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    元スレ勇者「ハーレム言うなって言ってるじゃないですか」盗賊「……3、だよ……」

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    901 :

    残念

    902 :

    前のクリスマス絵は良かったか流石に今年は無いかw

    904 :

    あけおめ

    905 :

    ʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ

    906 :

    えーっと……
    どうなってるんだ

    907 :

    HTML化依頼だすべきなのかな?

    908 :

    それは>>1が決めることであってこっちがどうこう言う資格はないと思う。

    909 :

    まだかな

    910 :

    やっと追い付いたけど>>1がいない…

    911 :

    来ないね...

    912 :

    まだかな

    913 :

    来ないかな

    914 = 913 :

    来ないかな

    915 :

    たのむ>>1

    916 :

    途中ですみませんでした

    917 = 1 :


    -番外-


    【煙はいつもの席で吐く】


    918 = 1 :


    ―アリアハン―


    ―宿・談話室―



    シュボッ

    チリチリ…

    「……ふぅー……」


    書物に落としていた視線を天井に持ち上げた後、簡易煙草に火を付け、私は思考と煙を纏めて燻らせた。


    「……」

    ガヤガヤ

    「……」


    この国に来る際に持ち込んだ煙草の数も、もう残り少なくなっている事に気付く。


    「……」

    「……しかし」チラッ


    窓の外には活気のある街が人々を乗せ廻っていた。諠譟、閑静、様々な表情を見せながら、人々の暮らしを包んでいる。


    「……綺麗な国だなぁ……」


    仕事の都合でこの国に足を踏み入れたのは、そう前の事ではない。


    「……」

    (ルビス祭も終わったし、そろそろ仕事も終わりだ)

    (あぁ、帰りたくないな)


    しかし、この国が私を魅了するにはその短い期間だけで十分だった。

    919 = 1 :

    (帰ったらまた他の仕事……考えただけで憂鬱だ)

    「……」


    この国は、とても美しい


    「……流石」

    (美国と名高いアリアハンだ)

    (こうやって通りを眺めるだけで、まるでルビス様の加護に包まれているかのようだ)


    ルビス様を崇め奉る祭りが行われるこの季節、アリアハンには私のような旅人が数多く訪れる。

    遥か遠くの地にさえその嘉名は轟き、この祭りに参加するため、この地に訪れるため(この大陸は諸事情により旅の扉が封印され、実質他大陸から孤立状態にある)

    アリアハンの魔力場を記憶した移動魔法取得者を雇う為に大金を積む富豪も少なくないと聞く。


    ガヤガヤ

    (……)

    (……仕事、したくないな)


    この街の不思議な引力は、屡こうして私を仕事から引き剥がす。


    (……よし)

    ガタッ

    「親父さん、ちょっと出てくるよ」スタスタ

    宿主「ああ、はいはい。どちらへ?」

    「……――酒場だよ」


    そして、その引力は……決まって私をあの場所へ誘うのだ。

    920 = 1 :

    ―ルイーダの酒場―


    カランカラン


    ルイーダ「いらっしゃいませー!」

    「「「いらっしゃいませー!」」」



    ガヤガヤ

    (おお、やっぱり何時来ても賑わってるな)

    (えっと、いつもの席は――……お、空いてる)

    スタスタ ドサ

    「よいしょ……ふぅ」

    「……」チラ


    「ルイーダちゃん!ロマ一丁追加ね!!」

    ルイーダ「はいなー」


    アリアハンに来てから、私はすっかりこの店のファンになってしまった。

    この店の主人は彼女、ルイーダという女性である。


    「聞いてよルイーダちゃぁん、女房がさぁ」

    ルイーダ「うーん、それはおじさんが悪いよ」

    「まだ何も言って無いじゃんよぉ!」


    凛とした芯の強い美しい女性で、どうやら国内外問わずファンが多いようだ。

    酒場と同時に、魔王討伐の為の集団用簡易書状の発行なども行っている。

    その両立が難しいであろう事は想像に難くない。

    921 = 1 :

