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    元スレ士郎「人の為に頑張ったヤツが絶望しなきゃいけないなんて間違ってる」ほむら「……」

    SS+覧 / PC版 /
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    みんなの評価 :
    タグ : - Fate + - クロスオーバー + - 衛宮士郎 + - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    601 :


    ついにマミさんが復活。
    頼むぜマミさーん!

    602 :

    お疲れ様でした

    603 :

    乙っちまどまど!

    604 :


    マミさん復活!

    605 :

    復活と同時に死亡フラグ立てるなんて流石マミさんやでぇ

    606 :


    童顔ワロスww

    607 :

    本当に今更だけど本編だけでよくね?

    >>1が全レスする必要もタイガー道場もステータス情報もいらなくねぇ?

    608 :

    いるかどうかじゃない
    >>1がやりたいかどうかだ

    609 :

    飯の描写もいる?

    610 :

    あの士郎だぞ、飯の描写がないなんて有り得ぬ

    611 :

    食事の描写が無いなど、私は断固認めません!

    612 :

    不要だと思うならその部分だけ自分で見ないようにすればよくねえ?

    613 :

    >>611
    自宅警備王さんチィーッス

    614 :

    このスレ自体いらなくねぇ?

    615 :

    それっておかしくねぇ?

    616 :

    おまえそれサバンナでも同じ事言えんの?

    617 :

    618 :

    なんておあつらえ向きな画像をqq

    619 :

    野生の王国だな

    620 :

    どうしたんだ

    621 :

    最近安価&コンマスレばかり人気でこういう普通のSSが過疎ってるよなぁ

    622 :

    ちょくちょく更新あるからどれくらい進んだか見に来たら読者様かよ

    623 :

    煽るなよ 同類になるぞ

    624 :

    普通に合いの手は嬉しいと思うけどな

    このスレは面白いから全裸で待ってる

    625 :

    同居人増えてエンゲル係数上がる様は
    士郎にとって地獄やね

    627 :

    >>607
    今まで言いにくかったけど同意するわ。全レスする時間を作品書く時間にあててほしい。

    628 :

    別にそれはいいんじゃないの? >>1の好きなようにやってもらえばいいし

    629 :

    全レスも道場も別に悪い事じゃないだろ。
    >>1のやってる事だしそれが負担なわけでもないんだし

    630 :

    まあ、ステータスはあって良いと思うな。
    >>1がどういう解釈で書いてるかとかわかるし

    631 :

    まあ、本編の投下が早ければ何しようが文句は言わないさ。おせーけどん。

    632 :

    別に>>1のスレなんだから遅かろうが早かろうが>>1の勝手

    633 :

    作者が住人のアホな言い争いに愛想尽かして出て行ったに100ペリカ

    634 :

    >>632
    エゴだよそれは!

    635 :

    にゃあ

    636 :

    んでんでんでー

    637 :

    手の小さい人間には、十六茶は太くて持ちにくい
    もう買いません

    >>607
    全レス紛い→気分
    タイガー道場→場のつなぎや時間稼ぎ
    ステータス→原作再現

    >>609
    半分はFateなので、食事は欠かせません

    >>621
    でも、コンマスレは勢いが速すぎて追いつけません

    >>624
    服を着てください
    せめて腰蓑を巻いてください

    >>626
    スレ違いではなく、板違いだったようですね

    >>627
    投下開始前の5分で何かが変わると思ってるのでしたら、買いかぶりすぎです
    その時間で次々と書けていたら、夢(のまた夢)の毎日投下が実現しているはずなので

    >>633
    残念、ボッシュートです


    では、投下開始します
    11日目~決裂した関係

    638 = 637 :

