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    元スレ鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」

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    501 = 500 :



    【巌戸台分寮】


    美鶴「湊。今日は誰か先約が入っているのか?」

    >ラウンジでぼんやりしていると美鶴に話しかけられた。

    有里「いや、別に。何か用?」

    >美鶴はライダースーツを着ている。
    >……ちょっと見ない間に体もまた成長して……。

    美鶴「なんだ、あまり見るな……用が無いなら付き合ってくれないか?ほら」

    有里「あ、それ……」

    >いつか見た覚えのある鍵だ。

    有里「後ろでいいかな?」

    美鶴「ああ。そのつもりで誘っている。どうだ?」

    有里「喜んでご一緒するよ」

    >……。

    >風が気持ち良い。
    >これは、美鶴が気に入るのも良くわかる。
    >まるで、悩み事や自分の体も全て、風が持ち上げて吹き飛ばしてくれるような感覚だ。
    >運転する美鶴を見てみる。
    >ヘルメットで顔は見えないが、なんというか、キマっている。
    >こうして信頼できる相手にただ身を任せるというのも悪くは無い。

    >……。

    美鶴「ふぅ。どうだ?」

    有里「ん、気持ちよかった……もっと早くに教えてくれれば良かったのに」

    美鶴「そうか、すまなかったな。まぁ当時は忙しかったし、許してくれ」

    >美鶴は笑っている。
    >ああ、やっぱり美人だ。
    >惜しい事をしたかな……。

    美鶴「ほら、ここからだと景色がいいだろう。たまに、ここに来て街を見下ろすんだ。そうすると、自分の悩みが凄く小さく思えて、気が楽になる」

    有里「まだ悩むことが?」

    美鶴「君からもらった勇気も底をついてな。……それなりに、上手くはやっているよ。ただ、それだけだ」

    502 = 500 :

    >少し寂しそうな横顔。
    >ちょっとだけ胸が痛む。

    有里「大変だね、相変わらず」

    美鶴「別に、普通に過ごしていても悩みなんて尽きないものだ。それに一番の悩みは、君がいない事だった」

    有里「僕が?」

    美鶴「ああ。私は……駄目なんだ。君がいないと。いなくなってあらためて思い知った」

    有里「そんなこと……」

    >美鶴はゆっくりと首を振る。
    >赤い髪が動きにつられて流れた。

    美鶴「本当は、頭も良くないし、魅力的でもなければ勇気も無い。そういう人間なんだ、私は……君がいなければ、つまらない事でくよくよ悩んで、一歩も前に進む事ができない」

    有里「そんな事ないよ。美鶴は、僕がいなくても十分やっていける。僕はそれを知ってる」

    美鶴「通用しないか。たまには甘えてみたかったんだがな。確かに、君がいなくともなんとかやっていけていたさ。それも、君が帰ってくるまでの話だ」

    有里「僕が?」

    >何かを言おうとして、また口を閉じる。
    >それを2、3度繰り返してようやく言葉が見つかったようだ。

    美鶴「君に言うと、怒られるかもしれないが……君が帰ってきたのを知ってから私は君に頼る事ばかり考えている。逃げ場にしようとしている」

    有里「……帰って来ない方が良かったかな?」

    美鶴「そんなこと、ない。だけど……私の中で、君はそのくらい大きいんだ。許して……」

    有里「美鶴……」

    >美鶴や、特別課外活動部の他のメンバー。
    >それと、八十稲羽の皆。
    >どこか、凄く大きい違和感を感じていた。
    >それは多分、ここだ。
    >悠の存在は彼らの中でとても大きい。
    >しかし、いなくなってもある意味平気なのだ。
    >彼等は自分の足で立つ方法を知っている。
    >それは、誰かに教わったのか……あるいは、テレビの中でのシャドウとの相対がそれを学ばせたのか。
    >とにかく、自立する事が出来る……そして、それを抑え付ける存在も無い。
    >こちらの皆が弱いとか、劣っているという話では無いと思う。
    >単に機会の有無、背負っている荷物の重さの問題だ。
    >特に美鶴は、他の誰よりも荷物が重い。

    503 = 500 :

    有里「美鶴。僕は君の逃げ場にはなれない。本当はわかっているはずだよ」

    >酷かもしれない。
    >けれど、はっきりと言っておかなければならない。
    >もしまた僕がいなくなっても、歩いていけるように。
    >美鶴は恥ずかしそうに微笑んで、それから俯いた。

    美鶴「……ああ。そうだな。私は私で、君は君だ……逃げた先に、解決策は落ちていない。私は誰よりもそれを知っている。でも……」

    >美鶴の指が顔に触れる。

    美鶴「君から、勇気をもらってはいけないだろうか?私の……私が、少しでも大人になれるように。手助けをしてほしい……駄目か?」

    >ゆっくりと、顔を引き寄せて。
    >僕は美鶴の唇に一度目をやり、一度微笑んで、応じるように目を閉じた。

    >……。

    有里「そういえば、美鶴も大学生でしょ?今日学校は?」

    美鶴「ん、ああ。……一日くらい、いいだろうと思って」

    有里「サボり?美鶴、変わったね」

    美鶴「駄目かな……?」

    有里「いや、今の方が好きだ」

    美鶴「……そう、か。さて、そろそろ帰るか?」

    有里「そうしようか。それとも、もうちょっと補充していく?」

    美鶴「ばっ、からかわないでくれ……」


    【夕方 巌戸台分寮】


    有里「……ふぅ。……ふぅぅ……」

    >やってしまった……。
    >どうして僕はこう一途に生きるって事が出来ないんだろうか。

    有里「いや、でも今日のは……僕のせいじゃなくないか?」

    >……いや、僕のせいだろう。馬鹿か。

    有里「かいしょーなしのゆーじゅーふだんか……」

    >里中さんの想いに応えようと思っていたのに、他の女の子も気になるとは……。

    有里「しかし……求められると応じずにはいられない……なんて事だ……」

    >試しに想像してみると、ゆかり、風花、美鶴、里中さん、天城さん、りせ、直斗、エリザベス、マーガレット……菜々子。誰から誰まで全部受け入れてしまいそうな気がする。

    有里「菜々子はまずいだろう、菜々子は……陽介とか順平辺りに言ったら即怒られそうな悩みだ」

    >相談できそうな相手は……。

    天田「どうしたんですか、頭抱えて」

    有里「ああ、乾……丁度いい、聞いてくれないか」

    天田「悩み事ですか?僕でよければ」

    >乾か……話を聞いても怒る事は無さそうだが、解決できるだろうか……。

    有里「乾がそうだったらって思って聞いて欲しい。まず、誰か女の子に告白されるだろう?」

    天田「有里さんも恋愛で悩むんですね……僕なんかで力になれるかわからないけど、聞きますよ」

    >乾はにこりと微笑んだ。
    >その笑顔の何と頼もしい事か。

    504 = 500 :

    有里「ありがとう。で、その子以外にも好意を寄せられていたとして。告白された子以外の子と仲良くするのってどうなんだろう」

    天田「うーん……そうですねぇ……告白されたって、返事はどうしたんですか?」

    有里「えーと、はっきり告白されたわけじゃなくて、示唆された程度で……返事は濁したんだけど、ある意味はっきり断ったというか」

    >乾は顎に手を当てて唸っている。
    >こんなに真剣に悩んでくれるとは……。

    天田「難しいんですが、まず何で断ったんですか?」

    有里「何でって、それは……」

    天田「その人の事が好きじゃなかったから?」

    有里「いや、好きだよ」

    天田「だったら何故?」

    有里「えーと……なんというか、応えてしまうと余計辛い思いをさせやしないかと」

    天田「それで、他に好意を寄せてくれている女の子は好きなんですか?」

    有里「……そうだね、好きだ」

    天田「で、そっちは普通に仲良くしてると」

    有里「うん」

    >一瞬あきれたような顔をされた。
    >見逃さなかったぞ僕は。
    >その後、乾は慎重に言葉を選んでいるようで、眉間に皺を寄せている。

    有里「あの……」

    天田「ええと、すごく失礼な事を言ってしまうかもしれませんが、いいですか?」

    有里「どうぞ。そういう率直な言葉が聞きたいんだ」

    天田「えー……あの、普通に考えて、ですよ。最低……ですよね」

    >頭の中に風花の声が響いた。
    >弱点にヒット、と……。

    天田「あ、その、すみません。僕なんかが……でも、それほんとに良くないと思うんです」

    有里「そうだね……誰彼構わず仲良くするのは良くないね……」

    505 = 500 :

