元スレ士郎「人の為に頑張ったヤツが絶望しなきゃいけないなんて間違ってる」ほむら「……」
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501 :
>>500
キリツグが赤い弓兵を呼び出した奴だっけ?
502 = 500 :
>>501
それ、ゼロの再構成ものでオリキャラや呼び出されるクラスの変化があったりするけど
そのおかげで何人か救われるキャラが出てくる
503 :
そろそろかな
504 :
>>492
間違ってるみたいですよ。
キャラクターマテリアルという本の干将莫耶オーバーエッジのページで
HFルートの黒セイバー対士郎の戦いで使われた鶴翼三連をアーチャーが行うとき、連続投影のラスト、『三度目』の投影の際、強化によって形態が変わる
と説明されています。同じ文章中に鶴翼三連は三つの×の重ね当てであるとも。
対であることが前提の夫婦剣での三連だし、原作者サイドは三組六本を想定しているみたいです。
以前原作厨で、公式は蔑ろには出来ないというような発言をされていたようなので一応お知らせしておきます。
505 :
こまけぇこたぁ
506 :
運命を貫く漆黒の螺旋
エミヤが大聖杯でなんやかんやあって アンリ・マユ(+α)と融合し、
第8番目のサーヴァントとして第4次聖杯戦争に介入していく
ほとんどのキャラが救われる
507 :
鶴翼三連はUCやってるとわかりやすいんだが
鶴翼二連で干将莫耶投擲→弱ボタンで新しい干将莫耶投影→
投擲した干将莫耶が戻ってきて前後から攻撃って技だから
鶴翼二連は二組4本の技なんだよで、
三連が最後に新たに投影したオーバーエッジでトドメさすから三組6本の技なんだ
508 :
あえて言わせてもらおう!
>>1マダーと!!
510 :
すまない....
511 :
くそ!
僕の期待を裏切ったな!
512 :
カーテンを開けると、そこは雪国だった
降りましたね、雪
私はイリヤと同じで、寒いのは嫌いですが雪は好きな人です
別に髪が白いわけじゃありませんけど
>>493
その精神で貴方も何か書いて(描いて)みては?
ある創作物から受けたインスピレーションで新たな創作物を作り、それがまた別の人にインスピレーションを与える永久機関
これこそが第三魔法ヘヴンズ・フィールの正体なのだ!
>>494
良作と言って頂けるのは嬉しいですが、他にも良作はありますよ
>>495-502>>506
こちらをどうぞ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/995/1276926915
>>504
確かにそうありますね
でも、1回攻撃する度に一応宝具である干将・莫耶が壊れる前提なのも不自然な話でして
後、私は最初の投擲も3つの×の1つだと解釈した為、そちらの方では問題はないと思います
>>507
鶴翼二連は1組だけですよ
追加入力で引き戻しで、それが当たるか消えるまでは隙が出来る技の筈です
>>508
楽しみにしてくれるのは嬉しいですが、もう少し落ち着きましょう
>>509
「ギルガメッシュ、パソコンに向かって何を騒いでいるのだ。
まあ、それはともかく、今日の食事は泰山の麻婆豆腐で構わないな?」
それでは9日目の始まりです
513 = 512 :
ワルプルギスの夜まであと9日
今日も美樹さやかは学校に来ないのか。
そのような不安を抱いたりもしたものの、どうやら杞憂に終わってくれたらしい。
いつも通りの仲の良い3人で彼女は登校してきた。
普段と変わらないように振舞ってはいても、それが空元気である事は一目で判る。
それでも立ち直る為の足がかりを得たから、こうして学校に来たという事だ。
とりあえず、家で居ても立ってもいられないであろう衛宮さんにその事を伝えると、
“そうか、そいつは良かった……!”
なんて言って、自分の事のように喜んでいた。
「……いえ、弟子の事は自分の事より大事なのかしらね」
師匠って人種はホントお人好しよね。
そんなんだから弟子が出来るのでしょうけど。
「後は、このまま何も問題が起こらなければ……」
足掻いても魔法少女である事実は変わらない。
ならば、美樹さやかも近いうちにそれを受け入れるだろう。
そして、再び戦う事も。
その為の補助に衛宮さんが居る。
しかも正義感は強い彼女だ。
ワルプルギスの夜の事を知れば、師匠と共に戦う事を望むでしょう。
そうなれば、
「私。佐倉杏子。美樹さやか。戦線復帰が出来れば巴マミ。
そして―――衛宮士郎」
5人。
今現在、過去最多の5人でワルプルギスの夜を迎えられる可能性があるのだ。
それだけの人数が揃うのも初めてなのに、未だ最大火力を見せないの衛宮さんの魔術がある。
これだったら、きっとまどかを救える。
その為にも、私は出来る事をやっていこう。
だから―――もう少し待っててね、まどか……!