    ワルプルギスの夜まであと7日


    「―――あのさぁ、キュゥべえがそんな嘘吐いて、一体なんの得があるワケ?」

    これは……知ってる。
    かつて私が経験した事だ。

    「どっちにしろ、あたし、この子とチーム組むのは反対だわ」

    さやかと杏子が凄く仲が悪くって。

    「テメエ一体なんなんだ!? さやかに何をしやがった!?」

    ようやく打ち解けたところで、さやかが魔女になって。

    「酷いよ……こんなの、あんまりだよ……」

    バラバラなチームを心を擦り減らしてまとめてきた巴さんの心が壊れて。

    「ソウルジェムが魔女を産むなら……みんな死ぬしかないじゃない! 貴女も、私もっ!」

    みんなと一緒に心中を計って。

    「嫌だ……もう、嫌だよ、こんなの……」

    結局私とまどか以外、みんな死んじゃって。

    「わたしたちも、もう、おしまいだね……」

    ワルプルギスの夜を撃退したのに力尽きちゃって。

    「わたしに出来なくて、ほむらちゃんに出来る事、お願いしたいから……」

    まどかが私に望みを託した。

    「キュゥべえに騙される前の、バカなわたしを……助けてあげて、くれないかな?」

    そして最期に―――。

    「ほむらちゃん……やっと、名前で呼んでくれたね。
     ……嬉しい、な」

    639 = 637 :

    「………………最悪の目覚めね」

    さやかが魔法少女になってからというもの、あの時の事を意識しすぎていたのかしら。
    夢を見る事も殆どなくなったのに、せっかく見た夢がよりにもよって、ね。

    「でも、あの時とは違う」

    まどかはまだ契約してない。
    巴さんはもう前線から離れた。
    そして、私と一緒に戦ってくれる人が―――。

    「あれ、居ない……?」

    そういえば、いつもの朝とも違う。
    いつもなら衛宮さんがキッチンからおはようって言ってくれる。
    それが今日はご飯が置いてあるだけで、他には何もない。

    「ん?」

    よーく耳をすましてみる。

    ―――かちりかちりすぅかちりかちりかちりすぅかちり。

    時計の音に紛れて押し入れから寝息が聞こえる。

    「そっか、夜遅くまで頑張ってくれてたんだね」

    9時過ぎに出かけてから、どれだけ探し回ってたのやら。
    尤も、結果を出さない限り、その過程における苦労なんて口にする事はないのだろうけど。

    「それでも、ちゃんと私のご飯を作ってくれてるんだから、この人は……」

    本当にありがたい事。
    でも、その優しさに甘えてるばかりではいかない。

    「顔を洗って、着替えないと」

    私は衛宮さんと違って、今日も学校がある。
    その為の仕度もしないといけない。

    「っと、その前に」

    押し入れに向き合う。
    相手は目を覚ましてはいないけれど、もはや習慣なのだ。

    「おはよう、衛宮さん」

    朝の挨拶だけして、仕度に取りかかる。
    かつてまどかに言われたような、かっこいい暁美ほむらの仮面で素顔を隠した。

    640 = 637 :

    「ほむらちゃん」

    1時間目が終わった途端、まどかが私の元に来た。
    当然、その目的は私ではない事は判ってる。

    「話は聞いてるわ。
     ここではまずいから、場所を移しましょう」

    まどかを連れて屋上に出る。
    ……本当なら、こんな用事でここに来たくはない。
    最後にみんなでお弁当を食べたのはいつだっただろうか。

    「それで、さやかちゃんは?」

    「残念ながら、見つからなかったようね」

    首を横に振りながら答える。
    まどかの表情から、ほんの微かな期待が消えた。

    「これは昨日の報告書よ」

    衛宮さんがテーブルに置いておいたプリンター用紙。
    手書きで昨夜の捜索ルートが細かく書き連ねてあり、当人の努力だけは窺える。
    しかしまどかが欲しいのは過程ではなく結果であり、成果である。
    まどかは興味なさげにちらりと見て、くしゃくしゃに丸めてポケットにしまってしまった。

    「ありがと、ほむらちゃん。衛宮さんによろしくね」

    そう言って屋上を去ったのだけど……目が全く笑ってない。
    これは早目に片を付けないとヤバイわね。
    あの手を試してみましょうか。

    「私も戻らないと」

    屋上を後にする。
    ドアを閉めると、きんこんかんこんと予鈴が聞こえた。

    641 = 637 :

    見滝原中学校は土曜日も授業がある。
    とは言え、流石にまる1日授業がある訳でもなく、今日は午前放課となっている。
    はっきり言って、学校ではまどか以外に用事もないので、まっすぐ家に帰ることにした。

    「ただい、ま―――?」

    我が家のドアを開け、中を覗くと、お鍋をコンロにかけながらスクワットをしてる衛宮さん(へんなひと)。

    「ん? おかえり、ほむら」

    額から汗を流し、薄手のシャツを肌に貼り付けながら、挨拶を返してきた。
    男の人の身体を殆ど見た事のない私にとって、少し恥ずかしい光景―――いや、少しじゃないわね。
    だって透けてるんだもの。
    これでは上半身は裸みたいなもんじゃない!

