元スレ上条「俺達は!」上条・一方「「負けない!!」」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
201 :
>>197>>198
こういうの見たら春だなぁと思える
>>200
auでもこんなのばっかりじゃないよ
202 :
構ってる時点でなぁ……
203 :
そろそろだろうか
204 :
待ち続けるぜ
205 :
待ってるぜい
206 :
まだかー
待ってんぜー
207 :
208 :
無意味に上げるマヌケのおかげでこの作品を知ったわけだが、これは感謝すべきなのだろうか。
209 :
>>208
「感謝するぜ、このSSと出会えたこれまでの全てに」
210 :
>>209
ネテロさんじゃないすか
211 :
ネテロさんの腹パンほ、ちっとばっか響き過ぎでんなぁ。
212 :
スレを上げられたら他のスレをまるごと全部上げればいいじゃない!!
213 :
やぁ、皆様。お久しぶりでございます。
まずはご報告。ごめんなさい、三巻編の最後の書き溜めが消えちゃいました。
で、ちょっと現実逃避してました。
とりあえず、少ないですが書き直せた分だけ投下します。
214 = 1 :
『こちら絹旗。超特に異常無しです、どうぞ』
「……そりゃ良かったわね、どうぞ」
ある研究所の敷地内にて、麦野は退屈そうにトランシーバーに向かって声を出す。
あの後、予想通り敵の増援もなくなったので木原は帰ってしまった。
麦野達も帰ろうかと思ったが、一応朝まで残る事になった。
で、手分けして警備に当たっている訳だが。
「……暇すぎるわ」
正直言って、徹夜するのは辛かった。
あれだけ能力をバシバシ使ったせいもあって、酷く睡魔が押し寄せている。
(…………ダメよ、麦野沈利。寝たら死ぬわよ)
麦野は慌てて首を振る。
(垣根が一人、垣根が二人、垣根が三人、垣根が……やべ、殺意が湧いてきた)
とりあえず頭の中で百人の垣根に『原子崩し』を放つ。
「……はぁー」
ため息が小さな唇から零れ出た。
「……ねぇー。暇なんだけどー、どうぞ」
適当にトランシーバーで連絡を取る。
が。
「あれ? ちょっと絹旗ー、フレンダー? 聞いてんだろー?」
再度呼び掛けるが、一切返事が無い。
215 :
(…………)
何だか、嫌な予感がした。
そして――それは的中してしまった。
『ハハッ。ご機嫌よう第四位、どうぞ?』
その声には、聞き覚えがあった。
機械越しでもはっきりと分かる。
「……垣根、帝督…………ッ!?」
そんな、どうして、ありえない。
瞬時に様々な思考が脳に生まれる。
しかし、そんな暇はなかった。
『いやー、さっきはよくもやってくれたよなー? 俺もちょっぴりビビったぜ?』
「何故生きている……ッ!!」
犬歯を剥き出しにしながら、麦野はトランシーバーに怒鳴りつけるように叫んだ。
『何でって言われてもな。俺がテメェらごときに
あっさりやられると思うか? いやいや、そりゃねーよ』
垣根は笑って答えた。
どこか、馬鹿にしたように。
『……っと、それよりさー。テメェの大事な大事な仲間だけど――』
垣根は何か言おうとした。
が、麦野は無視して走り出した。
絹旗とフレンダがいる方角に向かって。
『――――殺しちまっても良いよなぁ?』
グシャリ、とトランシーバーを握り潰した。
216 :
「……どうして……」
暗い倉庫の中で、御坂美琴は一人呟いた。
その目は、驚きに揺れていた。
「――どうして誰も居ないのよ!?」
そう、倉庫には美琴以外には誰一人して居なかったのだ。
そんな事、ありえる訳がなかった。
もう一度、記憶を揺り起こす。
確かに時間も合っているし、場所も間違えていないはずだ。
あと数分で、悪魔のような『実験』が始まるはずなのに――被験者ですら居なかった。
(…………一体、何がどうなってるの……?)
