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    元スレ上条「俺達は!」上条・一方「「負けない!!」」

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    551 :

    >>550
    うちの高校、偏差値は高かったけど
    いたずらに全力投球する奴ばっかだったぞ
    高校生なんてそんなもんじゃね?

    パチンコ屋の新装開店と葬式の花輪をすり替えるとか
    誰かが天井を歩いたみたいな足跡偽装したりとか
    校内の掲示(煙草の害とかそういうの)を「足が伸びる!」とかのあやしい通販のチラシに貼り替えるとか
    教室のチョークをコーティングして書けなくするとか
    図書室の本に暗号文挟んであったりした

    552 :

    平均偏差値60以上

    553 :

    天才じゃねえか

    554 :

    >>552
    そこに気付くとは……こいつらかなりのキレ者……!

    555 :

    追いついちゃったじゃねぇか
    私怨

    556 :

    >>550
    悪戯と聞いて何故か一方さんの枕元にエロ本仕込む木原くンが浮かんだ

    557 :

    ここは月に一回更新なの?

    558 :

    そんなもん>>1の気分次第さ

    でも最近遅い原因の一つは紛れも無く腹パン不足
    ただ俺の拳ではまだ無理だ
    誰か頼む

    559 :

    感謝の腹パン

    560 :

    労いの腹パン

    561 :

    激励の腹パン

    562 :

    期待の腹パン

    563 :

    必殺の腹パン

    564 :

    幻想の腹パン

    565 :

    静寂の腹パン

    566 :

    疾風の腹パン

    567 :

    根性の腹パン

    568 :

    そして・・・・・・・・っ!

    569 :

    フランスパン

    573 :

    判決は以下に

    575 :

    くっそwwwwwこの流れなんだよwwwwww

    576 :

    なんかえらく進んでると思ったらお前らwwwwwwwwww

    577 :

    てか今更なんだけど、
    中の人ネタだったのね

    578 :

    >>574
    もしや、腹パンの刑を言い渡すのか?

    579 :

    >>1よ腹パンのやられ過ぎで下痢にでもなったか?

    580 :

    どうも、一ヶ月ぶりですね。
    久しぶりに投下します。

    581 :








    翌日の早朝、四時。

    「……ここも久しぶりだな」

    学園都市の第二十二学区。

    そこの地下街の入口に、一方通行はいた。

    第二十二学区は地下街がメインとなる学区で、
    地上には街を回していくための、風力発電に使われるプロペラが大量に設置されている。

    一見すると、それはまるでジャングルジムのようだ。

    「さて、と」

    左肩のスポーツバッグを担ぎ直してゲートをくぐり、一方通行は地下に入る。

    地下は全部で十の層に分けられていて、各層への移動には螺旋型の通用トンネルを使う。

    トンネルのオレンジの光の中を、少年はとんでもない速度で駆けていく。

    早朝なだけあって、誰もトンネルの中を進んでいなかった。

    ふと、右手にある紙に視線を移す。

    小さな紙には、『ヒント一覧』と一番上に下手な字で書いてあり、いくつかの文字の羅列が箇条書きされている。

    (……ホントに大丈夫なンだろォな)

    下へ下へと進みながら、一方通行はぼんやりとこの紙をもらった時の事を思った。


    582 :











    「は? アイツが部屋から出てこない?」

    とある研究所。

    そこの一室で、キーボードを打つ手を止めて、木原数多は同僚の芳川桔梗を見る。

    「ええ。何かあったのかしらね」

    何でも夕飯に呼びに行ったところ、拒否されたらしい。

    ふむ、と木原は少し考え込む。

    夏休みになって、久しぶりに中学二年生の息子が訪ねてきた訳なのだが、確かにどこか元気がなかったとは思う。

    どうかしたのだろうか。

    まさか、夏バテという訳ではないだろうし。

    「んー。まぁ、あれよ。こっちが対応しとくから、オマエはアイツらんトコ行ってろ」

    少しだけ気になったので、直接話す事にした。

    分かったわ、と言って芳川はさっさと部屋から出て行った。

    その後ろ姿を見送り、パソコンをシャットダウンさせる。

    いつの間にやら、窓からはオレンジ色の光が差し込んでいた。


    583 :

    (あー、働いたー)

