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    元スレ上条「俺達は!」上条・一方「「負けない!!」」

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    タグ : - 一方 + - 上条 + - 腹パンの人 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    501 :

    おう、向こうも見てるからな

    502 :

    腹パンの人の別スレどこですか?
    見たいのでどうか教えろください

    503 = 501 :

    >>502
    >>235

    504 = 502 :

    >>503
    おお、すまん
    ありがとう!

    505 :

    こっちも更新されないかな……

    506 :

    このスレは見捨てられたのか…?

    507 :

    ……どうも、皆様。
    大変お待たせしました。
    今から投下開始します。

    508 = 1 :






    「……今日はこれぐれェで終いにするか」

    一方通行が言ったと同時、佐天の肩から力が抜けた。

    もう、完全下校時刻が間近だった。

    一方通行は空に目をやる。

    世界がこんなにもおかしくなっているのに、夕日はいつも通りに輝いていた。

    ……いや、それは人間だけの視点だからか。

    事実、人間以外の動物は特に入れ替わっていない。

    それに入れ替わったとしても、誰もが―― 一方通行のように逃れた者を除くが――『いつも通り』に生きている。

    考えてみると、やはり恐ろしい。

    一人だけ、世界から取り残された感覚がしてくる。

    それはとても嫌な感覚だった。

    蒸し暑い夏の日に、四十度のサウナに一日取り残されるような。

    いや、取り残された訳ではないか。

    改めて考え直す。

    別に自分と同じ人間は他にもいるのだ。

    それに、自分がこの環境に慣れてしまえば良いだけの話だろう。

    そんな風にポジティブに思考していると、

    「――――レータさん! 一方通行さん!」

    はっ、と自分を呼ぶ声に気付く。


    509 = 1 :

    「ン。悪いな、ちょっとぼーっとしてた」

    むぅ、と自分を呼んだ少女――佐天がむくれた。

    いつもの姿の彼女だったら、それはそれは愛らしい仕種なのかもしれない。

    が、今は生憎といい年した大人の女にしか見えないので、正直ぞっとしてしまった。

    やれやれ、と佐天は首を振ると、

    「ま、良いですけど。それより、どうでした?」

    何がどォなンだ? と聞こうとして、やめる。

    彼は質問の意図をすぐに理解すると、

    「……ま、そォ簡単にゃ行かねェよな」

    言った途端に、彼女は肩を落とす。

    ガクッ、というような効果音が似合いそうだ。

    ……ちょっとだけ、いたたまれない。

    「ま、早くレベルを上げたきゃ、今日やった事を帰ってから反復練習するこったな」

    言いながら、周りに積み上がっている缶ジュースを何本か渡す。

    「持ってけ。俺一人じゃ処理出来ねェ」

    「あ、どうも」

    それらを抱えてから佐天は、

    「残りはどうするんです?」

    と首を傾げる。


    510 :

    「そォだなァ…………」

    一方通行は少し考え込む。

    缶ジュースはまだまだたっぷりとある。

    佐天にいくらかは渡したが、一人ではまだ厳しいだろう。

    だからといって、捨てるのもあまり好ましくない。

    うーン、と一方通行は悩む。

    佐天も、うーん、と一緒に唸る。

    (木原達にでも……いや、今忙しいから会えないかもしれねェか)

    これは一体どうしたものか、と少年は悩み――――

    「…………ン?」

    ふと、気付く。

    ベンチから離れた、自販機の近く。

    そこの草むらでガサガサと動きがある事に。

    「………………」

    一方通行は無言で能力を使う。

    ちょっとした微風を草むらに向かって当てて、その流れを観測する。

    すると、ちょうど人間サイズの障害物が三つほど草むらにある事を把握する。


    511 = 510 :