514 = 512 :
ほむらによると、美樹は今日はちゃんと学校に行ったらしい。
その報告があったのが昼前の事だ。
えも言われぬ落ち着かなさから、それでようやく解放され街に出た。
昨日張り切りすぎたせいか、繁華街とその周辺には使い魔1匹見当たらない。
うちを出たのも遅かったので、それでもう日が傾いてしまった。
これだけにかまけている訳にはいかないのだ。
用事もあるのだし美樹の家に向かうと、
「衛宮さん……」
都合よく美樹と会う事が出来た。
制服にカバンを持った姿を見る分には、確かに学校に行った帰りのようだ。
「よっ、元気―――ではないか、やっぱり」
立ち直ったと考えるには難しい感じだが、それでも普通の生活を再開したのはいい事だ。
ああ、それでいい。
俺が定期的にグリーフシードを供給さえすれば、あいつはまだ普通の女の子として生活できる。
「渡したい物がある。グリーフシード3つだ」
昨日の成果を美樹に渡す。
これだけあれば、しばらくは普通の生活は問題ない筈だ。
「俺はこの後、街外れの方を見ていくけど―――」
「ねえ、師匠」
黙りこくっていた美樹が突然口を開いた。
いつもの明るさはないが、その代わりに真剣さが表れてる表情。
不意を衝かれて少し戸惑ったが、すぐに視線を合わせ、続きを話すように促す。
「師匠はさ、なんで正義の味方をやってるの?」
「こいつはまた唐突だな」
俺が正義の味方を目指す理由、か。
自分の最初の記憶に刷り込まれた景色から始まる事だな
515 = 512 :
「―――俺が7歳の頃、俺の住んでた街で大火事が起きたんだ」
「え……」
火事なんて規模ではない、人の手で引き起こされた災害。
赤い世界。
助けを求める声。
ただ、ひたすら苦しかった。
「俺はご近所さんも、友人も、家族さえも見捨てて逃げてさ。
それでも倒れて、もう楽になろうって思った時に助けてくれたヤツが居たんだ」
死にかけの俺を見つけて、抱き上げて、本当に嬉しそうだった男。
あまりにも嬉しそうなもんだから、救われたのは俺じゃなくてそいつなのかと思ったくらいだ。
尤も、それは事実だったようだが。
「結局、俺はその地区でただ1人の生存者となった。
その事を知って思ったんだ。
生き残ったからには、見捨てた人たちに胸を張れる生き方をしなくちゃってさ」
「…………」
「それから俺は、その助けてくれたヤツに引き取られ、衛宮の姓と魔術という力をもらった。
―――5年後、そいつは死ぬ直前に言ったんだ。
“僕はね、正義の味方になりたかったんだ”、と」
未だに忘れない、恐らく今後も忘れる事のない思い出。
夜空を見上げながらの、俺と切嗣の穏やかな刹那。
「当然、俺は怒ったよ。そいつは俺にとっての正義の味方そのモノだったんだから。
でも、その夢を持ち続けられなくなったんだと」
解っていたつもりだった駆け出しの頃だったけど、今なら本当によく解る。
つらくてつらくて堪らなかったからこそ、非情な魔術師であろうとしたんだな。
「その時に誓ったんだ。俺が代わりに正義の味方になるって。
親父はそれを聴いて、安らかに逝ったよ。
これが俺が正義の味方を目指した最初の理由だ」
安心した、と。
一言だけ呟いた言葉を思い出しながら語った。
516 = 512 :
「……やっぱり師匠は、衛宮さんは正義の味方なんだね。
パパの夢を引き継いで、今までずっと、人の為に生きてきたんだ」
俺に向けられてる感情は羨望か。
美樹が口にした言葉からはそんな事が読み取れた。
でも、俺はそんな誉められた人間でもない。
「別に俺は人の為に生きてきた訳じゃないぞ」
「えっ―――?」
「前にも言っただろ。正義の味方は最大のエゴイストだって。
そいつが選んだ人間だけが救われて、選ばれなかった人間は救われないんだ」
5日前の問いかけの答。
切嗣がよく言っていた言葉だ。
「俺だって、人を傷つけるヤツらを何人も殺した。
悪人だからって人間は人間だ。命の重さは全く平等なんだ。
そら、人の為に生きていたら、こんな事は出来るワケないだろ」
「―――っ。そ、それでもっ、衛宮さんは人を助けようとしてるからだし!」
