親指を立てた。
りせ「頑張ってね!」
風花「あ、あはは。ありがとう……?」
りせ「敵に塩を送るってヤツですよ!私は年月っていうアドバンテージがありますからー」
アイギス「正々堂々、立派です」
鳴上「……?まぁ、後は酒屋とかガソリンスタンドとか……俺は使わない店なんで」
アイギス「なるほど、わかりました!」
鳴上「遊ぶ時は大体沖奈……結構距離はありますけど、別の市まで出かけたりしますね」
風花「もっと時間があったらそっちも行ってみたいね」
鳴上「今日は町内って事で。……あと行く所と言うと」
りせ「先輩、鮫川は?」
鳴上「ああ、あそこも一応見せておくか」
>……。
鳴上「というわけでここが鮫川です」
アイギス「川!ですね!」
鳴上「アイギスさん、良ければ釣りします?」
風花「あ、さっき取りに行ってたのって……」
鳴上「はい、釣具です。ここ、月一で釣り大会とかやってるんですよ」
アイギス「良いのですか?」
鳴上「セッティングできます?」
アイギス「良ければお願いしたいです」
鳴上「じゃあちょっと待ってくださいね……はい、どうぞ。あんまり振りかぶると変な所引っ掛けるんでほどほどに」
アイギス「では爆釣目指して頑張ってきます!」
395 = 389 :
風花「行っちゃった。元気だね」
鳴上「ですね。そういえば、さっきりせに言われてたのは何なんですか?」
風花「え?ああ、夕べね。いろいろお話してから解散したんだけど、その時にちょっとね」
鳴上「そうですか」
>……。
>風花は黙ってアイギスを眺めている。
>……何か言い出そうとしているようにも見える。
>迷っているようなら、言い出すのを待とう。
風花「……鳴上君、昨日はごめんね」
鳴上「え?」
風花「ほら、王様ゲームの時の……」
鳴上「ああ、アレですか。別に謝るような事は」
風花「駄目だよね、あんな風にしちゃ。……私達が最初に会った日、いつか覚えてる?」
鳴上「ええと……先月の何日でしたっけ……」
風花「八日。久しぶりに寮に帰った日」
鳴上「ですか。まだ一ヶ月も経ってないんですね。毎日どこかで顔を合わせてたからか、随分長い間一緒にいたような気がしてますけど」
風花「私もそう。何だか、ずっと前から知り合いだったみたいに思えるんだ」
鳴上「馴染めてますかね、俺」
風花「少なくとも私には、ね」
鳴上「なら良かったです。……しかし、逆に言えばもう一ヶ月ですか」
風花「そうだね……一ヶ月で、こんなに印象が変わるものなのかな」
鳴上「短いようで長くて、長いようで短い時間ですね。場合によっては180度変わる事もあるんじゃないですか」
風花「鳴上君は、誰か大きく変わった人はいる?」
鳴上「特には……まだ何か、俺には全部見せてくれてない人もいますけど」
風花「それはゆっくりね。……例えばさ、昔好きだった人が忘れられなくて、その人に似た人を好きになっちゃったって人がいるじゃない?」
鳴上「え?」
風花「例えば、の話ね。最初は、昔好きだった人の面影を追ってて、でもいつの間にか、そうじゃなくなってて……」
鳴上「……」
風花「そんなの関係なしに、その人の事が好きだってある日気がついて。そうなるまでの時間って、一ヶ月じゃ短いかな?」
鳴上「人を好きになるのに、時間なんて関係ありませんよ」
風花「そうかな。そう、だよね……もし、それが私が鳴上君に思った事だって言ったら、どうする?」
鳴上「なっ、ええ?」
風花「……冗談。駄目だね、年下をからかって困らせちゃ。ごめんね?」
鳴上「びっくりさせないでくださいよ……」
風花「ごめんごめん。似合わない事しちゃった。でも、私みたいな子じゃドキドキもしないか」
鳴上「……いや、かなりキましたけど」
風花「あ、アイギスどうしたんだろ」
鳴上「ん?あ、根掛かりしてんるんじゃないかな。アイギスさん、あんまり引っ張らないで」
風花「……駄目だ、よね」
396 = 389 :
>アイギスと風花を町内案内した。
>どうやら楽しんでもらえたようだ。
>『No.07 戦車 アイギス』のランクが3になった。
>風花から感じる感情が特別なものに変化しているような気がする。
>……気のせいだろうか?
