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    元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「ぼーなすとらっく!」

    SS+覧 / PC版 /
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    みんなの評価 : ★★★
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    1 :

    俺ガイルとモバマスのクロスSSです。

    モバマス勢がメインなので俺ガイル側の出番は少ないです。

    ヒッキーのこれじゃない感はご容赦を。

    ヒッキーと凛ちゃんが、大好きです!



    前前前々スレ
    八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1374344089/

    前前々スレ
    八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「その2だね」
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377037014/

    前々スレ
    八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「その3だよ」
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387391427/

    前スレ
    八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「これで最後、だね」
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396804569/


    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1407691710

    3 :

    おつおつ
    前の埋まっちゃってら

    5 :

    乙です。前のはやはり足りなかったのか?。寝ずに楽しみに待ってます!

    6 :

    楽しみだがさびしいのう

    7 :

    ぼーなすとらっく!

    8 :

    おつおつ

    春香達のラストでちらっとだけ登場する前作主人公感が凄い

    9 :

    ボーナストラックってコトはもちろん後日譚展開も期待して良いよな?

    10 :

    建て乙
    期待してんよ

    12 :

    前スレの最後の方、次スレのリンク貼る余裕くらい残しといてやれよ

    13 :

    平塚先生が格好良すぎる

    15 :



    前スレの>>949>>950読んで思ったんだが
    現在八幡が自転車で疾走してるのは土曜なのか日曜なのか

    16 = 1 :

    埋まるの早ぇ!

    さぁ続きを更新だ!

    17 :

    まさか最終回をリアルタイム更新で見れるとは

    18 :

    いちおつ

    19 = 1 :














    漕ぐ、漕ぐ。



    ペダルを全力で踏みつけ、自転車を走らせる。


    もう、体力も限界に近い。
    ゼェハァと、息が切れる。


    けれど、そのスピードは緩めない。


    ライブ会場まで、もうそう距離は無いはずだ。
    このまま行けば、間に合、うッ……!?


    ガクンと、力が空回りするのを感じた。


    軽くコケそうになり、足を踏み外したのかと錯覚したが、そうではないらしい。

    見れば、チェーンがまた外れていた。



    親父ぃーー!?
    やっつけ仕事かオイ!!



    ……まぁけど、



    八幡「ありがとよ畜生ッ!!」



    近くにあった駐輪場付近にチャリを乗り捨て、再び走り出す。
    若干申し訳ないが、今は事態が事態だ。


    ちゃんと後で回収しておく。材木座が!


    20 = 2 :

    よし!みんな黙ろうか

    21 :

    建ておつリアルタイムで見れて幸せだ

    22 = 2 :

    よし!みんな黙ろうか

    23 = 18 :

    >>22
    てめえが黙れ

    24 = 1 :



    限界が近い足で、走る。


    くそっ、こんな事なら、普段からもっと運動しておくんだった。
    そんなテンプレな後悔を胸に抱きつつ、それでも足は止めない。

    とにかくひたすら、走れ。



    八幡「…っ………く……!」



    こうして走っている間にも、

    思い出すのは、一人の女の子。



    『ふーん、アンタが私のプロデューサー? ……まぁ、目が腐ってるとこ意外は悪くないかな…。私は渋谷凛。今日からよろしくね』


    『隣で私のこと……見ててね』


    『なんで私も連れてってくれなかったの!?』


    『いやいや、その前に、プロデューサーの正式な担当アイドルは私だからね?』




    八幡「っ……はぁ……ッ!」

    走れ……


    25 = 1 :




    『ここまで来れたのは、プロデューサーのおかげ。…………ありがとう、プロデューサー』


    『ホント、プロデューサーは腐った目の割に、よく見てるよね』


    『い、一番、大切な人…………ふーん、そっか。そうなんだ……』




    八幡「……っ……はぁ……はぁ……!」

    走れ。




    『ずっと……こんな日が続くといいね』


    『じゃあ…………私、頑張るから』





    八幡「くそっ…………っ…!!」


    走れーー






    『さよなら』






    八幡「っ……ぐっ……あぁぁあああああああッ!!!」



    走れッ!!!