    机の上にあったコーヒーを啜る。

    口一杯に広がる苦味を堪能しながら、木原はぼんやりと物思いに耽る。





    『オイ、木原くン』

    『だからー、その呼び方やめろって。どうせなら、父さんとかにしろよ』

    『馬鹿か。オマエなンざ「くン」で充分だ』

    『このガキ……。またぶん殴ってやろうか?』

    『はン。あンなモンに頼らなきゃガキ一人殴れねェ奴に、間違えても父さンなンて言わねェよ』

    『あ、オマエ今「父さん」って言った』

    『それカウントしてンじゃねェ! ぶっ飛ばすぞ!!』

    『おぉ? ヤルかァ?』

    『……貴方達、外で騒いできなさいな』





    (うわ、俺ってばガキっぽかったなー)

    今もそう大して変わらないのだが、本人は特に気が付かない。

    背もたれに体重を預け、重みに椅子が軋む音を聞きながら、上を見上げた。

    誰も居ない部屋の中、煙草の煙を吐き出すように息を吐く。

    最近、息子に構う時間がなかったかもしれない。

    それで少しばかり拗ねている、という可能性は考えられなくはなかった。

    んー、面倒だなー、と大きく伸びをした。

    (……ま、どんな理由でもする事は変わんねぇけど)

    木原数多は、自分本位の身勝手な男だ。

    彼が行動する理由は、いつでも単純で馬鹿馬鹿しい。

    面白い、という考えだけが彼を動かす。


    584 = 583 :








    同じく、とある研究所。

    そこの、『所長室』と呼ばれる部屋にて。

    ある少年が、仮眠用に使われているベッドで寝転がっていた。

    彼は今、とてもとても不機嫌だった。

    例えるならば、破裂する寸前の風船のような。

    ちょっと突けば、すぐにでも爆発しそうな状態だった。

    「よ! 何だよ、一方通行くーん? メシだっつーのに」

    そんな少年に、声を掛ける影が一つ。

    誰か、など少年には確認する必要も無い。

    「…………別に。ちょっと腹減ってねェだけだ」

    少年―― 一方通行は背を向けて、適当に養父に答える。

    どうせ芳川桔梗辺りに言われて来たのだろう。

    真面目に応対する気になれなかった。


    585 :

    「嘘はいただけねぇ。さっきからその腹が主張してる」

    「何言って……」

    起き上がって反論しかけたその時。

    くー、と小さく乾いた音が部屋に響く。

    発信元は、どう考えても一方通行のお腹の辺りだった。

    二人は黙り込み、お互いに見合う。

    そうして数秒後、何事もなかったかのように、

    「で? ホントは何だ? 反抗期とか?」

    ほれほれ、言ってみ? とうるさい養父に、一方通行は投げやりな気持ちで答える。

    「……チカラってなァ、邪魔なモンだな」

    「あ?」

    いきなり何言ってんのコイツ? といった様子で見てくる木原。

    「この街はケチ臭ェな、って話だ」

    ただそれだけ言って、少年はまた寝転がる。

    何だそりゃ、と聞いてくる木原を無視して一方通行は瞳を閉じた。

    何だか疲れた。

    「って、寝るなよ!」

    頭上からの大声に、少しだけ眉間にしわを寄せた。

    うるさい雑音だ、と思う。

    そういった物は『反射』してしまおう。

    と、もうほぼ眠りに落ちながら能力を行使しようとして、





    「………………はっはーん。オマエ、拗ねてんだー?」





    586 :

    は? と答えなくても良いのに、つい目を開けてしまった。

    見上げてみると、合点が行きました、というような顔で木原が笑っていた。

    ひらひらと、一枚の用紙をこちらに見せながら。

    それは、その辺にあるコピー用紙とは違い、随分と上等そうな紙質で、一番上には『外出許可証』と書いてある。

    ついでに言えば、紙の下には自分と木原の名前が書いてあり、
    その上に重ねるように『不可』という赤い文字が、判を押したようにあった。

    「……………………悪い、かよ」

    枕に顔を埋めながら、呟く。

    木原の言う通り、少年は拗ねていた。

    原因は単純だ。

    夏休みに入る数日前の事。

    今年の夏に一度実家に帰る、という友人に、『どうせならお前も来ないか』と誘われた。

    一度たりとも『外』に出た事の無い一方通行にとって、それは嬉しい申し出だった。

    もちろん、一方通行の答えはYESの一言。

    その後、木原や友人の両親からも了承してもらい、後は街に届けを出すだけとなった。


    587 = 586 :