>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが5になった。
風花「あ、そうだ。鳴上君。お昼から何するか聞いてる?」
鳴上「いや、聞いてませんが。何かあるんですか?」
風花「うん、あの子達がお料理教えてって言うから、皆でお料理しよっかって話してたんだけど」
鳴上「……!」
アイギス「そういえばそろそろ時間でしょうか」
鳴上「俺は、料理はある程度できるんで参加しなくてもいいですかね?」
風花「鳴上君には是非審査員として参加して欲しいって言われてるんだけど……」
鳴上「……わかりました、行きましょう」
>風花の料理教室が行われるらしい。
>……胃が痛くなってきた。
【2012/5/4(金) 晴れ 堂島宅】
菜々子「湊お兄ちゃん、お客さーん」
有里「来たね」
>玄関には菜々子と千枝が立っている。
有里「や」
千枝「あ、おはよう……」
>千枝は少し元気が無いように見える……
有里「どうかしたの?」
千枝「いや、どうってわけじゃないけど……」
有里「……じゃあ、出かける?」
千枝「あの、鳴上君……出かけてるんだよね?」
有里「悠なら今風花とアイギスの所だけど」
千枝「そ、そっか……じゃあ、あの、良かったら……お部屋にあげていただけませんでしょーか!?」
有里「そんなに気合入れて言わなくても。良いよ、あがって」
千枝「う、うん。お邪魔します……」
有里「悠の荷物もあるからちょっと狭いけど。どうぞ」
千枝「……すぅー、はぁーっ……失礼、します」
有里「好きなように座って。お茶持ってくるから」
千枝「あっ、いい!いいから!お構いなく!」
有里「そう?じゃあいいけど……」
397 = 389 :
千枝「……」
有里「……」
>……?
>緊張しているのだろうか、挙動不審だ……。
有里「里中さん」
千枝「あ、はい……じゃなくて。あの、前から言いたかったんだけど、その里中さんってのやめない?」
有里「どうして?」
千枝「いや、一応年上……みたいだし。なんか距離あってやだなーって」
有里「そう。じゃあ何て呼ぼうか」
千枝「もっとこー、フランクな感じで!雪子みたいにさ、千枝ーって呼んでくれてもいいから」
有里「それじゃ、これからそうするよ」
千枝「……」
有里「……」
>……やはり、様子がおかしい。
>何か言い出し難い事でもあるのだろうか。
有里「千枝」
千枝「ひゃいっ!」
有里「……?」
千枝「ち、違くて。急に名前で呼ばれたからびっくりしただけ!」
有里「だって千枝がそうしろって」
千枝「ごめん、だけどちょっとワープしすぎた。里中くらいに戻って、ドキドキするから」
有里「じゃあ、里中?」
千枝「えと、なんでしょー」
有里「どちらかというとなんでしょーはこっちの台詞なんだけど」
千枝「そ、そうだね……ごめん……」
有里「謝るような事じゃ無いけど。本当にどうしたの?」
千枝「いや、話があるっていうか……」
有里「悩み事?僕で良ければ相談に乗るよ」
千枝「うん、悩みっていえば悩み。……その、有里君って好きな人とかいる?」
有里「いるよ」
千枝「あ、そうなん……だ」
有里「昔の仲間も、今の仲間も、菜々子も堂島さんも、皆好きさ」
千枝「いや、そういうんじゃなくてさ。好きな女の子っていうか、いいなって思う子とか、いないの?」
398 = 389 :
有里「あ、恋愛の悩み?」
千枝「まぁ、そうなんだけど……好きな人がいてね。その人の事がずっと好きで、今でも好きなんだけど。同じくらい好きな人が出来たの」
有里「恋多き年頃なんだね」
千枝「年頃、なのかな。この人より好きになる人なんて出てくるのかなーって思ってたんだけどね。その人よりもずっと短い時間で、同じくらい好きになった人がいて」
有里「……」
>思ったより早く、決断の時が来たかもしれない。
>ここで選択肢を誤ると、後々様々な影響が出るだろう。
>……きっと、皆に嫌われるかもしれない。
>しかし、それでも……
千枝「これって、変なのかなって。他の皆には相談出来ないけど、有里君なら経験豊富っぽいしさ。何かいい案だしてくれないかなって」
有里「そうだな……人間の感情なんて、簡単に揺れ動く物だよ。だから、何も変な事では無いと思う。ただ……」
千枝「ただ?」
有里「それは、気の迷いが起こりやすいって事でもあるんだ。短い時間の間に好きになったのなら、勘違いって事もあると思う。その人の事は良く知ってるの?」
千枝「ううん、あんまり……秘密にしてる事が多いみたいで」
有里「だったら、それは勘違いだよ。よく知ってる人を好きになるならともかく、ちょっと話をしたくらいで好きになるなんて、気の迷いとしか思えない」
千枝「そんなこと……!」
有里「無いって言いきれる?今こうして語っている僕を見て、少し印象が変わったんじゃないかな?冷めてる所はあるけど、そんな風に言う人だと思わなかった……みたいに」