美樹が必死に反論する。
たかだか俺の事で、なんだってそんなむきになるのだろうか。
「俺が人を助けるのも、つまるところ自分の為だよ。
俺は人が喜んでくれるのが1番嬉しいから、正義の味方なんてやってるんだ」
「――――!」
目を見開いて絶句する美樹。
数十秒ほどの沈黙が流れる。
それっきり何も言わずに、美樹はマンションの中へ駆け込んでいった。
「なんだってんだ、一体?」
独り取り残され、茫然とする。
しかし、そんなままでいる訳にもいかない。
「……帰るか」
一旦うちへ帰ろう。
ほむらもすぐに帰ってくるだろうし、晩飯を食べてから再出発だ。
517 = 512 :
Interlude
夜が更けた。
大抵の人は既に帰宅してしまい、静寂なマンションの入り口。
そこに居るのはただ独り。
鹿目まどかが親友の事を案じていた。
その沈鬱とした表情は、子供のようなその身体には酷く不釣合いだ。
「まどか……」
待ち人、来たり。
美樹さやかがマンションから出てきた。
彼女から発せられた声にまどかは反応し、さやかの元へ寄っていく。
「ついてって、いいかな?」
まどかが優しい声で尋ねる。
つい数時間前、友人と師によって味わった衝撃に、思考を支配されているさやか。
どうにもしようがない時にかけられた声は暗闇に射した一筋の光だ。
「さやかちゃんに独りぼっちになってほしくないの。だから……」
まどかの言葉ははっきりしない。
それでも己を心配する親友の言葉だ。
自分の為に必死な様子を見て、さやかの目からは涙が溢れ出した。
「あんた、なんで……なんでそんなに、優しいかなぁ……。
あたしには、そんな価値なんてないのに……」
「そんな―――」
そんな事はない。
まどかはそう続けたかったのだろう。
しかし、憧れてもいたさやかがとめどなくなく姿を前に、言葉を失ってしまったのだ。
「あたしね、今日、後悔しそうになっちゃった」
「…………」
「あの時仁美を助けなければって……ほんの一瞬だけ、思っちゃった。
衛宮さんはあんなに人の為に頑張ってるのにね」
夕焼けの中で語られた理想の実態と、それでもただ人を助けようとする男。
さやかに感じられたのは、今まで目指していたモノの醜悪さ。
そして、真に目指すべきモノまでの圧倒的な距離感だ。
「こんなんじゃ本当の正義の味方になんてなれないよ。
マミさんにも、顔向けできない……」
自己嫌悪に陥ってしまう。
そんなさやかを見ていられなくなったのか、まどかは黙って彼女を抱きしめた。
「仁美に、恭介を取られちゃうよ……。
でも、あたし、何も出来ない……」
まどかの腕の中で、なおもさやかは泣きじゃくる。
自分の中の大部分を占めていた人を喪失しようとしているのだ。
それなのに打てる手が存在しないのだから、これはもう死刑宣告に他ならない。
刻一刻と迫る執行への恐怖に、どうして耐えられようか。
だってあたし、もう死んでるんだもん。ゾンビなんだもん……。
こんな身体で、抱きしめてなんて言えない……キスしてなんて、言えない…………」
「――――っ」
さやかの深刻さに、まどかもつられて涙を流す。
それでも、かけるべき言葉は見つからず、小さな腕で抱きしめる以外に出来る事はなかった。
Interlude out
518 = 512 :
ほむらが帰ってこなかった為、料理だけして食べる事はなかった。
とりあえず皿に盛り付けてラップをし、昼間は見て回れなかった街外れの方にまでやってきた。
手がかりもないので、虱潰しに探し回る。
そして、ようやく見つけた結界は、白と黒の影絵の世界。
空にそびえる太陽のような物だけが唯一の色である。
用意された舞台は一本道のみ。
主の前に立ち塞がるのは、
「ヒュドラ……?」
かの大英雄、ヘラクレスが退治した怪物のような、数多くの首を持った使い魔が1匹。
仮にこの使い魔がヒュドラを模した物ならば、こいつは少し面倒な事になる。
何せ1つ首を飛ばせば、そこからまた首が生えてくる化け物だ。
普段のような正攻法では骨が折れる。
「さて、どうしたものか」
首はやたら多いが、手足がないのは好都合だと言えよう。