    「どうかしました?」

    「ン。ちょっとな」

    何も知らない佐天に一方通行は適当に答えつつ、豆粒程度の大きさの小石を拾う。

    そして――――

    「――――そら、よォ!」

    軽く、放り投げた。

    僅かにベクトルを操られたそれは、綺麗な放物線を描き、草むらに入る。

    途端、

    「あたーーーっ!?」

    随分とコミカルな雰囲気の女性の声が公園に響く。

    「…………へ?」

    佐天は目を丸くして、そちらを見る。

    一方通行は若干呆れた様子で草むらを睨むと、

    「……オラ、とっとと出てこい」

    「え? え?」

    未だ状況が理解出来ないらしい。

    佐天は草むらと一方通行を交互に見る。

    そして――――

    「えっと……いつから分かってました?」

    ゆったりとした動きで、三人の人間が出てきた。

    当然のように、一方通行が知っている人物は一人も――いや、一人いた。

    が、残り二人は誰か知らない。

    服装で大体の中身の予想がついてはいるが。

    「う、初春!? 何で白井さんや御坂さんまで!?」

    隣で素っ頓狂な声を上げる佐天に、三人は気まずそうに適当に笑う。

    そう。そこにいたのは、佐天の友人である初春飾利、白井黒子、御坂美琴だった。


    512 = 510 :








    「………………それで? 何でここにいるのかなー、初春。
    今日は風紀委員(ジャッジメント)で超絶的に忙しいんじゃなかったー?」

    佐天はにこやかに笑って三人に質問する。

    言葉上は穏やかだが、その声は何故か少し震えている。

    「……いやー、つい佐天さんが気になっちゃって」

    あはは、と頭に花を載せたセーラー服の外国人女性が笑う。

    中身は『初春飾利』であろうその女性に、一方通行は見覚えがある。

    (……今日はイギリス関連ばっかだ)

    朝に見た英国の第二王女、キャーリサ(中身『土御門舞夏』)。

    その妹である第三王女、ヴィリアン。

    それが、現在の『初春飾利』の姿である。

    「……パトロール中に無理矢理連れられてきましたの」

    常盤台中学の制服に風紀委員の腕章をしている女性が、頭を撫でながら言う。

    たぶん、こっちは白井黒子だ。

    こちらも外国人だが、一方通行には特に見覚えはない。

    一応、その女性の外見的特徴を上げるとすれば、
    まるで雪のように白く、そしてみずみずしい肌をしているところだろうか。

    そこから考えるに、あまり日が射さないロシア辺りの出身なのかもしれない。

    まるで、童話に出てくるヒロインを絵に描いたような風貌だ。


    513 = 510 :

    「あー、私は黒子達に付いてきて……」

    問題はこいつだ、と一方通行は彼女を見る。

    御坂美琴。

    数日前に、ちょっとしたいざこざがあった少女。

    現在、『御使堕し』によって例外なく姿が入れ替わっているはずなのだが……。

    (何で入れ替わってねェンだ?)

    何故か、彼女は何も変わらずにそこに立っていた。

    訳が分からない。

    まさか、彼女が術者とやらである訳ではないし。

    そもそも、超能力者には魔術が使えないとかインデックスに聞いた事がある。

    じゃあ、一体――――?

    と、そこまで考えて気付いた。

    (………………あァ、そォだよなァ)

    思い浮かんだのは一つの可能性。

    確率としては、かなりの奇跡に分類されそうだ。

    (同じツラが二万ぐれェもいりゃあ、一人ぐらいは被るよなァ)

    そう、御坂美琴はちゃんと入れ替わっている。

    自分の軍用クローンとして生み出された二万人の人間――――妹達と。

    ありえなくはない事だろう。

    世界人口と妹達の人数を考えれば、相当の低確率だが。

    いやどンだけの偶然だよ、と一人でツッコミを入れておく。


    514 :