    26 = 1 :




    ただただ、走り続ける。



    恥も外聞も、何もかもを捨てて、ひたすら。

    柄にも無いと思う。



    けど、



    そんな事、考えてる余裕も無かった。








    ーーそして、見えてくる。



    シンデレラプロダクション、アニバーサリーライブの会場が。

    凛が、いる場所が。



    八幡「はぁ…はぁ…………やっと、着いた…」



    息を整えつつ、とりあえず時間を確認。
    大丈夫だ。まだ雪ノ下が言っていた時間まで少しある。

    何とか、間に合った。


    27 = 1 :




    八幡「つーか…はぁ……どこに、行けばいいんだ……?」



    会場に入るのはいいが、真っ正面から行ったって警備員に止められる可能性がある。
    雪ノ下たちが説明してくれているといいんだが……


    ……つーか、全力疾走のダメージが案外キツい。
    ちょっと吐きそう。


    フラフラとおぼつかない足取りで歩き、会場玄関をくぐる。
    会場内に入れないとはいえ、辺りには人が多い。

    ライブを見れなくとも、声を、一目でも、というファンで溢れていた。


    正直ゴシップ記事で顔バレしているから、気付かれないかと不安だったが……バレる様子はない。
    安心したけど、それはそれで複雑だな。

    所詮は、俺への興味などその程度なのだろう。

    凛が解放された今、そのプロデューサー等どうでもいいらしい。


    とりあえず一番可能性の高い、関係者以外立ち入り禁止の所まで行ってみたが……

    やはりというか、警備員に止められた。



    八幡「いやだから、確認して貰えれば分かる筈なんです」

    警備員「君ね、そんな言い訳こっちは飽きる程聞いてきたわけ。大体、君みたいな若い関係者見た事無いよ」



    七面倒とばかりに言う警備員。
    いや確かにその通りだから困る。ぐうの音も出ん。

    いやはや、俺が困っていると、しかし女神は現れた。

    28 = 1 :



    未央「警備員さん、その人は大丈夫だよ☆」

    卯月「ちゃーんと関係者ですから、安心してください♪」



    島村と本田が、そこにいた。



    八幡「お前ら……」

    警備員「しまむーにちゃんみお……!? あ、これは失礼しました!」



    思わず素に戻った警備員が、慌てて謝罪する。
    つーか、お前もアイドルオタクかい……



    卯月「やっと来たんですね。凛ちゃん、まだ控え室にいる筈ですから」

    未央「ちゃちゃっと行ってきなよ。ここは私たちに任せてさ」



    そう言って、二人は道を指し示す。

    この先へ行けば、凛がいる。


    ……思えば、この二人は凛に次いで長い付き合いのアイドルになる。
    もしかしたら、凛ではなくどちらかのプロデューサーとなっていたかもしれない。

    二人は俺の事を、プロデューサーだと最初から言っていた。

    なら、俺も、誠意を持って答える。



    例え、今はプロデューサーじゃなくっても。


    29 = 1 :




    八幡「……ありがとな。卯月、未央」



    本当に感謝の気持ちを込めて、言う。

    そして俺の言葉に二人は驚き、やがて微笑む。



    未央「全くもう。……言うのが遅いよ!」

    卯月「今それを言うなんて……ずるいです」



    悪いな。

    素直じゃないのが、俺なんでね。


    俺は苦笑し、歩き出す。


    警備員が一瞬止めにかかるが、それも卯月と未央に制される。


    後は、二人に任せよう。



    後は、この先へ向かうだけだ。






    30 = 1 :














    何処からか、歓声が聞こえてくる。



    きっと、今頃ライブは最高潮になっているんだろう。

    それに引き換え、裏側は静かなものだった。


    廊下を歩く内に、会場の奥へと自然と進んでいく。
    控え室付近は人が少なく、ほとんどのスタッフが出払っているようだ。


    俺は、凛の姿を探して歩き続ける。



    コツコツと、俺の足音が響く。



    そして、



    それと重なるように、扉の開く音が聞こえた。






    八幡「……っ…」






    その後ろ姿は、見間違えるはずがない。


    やや茶色みがかった、長い黒髪。

    蒼を基調とした、ゴシック衣装。



    渋谷凛が、そこにいた。



    31 = 1 :




    まだ、凛は俺に気付いていない。

    そのまま、ステージへと歩いていく。



    どうした。声をかけろ。

    躊躇ってんじゃねぇ。



    何の為に、俺はここへ来た?