    天田「いや、そうでなく。……それも確かにまずいとは思いますけど。今の話だと、告白してくれた人は拒絶しておいて、他の人には気を持たせてるって事になりますよね?」

    有里「……ああ、なるほど」

    天田「本当に誰彼構わずならいいんですけど、そこが微妙に引っ掛かって。中途半端なんじゃないかなあって思ったんですけど……」

    >なるほど、この罪悪感の原因はそこにあったか。
    >というか、それを中学生に言われるのもどうなんだ。

    天田「見た所、まだどうしたらいいか決まっていないというか、角を立てずに誰かを選ぶ方法を探しているようですけど、それって無理だと思うんですよね」

    有里「うん……」

    天田「なので、それなら全員ちゃんと見つめ直した上で考えるとか……もし、根本的に言ってる事が間違ってたらすみませんけど」

    >不安そうな顔でこちらを伺う乾の後ろに後光が見えた。

    有里「というか、何で僕はそんな人として当たり前の事に気付かなかったんだ!」

    天田「えっ!ちょ、そこまで言わなくても……」

    有里「ありがとう、乾。おかげでちょっと楽になったよ。……自分で自分の事っていうのは、驚くほど見えない物なんだね」

    天田「は、はぁ……良かったです」

    >そう、決められないならもっと材料を集めればいい。
    >何も決めずにうろつくばかりなのが一番いけないんだ。
    >里中さんに……ちゃんと伝えないと。
    >帰りを待とう。



    【放課後 月光館学園】


    >曇り空が気分を暗示しているようだ。
    >今一つすっきりしない感覚に覆われている。
    >授業にも全く身が入らなかった。
    >美奈子か……。
    >彼女は本当に味方なのか?

    陽介「……なー。なーおい。なー悠ってばよぉ」

    >ふと我に帰ると、陽介が顎を肩に乗せている。

    陽介「何悩んでんだよ。大丈夫かよ?」

    鳴上「ああ、ちょっとな……」

    陽介「大丈夫ならいいけどよ。そーだ、今日遊び行こうぜ!俺らそろそろ帰んないといけないだろ?だからさ、ぱーっとこう、な!」

    鳴上「耳元で言わなくても聞こえてる。そうだな、じゃあ里中も誘うか」

    陽介「お、いーね。皆で行こう皆で。で、その里中は……」

    >里中の席に目をやると、机に突っ伏してぐったりしている。

    陽介「ありゃ今日の授業も全くわかんなかった時のアレだな」

    鳴上「陽介は今日は大丈夫だったのか」

    陽介「順平さんがマジで教えるの上手くてよ。なんつーか、勉強できない人間を良くわかってるっつーか。引っ掛かるとこ全部把握してんだよな。おかげでスラスラよ」

    鳴上「意外な才能だな」

    陽介「人間見た目じゃわかんねーもんだな」

    鳴上「その言い方は失礼だろ」

    506 = 500 :

    >話しながら里中の席へ移動して肩を叩く。

    鳴上「里中」

    千枝「ふぁい……なんれしょー……」

    鳴上「……いや、この後遊びに行かないかって言いに来たんだが」

    千枝「あぁー……うん、いいよ……ちょっと待ってね……」

    >顔を上げて、両頬をパンパンと張る。
    >……少し、叩きすぎじゃないだろうか。

    千枝「うぁっ……くらっとキた……ふぅっ!ん、オッケー!んじゃ行こっか!」

    陽介「悠はどっか良いとこ知ってんだろ?」

    鳴上「まぁ、とりあえずあそこだろうな」


    【ポロニアンモール】


    陽介「っしゃゲーセン行こうぜゲーセン!」

    千枝「あ、カラオケとかあるんだっけ。久々に行ってみたいなー」

    >陽介と里中は周りをきょろきょろと見回している。
    >別に地元民ではないのだが、少し誇らしい気持ちになった。

    陽介「……あれ?」

    >陽介が何かを見つけたようで、動きが止まる。
    >里中もそっちを見て、驚いたような顔をしている。

    鳴上「どうし……ん?」

    >二人の視線の先には一人の女性がいる。
    >たこ焼きを頬張りながらクレーンゲームの景品を眺めているその姿は……

    507 = 500 :

    鳴上「美奈子、何でここに?」

    >間違いなく、病院にいるはずの有里美奈子だった。

    美奈子「お?悠こそどうしたの?」

    鳴上「いや、俺は遊びに来ただけなんだが。美奈子はまだ入院してるんじゃなかったのか」

    美奈子「えー、だって特に異常ナシって言われちゃったし。美鶴先輩に聞いたら出て良いよって言われたからー」

    鳴上「桐条先輩が?本当なのか?」

    美奈子「うん。私の事はいいから湊とドライブでもしてきなよって言ったら許可が出た」

    鳴上「……心得てるな。ていうか、お前そんなキャラだったか?」

    美奈子「今までは湊の体にいたからねー。引っ張られて湊っぽくなってたのかも。ほら、言うじゃない?精神など肉体の玩具にすぎないってさ」

    鳴上「そういうものか……というか、お金持ってたのか」

    美奈子「先輩がくれた」

    鳴上「ああ、そうか……じゃあ美奈子も混ざるか?」

    美奈子「いいの?」

    鳴上「二人がよければな。どうだ?」

    陽介「俺はぜんっぜん構わねぇ!美奈子ちゃん、よろしく!」

    千枝「私もいいよ。美奈子さんだっけ、よろしくね」

    美奈子「ん、よろしく!で、どこ行くか決まってるの?」

    鳴上「いや、これから適当に回ろうかと思ってた」

    美奈子「だったら任せて!ポロニアンモールに入り浸った時間なら負けないんだから」

    陽介「なんだかわかんねえけど頼もしいな!」

    千枝「こんな元気な子だったんだ……ちょっと意外」

    美奈子「ほらほら三人とも、行くよー!」

    >美奈子は元気良く先導していく。
    >……陽介も里中も楽しそうだ。
    >とにかく、ついて行こう。

    508 = 500 :

    >……。

    千枝「あっちょー!」

    美奈子「千枝すごーい!新記録!」

    陽介「うげっ、俺より大分上だな……足技専門じゃなかったのかよ」

    千枝「クンフーが足りんよ花村!」

    >千枝がパンチングマシーンで記録を出したようだ。
    >挑戦してみる事にしよう。

    千枝「お、鳴上君やる気だね?」

    陽介「男の意地見せてやれ悠!」

    美奈子「陽介はさっき負けたじゃん、あっさり」

    鳴上「行くぞ……ふっ!」

    >ぱかーん。
    >軽い音が響いて、ミットを支えていた支柱が折れた。

    陽介「あー!」

    鳴上「い、いや俺はただ……」

    千枝「でもすごいね、これって壊れるもんなんだ……」

    美奈子「悠すごーい」

    店員「ちょっとお客さん困りますね」

    鳴上「ち、違うんです、これは……」

    >……。

    鳴上「平謝りしたら許してもらえた」

    陽介「流石の伝達力だな相棒」

    千枝「誠意って大事だね……」

    美奈子「私その間にフロスト人形一杯手に入れたんだけど、これ欲しい人いない?」

    陽介「美奈子ちゃんクレーンゲーム上手いんだな。一個もらっていい?」

    千枝「じゃあ私も一個」

    美奈子「はい、どーぞ。んじゃ次はやっぱアレだね!」

    >……。

    509 = 500 :

    美奈子「カラオケです!」

    >美奈子は既にタンバリンを持ってスタンバイしている。

    千枝「最初の一曲は恥ずかしいから私パスで……」

    陽介「あ、ずりーな、俺だってちょっと恥ずいっつの」

    鳴上「美奈子は歌得意なのか?」

    美奈子「え?うーん、それなり……だけど、いっつも一人カラオケだったから人に聞かせるの恥ずかしいかも」

    >仕方ない、ここは……。

    鳴上「俺が行こう」

    陽介「お、悠か!何歌うんだ?」

    美奈子「タンバリンは任せて!ヘイヘイ!」

    『疾風ザブングル』

    千枝「……花村、知ってる?」

    陽介「いや、俺はちょっと……」

    鳴上「……すぅっ、疾風のよぉおにいいい!」

    美奈子「ざぶんぐるー!ざぶんぐるー!」

    陽介「おお、あの二人の間では成立している……」

    千枝「やっぱ、変わってるね……」

    >……。

    陽介「曲はわかんねーけど妙に熱かったな!」

    千枝「じゃあ、次私行こうかな」

    美奈子「千枝がんばれー!」

    鳴上「何歌うんだ?」

    千枝「んー、これ、かな?」

    『Reach out to the truth』

    陽介「里中なのに結構いい趣味してんな!」

    千枝「うっさい!……よし、と。Now I face out I hold out」

    >……。

    510 = 500 :