    ルイーダ「はいはい、ちょっと待ってねー」

    ワイワイ ガヤガヤ


    (まだ若いだろうに……大変だなぁ)

    コトッ

    「お待たせいたしました」

    「ん?あぁ、ありがとう」

    「もうそろそろいらっしゃる時間だと思って、テーブル、空けておきましたよ」ニコ

    「本当に?いやあ、悪いねぇ」

    「いえ、いつもありがとうございます。ご注文はお決まりですか?」

    「とりあえず、珈琲を一つ貰えるかな」

    「かしこまりました」

    スタスタ

    「……ルイーダさん、珈琲一つ……」

    ルイーダ「了解!」


    (……やっぱり、前から思ってたけど接客のとき声が変わるんだな)

    (今日もしっかりしてるな、盗賊ちゃん)


    盗賊「鶏肉とトマトのサラダ、お待たせしました」

    「あら、ありがと盗賊ちゃん」


    彼女もまたこの酒場の看板娘で、盗賊ちゃんという娘だ。

    ルイーダさん同様ファンも多い。らしい。まだ12歳だけど。



    「今日も盗賊ちゃん可愛いねー!出るところ出てる!今日も出てるよ!」

    盗賊「……わ、おじさん、セクハラだ……」

    ルイーダ「ちょっとうちの娘に手ぇ出さないでよぉ?」ジトー



    ……12歳にしては、出るところが。その、うん。まぁ大人びた娘である。


    「えー?いいじゃないかー」

    盗賊「……おじさん、奥さんに言いつけちゃうよ?……」

    「か、勘弁してください」

    盗賊「……ふふっ……」

    922 = 1 :

    盗賊「お待たせ致しました」

    コトッ

    「ん。来た来た」

    盗賊「灰受けの壷もお持ちしましたよ」

    「おお、何から何まで。ありがと」

    盗賊「とんでもない事です」ニコッ

    「美味しく頂くよ。珈琲」


    この店のこの席。

    アリアハンに来てからの、私の一番のベストプレイス。


    「……」カチャッ

    ズズ

    「……ん」

    コトッ

    「…………はぁ……」


    そして、この時間。

    この時間が、私の一番の幸せなのだ。


    「さて……」

    (煙草でも吸いながら……)ゴソッ

    「……ん?」

    「あれ……うわ」

    ルイーダ「ん?お客さん、どうかされました?あ、おじいちゃんサラダお待ちー」

    老人「うめえ」

    「あ、ルイーダさん。ちょっと火口箱を宿に置いて来ちゃってさ」

    ルイーダ「あら大変」

    (煙草だけ持って来てるし……アホか俺は)

    (こんなだからいつまでも下っ端なんだよな……俺)

    ガタッ

    「ごめん、すぐ戻るから一旦宿に――……」

    ルイーダ「ううん、ウチの火口箱貸したげますよ」

    923 = 1 :

    「え?いいのかい?悪いね」

    ルイーダ「えっと……新入りちゃーん!カウンターの下にある火口箱取ってくれなーい?」


    ヒョコッ

    新入り「は、はは、はいっ!」


    タッタッタ

    新入り「は、はい、持って来ました」

    ルイーダ「ありがと。お客さんにお渡しして」

    新入り「はは、はいっ」

    スッ

    新入り「あ、あのっ……ど、どうぞ……!」

    「ああ、悪いね。ありがとう」

    新入り「そ、そんな、いえ、あの」

    新入り「……ご、ごゆっくりっ!」ダッ

    「あ」

    新入り「っ……!」タッタッタ

    「行っちゃったな」

    ルイーダ「ごめんなさいね。凄く人見知りしちゃう子なんですよ」

    「いや、入ったばかりなら仕方ないよ。初々しくて可愛いね」

    ルイーダ「でしょ?凄く可愛いのあの子!」


    あの娘は新入りちゃんという子。
    私がこの国に来て暫くしてからここで働き始めたらしく、動きがまだまだたどたどしい。


    「おい新入りぃ!ビール注げ!」

    新入り「は、はいぃぃ!!」ビクゥ


    なんというか、小動物的でとても可愛い娘だ。
    彼女の頑張り具合を見ているだけで胸に暖かい感情が流れ込んでくる。

    924 = 1 :