    「…………ま、何でもイイけどよ」

    適当に思考を切り替えて、一方通行は缶タワーを指差す。

    「これ、適当に持ってってくれ。俺一人じゃどォにもなりそうになくてな」

    「あぁ、それじゃ」

    「……いただきます」

    「そ、それじゃいくつか……」

    三人はそれぞれ何本か缶を選んで取っていく。

    初春『いちごおでん』とかいう奴のほか、見たかぎり危なそうな物を。

    白井は比較的普通の物(紅茶とかコーヒーだ)を。

    御坂は、『あっ、これは…………』とか呟きながら、同じ種類の缶を何本も取った。

    何かと思えば、いつぞやスフィンクスと名付けられた猫を軽く酔わせたジュースだった。

    そンな大事そうに持つかねェ……と思いながらも、一方通行は閉口しておく。

    よほど猫が好きなんだろうな、と簡単に推測出来たからだ。

    「……いつから、見てたの?」

    おほん、と随分とわざとらしい咳をして、佐天は奇っ怪なジュースを飲む花頭を見た。

    「実質的にはほんのちょっとだけですよ。だいたい三十分前くらいです」

    うまー、と缶から口を離す少女に、

    「まったく……もう少しでお姉様と間接キッス出来たというのに…………」

    ツインテールお嬢様が何やら恨めしげにぶつぶつ文句を言っている。

    「……ホント、こう言っちゃなんだけど助かったわ」

    かなり引き気味に安堵する御坂を見て、オマエの日常ってとンでもねェな、と言おうとして止める。

    これで結構楽しんでるに違いない。


    515 :








    「で、どうです?」

    少し時間が経ち、とある公園のごみ箱の前にて。

    佐天は突然の質問に、親友を見る。

    空き缶を捨てに行く、という初春に引っ張られて来たのだが、どうやら用件はそれだけではなかったらしい。

    何が、とは聞く必要はない。

    たぶん、能力の話だ。

    「……見てたんでしょ」

    ちょっぴりブルーな気持ちで、佐天は憮然と答える。

    親友のこういった意地悪なところは嫌いではなかったが、今は少しだけ響くものがある。

    しかし初春は笑うと、

    「いえいえ、そういう話じゃなくてですね」

    ずい、と突如花が目前に迫り、佐天は少し体を引いた。

    とっさに、これホントどうなってんだろ? などと佐天はどうでもいい事を考えて――――





    「(ちょっとは何かアピール出来ました? って聞いてるんです)」





    思考が、止まる。


    516 = 514 :

    「んな…………っ!? な、何言って」

    いきなりの言葉に、佐天は慌ててある方向に視線を移す。

    視界の先には、三人の人間がいる。

    その内の一人である白髪の少年を注視する。

    少年は、奇妙そうに二人の人物を見ていた。

    ただしそれは佐天達ではなく、それはそれは変わった、名門中学のお嬢様達だった。

    ……よかった。何も聞かれてない。

    佐天はホッと胸を撫で下ろす。

    初春はそんな彼女の様子を知ってか知らずか、

    「やだなー。分かってますよー?
    例の件で一方通行さんに一目惚「うーいーはーる」いひゃひゃひゃっ!?
    ひょ、ひょっとちゅねりゃにゃいでくだしゃいよ! ひょっぺたみょげみゃしゅってば!!」

    ギュー、と佐天はよく伸びる親友の頬でたっぷりと遊び始めた。

    その顔にはステキな笑顔が張り付いているが、目はさっぱり笑っていない。


    517 = 1 :






