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    元スレ鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」

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    552 :

    乙ドラオンでございます

    553 :

    次が楽しみで寝れない

    554 :

    乙ダイン!
    影時間どうなった!?

    556 :

    むむむ、休日の方が忙しいぞ・・・?

    というわけで、あんまり量内ですが本日分。

    557 = 556 :



    【2012/5/12(土) 晴れ 巌戸台分寮】


    >……?
    >起きたと同時に、携帯にメールが何件も入っているのを確認した。
    >どうしたというんだろう。

    鳴上「……昨夜の影時間?」

    >眠っている間に何があったのだろうか。
    >湊、それから八十稲羽の皆……。
    >文面から只事でない事だけが伝わってくる。

    鳴上「誰かに聞いてみようか……」

    >とりあえず、桐条さんだろう。
    >ラウンジかな……。

    美鶴「そろそろ起きてくる頃だと思っていたよ」

    >ラウンジには課外活動部の面々が集まっている。

    鳴上「その、すみません。昨夜は割りと早くに寝てしまって……状況が良く」

    「気にするな。ここにいる全員、状況は飲み込めていない」

    >真田さんが皮肉っぽく笑う。

    鳴上「……何があったんですか?」

    >誰も答えない。
    >一拍置いて、アイギスさんが口を開いた。

    アイギス「何かあった、のではありません。何も、無かったんです」

    鳴上「それは、どういう……」

    美鶴「昨夜の12時、私はいつものように影時間の訪れを待って起きていた。しかし、時計の針は12時からすぐに12時1分を指した」

    鳴上「え?」

    美鶴「本来なら、というのもおかしな話だが。ここ一ヶ月、毎日訪れていたはずの影時間が、昨日は無かったんだ」

    鳴上「まさか……」

    アイギス「間違いありません。私も確認しています」

    岳羽「私もそう。私の場合はたまたまだったんだけどね……」

    順平「どうなってんだよ、これ。もう解決したのか?事件は終わったってのかよ」

    天田「勝手に解決するなら、僕達がやってた事ってなんだったんでしょうね」

    >全員が納得いかない表情を浮かべている。
    >勿論俺もそうだ。
    >この事件がそんなに簡単に終わるなら、俺達は何の為に……。

    558 = 556 :

    美鶴「……とにかく、様子を見るより他無いだろう。ここで終わってくれれば一番だが」

    鳴上「ですね。これから何事も無ければいいんですが……」

    順平「でもよ……何も無かったら、俺達どうなるんだ?」

    岳羽「どうなるって……いつも通りに、学校通えばいいんじゃない?」

    「ここにいる理由が無くなる以上、解散になるだろうな」

    風花「……ですか、ね」

    >……。

    美奈子「おっはよーん。……あれ。皆どうしたの?」

    鳴上「ああ、おはよう。いや、ちょっとな……」

    美奈子「ん?ふーん……まぁいいけど。昨夜の話でしょ?」

    鳴上「なんで知っ……そうか、美奈子もペルソナが……」

    美奈子「私を誰だと思ってんの?で、影時間が無くなったから事件も終わったんじゃないかって?」

    鳴上「聞いてたんじゃないのか、最早」

    美奈子「勘だよ、勘。でも、もし全部普通に戻ってるとしたら、何か足りない物あるんじゃないかなあ」

    鳴上「足りない物……?そうか」

    >もし事件が終わったとすれば、テレビの中も正常に戻っているはずだ。
    >そして、正常になっているならば。

    鳴上「クマだ。あいつが戻ってきてたら……」

    風花「クマ君?……そっか、テレビの中が普通になってたら、あの子も出てこれるはずだもんね」

    鳴上「出てこなくても、テレビの中が元に戻ったならいつでも会いにいけるはずです。ちょっと、見てきま……」

    >……?

    鳴上「あれ?」

    >手が、液晶に触れる。
    >触れる?

    559 = 556 :

    鳴上「嘘だろ……」

    >液晶に触れる事が出来る。
    >今まで、そこにはテレビの中との境界面があった。
    >しかし、今触れている硬質のこの面は……。

    鳴上「テレビに入れない……!?」

    順平「はぁ?冗談だろ、だってお前いつもこうやって……」

    >順平さんがずんずんと歩いてテレビにぶつかった。

    順平「えでっ!……あれ?」

    風花「ちょ、ちょっと待ってください。本当に……?」

    >山岸さんの手も、液晶を通り抜ける事は無かった。

    鳴上「……ちょっと、向こうの仲間にも連絡してみます!」

    美鶴「頼む。これは……どっち、なんだ?」

    >メール……いや、電話だ。
    >急いで連絡を取ろう。


    【ジュネス内フードコート】


    陽介「どーいう事だよ、これ……」

    有里「さぁ……今の所は何とも」

    直斗「確かに、昨夜影時間はありませんでした。それは確認しています」

    千枝「私、帰ってすぐ寝ちゃったからなぁ……」

    完二「俺も起きてたけど気付かなかったぜ……」

    雪子「けど、影時間が無くなったってことは……」

    りせ「もう事件は終わりって事?」

    >皆に連絡してジュネスに集まってもらった。
    >昨夜、確かに影時間は来ていなかった……。
    >しかし、事件がこれで終わったとはとても思えない。

    直斗「これで終わりなら、それはそれでいいんですけどね……」

    有里「僕にはそうは思えない。こんなに簡単に片付くような事じゃないはずなんだ」

    完二「ま、スッキリとは来ねぇな……」

    陽介「つっても、俺らに出来る事って……なんだ?」

    >……。
    >全員が黙ってしまった。

    560 = 556 :

    有里「とにかく、今は様子を見るしか……」

    >Pipipi……

    有里「ごめん、電話だ。……悠からだ!」

    >向こうで何か進展があったのだろうか。

    有里「もしもし」

    鳴上『湊か。お前のメール見たぞ』

    有里「そう。それで、どうだった?」

    鳴上『どうもこうもない。何かあったなら解決しようもあるが』

    有里「何も無い事に関して、僕らは無力だ。でも、連絡してきたって事は何かあったんだろう?」

    鳴上『そうだ。お前、テレビの中は入れるか?』

    有里「え?それは普通に……」

    鳴上『いいから試してみてくれ』

    有里「……」

    >恐る恐る、テレビに触れてみる。
    >……通らない。

    有里「これは……陽介」

    陽介「どうした?何かあったのか?」

    有里「そこから走ってテレビの中入ってみて」

    陽介「何で走る必要が……」

    有里「いいから、頼む」

    陽介「なんだってんだよ……いくぜ?せーのっ」

    >陽介が漫画のようにテレビにへばりついた。

    陽介「……あれっ?おい、ここテレビの中じゃねえよな?」

    千枝「いや、当たり前でしょ。え、って、どういうこと?」

    直斗「テレビの中に……」

    雪子「入れない?」

    有里「悠の言いたい事はわかったよ」

    鳴上『もしかしてと思ったが、そっちも駄目か……』

    561 = 556 :

    有里「どう見る?」

    鳴上『さぁな……俺もそれが聞きたくて電話したんだ』

    有里「……影時間に関しては僕のほうが詳しいかもしれない。けど、テレビに関しては君が専門だろ?」

    鳴上『異常事態だ。それだけはわかる。けど、今の状況じゃ手が出せないのも事実だ』

    有里「手詰まり……か」

    鳴上『とにかく、様子見しかないみたいだな。また何かわかったら連絡する』

    有里「こっちも。じゃ、また」

    >電話を切った。
    >テレビに入れない。
    >影時間が来ない。
    >世界は平和になった。
    >……そんなはずは、無い。
    >これは更なる異常事態の始まりだ。
    >それはわかる、わかるが……。

