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    元スレ鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」

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    901 :

    今いるキタローがこの世界のキタローじゃないのか、ただキタローが嘘吐いただけなのか
    どっちなんだろう?

    903 :

    900越えたしトリップ導入。
    思ったより長くなってしもうた。
    このスレ内で終わらせる予定だったんだけど・・・

    というわけで本日分。

    904 = 902 :



    【2012/8/13(月) 雨 堂島宅】


    >今日も雨だ。
    >……気分が優れない時に雨が降ると、少し癒されるような気がする。
    >夏の日差しよりは今の俺に優しいように思えた。

    鳴上「湊、気分はどうだ?」

    有里「……もう平気。心配かけた」

    >今確実に出来る事は、湊とは協力できるって事だ。
    >仲間にいるとこれほど頼もしいヤツはいない。

    鳴上「これから、どうしようか」

    有里「どうするもこうするも……とりあえず、現状の整理だ」

    鳴上「まず、今いるこの世界はどこかから枝分かれした物で、それは俺達が選択した結果じゃない……んだよな?」

    有里「周防さんが言うにはそうだね。誰かが僕達を観察する為にでっち上げた世界」

    鳴上「一種の平行世界ではあるけど、誰かに作られた物だから、その誰かを倒せば消滅する」

    有里「ニャルラトホテプだっけ。名前だけなら可愛いんだけどね」

    鳴上「冗談言える状況か。そして、消滅すると……」

    有里「この世界に枝分かれした時点まで遡行して、その時点から通常の生活を送れると。ただし、この世界での記憶は無し」

    鳴上「結局、どうしたってこっちで知り合った人達や、仲良くなった事も無かった事になるんだよな……」

    有里「悠はそれでもやり直せばいいって言ってたじゃない。その通りだと思うよ」

    鳴上「そうだな……そして、俺達はこの世界が平行世界の内一つである事を自覚した。それによって、色んな事を理解する事が出来た」

    有里「更に僕達に深く関わると、何らかのペナルティが加えられるらしいね。そういうルール」

    鳴上「風花さん……俺のせいで」

    有里「仕方ないさ。僕はもうその風花さんの事は覚えてないけど、お互いが望んで絆を深めたのなら……後悔は無い。だろ?」

    鳴上「それでも、俺は許せない。例え作られた世界でも、俺と関わった人がどこかへ居なくなってしまうなんて、とても耐えられたものじゃない」

    有里「……それなんだけど、少し疑問がある」

    鳴上「何だ?」

    905 = 902 :

    有里「僕はまだわからないけど、悠は居なくなった風花さんの事をはっきり覚えてるんだよね?」

    鳴上「ああ」

    有里「恐らく、それは僕達が特異点だから……だと思うんだけど。じゃあ、居なくなったからって風花さんとの絆が消えるわけじゃないんじゃないかな」

    >確かに、自分の心の中にはっきりと風花さんとの絆を感じる。

    鳴上「絆の力は失ってないみたいだ」

    有里「……なら、いい。それで、これからの事を考えよう。実は、僕の方針は昨夜決めてあるんだ」

    >僕達の、では無く僕の、か。

    鳴上「どうするつもりだ?」

    有里「このまま、皆と絆を繋いで行きたい。そうしなければ僕達の力は十分に発揮できない。そうでしょ?」

    鳴上「それはそうだけど、それじゃもしまた誰かが居なくなったら……」

    有里「居なくなっても絆の力自体は保持できる。なら、これが最良だと思うけど」

    鳴上「じゃあ、お前は皆が居なくなっても平気なのか?」

    有里「平気じゃないさ。けど、現実的に見てそうする事が一番効率的だと思う。もしこの世界を消滅させる……ニャルラトホテプと戦うなら、やっぱり力が必要だ」

    鳴上「でも、俺とお前がいれば……!」

    有里「世界を作るような相手だよ。まず同じ土俵で戦ってくれるのかどうかも怪しい。少しでも力を付けておく必要がある。わかるだろう?」

    鳴上「それじゃ……俺達の勝手で皆を……居なくなるならまだいい。もしかしたら死んだり、他のペナルティを受ける可能性だって……」

    有里「前に言ったよね。君のソレは理想を追っているのか、それとも現実を見る勇気が無いのか。今回はどっち?」

    鳴上「俺は……!」

    >湊の言う事は正しいように思う。
    >いや、多分正しいんだろう。
    >だけど、俺は今この世界に存在している。
    >それは他の皆も同じで、だから、そんな皆を俺達が勝手に決めた事で犠牲にするなんて事は……。

    有里「……言いたくは無いけど、所詮消える世界だ。ならどうなろうと……」

    鳴上「それ以上は言わないでくれ。頼むから」

    有里「……」

    906 = 902 :

    鳴上「そうだ、せめて事情を説明して、それでわかってくれる人を……」

    有里「わかってくれたからどうするの?結局はどうなるか分からない道に引きずりこむだけだ。同じだよ、どうなろうと」

    鳴上「俺は、俺はこれ以上誰かを失いたくない。だから、俺は……」

    有里「これ以上誰とも関わらない?そんなこと可能なのかな」

    鳴上「関わり全てを断つのは不可能でも、これ以上踏み込まないことは出来るはずだ。そうすれば、誰も失わずに済む」

    有里「僕は嫌だ」

    鳴上「湊……」

    有里「……僕は、皆ともっと、繋がっていたい。悠がもし止めたとしても、それは変わらない」

    鳴上「……」

    有里「僕も、本当なら悠のように言いたい。けど、重すぎるんだ。その決断は……僕には出来ない」

    鳴上「でも、それじゃ」

    有里「何度もは言わない。僕はこのまま過ごす。もし悠がそれに納得できずに止めたいなら止めればいい」

    >湊は本気だ。
    >あの時のような、本気の目をしている。
    >……くそっ。

    鳴上「どうして皆が居なくなるかもしれないってのにそんな事が言えるんだ?お前は皆をどう思ってるんだ?」

    有里「大好きだよ」

    鳴上「だったら!」

    有里「悠、君にはもう一度がある。もしこの世界が無くなっても」

    鳴上「何を言ってるんだ?」

    有里「特異点の話だよ。分岐したのはどこだろう。覚えは無い?」

    鳴上「そんな事言われても、そんなタイミングに覚えなんて無いぞ」

    有里「最初の異常だよ。事件が起きたのはいつかな」

    鳴上「……最初は、影時間の復活」

    有里「そう、そのはずだ。そして、影時間の復活は同時に僕がこの街に来た時でもある」

    >……湊は何が言いたいのだろう。
    >今はそんな話をしていない。

    鳴上「それがどうしたんだ」

    有里「わからない?本当に?この世界が消滅したら、時間を遡って分岐前のポイントに戻る。つまり、何も異常が起こっていない時に戻るんだ」

    鳴上「だから!それが……」

    有里「影時間が復活しなければ、僕はここにいないんだよ」

    907 = 902 :

    >あ。
    >大いなる封印、それが解けた事による魂の開放。
    >それがあったから、湊は今ここにいる。
    >影時間の復活が無い所まで戻ってしまえば……。

    鳴上「湊、お前……」

    有里「僕には二回目は無い。もう一度知り合って、仲良くなる事は出来ないんだ」

    鳴上「……」

    有里「出来れば、止めないで欲しい。僕は、もう悠と争いたくない……自分勝手だけど」

    有里「楽しいんだ、毎日。昔は無かった感情が、感覚がたくさん。僕は、今そういう日常を謳歌出来ている。多分、二度とない日常を」

    有里「だから、最後まで楽しみたい。全て、僕の勝手な理由だ。悠の友達も居なくなるかも知れないのに。だから、止める権利はある」

    >止めたい。
    >誰も失わずに済むならそうしたい。

    鳴上「俺は、お前だって好きだ。……湊がそうしたいなら、そうすればいい。止める事なんて出来ない」

    >恐らくは、本人も辛い。
    >余り動かないその表情に、苦悩がはっきり見てとれるくらいには。
    >そんな顔を見せられて、誰が止められるだろうか。
    >少なくとも、俺には無理だ。

    有里「ありがとう……そして、すまない。僕を、許してくれ」

    鳴上「……」

    >雨が降っている。
    >しばらく二人は無言で過ごして……。
    >無言のまま、湊は部屋を出て行った。

    908 = 902 :



    【2012/8/14(火) 晴れ 堂島宅】


    鳴上「……誰とも何もしないって、暇なもんだな」

    >……これ以上深い仲を築いてはいけない。
    >その為には、まず関与を避ける事だと思ったのだが。

    鳴上「そうだ、俺がこうしてても湊は関わってるんだから、別に俺が我慢してても……」

    >いや。

    鳴上「違う、そうじゃないだろ……初日から挫けそうになってどうするんだ」

    >決めた事だ。
    >俺が動かなければ、向こうからそこまで積極的に関わってくる人はいないだろう。
    >風花さんはもういないし……こうして退屈と戦うだけで、不測の事態は免れる。