    ギャーギャーと騒ぐ少女達を、一方通行は不思議そうに見る。

    騒いでいるのは、名門常盤台中学のちょっとヘンテコなお嬢様二人だ。

    「お姉様ーっ!! 今度こそ黒子と間接キッ……」

    「ええーい、近寄んな!」

    いつもの事、と言わんばかりに暴れる二人を、一方通行はじっと見る。

    今、変態の方は姿が変わっている。

    こういった馬鹿馬鹿しい事には無縁そうな、見た目麗しい外国人女性に。

    だというのに、そこには何の違和感もない。

    とても不可思議だった。

    変態には外見など関係ないのかもしれない。

    青髪ピアスと仲良くなれそォだな、と思う。

    ……いや、願わくば出会って欲しくはないが。

    「……ン?」

    ふと、視界の端に別の少女達が写る。

    さっきまで能力を鍛えるのを手伝っていた佐天と、その親友だという初春だ。

    初春はニコニコと笑って、佐天の耳に口を寄せていた。

    そうして何事か囁いた途端に、佐天は顔を真っ赤にして何やら喚く。

    と思った瞬間、彼女は初春のほっぺをつねっていた。

    「…………どォしたンだろうな、あれ」

    こっそりと御坂に近付いて尋ねてみる。

    「んー?」

    彼女は纏わり付く後輩をうっとうしげに電撃で吹っ飛ばす。

    そうして、佐天達と一方通行を交互に見てため息を吐くと、

    「……アンタってアイツに負けず劣らずよね」

    「は?」


    518 = 1 :

    はい、以上です。
    >>506
    どれだけ間が開こうと完結まで終わらせません。見捨ててたまるかよ状態です。
    それでは、またいつか。

    519 :

    黒子の中身はあれか、国境を越えた変態同士のシンパシーか。

    520 :

    今までの話を忘れたからだれか産業で

    521 :

    >>520
    まとめとか
    ログとかで
    読んで来い

    522 :

    >>509
    むくれた黄泉川


    悪くないじゃん

    524 :

    >>522
    鉄装さんが呼んでたんで早く仕事に戻って下さい

    526 :

    白井はワシリーサか?

    527 :

    えぐざくとりぃ?

    528 :

    支援

    >>527
    布束さん?

    529 :

    >>528
    ジョジョネタじゃねーのか

    530 :

    どうも、お久しぶりです。
    では、早速投下開始。

    531 = 1 :








    「……じゃあな、俺はこっちだ」

    「ご機嫌よう、一方通行さん」

    「さようならー」

    「じゃね、アイツらによろしく言っといて」

    「今日はどうもありがとうございました! またお願いしますねー!!」

    そう言って、夕暮れの街に消えていく佐天達の背中を、一方通行は最後まで見届けた。

    あの後、完全下校時刻となり、奇妙な集団は一度解散する事となったのだ。

    そんな訳で、残念ながら帰り道が一人だけ違った一方通行は、さっさと寮に向かい始める。

    (……疲れた)

    ゆっくりとした歩調で、一方通行はけだるそうに歩道を進む。

    周りには、自分と同じように寮へと急ぐ学生(だ思われる)がいた。

    入れ替わった連中に普段通りに振る舞うのは、想像以上に気力を使う事となった。

    相手は入れ替わりに気付いていないために普段通りに振る舞うのだが、
    気付いている側としては、初見では普段通りの対応を見せるという訳にもいかない。

    状況を理解し、相手に変人呼ばわりされそうな対応をしないようにするには、頭をかなり使う。


    532 = 1 :

    とっとと帰って休もう、と少年は急ぎ足で進もうと――――





    「おー、一方。奇遇やね」





    と、いきなり誰かが横合いから飛び出してきて、一方通行の足は自然と止まる。

    このうさん臭い口調には、一人しか覚えがない。

    ゆっくりと、とてつもなく面倒そうに一方通行はそいつを見ると、

    「……今日は厄日か」

    ポツリ、と呟いた。

    「何や、冷たいなー。むしろ幸運やって」

    そいつ――中身『青髪ピアス』は、手をひらひらと振りながら笑う。

    すげェなコイツ、と一方通行は久しぶりの友人を見た瞬間、率直に思った。

    全然違う人物に入れ替わっているというのに、いつも通りの怪しさが目に見えるぐらいに感じられる。

    そう、超絶真面目な『吹寄制理』に入れ替わっているというのに。

    もはや、一つの才能だと断言しても良い。


    533 :

    「いーや、ぜってェ違う。……つーか、何だその浮輪」

    よく見ると、変態は胴に浮輪を通していた。

    それに、少しだけ髪が水で濡れているようだ。

    「ん? 今日は暑いからなー、プール行ってきたんよ。
    まったくもー、一方もーちょい早起きしたほうがええよ?
    人が誘いに来たゆうのにグースカ寝とったようやし。
    カミやんは海行ってしもたし、土御門はんは連絡取れへんしで、しゃーないから他の連中と行ってきたんやけどな」