    有里「……見ての通り、もうテレビの中には入れないみたいだ」

    りせ「じゃあ、もう事件を追うって事も出来ないの……?」

    有里「そうなるね。……ただ、これは終わりじゃない。それは何となくわかるんだ」

    直斗「しばらくは様子を見ましょうか。テレビにも入れないんじゃ僕達に出来る事は……」

    有里「油断は出来ないけど、基本的には日常生活を楽しんでもらってかまわないだろうね。ふぅ……」

    千枝「大丈夫?」

    有里「ああ、平気。少し……いや、なんでもない。さ、今日は解散にしよう」

    陽介「そうだな……帰るか」

    完二「どうなんのかね、これから……」

    りせ「なんか、不安カモ……」

    雪子「そうだね、何ていうか……怖い、かな」

    千枝「何も出来ないっていうのもね……」

    562 = 556 :

    >皆は不安そうにしていた……。
    >無理も無い、正直な話僕も不安だ。
    >その中で一人だけ、少し様子の違う人がいる。

    有里「直斗は帰らないの?」

    直斗「あ、いえ、帰ります……けど。少し気になる事があって。そうだ、有里さんもよければ付き合ってもらえませんか?」

    有里「構わないけど、何を?」

    直斗「検証です。今までと……これからの」

    >流石に探偵だけの事はある。
    >目前の事態を見つめつつも、しっかりとまとめようとしているようだ。
    >……頼りになる。

    有里「それじゃ、わかってる事は何でも言うよ。何から始める?」

    直斗「まず、影時間について。影時間とはどういう物ですか?」

    有里「……月が近付いた時、それに惹かれてシャドウが集まってくる。その時、折り重なったシャドウの力は時間と空間に作用する」

    直斗「その時間側面の現象が影時間、でしたね」

    有里「そう。そして空間側面が、あるはずのない塔の出現。タルタロスだ。じゃあ今度は僕から。マヨナカテレビってなんだろう?」

    直斗「マヨナカテレビは、ある存在によって管理される、テレビの中の世界において異物が入り込んだ際に発信される番組です」

    有里「異物。人間、か。そして、その人の心の暗い部分を投影した存在が現れる」

    直斗「それが、シャドウ。ここで気になるのが、シャドウの持つ力です」

    有里「僕の言った通り、シャドウの集合が影時間の引き金となるのなら、ここ八十稲羽で同様にシャドウが集まった時も」

    直斗「影時間が始まってもおかしくなかったはず。けれど、それは起こりませんでした」

    有里「何故?」

    直斗「原因はわかりません。僕達が適宜排除していったからかもしれないし、数が足りなかったのかもしれない」

    有里「聞くところによると、自然発生したシャドウだけだったらしいからね。集まってくる、というのとは違うんだろう」

    直斗「そうですね。シャドウを集める存在……月、でしたか。それがありませんでしたから。そう考えると納得できます。しかし」

    563 = 556 :

    有里「今回、確かに月はあった。テレビの中にね。そして、数多のシャドウ……」

    直斗「そこなんです。月はテレビの中にあったと言います。ですが、その時テレビの外にも月はあるはずでは?」

    有里「……まぁ、確かに。雨の日しか映らないから気にして無かったけど、おかしな話だね」

    直斗「それとも、雨の日だけテレビの中に月が入りこむと?それよりは、こう考えた方が自然ではないでしょうか」

    有里「テレビの中の月と、普段見ている月は別物である」

    直斗「そうです。そうなると、もう一つ辻褄が合わない事が出てきます。有里さんの存在です」

    有里「僕の?」

    直斗「ええ。以前聞いた話では、その月を人の手が届かないように封印し、その際に有里さんはこの時間に……という話でしたね?」

    有里「そうだよ」

    直斗「……すみませんが、調べさせてもらいました。有里さん、三年前に死亡扱いになってますよね?そして、遺体は火葬されている」

    有里「……」

    直斗「その封印、もしかすると……文字通りの、命がけだったんじゃないですか?」

    有里「……その通り。流石だね」

    直斗「心配しなくても、他の人に言うつもりはありません……無用に気を遣わせるだけでしょうから」

    有里「助かるよ。それで、僕がここにいる事に何の疑問が?」

    直斗「はい。それを調べた時、有里さんはその命を使い封印を果たしたものと仮定しました。まず間違いありませんね?」

    有里「その通り。命というより、魂を使ったというべきかもしれないね」

    直斗「その言葉で、尚の事違和感が増しました。では、今ここにいる有里さんの魂は?」

    有里「だから、封印が何らかの原因で解けて……」

    直斗「肉体に関しては僕も良くわからないのですが、開放された魂が宿った、そういうことですね?」

    有里「そうだろうね。だから、月がまた近くに……?」

    直斗「気付きましたか。僕自身、突飛すぎて信じられなかったんですが……まぁ、ペルソナやシャドウの事を考えると有り得ない話ではないかと思いまして」

    564 = 556 :

    >なるほど、確かにそうだ。
    >むしろ、何故今まで気付かなかったのだろう。

    直斗「つまり、月は―――」

    >僕がここにいるということはそういう事なんだ。
    >で、あるなら。
    >あそこにあったアレは一体……。

    >……。

    直斗「……結局、今の事態を解決する案には至りませんでしたね」

    有里「そうだね……まぁ、焦っても仕方ない。しばらくはゆっくりさせてもらうとしようよ」

    直斗「そうですね……」

    >同意しつつも、未だ何かを悩んでいるような直斗。
    >前から思っていたが……。

    有里「直斗、睫長いね」

    直斗「はぇ?何ですか、急に」

    有里「綺麗な顔してるなって思って。あ、そういえば何でいつも男装なの?」

    直斗「え、あ、その……趣味?です」

    有里「そうなんだ。いつか普通に女物着てるのも見てみたいな」

    直斗「い、嫌ですよ恥ずかしい」

    有里「あれ、駄目か……まぁ、その内見せてよ」

    直斗「まぁ……その内には」

    >どうやら照れているだけのようだ。
    >是非見たいのでこれからもちょくちょくつついてみよう。

    直斗「でも、意外でした」

    有里「何が?」

    直斗「いえ、有里さんは……こういった事態になったら、一番に手を離しそうに思っていたので」

    >申し訳無さそうにそんな事を言われた。

    有里「諦めがよさそうって事かな?」

    直斗「というより、あまり興味が無いのかなと。無理なら無理で……どうでもいい、とでも言いそうだったので」

    有里「……やめたんだ、そういうのは」

    直斗「そうですか。……そういう姿勢には、好感が持てます」

    有里「それはどうも。なら今度女物を……」

    直斗「それとこれとは話が別です!……そろそろ、帰りますね。ではまた」

    >ぺこりと一礼して立ち上がった直斗にひらひら手を振った。
    >ちょっと、見直された気がする。
    『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが3になった。

    565 = 556 :