まるで自分だけ蚊帳の外のようだ。
『実験』の一番深い部分に関わっているというのに、だ。
訳も分からず、美琴はただ呆然とそこに突っ立ていた。
217 = 216 :
――明日は晴れだろうか。
月明かりの下、少年はぼんやりとそんな事を思いながら夜空を眺めていた。
街のネオンからそれなりに離れているためか、美しく輝く星がよく見えた。
昔から星は好きだった。
いつかこの手に全て納めたい、などと幼い頃には思ったものだった。
ここは、とある学区にある操車場だ。
昨日はここで、残虐かつ非人道的な『実験』が行われた。
その『実験』の被験者である少年―― 一方通行は思う。
全てをここで終わらせる――いや、終わらせてみせる、と。
それこそ、全てを失ってもだ。
自分には、そうしなければならない義務がある。
いや。そうでなかったとしても、そうするだろう。
そんな事を深く考えていると。
「……よう」
背後から、聞き覚えのある声がした。
それは、彼の『親友』のものだった。
218 = 1 :
「…………来たか」
一方通行はそっと振り返った。
走って来たのだろうか、目の前の少年は随分と疲れた様子だった。
「……悪かったな、こンな所に呼んで」
「……」
上条は黙っていた。
何も言わずに、ただ一方通行を見ていた。
その事をおかしく思いつつも、一方通行は重々しく口を開く。
「……オマエを呼ンだのには、訳があって「前置きなんか要らねぇ」
一方通行の言葉を遮り、上条はカバンから紙束を取り出して、こちらに投げた。
それを見て、一方通行は驚いた。
何故ならそれは、『実験』に関して記述されたレポートだったからだ。
「……全部、御坂から聞いたよ。『実験』の事も、昨日の事だって」
だからさ、と上条はまっすぐに一方通行の目を見る。
「何があったか教えてくれよ、一方通行。お前がこんな事を進んでする訳がない」
「………………」
一方通行は、じっと上条を見る。
そして、彼は目を伏せた。
「……俺は…………を、……ったンだよ」
「……え?」
小さく小さく、彼は何かを呟いた。
上条に聞き取れないほどにだ。
その様子を確認して、一方通行はもう一度言った。
「――――俺は、オマエらを守りたかったンだ」
219 = 1 :
「………………それは、どういう意味だ?」
上条が聞くと、一方通行はゆっくりと語りだす。
「オマエがどォして『記憶』を無くしたか……言ったよな?」
「あぁ……インデックスを庇ったんだよな?」
「………………そォだ」
一方通行は瞼を閉じた。
あの日の事は、今でも鮮明に覚えている。
きっと自分は、一生忘れられないだろう。
「オマエは、自分かあのガキのどちらを助けるかで――あのガキを選ンだ。そして、『記憶』を失った」
でもよ、と一方通行は区切る。
「ホントにどちらかしか助からなかったのか? ……そォ、今でも思うンだよ」
あの時の事を思い浮かべてみる。
上条当麻とインデックスに降り注いだ無数の羽。
一方通行が必死に風を操っても、あれらは何の影響も受けなかった。
あの無数の羽は、既存の物理現象の影響など一切受け付けない『魔術(異能)』だった。
だから、『科学』の結晶である一方通行にはあれらに干渉するのは不可能である。
220 = 216 :
なるほど、確かにその通りだ。
普通に考えれば、誰でも分かる話だろう。
しかし、それは本当だろうか?
もっとよく、あの日の事を考えてみるべきだ。
一方通行には、神裂火織の『魔術』が操れたではないか。
確かに、『魔力』という要素を解析しなければ操れないが、
彼はその『最強』の能力によって、全くの未知ですら支配してみせたではないか。
『最強』だから、そうする事が出来た。
――――ならば、『無敵』だったら?
もしも一方通行が『最強』などではなく、唯一無二の『無敵』だったら?
あの日、一方通行は『上条当麻』を助ける事が出来たかもしれない。
もちろん、『無敵』になったところで時は戻る訳では無い。
その力で上条当麻の記憶が戻る訳でも無いだろう。
だから、自己満足。
この先、同じような事が起きないようにするために。
目の前で、大切な人達を失わないように。
少しでも――――本当にわずかでも良いから――――力が、欲しかった。
大事な人達を守れる力が。
221 = 1 :
「――これが、俺が『無敵』を求めた理由だ」
上条は、ただ黙って聞いていた。
何も言わず、何の感情も顔に浮かべずに――ただただ、聞いていた。
「そして昨日、俺は『実験』の話を聞いてこの場所に来た。
…………一体何をするのかも全く知らねェのに、
馬鹿面下げて、ホイホイと来ちまったンだ。
……自分がしたかった事と、おもいっきり正反対の事をさせられるハメになるって言うのによ」
一方通行は力無く笑った。
「……ホント、馬鹿だよなァ。
戻れるモンなら、戻って全部止めてェよ」
一方通行は、まっすぐに上条を見た。
「……オマエに、頼みがある。
妹達を、アイツらを助けるのを手伝ってくれ。
こンな事に何の関係もねェオマエに頼むなンて、
ふざけた話だって事は分かってる。
でも、頼む! 俺は、俺はアイツらに生きて欲しいンだ!!」
一方通行は深く深く、頭を下げた。
今この場に彼を知る者がいれば、ひっくり返っている事だろう。
言い過ぎかもしれないが、それぐらいの事だった。
222 :
「……お前、今関係ないって言ったよな?」
上条はゆっくりと、確認するように尋ねた。
そして――
「――この、大馬鹿野郎!!」
大きな叫び声が、辺りの暗闇に響く。
「何が関係ないだよ! 何が守りたいだよ!!