    話を聞く限り、どうやら朝に誘いに来てくれたらしい。

    ほらほら、日焼けしとる? 今度はワイルドな感じ目指しとるんよー、とか抜かす馬鹿。

    オマエはまずその青髪をどォにかしろ。

    全然ワイルドじゃねェ、っつーか笑いを誘っているとしか思えねェよ。

    と、まぁそんな思考は放っておいて。

    「……そりゃ悪かったな。で、どォだった」

    悪い事したな、と結構真剣に思いながら、一方通行は青髪ピアスと歩道を歩く。

    周りにいた学生達も、いつの間にかほぼ消えていた。


    534 :

    「ぐふふ。これがまたエライ人が多くてな? 涼むどころか暑苦しいくらいだったわー」

    そう言った彼の顔は、ちっとも嫌そうじゃない。

    むしろ、今にも笑い出しそうなのを堪えて、ニヤニヤしているように見える。

    「……大損だな」

    とりあえず適当に返すと、彼は実に予想通りの事を言った。

    「いやいや、水着姿のお姉さんお嬢ちゃんたっくさん見れたからええんや」

    へへー、と無邪気に笑う変態。

    やっぱり、変態というものはすごい。

    いや、全然褒められた事ではないが。

    一方通行はうんざりしたような顔をして、

    「……オマエはいつでもオマエだな」

    軽く呆れたように、そして少しだけ安堵したように告げた。


    535 :








    結局、一方通行が寮に着いた頃には、もう日は完全に落ちていた。

    他の学生達はすでに帰って来たらしく、僅かに夕飯の匂いが辺りから漂ってくる。

    夕飯作るの面倒だな、などと考えつつ、一方通行は部屋に入る。

    玄関で靴を後ろに蹴り飛ばすように脱ぎ、進む。

    「よォ。オマエは気楽でイイよな」

    一方通行の視線はベッドの枕元に向いていた。

    そこには、人の家でゴロゴロとぐーたらしている猫がいる。

    昼に出かける際に、一応舞夏に世話を頼んでおいたので、ハプニングが起きたりはしていないようだ。

    「っと、こいつは……」

    次に目が行ったのは、食事に使う大きめのテーブルだ。

    そこには、一枚のメモ用紙があった。

    近付いてみると、何か書いてある事に気付く。

    とりあえず、手に取って読んでみる。

    そこには、

    『どうせだから夕飯作っといたぞー。冷蔵庫に入れといたから食べると良いー』

    とだけ、あった。

    ……面倒な夕飯作りはしなくて良さそうだ。


    536 :

    「……」

    一方通行はテレビの前に置いてあるサイドテーブルの前に座り込み、何となくテレビの電源を点けてみた。

    相変わらず、誰も彼もがいびつなままだ。

    早いトコ解決しろよ、と思いながら番組を適当に変えまくる。

    もはや八つ当たりに近いそれを、一方通行は軽く五分ほど続ける。

    と、ある番組で指が止まる。

    それは、旅番組だった。

    どこかの国の海岸を旅しているらしく、画面いっぱいに青い海が広がる。

    「……あァ、クソ。海行きてェな」

    ここはイタリアのどこどこだ、といったナレーションを聞き流しながら、一方通行は一人呟く。

    友人達とプールぐらいになら行った事はあったが、生まれてこのかた海には行った事がない。

    実を言えば、当初一方通行は上条達と一緒に海に行く予定だった。

    だが、第一位というだけで色々と制約が付いてしまい、結局『外』に出してもらえなかったのだ。


    537 = 536 :

    ふン、と一方通行はベッドに寝転がり、仰向けになる。

    別に、もう慣れていた。

    このような事は何度も何度もあったのだ。

    第一位、という肩書きはどこまでも枷となる。

    こんな時だけ能力がなくなれば良いのにと何度思ったか分からない。

    ……海、行きてェな、と少年はもう一度、小さく呟いた。

    (いっその事こっそり出てくか)