    >……。

    鳴上「やっぱり、あっちでもテレビには入れないようです」

    美鶴「そうか……我々に出来る事はもう無い、と」

    岳羽「悩んでても仕方ないかも知れないですね……」

    順平「しばらく様子見だろ、しょーもねー。んじゃ、俺用事あるんで。しっつれいしまーす」

    美鶴「そうだな。解散にしよう。……ただ、油断が許される状況ではない、それを忘れないように」

    >……何も出来ない。
    >今までそれなりに気合いが入っていた分、抜けた時の反動も大きいのだろう。
    >油断はするな、と言った桐条さん自身も、少し抜けているのが見て取れた。

    鳴上「どうしたもんかな……」

    美奈子「いいんじゃない?いい機会だし、普通に学校生活送れば。案外楽しいかもよ」

    鳴上「そりゃ、そうかもしれないけど……途中で放り出すみたいで気分が悪いんだ」

    美奈子「何も出来ないんだから仕方ないじゃん。それに、君みたいに思ってる人ばっかりじゃないみたいよ」

    >美奈子が指差す先には山岸さんが座っている。
    >……心なしか、安堵しているようにも見える。

    鳴上「……?」

    美奈子「ま、頑張ってねー。私はもうちょっと寝る……眠くてさ」

    >美奈子はひらひらと手を振りながら去っていった。
    >頑張れと言われても……。

    鳴上「あの……」

    風花「あ、はい。どうかした?」

    鳴上「いえ、どうもしないんですけど。山岸さんこそ、どうかしたんですか?」

    風花「私?何で?」

    鳴上「いや、何ていうか……複雑そうな顔してたので」

    風花「あはは、お見通しか」

    >山岸さんは眉根を寄せて笑っている。

    風花「……今日、時間あるかな?」

    鳴上「あ、はい。ありますけど」

    風花「良かったら、ちょっと付き合って欲しいの。話したい事があって」

    鳴上「……?はい、じゃあ……」

    >山岸さんと話をする事になった。
    >……どうしたのだろうか。

    566 = 556 :



    【シャガール】


    >……。
    >山岸さんはずっとコーヒーを飲んでいる。
    >話があると言われた手前、こちらから話を振るのも気が引けて、俺も黙っている。
    >気まずい沈黙が、続いている。

    風花「……ごめんね、何か……」

    鳴上「え?いや……別に……あの、話って……?」

    風花「うん。気付いてると思うけど、私……最近調子悪いんだよ、ね」

    鳴上「まぁ、何となくは……その事ですか?」

    風花「うん……」

    >それだけ言ってまた黙ってしまった。
    >確かに、最近どうも上手くいっていないようだが、それと俺に何か関係があるのだろうか……?

    鳴上「あの……それで、俺に出来る事とか」

    風花「あ、うん……えっとね。体の調子が悪いってわけじゃなくて、心の……気持ちの問題なんだと思う」

    鳴上「ペルソナは心の力ですからね。何か悩み事ですか?」

    風花「ちょっと、ね……鳴上君って、誰か女の人と付き合った事ってある?」

    鳴上「は?」

    >予想外の質問に驚いて、気の抜けた答え方をしてしまった。
    >真面目な話なのだから、真面目に聞かないと。

    鳴上「いや、無いです。それがどうかしましたか?」

    風花「ええ!?そうなの?」

    鳴上「そんなに驚かなくても……」

    風花「ご、ごめん。でも、意外だったから……うん、そっか。うん……」

    >今度は何かに納得するように一人でうなずいている。
    >俺の交際経験が何の関係があるんだろうか……?

    鳴上「ええと、それがどうかしたんですか?」

    風花「じゃあ、一般的な見解で答えて欲しいんだけど、いい?」

    鳴上「はい。どうぞ」

    >大きく深呼吸している……。

    567 = 556 :

    風花「……二人の男の人を好きになって、どっちか片方を選べなくて、それでオタオタしてる女の子って、どうなのかな」

    鳴上「二股って事ですか?」

    風花「違うの、そうじゃなくて……どっちと付き合ってるとかじゃなくて、ただ好きなだけ」

    鳴上「ああ、そういう……良いんじゃないですか?別に」

    風花「そうかな……もっと、詳しく言うとね。一人は、以前好きだった人。もう会えなくなっちゃって、忘れようって思って。でも、また帰ってきちゃって」

    鳴上「……?」

    風花「その時には、もう別に好きな人がいて。でも、帰ってきたら、やっぱり好きだなって思って……それで、どっちにしよう、なんて悩んでる」

    >山岸さんは視線を落として黙り込んだ。
    >……何となく、覚えのある話だ。

    鳴上「でも、悩むだけなら自由だと思いますけど」

    風花「自分勝手じゃない?どっちにも申し訳ないっていうか」

    鳴上「……まぁ、一般的には、酷い女って言うのかもしれませんね」

    風花「だよ、ね……」

    鳴上「いや、飽くまで一般的にですよ。ていうか、それでどっちもにモーションかけてるとか、そういう事はあるんですか?」

    風花「そういうわけじゃ、無いんだけど。……納得いかなくて。私の中で」

    鳴上「だったら一般的にも何とも言わないと思いますけど……それ、俺に何か出来るんですかね?」

    568 = 556 :

    >ふと口をついて出た言葉だった。
    >しまった、と思った時にはもう遅い。
    >山岸さんは打ちのめされたような表情をしている。

    鳴上「あ、その……」

    風花「そう、だよね。ごめんなさい。あの、お金私が出しておくから。ゆっくり飲んでから帰っていいからね」

    >自分が飲み終えていないのに、慌てたようにして席を立った。

    鳴上「いや、あの……!」

    >引き止める言葉が上手く出なくて、そのまま立ち去られてしまう。

    鳴上「くそっ……馬鹿か、俺は」

    美奈子「へっただねー、悠は」

    >席の背もたれごしに声がした。

    鳴上「美奈子、いつから……」

    美奈子「最初から。内緒で見に来てたんだけど……どうすんのよ」

    鳴上「どうするったって……」

    美奈子「一回拗れたら修復大変なんだから。経験者はかく語るってね」

    鳴上「俺、謝って……」

    美奈子「もー、どんだけ鈍いのよ。今行ったって駄目だって。……そうねー、しばらく避けられると思うから、その後かな?」

    鳴上「……でも」

    美奈子「いいから、言うとおりにしときなって。女の子には心の準備が必要なのよん。とりあえず、コーヒー代悠がもってね」

    鳴上「あ、ちょ、おい!」

    >美奈子は伝票を渡すと帰っていった。

    鳴上「どうすりゃいいんだ……」

    >山岸さんに酷い事を言ってしまった。
    >……ちゃんと、謝ろう。
    『No.02 女教皇 山岸風花』のコミュがリバースになってしまった。

    569 = 556 :



    【夜 堂島宅】


    菜々子「湊お兄ちゃん、まだ起きてるの?」

    有里「うん、もうちょっとね」

    菜々子「そっかぁ。菜々子もう寝るね」

    有里「ん、おやすみ」

    菜々子「おやすみ……」

    >随分眠かったのだろう、菜々子はふらふらと部屋に戻った。

    堂島「寝たか」

    有里「みたいですね」

    堂島「……どうだった、向こうは」

    >僕はまだ起きている。
    >堂島さんに説明する事がたくさんあるからだ。

    有里「ええ、楽しかったです。……どこから、話しましょうか」

    堂島「全部だ。……と、言いたい所だが、それじゃ俺の方が混乱しちまいそうだ。まず、お前は結局何なんだ?」

    有里「漠然とした質問ですね。僕は……死んだ人間です。ある理由で。しかし、何の因果かおまけをもらったと」

    堂島「冗談に聞こえるがな」

    有里「これが、冗談じゃないんですよ」

    堂島「だろうな。そんな顔じゃない。で、そのお前は何が出来る」

    有里「事件の解決が出来ます」

    堂島「事件ったって、俺の知る限り何も起こってないぞ」

    有里「でしょうね。ですが、その内起こります。必ず、起こります。それはわかるんです」

    堂島「……ちっ。とんでも無い拾いもんだ、お前は」

    有里「すみません」

    堂島「いや、いい。で、お前はこれからどうするんだ?」

    有里「……あれ、もっと突っ込んで聞かないんですか?」

    570 = 556 :