    鳴上「早いとこ慣れないとな。これからは……毎日こうなんだし」

    >電話が鳴っている。

    鳴上「……どうすべきか」

    >無視すると、きっと様子がおかしいと勘繰られるだろう。
    >そうなると、心配されてまた何かアクションが起こる可能性がある。

    鳴上「結局、それなりにやるしかないか」

    >電話に出よう。

    鳴上「もしもし」

    アイギス『鳴上さんでしょうか』

    鳴上「あれ、アイギスさんですか?」

    アイギス『はい、私です。今花村さんの電話をお借りして連絡しています』

    鳴上「そうですか。何か用事でも?」

    アイギス『はい。今日、夜にバーベキューでもしないかと提案がありまして、各自食材を持ち寄るようにと』

    鳴上「バーベキュー?」

    アイギス『お肉が食べられます』

    鳴上「あの、俺は……」

    アイギス『どうかしましたか?都合が悪いとか』

    909 = 902 :

    鳴上「……」

    >ここで都合が悪いと言えば、それでいい。
    >用事があるから行けない、とそれだけいえば……。

    鳴上「……今日は、少し」

    アイギス『お肉が食べられますよ?』

    鳴上「いや、わかってますけど」

    アイギス『……あ、お野菜の方が』

    鳴上「食材の問題じゃなくですね。今日は少し用事が」

    アイギス『……そうですか、残念です。皆さん楽しみにしていると思います……ですが、用事なら仕方ないですね』

    >何故そう、後ろ髪を引かれるような言い方をするんだ。
    >……行きたいな。
    >楽しいだろうな。
    >……今日で、最後だ。

    鳴上「……いえ、何とかしてみます。適当な食材見繕って持って行きますね。場所、どこですか?」

    アイギス『鮫川の河川敷だそうです。夕方に集まって、ご飯を食べた後に花火でもしようと』

    鳴上「わかりました。……あの、アイギスさん」

    アイギス『どうかしましたか?』

    鳴上「ありがとうございます、わざわざ連絡してくれて」

    アイギス『……?鳴上さんが来ないと、気になりますから。では、また後で』

    >電話が切れた。
    >俺がいないと気になる、か。

    鳴上「意思弱いな、俺」

    >……今日で最後。
    >これは守る。
    >今日で、最後だ。
    >……最後……か。

    鳴上「あ、そうだ。折角だからちゃんと仕込みしてから行くか。……丁度、レシピ帳にも何個か書いてあったし」

    >風花さんのレシピ帳を握り、台所へ向かう。
    >冷蔵庫を開けるも、大した食材は入っていない。

    鳴上「……ま、適当にでっちあげるか。何も無いわけじゃなし」

    >食材の仕込みの途中、何かを思い出しそうになって辛かった。

    910 = 902 :



    【夕方 鮫川河川敷】


    >二日降った雨も、夏の日差しに負けて渇き切っている。
    >少し蒸し暑く、過ごし易いとは言えない気温だった。

    アイギス「あ、鳴上さん。良かった、来れたんですね」

    鳴上「はい、何とか。あ、これ一応持ってきたんですけど」

    >皆揃っている。

    岳羽「お、どれどれ。うわ、すごい凝ってんね」

    鳴上「そうでも無いですよ」

    陽介「おー相棒!今日用事あるっつってたからもしかしたら来ねえかと思ったぜ!いや良かった良かった!さて、それじゃそろそろ始めますか!」

    クマ「全力で食べるクマー!」

    順平「着火は任せろー」

    >順平さんが炭を熾して網を乗せた。

    美鶴「火に気をつけてな」

    「違う、そうじゃない。こっちに乗せるんだ。そこは少し火が強すぎる」

    完二「こっちっスか?え?違う?どこでもいいだろ焼けりゃよぉ」

    >……。

    美奈子「あ、このお肉おいしー」

    雪子「ほんと、美味しい……これ、鳴上君が持ってきたんだっけ」

    直斗「ああ、久慈川さん!そんなに唐辛子を……」

    りせ「だーいじょうぶだって!美味しいよ多分!」

    >皆から少し離れた所で食べる事にしよう。
    >そう思って移動したら、湊がついてきた。

    有里「来ないつもりだと思ってたよ」

    鳴上「そのつもりだったよ」

    有里「じゃあどうして?」

    鳴上「……思ったより、意思が弱くてな。あれだけ言っといてお笑いだけど」

    有里「僕が笑える話じゃないよ」

    鳴上「でも、今日で最後だ。これからは……一線引いて接する事にするよ」

    有里「悠……」

    鳴上「心配しなくても、お前の邪魔したりはしないから。やっぱり勇気が無いんだと思うよ、俺は。何かを失くす事が怖くて仕方ない」

    有里「それは臆病じゃなくて優しいって言うんだよ。これも、僕が言う事じゃないけど」

    鳴上「……ほら、里中がこっち気にしてるぞ」

    有里「……ほんとだね。行ってくるよ」

    鳴上「ああ、じゃあな」

    >……。

    911 = 902 :

    順平「いやー食った食った!いい具合に暗くなって来たし、花火行くか!」

    クマ「もう食えんクマー……クマここで寝てるから花火持ってきてー」

    陽介「バカ言ってねえで立てよ、汚れんぞ?この三十連発ってヤツやろーぜ!」

    完二「開幕それっスか、もっとこう、小さいのから……」

    「細かいことは気にするな。派手にこしたことはない」

    美鶴「火傷するなよ?」

    岳羽「なんか、美鶴先輩お母さんみたいだよね、今日」

    美奈子「まぁ真田先輩がアレだし、最年長として張り切ってんじゃないの?」

    アイギス「これ、私に搭載できないでしょうか」

    雪子「アイギスさん、これ花火!武器じゃないから!」

    千枝「今そんな面白い事言ったかな……」

    直斗「まぁ、いつもの事ですけどね……」

    りせ「ねーまだー?」

    順平「慌てんなって今火着けっから……っしゃきた!逃げろ逃げろ!」

    >導火線を火が辿っていく。
    >……花火が、上がった。

    りせ「わー綺麗綺麗!」

    クマ「なんかちょっと美味そうクマ」

    陽介「もう食えねえっつってたじゃねーか」

    >色とりどりの花が咲く。
    >本当に綺麗だ……。

    912 = 902 :

    岳羽「あ、鳴上君。お肉美味しかったよー、あれって自己流?」

    鳴上「ああ、いえ。ある人に教わって……」

    岳羽「へぇ、そうなんだ。じゃあその人ってかなり料理上手なんだね。羨ましい」

    鳴上「そうですね、料理が上手くて、優しくて、くすぐったがりで……」

    岳羽「いやいや、そこまでは聞いてないって。……鳴上君?」

    鳴上「恥ずかしがり屋で、可愛くて、本当に、好きでした」

    岳羽「ちょ、ちょっと!泣かないでよ、私が何か言ったみたいじゃん。どうしたの?大丈夫?」

    >後から後から涙が零れた。
    >クマがネズミ花火に追いかけられている。
    >それを見て皆笑っている。
    >皆の中に風花さんはもういない。

    岳羽「私、もしかして地雷踏んじゃった?ね、鳴上君ってば」

    鳴上「すみません、どうしても……今は、会えない人なんです。居なくなってしまったから」

    岳羽「ご、ごめん……知らなかったからさ、ごめんね。よっぽど好きだったんだね……」

    鳴上「大丈夫です……」

    >耐えられるのだろうか。
    >これから先、皆との関わりを薄くして、こんな感情と付き合っていけるのだろうか。
    >寮に帰っても一人足りず、誰もそれに気付かない。
    >そんな、そんな事が……。

    鳴上「皆!聞いて欲しい事がある」

    >気付いた時には大声を上げていた。
    >騒いでいた皆がこっちを見る。

    有里「……悠?」

    鳴上「皆に言わなきゃならない事がある。もう誰も覚えていない、俺達の仲間の話を」

    有里「悠!それは……」

    鳴上「それだけじゃない!俺達に課せられたルールと、この世界の真実。聞いて欲しい。俺だけで抱えるのは……辛すぎるから」

    有里「それは……一番やっちゃ駄目だろう……!」

    913 = 902 :

    >湊が憤っている。
    >頭ではわかっている。
    >俺のやっている事は下の下策だ。
    >ただいたずらに混乱を招き、被害を増やす事になるかもしれない。
    >それでも、俺は言わずにはいられなかった。
    >誰にも覚えてすらもらえない、それ程悲しい事はないように思ったから。
    >俺は、周防さんから聞いた話、俺に起こった話……
    >その全てを、皆に説明した。