    八幡「ーーーー凛ッ!!」


    「ーーーーっ」



    俺は叫び、そして彼女は、立ち止まった。



    「…………何しに、来たの」


    32 = 1 :




    凛は、振り返らない。

    俺に背中を向けたまま、問いかけてくる。



    八幡「……お前に、ちゃんと話そうと思って来た」



    俺は静かにそう告げる。
    だが、凛はその言葉が気に入らなかったようだ。



    「ーーッ!!」



    バッと振り返り、一心に俺へと視線をぶつける。

    その顔には哀しみと、それ以上に怒りが込められていた。



    「今更! ……今更、何を話すって言うの?」



    今にも泣き出しそうで。

    溢れる思いを、堪えられないようで。


    彼女は、言葉を俺へぶつける。



    八幡「……すまん。お前からすれば、身勝手な事を言ってるのは分かってる」



    だから俺は、それに答える。

    自分の全てを以て。



    八幡「けど……俺はどうしても、お前に伝えたい事がある。……だからここに来たんだ」


    「伝えたい…こと……?」


    33 = 1 :



    呆然と呟く凛。

    しかしやがて、僅かな希望を見つけたかのように、俺へ問う。




    「もしかして……また、私のプロデューサーに…………?」


    八幡「…………」




    それはきっと、本当に望ましい未来なんだろう。

    俺も、心からそうありたいと思う。



    ……でもそれは、お伽噺でしかない。






    八幡「……いや」






    だからーー












    八幡「俺は、プロデューサーには戻らない」









    凛に、ちゃんと伝えるんだ。


    35 = 1 :




    「ーーっ」



    目を見開き、口をつぐむ凛。
    希望を断たれ、もう何も受け入れられないように、立ちすくむ。


    けど、そうじゃないんだ。


    俺はプロデューサーとしてではなく、

    比企谷八幡として、ここへ来た。




    八幡「俺はもうプロデューサーじゃない。……けど、それでもお前に伝えたい事がある」

    「……さっきからプロデューサーは何をっ…」

    八幡「だから、プロデューサーじゃねぇって」



    凛の言葉を、俺が断じる。

    すると凛はあからさまにムッとなり、不機嫌さを隠そうとせずに言う。




    「なら、八幡」

    八幡「う…」

    「八幡は、私に何を言いたいの?」



    毅然とした態度でそう言う凛。

    36 = 1 :



    ここでまさかの名前呼び。

    いや、確かにプロデューサーじゃないとは言ったが、さすがに予想外である。


    何気に、名前で呼ばれたのは初めてであった。



    八幡「ああーっとだな……」



    我ながら情けない。
    名前で呼ばれた程度で、ここまで動揺するとは。

    気を取り直して、言葉を選ぶ。



    八幡「……ここで少し、俺の友達の話をしていいか」

    「…………」



    凛は思いっきり怪訝な顔をするが、その後首肯する。
    良かった、ここで断られたらどうしようかと思った。

    俺は、ゆっくりと語り出す。



    八幡「……その友達は、ぼっちでな」


    「…………」


    八幡「昔っから人付き合いが苦手で、忘れられ、いない者として扱われるのがざらだった」


    「…………」

    37 = 1 :



    八幡「ずっとそうやって生きてきて、人を信じるのも嫌になって、人を好きになるのも……怖くなっていった」


    「…………」


    八幡「そんな時、出会うんだ。一人の真っ直ぐな女の子と」


    「…………」


    八幡「最初は、気まぐれか気の迷いか、その子を支えてやりたいと思った。どうせ裏切られても、また一つトラウマが増えるだけだからな」


    「…………」


    八幡「けど、いつしか気付くんだ。その子の存在が、自分の中で大きくなっていく事に」


    「…………」


    八幡「その女の子は、そいつにとっては初めて感じる程尊い人で、失いたくなくて、かけがえの無い存在になった」


    「…………」


    八幡「でも、その子の未来は、そいつ自身の手で摘み取られちまった」


    「……っ、それは……!」


    八幡「だから、最後まで聞けって」


    「っ………」

    38 = 1 :



    八幡「……本当に、絶望する思いだったんだろうな。辛くて苦しくて、後悔が募るばっかりだった」

    「…………」

    八幡「だから、俺がどうなってでも、何もかもを捨ててでも、女の子を助けた」

    「…………」

    八幡「そこに後悔はない。プロデューサーとして、俺は責任を取った。それ事態は、俺は間違っているとは思わない」

    「…………」

    八幡「けど、気付いちまったんだ」

    「………え…?」

    八幡「プロデューサーとして答えを出した後…………どうしようもないくらい、俺自身が悔やんでる事に」



    俺は、凛の目を真っ直ぐに見て、言う。



    八幡「プロデューサーとして、俺は最後までプロデュースを貫いた。……だから、俺は俺として、比企谷八幡として、この気持ちを伝えたい」



    凛は、彼女は本当に真っ直ぐで。


    こんな俺を信じてくれて。


    ずっと隣に立っていてやりたくて。


    いつまでも支えてやりたくて。


    だから、だからこそ俺は。






    そんなお前がーー






    39 = 1 :