    「あの、お鍋、私が見てるから、シャワー浴びてきたら?」

    「なんでさ? と言うかほむら、料理出来ないんだろ?」

    視線をそらしながら言っても、何も解ってくれない衛宮さん。
    視界の中に少しだけ映る顔は、本当に不思議そうな表情をしている。
    曲がりなりにも異性を相手にこんなのを見せる方が不思議よ。

    「どうした? なんか変だぞ、おまえ」

    「ひゃっ」

    ち、近づいてきた!
    ぱっつんぱっつんの胸筋が!
    ぴっちぴちの腹筋が!
    男臭い汗が!

    「い、いいから、お願いだからシャワー浴びてきて!」

    なんなんだ一体、と呟きながら、しぶしぶとに入る衛宮さん。
    結局最後まで理解はしてくれなかった。

    「ふぅ…………。
     なんとなく感じてはいたけど、あの人、やっぱり朴念仁よね」

    人の為に動いてはいるものの、人の気持ちは考えないし。
    基本的には仏頂面だし。
    そのくせして自分はスイッチが入ると感情的になったりして―――。

    「え?」

    突如耳に入った、ぶしゃあ、という音。
    その音源に目をやる。

    「きゃ、きゃぁっ! お鍋がぁーっ!」

    ふ、吹きこぼれてる!
    えーと、こういう時は、こういう時は……そうだ!

    「え、えい!」

    かちり、とコンロのツマミを回す。
    火を止めれば、温度は下がる。
    つまり、吹きこぼれない!

    「えっと、この次は……」

    お味噌を入れればいい筈ね。
    冷蔵庫の中からお味噌を取り出して、

    「このくらいかな?」

    おたま一杯分をお鍋に投入。
    よーく溶かしたら完成!

    「後はこの粉の塊だけど……無理ね。
     衛宮さんが出てくるのを待ちましょう」

    料理が苦手なのはよく解ってる。
    君子危うきに近よらず。
    お味噌汁だけでも作れたのだから十分よね。

    642 = 637 :

    ―――というのが30分前の出来事。
    味が凄く濃く、妙に固い人参やキャベツの入ったコンソメ味噌スープを頑張って飲んで、
    吐き出しそうな気分でお昼ご飯のお片付け。
    それが終わると、深刻な顔をした衛宮さんが私の前に居た。

    「……あのさ、女の子は拳銃を握る訓練よりも、包丁を握る練習をした方がいいと思うんだが」

    呆れ果て、怒る気力さえもないと言うかのような声。

    「それは貴方の好みかしら?」

    「たわけ、世の男たちの一般論だ」

    「…………ごめんなさい」

    ようするに女の子らしくない、と。
    今まで料理をする余裕がなかったとは言え、ここまで言われると流石に傷つく。
    身体も女らしくならないし、いっそ性転換でもしてやろうかしら。
    でも目の前の男の人は料理上手いしなぁ。