今にも飛び掛ってきそうな雰囲気でも、首が届かない場所は安全圏だ。
まずはここで、作戦を考える事から―――。
「師匠」
大事な大事な一番弟子。
その一方で、ここでは最も会いたくないヤツの声が聞こえた。
振り返れば、魔法少女姿の美樹とそれについて来た制服姿の鹿目。
「来たのか、美樹」
出来ればしばらくは戦わせたくなかったが、それが本人の意思ならば仕方がない。
ここに来てしまった以上、俺はこいつのカバーに全力をかけるだけだ。
「あの使い魔、たぶんかなり手ごわいぞ」
使い魔に指を差す。
それを美樹が見ると、安全圏から少し前へと出ていった。
「く―――!」
獲物と見たのか、敵と見なしたのか。
使い魔が美樹に襲い掛かる。
「ていっ、たあっ、はっ」
やはり予想通りだったか。
何本かの首を切れば、また何本かの首が生える。
「はあ、はあ―――く」
迫り来る首を1本1本切っていき、やがて肩で息をするようになる美樹。
仕方なしと後退して、安全圏まで戻ってきた。
519 = 512 :
「だから言っただろ。作戦を考えるからちょっと待―――」
「うああああぁぁぁぁぁ!!!」
「おい! 馬鹿、待て!」
人の話を聞こうともせずに強行突破を試みた美樹。
その軌跡は魔女に向けて一直線。
脇目も振らず、放たれた矢――或いは投槍か――のように突き進む彼女に使い魔が再び襲い掛かる。
「ふっ、はあっ」
両手に握った剣を駆使して、首を刈っていく。
激しさを増した美樹の攻撃を超えて、使い魔の首が増殖していく。
外敵の排除の為とは言え、酷い数の暴力だ。
「く―――っ」
力を溜め込んでの跳躍。
普通ならば、そもそも選択肢に存在すらしない筈の、三次元的な動きで首の林から回避した。
しかし、中空に浮き上がった美樹に追っ手が迫る。
「させるかっ」
弓矢を投影し、美樹の援護をする。
十分な時間の会なんて存在しない速射だが、首の1本を打ち落とすには十分な威力だ。
美樹に迫った端から射落としていく。
「ふ――――――うああああぁぁぁぁ!!!」
虚空に展開した魔法陣を足場にし、美樹が魔女へと突っ込んだ。
それはまさに鉄砲玉。
速さこそ素晴らしい物だが、一切の回避も想定していない闇雲な突撃。
そんなのなんだから当然、
「さやかちゃん!」
―――鹿目の悲鳴のような声がした。
樹が魔女の背中から飛び出し、難なく美樹の突撃を受け止める。
そしてそれは、美樹を受け止めたまま大木へと成長し、その姿を飲み込んでしまう。
520 = 512 :
「う、うおおおおっっっ!!」
形振りなんて構ってられない。
遮二無二魔女へと駆け寄り、
「―――投影、開始!」
いつかの森での戦いで巨人の腕を切り落としたのと同じように黄金の剣(カリバーン)を投影。
それを大木の中頃に叩きつけた。
切り落とされた大木は、何者かによって更に細切れにされ、美樹が解放される。
そのまま落下する美樹を拾い上げ、間合いを取る人物。
「まったく、見てらんねぇっつうの。
いいからもうすっこんでなよ。手本を見せてやるからさ」
美樹を救出したソイツ、佐倉杏子が槍を構える。
これには全く同意見だ。
初めて見た時よりも無茶苦茶な戦い方をする今の美樹に、戦わせる訳になんていかない。
「……邪魔しないで。一人でやれるわ」
それは、天真爛漫だった彼女が発したとは思えない、低く陰りのある声。
美樹はクラウチングスタートの姿勢をとり、魔力を込めていく。
そして一瞬の後、爆ぜるように飛び出された。
「く―――! 待て、止まれ!」
閃光のように突き進む美樹の前に立ち塞がる。
このまま突撃されたら結構な重傷を負いそうだが、そんなの構ってる余裕はない。
両手を広げ、全身で足止めを試みる。
だというのに、
「―――っ。やめろ、馬鹿!」
目の前で美樹は飛び上がり、俺に接触は許されなかった。
宙に浮いた美樹は慣性に従って魔女へと飛び込み、一刀にしてその首を切り落とす。
が……魔女は絶命には至らず、2本の触手で叩き伏せられた。
「さやかちゃん!」
「美樹!」
悲痛な叫び。
異形と化して蠢く魔女。
倒れ伏す魔法少女の姿。
それに駆け寄ろうとすると、