    美奈子「ひゅー!千枝やるじゃーん!」

    陽介「お前って結構歌上手いのな」

    鳴上「ああ、良かったな」

    千枝「照れるから!やめてって!」

    陽介「じゃあ次!次俺な!」

    美奈子「陽介は何歌うのかな?」

    陽介「そうだなー、これ!とかどうよ!」

    『Breakin' through』

    鳴上「どっかで聞いたような曲だな」

    陽介「いくぜー……感情に抗うなよぉ!その足を止めんな!」

    >……。

    千枝「普通だったね」

    鳴上「普通だな」

    陽介「何だよそれ!酷くね!?」

    美奈子「よーし、それじゃ満を持して私が……」

    『Wiping All Out』

    鳴上「!!」

    陽介「どうした相棒、急に立ち上がって」

    鳴上「ダブルマイクだ!行くぞ美奈子!」

    美奈子「おっけー!」

    鳴上「Been a little but I'm still battling moving fast while you's just pratting no time for me no tangiling hit you in the spot with no angle end」

    美奈子「I'm not princess nota cutie girlfriend oh no don't you know?」

    >……。

    陽介「お前ら、何なんだよ……」

    千枝「いろいろ凄かったね……」

    鳴上「美奈子」

    美奈子「悠」

    >美奈子と堅い握手を交わした。

    陽介「何かが出来上がったな、あそこで」

    千枝「割とおいてけぼりなんだけど」

    511 = 500 :

    美奈子「さてと。千枝、この後何か予定は?」

    千枝「え、私?特にないけど……」

    美奈子「ちょっと話したい事あるんだ。よかったらコーヒーでも付き合ってよ」

    千枝「あ、うん。いいけど」

    美奈子「そういうわけだから男子は帰った帰った!あんまり遅くまで遊んでると美鶴先輩に怒られるよ!」

    >美奈子はしっしっと俺達を追い払おうとしている。

    陽介「なんだよー、しゃあねえなぁ。俺らは男同士、楽しく帰るか!」

    鳴上「そうだな、本当に怒られかねない。帰ろうか」

    美奈子「またねー」

    千枝「また後でね」

    >気がつくと随分遊んでしまった。
    >寮に帰ろう。


    【夜 巌戸台分寮】


    >ラウンジには何故か頭を抱えている湊がいた。

    陽介「なぁ、アレ……」

    鳴上「そっとしておこう」

    陽介「いや、そういうわけにゃいかねーって。帰る日決めねーと」

    鳴上「そうだった……あー、み、湊?」

    >湊は一瞬こちらを見て、ため息をついた。

    有里「おかえり。里中さんは?」

    陽介「ああ、美奈子ちゃんと女子会中だってよ。あのさ、俺らいつ八十稲羽帰るよ?そろそろ用事も済んだんじゃねえの?」

    有里「まぁ、一通りはね。そうか……そろそろ帰らないとね」

    鳴上「寂しくなるな」

    有里「また来るさ。それに、悠もまた八十稲羽に行くんだろ?」

    鳴上「そのつもりだ」

    512 = 500 :

    有里「じゃあいいじゃないか。……そうだ、里中さんが帰ってきたら教えてくれないか」

    陽介「あ?どしたのよ」

    有里「少し話がね」

    >湊は困ったように笑っている。
    >……また、しばらくの別れになるのか。

    陽介「じゃあ俺またちょっと勉強するから。帰る日取り決まったら教えてくれよ。んじゃな」

    鳴上「ああ。湊は……」

    有里「悠の部屋にいてもいいかな」

    鳴上「ん、俺はまだしばらくラウンジに居ようと思うから、里中が帰ってきたら伝えとくよ」

    有里「お願いするよ。それじゃ」

    >……。

    >玄関が開いた。

    鳴上「あ、おかえりなさい」

    美鶴「ああ、君か。ただいま」

    美奈子「たっだいまー」

    千枝「ただいま」

    >何故か桐条さんが一緒に帰って来た。
    >どこで合流したのだろう?

    美鶴「寮の前でたまたま一緒になってな。そうだ、有里はどこにいる?」

    鳴上「湊なら俺の……湊の部屋だと思いますけど」

    美鶴「里中が話があるそうでな」

    >桐条さんと美奈子は愉快そうに笑っている。
    >里中は……アギが出そうな程真っ赤だ。

    513 = 500 :

    鳴上「湊も話があるって言ってましたよ。丁度いいんじゃないですか?」

    千枝「えっ!それって……」

    美奈子「チャンス!ほら早く行った行った!」

    千枝「あっ、うん。鳴上君、ありがとね!ちょっと行ってくる!」

    美鶴「若いというのは良いものだな……」

    美奈子「美鶴先輩だって十分若いですよね?」

    美鶴「私は少し落ち着きすぎてしまったよ。彼女のようなまっすぐな感情はもう持てないだろう」

    美奈子「へぇ~?ところで、今日湊と何してたんですか?」

    >今度は桐条さんの顔が真っ赤になった。

    鳴上「おお、すごい。一瞬で真っ赤に」

    美鶴「べ、別に何もしていない!ただ、少し走るのに付き合ってもらっただけだ!」

    美奈子「ふーん。じゃあ首の赤いのは虫刺されか何かですかねー。山に行くなら気をつけないと駄目ですよー」

    美鶴「なっ!どこだ!」

    美奈子「嘘ですよ、湊は痕残したりしないでしょ?」

    美鶴「なん、うぅ……何故知っているんだ……」

    美奈子「勘ですよ、勘」

    >今頃部屋では湊と里中が何か話をしているだろう。
    >目の前の二人は妙に盛り上がっているし……微妙に居場所が無い。

    鳴上「陽介の所でも行くか……」


    【順平の部屋】


    陽介「っつぁー!わっかんねー!順平さんちょっとこれ見てくださいよ!」

    >どうやら陽介は本当に勉強しているようだ。
    >順平さんが笑いながら答えている。

    鳴上「すみません、鳴上です。ちょっといいですか?」

    順平「おー、どした。まぁ入れよ」

    鳴上「失礼します……女性陣が妙に盛り上がってて居場所が無くて。そんで本当に勉強してたんだな」

    陽介「やってるっつーの!マンツーマンよ!」

    鳴上「陽介から聞きました。順平さんは教えるのが上手いらしいって」

    >順平は照れたように笑っている。

    順平「ま、俺くらい頭が良いとよ、人に教えんのもそりゃ上手くなるわけよ」

    陽介「悠、違うんだってよ。この人、元々成績悪くてさ、そっから猛勉強して今の大学入ったから、同じくらいのレベルの奴が引っ掛かる所は大体わかるんだってさ」

    鳴上「ああ、そういう事だったのか」

    順平「陽介!それは黙っとけっつったろ!……いや、その通りなんだけどよ」

    鳴上「でも、勉強したことをちゃんと活かせてるのは凄いじゃないですか」

    514 = 500 :

    順平「そうでもねーよ。……そういや、お前、進路どうすんの?」

    >進路。
    >正直、忘れて……いや、忘れてはいなかったが、頭の隅に追いやっていた。

    陽介「俺はとりあえず進学して、それから経営とか勉強しようかなって思ってるんすけどね」

    順平「経営?なんか意外だな」

    陽介「家がショッピングセンターやってんすよ。だからまぁ、継ぐってわけじゃねーけど手伝いとかにも活かせるんじゃねえかなって」

    順平「なるほどなー、それもアリだよな。で、鳴上は?」

    鳴上「俺は……実は、まだ決まってないんです」

    順平「へぇ、お前がね。意外っちゃこれも意外だな」

    陽介「お前だったら大学どこでも行けるだろ?それとも何か理由あんの?」

    鳴上「俺、やりたい事とか目標って無いんですよ。それでどうしようかなって悩んでて」

    >……。
    >二人とも黙ってしまった。

    順平「まぁ、そうだな。適当に進学とか言わないだけ真面目っつーことかね」

    陽介「お前って、しっかりしてる割に妙なとこで躓くよな。進路決定いつよ」

    鳴上「夏だって言ってたから、今学期中には決めないといけないみたいだ」

    順平「あと二ヶ月くらいか?どうすんだよ」

    鳴上「ええと……どうしましょうか」

    順平「どうしましょうか、じゃねえって。……あー、わかった。教えてやるよ、色々」

    鳴上「え?」

    順平「教えてやるっつってんの。俺も進路迷いに迷ったから、色々資料集めたりしたんだよ。だから、その辺教えてやる」

    >順平さんが未だ紐解いていない荷物をあさって取り出したのは、様々な会社・大学のパンフレットだった。

    陽介「うわ、ジャンル問わずって感じっすね」

    515 = 500 :