    「まったく……ワルプルギスの夜を倒したら、料理の特訓だからな」

    結局こうなるのね。
    仕方ない、この場は頷いといて、話を逸らすとしましょう。

    「その為にも、まずは美樹さやかよ。
     早いうちにケリをつけないと、ワルプルギスの夜との戦いに響くわ」

    「む、そうだな。
     手かがりがないのがつらいが、どうにか探さなくちゃな」

    使える手がかりは昨日使ってしまったのでしょうね。
    このまま彼を放っておくと、虱潰しに探し始めそうだ。

    「一度限りの手になると思うけど、私に考えがあるわ」

    「本当か!?」

    ずい、と意識と上体をこちらに傾ける衛宮さん。

    「使い魔を利用するのよ。
     現在この街で活動している魔法少女は私と美樹さやか、佐倉杏子の3人」

    巴さんは戦線から離脱している。
    この事がこの作戦の肝になる。

    「このうち、佐倉杏子は今はまだ使い魔狩りをしようとしてない。
     そして私、暁美ほむらは貴方、衛宮士郎と協力関係にある」

    「……なるほどな。
     つまり使い魔が出現すれば、そこに美樹も現れるという事か」

    「ええ、その通り」

    魔女なら佐倉杏子も追いかけるけど、使い魔は放置する主義だ。
    それを利用して使い魔を張っておけば、いずれ美樹さやかが現れるという寸法だ。

    「でもどうすればいい? 俺には使い魔を探すのもちと骨なんだが」

    「さっき言ったでしょ。
     暁美ほむらは衛宮士郎と協力関係にある。
     明日は日曜だし、とことん付き合うわ」

    学校がなければ、衛宮さんも反対のしようがない。
    それでも反対する理由を探してるのか、むむむ、と唸る。
    その結果、

    「…………よろしく頼む」

    私の同行を認めざるを得ず、頭を下げた。
    これで方針は決まり。
    作戦が失敗すると、もう他に手段もない。
    どうにか今日、美樹さやかを保護しよう。

    643 = 637 :

    Interlude


    西日の差し込む部屋。
    そこにはマスクをした2人の少女が居た。
    1人はこの部屋の主、巴マミ。
    もう1人はマミのかつての弟子、佐倉杏子。
    一度は決別した彼女たちだが、ある目的の為に再び手を取り合っていた。

    「それじゃ掃除も終わったし、確認するぞ」

    「ええ、お願い」

    三角形のガラステーブルの長辺に座り、向かい合う。
    未だ舞っている埃とマミの精神安定の為に、マスクはしたままではあるが。

    「まず、アタシたちが手を組んだ理由から。
     このままじゃいつ死んでもおかしくないさやかをカバーする為に、アタシたちはまた手を組んだ」

    杏子が切り出す。
    その目的とは美樹さやか。
    過去の経験(トラウマ)から利己主義を信条としている杏子だが、本質はなかなか変えられない。

    「美樹さんは防御を捨てた特攻をしてたのよね?
     確か、いいお師匠さんがついてると聞いてたんだけど?」

    「ああ、確かに居るね。
     剣1本でアタシと互角にやり合えるうえに、妙な力まで持ってやがるヤツが」

    かつて命を救われた時に、マミは朱い閃光を目にしていた。
    その威力もさる事ながら、自身の知る限りでは最高の槍使いがそのように評価したのだ。
    ただただ驚くしかない。

    「……佐倉さんと互角なんて、相当の腕前ね。
     でも、そんな彼が美樹さんがやってたという戦い方なんて教えるとは思えないわ」

    「実際、さやかが特攻を始めた時は動揺してたよ。
     アイツにとっても予想外だったんだろ」

    とある要因から始まったさやかの暴走。
    この場に居る2人にも、さやかについていた衛宮士郎にも、その正体は判らない。
    しかし、判らない以上は考えるのも無駄なのだから、その対策へと話は移る。

    644 = 637 :