    順平「おいおいおい鳴上ぃ。今日はアルコール無しだぜ?どうしちゃったんだよ」

    鳴上「順平さん……」

    りせ「先輩、ちょっと落ち着こうよ?ね?」

    鳴上「ほ、本当なんだ!信じて……」

    美鶴「いや、信じていないわけじゃない。……が、急にそんな話をされても、どう受け取ったら良いかわからないんだ」

    陽介「大体その、誰だっけ?山岸さん?とかって人の事、全く覚えてねーんだよなぁ……」

    鳴上「だから、それは……!」

    直斗「ちょっと、僕達にも時間をください。今の話を噛み砕く時間を……」

    鳴上「それは、構わないけど……」

    有里「悠」

    鳴上「み、湊……俺は……」

    有里「君を責めるつもりはない。僕だってそうしたかも知れない……ただ、これでここからどうなるか完全にわからなくなった」

    鳴上「すまない……」

    有里「……被害を抑える事も難しくなるかもしれない」

    鳴上「だけど……」

    有里「だから、責めるつもりは無いって。考えようによっては、この方が良かったかもしれない」

    鳴上「何でだ?」

    有里「覚悟は出来るからだよ。僕のやり方は正々堂々とはしてなかったから……こっちの方が、潔いかと思って、ね。やっぱり、納得して動いてもらうべきだろう」

    鳴上「……」

    有里「それに、仲間に秘密を作るのも良くない。でしょ?」

    鳴上「……ありがとう、湊」

    有里「慰めてるわけじゃない、本心だよ」

    914 = 902 :

    鳴上「あ、あの、皆……いきなりこんな事言って、戸惑うとは思う。けど、全部本当の事で……」

    千枝「わかってるよ、鳴上君、こんな嘘吐かないもん」

    雪子「……でも、これからどうすればいいのかな」

    りせ「仲良くなったら、消えちゃうかも知れないって……」

    >皆は動揺している。
    >当たり前だ……。

    美奈子「もー、何悩んでんの?」

    有里「美奈子」

    美奈子「消えたりするのは、そりゃまぁ嫌だけど……だからって悠や湊との接し方変えちゃうの?」

    順平「でもよ……」

    完二「ま、悩みたけりゃ悩みゃいいじゃねえか。軽い話じゃねェみたいだしよ。けど、俺ぁこの二人についてくって決めちまったんスよ」

    鳴上「完二……」

    美鶴「……確かに、何があろうと二人は私達の仲間だ。ただ、これから対策しようの無い事態に陥る事もあるだろう」

    「考える時間は必要だな。どちらにせよ、だ」

    アイギス「……そんな事って」

    鳴上「あの、俺……帰ります」

    有里「ああ、待って……皆。僕は、それでも皆と仲良くしたいと思ってた。ごめんね。迷惑がかかるのは皆の方なのに」

    千枝「それは……いいけど、さ」

    有里「そのくらい、大切なんだ。この世界が、この時間が。それだけは分かって欲しかった。僕も帰るよ。……また、会ってくれたら嬉しい」

    >湊が後ろから追いかけてくる。

    鳴上「悪かったな、これからやりにくくなると思う」

    有里「いいって。けど、一緒に住んでて堂島さんたちは平気なのかな」

    鳴上「一緒に住んでも仲良くなるかどうかは別だろ」

    有里「それもそうか。……もし全員僕達の事避けるようになったらどうする?」

    鳴上「そうなっても、お前には俺がいるだろ」

    有里「そうだね。多分、世界でただ二人、同じ条件にいるのが僕らか。そう考えると不思議な気分だね」

    鳴上「本当に俺達だけになったらやりきれないけどな」

    有里「そしたら笑おう。やりきれない時こそ笑うべきだって、昔何かの歌で聞いたよ」

    鳴上「お前とならそれもいいか」

    有里「悠とならね」

    >……恐らく、状況は悪化してしまった。
    >しかし、お互いにより強い信頼で結ばれたのを感じる。
    『No.10 運命 鳴上悠』のランクが5になった。
    『No.13 死神 有里湊』のランクが5になった。

    915 = 902 :



    【ベルベットルーム】


    イゴール「……おや、本日は御揃いで」

    鳴上「……?」

    有里「僕は来た覚えが無い」

    イゴール「そうでしょうな。あなた方は今眠っている。本日は、少しお知らせしておきたい事がございまして」

    エリザベス「あなた方の力の源……コミュニティに変化が現れています」

    鳴上「ど、どうなったんだ?」

    マーガレット「心配なさらずとも、何かが失われたわけではございません」

    有里「色々あったからね、心配にもなる」

    イゴール「アルカナに対応する人物が変化しているやもしれません。……いよいよ、核心に迫られた様子」

    鳴上「俺は何もしてない。たまたまそうなっただけだ」

    有里「同じく。そもそも何が出来るかもわかってない」

    エリザベス「何が出来るか、では無く」

    マーガレット「何をするか、が重要なのです」

    イゴール「貴方方は本当に素晴らしいお力をお持ちだ。出来る事ならその限界を見てみたい。その為なら、如何な助力も惜しみません」

    鳴上「見てみたい……」

    有里「念のために聞くよ。この世界を構成したのは、誰かの『見てみたい』という意思からだそうだ。……この部屋は、関わっていないよね?」

    エリザベス「モチのロンでございます」

    鳴上「なんていうか、古いな」

    マーガレット「……我々にそうした力はありません。我々より更に上、主の主であるならば、もしかすると……」

    イゴール「その話はおやめなさい。……申し上げた通り、我々にはそのような力はございません。見たいとは言っても、その為に何かを用意するなどとてもとても」

    有里「信用するよ。話はそれだけ?」

    イゴール「コミュニティの変化は環境の変化、そして心の変化でもあります。お二人が協力していくおつもりなら……」

    エリザベス「お互いの事をより良く理解しておく事です」

    マーガレット「お二人はとても良く似ている。しかし、その環境は余りにも違いすぎます」

    イゴール「差が、生まれるでしょう。考え方や、姿勢。そういった部分に」

    鳴上「それはそうだけど、それでも俺達は……」

    イゴール「……そうですな。いらぬ口出しをしました。それでは、そろそろ意識をお返しせねばなりません。また、いずれ……」

    エリザベス「またのご来訪を」

    マーガレット「お待ちしております」

    >……。

    916 = 902 :

    さり気なく、八十稲羽滞在最終日。
    明日には帰ります。
    皆ついて来てくれるんだろうか。
    ややこしくなってきたものだ。

    あと数回の投下でこのスレでの本編進行も終わりです。
    ちょろっと残して番外編みたいなのを投げて、次スレへ。

    というわけで本日分は終わり。
    では、また後日。

    921 :

    ちょっと今考えてる事があります。
    このスレ内で一旦区切りまでやってしまって次スレから新展開を・・・

    どうなるかは尺と相談。
    アレだった場合普通に次スレ途中から新展開となります。

    というわけで本日分。

    922 = 902 :



    【2012/8/15(水) 晴れ 堂島宅】


    鳴上「俺たちは今日帰るけど……湊はどうする」

    有里「僕は行くよ。折角だし……ただ、他の皆はどうかな」

    鳴上「だよな……」

    >昨日の話を聞いた上で、俺達に付き合おうなんて思えるだろうか。
    >楽しい旅行が……覚悟のいるイベントになったものだ。

    有里「荷物まとめた?」

    鳴上「ん、ああ。……お前とは遠慮なしに付き合っていいんだよな」

    有里「僕は女の子が好きなんだけど……」

    鳴上「知ってる。……なぁ、お前、前に向こうの皆とは何も無かったって言ってたよな」

    有里「そうだよ。どうかしたの?」

    鳴上「風花さんが言ってたんだ。その、初めてはお前が相手だったって……」

    有里「……当たり前だけど、記憶に無い。ただ、誓ってもいい。僕は誰か特定の相手を作るつもりが無かったから、何もしてないんだ。これは本当」

    鳴上「じゃあどういう事だ?風花さんが嘘吐いたってわけでもないだろ」

    有里「あるいは、そういう可能性もあったのかも。僕が風花を選ぶ世界。彼女だけに絞ったなら、僕もそりゃ遠慮なく……」

    鳴上「ややこしいな……」

    有里「とにかく僕はやってない。ていうか僕、まだだし」

    鳴上「まだ?」

    有里「……まだ、したことない」

    鳴上「……ふっ」

    有里「悠、今優越感持ったね?上に立った気になったね?」

    鳴上「そんな事ないぞ」

    有里「悠の相手だって今はいないんだからノーカウントだよ」

    鳴上「冗談でもそれは言うなよ……」

    有里「ごめん……なんか悔しくて……」

    >Pipipi……
    >同時に二人の携帯が鳴った。

    鳴上「もしもし」

    有里「もしもし」

    「……え?」

    923 = 902 :