    ルイーダ「それ終わったら買出し行ってくれる?」

    新入り「えぇぇ!!むむ、無理!無理ですっ!」

    盗賊「……大丈夫だよ、きっとできるよ……」


    ガヤガヤ


    (……みんな仲がいいな)

    「……」ゴソ

    カチャカチャ

    カコッ カコッ!

    シュボ

    「……」パク

    チリチリ…

    「……」

    (仲……か)

    「……」

    「……――――っ……」スゥゥ

    (仕事仲間と仲良くできた事……俺にあったっけかな)

    「っ、ぷはぁ――――」

    「……」

    「……」

    (少し、煙が目に沁みたな)ゴシゴシ

    (ま、なんにせよ仲間の所に戻る前にこの仕事片付けてかなきゃな)

    …………
    ……

    925 = 1 :







    『なにトロトロやってんだこの愚図!!』


    『お前、この仕事むいてないよ』


    『教えてやった事は一回で覚えやがれ!』


    『てめぇはそんなんだから甘ちゃんなんだよ』


    『いいか、この仕事は全部お前に任せる』


    『ちゃんと皆を率いて上手くやれよ?リーダー』


    『……――――失敗など、許さんからな』



    …………


    「…………ふ?」


    チュンチュン

    「……」

    ムクリ

    「……」

    「ふぁ……ふぁぁぁ……」

    (夢か……嫌な思い出ばっかだったな)

    926 = 1 :

    ―宿・ロビー―


    スタスタ……

    バタン

    「ふああ……」

    宿主「おや、おはようございます」

    「おはよう、親父さん」

    宿主「そういえばお客さん、昨日の夜に出掛けました?」

    「昨日の晩?ああ、出かけたけど」

    宿主「大丈夫でしたか?」

    「大丈夫って、何が?」

    宿主「いえね、ちょっとルビス祭の後っていう事もありまして……ガラの悪い連中がうろついてるらしいんです」

    「ガラの悪い連中がかい?」

    宿主「えぇ、結構有名な荒くれ達らしくてね」

    宿主「ルビス祭に訪れて未だ滞在中の人達に絡んで金品を巻き上げてるらしく」

    「うわあ、そりゃどうしようもないね」

    宿主「まあこの時期まで滞在してる人達はお金を持ってる人達が多いですから、泥棒も毎年この時期に集まってくるんですよ」

    「そうらしいけど……ま、自分は大丈夫さ。金持ちなんて夢のまた夢だよ」

    宿主「ははっ、またまた」

    「いや、本当本当……よし、それじゃ出かけてくるよ」

    宿主「今日もあの店で?」

    「ああ、また夕方には戻るよ」

    宿主「はい、お気をつけて」

    927 = 1 :

    ―ルイーダの酒場―


    カランカラン

    ルイーダ「いらっしゃーい!」

    「「いらっしゃいませー!」」


    「さてと……ん?」


    ガヤガヤ

    荒くれ「がはは!!それでそいつがよぉ!」

    荒くれ2「嘘付け!俺ぁこの目で見たんだぜ!!」

    荒くれ3「どっちでも良いや、で、どうなったんだよ!」

    ワイワイ


    「……うわぁ」

    (分かりやすいなぁ……絶対宿主の言ってた荒くれってあいつらだろ)


    ルイーダ「あ、お客さん。いつもの席で良かったかしら?」

    「あぁ、頼むよ」

    盗賊「いらっしゃいませ、どうぞ。こちらへ」

    「ん」

    スタスタ

    盗賊「……ごめんなさい、今日ちょっといつもより賑やかで……」

    「大丈夫だよ」

    ガラッ スタッ

    盗賊「注文は、いつもの珈琲で大丈夫ですか?」

    「うん、お願いするよ」

    盗賊「かしこまりました」ニコッ

    スタスタ

    「……」

    928 = 1 :