    堂島「なんでだ?」

    有里「いや、だって……あからさまに胡散臭いじゃないですか」

    堂島「……信じるさ。俺にも予感がある。なんだろうな、只事じゃない気がするんだ」

    有里「刑事の勘ですか?」

    堂島「そうだな。前にもこんな事があった。その時は、悠がお前のように事件解決に走ってたんだが」

    有里「だから、信じてくれると」

    堂島「正確にはそれもあって、だ。……まず、お前は肝心な所では嘘を吐かない。それが一番信用出来る理由だ」

    有里「偉く信用されたもんですねぇ」

    堂島「刑事だからな。人を見る目はある方なんだ……で、お前はどうするんだ」

    有里「このまま、事件を追います」

    堂島「危険は無いのか」

    有里「あります」

    堂島「……お前にしか、出来ないのか」

    有里「出来ません」

    堂島「……」

    有里「……」

    >堂島さんはため息のように長く煙を吐き出した。

    堂島「お前がそうしたいなら、すればいい。わざわざ止める事はしない」

    有里「すみません……」

    堂島「ただ、俺や菜々子の事も少し考えてくれ。それだけでいい」

    571 = 556 :

    有里「……」

    堂島「そうすりゃ、無茶も出来ないだろ」

    有里「酷いですね、止められるよりよっぽどキますよ」

    堂島「そうだろ。わかってて言った」

    有里「やられた……」

    堂島「はは。ほら、もう寝ろ。時間も時間だ。菜々子と遊んで疲れただろ」

    有里「はい、子供はエネルギーがあふれすぎて……じゃあ、おやすみなさい」

    堂島「おう、おやすみ」

    >堂島さんは、僕を信用してくれているらしい。
    >……心の底から、有難い話だ。
    『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが4になった。

    有里「しかし、月か……」

    >夜空を照らす月を眺める。
    >昼間、直斗から聞いた仮説。

    直斗『封印が解けた本物の月がテレビの中にあるなら、外にある月は一体なんなんですか?』

    有里「……どっちが、本物なんだろうね」

    >カーテンを、閉めた。

    572 = 556 :

    事件は終わり?

    そんな事になったらこのSSが終わるじゃないか!

    というわけで、本日分は終わり。
    では、また後日。

    573 :

    乙!

    更新が毎日の楽しみになってます

    574 :


    なんかドキドキしてきた

    575 :

    おお・・・
    おもしろくなってきたー!!
    乙!

    576 :

    だからなんで休日の方が忙しいんだよ!(バンッ

    ここから色んな部分で物語が加速します。
    というわけで本日分。

    577 = 576 :



    【2012/5/13(日) 晴れ ポロニアンモール】


    >今日はベルベットルームに行く事にした。
    >事件の始まりはあそこに呼ばれ、事件が終わる時もあそこに呼ばれる。
    >今回、事件が終わったと思えないのはそれが理由でもある。
    >青い扉に手をかけて、ノブを回す。
    >……。

    イゴール「ようこそ、我がベルベットルームへ。今日は何の御用でしょう?」

    鳴上「……話がしたい」

    イゴール「お話ですか。良いでしょう、聞きましょうとも」

    鳴上「すまないが、質問したい。影時間、マヨナカテレビ……あんたはその両方を見てきた。そうだな?」

    イゴール「勿論でございます。人を眺め、人とは何か、生きるとは何かを見定めるのが私の唯一の趣味でありますから」

    鳴上「あんたに聞きたい。昨日、影時間が来なかった。俺はもうテレビにも入れない。これは、事件が終わったからか?」

    イゴール「慮外な事をおっしゃいます。貴方自身、わかっておられるでしょう?事件は終わってなどいない……滅びの時は、刻一刻と近付いておりますよ」

    鳴上「やっぱり、そうなんだな。それで、俺に出来る事は無いか」

    イゴール「それを探すのは私めにございません。貴方が探し、貴方が見つけ出すのです。そうしなければ、何の意味もない」

    鳴上「……ヒントもなし、か」

    イゴール「強いて言うなれば、貴方は既に鍵を握っていらっしゃる。後は扉に手を掛け、ノブを捻り、開くのみなのです。私から言える事はございません」

    鳴上「今まで通りで良いって事か?」

    イゴール「左様でございます。……ですが、貴方がもし事態を収束させたいのなら、急いではなりません。時を待つのです。その時がくれば、自ずと見えて来る物があるはずです」

    鳴上「そうか……ありがとう、参考になった。また来ます」

    イゴール「いつでもいらしてください。貴方には期待している……またのご来訪を、お待ちしております」

    >……。
    >結局、時を待て、という以外の情報は得られなかった。
    >どうしたものだろうか……ただ待つだけというのも、気分が良くない。
    >イゴールも言っていた通り、何かが起こる時が近付いているのが感覚としてある。
    >変わらず日常を送りながら、徐々に沈んで行くような空気が町中を包んでいるからか……。

    578 = 576 :

    エリザベス「お待ちください」

    >ふいに、背後から声をかけられた。

    鳴上「エリザベスか。どうかしたのか?」

    >エリザベスはいつものように一礼する。

    エリザベス「少し、世間話をと。どうやら行き詰っておいでの様子、息抜きも必要かと思いまして」

    鳴上「……そうだな。いろいろ悩みが多すぎて、少し参ってる」

    エリザベス「ええ、そうでしょうとも。……噂を、ご存知ですか」

    >エリザベスは微笑みながら言う。
    >彼女が表情を崩す事は滅多に無いが……
    >変わらない微笑の裏から伝わる感覚は、恐らくこれが重要なヒントだと言っている気がする。

    鳴上「噂っていうと、何の?」

    エリザベス「噂の噂でございます」

    鳴上「噂の……噂?」

    エリザベス「はい。噂の噂……噂が、現実になるという噂」

    >噂が、現実に?
    >何故だろう、どこかで聞いたような記憶がある。
    >そんなはずは無いのだが……。

    エリザベス「噂というのはいつの世も無くならない物です。昔は人面犬や口裂け女など、様々な噂が流行ったものです」

    鳴上「エリザベスって何歳なんだ?」

    >一瞬、寒気がした。

    鳴上「いや、何でもないです!」

    エリザベス「……そういった噂が、現実になるという噂が流れた時期がありました。その時も、主は客人を迎えていたようです」

    鳴上「噂が現実に、ね。どういう事なんだろう……」

    エリザベス「例えば、憎い相手を殺してくれる呪いであったり」

    鳴上「物騒だな。で、それがどうしたっていうんだ?」

    エリザベス「当時は口伝でした。どこから伝わったのか誰も知らない。だけど、いつの間にか皆が知っている。そんな物だったのですが。最近は、どうやら事情が違うようですね」