「―――く、くふふふ、ふふ、ははは」
「アンタ、まさか……」
狂気に満ちた笑い声を上げて、美樹が立ち上がった。
対峙する魔女は、その使い魔の首のように無数の触手を生み出している。
そして、それは美樹の身体を突き上げた。
「な―――!」
2本の剣を操り、触手を切り捨てながら落下する美樹。
全ての追撃を退け魔女に着地すると、技術も何もない力任せの剣戟が始まった。
ギンッ、ギンッ、と鈍い音を響かせ、ただひたすらに剣を振るう。
「あははは、ホぉントだぁ。
その気になれば痛みなんて……くふ、あはは。完全に消しちゃえるんだ」
なおも笑いながら、必死に足掻く魔女を美樹は斬りつける。
あまりにも凄惨な姿。
とても見ていられない戦いなのだが、その狂気に足が竦み動けない。
521 = 512 :
「やめて……もう…………やめて……」
悲しみに満ちた鹿目の呟き。
ほんの小さな声なのに、1人を除いたこの場の全員が聞いて取れた。
しかし、それを聞いてほしい肝心のヤツは、
「でえっ、ぜっ、ふっ、あふっ、あはは!」
何も耳に届かず、目の前の魔女以外の何も目に入らず。
魔女の抵抗をも気に留めず、青い衣装を鮮血に染めながら剣を振るう。
「あ、あ―――」
声さえも満足に出せない。
この空間に響く音はただ2つのみ。
未だ鳴り止まない剣戟と、極限を超えてしまった人間の笑い声。
「あはははは! ははは、あはははは、はははははは!」
別にこんな風になった人間を見た事がない、という訳じゃない。
世界を、しかも不幸に溢れた土地ばかりを歩いてきたのだから、何人もこういうヤツは居た。
だが、その中に見知ったヤツは今までは居なかった。
「――――!」
3つ目の音が響き始めた。
結界がガラスのように割れ、地響きを立てながら崩壊していく。
揺れる世界の中、もはや原形を全く残さない魔女を見て、美樹がようやく剣を振るのをやめる。
「はん、やり方さえ分かっちゃえば簡単なもんだね。
―――これなら負ける気がしないわ」
美樹の体に刻まれていた深い傷が、見る見るうちに治癒されていく。
そのありえない速さは、どんな魔術師にだって再現は不可能だ。
そう、例えるならば、俺のかつての半身(エクスカリバーの鞘)に匹敵しようかという治癒速度。
これが、他者の為に願ったという美樹さやかの固有の魔法か。
「巫山戯やがって……!」
522 = 512 :
―――結界が完全に消滅した。
人気も物音もない深夜の倉庫街。
ここに居るのは魔法少女たちと俺だけだ。
「あげるよ。そいつが目当てなんでしょ?」
美樹がたった今手に入れたばかりのグリーフシードを佐倉杏子に投げ渡した。
命を削りながら手に入れた報酬を、こうもあっさりと。
「あんたに借りは作らないから。これでチャラ。いいわね」
敵視する少女に向かって、そうとだけ告げた。
この期に及んでまで、こいつは貸し借りなんてくだらないコト考えてやがるのか。
今1番大事なのは、自分の体なのに。
「さ、帰ろう。まどか」
「さやかちゃん……」
歩き出した途端、美樹の体がふらりとよろける。
当然だ。
あんな傷を負ってたんだ。
傷だけ回復しても、体が言う事を聞く筈がない。
「あ、ゴメン……ちょっと疲れちゃった」
「当たり前だ、馬鹿」
美樹に向かって歩いていく。
虚勢を張る気力もない弱々しい姿。
あまりにも見ていられなかったせいか、全身にかかった金縛りがようやく解けた感じだ。
「ほら、肩に掴まるなり、背中に乗るなり、楽にしてろ」
少し腰を落とした姿勢で美樹に言う。
ふらつく美樹は俺の腕に掴まると、体の力を抜いて体重をかけてきた。
一昨日よりも更に儚く感じる重み(軽さ)。
次にこの重さを感じる事はない。
何故だかそんな予感がしてしまった。
「行こ、2人とも」
元気だとは決して言えない号令。
歩き出した美樹に寄り添いながら、スローペースで俺と鹿目も歩き出した。
523 = 512 :
夜の街に雨が降り出す。
急な出来事だったので、近くのバス停に俺たちは避難した。
運行はとうに終了している為、ここで雨宿りしていても迷惑になる事はないだろう。