    【八十稲羽駅前】


    順平「おせーぞ二人共!」

    鳴上「す、すみません」

    有里「ていうか、何で全員集合なの?」

    陽介「何でって、俺らも行くんだよ。都会!遊ぶ!言ったろ?」

    鳴上「でも、俺達と関わると……」

    アイギス「……一晩、考えたんです。でも、結局答えは見つからなかった」

    美鶴「だが、わかっている事がある。それでも、君達は……私の、そしてここにいる全員の特別な存在であるということだ」

    雪子「二人だけで抱えさせるなんて出来ないもの、私達」

    りせ「そーいう事です!戦うんだったら、皆一緒に、ね」

    「考えようによっちゃ、これ以上無い相手じゃないか。世界を作った存在……いわば、神だろ?」

    岳羽「そういうの苦手なんだけどさ。何にもせずに逃げるのだけはゴメンって感じ」

    直斗「そう簡単に消えたりしませんよ。これでも無茶には慣れた方なんです……先輩たちのおかげでね」

    完二「そーいうことっス。どうなろうと、このままほったらかす方が後悔しそうなんで」

    美奈子「私は二人と二心同体だったこともあるし?今更離れろってのが無理だよ」

    >里中が湊の手を握った。

    千枝「自分達ならどうなってもいい、とか。皆に迷惑だから、とか。そういうの、もうやめようよ。私達さ……そんな仲で終わりたくないもん」

    >……羨ましい、な。

    有里「……昔の皆だったら、まず間違いなく僕は一人ぼっちだったんだろうけどね。何でこうなったのかな」

    鳴上「多分、お前のせいだろ」

    有里「悠だって、随分影響与えてくれてるみたいだけど?」

    鳴上「そうか?」

    「ほら、行くぞ。帰って天田に土産をやらないと」

    有里「あ、そういえば乾には話した?」

    美鶴「昨日、電話でな……彼は彼なりに、思う所があったようだが、帰りを待っていると言ってくれたよ」

    鳴上「そうですか……」

    菜々子「お兄ちゃん!」

    有里「あ、菜々子……」

    菜々子「ひどいよ、菜々子置いてくなんて……」

    鳴上「ごめんな、ちょっと慌てて出てきちゃって……」

    堂島「そりゃいいが、挨拶ぐらいしていけよ」

    有里「あ、堂島さん……というわけなので、またしばらく留守にします」

    堂島「どういうわけだか知らんが、気をつけて行ってこい」

    鳴上「菜々子、また来るからな」

    菜々子「うん、菜々子待ってるからね。いってらっしゃい!」

    >結局、皆はそれでも俺達と一緒にいる事を選んでくれたようだ。
    >その中に、風花さんはいないが……。
    >皆から強い信頼と決意を感じる。
    『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが4になった。

    >……。

    924 = 902 :



    【巌戸台駅】


    >久しぶりの巌戸台だ。
    >八十稲羽に慣れてきた身としては、ここのごたごたした風景が少し新鮮に見える。

    天田「皆さんお帰りなさい!」

    有里「や、ただいま。元気だった?」

    天田「はい、なんとか。……あの、有里さん、鳴上さん」

    鳴上「どうかしたか?」

    天田「僕は、どうなろうとお二人と一緒に戦います。そうする事で、何かが見える気がするんです。僕の探してた物が……」

    >悠が黙ったまま、乾の頭を撫でた。

    天田「子供扱いはやめてください……あ、それからいらっしゃい!八十稲羽の皆さんですよね」

    りせ「やだ可愛い……先輩、この子なんですか!?」

    >りせが何故か興奮している……。

    鳴上「タルタロスで一度会ったはずだろ?」

    りせ「あ、そういえばいたかも。ごめんねボク、あの時慌ててたから」

    天田「……あの、どこかで見た事ある気がするんですけど、もしかしてアイドルの……」

    りせ「あ、バレちゃった?そーそー、アイドルのりせちーです!よろしくね!」

    天田「うわ、アイドルって初めて見ました!よ、よろしくお願いします!」

    >何だかわからないけど、二人は仲良くやっていけそうだ……。

    有里「さてと、美鶴先輩。僕達はどこに泊まればいいのかな」

    美鶴「ああ、迎えを来させるから、任せておけばいい。さて、それでは私達は寮に帰るとしよう」

    >……。

    925 = 902 :



    【ホテル内 有里の部屋】


    有里「……おおう」

    >凄い部屋だ……。
    >いや、本当に凄い部屋だ。

    陽介「なんでお前だけ一人部屋なんだよ」

    完二「そんなに俺と同室嫌っスか」

    陽介「いやそうじゃねえけど、もし、もしだぜ!?天城とかりせちーとかが俺のとこにこう、夜這いたくなった時どうすんだよ」

    完二「ねェだろ、そんな事」

    有里「無さそうだね」

    陽介「……まぁ、有里がいつも通りで安心したよ、うん」

    有里「ありがとう。二人共いつも通り接してくれて助かってるよ」

    りせ『せんぱーい!入っていーですかー?』

    雪子『あんまり大きい声出しちゃ他の人に迷惑だよ』

    千枝『ていうか、有里君も疲れてるだろうし、ゆっくりさせてあげようよ……』

    陽介「……」

    完二「……俺らいるの、知らないんスよね、多分」

    陽介「部屋戻るか」

    完二「そっスね……」

    有里「はいはい、今開けるよ……」

    >皆驚く程いつも通りだ。
    >……ありがたい、が、少し不安もある。
    >特に千枝は、既に随分距離が近いように思う。
    >でも、それでも、僕は……。

    926 = 902 :



    【2012/8/16(木) 晴れ シャガール】


    >千枝を誘ってシャガールに来た。
    >千枝は何故かそわそわしているようだ……。

    有里「……どうしたの?」

    千枝「え、いや、その……ほら、八十稲羽ってこういうお店無いじゃん?だから、なんかこう……落ち着かなくて」

    有里「別に構える事は無いと思うけど……僕もいるし」

    千枝「有里君は頼りにしてるけど、一緒にいるせいで緊張する事もあるのだよ?」

    有里「そう」

    千枝「……そうなんです」

    >少しそっけなくし過ぎたか。
    >そっぽを向かれてしまった。

    有里「……今日はね、真面目な話があるんだよ」

    千枝「……うん」

    有里「千枝は、まだ僕の事好きだって言ってくれる?」

    千枝「ちょ、ここで言わせるつもり!?」

    有里「真面目な、話なんだ」

    千枝「……好きだよ」

    有里「そう……でも、このまま行くと、千枝も多分」

    千枝「だよ、ね」

    有里「だからさ」

    千枝「別れよう?」

    有里「別れる?」

    千枝「えっ?」

    有里「えっ?」

    >……しばしの沈黙。

    千枝「えっと、確認。有里君は、自分と仲良くしてると何があるかわからないから私を心配してくれてるって事でいいんだよね?」

    有里「そうだね」

    千枝「今日の話って、だから別れようって、そういう事じゃないの?」

    有里「こっちも確認。まず別れるって、僕たちってどういう関係だっけ」

    千枝「こ……恋人?」

    有里「……だったの?」

    千枝「ちょっと待って、それは流石に酷くない?」

    有里「ご、ごめん。その、良くわからなくて。僕は千枝を好きだって言った。千枝は僕を好きだって言ってくれたよね」

    千枝「そうだよ……」

    有里「ええと、それって、つまり……」

    千枝「両想いで、恋人というか……彼氏彼女になれたんだと思ってたんだけど」

    927 = 902 :

    有里「ああ……恋人ってこういうものなんだ」

    千枝「ええ?今そこ?」

    有里「そっか……恋人だったんだ、僕ら」

    千枝「……私はそう思ってたよ」

    有里「この関係、何て呼ぶのかと思ってた。そっか、これが……」

    千枝「もう慣れたけどさ。有里君って色々知ってるくせに変な所でズレてるよね」

    有里「自分の感情とか感覚と向き合うって事が無かったからね。そっか、恋人だったんだ」

    千枝「で、別れたほうがいいよって話なんじゃないの?」

    有里「別れたいの?」

    千枝「……嫌だよ」

    有里「僕も。だから、聞きたかった。どうなるかわからなくても、それでも僕とこのまま付き合っていってくれるのか」

    千枝「言ったでしょ?もっと仲良くなりたいの、私は。先が見えないのはいつもの事だしね」

    有里「……そっか。じゃあ改めてよろしく」

    千枝「ん、よろしく。……別れようって言われるのかと思って、凄いドキドキしてたんだけどね……」

    有里「それは悪かった。どれだけ考えてもその選択肢だけは出てこなくてね。もし千枝が別れたいって言ったら、それは従ってただろうけど」

    千枝「前から思ってたけど、有里君ってそういう事しれっと言うよね。恥ずかしくないの?」

    有里「……表情が乏しいんだ」

    千枝「本当はそんな事ないくせに」

    有里「いや、ほんとほんと。鉄面皮だからね」

    千枝「私ばっかり照れたり慌てたり……有里君もちょっとは付き合ってよ」

    有里「内心じゃ大慌ての時だってあるよ」

    千枝「見た目にわかんないからなー。そうだ。ちょっと目閉じてみて?」

    有里「ん?」

    >言われた通り目を閉じた。
    >唇に何かが触れる。
    >驚いて目を開けると、真っ赤な顔をしている千枝と目が合った。

    千枝「どう!?少しはびっくりしたでしょ!」

    有里「確かに驚いた」

    千枝「ちょっと待って、これ私の方がすっごい恥ずかしいんだけど!バカじゃん私!忘れて!記憶を消して!」

    有里「それはちょっと無理」

    店員「お客様、あまり騒がれますと……」

    千枝「すっ、すみません!ごめんなさい!静かにしてます!」

    928 = 902 :