    荒くれ「ちっ、酒が切れた」

    荒くれ3「おい、酒追加!」

    ルイーダ「はーいちょっと待って下さいねー!」

    荒くれ2「そっちの客の相手はいいからこっち先にしろよ!」

    荒くれ「酒持って来いって言ってんだろ!!」

    盗賊「只今お持ちしますので少々お待ち下さーい!」


    「……」

    (わかりやすいくらいに荒くれだな……)

    (はぁ……せっかくの静かな珈琲タイムが……)


    盗賊「すみません、お待たせ致しました」

    ゴトゴトッ

    荒くれ「おっ、来た来た」

    盗賊「それではごゆっくり」

    スタスタ

    荒くれ3「……」

    荒くれ2「おい、姉ちゃん」

    盗賊「え?」ピタッ


    ガシッ!


    盗賊「!」

    「!」

    929 = 1 :

    荒くれ「お姉ちゃん可愛いね」

    荒くれ2「ちょっとこっち来て座りなよ」

    荒くれ3「お酌してくんない?」


    (あいつらっ……!)


    盗賊「……すみません、そういうサービスは」

    グイッ

    盗賊「!」


    荒くれ「あ?」

    荒くれ2「いや、いいじゃん。なんで?」

    荒くれ3「ほらほら、俺の膝の上座れって」

    盗賊「っ……やめて下さいっ……」


    (あのロリコンども……!)

    (いや、盗賊ちゃんは大人びてるから気持ちは分かるが)

    (しかし我慢ならん……!)

    ガタッ!

    (ここは俺が一発……!!)


    荒くれ「あ?」

    荒くれ2「なんだお前」


    「……!」

    930 = 1 :



    新入り「……」


    荒くれ「なに?なんか用か嬢ちゃん」

    荒くれ3「手、離してくれねぇ?邪魔なんだけど」

    荒くれ2「それとも嬢ちゃんも酌してくれんの?」

    荒くれ「いやー!俺ロリコンじゃねぇんだけどなぁー!がはははは!!」

    (ロリコンだよ、お前らが掴んでるその子12歳だよ)


    盗賊「……大丈夫だよ、下がってて……」

    新入り「……は、離して下さい」

    荒くれ「あ?」

    新入り「…………迷惑なので、離してください」

    ギュッ

    新入り「お姉ちゃんから、手を離してください!」


    「……!」


    荒くれ「あ……?」

    荒くれ3「このガキ、客に向かって啖呵切りやがったよ」

    荒くれ2「……ちょっとこっち来い!」

    グイッ!!

    新入り「あうっ!?」

    盗賊「……!」

    931 = 1 :

    ガシャン!!

    新入り「ひぐっ!」

    荒くれ2「おい、そっち押さえとけ」

    荒くれ3「おう!」

    盗賊「……や!やめてくださいっ!……」

    荒くれ「うるせえ!!てめえも同じ目に合わせてやろうか!!」


    ゴソゴソッ!!

    新入り「ひっ!?」ゾクッ


    荒くれ2「ベッドの代わりにテーブルだが我慢しろよ嬢ちゃん!!」

    荒くれ「悪い店員には御仕置きしねぇとな!!」

    荒くれ3「ガキの次は姉ちゃんだから覚悟しときな」


    フッ


    荒くれ3「…………よ……?」

    新入り「……?」

    荒くれ「お?」

    荒くれ2「どうした?荒くれ3」

    荒くれ3「お……お……?」

    ドサッ!!

    荒くれ3「お……ごぉ……」ピクピク

    荒くれ「荒くれ3?どうした荒くれ3!!」

    盗賊「……?……」

    荒くれ2「ちっ、貧血か?……おい起き」

    932 = 1 :


    ヒュンッ!!