    鳴上「噂の伝わり方が違うってことか。今だと、そういうのはネットで……」

    エリザベス「そうですね。例えば、そういう場所でのみ囁かれている噂。それが現実になっていたとしたらどうでしょうか」

    >……なるほど、エリザベスの言いたい事がわかった。

    579 = 576 :

    鳴上「ぞっとしない話だな。知らない間に事件の渦中かもしれないってわけか」

    エリザベス「もしそうなった時、貴方は事態の解決に向かいますか?」

    鳴上「多分、そうするだろうな。でも、事件の原因がわからなけらば解決も難しい。ネットでの噂が現実になって事件が起こるなら、まずネットを調べてみないとなぁ」

    エリザベス「そうですね。解決の糸口が見つかるやもしれません。……そのお顔は、先ほどまでと違うご様子ですが?」

    鳴上「少なくとも、悩みの一つに光明が差したからかな」

    エリザベス「まぁ!このような他愛ない世間話でも悩み事の解決の一助になるだなんて!驚いてしまいます」

    >エリザベスは大袈裟に驚いたフリをしている。
    >俺の知らない所で、何かが動いている。
    >まずそれの尻尾を捕まえない事には、何も始まらないようだ。

    鳴上「世の中何があるかわからないな。ありがとう、気が楽になった」

    エリザベス「それは何より。それと、もう一つ。彼……もう一人の彼の近くに、ある人が近付いています」

    鳴上「彼?有里か。ある人ってのは?」

    エリザベス「先ほど言った、噂が現実になるという噂。それに最も詳しいであろう方です。機会があれば、会う事もあるでしょう」

    鳴上「そうか、覚えとく。今日は帰るよ。じゃあ、また」

    エリザベス「ええ、また……」

    >エリザベスはまた一礼して、見送ってくれた。
    >ある人……?
    >とにかく、帰ってネットを調べてみよう。
    >何かわかるかもしれない。


    【2012/5/14(月) 晴れ 八十神高校】


    >何だか懐かしい心地だ。
    >上履きがまだ無くてスリッパで廊下を歩いたり、そういうの。

    有里「はじめまして、有里湊と言います。諸事情あって中途半端な時期での編入になりますが、これから皆さんと一緒に勉強できるのが凄く楽しみです。よろしくお願いしますね」

    >にこりと微笑んでおく。
    >対人用兵器の一つだ……。
    >何だかんだで煩わしいのは苦手だし、ここで良い印象を得ておかないと。
    >後ろのほうに陽介と千枝、天城さんがいるのがわかる。
    >……好都合にも、その中心に空席が一つ。
    >僕の席だ。

    陽介「よ、来たな有里。まさかクラスまで同じとはなー」

    有里「これは偶然みたいだけどね。流石にそこまで手回しはしてないみたい」

    雪子「花村君から聞いてたけど、本当に学校通う事になったんだね。おめでとう!」

    有里「ありがとう。これからよろしく」

    千枝「こっちの制服、割と似合ってるね。学ランってタイプじゃないと思ってたけど」

    有里「着た事無かったから新鮮だよ。ちょっと首が苦しいかも」

    陽介「上のほう外しとけばいいだろ?そんなキッチリ着なくてもよ」

    >皆と授業を受けた……。
    >学校って、こういうのだったっけ。
    >……。

    580 = 576 :

    陽介「っし終わったー!どうよ有里ちゃん、こっちの授業は!」

    千枝「月光館で地獄見たでしょ私ら……あそこ通ってたんだよ、有里君」

    有里「面白かったよ。授業より他の話が長い辺り」

    雪子「ウチは先生が面白い人多いから……」

    りせ「里中せんぱーい!今日もお話聞かせてくださいよー!有里さんこんにちわ!……ええっ!?」

    >授業が終わってすぐ、りせがやってきた。
    >何故か驚いたようだ。

    有里「ん?」

    陽介「あ、言って無かった」

    千枝「私も忘れてた……」

    有里「ああ。僕も今日から八十神高校三年生だから。よろしく、久慈川後輩」

    りせ「ひどーい!何で教えてくれないんですかー!」

    有里「てっきり伝わってると思って」

    千枝「ごめんね、うっかりしてた」

    りせ「……しょーがないなー。二年じゃ私が一番ですよね!?」

    有里「なのかな?」

    陽介「二年組にゃ言ってねーかんな」

    千枝「私も言ってないから、そうじゃないかな?」

    りせ「だったらいいです!」

    >直斗にはちょっと言ったような気がする。
    >……黙っておいた方がいいだろう。

    千枝「で、何の話?」

    りせ「だからー、向こうでの土産話ですよぉ。聞かせてくれるって言ってたのにー」

    千枝「あ、その話ね……」

    >千枝がちらちらとこっちを見ている。
    >僕の事でも話すのだろうか。

    有里「あ、僕もう帰るから。陽介、良かったら」

    陽介「おう、帰るか!」

    >鞄を持って席を立つ。

    千枝「あ、また明日ね!」

    雪子「二人ともまたね。……で、千枝。勿論私にも聞かせてくれるんだよね?」

    りせ「あ、なんだったら直斗も呼ぶ?」

    千枝「別にいいけど……」

    >……。

    581 = 576 :

    陽介「最近、あいつら仲良いよな」

    有里「そうだね。あの女子特有の盛り上がりはどういう心理で起きるんだろうか」

    陽介「わかんねえけど、俺らが見たあの女子可愛くね!?とかってのと同じかね」

    有里「なるほど、わかりやすい」

    陽介「……実際のとこ、どうなんだよ。里中となんかあったのかよ」

    有里「別に?」

    >ふふんと笑って何かあったことを匂わせておく。
    >……やっぱり、からかうなら陽介だ。

    陽介「まぁ深くは聞かねぇよ?こう、知り合いのそういう話ってすげえ罪悪感がさ……」

    有里「けど興奮するよね……」

    陽介「まぁな……って言わせんなよ!」

    完二「あ、花村先輩。今帰りっスか」

    陽介「おう、完二。お前も帰りか」

    完二「うぃっス。あれ、ところで有里サンなんでウチの学ラン着てんスか」

    有里「完二!僕は先輩だぞ!その態度は何だ!」

    >とりあえず、怒鳴ってみた。

    完二「うわぁっ!え、どういうことっスかこれ」

    陽介「ああ、こいつも今日から学校通えることになったんだよ。聞いてたんだけど言うの忘れててよ」

    完二「マジスか!じゃあ有里先輩っスね!改めてよろしくお願いしゃっス!」

    有里「うん、よろしく。完二も一緒に帰る?」

    完二「あ、んじゃ俺もちょっと聞きたい事あったんで。有里先輩って、家事とかやるんスよね」

    有里「まぁ、それなりにね」

    完二「裁縫とかって、得意だったりしないっスか」

    有里「ん、それなりにね」

    完二「だったらちょっとお願いっつーか……頼みあるんスけど、いいスか?」

    >……。


    【夜 堂島宅】


    有里「ふぅ。意外と難しいもんだなぁ」

    >完二から借りた教本通りにやってみるものの、中々綺麗にはいかない。

    有里「しかし、あみぐるみね……」

    >意外性抜群の趣味を持っているものだ。
    >しかもそれを子供達に配っているとか。

    有里「そういう事なら喜んで手伝うけどね。あ、ここがこうなんだ」

    >……あれ、これ楽しいかもしれない。
    >夜更けまで、あみぐるみと格闘した……。
    >……。

    582 = 576 :

    >堂島さんが帰ってきたようだ。

    有里「お帰りなさい、遅かったですね」

    堂島「ああ、ただいま。お前もまだ起きてたのか……なんだ、それ?」

    >右手にあみぐるみを持ったまま出迎えてしまった。

    有里「ああ、あみぐるみって奴です。気にしないでください。……お疲れみたいですね」

    >堂島さんはどっかりとソファーに座ると、深くため息をついた。

    堂島「……わかるか。わかるだろうな。まぁ、事件だよ。……厄介なヤツだ。また帰りが遅くなる毎日だと思うと気が滅入る」

    有里「菜々子が寂しがりますね」

    堂島「何、お前がいる。多少は大丈夫だろう。ふぅ……」

    >……?