    有里「……」

    千枝「何でわらっ……有里君って、そんな顔で笑うんだっけ?」

    有里「ん?」

    千枝「いや、なんか初めて見たかも?」

    有里「いやいや、そんなこと無いでしょ」

    千枝「場所が違うからかな。何か、新鮮」

    有里「……」

    千枝「あれ?ちょっと赤くなってない?」

    有里「そう?」

    千枝「いや、絶対そうだ!照れてるでしょ今!」

    有里「別に照れるような事は……」

    千枝「やった、初めて有里君動揺させられた!何かすっごい勝った!って感じ!」

    有里「……千枝、目閉じて」

    千枝「へっ」

    有里「お返し。ほら、早く」

    千枝「え、う、うん」

    >千枝はじっと目を閉じて待っている。
    >僕は、前髪をそっと分けて、その額の真ん中に思い切りデコピンをかました。

    千枝「いひゃっ!な、何!?」

    有里「お返し」

    千枝「何よ、何でよぉ……」

    有里「いや、普通に恥ずかしかったから」

    千枝「もー、ちょっと期待しちゃったじゃん!」

    有里「ん?ならしようか?」

    千枝「……やっぱり恥ずかしいからいい」

    有里「そう。……僕らはこれからずっとこんな感じなのかな」

    千枝「ずっと?」

    有里「うん。からかって、からかわれて、千枝が真っ赤になって。ずーっとそんな事やってくのかなって」

    千枝「あー、何かそうかも。え、嫌、なの?」

    有里「……結構、楽しいかもね」

    千枝「ふふ、そうだね。……鳴上君と風花さんって、どういう関係だったんだろうね」

    有里「聞いた話だと、行くところまで行ってたみたいだね。まぁ、ゆかりや順平や……僕と同い年だったら、それなりに大人って言っていい年齢だし」

    千枝「行くところまで……?」

    有里「……」

    千枝「……?」

    929 = 902 :

    有里「ほら、男と女がこう……夜」

    千枝「あっ、ああ!えっ、そうなの!?」

    有里「僕らにはもう記憶も無いけど、悠が言うんだからそうなんだろう」

    千枝「そっか、そうなんだ……鳴上君、そうなんだ……」

    有里「意外?」

    千枝「ちょっと意外。なんか、そういうのって無さそうに見えてたから」

    有里「彼も列記とした男性って事だね。誰でもそうだよ……多分、ちょっとやそっとじゃ出ない部分っていうだけなんじゃない?」

    千枝「ちょっとやそっとじゃないくらい、好きだったってことかな」

    有里「そうなんじゃないかな。……どうしたの?」

    >千枝は一層もじもじしている。

    千枝「いや、その、ね。有里君も列記とした男性だよね?」

    有里「うん」

    千枝「やっぱり、その、し、したいのかなーとか、思って」

    有里「コーヒー噴出す所だった」

    千枝「いや、別にね!しようって言うんじゃなくて、ちょっと気になってさ!……どうなの?」

    有里「んー……内緒」

    千枝「そんなのアリ?」

    有里「アリさ」

    千枝「むー……」

    >不満そうに頬を膨らませて、コーヒーを飲む。
    >全く持って可愛らしい。
    >……正直、そういう気持ちが無いわけではないが、少し荷が重いように思う。
    >僕にとっても、千枝にとっても。

    千枝「何か、私に気遣ってるならいらないからね?」

    有里「そんな顔してた?」

    千枝「そんな気がした。別に、有里君がしたい事だったらある程度受け入れる覚悟はあるんだから」

    有里「ありがと。したくないっていうのも失礼かもしれないけど……千枝とは、今はそういうんじゃない。今は、ね」

    千枝「そっか……そっか」

    有里「その内、ちょっと引くようなお願いするから」

    千枝「え!?それは勘弁して……」

    >一日、千枝と過ごした。
    >千枝との仲が深まったようだ……。
    『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが6になった。

    930 = 902 :



    【2012/8/17(金) 晴れ ゲームパニック】


    順平「何か久しぶりにゲーセン来た気がすんな」

    陽介「俺もすげえ久々っす。さーて、何やってやろうかな」

    鳴上「パンチングマシーンはやめよう」

    完二「え、なんでっスか。アレ好きなんスけど」

    「パンチングマシーンか。いいな。やろう」

    鳴上「折れても知らないですよ」

    有里「折れる……?」

    >皆でゲームセンターに来た。
    >いつもクレーンゲームと占いばかりやっているが、たまには別のゲームもやってみよう。

    順平「よーっし最初俺!一番記録低かったヤツが後ではがくれ奢りな!」

    >順平は大きく振りかぶり、ミットの真ん中を叩いた。

    順平「……あれ、思ったより」

    有里「平均ってとこだね」

    陽介「次!次俺!いっくぜー……」

    >陽介は拳をしっかりと握り、真っ直ぐに突いた。

    陽介「っしゃ、順平さんより上ー!」

    順平「おーい、これなんかの間違いだろ?」

    完二「ちゃんと数字で出てんじゃねェスか。っしゃ、そんじゃ俺も……」

    >完二は拳の握りを確かめ、力任せにミットを叩いた。

    順平「見た目どおりの馬鹿力だな」

    陽介「まぁ予想通りってとこか」

    完二「なんスか……」

    「それじゃ、次は俺が行こう」

    >真田先輩は両拳を上げて構えると、渾身のストレートを叩き込んだ。

    「どうだ!」

    順平「あーすげえすげえ」

    陽介「これも予想通りっすね」

    完二「うお、マジですげえな……伊達に鍛えてねェってか」

    有里「それじゃ、次僕がやるね」

    鳴上「待て、有里。この流れだと俺が……」

    931 = 902 :

    >とりあえず、全力で叩いてみた。

    順平「あ、勝った!」

    陽介「有里貧弱すぎんぜ?」

    「ま、この体じゃこんなもんだろう」

    有里「手首……変な風に叩いちゃった……」

    完二「うわぁ……」

    鳴上「最後は俺か……いやな予感がするんだが……」

    >悠は広くスタンスを取ると、思い切りミットを叩いた。
    >……あ。

    鳴上「やっぱりか!」

    順平「おいおい、支柱折っちまったぞ!」

    陽介「なーんで相棒が叩くと折れるんだここのは」

    完二「ってかやべえっスよ、どうすんスかこれ」

    「謝るしか無いだろうな」

    有里「これは記録無しって事にならない?」

    順平「あ、じゃあ鳴上の負けか。はがくれ奢りよろしく!」

    店員「お客さん……アンタ前にも……」

    鳴上「違うんです……」

    >……。
    順平「お前、初犯じゃなかったんかよ」

    陽介「前ん時も悠が殴ったらぽっきり行っちゃったんすよね」

    完二「あれって力強すぎたとかなんスかね」

    「人間に折れるような設計なのか?」

    有里「何なんだろうね……」

    鳴上「この上奢らされるのか……」

    有里「そういえばクマはどうしたの?」

    陽介「ああ、あいつは八十稲羽で留守番。しばらくバイト出てなかったから、パートのオバチャン達が心配しててよ。埋め合わせにバイト漬けだ」

    完二「泣いてたけどな」

    順平「あいつもおもしれーよな……」

    「なぁ、はがくれより海牛にしないか?」

    有里「あそこ、いつも並んでるじゃない」

    鳴上「流石に並んでまでは……」

    >……?

    932 = 902 :

    有里「ねぇ、あれ……」

    >女の子が路地裏に連れて行かれようとしている。

    鳴上「あれは……」

    「知り合いか?」

    鳴上「いや、以前街で見かけただけですけど」

    陽介「つっても、ありゃ仲良く遊びましょって感じじゃねえぜ」

    完二「あーあ、ったくどこも変わんねーなああいう連中はよ……」

    順平「おいおい、お前ら何でやる気なんだよ。相手結構人数いたぞ」

    有里「順平はここで待っててもいいよ」

    順平「……流石に、ここで残ったら男じゃねーよ。でも、あの子……どっかで見たような気すんだよな」

    鳴上「見失わない内に追いかけましょう」

    >相手の人数は……5人か。
    >まぁ、この面子なら平気だろう。

    チンピラA「お前、さっきなんて言ったよ?」

    チンピラB「状況分かってるよな?よっく考えて口聞いた方がいいぜ」

    「汚い手で触るな、と言いました」

    チンピラC「……俺ら、ちょーっと声かけただけじゃん?その言い方は無いんじゃねえの?」

    チンピラD「舐めてるよな、完全に。お前みたいな女に舐められるようじゃ俺らやってけねえって」

    チンピラE「俺らも面子の商売なワケ。お姉さん、わかるかなぁ?」

    「面子……世間体の事だったら、貴方達には元よりあるように思いませんが」

    チンピラA「もう良いって。こいつ頭悪いんだよ。叩かねーと直んねーって」

    順平「こらこらこらこらやめなさいよ君達。寄ってたかって女の子一人」

    チンピラE「あ?お兄さん誰よ」

    順平「通りすがりの者です!」

    チンピラC「だったらそのまま通りすがっとけよ。良い人ヅラして出てきたら痛い目あうぜ?」

    鳴上「その子を離してくれれば何も起こらない。お互いの為にもそうしてくれないか」

    チンピラB「お互いの為?ちょっと人数勝ってるからって調子乗ってんじゃねえの?」

    チンピラD「あ、それともケンカ売ってる?買う買う、このお姉さんのお陰で俺らイライラしてんのよ。解消に付き合ってくださいなっと」

    順平「うわぁ!ナイフとか良くないって!」

    チンピラA「いやいや、ここんとこちょっと切るだけだから。わざわざ絡みに来たあんたらが悪いのよ?」

    「悪いのはお前達だ。日ごろの行いも、運もな」

    チンピラC「むっかつくなぁ、アンタ。死んどけよ」

    陽介「おわっ!真田さん、危ないって!」

    >チンピラの一人がナイフを振り回す。

    完二「お、いいもん見っけ。店の人にゃ悪いけど、よっと」

    >完二が置いてあった看板を担いだ。

    933 = 902 :