    ――――そこで、問題は発生した。

    外出許可が取れなかったのだ。

    何故許可してもらえないのか、という質問に対する答えは簡素だった。

    ――学園都市第一位は、我々の技術の結晶とも言える。

    そんな存在を『外』に出して、万が一の事があっては困る。

    学園都市の上層部は、そう結論を下した。

    そして、夏休みになり。

    結局、友人だけが『外』に出てしまった。

    そこまで思い出して、一方通行は顔を上げて枕にあごを乗せる。

    まともな人生になりつつある、と思っていた。

    自分の意思で生きていける、と。

    しかしながら、そんな事は無い。

    結局、第一位という肩書きがある以上は、ある程度この街に自由を奪われるのだ。

    「……ま、しょうがねーさ」

    そう言うと、木原は自分の机の前にある椅子に腰掛けた。


    588 = 1 :

    しばらく、沈黙が場を制す。

    お互い、何も話せなくなった。

    特に見る物がない一方通行は、何となく視線を木原に移す。

    養父は、何か考え込んでいる様子で壁を見ていた。

    どォかしたのか? と一方通行は聞こうとしたが、その前に木原が口を開いた。

    「良い事、教えてやろうか?」

    「はァ?」

    何だいきなり、と木原を怪訝そうな目で見る。

    「ふふん。しゃあねぇ、ちょっとしたヒントをくれてやろう」

    得意げな顔で笑うと、昔話でもする調子で木原は語り出した。

    「むかーし、昔。まだ俺がクズ共と働いてた時の話」

    「ありゃあ、月がきれーに輝いてた夜――とかじゃない、フッツーの夜だった」

    クズ共、というのは例の『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』とかいう部隊の事だろうか。

    珍しい。

    養父は、こういった過去の話は一切しない。

    興味本位で聞いても、いつもはぐらかすのだ。

    一方通行は黙って続きを聞く事にした。


    589 :

    「俺はある筋の野郎から仕事を受けた。どんな仕事かっつーのはまぁ置いとく。
    とにかく、その仕事が厄介極まりなくてよー? 俺は急遽『外』に出る事になっちまった」

    そこで木原は懐かしそうに目を細め、

    「ただし、通用門からは出るなっつーお触れ書き付きでな?」

    それを聞いて、一方通行は眉をひそめる。

    まだ話の途中のようだが、迷わず横槍を入れる。

    「ンなの無理に「決まってる、か?」

    木原はあらかじめ予想していたのか、一方通行の言葉を遮るように言った。

    「いくつか抜け道があんだよ、この街には。裏のとても深い場所にな」

    つまらなそうに、木原は告げる。

    「今言ったヤツを使えば、誰も街から出る人間には気付かないかもな」

    その仕事の後、新しい道が出来て使われなくなったらしいし、と木原は付け加える。

    「……」

    一方通行は何も言わず、木原の言葉を頭の中で整理する。

    もしも、もしもの話だ。

    その、抜け道とやらが今も使えるとしたら。

    街をこっそりと出られるのなら、一方通行にはまだチャンスがあるという事になる。

    希望は、潰えていないのかもしれない。


    590 = 589 :

    そう思っていると、

    「ま、直接場所は教えないけど」

    養父の声が聞こえ、一方通行はそちらに意識をやる。

    「何でだよ」

    言うだけ言っておいて、どういうつもりだ。

    思わず尋ねると、木原はピースするかのように指を二本立てる。

    「一つ、その方が俺的におもしれー。二つ、これは一応超能力者脱走の手助けになる」

    ……一つ目の理由はともかく、二つ目については納得出来た。

    そう、一方通行は第一位の能力者だ。

    ともすれば、この街にとって重要な存在になるのは当然である。

    そんな人間を、ちゃんと本人に戻ってくる意思があるとはいえ、街から出してしまうのは問題行為になる。

    つまり、木原数多が具体的に場所を教える訳にはいかない。

    話せば、下手をすると『反逆者』扱いされて始末される可能性だってある。

    木原は当然、一方通行だってそんな事は望んでいない。

    あくまで間接的に、ほぼ冗談ぐらいになるレベルでしか教えられないのだ。

    仕方ない、と一方通行は自分を納得させる。

    「……ちゃンと今も使えるのか、そこ」

    とりあえず、聞いても問題無い事だけは知っておくべきだ。


    591 = 586 :