    「それで、そんな美樹さんを直接サポートするのが私の役目、と」

    「ああ、マミとならアイツもチームを組むのは拒んだりしないだろ。
     いざとなったら鈍っちまったとか言えば、向こうからよってくるよ」

    魔法少女としてもそれ以外でも、マミはさやかの憧れの先輩だ。
    人の為に力を使うと決めたさやかに、そんな先輩の頼みを断る道理はない。

    「んで、アタシはマミの手が届かない範囲での活動だ」

    「つまり、カバーのカバーね」

    「差し当たっては、協力者かな。ほむらとは手を組んでいるから、さやかの師匠。
     確か、えっと…………えー、えー……エミヤ!」

    うろ覚えの名前を部屋に響かせた。
    それで満足しかけた杏子の言葉をマミが繋ぐ。

    「そのエミヤさんと交渉をするという訳ね」

    「ま、さやかの為、と言えばふたつ返事で頷くでしょ。
     お師匠サマ、なんだから」

    前日、さやかの事を持ち出した途端に立ち上がったマミをにやにやと見ながら言う杏子。
    その冷やかしに、むしろ喜ぶようにマミは微笑んだ。

    「な、なんだよ?」

    「いえ、また貴女と戦える日がくるなんて思ってもみなかったから……」

    不意に面と向かって告げられた好意に、杏子の顔が赤く染まる。
    悔しいのか、それを見られないようにマスクで隠し、強がりを言い放つ。

    「ふ、ふん。別にアタシは馴れ合いに来たんじゃないんだからな!」

    ―――日は更に傾き、街もまた赤く染まる。
    衛宮士郎と暁美ほむらの強制送還作戦。
    佐倉杏子と巴マミの保護及び補助作戦。
    美樹さやかをめぐる2つの異なる作戦が、この街に展開されようとしていた。


    Interlude out

    645 = 637 :

    ―――夜が更ける。
    手元のソウルジェムには弱めの反応。
    間違いなく、使い魔のものだ。その発信源はこのビルの中。
    近くにはビルに囲まれた遊歩道。
    そこに脇道はなく、奥では衛宮さんが待機している。

    「ふぅ―――」

    私の役割は美樹さやかの確保。
    それが出来なけば、衛宮さんの方への誘導。
    前者はともかく、後者は確実に成せるわね。

    「――――!」

    反応が消えた。
    つまり、誰かが使い魔を倒したという事。

    「作戦、開始―――」

    現場へ急行する。
    目に入ったのは、息を荒げうずくまる青い髪の少女。
    使い魔を相手にしただけなのに、酷い消耗のしようだ。

    「……本当に現れるなんてね。
     貴女、自分の状況が解ってるの?」

    「……うるさい。あんたには関係ない…………」

    「もうソウルジェムも限界の筈よ。今すぐ浄化しないと致命的な事になる」

    言われなくとも、とばかりにグリーフシードを取り出す美樹さやか。
    しかし、完全に回復させようとしないあたり、よほど残りに余裕がないらしいわね。

    「あげるわ」

    本来こんな事をする義理なんてないけど、勝手に魔女になられても迷惑な話ね。
    どうせ衛宮さんがやるか私がやるか程度の違いなのだし。

    「……今度は、何を企んでるのさ?」

    「別に。私と一緒に来てほしいだけよ」

    「ふーん。
     じゃあ、いらない。あんたとつるむ気はないから」

    そう言って、グリーフシードを蹴り返す。
    こんこん、と跳ねて綺麗に私の足下に止まった。

    「……そんなに私が厭かしら?」

    「あんたたちとは違う魔法少女になる……あたしは、そう決めたんだ……」

    突き返された魔女の卵を回収しながら、独りよがりな誓いを聞く。

    「誰かを見捨てるのも、利用するのも……そんな事をするヤツらとつるむのも厭だ……。
     見返りなんてみんなが笑ってるだけで十分。
     あたしだけは絶対に、自分の為に魔法を使ったりしない」

    「貴女の目指してる師匠は、私とつるんでる訳だけど?」

    「衛宮さんは人が好いからね、あんたみたいなヤツにだって手を差し延べてくれる。
     でも、あたしはそうじゃない。
     あたしはあたしのエゴで、みんなの笑顔の為に悪いヤツらは全部やっつける」

    …………告白する勇気もないクセに、どの口がほざいてるんだか。
    衛宮さんみたいな極端な生き方、貴女に出来る訳ないじゃない。

    646 = 637 :

    「そんな頭の固い事言ってると死ぬわよ、貴女」

    「あたしが死ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなった時だけだよ。
     それってつまり、用済みって事じゃん?
     なら、いいんだよ。
     魔女に勝てないあたしなんて、この世界にはいらないよ」

    「…………っ」

    あまりにも自分をないがしろにしすぎてる。
    心配してる人の気持ちを考えてみなさいよ……!

    「……ふざけないで。みんな、貴女の事を心配してるのよ?」

    「みんな? まどかと衛宮さんの間違いじゃないの?」

    「なん、ですって……?」

    「なんでかなぁ……。
     ただなんとなく、分かっちゃうんだよね、あんたが嘘吐きだってコト」

    ――――は?