    順平「色々あってな。まぁ迷走してたんだけど。大学のパンフも会社のパンフも今年のだ」

    鳴上「なんで持ってたんですか?」

    順平「もしかしたらもっと俺のやりたい事に近い場所があるかもしんねーって思って、毎年調べてんだよ。だから、これは最新版」

    陽介「はぁー真面目に考えてんすね。これまた意外」

    順平「お前はいちいち失礼な奴だな……これやるから。他に話とか聞きたかったらいつでも聞く。だから、しっかり決めろ。自分の人生だろ」

    鳴上「順平さん……」

    陽介「順平さん……」

    順平「似合わねーことやらせんじゃねえって。ほら、陽介はとっとと勉強しろ!」

    >順平さんは照れているようだ。
    >陽介は笑いながら勉強に戻った。

    鳴上「ありがとうございます。早速読ませてもらいます」

    順平「おう……がんばれよ」

    >順平さんにお礼を言って部屋を出た。
    >順平さんに対する見方が少し変わった。
    『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが3になった。


    【鳴上の部屋】


    >コンコン。

    有里「悠ならラウンジだよ」

    千枝「うん、知ってる。じゃなくて、有里君に用なんだけど」

    有里「あ、里中さん。丁度良かった、僕も話がある。えーと……とりあえず、入って」

    >ガチャ。
    >里中さんが無言で部屋に入ってくる。
    >いつかのように一つ深呼吸すると、ベッドの端に座った。

    有里「……この距離は何かな」

    千枝「……これ以上は恥ずかしいから、ここでいい」

    有里「そう……」

    千枝「……」

    >気まずい沈黙だ。
    >駄目だ、恥ずかしい。
    >顔に出さないので精一杯だ。
    >小学生くらいまで戻った気分だ。

    516 = 500 :

    千枝「あの、さ」

    有里「……ん?」

    >タイミングを逸した。
    >先に切り出されてしまったら仕方が無い……とにかく話を聞くことにしよう。

    千枝「この前から、ちょっと態度悪かったよね私。まず、ごめん」

    有里「いや、そんなこと……」

    >いつもならぽんぽん出てくる気の利いた台詞が出てこない。
    >フェロモンコーヒー不足か……?

    千枝「前にさ、話したじゃん。好きな人が出来たんだって」

    有里「うん」

    千枝「あれね、有里君の事だったんだよ……気付いてると思うけどね。
       前の日にさ。私達と山岸さん、アイギスさんで残って話てたでしょ。そこでさ、そういう話になって……私が、ちらっと言っちゃったんだよね。
       もしかしたら、有里君の事……好きなのかも。ってさ。そしたら皆に応援されて。それで、次の日……」

    有里「僕の所に来たんだね」

    千枝「そういうこと。で、まぁ……あんな風に言われると思ってなくて。ちょっと期待しちゃってたのかな。
       動揺して、逃げちゃって。それから、あのテレビ……人形劇を見て、もしかしたらって思って。また思い直して……。
       一人であたふたして、有里君にも皆にも迷惑かけて……ほんと、ごめん」

    >里中さんはもう泣き出しそうになっている。
    >ああ、自分のなんと情けない事か。
    >泣きそうな女の子を助けることもできないとは。

    千枝「で、さ。嫌いに……なろうとしたの。あんな酷い事言う人なんてって思って。けど、わかっちゃったんだよね……あれも結局、有里君なりの気遣いなんだなって。
       それからもさ、私がいちいち冷たくしようってしてるのに、お構いなしで……正直、困っちゃった」

    有里「……ごめんね」

    千枝「謝る事じゃないって、全然。……嬉しかったんだもん、私。そのせいで……そのせいで、ね」

    >潤んだ瞳がこっちを見つめている。

    千枝「嫌いになんてなれないなって。わかっちゃったんだ」

    >これ以上、一言だって喋らせちゃいけない。
    >彼女にこれ以上無理をさせちゃいけない。
    >今、目の端に溜まっているあれを零れさせちゃいけない。
    >言うなら、今だ。

    517 = 500 :

    有里「僕も謝る事があるんだ」

    千枝「え?」

    有里「あの時……僕はいらない気遣いをした。いや、気遣ったフリをして、逃げた。里中さんと、特別な関係になる事から。
       浸っていたんだ、悲劇のヒーローに。誰かを選ぶと、どこかで切れる物がある。それを知っていたから」

    千枝「有里君……?」

    有里「僕はこう見えて……女性と交際をしたことがない。告白された事はあっても、それを受けた事は無い。皆と特別な関係になりながら、それを言葉にした事は無い。
       何故か。逃げていたんだ。事実を作ってしまうと、どこかで悲しむ人がいそうで、誰かに嫌われてしまいそうで。
       怖かったんだ。だから八方美人、皆に同じように尽くした。それがどれだけ……相手を馬鹿にしているか、考えもせずに」

    千枝「……」

    有里「里中さん。……千枝、でいいかな」

    千枝「うん、どうしたの?」

    有里「僕は、はっきり言ってこの手の話題には弱い。いろんな面でね。だから、今君に応える事は出来ない……だけど。
       いつかは選ぶ。誰かを、きっと。申し訳ないけれど、それは千枝じゃないかもしれない。けど、今までみたいに逃げたりしない。
       その時まで……今までどおり、友達でいてくれませんか」

    千枝「有里君……あのさ。一個だけ、またわがまま聞いてもらっていいかな?」

    有里「何でも聞くよ。何がいい?」

    千枝「一回だけ、ぎゅって、その……して欲しいんだけど」

    >……零れた。
    >だけど、千枝は笑っている。

    有里「いくらでも。ほら」

    千枝「……えへへ。じゃあまた友達から、よろしくお願いします」

    >耳元で千枝の嗚咽が聞こえる。
    >緊張の糸が切れたのか、泣き出してしまったようだ。
    >千枝をずっと抱き締め続けた……。

    >千枝との関係が元に戻った。
    『No.11 剛毅 里中千枝』が正位置に戻った。
    >更に、千枝と正面から向き合ったことで、信頼が深まったようだ。
    『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが5になった。

    518 = 500 :

    仲直り。
    意外と出来る先輩。
    結局女たらし続行。

    密度上げてみたけどもしかして読みにくいかな・・・読みにくかったら戻そう。

    というわけで本日分は終わり。
    では、また後日。

    519 :

    おおおおおおおよかったぁ!!
    仲直りできて
    乙!

    520 :

    おつです

    521 :

    乙!
    ところでP3Pのタルタロスで裸マント先輩に階段見つけてもらって
    上の階に進む方を選んだらドヤ顔で「おっけー」ていうよね
    あれ毎回笑いそうになるけどみんな平気なの?

    522 :

    なーんか有里に寝取られたみたいで複雑

    523 :

    ほんとだな
    キャラ的にもキタローなんか微妙だし

    524 :

    1乙!

    >>522の気持ちはわからんでもないww
    P4で時間をかけて番長と甘い関係になっておきながら、
    横からポッとでのキタローさんにかっさらわれる気分。


    しかし読んでて面白いので更新を楽しみにしてるわwwww


    >>521
    どっちかといえば 毎回テレッテーに吹くわww

    525 :

    前まで番長が風花奪いそうだったし別にいいんじゃね?
    いや確かにこのキタローは当然のようにハーレム築きそうだけども

    そしてテレッテ△

    526 :

    順平さんの学力がテレッテー

    527 :

    うむ、出ると思ったNTR話。

    えっと、丁度いいのでここらで以前見たレスのお話を。
    全員攻略するのが大前提なの?というレスですね。
    攻略、というのが仲良くなる事なら、目標としてはそうです。
    ですが、男女の関係になることを攻略とするならそれは違います。
    コミュメンバーは全員それぞれの作品の主人公に非常に大きな好意を抱いています。
    じゃあなんで今傾いてる奴いるんだよって話になると、それはフィーリングであったりタイミングであったり。
    要するにたまたまその人がどちらかの主人公に合っているというだけの話です。
    なので、別に全員くっつけようとかしてるわけではないです。

    長々と言い訳しましたが、不愉快に思われるのは覚悟の上というか、自分に技量が無いだけの話ですんで。
    救いとしては別にお金を取っているわけではないという点でしょうか。
    どうしても気に入らないという方は、この作者下手すぎるから読むのやめるってやめてもらうしかないです……。
    せっかく見てもらったので、最後まで読んで欲しいですけど。

    長々と語りましたが、それでは本日分。

    528 = 527 :