    「いやー、その仕事以来結構使ってんだよそこ」

    「そォなのか?」

    にゃははは、と笑う木原を気味悪く思いながら、一方通行は目を丸くした。

    「『外』にはこの街には無いモンがたくさんあるかんなー。例えばキャバクラとか」

    「きゃばくら?」

    何だそれ? と首を傾げる一般的な世間を知らない少年。

    「あっといけね。ガキにはまだ早いな」

    何となく気に入らない言い方だが、確かに知らない方が良さそうだ、と直感的に思う。

    ごほん、と木原はわざとらしすぎる咳ばらいをすると、

    「……ま、探せるなら探してみ? どーせ無理だろうけど」

    ニヤリ、と口元を歪ませて少年を見る。

    対する少年は、睨み付けるぐらいの目で養父を見る。

    「上等だ、一日で見つけてやる」

    「はっはっは。威勢の良い小僧だ」

    そら立てよ、と言われて一方通行は渋々とベッドから離れる。

    木原はうんうんと頷き、

    「じゃ、まずはメシにするか」

    笑って、告げた。


    592 :











    (二年前の事だし、あンま期待出来ねェが)

    街中を走りながら、一方通行はメモを見る。

    (無いよりはマシ、だな)

    その後、ヒントを頼りに街を出る方法を夏休み中探したのだが、結局養父の言っていた場所は見つかる事がなかった。

    その頃の自分には、一切の手掛かりも見つけられなかったのだ。

    そしてまぁ、最終的には諦めて、メモを適当な場所に放っておいてしまったのだが。

    昨日、その存在を思い出した一方通行は必死にメモを探し出した。

    で、ボロボロになったそれを昨日から一睡もせずに解読して、可能性のある場所を全てリストアップした。

    そうしてそれら全部を回るだけ回り、四番目に、この第二十二学区に来た訳である。


    593 = 592 :








    「……ここか」

    一方通行の足があるビルの前で止まる。

    少しばかりの時間を使って、彼は第七階層に来ていた。

    目の前のビルは、この区画の一番端にある、もう使用されていない場所だった。

    そう言った場所は、本来スキルアウト辺りがたまり場にするのだが、ここはそうでもないらしい。

    ここ数年、一切人の立ち入りが無いと言ってもいいほどに何の気配もしなかった。

    とりあえず、玄関口まで向かってみる。

    そう期待せずに、閉まっていたドアを押す。

    鍵が掛かっていたら、仕方がないが、無理矢理ドアを壊して入るつもりだった。

    しかし、事は一方通行が思っていたよりあっさりと進んだ。

    キィ……と少し軋んだ音を立てながら、ドアは簡単に開いてしまった。

    (……大丈夫、なのか?)

    あまりにも、簡単すぎる。

    何も知らない一般人が入ってくる可能性を考えていないのだろうか。

    何か釈然としないものを感じたが、一方通行は中に入る。


    594 = 583 :

    何も物が無い空間を少し進むと、軽い広間のような場所に出た。

    ここまで来て、おかしいと思った。

    一階に階段やエレベーターが無いのだ。

    上の層に進むための、道が無い。

    入口からここまで一本道だったし、この先に道がある訳でもない。

    だからと言って、場所が間違えている訳でもない。

    ヒントに該当する場所は、第二十二学区ではここ以外には考えられなかった。

    となると――――

    「なるほどな」

    適当に呟いて、彼は近くの壁を叩き始めた。

    コンコン、と軽くノックするように叩き、部屋を一周するように歩く。

    ここまで来て、帰るというのは嫌だった。

    どうせなら、考えられる可能性を全て潰した方が良い。

    そして、

    (当たり、か?)

    三十分ほどして、手足が止まる。

    目の前には、見た目は他とまったく変わらないただの壁がある。


    595 = 583 :

    一見すると、だ。

    (……よっ)

    一方通行はしばし考え、手で壁を軽く押した。

    瞬間、強烈な音が閉めきられた部屋に響く。

    ザザザ……ッ!! と壁が地面を擦る音を出しながら、開いた。

    階層の一番端に存在するこのビルの奥にある壁は、本来ならば土と街の外壁を仕切るはずだ。

    しかし。

    そこには、通路があった。

    壁は、これのためのカモフラージュらしい。

    一方通行は通路の先へと歩きだす。

    そこは薄暗かったが、足元に申し訳程度には照明があった。

    木原の話からもう二年は経つのだが、まだ利用する事は出来るのかもしれない。

    時に上や下、あるいは右や左に進み、一方通行は先を急ぐ。

    思ったよりも、道は長い。


    596 :