    チンピラA「おいおい、マジでやる気かよ。冗談だろ?」

    鳴上「それが冗談でもなんでもない。その子を解放するか、俺達とやるか、どっちかだ」

    チンピラC「いいよ、もうこんな女……ただ、個人的にお前らは気にくわねぇ。怪我して帰れよ」

    順平「やめとこうぜ、な?ほんと、怪我するって。マジやめとこうよ」

    チンピラC「うるせ……」

    >突然、チンピラが倒れた。

    「その人の言うとおりです。怪我しますよ」

    >女の子が鉄パイプを握っている。
    >どうやら彼女が背後から打ったようだ。

    チンピラA「てめっ、何やってくれてんだよ!」

    「こら、だから怪我すると言ってるだろう」

    完二「つーか、女の子にしてやられんなって。情けねェな」

    鳴上「全く……素直に離してたら俺達も帰れたのに……」

    >三人が一撃でチンピラを沈めた。
    >流石にその辺のチンピラで勝てるような相手ではないか……。

    チンピラE「くそっお前ら……顔は覚えたからな!次会ったらしらねえぞ!」

    順平「おーテンプレートな捨て台詞だこと。もう会わねーよ」

    有里「……」

    >ただの虚勢だと思うが、もしかしたら周りの人にまで危害が及ぶかもしれない。
    >少し、駄目押ししておこうか。

    チンピラE「どけよ、ガキ!」

    有里「ガキって……確かに肉体年齢は18だけどね……」

    >歩いて近付く。

    チンピラE「仲間が強えからって自分も強くなった気になんじゃねえぞ?お前くらいのヤツなら俺だって……」

    有里「いやね、今度会っても見逃してもらえないかなって」

    チンピラE「はぁ?こんだけやって見逃されるわけないだろうが。馬鹿言ってんじゃねえぞ」

    有里「そう……じゃあこれで許してくれるかな」

    >チンピラの握っているナイフを握る。

    チンピラE「何やってんだお前!?」

    有里「怪我して帰ろうと思って。これで面目保ったって事にならない?」

    チンピラE「そういう問題じゃねえんだよ!つーか離せや、指落ちるぞ!」

    有里「そっか……」

    >チンピラの胸倉を掴んで顔を近づける。

    有里「ならいつでも来るといいよ。ただし、覚えておくといい。これから僕の知り合いの誰かが何らかの事故にあったとする。それでも僕は君達を疑う」

    有里「そうなったら覚悟した方がいい。僕は彼らと違ってケンカしないからね。加減がわからないんだ。もしかしたら、取り返しのつかない事になるかもしれない」

    有里「それで良ければ、また会おう。嫌なら、今日の事は忘れよう。僕らは誰にも言わない。君達も忘れる。それでいいよね?」

    チンピラE「な、んな事できるかよ…!」

    有里「うーん、強情だなぁ。よし、わかった。指で不満なら目をあげよう」

    >ナイフを握った手をゆっくりと自分の顔の前に持ってくる。

    有里「流石にそれだけやれば溜飲も下がるでしょ。片目なら別に無くなっても……」

    チンピラE「っバカ!よせって!」

    934 = 902 :

    >チンピラが抵抗したせいで、鼻の所が少し切れてしまった。

    有里「痛……」

    チンピラE「わかったよ、わかった!お前みたいな頭おかしいヤツ相手にしてたらこっちまでおかしくなりそうだ……もう何もしねえ。それでいいだろ!」

    完二「いいわけ」

    「無いだろ」

    鳴上「寝てろ!」

    >あ、アレは痛い。

    順平「おい有里!手大丈夫かよ!」

    有里「ん?ああ、指は付いてるし平気だよ」

    完二「平気なワケねェだろが!なんつー無茶してんだよ!」

    陽介「顔もお前……ああくそ、何かハンカチとか無ぇのか!」

    鳴上「俺のシャツ破けば……」

    有里「平気だって、その内血も止まるし……ちょっと脅かしてやろうと思っただけだから」

    「無茶にも程がある……とにかく帰るぞ、ここからなら寮の方が近いな」

    「あ、ああ……そんな、血が……は、早く手当てを!」

    有里「あ、君。平気だった?」

    順平「お前は自分の心配しろっての!ほら、帰るぞ!」

    「私も行きます!」

    「……待て。お前……?」

    順平「君は別にいいって……あれ?君、もしかして……」

    「メティス……?」

    順平「アイちゃんの妹ちゃん!?」

    有里「……誰、それ」

    935 = 902 :



    【巌戸台分寮】


    岳羽「はい、おしまい。バカやるんだから……」

    美鶴「本当にな。……それより、また聞きたい事がある」

    順平「あー、それなんすけど、俺らにも全然……」

    アイギス「……メティス?」

    メティス「お久しぶりです、姉さん」

    天田「メティスさんって、あの時消えたんじゃ……」

    アイギス「そのはずですが……」

    メティス「私にも、わかりません……けど、気が付いたら街にいて、それで、どこかで見た事のある人を見かけたので……」

    鳴上「それ、もしかして俺ですか?」

    メティス「はい、そうです。よく見たら別人だったんですけど、何となく……でも、それから一度も会えなくて」

    鳴上「すみません、出かけてました……ええと、結局良くわからないんですが」

    アイギス「この子はメティス。私の……分身、というか。妹のような存在です」

    メティス「私は元々姉さんの、捨てたいと思う感情から生まれました。ですが……」

    アイギス「今の私はいつも通りです。何も捨てていないし、捨てるつもりもありません」

    「なら何故お前がここにいる?」

    メティス「だから、わからないんです……あの時の記憶もあります。なので、皆さんの知っているメティスと同一の存在だと思うのですが……」

    陽介「ややこしいな、何か……」

    メティス「わかることは、一つだけあります。私は、誰かを守る為に生まれた……そんな風に思うんです。根拠は無いのですが……」

    美鶴「……仕方ない。何かあるまでこの寮で過ごしなさい。話はこれから整理していこう。それから、私達以外にもなるべく丁寧に接しなさい」

    アイギス「そうよ、メティス。貴方のした事で有里さんや他の皆さんが危険な目にあったのだから」

    メティス「ごめんなさい……」

    陽介「いやいや!別に全然かまわないっすよ!」

    鳴上「陽介は何もしてないがな」

    完二「やる気だきゃあったんスけどね」

    >メティス……。
    >皆は知っているようだが、僕はこの子を知らない。
    >一体、何者なんだろうか……。
    >手が痛い……。

    936 = 902 :



    【ホテル内 有里の部屋】


    千枝「で、こんな怪我したと」

    有里「うん」

    千枝「バカじゃないの!?てかバカじゃないの!?」

    有里「あ、なんかそれ聞くの久しぶり」

    千枝「もう……かっこつけるのはいいけどさ、もっとマシなやり方にしようよ……」

    有里「別にかっこつけたわけじゃないんだけどね……」

    千枝「有里君、女子の前だと張り切るタイプだもんね、そう見えて。すぐ無茶するし。せめて左手だったら良かったのに」

    有里「それは男の子の本能だから仕方ない」

    千枝「明日、何か予定は?」

    有里「いや、特に無し」

    千枝「……んじゃ、私が一日付き添ったげるよ」

    有里「え、いいよ。遊んでおいでよ」

    千枝「だってそんな手じゃお箸も持てないっしょ?」

    有里「痛いだけで動くから持てるって」

    千枝「いいから黙って世話されなさい!」

    有里「……はい」

    千枝「……痛くない?大丈夫?」

    有里「ん、それなり」

    千枝「バカ」

    有里「はい」

    千枝「かっこつけ」

    有里「はい」

    千枝「……」

    有里「……」

    >何故か、千枝が泣きそうになっている。
    >……確かに、ちょっとかっこつけたけど。

    937 = 902 :

    千枝「痛いんでしょ?」

    有里「うん」

    千枝「……もうしない?」

    有里「もうしない」

    千枝「……」

    有里「もうしないよ」

    千枝「信じるからね!次やったら私泣くかんね!」

    有里「泣かせるわけにはいかないね」

    千枝「ほんとだよ……もー、心配ばっかりかける……」

    有里「ありがとう」

    千枝「いいから。何か欲しい物とかない?大丈夫?」

    有里「……しばらく一緒にいて欲しいかな」

    千枝「……いいけど」

    >それから、しばらく二人で過ごした。
    『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが7になった。

    938 = 902 :

    ポートアイランドでは有里君メインです、多分。
    例の彼女も現れて、いよいよごちゃごちゃし始めた。

    果たしてスレ内で区切りまで書ききる事が出来るのか!
    別に次スレでやってもいいじゃんって?それもそうだね。

    というわけで、本日は終わり。
    では、また後日。

    939 :


    メティスも出てきたか・・・

    940 :

    進展開…だと?