    八幡「ーーーー好きです」















    プロデューサーではなく。



    ただの比企谷八幡として。






    八幡「あなたのことが、好きです」






    俺は、俺の気持ちを伝えた。





    40 = 1 :




    凛は、何も言わなかった。



    ただ呆然と、立ったまま。



    そして、何かに気づいたように。

    何かと、向き合うように。

    彼女は、きゅっと拳を握った。



    俺は、その間もずっと、凛を見つめていた。



    やがて、凛は顔を伏せる。

    長い髪で、その表情は伺え知れない。

    ぽたっと、雫が落ちた。



    しかし、凛は直ぐさま目元を拭い、顔を上げる。

    俺と同じように、真っ直ぐに俺の目を見つめ、告げる。












    「ーーーーごめんなさい」









    それは、いつかと同じ、哀しそうな笑顔だった。


    41 = 1 :




    「……私は、プロデューサーと約束したから。トップアイドルを目指すって」


    八幡「…………」





    「だから……今は無理、かな」





    八幡「…………そうか」






    凛は笑い、



    そして俺も、思わず笑みが零れた。






    ……お前なら、そう言ってくれると思ってたよ。



    だからこそ、俺は比企谷八幡としての気持ちを伝えられたし。



    プロデューサーとして、最後までプロデュースできたんだ。





    42 = 1 :




    やがて、ステージへと繋がる会場入り口からコールが聞こえてくる。



    凛を呼ぶ声。


    恐らく、雪ノ下たちがギリギリまで時間を稼いでくれたんだろう。

    もう、本番まで時間は無い。



    八幡「……呼んでるな」

    「うん……そろそろ行かなくちゃ」

    八幡「大丈夫か? いきなりステージに直行で」



    俺が笑いながら聞くと、凛もまた、笑って返す。



    「当たり前だよ。誰に言ってるの?」

    八幡「……そうだったな」



    そうだ。

    俺は知っている。



    彼女の強さを。



    その、美しさを。




    43 = 1 :




    「……歌、聴いてってね」

    八幡「それこそ、当たり前だ」



    何たって俺は、



    凛の、ファン第一号だからな。






    その一歩を、踏み出す。

    凛はスタジオに向けて。

    俺は反対へ。



    お互いに振り向かず。






    二人は、歩き出す。








    44 = 1 :




     ×

    × 

     ×

       ×

      ×



    陽の満ちるこの部屋

    そっとトキを待つよ


    気づけば俯瞰で眺めてる箱
    同じ目線は無く
    いつしか心は白色不透明
    雪に落ちた光も散る


    雲からこぼれる冷たい雨
    目を晴らすのは遠い春風だけ


    アザレアを咲かせて
    暖かい庭まで
    連れ出して 連れ出して
    なんて ね


    幸せだけ描いたお伽噺なんてない
    わかってる わかってる
    それでも ね

    そこへ行きたいの


    胸に張りついたガラス 融けて流れる
    光あふれる世界

    もうすぐ


    ひとりで守っていた小さなあの部屋は
    少しだけ空いている場所があって
    ずっと知らなかったんだ

    ふたりでも いいんだって

    わからずに待っていたあの日はもう



    雪解けと一緒に春にかわっていくよ
    透明な水になって

    そうして ね


    アザレアを咲かすよ
    長い冬の後に
    何度でも 何度でも

    陽の満ちる



    この部屋の中で





    45 = 1 :




    × × ×












    アイドル。

    それは人々の憧れであり、遠い存在。


    しかし、それも全てではない。
    写し出された光景が真実のみとは限らない。

    本当に性格が良いのか。恋人がいるのではないか。裏では汚い真似をしているのではないか。
    そんな誹謗中傷は当然の事だ。


    ……だが、俺は知っている。


    彼女らは懸命で、美しく、真っ直ぐだった。

    もちろん、俺が見たものも全てではない。
    俺が知る意外の所にも、アイドルの存在はいる。

    もしかしたら俺の周りが特別だっただけで、本当のアイドルとは、やはり俺の知るものと違うのかもしれない。


    ……だが、そんな事はどうだっていい。



    少なくとも俺は知っているんだ。


    46 = 1 :