何でもかんでも一人で背負った気になりやがって!!」
上条は一気にまくし立てた。
徐々に語気が強くなっていっている。
「辛いなら辛いって言えよ! 困ってたならすぐに言ってくれよ!!
確かにお前からすりゃ、俺なんてただの無能力者の、頼りない奴かもしれねぇよ!!」
だけどな! と上条は区切る。
「――――俺はお前の『友達』だろうが!!」
「――――ッ!!」
思わず、息を呑んだ。
「お前が俺を助けてくれたように、俺だってお前の力になりてぇんだよ!」
だから、と上条はじっと強く一方通行を見た。
「手伝わせろよ。関係ねぇとか言わないで、『友達』としてさ」
「……………………」
一方通行は、何も言えなくなってしまった。
彼は何かを考え、そして――
「……ありがとよ、『親友』」
小さな声で、礼を言った。
223 :
つー訳で今回は以上!
遅れといてこの短さはないですね、すみませんでした。
とりあえず、次でちゃんと三巻終わらします。
今度は早く来れると思います。
それでは、またいつか。
以下、どうでもいい報告。
今から電磁通行でスレ立ててきます。
昨日、一昨日と総合に暇つぶしに投下してたんで、見た人もいるかもしれません。
よければ、見てやってくださいね。
こっちのスレ優先で書きますが。
224 :
リアルタイム乙
225 :
久々にきたと思えば書き為が消えてたのか
それはご愁傷様です……
電磁通行とな?ぜひぜひ楽しみにさせていただきます
226 :
乙です。
電磁通行もこのスレも楽しみにしています。
227 :
乙
美琴蚊帳の外過ぎる……抱き締めたくなるぐらい哀れだ
という訳でポツンとしてる美琴は貰っていく
総合の電磁通行って言うともしかしてアレか
総合投下分も一緒に投下した方が良いかもな
228 :
まってたぜ!乙!
電磁通行の方もwwktk
229 :
助けられる側の視点から見ると上条さんかっこよすぎるな
こりゃフラグ建ちまくってもしょうがないわ
230 :
電磁通行の題名求める!!
上条かっこいいな 一方通行も…
231 :
>>227
どうぞどうぞ、御坂さんはあげますけど一方×上条さんは貰っていきますね!さてn・・・・・・ゲフンゲフン友達もそれがいいって言ってますし!
232 :
>>1乙!
あれ?
じゃあ、このSSも電磁通行になるんかね?
233 :
立てたらこっちにもリンク貼ってくれよ!
絶対行くから!
234 :
>>233
もう立ってるよ!