    【2012/5/10(木) 晴れ 巌戸台分寮】


    >起きたが、湊はいない……。
    >もう起きていたようだ。
    >ラウンジにでもいるのだろうか。行ってみよう。

    陽介「お、相棒。今日は俺のが早かったな!」

    千枝「あ、おはよー」

    美鶴「おはよう。君は規則正しい生活を送っているんだな。感心する」

    有里「おはよう。……帰る日が決まったよ」

    鳴上「おはようございます。なるほど、それで皆集まってると」

    >陽介は露骨に残念そうにしている。

    陽介「もうちょい遊びたかったぜー。雨降らなきゃもうちっと色々あったんだろうけど」

    千枝「仕方ないでしょ、天気ばっかりは。諦めなさいって」

    美鶴「残念だったな。また連休には遊びに来るといい。歓迎しよう」

    陽介「マジっすか!……あ、でも俺勉強しねーとだしな……」

    有里「あ、そうだ。僕も学校通う事になったから」

    陽介「お、マジか!大学?」

    有里「いや、最後に通ったのが高二だから、陽介達と同級生。よろしく」

    美鶴「そういうわけだ。君達、また有里をよろしく頼む」

    千枝「あ、桐条さんが手配してくれたんですか?」

    美鶴「ああ。少し伝手を使っただけだから、世話という程のものでもないが」

    千枝「ありがとうございます!」

    鳴上「何で里中が言うんだ」

    千枝「へっ?あ、つい……いいじゃん、別にさ!」

    529 = 527 :

    有里「で、僕達は明日学校終わったら帰ることにしたから」

    鳴上「明日か……丁度週末だしな」

    >明日、学校から帰ったら三人は八十稲羽に帰ってしまうらしい。
    >という事は、実質今日が最後の日となるわけか……。

    陽介「おいおい、なんつー顔してんだよ悠。何も一生の別れってわけじゃ無いだろ?」

    千枝「あはは、ほんとだ。また会えるじゃん、ね」

    美鶴「そうだな、明日の夜には出立するとして……今夜、送別会でも開くか。都合の良い者に集まってもらおう」

    有里「いいね、最後の夜だし、皆で騒がしくお別れといこうか」

    >最後の夜。
    >確かに、もう会えないわけではない。
    >しかし、何故だろう。
    >二度と、同じように会えないような、そんな予感がする。

    有里「悠。それは仕舞っておこう。……大丈夫さ、きっと」

    >いつの間にか湊が隣に立っていた。
    >湊も同じように感じているのだろうか。

    鳴上「そう、だな。よし、それじゃ今夜は楽しもう。俺、学校の準備してきます」

    陽介「っと、もうそんな時間かよ。俺も荷物取ってくるか」

    千枝「あの桐条さん、ちょっと……」

    美鶴「ん?……ああ、なるほど。いいさ、手伝おう」

    >とにかく、今夜が湊たちと過ごす最後の夜だ。
    >……悔いの無いように過ごそう。



    【月光館学園】


    「おーい、もう帰っちゃうのかよ。マジで?」

    陽介「ああ。ランキングの完成を見れねーのが心底残念だけどよ……」

    「俺達……また、会えるかな」

    陽介「お前が可愛い女子を追い続けてれば、いつかな」

    「陽介……!」

    陽介「泣くんじゃねえって。俺達、離れても友達だろ?」

    >前の席では茶番が繰り広げられている。

    鳥海「はーい席着いてー。全くこのクラスはどうかしてるわよ、ほんとに。えー、鳴上君に始まり研修生を受け入れ、さらにこの中途半端な時期に転校生です」

    「転校生?女子かな」

    陽介「俺が帰る直前に女子だったら泣くぜ?」

    >どうやら転校生が来るらしい。
    >……転校生?

    530 = 527 :

    美奈子「どーもー、有里美奈子って言います!親の都合でこっちに越してくる事になりました!これから一年も残ってないけど、皆さんと仲良くやれたらなーって思います!よろしく!」

    陽介「なぁ」

    鳴上「ああ」

    「またお前らの関係者かよ……」

    鳴上「どうやら、そうみたいだ……」

    鳥海「席は鳴上君の隣ねー。もうその辺だけで新クラスとか作っちゃえばいいんじゃないのってくらい新人ばっかね」

    >美奈子が鞄をぷらぷらしながらやってくる。

    美奈子「やっ!悠、これからよろしくね!」

    鳴上「……ああ、よろしく」

    「有里さん?だっけ。よろしくね」

    美奈子「美奈子でいいって。よろしくぅ!」

    >美奈子が月光館学園に通う事になった。
    >恐らくは桐条さんの手引きだろうが……
    >いろいろと、大丈夫だろうか。
    >……。


    【昼 鳴上の部屋】


    >この不思議な感覚。
    >まるで、初めてこの寮を訪れた時のような……。
    >あの感覚は何なのだろうか。
    >何かが近寄ってくるような、何かに行き当たったような。
    >探していた物が、すぐ近くで見つかったような。これだったか、と唸るような、そんな感覚。
    >あれ以来、この感覚とは随分ご無沙汰だった。
    >それは、僕が渦中にいた為か、何か別の理由か。
    >ともかく、はっきりとわかる。
    >事件は始まっていなかった。
    >美奈子が肉体を得たからか、様々な切欠のどれかが当たったのか、本当の部分が動き始めた。
    >これからこの事件がどんな顔を見せるのか。
    >それ次第では……。

    >コンコン。
    >物思いに耽っていると、扉がノックされた。

    岳羽「あ、私。今いい?」

    有里「ああ、ゆかり……どうかした?」

    岳羽「どうかしたっていうか、ちょっと話せない?」

    有里「ん、ちょっと待ってね」

    >身支度を整える。
    >丁度少し歩きたかった所だ。
    >ゆかりと出掛けることにしよう。

    有里「お待たせ。良かったらちょっと出ようか」

    岳羽「あ、うん。じゃあどこ行く?」

    有里「コーヒーでもどうかな?」

    岳羽「わかった。じゃ、行こっか」

    531 = 527 :



    【シャガール】


    >改めて見ると、ゆかりも、やはり大人になったという事だろうか。
    >以前より落ち着いた格好をしている。
    >……。

    有里「置いていかれた気分だな」

    岳羽「は?何が?」

    有里「いや、皆変わってるからさ。今更だけど、差がついちゃったなって」

    >自嘲気味に笑う。
    >そんな事を言ってもどうしようも無いのはわかっている。
    >なにより、僕が勝手にやったことだし。

    岳羽「ていうか、やっと追いついたって感じじゃない?君さ、やっぱり抜けてたもん、私達の中じゃ」

    有里「僕が?」

    岳羽「うん。なんていうのかなぁ。一番大人だったっていうか、色んな部分で現実をしっかり見てたっていうか」

    有里「……そうかな」

    岳羽「むしろ、ちょっと子供になった?最近見てるとそう思うんだけど」

    >ゆかりは笑った。
    >……そう言われれば、そんな気もする。

    有里「そうかもしれないね。あの頃、僕には色んな物が足りなかったから。それを皆が埋めてくれて、やっと年齢相応になれたって所かな?」

    岳羽「滅多に笑わなかったし、感情とかってあるのかな?って思うくらい仏頂面だったしね。今はそれなりに表情豊かって感じ」

    有里「自覚は無いんだけどね。人に言われるとそうかなって思う」

    岳羽「昔も別に感情無いわけじゃなかったけどね。それに気付くのに結構時間かかったけど。あの仏頂面の奥で色々考えてるんだなって」

    有里「そう?結構適当だったんだけど」

    岳羽「そういう人をからかう感じも、慣れたらむしろ気持ちよくってさ。……知らない間に、凄く居心地良くなっちゃってたよ」

    >そう言うと、懐かしむように目を細めた。
    >僕にとってはつい最近の出来事だが、彼女にとっては三年も前の話だ……。

    岳羽「……帰っちゃうんだね。どうして?」

    有里「どうして、って……悠は学校があるから、こっちに居なきゃいけない。だから、僕が向こうに行かないと」

    岳羽「こっちに居ても協力は出来ると思うんだけど?」

    有里「そうかもしれないけど……」

    岳羽「私は、居て欲しい。君とまた一緒に居たい」

    有里「ゆかり……」

    岳羽「なんて、言っても聞かないよね。君、私の言う事素直に聞いてくれた事ないし」

    532 = 527 :

