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    元スレ上条「俺達は!」上条・一方「「負けない!!」」

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    701 = 672 :











    馬鹿馬鹿しい記憶に、一方通行は内心大きなため息を吐く。

    青髪ピアスが悪いヤツじゃないのは知っているが、あの性格は少しぐらい改善すべきだと思う。

    「……いい加減にしてください」

    と、この中で唯一の女性である、神裂(良識派)の諌めるような声に、意識が戻る。

    そうだった、このような事をしている場合じゃない。

    神裂のおかげで周りの空気がまたさっきのような緊張感に包まれようと――

    「はっはっは、まぁそんなお堅い事言うなよー。ステイル」

    ――訂正、戻らなかった。

    軽い調子の土御門の一言で、何か別の意味で緊迫した空気が部屋に漂い始める。


    702 = 672 :

    蛇に睨まれた蛙のように、上条の動きが止まった。

    一方通行も、何だか動けなくなってしまった。

    土御門は、変わらずヘラヘラしている。

    そして――

    「土御門。中々良い覚悟ですね」

    と、そんな一本調子の声を発したのは、神裂だった。

    そちらを見ると、彼女は俯きながら、ゆらりと立ち上がっていた。

    何が起きているかはさっぱりだが、とても危ない雰囲気がするのは分かった。

    主に神裂の持つ刀から。

    そんな、今にも刀を抜きそうな神裂の視線の先にいる、土御門の取った行動は。

    「ふふん。三十六計逃げるに如かず、だぜいっ!!」

    とても、無駄のない行動だった。

    彼は瞬時に窓枠に足を掛け、二階から消えた。

    「――逃がしませんっ!」

    しかし、神裂も速かった。

    彼女も、迷わずに窓から飛び降りたのだ。

    窓から流れた潮風が、カーテンをゆらゆらと宙に漂わせる。

    魔術師二人がいなくなって、上条と一方通行はぽつんと取り残されてしまった。

    二人の間に僅かな沈黙が流れる。

    「……行くか」

    「……あァ」

    眠ってしまった三毛猫を置いて、二人は普通に入口から部屋を出た。

    ちなみに、これは上条に後で教えてもらった事だが。

    神裂は、現在魔術師『ステイル=マグヌス』に見えるとの事だった。


    703 = 672 :








    場所は変わり、民宿『わだつみ』の近くにある浜辺にて。

    「……ふぅ」

    白いビーチパラソルの下、上条刀夜は大きく伸びをした。

    先程まで遊んでいたのだが、いかんせん煙草や酒のおかげで体力がない。

    早々にバテてしまった。

    刀夜は何となく、周辺を見回す。

    クラゲの被害か、周りには全くといっていいほどに客がいなかった。

    貸し切りみたいなモノだ、と思う。

    遠くの波打ち際からは、妻や姪、それに息子が連れてきた少女の、楽しそうな声が届いてきた。

    そちらを見れば、やはり楽しそうに遊んでいる妻達がいる。

    刀夜はそれをほほえましく思いながら、残念にも思った。

    ここにいない、息子の事を考えてしまったのだ。

    せっかく海に来たというのに、夏バテで遊べないなんて。

    これも、『不幸』なのだろうか。


    704 = 672 :

    上条刀夜は水平線を睨んだ。

    息子は、生まれた時から『不幸』な人間だった。

    最初は、そんな事もあるだろうと、一切気にしていなかった。

    しかし、ある時からその事を、上条刀夜は恨めしいと感じ始める。





    発端は実に馬鹿馬鹿しい事だった。

    幼稚園の頃、上条当麻はその体質故に『疫病神』と呼ばれていた。

    周りの子供から、だけではない。

    大人達まで、そう呼んだのだ。

    直接的な原因もなく、ただ人よりも運が悪いだけで。

    石を投げられ、罵倒され、嘲笑われた。

    そこまでなら、まだ刀夜は怒りを抑えられた。

    怒ったって、息子の立場がますます悪くなるだけだ。

    だから、必死に庇い続けた。

    投げ付けられる石から、一方的な罵りから、痛みから。


    705 = 672 :

    ――しかし、限界はすぐにやってきた。

    事件が、起きたのだ。

    今もなお、細かい事を覚えている。

    ある日の事だ。

    借金を抱えた男に、息子が追い掛けられて包丁で刺されてしまった。

    ただ、『不幸』にも。

    しかも、事件はそこで終わりじゃなかった。

    その話を聞きつけたテレビ局の人間が、くだらない霊能番組の視聴率のために息子を晒し者にしたのだ。

    おかげで、息子に対する世間の態度はますます酷くなった。

    もはや、庇いきれないほどに。

    そして、刀夜は一つの決断を下した。

    学園都市――『幸運』だとか『運命』などといった、オカルトを信じない科学の街。

    そこに息子を預けた。

    家族一緒にいられなくても、結果的に我が子を守れるならば。

    刀夜に迷いはなかった。

    あのままでは息子は殺されてしまうと、そう思えたから。





    だが――

    (……結局、意味はなかったか)

    上条刀夜は、ビーチパラソルによって日の当たらない、薄暗い砂に視線を落とす。

    息子が頭部に大怪我を負った、という連絡が学園都市から来たのは、一ヶ月ほど前の事だった。


    706 = 672 :