    有里「ライター、どうしたんですか?」

    堂島「これか?もらったんだ。普段はコンビニで買ってるんだが、折角だし使おうと思ってな」

    >堂島さんの手にはジッポーが握られている。
    >確かに、いつものライターでは無いようだ。
    >……見た事は無いはずだが、既視感がある。
    >パチンッ。

    有里「いい音しますね」

    堂島「だろ。これをもらった奴……俺と同じ、刑事なんだがな。そいつが考え事をしながら鳴らしてたんだ。移ったかな」

    有里「案外、いい考えが浮かぶかもしれませんよ。晩御飯、どうしますか?」

    堂島「いや、いい。気分じゃない……明日の朝食べる。今日は、寝るよ……」

    >堂島さんは本当に疲れているようだ。

    有里「お風呂は入った方が疲れとれますよ。じゃあ、僕も寝ます」

    堂島「ああ、おやすみ」

    >階段を登る途中、またライターの音が響いた。

    583 = 576 :



    【2012/5/15(火) 晴れ 八十神高校】


    陽介「はよー……って、どしたの、コイツ」

    >陽介の声が聞こえるが、振り向く気になれない。
    >今は一秒でも長く休んでいたい。

    雪子「原因、それみたい。鞄の横」

    陽介「あ?何この袋……おわっ!んだこの量!」

    千枝「なんか遅くまで編んでたらしいよー。完二君に頼まれたんだって」

    陽介「あー、そういやそんな事言ってたな。って、初心者だっつってたのにこの出来かよ」

    雪子「すごいよね、私一個もらっちゃった」

    千枝「あはは、私も。凝り性なんじゃない?」

    >遅くまで、とは言ったが実は遅くまでなんてもんじゃない。
    >結局朝方までずっと編み続けていた……ハマってしまったようだ。
    >授業が始まる頃だが、とにかく眠い。
    >ちょっと、寝てしまおう……。

    完二「……先輩!有里先輩!おい!流石にそろそろ起きろっつの!」

    >はっと顔を上げる。

    完二「もう放課後っスよ。どんだけ寝るのかと思っちまった」

    >確かに、もう夕方だ。
    >どうやら、一日寝て過ごしてしまったらしい。

    有里「起こしてくれてありがとう……あいたた」

    >机に突っ伏して寝ていたからか、顔とか背中が妙に痛い。

    完二「いや、それはいいんスけど。先輩、俺の頼み聞いてくれてて寝不足なんだって聞いたんで。で、例のはこれっスか」

    有里「そう、それ。一応色んなパターン作ってみたけど、上手く出来たかどうかは完二の判断に任せるよ」

    完二「んじゃ、拝見しやス」

    >完二は袋からあみぐるみを取り出すと、しげしげと眺めている。

    完二「……つーか、これ俺の貸した本のレベルじゃないっスよね。どうしたんスか」

    有里「途中から手が勝手に動いて……気付いたらそんな事に」

    完二「いや、全く文句無ェどころか俺より上手ェじゃねえか。先輩、才能あんじゃないスか?」

    >どうやら、完二を唸らせるレベルだったようだ。

    584 = 576 :

    有里「これで問題無いかな?」

    完二「問題無いっつーか、むしろ俺のが見劣りするかもしんねェ。良かったら今度教えてくれねえスか?」

    有里「いいよ、じゃあ暇な時があったら言って。教えるから。今日は……帰って、寝たい」

    完二「まだ眠いんスか。花村先輩が一日中寝てたって言ってたけど……」

    有里「寝て悪いか!」

    完二「キレるポイントがわかんねェよ!……でも、これ、ありがたく頂いときます。ガキども、喜ぶと思うっス!」

    有里「ん。それじゃ、またね」

    完二「うス、また」

    >完二から高評価を受けたようだ。
    『No.14 節制 巽完二』のランクが3になった。
    >……眠い。
    >帰る途中で寝てしまいそうだ。
    >どうしたものだろうか。
    >などと考えながら校門に行くと、見覚えのあるストラップのついた鞄が見えた。

    有里「あれは、昨夜作った鴨兎20号……ってことは、千枝?」

    千枝「あ、やっと来た。遅いぞ、有里君!」

    >あみぐるみをストラップにしているようだ。

    有里「それ、気に入った?」

    千枝「ん?ああ、ありがとね。可愛い」

    有里「そう……ていうか、待っててくれたんだね。ごめん、待たせて」

    千枝「いや、調子悪そうだからさ。付き添いいるかなって思って」

    有里「今にも寝ちゃいそうな所を除けばすこぶる良好だよ」

    千枝「それが調子悪そうって言ってんの……大丈夫?フラフラしてるよ?」

    有里「いや、大丈夫……さぁ、帰ろうか」

    >千枝と二人で帰る事にした。
    >ああ、眠い……。

    585 = 576 :



    【鮫川河川敷】


    >……駄目だ!

    有里「寝る」

    千枝「へっ!?ここで?」

    有里「睡眠は全てに優先する……ていうか……眠い……限界が……」

    千枝「ちょ、ちょっと、フラフラしたら危ないって!えと、どっか……せめて座れる所……!」

    >千枝はわたわたしながら場所を探してくれている。
    >が……。

    有里「後は任せた……」

    >ふらっと倒れた。
    >痛くなかったから、多分千枝が受け止めてくれたんだろう……。
    >……。


    【夜】


    有里「ふわ……ん?」

    >目を覚ますと、目の前に千枝の顔があった。
    >……?

    千枝「……ん……あ、起きた?」

    有里「とするとここは千枝の膝の上か」

    千枝「ごめん、私も寝ちゃってた……体痛くない?大丈夫?」

    有里「おかげさまで。……これ、もうちょっと堪能してていいかな」

    千枝「だ、駄目!駄目です!起きたら早くどいたどいた!」

    >仕方ない、名残惜しいが起きるとしよう。

    有里「ごめんね、わざわざ。千枝こそどこか痛くない?」

    千枝「平気だよ。もう大丈夫?」

    有里「うん。眠気は晴れた。……膝枕は、やっぱりいいね」

    586 = 576 :

    千枝「私の膝で悪いけどねー。そんなにやわらかくもないし。鍛えてるから……」

    有里「いや、そうじゃないんだ。やわらかいだけでは駄目で、弾力というか、とにかく筋肉が多少無いといけない。千枝の太ももは筋肉だけでもなく脂肪だけでもない、かなり理想に近いものだよ」