    >ゆかりは寂しそうだ。

    有里「予感がするんだ。今回、きっと僕だけでは解決できない。あの時、皆がいてくれても、皆が納得するこたえに手が届かなかった」

    岳羽「皆が幸せになるこたえ……ね」

    有里「でも、今度は違う。悠がいる、悠の仲間がいる。それと僕もいる。ゆかりや、仲間がいる。皆で力を合わせれば、きっと」

    岳羽「やっぱ、変わったね。昔はそんな風に熱く言うタイプじゃなかったのに」

    >言われて、少し恥ずかしくなる。

    有里「……決めたんだ。かっこつけるのはやめようって。みっともなくてもいいから、余力なんて残さずやってやろうってね」

    岳羽「いいんじゃない?その方がかっこいいよ。惚れ直すかもね」

    有里「それは有難いね……そうだ、今日僕らの送別会してくれるらしいんだよね」

    岳羽「あー、美鶴先輩が張り切ってたよ。帰って手綱握った方がいいかもね」

    有里「放っておくとどうなるかわからないからね。じゃあ、帰ろうか」

    岳羽「ん。あ、私出すよ」

    >財布を取り出そうとすると、ゆかりに制された。

    有里「でも……」

    岳羽「いいからいいから。たかだかコーヒーだし。お姉さんに任せときなさいって」

    有里「同い年だろ?」

    岳羽「三年前まではね。今は私が上って事で」

    有里「……ゴチです」

    岳羽「よしよし。素直が一番だよ。ね?」

    >ゆかりは随分と大人になっていたようだ。
    >言葉の端々に余裕を感じる。
    >ほんの少し、悔しかった。
    >……寮に帰って、送別会の準備をしよう。

    533 = 527 :



    【放課後 月光館学園】


    美奈子「ふぃー終わったー」

    陽介「美奈子ちゃんも出来る派かよぉ……」

    美奈子「伊達にDHA摂ってないって」

    鳴上「DHAって本当に効果あるんだな」

    陽介「そういやさ、美奈子ちゃん今夜の話聞いた?」

    美奈子「ああ、送別会だっけ?……出ていいのかな」

    鳴上「いいんじゃないか?美奈子も寮に住むなら仲間だろ」

    美奈子「うん……うん。そんじゃ私も出席しようかな!折角会えたのにすぐお別れでちょっと寂しいけどね」

    陽介「また会いに来るって。帰りに何か買って帰った方がいいのかね?」

    美奈子「いや、発案美鶴先輩でしょ?多分……」

    鳴上「ああ、そうだろうな……」

    陽介「そりゃ期待できんじゃねーの!?」

    美奈子「引くと思うよ」

    鳴上「ありそうだな」

    陽介「えぇ……」

    >とりあえず、寮に帰って準備をした方が良さそうだ。
    >桐条さんに任せていると……。
    >急ごう!


    【夕方 巌戸台分寮】


    美鶴「早かったな、お帰り」

    鳴上「ええ。急いで帰って来たので。今夜の送別会、何か必要な物とかありませんか?」

    美鶴「私が準備しようと思っていたんだが、余程楽しみにしているんだな。なら君達に準備を任せてもいいか?」

    >桐条さんは笑っている。
    >何か勘違いされているようだがまぁそれはいい。

    陽介「そんじゃ準備すっか。買出し行ってくるわ!」

    千枝「あ、私も行く!何かいる物ある?」

    美奈子「適当に揃えてきてよ、センスに任せる!」

    鳴上「同じく。ちなみに桐条さんが用意しようとしてたのって……?」

    美鶴「ん?いや、どこかホテルでも借りようかと……」

    鳴上「折角だし寮でやりましょうよ、良い思い出になりますよ」

    美鶴「そうか?ならそうしよう。飲み物くらいは私に任せてもらってもいいか?」

    美奈子「どうしよう、悠」

    鳴上「流石に飲み物くらいは平気だろう。陽介達も買ってくるだろうし、そこまでおかしな事にならないと思うが」

    美奈子「じゃあ飲み物はお願いしますね!ラウンジ、ちょっと掃除したほうがいいかな?」

    鳴上「手伝うよ」

    534 = 527 :

    岳羽「ただいま……おー、やってるやってる」

    >ラウンジは綺麗に片付けられ、いつもと違う大きな机が置かれている。

    鳴上「おかえりなさい。今準備してるんで、もう少しして皆帰ってきたら始められますよ」

    美奈子「あと美鶴先輩が今飲み物調達に行ってるんだけど……」

    岳羽「あ、嫌な予感するからちょっと待ってて」

    >ゆかりは携帯を取り出すと電話をかけた。

    岳羽「あ、もしもし先輩?私……うん、その話なんだけど。うん。うん。……いや、駄目でしょ。ていうかアルコール無理じゃんあの子ら。もー、多分そうだろうと思ったよ……」

    有里「手伝うよ」

    鳴上「助かる」

    有里「送別会ね。……悠。こっちの仲間は好き?」

    鳴上「なんだ、突然。そりゃ好きだぞ、皆良い人だし……どうかしたのか?」

    有里「ならいいんだ。少し気になったものだから。それに……」

    陽介「買い出し終わり!いやー重いのなんのってよー」

    千枝「あんたそんなに持ってないっしょ。私がほとんど持ってんじゃん」

    陽介「こういうのは頭脳派の俺には向いてねーんだよ」

    鳴上「おかえり。セッティングも出来たから後は人だけだな」

    >不思議な感覚は嫌な予感に姿を変えつつある。
    >恐らくは悠もそれを感じているはずだ。
    >誰かに伝えておくべきだろうか……。

    有里「いや、やめておこう」

    >予感は予感で終わらせるのが一番良い。
    >まだわからない。
    >僕達なら、変えられるかもしれない。

    535 = 527 :

    >さぁ、送別会だ。


    【夜】


    美鶴「明日、有里、花村、里中の三名が八十稲羽に帰る。一応、明日も見送りに行く予定だが、予定のある者もいるだろうということで……」

    有里「今夜、僕達の送別会をしてくれる事になりました」

    千枝「短い間だったけど、お世話になりました!良ければまた遊びに来させてください、楽しかったです!」

    陽介「俺……もっといたかったっす……皆さん本当に……良い人ばかりで……ふぐぅ!」

    順平「泣くな!泣くな陽介!強く生きろ!」

    岳羽「すっごい茶番くさいんだけど……」

    アイギス「感動の別れですね……」

    天田「なんだかんだ賑やかでしたから、寂しくなりますね」

    「賑やかというか、騒がしかったというかな」

    風花「鳴上君もちょっと寂しい?」

    鳴上「まぁ、少し……」

    >ラウンジには寮内の全員が揃っている。
    >皆、何だかんだで楽しそうだ。
    >……美奈子がいない。

    鳴上「なぁ、湊」

    有里「ん?」

    鳴上「美奈子見かけなかったか?」

    有里「あれ……確かに、いないね。どうしたんだろう」

    鳴上「俺、ちょっと探してくる」

    有里「ん、任せた」

    >と言ってもどこにいるのか見当もつかないが……。
    >準備していた時は寮内にいたのだから、恐らくまだ寮内にはいるだろう。

    536 = 527 :

    鳴上「……あれ、あの部屋って何だっけ?」

    >そういえば、入った事の無い部屋がある。
    >……今なら、誰も見ていない。

    鳴上「……美奈子、いるか?」

    >扉を開けると、電子機器特有の作動音が聞こえた。

    鳴上「なんだ、これ……」

    >部屋の正面にはモニターがあり、そこに送別会の映像が映し出されている。

    美奈子「あら、見つかっちゃった。やっほ」

    >モニターの前の椅子には美奈子が座っている。
    >どうやらここから送別会を眺めていたようだ。

    鳴上「おいおい、これって……」

    美奈子「そう、カメラ。昔の名残りで、寮内の色んな所や各々の部屋についてるの」

    鳴上「お、俺の部屋もか!?」

    美奈子「そうだね。まぁ今は必要も無いし、誰かが触った様子も無かったから。心配はいらないと思うけど」

    >気付かなかった……。

    鳴上「で、何でお前はここでそれを使ってるんだ」

    美奈子「……楽しそうだったから、ついね」

    鳴上「楽しそうって、じゃあ参加すればいいだろう」

    >モニターの中で、陽介が里中に尻を蹴り上げられている……。

    美奈子「ん?うん……そうなんだけどね」

    鳴上「居辛いなら、俺が一緒に……」

    美奈子「そういうんじゃなくてさ。仲良くなっちゃうと、辛いじゃん。別れるのが」

    鳴上「……別に、今生の別れってわけじゃないだろ?」

    美奈子「もし、今生の別れだったらどうする?」

    >美奈子は笑っている。
    >その表情の奥に別の感情を感じるが、読み取る事が出来ない。

    鳴上「ただ、帰るってだけじゃないか」

    537 = 527 :

    美奈子「悠。わかってるんでしょ?」

    鳴上「……」

    美奈子「多分、見た所湊も……ここで別れたら、次に会う時は今までのお互いとは違うかもしれない。そう思うんでしょ?」

    鳴上「そんなことは……」

    美奈子「嘘。予感がある。私には嘘は通じないよ……あなたの中にもいたんだから」

    鳴上「……確かに、漠然とだけど嫌な予感がある。だけど、だからってどうしようも無いじゃないか。俺は湊を、八十稲羽の仲間を信じてる。きっと、また変わらずに」

    美奈子「ねぇ。それだけじゃないでしょ?その嫌な予感。どこから来るのかわかってるはずだよね?」

    >美奈子の言葉は常に急所を抉る様に飛び込んでくる。

    鳴上「……湊」

    美奈子「そう。湊。彼の存在が君と仲間達の関係を別な物に変えようとしている」

    鳴上「でも、そんな事が……」

    美奈子「その予感、取り除くことも出来ると思わない?例えば、君が湊を……」

    鳴上「いい加減にしろ。俺は信じてる。湊も、仲間達も。美奈子、正直に答えろ。お前は俺達の……」

    美奈子「敵じゃない。病院で言ったよね?私はこの事件を……それに纏わる色んな物を終わらせる為に来た。これも、その一つ」

    >美奈子は笑っている。
    >彼女の整った容姿が、今は不気味に見える。
    >俺は誰を信じるべきなんだ……?