    彼女たちが、人々に希望を与え、輝きを見せる存在だと。

    そう信じて、疑わない。


    少女がその輝きに憧れを抱くのは当然で、

    夢を与える彼女らは、遠いからこそ、その場所を目指す。


    そんな彼女らの力になれた事は、きっと俺の財産となる。

    ずっと誇りに持って、生きていける。


    その出会いに後悔は無いし、あるとすれば、それは感謝のみ。



    ……だから、俺は今でも胸を張ってこう言える。












    八幡「凛ちゃんマジ女神」


    47 = 1 :




    学校への道を、一人歩く。


    今日は月曜日。アニバーサリーライブから、既に二日が経過していた。

    ipodから流れる音楽を耳に、その足を進める。
    何故チャリではないのか? それは至極簡単な事。


    ……引き上げるの忘れてた。


    一応翌日に思い出して見には行ったのだが、当然ながらそこには何も無かった。
    そりゃ、不法投棄もいいところだもんな。むしろ何故わざわざ確認しに行った俺……


    なので、今日は歩いて学校へ向かう。

    大分早い時間に出たので、遅刻する事は無いだろう。

    早くチャリ買わないとな……
    幸い、蓄えはある。



    あの後、ライブは無事成功。
    凛も、それまでの不調が嘘のように抜群のパフォーマンスを見せた。

    俺は卯月や未央の計らいで、特別席で見させてもらった。
    金も払ってないのに申し訳なかったが……まぁ、元プロデューサーの権限という事にして貰おう。

    それよりも、アイドルたちへの説得の方が大変だったな。


    けど、これは俺が決めた事だ。
    最後まで、プロデューサーとしてやり切った。

    なら、もう思い残す事もない。


    ……俺自身としても、もう踏ん切りはついたからな。


    48 = 1 :




    気持ちの良い風を頬に受けながら、俺はそのまま歩く。

    たまには、こうして通学するのも悪くない。

    音楽を聴きながらってのもまた…………あれ。



    八幡「……うわ、電池切れかよ」



    不意に音が止まったので確認してみると、画面には充電切れのマーク。
    昨日、充電器に繋いでおくのを忘れていたらしい。



    八幡「マジか。ついてねぇな…」



    その時、ひと際強い風が吹き付けてくる。

    今歩いていたのは丁度見晴らしの良い坂道で、時折、こうして強い風が吹いてくるのだ。
    俺は思わず目を瞑り、風が通り過ぎるのを待った。


    やがて風は吹き止み、俺は、ゆっくりと目を開ける。



    八幡「ーーっ」



    瞬間、俺は目を疑う。



    数メートル離れた、少し俺よりも高い位置。



    木漏れ日の中、彼女は、そこに立っていた。


    49 = 1 :




    八幡「…………凛」

    「おはよ、プロデューサー」



    長い髪をなびかせ。

    いつもの制服に身を包み。


    彼女は、渋谷凛は微笑んでいた。



    「あっ……もうプロデューサーじゃないんだっけ」



    凛は自分の台詞にハッとなると、少しだけ恥ずかしそうに言う。



    「えっと……八幡。…………なんか、改めると恥ずかしいね。この前は平気だったのに」



    いや、その様子は大変可愛らしいのだが…
    そんな事はこの際どうだっていい。



    八幡「いや、お前こんな所で何してんだよ」



    俺は至極当然の疑問をぶつける。
    しかし、それに凛は何て事のないように答えた。



    「何って…………プロデュ、じゃなくて、八幡に会いに来たんだけど?」



    首をかしげ、本当に不思議そうに言う。

    いやだから、そうじゃなくて!

    50 = 1 :



    八幡「いや、あんな事あったら、普通もう会わないんじゃねーの?」

    「え? なんで?」

    八幡「なんでって、そりゃお前、あれだよ。………あれ、俺がおかしいの?」



    なんか、凛がさも当然のように言うもんだから俺が間違っているような気がしてきた。

    いやいやいや、そんな事はない。



    「……なんか勘違いしてるようだから、ちゃんと言っとくね」



    凛はジト目で俺を睨んだかと思うと、その後目を閉じる。

    そして、ゆっくりと語り出した。



    「私ね。プロデューサー……じゃなくて、八幡の自分を顧みない所が、嫌い」

    八幡「うぐ……」

    「捻くれ過ぎてるのもどうかと思うし、変なとこで頑固だし、正直引く」



    え? なんなのこれ?
    もしかして俺、現在進行形でトラウマ刻まれてる?

    この間女の子に振られ、そして今日同じ子に罵倒される奴がそこにいた。


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