>>1がコテハンになってるからそれっぽいタイトルのスレのぞけばすぐ判るはず
235 :
つ
美琴「ねぇ……いつになったら、アンタは許されてくれるの?」 一方通行「…………」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303142164/
236 :
こっちも待ってる
237 :
皆様、どうもお久しぶり。
まだ、終わらない三巻編。
とりあえず、最終回前編をどうぞ。
238 :
「それで――俺はどうすりゃ良いんだ?」
暗闇の中でも目立つ、真っ白な少年に上条は質問する。
具体的に、自分に何が出来るのか。
自分は無能力者(レベル0)の、一方通行よりも無力な存在だ。
闇の世界に詳しい訳でもない、そんな自分に一体何が出来るのか。
その一点がとにかく気になっていたのだ。
「あァ……。いや、そォ難しい話じゃねェ。
オマエにとっちゃ日常茶飯事な事をしてもらうだけだからよ」
一方通行は軽く答えた。
「……日常茶飯事?」
はて? と上条は不思議がる。
まだ数週間分程度しかない『記憶』を揺り起こす。
思い浮かんだのは、不幸や補習などだけだ。
(…………いや、ないない)
そんな事、この局面で役立つ訳がない。
じゃあ何だ? と必死に考えていると。
「……何、話は至ってシンプルだ」
上条の思考を見透かしたように、一方通行は小さく笑った。
「――――俺と、ケンカしろ」
239 :
「………………………………え?」
思わぬ言葉に、間抜けな声を出してしまった。
「……だから、ケンカだよ、ケンカ」
呆然としている上条に、一方通行はもう一度告げた。
「ケンカって……あのケンカ、だよな?」
「他に何がある」
上条の確認に対して、彼は何の迷いもなしに即答した。
「…………何で「そォなるンだ、だろ?」
上条が言い切る前に、予想でもしたかのように、一方通行はタイミング良く先を言った。
「まァ、理由を言わなきゃ分かンねェよな」
そう言って、一方通行は真上を見上げた。
「……『樹形図の設計者』、は知ってるよな?」
「……あぁ。この『実験』の予測演算をしたスパコン――いや、今は人工衛星だったか」
「……そォだ。そいつがそもそも『実験』が成功するなンて言わなきゃ、こうはなってなかった」
一方通行は、残念そうに呟いた。
「……で、その元凶がどうかしたのか?」
上条が聞くと、
「今からほンの一ヶ月前ぐれェに撃ち落とされたンだよ、それ」
とてもあっさりと、軽い口調で告げられた。
240 :
「撃ち落とされた、って……」
思わず、驚いた。
何せ、この街の最高峰の技術をもってして作られた機械が、破壊されたと言うのだ。
それも、宇宙を漂っている、だ。
それなりに驚かずにはいられなかった。
「ま、ンなこたァどォでもイイ。
……とにかく、どっかの誰かさンのおかげで、活路が見出だせたンだ」
本当にどうでもよさそうに、一方通行は言った。
「……『実験』は、『樹形図の設計者』の予測演算によって成功すると言われた。
……じゃあ、もしもその演算に一つでも欠点があったら? 何か一つ、致命的なミスがあったらどうなる?」
上条は一方通行の質問の意味をじっくりと考えて、
「……『実験』は、失敗するかもしれない……?」
ゆっくりと、考えを確認するように呟く。
複雑な方程式などを解く時を思い浮かべれば良い。
たった一つでも計算を間違えれば、答えは違ったモノになる。
それと似たような事だろう。
そうなれば、『実験』をしたい人間は、どうせざるを得ない?
(……ミスを直すために、『実験』を中止するしかない!!)
だから『樹形図の設計者』が壊れて活路が見出だせたのか、と上条は納得した。
『樹形図の設計者』はその演算能力に任せて、とてつもない量の複雑な計算を行う。
人間だけの手でミスを直すには、かなりの時間を要する。
241 = 240 :
「……どういう事か、分かったか?」
上条の顔色から推測したのか、一方通行が尋ねてきた。
「……まぁ、大体。つまり、俺がお前とケンカするのがミスに繋がるんだな?」
何故そうなるかは分からないが、とにかくそういう事なのだろう。
「……あァ、そうだ」
事実、一方通行は肯定した。
「簡単に説明するとよ、俺とオマエがケンカして、俺が負けりゃイインだ」
「……お前が負ける?」
その言葉の意味を、上条はよく考えてみる。
一方通行は『学園都市最強』だ。
それが、『学園都市最弱』の自分に負ける。
つまり、
「お前が、実は『最強』じゃないって証明するって事か?」
そう言ってから、上条はさらに考える。
仮にそうなったら、一体何が欠陥になるのか。
(――――あ、そうか)
とても簡単に納得した。
考えてみれば、単純な話だった。
この『実験』は、一方通行が『最強』だからこそ行われるのだ。
七人の超能力者の中でも、唯一の可能性を秘めた者。
では、そうではなかったら?
一番底辺の、本当に何の能力もない無能力者に負けたら?