    ゴキンッ!!!!


    荒くれ2「ゴエッ」

    ドサッ

    荒くれ「……え?」

    荒くれ2「」ブクブク

    荒くれ「あ、荒くれ2……?」


    「ちょっと裏にビール取りに行ってる間に、何やってんのアンタら」


    荒くれ「へ……?」

    新入り「……ル」

    盗賊「……ルイーダさん……!」


    ルイーダ「私の店の子達に何してくれてんのって聞いてるんだけど」ゴゴゴゴゴゴゴ


    荒くれ「ひっ……!?」

    ルイーダ「最近夜中に町中で迷惑かけまくってる荒くれ共ってアンタらね……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

    ルイーダ「お客さんだから……笑顔で丁寧に接してあげてたけど」

    ルイーダ「もういいわ……ちょっと懲らしめてあげなきゃね」ニコォォ

    荒くれ「……!!」ゾゾッ

    荒くれ「へっ、へへっ!!女一人に何ができるってんだ!!」


    ガチャッ


    荒くれ「えっ?」

    933 = 1 :


    屈強な「こんにちわー」

    マッチョ「ルイーダちゃーん!昼飯食べにきたよー」

    超マッチョ「あれ?なんだか店内荒れてね?」

    鬼マッチョ「ん?おい、盗賊ちゃん達がなんか絡まれてるぞ」


    ゾロゾロ


    荒くれ「ふぁ……ふぁ……」


    ゾロゾロ


    ルイーダ「みんな、ごめんね。ちょっと今取り込み中で」

    マッチョ達「えー!どうしたんだよ」

    マッチョ達「何かあったんなら手伝うぜー?」

    ルイーダ「そう?じゃあ」

    クルッ

    荒くれ「ひっ……!!?」ビクッ



    ルイーダ「ゴミ掃除……一緒にお願いできるかしら」ゴキッ ゴキッ!!!


    荒くれ「ひゃ、や」



    イヤァァァァァァァァァァ!!!!!!


    934 = 1 :


    <イヤァァァァァァ


    「……怖ぇ……」

    「……」チラッ


    新入り「いてて……」

    盗賊「……大丈夫!?怪我は……」

    新入り「あ、お姉ちゃん……ごめん、大丈夫だよ」

    盗賊「……良かった……」ギュッ

    新入り「わぷっ」ムギュッ


    「……」


    スタスタ

    「……大丈夫だったかい?」

    新入り「え?あっ、お、お客さま」

    盗賊「……お客様にも、ご迷惑をおかけしました……」ペコリ

    「いやいや、自分こそいざという時に出ていけなくてごめん」

    新入り「いえ、そんな」

    「…………それじゃ、ちょっと用事思い出したから帰るよ」

    新入り「え……」

    「ああ、別に今の事があったからじゃないよ?本当に用事があるんだ」

    「……また、来るから……その時はあの席をまた使わせてほしい」

    盗賊「……はい……」

    935 = 1 :

    「それじゃ」

    スタスタ

    ピタッ

    「あ、新入りさん」

    新入り「は、はいっ?」

    「……」

    「……さっきの君、かっこよかった」

    新入り「!」

    「君はきっと素敵な女性になるよ」

    新入り「えっ?う……あっ、ありがとう、ございます」

    「……ふふっ、それじゃ」

    スタスタ

    バタン

    新入り「……なんだか不思議な人だったね」

    盗賊「………………うん……」

    …………
    ……

    936 = 1 :


    ―真夜中・アリアハン・宿―


    「……」

    ゴソゴソ

    カタン

    ギュッ…

    「……」

    (よし……そろそろだ)


    ……

    ―アリアハン・路地裏―


    黒服「こっちのルートはお前だろ?」

    黒服2「ああ、だからこうやって――……」

    黒服3「!おい、来たぞ」

    黒服・黒服2「「!」」


    スタスタ

    黒服2「おそかったな」

    黒服3「どこで道草くってたんだ?リーダー」


    ザッ



    「……無駄口はいい、ちゃんと持ちルートの確認をしろ」



    937 = 1 :