    鳴上「……敵じゃない、というのは信じる。だけど、俺は湊に何もしない。あいつも、信じる」

    美奈子「……ふぅん」

    >美奈子の笑顔が消えた。
    >しかしすぐに、いつもの人懐っこい笑顔に戻った。

    美奈子「えへへ、変な事言っちゃった。でも、忘れないで。いつかその時が来るかもしれない」

    鳴上「来ないさ。湊と戦う日も……お前と戦う日も」

    美奈子「そうだったらいいね。よし、電源オフ!悠、一緒に居てくんない?新参だから居辛くてさぁ」

    >緊張が一気に解けて、ため息が出た。

    鳴上「俺よりよっぽど馴染んでおいてよく言うよ。……そういや、美奈子の部屋ってどこなんだ?」

    美奈子「あ、それ聞いちゃう?……実は、三階が埋まってるらしくて。二階に部屋もらったんだけど」

    鳴上「二階って、男子階だろ?」

    美奈子「うん。まぁ、変な事してくる人いないでしょって事で」

    鳴上「それはそうか。じゃあ行くか」

    美奈子「はーい!ごめんね、面倒かけて」

    >美奈子と送別会に戻った。
    >湊は何時も通りに見える。
    >……帰るまでに、少し話をした方がいいかもしれない。

    538 = 527 :



    【鳴上の夢】


    >これは、夢だ。
    >どれだけリアルでも、何となく夢なんだなとわかる時がある。
    >今が、そうであるように。
    >ここはタルタロスか。
    >体が思ったように動かない。
    >どこかを目指してひたすら登っていっているようだ。
    >いつもある迷宮は無く、大部屋の階と後は螺旋階段……。
    >夢の中の俺は疲れを知らない。
    >それよりも強い意思に押され、高い高い塔を登っていく。
    >途中、何度も倒れた。
    >登り疲れたわけじゃない。
    >途中の大部屋に、俺を妨害する人がいるからだ。
    >知っている人だと思う……が、判然としない。
    >何度も止められ、その度に一つ上の階で目覚める。
    >そしてまた登る……。
    >もう少しで、目的の場所だ。
    >そこには、あいつがいる。

    「湊……!」


    【2012/5/11(金) 晴れ 巌戸台分寮】


    >最悪の目覚めだった。
    >ぐっしょりと寝汗をかいている。

    有里「おはよう。良く眠れたみたいだね」

    >湊が軽口を叩く。

    鳴上「ああ……お互いな」

    >湊の顔色は最早壮絶な程だ。
    >恐らくは俺の顔も同じように引きつって土気色に違いない。

    有里「覚えてる?夢」

    鳴上「いや……なんだろうな。最悪な夢だったが」

    有里「僕も。……気分が悪い」

    >とにかく着替えよう……。

    >……。

    539 = 527 :

    陽介「はぁー今日でここともお別れかー……つれー!」

    千枝「あ、二人ともおはよ……うわっ!どうしたのその顔!」

    美奈子「二人とも惨殺死体みたいな顔してるね」

    陽介「美奈子ちゃん、その例えは流石にナシだわ」

    >高校生組がラウンジに集まっている。

    鳴上「おはよう。ちょっと夢見が悪くてな」

    有里「まぁ平気だよ。おはよう、皆」

    陽介「相棒そんなんで学校行けんのかよ。休むか?」

    千枝「有里君も、何だったらまだ寝てた方がいいんじゃない?」

    鳴上「いや、大丈夫だ。そろそろ時間だし行こうか」

    有里「いってらっしゃい。僕も今寝る気にはならないから……何かしてようかな」

    美奈子「だったら昨日の片付けが残ってるよん」

    有里「……仕方ない、やるか」

    鳴上「それじゃ有里、行ってくる」

    陽介「夕方にまたな!」

    千枝「帰りの準備とかしといた方がいいよね?」

    美奈子「せっかく会えたのになーもうお別れかー」

    鳴上「美奈子、それ何回目だ?」

    >有里に見送られながら学校に向かった。


    【巌戸台分寮 ラウンジ】


    「片付けか、手伝うぞ」

    有里「あ、真田先輩。良いんですか?」

    「お前一人にやらせるわけにもいかないだろ?他の連中は帰ってきてから片付けるつもりだったようだが……」

    有里「あれ?真田先輩って今……」

    「大学は休学中だ。元々トレーニングの旅の途中だったからな」

    >トレーニングの旅とは一体……。

    「昨夜は楽しかったか?」

    有里「あ、ええ。お蔭様で」

    「そうか……帰るんだな、今日」

    有里「そうですね」

    「……」

    有里「……」

    540 = 527 :

    >そのまま、無言で片付けを終えた。

    有里「……ふぅ」

    「どうした、疲れたか?」

    有里「いえ、昨夜余り眠れなくて」

    「そういう時は体を動かせ。不安な時はとにかく動く、これに限る」

    有里「はは……」

    「笑うなよ、本当だ。迷った時にでも思い出せ」

    >どうやら真田は何かを伝えようとしているらしい。
    >……もしかして、励ましてくれているのだろうか。

    「無茶に中身を伴わせる必要は無い。無茶は無茶で良いんだ、壁に穴くらいは開く。それに、無茶について来てくれる仲間だっているだろう、お前には」

    有里「似合わないですよ、先輩」

    「まぁ、俺から出せるのは口ぐらいだからな。餞別代りだ」

    有里「有難く頂戴します。……無茶に付き合わされる側はたまったものじゃないんですが」

    「それでも、お前は大丈夫だったじゃないか」

    有里「そういえばそうですね。……じゃあ、少し眠ります。夕方には帰りますんで」

    「ああ……またな」

    有里「ええ、いつか」

    >部屋に戻って休もう。
    >悠のベッドを使わせてもらう事にしよう……。


    【月光館学園】


    鳥海「えー、研修って事で来てた花村君と里中さんが今日でお別れになるそうです。皆別れを惜しむように。以上」

    「先生のホームルーム、日に日に短くなってないか」

    鳴上「だな」

    陽介「えーというわけで、今まで五日間?今日で五日?楽しかったです!またこっち来る時あったら遊んでくれな。今までサンキュー!」

    千枝「皆仲良くしてくれて、本当に嬉しかったです。えっと……また、遊びに来る事もあると思うので、その時は構ってやってください。ありがとうございました!」

    >陽介と千枝が挨拶を終えて席に戻ってきた。

    「帰っちゃうのかー寂しいなーちくしょー」

    陽介「俺だって寂しいっつーの。でもいつまでもこっちいるわけにもいかねんだよ」

    「わかったよ……仕方ないもんな……じゃあ帰る前に一つ頼み聞いてくれよ」

    陽介「お、何だ?親友の頼みだ、なんだって聞くぜ?」

    「里中さんのメアドを教えてくれないでしょうか」

    陽介「お前もブレないね……待ってろ、本人に聞くから」

    541 = 527 :