それはつまり、『実験』の大前提が崩れさる事になる。
242 = 240 :
(なるほどな……)
だから、上条を呼んだのだ。
わずかながらに、何かの能力を使う事も出来ない。
一番簡単な、スプーン曲げですら出来ない。
そんな人間は、この街の学生では上条当麻しかいない。
「……さて、分かったならなによりだ。
……早速、始めちまっても構わねェか?」
そう言って、一方通行は上条を見た。
「……あぁ、こっちはいつでも構わねぇよ」
上条は右手を握り、一方通行を見る。
「言っとくが……手加減なンざしねェぞ。
本気でオマエを倒しにいって負けねェと意味がねェからな」
油断していたから負けてしまったのでは、などと言われる可能性もある、との事だ。
「ハッ、上等だ」
不敵に笑って、上条は身構える。
「行くぞ『最強』!!」
「来やがれ『最弱』!!」
今、確かに戦いの火蓋が切って落とされた。
243 :
操車場のレールの上にて、最強と最弱は睨み合う。
互いの距離はたったの五メートルだ。
上条なら、二秒もあれば距離を詰めて、殴り掛かる事が出来るだろう。
「――――お、おおおぉぉぉっっっっ!!」
叫ぶと同時、上条が駆け出す。
その勢いのまま拳を握り締め、突き出す。
が。
一方通行は冷静に地面を踏むと、
その『衝撃』のベクトルを操り、砂利を上条に向けて放ち迎撃する。
このままでは、上条は勢いよく吹き飛ぶだろう。
「……くっ!!」
しかし、上条はそれを予想していたようにピタリと拳を止め、横に軽く跳ぶ。
わずかに砂利が頬を掠め傷を作るが、どうにか避けられた。
上条はさらに接近しようとしたが、その前に一方通行が脚力のベクトルを操って後方へと跳んだ。
この勝負、はっきり言ってどちらにも勝機があった。
二人は互いに相手の手の内を知っている。
上条は、一方通行がどのように能力を使うのか、大体は見知っていたし、
一方通行は、上条の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の
弱点――異能の力を打ち消せても、それによって生まれた二次的事象は打ち消せない――を知っていた。
そんな訳で、二人は互いの弱点を攻めて戦う。
上条は接近戦を、一方通行は遠距離戦を。
正反対の戦法で、二人は激突していた。
244 = 243 :
「――――ッ!!」
一方通行が放った、小さな風の散弾をギリギリで回避して、上条は突っ込む。
今度は目の前で、砂利を巻き込んだ複数の竜巻が起こる。
それらの微かな隙間をくぐり抜けて、上条は走る。
そうして射程範囲に入った一方通行に拳を叩き付けようとするが、すぐに彼は後ろに下がる。
先程から、ずっとこの繰り返しだった。
このままでは埒が明かない。
いや。それどころか、どんどん上条が劣勢になっていく。
上条の体力が限界に近付きつつあるのだ。
上条と一方通行では、運動の量が違う。
一方通行はその能力によって、最低限の力で動いている。
対する上条は、一方通行の猛攻を必死にかわしながら、全力で走っている。
体力は上条の方があるのだが、その消費も上条が上なのだ。
245 = 238 :
確かに上条には、『幻想殺し』がある。
一方通行の絶対的な『反射』を破る、奇跡の右手が。
しかしそれも、相手に接近しなければ何の意味も無い。
(…………クソッ、どうにかしねぇと……!!)
とにかく、一発でも殴れれば上条に勝機が見える。
一方通行は打たれ弱い。
たったの一撃だけで、簡単に怯む。
そうなれば、一気に攻めるのもたやすい。
ただ、
(……どうしろってんだよ!?)
その方法が思い付かない。
一方通行には何千通りの攻撃手段があるが、上条には右手一本しかないのだ。
そんな状況では、どうにもなる訳が無い。
(と、うぉっ、おおぉっ!?)
そう考えている内に、大量のレールが頭上から降り注いだ。
今日はどうやら、鉄関係の物体がよく降る日らしい。
直撃は避けられたが、レールが落ちた際に巻き起こった突風に吹き飛ばされた。
「ぐっ、あ、は……ッ!?」
辺りに積み上げられていた、物資の入ったコンテナに勢いよく衝突した。
246 = 243 :
(……う、ぁ)
意識を朦朧とさせながらも、上条は必死に立ち上がる。
と、そこへ――――
(……っ、おいおい嘘だろ?)