    黒服「おお、怖ぇ……」

    黒服2「ふっ、初めてのリーダー役で肩に力でも入ってんじゃねえのか?」

    「無駄口はやめろって言ってるだろうが」

    「それにリーダーつっても下っ端のてめぇらの纏め役だ。俺も下っ端には変わりないさ」

    黒服3「はは、だな」

    黒服「ルートの確認は済んだぜ。見回りの兵もそろそろ交代の時間だ」

    黒服2「あと四半刻もすれば詰所に皆戻るだろうよ」

    黒服3「富豪の家はそれぞれの担当分頭の中に入れてる。鍵の種類も全て把握した」

    「それでいい」

    ザッ

    「それじゃあ、持ち場につけ。あと四半刻後にルートをそれぞれ回れ」

    黒服2「おう」

    「いいか?あくまでこれは盗みだ。人は殺すな」

    黒服3「何?」

    黒服「おいおい、なに温い事言ってんだよ」

    「今は俺が頭だ。黙って従ってろ」

    黒服「なんだぁ?もしかしてここに居すぎて街のやつらに情でも移っちまったか?」

    ガシッ!!

    黒服「!」

    ギリッ…

    「……喧しい」

    「殺しをすれば足がつきやすくなるし、時間の無駄だ」

    「何のために俺が潜伏して街の調査をしてたと思ってる」

    「お前らは俺の計画通りにやればいいんだよ」

    黒服2「リーダー、抑えろ。時間が迫ってる」

    黒服3「黒服もいらねえ事言うな」

    黒服「……ちっ!」バッ

    938 = 1 :

    「……とにかく、目的は金だ」

    「富豪共の家の金目の物を全て洗いざらい持ち出せ」

    黒服達「「「了解」」」

    「いいか?しくじるなよ……“失敗は、許されない”」

    「それがボス……バコタさんの言葉だ」

    黒服達「「「……了解」」」

    「…………それじゃ、開始だ」

    「健闘を祈る、散れ」


    バッ!!


    タッタッタッタ!!

    「……」

    (俺はまずこっちからだ)

    (人は……誰もいないな)

    (それでいい……お願いだから、皆眠っていてくれよ……)


    ―路地裏・広場裏―

    ザッ

    「……」

    (到着……見回り兵は)


    シーン……


    (いない……と、調査通りだな)

    (それじゃ……始めるか)

    939 = 1 :




    「……こんばんは……」




    「!!!」ザッ!!

    シーン……

    「……!?」

    (何だ?誰だ、今の声は……)

    (この時間、こんな場所に……酔っ払いか何かか?)

    (いや、しかし……若い女の声で)


    「……残念ながら、計画はここで終わりですよ……」


    「っ!?」

    「……誰だ、どこに居る」


    「……あなた達の行動は、ある程度見ていました……」

    「……お仕事、失敗ですね……」


    「……!?」

    「どこだ!!!出て来い!!!」

    940 = 1 :


    「……」


    スタ……

    「!!」

    スタスタ……

    「……外でお会いするのは……初めてですね……」

    「……」

    「…………」

    「………………嘘だろ」



    ザッ

    盗賊「……改めて、こんばんわ、です……」



    「盗賊、ちゃん」

    941 = 1 :


    「なんで……君が」

    盗賊「……私、たまに見回りのお手伝いとかやったりするんです……」

    「……」

    盗賊「……」

    「……は」

    「はは、ははは……偶然だね、こんな所で」

    「でも、子供が……こんな時間に危ないじゃないか」

    盗賊「……火贈りの儀式も済みましたよ、そんなに子供でもないです……」

    「盗賊ちゃん……帰るんだ。危ないよ?もう帰って寝る時間だ」

    盗賊「……お客さん……」

    「……なんだい?」

    盗賊「……数日前から、貴方達をマークするように兵団に頼まれていたんです……」

    盗賊「……捕まえに来ました……」

    「…………悪い冗談だ」

    スタスタ

    「さ、ほら。もう帰って」


    カランカラン!カラカラ…


    「寝……」


    盗賊「……」


    「……」

    「……」

    「……それは」

    盗賊「……貴方の仲間達の短剣です……」

    「……」

    「……盗賊ちゃん」

    「…………君は……君は」


    盗賊「…………」

    盗賊「……貴方を、捕まえに来ました……」

    942 = 1 :


    ダッ!!!!