だから気楽に雨が弱まるまで待とうとしたのだが―――どうやら失策だったらしい。
「さやかちゃん……あんな戦い方、ないよ……」
だんまりな美樹の様子に見かねて、話を切り出した鹿目。
治癒能力に任せたノーガード戦法。
あのあんまりな戦闘を思い出したのか、鹿目は涙を流し始めた。
師匠として、アレには俺もケチの1つでもつけないといけない。
「そうだな。痛くない、なんて問題じゃない。
あんなの続けてたら、本当に死んじまうぞ」
あの鞘が体内にあった時の俺でさえ、やらなかったんだ。
魔力は自前の美樹なのだから、いつ治癒が出来なくなるか。
その瞬間が来る事を考えると、ぞっとする。
「ああでもしなきゃ、どっちみち死んじゃうよ。
……あたし才能ないからさ」
「あんなやり方で戦ってたら、勝てたとしても、さやかちゃんの為にならないよ……」
鹿目の案じる気持ちが責め具となって放たれる。
それが癇に障ったのか、美樹の苛立ちが目に見えて強くなった。
「……あたしの為って、何よ?」
親友に向けるべき物とは程遠い、暗い感情を押し殺した声。
そう問いながら、鹿目に青いソウルジェムを突きつける。
「こんな姿にされた後で、何があたしの為になるって言うの?」
己の魂(ホンタイ)の在り様を呪う美樹。
なんだって揃いも揃って自分を貶めるのか。
魔法少女なんて、人外と言うには生温いような存在だってのに。
524 = 512 :
「今のあたしはね、魔女を殺す―――ただそれだけしか意味のない石ころなのよ。
死んだ体を動かして生きてるふりをしてるだけ。
そんなあたしの為に、誰が? 何をしてくれるっていうの?
……考えるだけ無意味じゃない」
―――っ。
頭に血が上ってきた。
このままだと何を言ってしまうか判らないが、それでも我慢ならない。
「被害妄想もいい加減にしろ! おまえはちゃんと生きてるだろ。
自分の意思で決断して、自分の力で行動してるんだ。おまえは死体でも化け物でもなんでもない。
だから鹿目だっておまえの事を心配してるんだぞ!」
「心配してなんになるってのよ。
だったら、まどかが戦ってよ!」
「っ…………」
魔法少女でない事に負い目があったのか。
美樹の暴言に鹿目が凍りついた。
「キュゥべえから聞いたわよ、まどか。あんた、誰よりも才能あるんでしょ?
あたしみたいな苦労しなくても、簡単に魔女をやっつけられるんでしょ!?」
「わたしは―――」
「そういう問題じゃないだろ! 才能がどうしたってんだ。
じゃあおまえは才能があったから正義の味方を目指したのかよ!?
おまえが人を助けたいから目指したんじゃなかったのかよ!!」
諍いは収めどころを失った。
だが、この馬鹿弟子相手に引く訳にはいかない。
火に油を注ぐ結果になるのが解ってるのに、止められない。
525 = 512 :
「そうよ! あたしのは所詮義務感。師匠みたいに自分の意志なんかじゃない。
あたしより才能があるのに何もしない人のせいで、あたしはこんな目に遭ってるのよ!」
「だったらやめちまえ、バカヤロウ!」
売り言葉に買い言葉の応酬。
もはやお互いに自分の考えなど関係なしに言葉が飛び出してる気がする。
気がするのだが、ここで冷静になれるくらいなら、はなっからキレてなんかいない。
「ええ、やめてやるわよ!」
「おう、やめろやめろ」
言葉での殴り合いが終わると、美樹が雨の中へ走り出した。
それを追いかけようと、鹿目も立ち上がるが、
「ついて来ないで!」
という拒絶の言葉に怯んでいた。
その間に美樹は走り去って、バス停には俺と鹿目だけが取り残される。
「さやかちゃん……」
「放っとけ。しばらく1人で頭を冷やせばいいさ。
おまえも真に受けて契約なんかするんじゃないぞ」
「…………」
鹿目が黙り込む。
こいつはまた自分を責めるのか。
「言っとくけど、俺は謝らないからな。今回は絶対にあいつが間違ってる。
鹿目は心配はしても、責任を感じる必要なんかないからな」
そう、あんなのが間違ってない筈がない。
あれなら戦わない方がずっとマシだ。
だと言うのに、鹿目を傷つけて。
今度あったら、絶対に鹿目に言った事を謝らせてやるんだから……!