真上から、コンテナの山が落ちてくる。
どうやら、先程叩き付けられた際に、衝撃で崩れてしまったようだ。
「――――あぁあああっ!!」
力の限り叫び、彼は走る。
一方通行のいる位置とは正反対の、最初に会話した所へ。
辺り一帯に、轟音が炸裂する。
「…………く、ぉ」
上条はまたも強風に吹き飛ばされるが、どうにか生き延びる事が出来た。
何と言うか、珍しく幸運だ。
しかしながら上条には、今そんな事を考える余裕が無い。
(……何か考えねぇと)
コンテナのおかげで、一方通行の猛攻から一時は逃れられた。
ちょうど二人に割って入るように落ちたので、分断されたのだ。
となれば、今が唯一逆転の手立てを考えるチャンスだ。
そう思っていると、
「けほっ、こほっ……?」
辺りに何か、細かな粒が舞っているのに気付いた。
(これって……小麦粉、か?)
おそらくは、目の前にあるコンテナの中身だろう。
(……この状況なら、闇討ち出来るかもな)
もう少しすれば、この辺りは全て白い粉まみれだろう。
そうなれば、当然視界が悪くなる。
(……いや、それだけじゃダメだ)
上条の頭には、ある一つの予感があった。
(となると、だ)
上条は歩き出す。
その眼には、何の迷いも諦めも無い。
247 :
(…………)
一方通行は目の前を見た。
そこには、大量のコンテナが彼の行く手を阻むように転がっていた。
もっとも、彼にとってこのコンテナの大群は脅威にはならないが。
一方通行は勢いよく正面に向かって突進する。
一方通行の体は鉄の塊にぶつかるが、彼は無傷のままだった。
それどころか、逆にコンテナの方が一部凹み、ひしゃげ、吹き飛ばされてしまった。
と、同時に。
「…………ッ!?」
一方通行の視界が、白一色に染まる。
(……コイツは……)
真っ白な景色に立った、真っ白な少年は冷静に状況を把握する。
どうやら、自分の視界を彩っているのは小麦粉らしい。
(…………ふン)
普通ならば、ここで奇襲の可能性を考えてどう動くか迷うものだが、一方通行は違った。
248 :
(――――大気の流れを演算、風の当たった位置を逆算)
一方通行は風を操り、小麦粉を全て消し飛ばす。
さらに、辺り一面に突風を吹かせる。
そうする事で、風の流れが阻まれたポイントを探す。
その中でも、ちょうど人の形をしている障害物を特定する。
(……見ィつけたァ!)
一方通行は即座に側面を見る。
そこには、
「――――おおおおぉぉぁぁあああっ!!」
上条が、拳を振り上げて迫っているのが見えた。
一方通行は大地を踏み、大量の砂利でボディーブローを上条にお見舞いする。
両者の距離は、もうニメートルもないだろう。
この至近距離、奇襲に対する虚を付く迎撃。
これではさすがの上条も回避は不可能だ。
事実、散弾は見事に上条の胴を捉えた。
彼の胸の辺りから、ミシリ……ッ! と何かが軋む音と、
ガシャッ! という、何か石同士が勢いよく衝突したような音が聞こえる。
249 :
そこまで見て、一方通行はおかしいと思った。
上条が散弾に衝突した時の音もそうだが、違う。
もっと、ありえない事が目の前で起きていた。
「――――お、らぁああああっっ!!!」
上条が失速せずに、歯を食いしばって変わらずに右拳を振り上げていたのだ。
(…………な……)
一方通行は言葉を失い、回避を忘れてしまった。
そして――――
ガンッ! という強烈な音が響き、一方通行が後ろによろめく。
上条の拳が、初めて一方通行に届いた。
この時より、上条当麻の逆転劇が始まろうとしていた。
250 :
「――――しっ!!」
一方通行が痛みに怯んでいる間に、上条はさらに距離を詰めた。
「くっ――」
一方通行は慌てて、最強の能力によって後方に下がろうとした。
しかし、
バギン! という音と共に、一方通行は変わってしまった。
『学園都市最強』から、『学園都市最弱』へと。
一方通行が下がる前に、上条が右手の爪で一方通行に触れたのだ。
その結果、一方通行はほんの一メートルほどしか、上条と距離を開けられなかった。
「――――がっ!!」
驚く間も無く、一方通行はもう一度殴られた。
それだけで、一方通行はフラフラになってしまう。
「…………ゥ、く」
一方通行は必死に朦朧とした意識を覚醒させようとする。
そこへ、
左肩を、突如掴まれた。
そうしてがっしりと固定された一方通行の顔面に、上条の『左手』が決まる。
それだけでは終わらず、二度三度と拳は一方通行に沈み、最後に頭突きをもらった。
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