    盗賊「!」


    シュタタタタタッ!!

    「っ……!!」

    (な、なんだ……?どうなってる!?)

    (くそ!とりあえずここは一旦彼女を撒いて)


    シュバッ!

    「!?」


    ズザァッ!

    盗賊「……無駄です……」


    「なっ……!?……ちっ!!」ダッ!!

    シュタタタタタッ!!

    (こっちならっ……!屋根の上なら)


    ズザッ!!

    「!」


    盗賊「……もう、無駄ですよ……」

    盗賊「……この街は、私の庭なんですから……」

    943 = 1 :

    「……!」

    盗賊「……大人しく、お縄についてください……」

    「……くそ」

    (なんだ……なんなんだこの子……!12歳で、なんでこんなに)

    (しかし、くそ、このままじゃ計画が頓挫しちまう……!)

    (仕方ない……この子には危害を加えたくなかったが)


    ジャキッ


    盗賊「……!……」

    「ごめん、盗賊ちゃん」

    「こっちも仕事なんだ……少し眠っていてもらうよ」

    盗賊「……あなた方を止めたら、ぐっすり眠れます……」

    「言うね」


    シュンッ!


    「っ!」シュバッ!

    盗賊「……あっ……」

    (回りこんで……!)

    ヒュンッ!

    (あまり力を入れず……首の後ろに一撃)


    ガシィッ!


    「!?」

    盗賊「……捕まえ……たっ!……」ヒュッ!!

    「くっ!!?」ヒュンッ!

    ズザァッ!!

    「はぁっ!はぁっ……!?」

    944 = 1 :

    (完璧に見切られていた?こんな少女に……)

    盗賊「…………」

    ヒュンッ!

    「!」

    (消えっ……いや!)

    ガシッ!!

    盗賊「……!……」

    「後ろかっ!!」ヒュッ!!

    盗賊「……わわっ……」シュバッ!

    シュタッ!

    「くそ、躱されたか……」

    盗賊「……躱しました……」

    「はぁっ、はぁっ……」

    (……なんだ、この状況は)

    (なんだ、なんなんだ)


    盗賊「…………」


    (なんなんだ……この子は……!!)

    (確かに俺は下っ端だが……それでもバコタ盗賊団の一員だぞ)

    (相当な訓練を積んできてるんだ……それを、こんな……少女に)

    945 = 1 :

    「……盗賊ちゃん……君は……一体」

    ヒュンッ!!

    「!」

    ガキン!!

    「……ぎっ!」グググ

    (力も……!強いッ!)

    盗賊「……」ギリギリ

    盗賊「……私は……」



    盗賊「……ただ、この街が大好きな……盗賊職の女です……」


    「……!!」



    「……」

    「……」



    盗賊『いらっしゃいませー!』



    「……なんで」



    盗賊『……いつもの席、とっておきましたよ……』



    ギリッ……!

    「……なぜっ」




    盗賊『……また、いらして下さいね……』ニコッ



    946 = 1 :



    ガッ!!

    盗賊「!」

    ガキン!!

    盗賊「……っ!……」

    「なぜ盗賊職を選んだんだ!!」

    「なんでこんな道を選んだんだ!!!君みたいな子が!!」

    ギリギリ……

    盗賊「……それは……」

    「君は……素晴らしい子だ、酒場の手伝いをして、街の子供の面倒を見て……!」

    「それが、何故、こんな世界に足を……!!」

    「ルビス様を裏切るようなこんな力を……!火贈りの儀式で祈ってしまったんだ……!」

    盗賊「……」

    ギリギリ……!