千枝「……っ!」
有里「そんなものなんだよ、他人に対する評価なんて。正しく下すには長い時間が必要だ。会って短いのなら……断言しよう。気の迷いだ」
千枝「やっぱり、そうなのかな……」
有里「きっと、そうさ。以前から好きだった人を取るべきだと思うけどね」
千枝「……変な事相談してごめんね。忘れて、さっきの話」
有里「……」
千枝「あ、そーだ!お昼からさ、山岸さんに料理教えてもらうんだ!良かったら審査員って事で有里君も来てよ!」
有里「そう。じゃあ行かせてもらおうかな」
>すまない。すまない。すまない。すまない。
>何度謝っても謝り足りない。
>自分さえいなければ、自分さえ来なければ、もっと早く事件を解決していれば、自分なんかが。
>わかっていたはずだ。知っていたはずだ。
>あの頃ならば、ただ力を増す為の踏み台で済んだ。
>今では、自分にとって無くす事は余りに惜しい存在になってしまっている。
>今、君に応えると、君はきっともっと悲しむ事になる。
>あの子のように。あの人のように。彼女のように。
千枝「……私、一回帰るね。また、後で」
有里「うん。気をつけてね」
>すまない。ごめん。悪い。許してくれ。
>千枝は部屋を出て行った。
>すまない。すまない。すまない。
399 = 389 :
>こんこんっ
有里「まだ何か?」
菜々子「菜々子だよ?」
有里「ああ、菜々子か。入っておいで」
菜々子「お姉ちゃん、泣いてたよ?ケンカしたの?」
有里「……ああ。ちょっとね。お兄ちゃんがからかっちゃったんだ」
菜々子「うそ。湊お兄ちゃんも泣きそうな顔してるもん」
有里「嘘じゃない、本当さ。後で謝っておくから、菜々子は心配しなくていいんだよ」
菜々子「ちゃんと許してもらってね?お兄ちゃんとお姉ちゃんがケンカしてるの、菜々子嫌だもん」
有里「そうだね。ちゃんと謝るよ」
>謝った所で、謝りきれる物でもないが。
>千枝との間に軋轢が出来てしまった。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュニティがリバースになってしまった。
【天城屋旅館 厨房】
鳴上「なんだ、有里も来たのか」
有里「里中さんに呼ばれてね」
陽介「来たくなかったぜ、俺は」
完二「まぁ……俺もっス」
有里「あの四人はそんなに酷いの?」
陽介「直斗はそうでも無いんだけどな。後の三人が酷いの何のって」
有里「そう……風花も酷いものだったんだけどね」
鳴上「いや、山岸さんは上手いぞ」
有里「本当に?」
鳴上「ああ。俺も少し料理はするが、足元にも及ばない」
陽介「マジかよ。お前って結構上手いじゃん?」
鳴上「まぁ、それなりにやる方だと思ってたんだが。流石に本職を目指す人は違うみたいだ」
完二「本職って、料理人とかっスか……って、有里サンなんでそんな顔してんスか」
有里「信じられなくて……あの風花が料理を仕事に?」
鳴上「学校を出たら調理師免許を取りたいらしい。そんなに驚く事か?」
有里「いや、よく考えたら結構上達してたから……おかしい話ではないのか。いや驚くけど」
400 = 389 :
完二「今日は何作るかって聞いた人いねえんスか」
陽介「じゃがいもとか人参とかあったぜ」
鳴上「牛肉と玉ねぎも見た。肉じゃがとかかな」
完二「え、マジっスか。肉じゃがって唐辛子とか入れるもんなんスか?」
有里「ま、まぁ入れても……いいんじゃない?」
完二「蜂蜜とか酢とか、あとなんつーんスか?あの、ほら。食器洗う時とかに使う粉」
鳴上「重曹か?」
完二「そうそう、それっスよ。それとか用意してたみたいっスけど」
有里「……いやな、よかんがする」
陽介「へぇ、奇遇だな。俺もだよ」
鳴上「山岸さんがちゃんと監修してくれれば大丈夫だろう」
完二「信じるしかねェな……」
>……。
りせ「いやーこれは上手く出来たでしょ!」
雪子「山岸さん、どう思いますか?」
風花「う、うん。えっと……うん」
千枝「いや、でもまだマシな方だと思うんだけどなぁ」
直斗「何故そうなったのかわからない部分がありますがね……」
鳴上「あ、出来たみたいだ」
陽介「マジで肉じゃがだな。……肉じゃが、か?」
完二「三つくらいは肉じゃがなんスけどね」
有里「赤い肉じゃがと青……?い肉じゃがと、あとは一見普通の肉じゃがと……」
鳴上「あれ、そういえばアイギスさんは?」
風花「一口ずつ味見するって言って、今機能不全に……」
有里「……どれを食べるか、じゃんけんで勝った人から選ぼうか」
りせ「あ、それテレビの企画みたーい!じゃあ、誰がどれ作ったか内緒ね!」
鳴上「行くぞ……最初はグーだ」
陽介「お、おう。ぜってー負けねぇ!つーか負けらんねぇ!」
完二「っしゃオラァ!行くぜ!」
「最初はグー!ジャン、ケン……ポン!」
みんなの評価 : ☆
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