    どれほどの距離を歩いただろうか。

    一方通行の足が、止まる。

    終着点に着いた、という訳じゃない。

    しかし、止まらざるを得なかった。

    道が途絶えていたのだ。

    彼の目の前には、どこまであるか分からない暗闇があった。

    足元が途中から無くなり、ただ広い空間が広がっている。

    能力を使って飛ぼうか、とも思ったが止めておく。

    何が起きるか分からない。

    手順通りに進まないと、見つかるように何かしら罠が仕掛けられている可能性もある。

    一方通行は道のギリギリまで歩き、横の壁を見る。

    そこには、何かの操作盤が埋め込まれていた。

    どうやら、暗証番号か何かを打ち込むようだ。

    これをどうにかすれば、道が開けるのだろう。

    一方通行はメモを引っ張り出す。

    ちょうどそのような番号が、確かヒントにあったはずだ。


    597 :

    メモを見て何度も確認しながら、一方通行はテンポ良く数字を四つ打ち込む。

    後は、番号が変わってない事を祈るだけだ。

    番号の確認に掛かる僅かな時間。

    一方通行は認証モニターを凝視する。

    そうして数秒後――――





    ピーッ! と簡素な電子音が鳴り、モニターが緑に光る。





    と、同時にゴウン……ッ! と何かの機械が稼動したような音が奥から届く。

    何が起きるのか、と待った彼の元に来たそれは、大きなリフトだった。

    よく見ると、側面にステッカーが貼ってある。

    それには、これを作った会社名らしいカタカナや重量制限やらが書いてあった。

    「最大ニトン……何をそンな運ぶンだか」

    呟き、少年はリフトに乗り込む。

    乗り込んだ先には、レバーがあった。

    迷わず、それを引く。

    すると、先程と同じようにゴウン……ッ! と機械が稼動する音がする。

    リフトが、荷物を載せて動きだす。

    何となく、一方通行は振り向いた。

    だんだんと、さっきまで近くにあった操作盤が小さくなっていくのが分かる。

    「……へっ」

    気付けば、自然と笑っていた。


    598 = 597 :








    (……っと、着いたか)

    いつの間にか、リフトは止まっていた。

    一方通行は前を見る。

    そこにあったのは、少し前に見た物と同じ操作盤、そして暗い通路だった。

    またか、と少しうんざりした顔で彼はリフトから降りる。

    途端、ピーッ! とさっきも聞いた簡素な電子音が鳴り、操作盤のモニターが赤に光る。

    まさか、と一方通行は振り返る。

    予想通り、と言うべきか。

    ゴウン……ッ! とリフトが動き出していた。

    ただし、今度は奥まで行かず、僅かに距離を取っただけだった。

    正確には分からないが、おそらくはここにある操作盤と向こうにある操作盤との距離のちょうど真ん中だろう。

    どうやら、帰りにまた操作盤に暗証番号を打ち込まなければならないらしい。

    一方通行は呆れたようにリフトと操作盤を交互に見て、

    「……面倒だな、オイ」

    一言だけ、漏らした。


    599 :








    さて、しばらくして。

    一方通行は通路から無事に出られた。

    目の前に広がるのは、何も無い広い部屋。

    スタート地点と違うのは、窓から朝日が差し込んでいるところぐらいだろうか。

    とりあえず、窓まで歩く。

    内鍵を開けて、窓から顔を出してみる。

    見た事の無い町並みが、眼前に広がっていた。

    一方通行はケータイを取り出して、GPS機能で現在地を確認する。

    画面に表示されていたのは、学園都市外周部から二、三キロメートル離れたビルだった。

    「……確かに、出れたみてェだな」

    何だか、あまり実感が湧いてこない。

    念のため、ビルの中を見てみる。

    入口は中から厳重にロックされていて、一階にはスタート地点と同様、二階へと続く道はなかった。


    600 :

    (このためだけに、こンな場所を用意する)

    酔狂な街だ、と感想を漏らす。

    まぁ、ありがたく使わせてもらうが。

    周りに人っ子一人居ない事を確認し、バッグを担ぎ直して、一方通行は窓から外へ出る。

    もちろん、忘れずにきっちりと窓を閉めておく。

    どうもこのビルはずっと施錠されているようだったし、偶然誰かが入ると厄介だろうと考えたのだ。

    窓枠を軽く叩き、その衝撃を利用して内鍵まで掛けた。

    さて、と一方通行は改めて周りを見回す。

    時間を確認すると、午前六時だった。

    そろそろ人が出てくる時間帯だろう。

    「行くか」

    あまり目立つ訳にも行かない。

    さっさと移動した方が良い。

    向かう場所は分かっている。

    後は、進むだけだ。



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