    「あんた、何もかも諦めた目をしてる。いつも空っぽの言葉を喋ってる。
     今だってそうさ。あたしの為とか言いながら、本当は全然別のこと考えてるでしょ?
     ごまかしきれるもんじゃないよ、そういうの」

    …………そっか。
    過去に仲が良かった時もあったから、出来れば助けたいとは思ってた。
    でも、確かに彼女の言う通り。
    まどかを救うついでに、余裕があったら。
    私の美樹さやかへの想いはその程度だったわね。

    「……そうやって、貴女はますますまどかを苦しめるのね」

    なら―――もう楽になっちゃっても、いいわよね。

    「まどかは……関係ないでしょ」

    「いいえ。何もかもあの子の為よ」

    魔法を使う準備。
    見滝原中の制服から、魔法少女の衣装へ。

    「貴女って、鋭いわ。
     ……ええ、図星よ。私は貴女を助けたいわけじゃない。
     貴女が破滅していく姿をまどかに見せたくないだけ……」

    盾の中から拳銃を取り出し、構える。

    647 = 637 :

    「どうせ貴女を捕まえるのが目的でしかないのだし、
     手足の1本や2本、使い物にならなくなってたって構わないわよね」

    「…………っ」

    美樹さやかが逃げ出す。
    柵を乗り越え、ビルの下へ。
    その背中を追い、私も跳ぶ―――。

    「くっ……」

    視界を覆う白いマント。
    落下中に魔法少女へ姿を変えて、それを切り離したのね。
    誰のせいか、無駄に戦いがうまくなってるわ。

    「逃がさない!」

    マントを剥ぎ取り、弾丸を放つ。
    ガオーンガオーンと銃口が吠え、美樹さやかを誘導する。

    「はっ」

    着地から一転し、癇癪玉をバラまく。
    終業し人気のないビル街に反響する派手な音。

    「あ、あんた何考えてんのよ!」

    「止めてほしかったら投降しなさい。
     街の為に自分を犠牲にするのも、正義の味方らしくていいと思うわよ?」

    「うっさい! 黙れ!」

    わめき散らす騒音少女に射撃。
    当たるか当たらないかの所に撃ったが、全弾回避される。
    だけど、誘導は更に進めた。
    作戦成功まで、あと少し。

    「――――!」

    美樹さやかの前方。
    立ち並ぶビルの間にやや広めの空間。

    ―――あそこだ。
    あそこに押し込めば、とりあえず目標は達成する。

    「そこっ!」

    スモークグレネードを投擲。
    弧を描く軌道は美樹さやかを僅かに追い抜き、遊歩道の前に落ちた。

    「きゃっ」

    破裂するスモークグレネード。
    狙い通りの位置で足止めに成功。

    「げほっ、がほっ、ごほっ―――がっ!?」

    煙でせき込む美樹さやかを遊歩道へと蹴り込む。
    そしてそのまま、入り口を塞ぐように拳銃を突き付けた。

    「これで詰みね。
     この先は別れ道なんてない1本道が続くわ。貴女には逃げる事も隠れる事も出来ない」

    「く―――」

    648 = 637 :

    ―――ダンダンダーン。
    背後の煙の向こうから、突如鳴り響いた3発の銃声。

    「な―――?」

    気づいた瞬間にはもう遅かった。
    動きを封じられる私の身体。
    拘束するこのリボンは……!