    天井を見上げて数分、一方通行はそんな事を考え始めていた。

    それはイイ、と思う。

    表のやり方で出られないなら、裏のやり方で行けば良いのだから。

    適当に事件解決の手伝いだ、とか言って合流してやろう。

    そォと決まったらそうしよう。うン、そォしよう。

    一方通行は勢いよく起き上がった。

    その反動でベッドのスプリングが、傍で寝ていた猫を軽く飛ばす。

    『な、何!? 何事ーっ!?』と慌てた様子で猫は華麗に着地するが、一方通行はそちらは見ない。

    彼はボールペンと適当な紙(夏休み中の校外での過ごし方とか書いてあるヤツ)をその辺から引っ張り出す。

    ボールペンを手の中で数回ほど回すと、少年は紙の裏の白紙部分に何かを書いていく。

    そうして、完成した。

    ――――学園都市の、かなり精密な地図が。


    538 = 535 :

    (外周の壁を跳び越える……はダメだな。監視カメラはともかく、人工衛星が邪魔だ)

    まずは一番簡単な策。

    ぐるぐると外周部を線で囲んで、バツマークを一つ。

    次に二番目。

    (航空機にでも張り付いて……いや、見つからずにってのは無理だ)

    これも駄目。

    ペン先でコツコツと叩かれている地点は、学園都市の中でも警備が厳しい。

    誰にも気付かれず、というのは不可能だろう。

    またもバツマークが紙の上に追加される。

    (モグラみてェに穴でも掘るか?)

    幸いな事に、第二十一学区には木々が生い茂っている山々などがある。

    そこでなら、穴でも掘って地下から街を出たとしても、
    木々によって穴を掘っている所を人工衛星に見られたりはしないだろう。

    だが、

    (……地下の電気配線ケーブル切ったらどォする)

    頭の中でシュミレートしてみる。

    学園都市は電力に大概の技術を委ねている。

    もしも、どこかの軍事研究所の電力供給を断ってしまって、実験兵器が暴発したら?

    もしも、どこかの病院の電気機器を停止させて、誰か死んでしまったら?

    考えれば考えるほど、欠点が浮き彫りになる。


    539 = 535 :

    「………………チッ。やっぱ無理か」

    一方通行は床に倒れ伏す。

    まぁ、分かっていた。

    誰にもばれることなく、かつ迷惑もかけず、だなんて無理に決まっている。

    こんな事を考えたのは、ただ単なる退屈しのぎだ。

    一気に無気力になった彼は部屋を見回した。

    あまり物は置かない主義の少年の部屋は、舞夏の掃除のおかげでもあるのか、こざっぱりとしている。

    ふと、棚の上に飾ってある一枚の写真が視界に入る。

    それは、今年の入学式の時に撮った写真だった。

    写っているのは、一方通行と養父――のはずの人物だ。

    懐かしいものだ、と思う。


    540 = 534 :











    『いやはや、図体ばっかでかくなりやがって』

    とある高校の校門にて。

    申し訳程度に舞い散る桜の花びらを目で追いながら呟いたのは、養父の木原数多だ。

    その顔にはどこか感慨深いモノがある。

    『ンだよ。俺だって立派な大人だっつーの』

    木原の隣、学生服を着込んだ白い少年が不機嫌そうに言った。

    辺りには、少年と同じように学生服の人間がたくさんいる。

    今日は少年―― 一方通行の、高校の入学式だ。

    もっとも、もう肝心の式は終わっているが。

    今は、記念に写真を撮ろうという話になったところだった。

    『は? 大人? どこどこ?』

    木原は手を額に当てて辺りを見回す。

    わざと下を見ないのがミソだったりする。


    541 = 534 :