    千枝「力説されても……」

    有里「脂肪のふんわりとした感触の奥にしっかりと息づく若い筋肉のハリが良いんだ。中々できるものではないよ」

    千枝「あ、そう……褒められてるんだと思うけど、あんまり女の子に脂肪脂肪言わない」

    有里「おっと、ごめん。良かったらまたお願いしてもいいかな?」

    千枝「膝枕?」

    有里「眠いときに」

    >千枝はちょっと考えて、それから笑った。

    千枝「誰も見てない時だったらいいよ。恥ずかしいからね」

    有里「それでいいよ。……ああ、こんな時間か。ごめん、付き合わせちゃって。家まで送るよ」

    千枝「いいって、そんな……」

    >足音が聞こえる。
    >この時間にここを通る人が僕達以外にもいたのか……。
    >足音が止まった。
    >振り返ると、背広姿の男が一人。

    「君ら、高校生か?こんな時間までデートとは……うらやましいけど、関心しないぜ」

    >パチンッ。
    >男の手元から、聞き覚えのある音がした。

    587 = 576 :

    ZIPPOを鳴らす癖のある、あの男の登場です。
    多分、お気づきの方多いんじゃないでしょうかね。

    短くて申し訳ないが、今日の所はここまでで。
    では、また後日。

    588 :

    ぬぁぁぉぁあ!面白いのに!見ていたいのに!
    なんか知らんが有里ムカつく
    千枝を鳴上に返せ!とか思ってしまう

    589 :

    乙ドラオンでございます。

    こっちでも出てきた!
    あと4日か……。

    590 :

    男ってのはなあ・・・

    592 :


    あのモノマネがすごい上手い人の登場か

    593 :

    モノマネのプロ登場かwwww

    >>1はぜひ頑張って終わりまで続けて欲しい

    しかし、他スレの似たネタとかぶって大丈夫か?

    594 :

    まぁ彼はぶっちゃけしばらく出番ありません。
    鴨兎20号は、甥っ子(10歳)が作ってくれました。シュールでした。

    そして作中、時間は少し前後します。
    ぽんぽーんと進む本日分。

    595 = 594 :



    【2012/5/13(日) 夜 巌戸台分寮】


    >ネット上で、都市伝説や噂話を扱うサイトをいくつか巡ってみた。
    >……それらしい話は出てこない。

    鳴上「おかしいな……エリザベスの言ってたのはこういう事じゃないのか?」

    >ネットで飛び交う噂話。
    >良く見れば、この手のサイトは更新日が軒並みかなり前だ。

    鳴上「なるべく最新の情報が欲しい。こういうサイトだと、多くて月一更新なのか……じゃあ、こっちか」

    >某巨大掲示板のトップを開く。

    鳴上「何となく怖いイメージがあってあんまり見なかったけど、確かそういうスレッドもあったはず……」

    >カテゴリ:オカルトの掲示板を開いた。

    鳴上「……アセンション?呪い?予言……オノヨーコ?ここ、やっぱりヤバイんじゃないか?いろいろと」

    >とにかく、スレッドリストを調べてみよう。
    >……怪しい噂・都市伝説スレ。

    鳴上「ここら辺かな。どれ……」

    >1 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/9(水) 23:21:38.15
      新スレ立てまんた。
      現在進行中の噂→マヨナカテレビ
              影時間
              影人間

      適当に議論してくだし。

    鳴上「……いきなり当たりか!」

    >ざっと中身を辿ってみる。
    >確かに、影時間、マヨナカテレビ、シャドウなど、気になるキーワードが盛りだくさんだ。

    鳴上「まさか、本当にこれが原因で……?このスレッドの前のスレッドはどこだ」

    >ログを辿っていくと、前スレへのリンクを見つけた。

    鳴上「前スレが立ったのが一週間前?こんなに流れが速い物なのか?」

    >試しに他のパート系スレを開いてみる。
    >一年経っても埋まっていない所もあるようだ。

    鳴上「なんで、ここだけ……とにかく、最初に影時間の話題が出た所まで遡ってみよう」

    >初出は7スレほど前のようだ。
    >そこから一気に流れが速くなり、どんどんパートを重ねているらしい。

    596 = 594 :

    鳴上「最初のレスは……これか」

    >378 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/26(月) 24:00:00.00
       影時間、始まる。

    鳴上「……最初に影時間って言葉が出たのはこのレスだが……これだけじゃ何もわからないんじゃないか?何故ここから話が広まったんだ?」

    >379 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/27(火) 21:25:18.14
       懐かしい事言ってる奴がいるな。
       ほい、例のヤツ→ttp://xxxxxxxxx

    鳴上「このリンク、踏んでも大丈夫なんだろうか」

    >迷っても仕方が無い。
    >リンクをクリックした。

    鳴上「なんだ、このページ」

    >ニュクス教……?
    >何かの宗教の信者が作ったページのようだ。
    >驚いたことに影時間やシャドウの事、Nyxの事までが事細かに書いてある。
    >全てのページの括りには、極上の滅びを皆で!という一文が載っている。

    鳴上「気味が悪い……けど、どうやらここが火付け役か。でも、これじゃ……」

    >ページをスクロールしていくと、最終更新日が書いてある。

    鳴上「2012/3/29……!?」

    >スレッドに目を戻す。
    >383 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/29(木) 22:45:58.22
       おい、ニュクス教ページ更新来てんぞwwww
       三年ぶりワロタwwwww

    鳴上「ここだ、ここから凄い勢いでレスが……更新内容は……」

    >新しい項目の追加が行われている。

    鳴上「マヨナカテレビ……!」

    >見つけた。
    >今、騒動の中心にあるのはこの掲示板、このスレッドで間違いない。

    鳴上「じゃあ、今影時間が消えた事も……?」

    >最新のスレッドに戻る。
    >……あった。

    >63 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/05/10(木) 24:51:20.18
       影時間とマヨナカテレビ、もう解決したらしいぜ。
       知り合いのペルソナ使いが言ってた、もう来ないってさ。
       テレビん中ももう入れないんだと。
       面白かったけどここで終わり?

    鳴上「なんだこれ、とんでもない出鱈目じゃないか」

    >しかし、スレッド内の人たちは信じているようだ。
    >以後、終了、再開といったくだらないレスでスレは伸びている。

    鳴上「このレスが原因で、影時間が消えた……?そんな馬鹿な話があるのか?」

    >しかも、この書き込みの通りになっているとしたら、事件は終わった事になる。

    鳴上「だけど、そうじゃないんだ。もっと下へ……」

    >……見つけた。

    鳴上「これか……」

    >108 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/11(金) 22:22:38.32
       影時間とマヨナカテレビの一時的消滅は前段階らしいぞ。
       これからしばらくして、次のフェイズに移る。
       そうなったら平和にやってきたこのスレも終わりだな。

    597 = 594 :