    942 = 902 :



    【2012/8/18(土) 晴れ ホテル内 有里の部屋】


    千枝「はいあーん」

    有里「あー……」

    >何故か、朝からバナナを口に突っ込まれている。

    千枝「……」

    有里「……何?」

    千枝「いや、何か不満そーだなって」

    有里「別に不満は無いよ?」

    千枝「むー、朝ごはんはちゃんと食べないと駄目なんだからね?」

    有里「うん……」

    >食べるのはいいが、これだけ見られていると食べ辛い。

    千枝「今日どうする?」

    有里「ん、今日は寮の方行って、昨日の子に話聞こうかと思ってたんだけどね」

    千枝「あー、アイギスさんの妹さん……メティスさんだっけ。有里君は知らないの?」

    有里「皆は知ってるみたいなんだけどね。どうしてか僕は知らない。聞いた話によると、僕がいなくなってから出会ったらしいんだけどね」

    千枝「ふーん……アイギスさんの妹って事は、やっぱり美人なのかな」

    有里「ああ、まぁ綺麗な顔してるね。アイギスとは真逆の、落ち着いた感じ。中身はお姉ちゃんそっくりみたいだけど」

    千枝「へぇ、そうなんだ……ふーん……」

    有里「あの、里中さん?」

    千枝「へっ?何でもないよ!うん!そっか、でも美人なんだ……ほんと、心配になるな……」

    有里「なんで僕ってこんな信用無いんだろう」

    千枝「……普段の行いじゃない?」

    有里「そうかな……」

    千枝「そうだよ……」

    >とにかく、メティスに会いに行こう。

    943 = 902 :



    【巌戸台分寮】


    美鶴「君か。どうした?」

    有里「メティスと話がしたくて。いる?」

    美鶴「ああ、アイギスと一緒だ。……里中はどうした?」

    千枝「あ、付き添いです。昨日の今日なんで……」

    美鶴「……そうか。甲斐甲斐しいな」

    千枝「あはは、べ、別にそんな……」

    有里「じゃあ、アイギスの所行ってきます」

    美鶴「ああ。……里中を大事にしてあげなさい」

    有里「……うん、そのつもり」

    千枝「え?何?」

    有里「何でも無いよ。行こう」


    【アイギスの部屋】


    アイギス「あ、有里さんに里中さん。どうかしましたか?」

    有里「ちょっと用事。アイギスにじゃなくて……」

    アイギス「ああ、メティスですか。どうぞ、お入りください」

    メティス「姉さん、こちらは?」

    アイギス「有里さんは知ってるわよね?この人は……」

    千枝「あ、里中千枝って言います。一応、ペルソナ使いで……」

    メティス「里中さんですね。よろしくお願いします。私はメティスといいます」

    千枝「ん、よろしく」

    有里「今日はメティスと少し話がしたくて来たんだ。いいかな?」

    >メティスは不安そうにアイギスを窺っている。

    アイギス「大丈夫だから、ちゃんと答えてあげて。あの、私は席を外した方が……?」

    有里「いや、大丈夫。むしろいて欲しい。アイギスの補足も必要になるかもしれないから」

    アイギス「……わかりました」

    有里「さて、メティス。今日で二回目だね」

    メティス「はい。私の方は、姉さんとほとんどの情報を共有していますから、存じていましたが」

    944 = 902 :

    有里「うん、どうやらそうらしいね。……あれ、ってことは僕がアイギスに言った事とかって」

    メティス「はい、記憶しています。その時の姉さんの感情と一緒に」

    >アイギスは下を向いている。
    >……恥ずかしがっているのか?

    有里「ま、まぁそれはいい。けど、君が生まれてから……一度消えて、今までの事は記憶してる?」

    メティス「記憶にはありません。私が姉さんに還ってから、新たにまた街に来るまで……その間の姉さんの記憶もフィードバックされていません」

    有里「つまり、今のメティスはアイギスと別固体だって考えていいのかな」

    メティス「恐らくはそういう事だと思われます。しかし、本来姉さんの意思無しでは存在し得ないはずの私が何故そうなったのかは……」

    有里「今は平常とは言い難い状況だからね。そういう事もあるかもしれない。もう一つ、君は誰かを守る為に生まれたと言った」

    メティス「はい、確信があります。以前、私に姉さんがいるという事が根拠も無く感じられたのと同じ感覚で、使命感が私の中に存在しています」

    有里「それは、誰を……なのかな」

    メティス「そこまではっきりとは……ですが、特別な人である事は間違いないと思います。例えば、里中さんではありません」

    千枝「……まぁ、そうだろうけど。わざわざ言わなくても」

    メティス「申し訳ありません、今一番分かり易い例かと思って……」

    有里「アイギスでも無いんだよね」

    メティス「姉さんとは昨夜一晩過ごしましたが、その間もずっとこの感覚はありました。誰かの所へ行かなければという感覚」

    有里「……僕でも無い?」

    メティス「……惜しい、といった所です。有里さんは、非常に正解に近いのですが、どこか違うような気がします」

    有里「決まりだ。メティス、昨日僕と一緒にいた人は覚えてるね?」

    メティス「ええ」

    有里「その中に、三つほど知らない顔があったはずだ。茶髪の人と、いかつい人と、銀髪の人」

    千枝「いかつい人って……」

    メティス「確かに、そう記憶しています」

    有里「その内銀髪の彼……鳴上悠と会うといい。きっと、君の探している人だから」

    メティス「ナルカミ・ユウ……」

    有里「それで、もう一度聞く。僕では無いんだね?」

    メティス「はい。有里さんは……普通の人です。特別な人ではありません。……すみません、上手い表現が浮かばないんです」

    有里「……ありがとう、十分だ。今日は帰るよ。また会おう」

    メティス「はい……あの、鳴上さんはどちらに」

    アイギス「鳴上さんはこの寮に住んでるから、待っていれば帰ってくるはずよ」

    メティス「わかりました……ありがとうございます」

    有里「どういたしまして。それじゃ」

    >何となく予感していた事が、形になり始めた。
    >多分、そうなんだろうな、と……。

    945 = 902 :

    美鶴「もう帰りか。収穫はあったか?」

    有里「それなりに。じゃあ、また来ます」

    千枝「あ、待ってよ。それじゃ、私も失礼します」

    美鶴「ああ……湊!」

    >美鶴に呼び止められる。
    >……振り向く事はしない。

    有里「何?」

    美鶴「……その、怪我は、大丈夫か?」

    有里「何とか」

    美鶴「そ、そうか。それは良かった……うん。それじゃ、またな」

    有里「……またね」

    >寮を後にした……。

    千枝「……」

    有里「……」

    >不意に、痛む方の手を握られた。

    有里「あ痛っ」

    千枝「あ、ごめん……」

    有里「どうかしたの?」

    千枝「いや、何か……すごい難しい顔で悩んでたから」

    有里「ああ……うん、ちょっとね」

    千枝「私が聞いても意味無い……よね」

    有里「……」

    千枝「もー、やんなるなー。私だって何か力になれたらいいのに。色んな人に嫉妬して、やきもきして、それだけって……何の意味あるんだろーね!」

    >千枝は笑っているが、はっきり無理しているのがわかる。

    有里「千枝は、それでいいんだよ」

    千枝「え、何それ。皮肉?役立たずでいいってことなの?」

    有里「まずそこが間違ってる。役立たずなんかじゃないよ」

    千枝「だって、有里君が悩んでる事一つも解決してあげられないよ?他の子だったらこう、癒しの一つでも与えてあげられるんだろーけど。私はそういうの向いてないし」

    有里「これが十分癒されてるんだけどねぇ」

    千枝「え?そんな、特別な事したわけじゃないし……」

    有里「特別な事って必要なのかな?例えば、どうしようどうしようってテンパって、思わず怪我してる方の手を握ったりとか」

    千枝「ご、ごめんね……」

    有里「そういうの見て、可愛いなって思えるからね。自然体で十分なんだよね」

    千枝「そうなの?」

    有里「そうなの。千枝は気付いて無いかもしれないけど、結構救われてるよ、色々」

    千枝「そっか……でもさ、やっぱり何かしてあげたいって思うんだよね」

    946 = 902 :

    有里「……なら、手を握っていて欲しい」

    千枝「あ、うん……」

    有里「そっちじゃなくて、こっち」

    千枝「えっ、でも、こっち……痛いでしょ?」

    有里「いいんだ。何だかどこかへ行ってしまいそうだから、しっかり握って離さないで」

    千枝「うん……大丈夫?」

    有里「大丈夫だから」

    >……傷の痛みと、千枝の手だけが今僕をこの世界に留まらせている。
    >そんな錯覚をしてしまうくらい、足元がふらついた。
    『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが8になった。

    千枝「あ、そういえば……」

    有里「ん?」

    千枝「明日、こっちでも夏祭りやるみたいなんだけど……一緒に行かない?」

    有里「そうだな……それもいいね。行こうか」

    千枝「向こうじゃ普通に私服だったけど、今回は有里君も浴衣とか着てみなよ」

    有里「僕が?……誰が得するのかな」

    千枝「私、見たい」

    有里「……ちょっと都合してもらうか。後で美鶴に連絡しよう」

    千枝「やった!」

    >浴衣ねぇ。
    >前に旅館で着なかったかな?