    >どうやらメールを送っているようだ。

    陽介「お、返信はえー」

    「オッケーか!?」

    鳴上「勝手に教えたらぶっ飛ばすよ!……か」

    陽介「悪い……お前の期待、応えらんねーわ」

    「ちくしょう!なんだってんだよ!」

    鳴上「……」

    『前の席の男子が里中のメアドを知りたがってるんだが、教えても大丈夫か』と
    >……来た来た。

    鳴上「おい、里中のアドレス」

    「何っ!?いいのか鳴上!」

    陽介「あーあ知らねぇぞ悠。蹴りあげられんぞ?」

    鳴上「ほら」

    陽介「何々?『別にいーよ』……」

    「……陽介、後で購買のパンおごってやるよ」

    陽介「おう……おう……さんきゅーな……」

    >騒がしかった一週間も今日で終わりか……。
    >やっぱり寂しい。

    >……。

    陽介「っしゃ終わったー!相棒、俺と里中アレがあるから先帰るわ!」

    鳴上「ああ、帰りの準備か。俺もすぐ帰るけど、時間無いなら急いで帰った方がいいな」

    陽介「行きがギリギリだったからな。そういうわけだから、後でな!おい里中!急ぐぞ!」

    千枝「あ、ちょっと!じゃ、また後でね鳴上君!」

    鳴上「ああ、後で……おい、美奈子?」

    美奈子「んん?なに?」

    鳴上「昨日あんまり寝てないのか?一日中寝てたな」

    美奈子「バレた?眠くってさ……。授業終わった?」

    鳴上「終わったよ。帰ろう」

    美奈子「ん、帰って見送りいかないとね……よし、帰ろっか!」

    >美奈子と帰って、湊たちを見送ろう……。

    542 = 527 :



    【巌戸台駅】


    有里「それじゃ、お世話になりました」

    陽介「くそっ……美女五人と同じ屋根の下……悠ぅ~変わってくれよぉ!」

    千枝「……バッカじゃないの?あの、色々お世話になりました」

    美鶴「ああ。帰るまで気を抜くなよ。家に帰るまでが旅行だぞ」

    順平「陽介ー、帰ってもちゃんと勉強しろよー」

    陽介「任せといてくださいよ、気が向いたらしますって!」

    岳羽「千枝ちゃん、これあげるね。がんばって!」

    千枝「えっ、ほんとですか!?うわ、ありがとうございます!が、がんばります!?」

    >皆思い思いに別れを告げている。

    陽介「お、電車来たぜ。これだろ?」

    千枝「そうだね。じゃあほんと、お世話になりました!楽しかったです!」

    美鶴「またいずれ会おう。今度は私もそちらにお邪魔したいな」

    順平「そん時ゃ俺も行くぜ!待ってろよ!」

    岳羽「私も連れてってもらおうかな。それじゃ、またね!」

    >三人が電車に乗り込んでいく。
    >……。

    鳴上「湊!」

    >最後のチャンスだ。
    >ここで何か伝えておかなければならない。

    鳴上「湊、お前は……」

    >言いかけた所を手で制される。

    鳴上「湊……」

    有里「……ガラじゃないんだけど」

    >湊はぽりぽりと頬を掻いて、それからしっかりと俺の眼を見て言った。

    有里「信じろ」

    >その言葉には『僕を』も『仲間を』も入っていなかった。
    >しかし、それだけでしっかりと伝わった。
    >……大丈夫。俺達は、大丈夫だ。

    鳴上「……またな」

    有里「うん。また」

    >湊が電車に乗る。
    >これで、またしばらくは会えないだろう。
    >だが、どこか安心して見送る事が出来た。
    『No.13 死神 有里湊』のランクが4になった。

    >振り向くと、美奈子が笑っていた。

    鳴上「……どうかしたか?」

    美奈子「別に。嬉しくってさ。……さ、帰ろう!」

    >美奈子に強引に手を引かれて、寮への道を歩いた。


    >……次の日の朝、影時間が無くなった事を知らされた。

    543 = 527 :



    【夜 八十稲羽駅前】


    陽介「うぉーなつかしの八十稲羽!っつっても一週間も経ってねぇけどな」

    千枝「帰って来たーって感じだね」

    有里「さてと、それじゃここで解散といこうか?」

    陽介「そうだなー。お、そういやお前来週から同級生だろ?」

    千枝「あ、そうだったね。制服とかどうなってんの?」

    有里「美鶴に聞いたら堂島さんの所に送ってあるそうだから、月曜から本式に八十神高校の三年生だね」

    千枝「そっか。楽しみだね!」

    有里「そうだね……っと、どうやらお迎えみたいだ。じゃあ、また」

    >駅前に車が止まって、菜々子が降りてきた。
    >堂島さんも続いて降りてくる。

    菜々子「湊お兄ちゃんおかえり!ちゃんとお留守番してたよ!」

    有里「ただいま。良く出来たね」

    >菜々子の頭を撫でてやりながら、堂島さんに一礼した。

    有里「ただいま帰りました。わざわざ迎えに来ていただいて……」

    堂島「構わんさ。それじゃ帰るか。そうだ、荷物も届いてたぞ」

    有里「ああ、そうですか。どうも高校に通える事になりまして」

    堂島「良かったじゃないか」

    有里「それから、僕の生活費も工面してくれる先が見つかったので……家賃代わりにお納めしたいんですが」

    堂島「ん?そんなもんいい。お前はその分働いてくれてるだろ」

    有里「でも、学校に通い始めたら家事をする時間も……」

    堂島「……そうだな。ま、お前の気が済むなら受け取るよ。ほら、そういうのはいいから乗れ。疲れただろ」

    有里「すみません……ありがとうございます」

    >堂島さんの運転で家に帰ることになった。

    544 = 527 :

    有里「……」

    菜々子「湊お兄ちゃん、何か面白い事でもあったの?」

    >膝の上から菜々子が聞いてくる。

    有里「いや、悠と別れた時にね。彼が面白い顔をしてたものだから」

    菜々子「お兄ちゃんが?」

    有里「うん。……あれは、良い顔だった」

    >別れ際の悠の顔が浮かぶ。
    >しっかりとした信頼に満ちた顔だった。
    >あれが自分に向けられた物だと思うと、少し愉快になる。

    有里「誰かから信頼されるのって、こんなに嬉しい事だったかな。……久しぶりすぎて、忘れてるだけか」

    >菜々子は不思議そうに僕を見ている。
    >また、頭を撫でてやった。
    『No.10 運命 鳴上悠』のランクが4になった。


    【堂島宅】


    >部屋には制服と教科書が置いてあった。
    >確かに、陽介が着ていた物と同じだ。

    有里「実感が沸いてきた……」

    >学生生活、特に楽しいと思った事は無かったが……。

    有里「あのメンバーと一緒なら楽しいかもしれないな」

    >少し顔が緩む。
    >……ゆかりに言われた事を思い出す。
    >子供っぽくなったというより、もしかすると……。

    有里「僕、今結構幸せなのかもしれない」

    545 = 527 :

    >言ってから照れくさくなって一人で笑った。
    >幸せ。
    >そういえば昔はそれなりにそんな感覚もあった気がする。
    >それこそ大昔、せいぜい5歳か6歳までだが。
    >……あの夜以降、確かに感情の触れ幅は小さくなっていた。
    >当時は一切自覚が無かったが、今にして思うとはっきりとわかる。
    >あの頃の自分は異常だった。
    >滅私の極みとでも言おうか。
    >けれど今は違う。
    >ちょっとした事で、笑ったり焦ったり。
    >それが嬉しくて仕方が無い。
    >ようやく、人間になれたような気分だ。

    有里「教科書か……ちょっと読んでみようかな」

    >まずは現国か……。

    >……。

    有里「あ、まずい。ちょっと読みすぎた」

    >気がつくと、時計が随分と進んでいる。

    有里「読破って、ちょっと読むのレベルじゃないよね……あ、れ?」

    >違和感。
    >浮かれすぎて何かを見落としたか?
    >もう一度、時計を確認する。

    有里「……1時。1時、だって?」

    >思い返す。
    >さっきまで卓上スタンドの明かりで教科書を読んでいた。
    >つまり、ずっとスタンドは着いていたという事になる。

    有里「影時間には、電気も届かない。はずだろ?」

    >……まずい予感がする。
    >まず悠に、それから美鶴に、それから陽介達に。
    >とにかく、メールしておこう。
    >早く返事が来る事を祈って。

    546 = 527 :

    さよなら巌戸台。
    ただいま八十稲羽。

    そして急展開。

    ここで本日分は終わり。
    では、また後日。

    547 = 527 :

    おわっ!やばい!かなり重大なミスに気付いた!ていうか大分前からミスってた!

    えーと、現在のタルタロス探索進捗状況が64F(三層)クリア、四層へとなっておりますが。
    これ間違いです。三層は114Fなので、前回二層クリアから間違ってることになります。
    ええと、前回探索で64F到達し、美奈子発見は114F……のつもりだったんですけど。

    とりあえず、現在三層までクリア、次から四層……って事でお願いします。
    申し訳ないです。

    548 :

    メギドラ乙!

    549 :


    続きが気になる

    550 :

    乙ダイン
    終わり方が卑怯


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