ステータスが更新されました
526 = 512 :
Status
美樹さやか
属性:秩序・中庸
スキル
剣術:剣を用いた戦闘技術。二刀でのノーガード戦法により、与ダメージ・被ダメージ共に上昇。
治癒:高精度・高速度の治癒能力。自他問わず使用が可能。
足場作成:魔力を用いて空中に足場を作る事が出来る。これにより三次元的な動きが可能。
勇猛:怖いもの知らず。精神干渉への耐性を持つが、空回りする事も。
527 = 512 :
今回はここまでです
ほむらがぬか喜びしたり、さやかが士郎との違いに愕然としたり、大変な1日でした
ところで、残念なお知らせがあります
元々お世辞にも速いとは言い難い物でしたが、しばらく投下ペースが落ちます
具体的には1ヶ月に1回か、多くて2回
それが3月半ばまでですかね
まあ、大事な用事がある、という訳ですので、どうかご理解の方を頂ければ
そういう事なので、せめてものお詫びとして今回の投下分のクオリティは出来るだけ上げようと思ってたら、投下が遅くなる有様
自分が納得いくまで書き直しを重ねたら、当初とはかなり違う雰囲気になりました
さやかと士郎に関しては、夕方のシーンを深夜にやって、それで静かに愕然としてもらう筈だったのです
ですが出来上がってみると、真夜中だというのに酷い大喧嘩
士郎の短気設定が活きたので、結果オーライという事にしましょうか
どうでもいい話ですが、Bigining Storyは便利ですね
原作と同じ部分の会話や状況がすぐに調べられる辞書みたいな感じです
惜しむらくは、もう少し早く出てほしかった事ですかね
原作をなぞる部分はもうほとんど終わっちゃいましたので
とってもどうでもいい話です
TYPE-MOON×RPGを聞いた時は驚きました
逆転裁判×レイトン教授はもっとビックリしました
昨日のポケモン×信長の野望は言葉を失いました
コラボの必要性のない作品に、よりによって戦国シミュレーションって……
528 = 512 :
リン(生首)
よもや、わたしの後にもこの姿になるヤツがいるとはな。
マミ(生首)
なりたくてなってるんじゃないんですけど、これも何かのご縁ですね。
色々設定的にも似通ったところがありますし。
リン
ふむ、天才肌、努力家、才色兼備、憧れの的、上辺だけの友人関係、両親死別、紅茶好き。
髪の色は違うが、髪質は近い感じで、他にもありそうだ。
マミ
でしょ、でしょ?
ですから折角の機会なので、仲良くしたいんです。
私、慕ってくれる後輩は居ても、甘えられるような先輩がほしくて……。
リン
そうか、そうだったのか。
寂しかっただろう、つらかっただろう。
マミ
うん……。
リン
だが断る。
マミ
なんで!?
リン
貴様には憎たらしい胸がある。
理由はそれで十分だ。
マミ
あのー、今の私たち、胸どころか手も足もないんだけど……。
リン
む、そうだったな。
前言撤回だ。カモン、後輩!
マミ
せんぱーい!
529 = 512 :
イリヤ
麗しき先輩後輩関係の誕生の瞬間!
いいものっすね、師しょー。
タイガ
い、いや。ななななななにアレ?
生首2つが勝手に動いて寄り添ってるんだけど。
わたし、こういうホラー染みたのダメなのよぉ。
リン
なんだ、居たのか、ブルマ。
イリヤ
ちーっす、リン先輩。
それに、後輩?
マミ
貴女も仲良くしてくれるんですか?
やったあ、一気に2人も先輩が出来るなんて!
タイガ
ああ、もう無理。
虎は死んだ、がくり。
イリヤ
うーん。首だけのままだとちょっと話難いわね。
リン(つくり)
そうだな。この体がないと、タバコもおちおち吸えない。
マミ(へちょ)
体が軽い! こんな幸せな気持ち初めて!