    『……上等だ、馬鹿親父』

    『冗談だよ、分かってねぇなオマエ』

    低く唸る息子に対して、木原は軽く笑う。

    少年は、学園都市第一位の怪物という結構(というかかなり)怖い呼び名がある訳なのだが、木原は一切気にしない。

    いや、まぁ、怯える彼の姿なんて想像もつかないが。

    『もう良いかしら? 撮るわよ』

    木原の同僚の呆れたような声がして、二人はさっさとたたずまいを正す。

    『あぁ、はいはい。よろしく頼むわ』

    木原の言葉に、少年はぼんやりと、面倒そうにカメラを見る。

    正直こういうのは苦手だった。

    何と言うか、その、親と撮るというところに気恥ずかしいモノがある。

    視界の端でニヤニヤしている友人(馬鹿)どもはとりあえず後でぶっ飛ばす。

    なんて事を考えていると、

    『オイ、一方通行』

    『……何だよ』

    一方通行は、珍しく真面目な口調の木原を、怪訝そうに見る。

    ポンッ、と軽い音がした。

    肩に手を置かれたのだ。

    と思った瞬間、引き寄せられた。

    途端にアップになった木原の顔には、何が嬉しいのか笑顔があった。

    『――入学おめでとう!』

    あ、と思った時にはもう遅い。

    すでにフラッシュは焚かれていた。


    542 :











    (……まだほンの少し前の話じゃねェか)

    気付けば、写真立てを手に取り、じっと四角い枠の中を眺めていた。

    養父であろう誰か――何かどこと無く養父に雰囲気が似ている老人だ――と、その人物に肩を抱かれている自分。

    記念写真としては残念な出来だ、と思う。

    引き寄せられた際に、驚いて木原に注目してしまったために、自分の顔が写らなかったのだ。

    しかもよく見れば、友人(馬鹿)どもが写真の端に写り込んでいる(ピースとかしてるから確信犯なのは間違いない)。

    くっだらねェ、と一方通行は写真立てを元の場所に戻す。

    写真が飾ってあるのは、ただ単に現像した時に養父が勝手にそうしたからだ。

    それを動かすのが面倒だっただけだ、と思う。


    543 = 542 :

    「……くっだらねェ」

    もう一度だけ、言った。

    何だか色々と馬鹿馬鹿しくなってきた彼は、地図をくしゃくしゃに丸めてごみ箱に捨てようと――――

    (……待てよ)

    ふと、箱の中に紙を投げようとした手が止まる。

    彼は写真にもう一度目をやった。

    (今、何を思い出しかけた?)

    一方通行はまじまじと写真と地図を見る。

    何か、以前にもこのような事があったような――――?

    (そォだ、確かあれは中二の時――――)

    一方通行はゆっくりと記憶の糸を辿る。

    じっくりと、慎重に記憶を再生する。

    どれほど考えていたか分からない。

    一分、十分、あるいは一時間か?

    とにかく立ち尽くしたまま、記憶を呼び覚まし続け――――

    そして、思い出した。

    たった一つだけ、退屈しのぎが上手く行きそうな可能性を。

    (……手札は揃ってる。あとは――――)

    「準備するか」

    愉快そうに笑い、地図を手に動き出す。

    そこにいたのは、『第一位』だとか『最強』だとか、そんな特別な人間ではなく、
    初めての『外出』に今から心を弾ませている、どこにでもいる年頃の少年だった――――


    544 :

    はい、以上です。
    そんな訳で次回は『外出』編となります。
    それでは、またいつか。

    545 :

    >>1
    フムフム、楽しみにしているのだよ。

    546 :



    アクセラさんプールに行ってれば海パンはいた吹寄が見れたのか・・・・・・

    547 :

    あれ入れ替わったままプール行ってたんだよなまさかトップレス吹寄か!?

    548 :


    青ピならブーメランをはくって信じてる


    ここの一方さんが年相応すぎて
    うれしさで涙出てきた

    549 :

    みんな同じこと考えてて笑ったw

    550 :

    >>548
    いやさすがに年の割には若干

    でも一方さんろくにそういう悪戯とかする機会なかったんだろうな


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