    鳴上「こいつ……余計な事を……」

    >本当に噂が本当になるのなら、さっきのレスで事件が終わっていたかもしれない。
    >しかし、このレスがその意味を覆した。

    鳴上「というか、何でこんな適当な話を信じるんだここの連中は。ソースの無い話題に食いつくなよ」

    >久しぶりに長時間パソコンを弄っていた為か、酷く肩が凝った。
    >この話、誰に相談すべきか……。
    >とりあえず、今日は寝よう。


    【2012/5/14(月) 晴れ 巌戸台分寮】


    鳴上「あ、桐条さん、おはようございます。少し時間いいですか?」

    >廊下でたまたま桐条さんに出くわした。
    >丁度いいので昨夜調べたことを報告しておこう。

    美鶴「何だ、何かわかったのか?」

    鳴上「ええ、信じていいのかわかりませんが。実は……」

    >昨夜見たスレッド、ニュクス教、事態が起こる前に常に書き込みがある事……を説明した。

    美鶴「……にわかには信じ難い話だな。何より、そんなものに今まで踊らされていたというのが納得したくない」

    鳴上「ですが、偶然というには少し出来すぎではないかと……」

    美鶴「うん、看過は出来ないだろう。ただ、余りそういう方面に強い方では無いからな……」

    鳴上「寮内に誰か詳しい人はいないんですか?」

    美鶴「山岸なら、恐らく。ただ彼女はどうも様子がおかしいしな……そうだ、君から頼んでおいてくれないか?」

    鳴上「俺ですか?……ええと」

    >美奈子の言っていた事を思い出す。
    >実際、昨日も顔を合わせていないし……良い機会といえばそうなのかもしれないが。

    鳴上「あの、すみませんが桐条さんからお願いします。俺、他にも調べたい事あるんで」

    >……逃げた。
    >やっぱりあの時追いかけておけば良かったと思う。
    >美奈子め……。

    美鶴「そうか、なら仕方ないな。ご苦労だった。あまり、無理はしないように」

    鳴上「はい。それじゃ学校行ってきます」

    >桐条さんに伝えた以上、俺が調べる必要はもう無いのかもしれない。
    >……たまに掲示板を覗く程度にして、普通に生活してみようか。
    >逃げかもしれないが、このままじっとしているよりはマシに思えた。

    598 = 594 :



    【夕方 巌戸台分寮】


    >ぼんやりとした一日だった……。

    コロマル「ワン、ワンッ!」

    >ラウンジに入った途端、コロマルが足元に駆け寄ってきた。

    鳴上「どうした?」

    >コロマルは尻尾を振っている。

    鳴上「ああ、散歩か。行くか?」

    コロマル「ワンッ!」

    鳴上「ちょっと待ってくれ、荷物を置いてくる」

    >コロマルと散歩に行こう。
    >荷物を置いてラウンジに戻ると、アイギスさんとコロマルが遊んでいた。

    鳴上「あ、アイギスさん」

    アイギス「ああ、鳴上さん。おかえりなさい。どこかへ行かれるんですか?」

    鳴上「ええ、コロマルと散歩に。あ、一緒に行きますか?」

    アイギス「私もご一緒して良いですか、コロマルさん」

    コロマル「ワン」

    >アイギスさんはまるでコロマルと会話しているように見える。
    >……バウリンガル。

    鳴上「コロマルは何て?」

    アイギス「かまわないだそうです。なので、ご一緒させていただきます」

    鳴上「はは、じゃあ行きましょうか」


    【長鳴神社】


    >神社に着くなり、コロマルは走り去っていった。

    鳴上「相変わらず元気だな。よっと」

    >ベンチに腰を下ろすと、アイギスさんも隣に座った。

    アイギス「コロマルさんとは良くお散歩を?」

    鳴上「たまにですね。コロマルがねだってくる日は来てますよ」

    アイギス「そうですか……コロマルさんが、あなたの事を心配していました」

    鳴上「コロマルが?俺を?」

    >というか、本当に犬の言葉がわかるとでもいうのだろうか。

    アイギス「はい。なにやら疲れている様子だと。実際、そのように感じられます」

    鳴上「ああ、まぁ……疲れていないといえば嘘になりますが」

    アイギス「事件の事でしょうか?」

    鳴上「そうですね……今まで気を張っていたのが、少し抜けたのも大きいと思います。何か、いろいろ空回りしてる感じで、何やってんだろう俺って思っちゃって」

    599 = 594 :

    >悩みはそれだけでは無いが……言っても仕方が無い事は言わない事にした。

    アイギス「今、事件は言うなれば小康状態です。休んでも文句は言われないと思いますが」

    鳴上「そうですね、そうかもしれません。けど、どうしても不安で」

    >アイギスさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
    >……近い。

    アイギス「あなたばかりが無理をしても仕方がありません。私達も協力します。だから、少し休んで?お願いだから」

    鳴上「そうですね……わかっちゃいるんですが、どうしても」

    アイギス「昨夜は余り眠れなかったのですか?」

    鳴上「え、わかりますか?」

    アイギス「何となくですが。少し眠られたらどうですか?」

    鳴上「まぁ、帰ってから寝ますよ……ここで寝るってわけにもいかないし」

    アイギス「……特別ですよ」

    >アイギスさんはふとももをぽんぽんと叩いている。

    鳴上「はい?」

    アイギス「ですから、特別です。本来ならある人専用なのですが。寝心地は保障しますよ、永眠クラスです」

    >どうやら、膝枕をしてくれるらしい。
    >そういえば、以前天田に膝枕させたのもこの人だったっけ……。

    鳴上「えーと、それじゃあ、お言葉に甘えて……しばらくしたら起こしてください」

    アイギス「お任せください。では、ごゆっくり……」

    >アイギスさんの手でそっと目を閉じられた。
    >……硬いのかと思っていた。
    >……。

    鳴上「ん……ふぅ」

    アイギス「お目覚めですか?」

    鳴上「はい、すみません……っしょ、と」

    >辺りはもう薄暗くなっている。

    鳴上「結構寝ちゃってましたね、俺。足痛くないですか?」

    アイギス「平気です。寝心地の方は如何でしたか?」

    鳴上「あー……良かったです、凄く」

    >良かったです。

    アイギス「良かった。これからも、余り気を入れすぎないで……心配になってしまいますから。事が動くまで、せめて安らかに」

    鳴上「そう、ですね。そうしてみます。ありがとうございました」

    コロマル「ワンッ!」

    >いつの間にかコロマルも戻ってきている。

    アイギス「感謝するならここにもいるだろ、とおっしゃっています」

    鳴上「ああ、そうだな。コロマルもありがとう。心配かけたな」

    >コロマルは満足げだ……。

    アイギス「では、帰りましょうか」

    鳴上「そうですね」

    >今出来る事はやっている……。
    >少し、力を抜く事にしようか。
    『No.07 戦車 アイギス』のランクが4になった。
    『No.08 正義 コロマル』のランクが4になった。

    600 = 594 :



    【2012/5/16(水) 晴れ 放課後 八十神高校】


    陽介「なぁ、男子高校生だよな、お前」

    有里「そうだよ、陽介もそうでしょ?」

    陽介「だからこそ疑問なんだけどよ、なんでお前は手芸の本を机いっぱいに広げてんだ?」

    有里「いや、これが本当に面白くてね。陽介もやってみる?」

    陽介「いや、いい……」

    >授業中もこっそりと続けていたあみぐるみ製作。
    >かなり納得のいく物が作れそうだ。

    千枝「花村はなんか向きじゃなさそうだよね」

    陽介「お前だってそうだぞ」

    千枝「わ、私はちょっとくらい出来るもん!駄目なのは料理だけ!」

    陽介「へーへーそーですねー」

    >……視線を感じる。

    有里「?」

    雪子「……」

    >天城さんがじーっと手元を見てくる。

    有里「あの?」

    雪子「あ、気にしないで。ほんとにすごいなって思って見てるだけ」

    有里「ああ、そう……」

    >陽介と千枝の漫才が続いている。
    >……むぅ。

    有里「ごめん、やっぱり割りと気になる」

    雪子「へっ?ご、ごめん。もう見ないから」

    有里「天城さん、もしかしてやってみたい?」

    雪子「……実は、ちょっとだけ」

    >それならそうと早く言えばいいのに。

    有里「時間ある?良ければ教えるよ」

    雪子「今日は平気。じゃあ、お願いします」


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