    「何故……なんで貴女がここに…………」

    「久しぶりね、暁美さん」

    「巴、マミ……!」

    居ない筈の人間。
    計画を狂わせるイレギュラー。

    「今のうちよ! 逃げて、美樹さん!」

    「は……はい!」

    遊歩道に消えていく青い背中。
    それを見届けながら、巴マミに問う。

    「……なんのつもりかしら?」

    「貴女こそなんのつもり? いじめっこの立ち場にでもなりたかったの?」

    この人は……また、こういう事をっ……。

    「これが……1番あの子の為になるのよ……」

    「私にはとてもそうは見えないわね」

    「好きに言ってなさい。どのみち、私の役割は終わったもの」

    「仲間が居るって訳ね」

    背後から聞こえる声は興味なさそげね。
    でも、そんなの演技に決まってる。

    「ええ、その通り。残念だけど、私を捕まえてても無駄よ」

    「残念なのはお互い様。
     私にも仲間が居てね、美樹さんを守る為に動いてるの」

    「――――!?」

    「それに、貴女には色々と聞きたい事があったのよね」

    うそ……他に魔法少女が……?
    いや、違う。
    もっと単純に。
    巴マミと組み得る魔法少女は……。

    「まさか、さく―――」

    「答えなさい!」

    「あ゛あ゛ア゛ああぁァぁ――――――!!!!??」

    「貴女に関する事、全てをね」

    649 = 637 :

    「はっ、はあはあ―――は」

    背の低いビルの上から美樹を見つける。
    呼吸を乱しながら遊歩道を逃げる様子から、ほむらの作戦は成功したと見えた。

    「―――投影、開始」

    大量のバーサーカーの剣を投影、射出。
    入口も出口もない閉鎖空間を生み出し、美樹をそこに閉じ込める。

    「随分と頑張ってるじゃないか。
     正義の味方は辞めるんじゃなかったのか?」

    「師匠……」

    ビルから跳び降り、美樹と相対する。
    これはこいつを止める初めての機会。
    確実な遭遇という意味では恐らく最後の機会。

    「だが、鬼ごっこはここまでだ。おまえには家に帰ってもらう」

    絶対にこの機会を逃す訳にはいかない―――!

    「ほっといてよ! これはあたしの問題で師匠は関係ないでしょ!?」

    「目の前にいつ死んでもおかしくないヤツが居る。そいつが死んで悲しむヤツが居る。
     ―――だったら、俺に関係ないなんてコトはない!」

    俺の目の前では誰も死なせない、悲しませない。
    それが出来てこそ、正義の味方ってもんだろう。

    「それでも……それでもあたしは帰らない。あたしは魔女と戦う」

    頑なに拒む美樹。
    どうやら状況が判ってないらしい。

    「……はぁ。おまえに選択権があるとでも思ってるのか?」

    「え―――?」

    「そうだな、だったら選択肢をくれてやる。
     おとなしく家に帰るか、それとも」

    両手を構える。
    今のこの状況に相応しい武器を想像する。

    「―――投影、開始」

    手の中に現れたのはハルペー。
    ペルセウスがメドゥーサの退治に使ったという首刈りの剣。
    それでつけられた傷は、自然の理にかなう治癒以外のいかなる奇跡でも回復する事は出来ないという。

    「その両足を置いていくか、だ」

    「――――!」

    治癒に特化した能力を持つ美樹の足止めには、最も適した武器。
    切り落とした足は二度と回復はしなくなるが、このまま死なれるよりはずっとマシだ。

    「う、嘘でしょ? 冗談だよね、師匠……?」

    「早く決めろ。言っとくけど、本気だからな」

    「あ、う…………あ」

    じりじりと間合いを詰める。
    それに合わせて美樹も後ずさりしていき、

    「逃が―――」

    「いや、いやあああぁぁぁぁ!!」

    「すかってんだ、このヤロウ―――!」

    背を向けるのと同時にハルペーを振り抜く―――。

    650 = 637 :

    「―――ぐっ」

    地面に突き刺さった紅い穂先。
    振り抜かれる筈の剣は弾かれ、俺の体ごと後方へ跳ねた。

    「早く逃げろ!」

    「あ、あぁ……」

    剣の壁を跳び越える紅い槍使い、佐倉杏子。
    失敗の出来ないこんな時に邪魔しやがるか!

    「こいつはアンタの弟子なんじゃないのかよ!?」

    ふん、師弟……か。
    戦わせるつもりなどないのだから、もはや剣の師匠である必要もなかったな。

    「そんなの破門だ。こいつに戦いは向いてない」

    「え―――そんな…………」

    美樹が走り出す。
    今度は上に向かって。
    楽譜のような魔法陣を展開し、道を強引に作りゆく。

    「そこをどけ、槍使い!」

    「どかない。
     どうしても行きたいんなら、力ずくで行ってみな」

    「チィッ」


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