タイガ
う、うう。そんな訳で今回のゲストは、おなじみの遠坂さんと期待の新星のマミちゃんです。
後は任せた、弟子1号。
イリヤ
押忍。先輩は割とよく居るので置いとくっす。
資料によると、フルネームは巴マミ。
数多くのライバルと後輩たちを蹴落として、アニメ最萌トーナメント2011の覇者となった猛者っす。
マミ
運がよかっただけですって。
それに、海外のトーナメントではリン先輩も優勝経験があるじゃない。
リン
ベータ版、だったがな
イリヤ
リボンを変化させて戦う先輩魔法少女。
自分以外のメインキャラは全員教え子なんて、恐ろしいお話ね。
しかも、1人を除いた3人が決勝トーナメント出場者。
マミ
あの子達が凄いだけよ。
女神様になっちゃうような子も居たくらいだし。
530 = 512 :
リン
まあ、教え子全員に追い抜かれるという怪挙をなすようなへたれも居るしな。
それと比べれば、選手としても指導者としても優秀なおまえは凄いものだ。
イリヤ
そういう先輩は1人しかいない弟子を守れなかったんだけどね。
リン
あれは不幸な事件だった。
ただ願うは、そいつの無事と幸せのみよ。
マミ
大変だったんですね……。
リン
それはみんな同じだろう。
みな、何かしらの苦労はある。
イリヤ
そうね。そこで倒れてるタイガですら、弟分が行方不明なんだもの。
リン
おまえは義弟が失踪しているな。
それに寿命も長くない。
イリヤ
あ、そっちはあまり気にしてないっす。
わたしは短いなりに幸せな日常を過ごせたから。
つーか、もしかしたらもう死んでんじゃね、わたし。
リン
……強くなったな、ブルマ。
イリヤ
もう、湿っぽい話はおしまい!
折角だから、出会えた記念にアーネンエルベでお話しよう。
リン
いい考えだ。こんな道場に居るよりはずっといい。
紅茶も美味いしな。
マミ
そうなんですか!?
私、紅茶大好きだから楽しみです。
イリヤ
それじゃあ、レッツゴー!
531 = 512 :
タイガ
―――あれ? 誰も居ない。
特に何かやった記憶もないけど、まあいっか。
今回のタイガー道場はここまで。
みんないつも来てくれてありがとね。ばいばーい。
532 :
お疲れ様でした
533 :
乙っちまどまど!
534 :
さやかを魔女化からすくう救世主かと思いきや逆に追い詰めてるシロウさんパネェっす!
いかにもから回ってる時のシロウって感じでなんか懐かしかったww
535 :
え?
なにこれホラー?
536 :
まぁセイバールートのシロウですし微笑ましいですな
537 :
シロウは具体的な例を挙げたほうがいいかもしれないな。
『自分の元恋人は幽霊だ』とか。
538 :
乙
生首同盟結成だと…
某封印指定の人形師も仲間入りしてるんだろうか
あっちは死んでないけどさ
539 :
士郎も自分が養父の意志をまねているんだけなんだけどね。FATEだと気付いてないけどな。
セイバーは幽霊じゃないぞ。他は英霊のコピーでよばれるけど、セイバーは死ぬ直前から本人が呼べれる。この時代でも妖精郷で眠り続けていて生きてるぞ。士郎はしらんけど。
540 :
この士郎は大人なのに精神年齢が中学生と変わらないように見える…。
セイバールートやアニメでセイバーに対して「戦いに向いていない」と喧嘩を吹っ掛けた時と何も変わっていない。
第5次アーチャーだったらもっとうまくやれただろうに…
541 :
アーチャーなら守護者として召喚されてキュウべえと魔法少女ごとワルプルギスを倒しそうだがな
542 :
士郎ってセイバーが居なくてもカリバーン投影出来たっけ
543 :
少なくともアヴァロンがあればできるんじゃね
凛ルートのUBW展開時にカリバーンやエクスカリバーも表示されてたし
544 :
少なくとも人の命が等価値とは全く思えん俺としては
さやかもこの士郎も似た者同士って気がするな
545 :
>>1、おそーい
546 :
547 :
>>79
ふいた
548 :
まほよヤバい。
何がヤバいって(ry
体験談の時点であれとか……待たせただけのことはあるな
549 :
まほよって青崎姉妹でるんでしょ?fateエクストラに出てたし、妹もメルブラにでてるし、姉妹は別のTMの作品の主要キャラで、そっちもやらないとまほよ楽しめないってある?TMはfateしかまともにプレイしてないんだ
550 :
VIPに立ってたスレで青子さんのおっぱいがおっぱいでおっぱいなことは把握した
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