    「儀式の時に……力を求めず、普通の人として生きる事も、君ならば……!」

    「いや、そうするべきじゃないか!こんな職、就くもんじゃない!!!」

    「君みたいな、子が」

    「……なんで、こんな……!」

    947 = 1 :


    盗賊「……それじゃ、駄目なんです……」


    「え……?」


    ガキン!!


    「っ!!?」

    ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

    「ぐあっ!?……わっ!?」ガキンッ!ガキンッ!!

    (は、速いッ!?)

    盗賊「……それじゃ、だめなんです……」

    ガキン!!

    「ぐっ!!」

    ギリギリッ……!!

    (本当に、なんなんだ、この子……!!)

    (小さいナイフだけで、なんでこんなに重い一撃を)

    盗賊「……私は、この街で出会った人達に……沢山守られました……」

    「……?」ギリギリ


    盗賊「……だから、私も……その人達を守らなくちゃいけない……」


    「……!」

    948 = 1 :

    盗賊「……それには、昔から慣れ親しんできたこの職が一番手っ取り早かったんです……」

    「…………?……慣れ親しんできた……?」

    盗賊「……それに……」

    「っ……?」

    盗賊「……この職を続けていれば……父の元にいつか辿り着く気がするんです……」

    「父……?」

    盗賊「……はい……だから、私は……」


    フッ…


    「!」

    (盗賊ちゃんの力が一瞬抜けた……!)

    (今なら……彼女の隙をついて……)

    「っッ!!!!」

    ヒュンッ!!

    (すまない、盗賊ちゃん……!!少しだけ本気の一撃をッ)



    盗賊「……もっと強くならなきゃ、いけないんです」



    「っ!!」




    ズガァン!!!!!

    949 = 1 :

    パラパラ……


    「……」

    盗賊「……チェックメイト、です……」

    「……ああ」

    盗賊「……もう、抵抗しないで下さいね……」

    「……」

    「……盗賊ちゃん」

    盗賊「……はい……?」

    「……君の父の名前は?」

    盗賊「…………」

    「……」

    盗賊「……カンダタ……」

    「……!」

    盗賊「……私の父の名前は……カンダタです……」

    「…………そっか、やっぱりか」

    「あの……大盗賊、カンダタ」

    「君は、カンダタの……娘なのか……」

    盗賊「……はい……」

    「……ぷっ」

    「ははっ……あはははは!」

    盗賊「……?……どうしたんですか?……」

    「いや……どうりで強いわけだ」

    盗賊「……暇があれば、鍛錬してますから……」

    「そうか……ふふ、いや、負けたよ」

    「さぁ、兵団に突き出すといい。もう抵抗はしない。君の手柄だ」

    950 = 1 :


    盗賊「…………」

    スッ ガキン

    「えっ……?」

    盗賊「……」スタスタ

    「……痛っ……!」ムクッ

    「つつ……盗賊ちゃん?なんで今、捕縛しないんだい?」

    盗賊「……お客さん……」

    「?」

    盗賊「……私は、お客さんが……悪い人じゃないって知ってます……」

    「……え?」

    「いやいや、何言ってるんだい……現にこうして盗みを」

    盗賊「……いつも、穏やかな顔で、通りを眺めてたの……知ってます……」

    「……!」

    盗賊「……煙草を吸うとき、子供が近くにいるとすぐに消すの……知ってます……」

    盗賊「……そして、今日の昼に……」

    盗賊「……あの荒くれ達から、助けてくれたの……知ってます……」

    「……」

    盗賊「……」

    「……ばれてたのかい」

    盗賊「……簡易煙草の箱の中に隠してた吹き矢……御見事でした……」

    「はは、適わないね」

    盗賊「……だから、私はお客さんを突き出したくないです……」

    盗賊「……自首、してくれますか?……」


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