    947 = 902 :



    【2012/8/19(日) 晴れ ホテル内 有里の部屋】


    千枝『有里君、準備できたー?』

    有里「ああ、一応。今行くよ」

    >貸衣装の浴衣を着て部屋を出た。

    千枝「おっ……おー……」

    有里「……何その反応」

    千枝「いやいや!似合ってるよ!うん!」

    有里「あんまり好きじゃないんだけどね、和服。すかすかしてて……」

    千枝「そんなもんじゃない?よっしゃ!そんじゃ行こう!」

    >千枝に手を引っ張られてホテルを出た。
    >……。

    千枝「うわっちゃー、流石に人多いねぇ」

    有里「そうだね」

    千枝「はぐれたりしないかなぁ」

    有里「ちょっと心配だね。特に千枝は土地勘も無いし……?」

    >千枝はじっとこっちを見ている。
    >……ああ、なるほど。

    有里「それじゃ、はぐれないように手を繋いでいこう」

    千枝「あ、ちょっと棒読みっぽい」

    有里「そんな事ないよ。ほら」

    千枝「ん。……へへ」

    >差し出した手を握られる。
    >気温に負けないくらいに熱い。

    有里「前から思ってたけど、千枝って手あったかいよね。ていうか熱いよね」

    千枝「そう?体温高いのかな。ちゅーか、有里君の手が冷たいんじゃない?」

    有里「そうかな……」

    千枝「そうだよ、多分。お、たこ焼き屋発見!」

    >……。

    千枝「いやー食った食った!」

    有里「本当によく食べたね……」

    千枝「な、なによぅ。運動するから平気だもんね」

    有里「あれ?でも雪子に聞いた話では体重が……」

    千枝「筋肉は脂肪より重いから仕方ないのだぞよ。……いや、本当に。ほんとだからね?」

    有里「はいはい。……そのお面、いいね」

    千枝「でしょー?お面なんてキャラクター物ばっかりだと思ってたんだけどね」

    有里「木彫りの狐面か。こんな渋いのもあるんだね」

    千枝「その分お値段張るけどね。うー、ちょっと疲れたかも!」

    有里「どうする、帰る?」

    948 = 902 :

    千枝「んー、もうちょっと。ていうか、有里君何も買って無いじゃん?」

    有里「なんかお腹一杯って感じで……楽しそうな千枝見てたらそれで結構満足してる」

    千枝「何それ。そんなもんなの?」

    有里「うん、そんなもん」

    >くるくるはしゃぎまわる千枝を見ていると、こっちまで楽しくなってくる。
    >有難い話だ……。
    >……。
    千枝「ふっはー!流石にもうお腹も体力も限界!」

    有里「あれだけ食べたらね……」

    千枝「あれ、ちょっと引いてる?」

    有里「感心してるんだよ、よく入るなって」

    千枝「エネルギー使うからね!」

    有里「あはは……」

    >千枝と二人で夏祭りを楽しんだ。
    『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが9になった。
    >辺りはすっかり暗くなり、屋台の明かりが周囲を照らしている。
    >そろそろお開きにすべきだろう……。

    有里「さて、そろそろ帰ろう。疲れたでしょ?」

    千枝「ん、流石にそろそろ帰ろうか。いやーしかし年に二回も夏祭りに来れるとは!いいもんだねぇ」

    有里「そうだね。特に千枝と二人で回れたのが良かった」

    千枝「またそうやって……」

    有里「……そういえば、僕が陽介の所に泊まったのも夏祭りの夜だったな」

    千枝「へ?何それ」

    有里「もう覚えて無いんだけど、その日何か理由があって……悠の部屋を空けないとって思ったんだよね」

    千枝「あ、それって……」

    有里「多分、その日だったんだと思うよ」

    千枝「……」

    >ふと思いついた事を話しただけなのだが、千枝は真っ赤になって俯いてしまった。
    >段々、握っている手に力が入ってくる。

    有里「いたた、ちょっと強い強い」

    千枝「ご、ごめん!えーと、その……今日、さ」

    有里「僕の部屋、来る?」

    千枝「!……う、うん」

    >……さて、どうしよう。
    >覚悟の決め時だろうか。
    >……うーん。

    949 = 902 :



    【ホテル内 有里の部屋】


    >コンコン。
    >扉がノックされた。

    有里「どーぞ」

    千枝「失礼します……」

    >千枝は既に真っ赤になっている。

    有里「……」

    千枝「……」

    有里「……千枝」

    千枝「……あぅ」

    >……あぅ?

    千枝「ちっ、違くて。はいって言おうとしたんだけど……なんか、舌回らなくて」

    >無理も無い、ここまで露骨に緊張しているとな……。

    有里「緊張してるなら、やめとこうか?」

    千枝「だっ、大丈夫!だよ!……有里君は、何か余裕だね」

    有里「うん、まぁ……」

    千枝「もしかして、経験アリ?」

    有里「……無いけどさ」

    千枝「良かった……ん?良かったのかな……」

    有里「というわけで作法とかわかりません。とりあえずおいでよ」

    千枝「う、うん……」

    >ベッドに腰掛ける僕の横に、千枝がちょこんと座る。

    有里「はい、ぱたーん」

    >肩に手を掛けて、そのまま仰向けに倒した。

    千枝「ちょっ……」

    >千枝の頭の横に手を置いて、覆いかぶさる。

    千枝「……ね、やっぱやめにしない?」

    有里「どうして?」

    千枝「だってさ、えっと……あ、汗とかかいたし!」

    有里「……髪の毛、まだちょっと濡れてるね」

    >髪に顔を近付けて、匂いを嗅いでみる。

    有里「シャンプーの匂い。帰ってきてから僕の部屋に来るまでの時間から考えて……三回くらいかな?」

    千枝「なんでわかるの!?」

    有里「千枝の事なら何でも。そうだな、まず帰ってシャワー浴びて、着替えようと思った時にちょっと気になってもう一回シャワー浴びたね?」

    千枝「う、うん」

    有里「で、それからちょっと落ち着こうと思って水でも飲んで、緊張してまたちょっと汗かいて、それでもう一回。で、待ってるから緊張するんだーって、髪の毛乾かすのもそこそこでこっちに来た」

    千枝「……びっくりする程正解。すごいね」

    有里「わかりやすいからね、千枝は。で、何でやめるって?」

    950 = 902 :


    千枝「……何でも無いっ!」

    >真っ赤になって横を向いた千枝の、こっちを向いた耳にキスをする。

    千枝「ひっ……」

    有里「ひって……ちょっと傷つくなぁ」

    千枝「ご、ごめ……くすぐったくて……」

    >そのまま、首筋へ。
    >何度も何度もキスをして、時折舌を這わせる。
    >肌からもボディソープの匂いがする。

    千枝「っく……ぁ……ふっ、ん……」

    >……可愛いなぁ。
    >千枝は必死に何かを堪えている。
    >口元に指を持っていって、時折その指を噛んで声を殺す。
    >……首筋を降りて、鎖骨に到達すると、今度は折り返して首を上っていく。
    >仰け反った喉を通って、下顎に。
    >指が少し邪魔だ。

    有里「指、退けて?」

    >言いながら、退けようとしないその指をそっと噛む。

    千枝「あっ……!」

    >驚いて指を外した隙に、唇を重ねた。

    千枝「んむ……」

    >千枝の吐息は熱い。
    >唇を通じて、熱気が僕の中にも入ってくるような気がした。

    千枝「っは、ぁ……有里君……」

    >視線も熱い。
    >……そろそろ、限界か。

    千枝「有里君、有里君……」

    >千枝の唇が空気を求めるようにパクパクと動く。
    >求めているのは空気ではなく、僕だ。

    有里「……」

    >僕は、応えるように再び顔を近づける。
    >千枝が目を瞑る。
    >そっと、前髪を掻き分け……。


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