    「――この階だね」

    学園都市の第七学区にある、大きな病院のある病棟。

    そこに、上条夫妻はやってきていた。

    本来、学園都市に児童の保護者が来れるのは、
    毎年行われる『大覇星祭』と『一端覧祭』、それに『入学式』などの特殊な行事の時だけである。

    今回、彼らが来たのには大きな訳があった。

    一人息子が大怪我を負ったという連絡が届いたのだ。

    これは一大事だと、普段使わない有給休暇を取り、上条刀夜は妻と共に街に入った訳である。


    707 = 672 :

    「当麻さん、大丈夫かしら」

    長い廊下を歩きながら、隣で妻が頬に手を当てて呟く。

    話では、一時は怪我のショックで混乱状態に陥っていたが、今は落ち着いているという事だった。

    どちらにせよ、刀夜としても心配だった。

    一瞬、ある言葉が脳裏を過ぎったが、すぐに刀夜はそれを振り払う。

    馬鹿馬鹿しい、この科学の街でそんなオカルトは出てこない。

    そう考えて歩くうちに、病室が近付いてきていた。

    と、そこで。

    「……あら?」

    妻が不思議そうに首を傾げた。

    「どうした、母さん?」

    「あぁ、いえ。刀夜さん、随分と楽しそうな声が聞こえませんか?」

    言われて、刀夜は耳を澄ませてみる。

    確かに、何か、前方から声が聞こえた。

    あの辺りには、息子以外入院していないと聞いているが。


    708 = 672 :

    上条夫妻はまた歩きだす。

    少しずつ、声がクリアになっていく。

    『だから、落ち着いて食えってインデックス。リンゴならまだあるんだから』

    『う……わ、分かってるけど、つい慌てちゃうんだよ』

    『あァあァ、ほら、口の周り食べカス付いてンじゃねェか、ったく』

    『あ、ご、ごめんねあくせられーた』

    『そォ思うならゆっくり食え』

    『あー、悪いな、なんつーかさ』

    『気にすンなよ。……っつーかイイのか? これオマエの見舞品に俺達が買ってきたのに』

    『良いんだよ。どうせなら、美味そうに食うヤツに食ってもらった方がリンゴ冥利に尽きるってもんだ』

    『そォいうモンかね……』

    『そういうモンだよ』

    と、そこで息子の病室に着いた。


    709 = 672 :

    刀夜はゆっくりとドアをノックしてみる。

    途端、声がピタリと止み、病室の気配が変わった。

    何か、緊張したモノに。

    『……は、はい? どちら様でしょ?』

    ややあって、中から息子の声がした。

    「私だ、当麻。入るぞ?」

    『あ、あーうん! ど、どうぞ!』

    慌てたような声が返ってきて、刀夜はそっとドアノブを回して部屋に入る。

    久しぶりに見る息子は、相変わらずのツンツン頭だった。

    彼はどこか曖昧な笑みを浮かべると、

    「ひ、久しぶり」

    とだけ言った。

    ベッドの周りには椅子が二つあって、楊枝に刺されたリンゴが、
    机代わりにベッドに設置されたボードの上に置いてあったが、誰もいない。

    窓が大きく開け放されていたが、まさかそこから誰かが飛んでいった訳ではないだろう。

    刀夜は眉をひそめると、

    「お前一人か? 廊下から声が聞こえたが」

    言いながら、椅子に妻と座る。


    710 = 672 :

    すると、息子は慌てふためいた様子で、

    「へ? あ、あー、あれだよあれあれ。上の階だよたぶん。ほら、何かいつも大声で騒いでんだよ」

    「屋上でか?」

    刀夜は息子を不思議そうに見た。

    何だか大きな違和感があった。

    どこか、よそよそしい雰囲気がしたのだ。

    混乱している、という訳じゃなさそうだった。

    もっと根本的な部分に違和感があった。

    「――ちょっと混乱が抜けてないンですよ」

    と、後ろから声がした。

    振り向くと、そこには息子の友人が立っていた。

    確か、名前は――――

    「一方通行君」

    「どうも」

    名を呼ばれ、少年は簡単に挨拶すると、夫妻を手招きする。

    チラリと息子を見て、刀夜は椅子から立つ。

    妻を残し、部屋から出た。


    711 = 672 :








    「何があったのか、君は知っているのかい?」

    病室から出て少し歩き、エレベーター近くの休憩所のソファに座るやいなや、刀夜はまずそう言った。

    まるで全てを知るかのように現れた少年は、躊躇いがちに首を振る。

    「誰も、何があったかは分からないです」

    発見された時には既に倒れていたのだ、と説明してくれた。

    それから缶コーヒーを一口飲み、本人も何が起きたかは覚えていないそうだとも言った。

    「……そうか」

    それだけ言って、父親は肩を落とす。

    命に別状はないとは言われたが、それでも悲しかった。

    誰かに襲われたか、はたまた事故か。

    何にせよ、息子はまた『不幸』にも酷い目に遭ったのだから。


    712 = 672 :











    その後、学園都市を出てから毎日、上条刀夜は考えた。

    どうすれば、息子に『幸せ』を与えられるのか、と。

    どうすれば、息子に『普通』の人生を送らせてやれるのか、と。

    学園都市に、科学に任せても、息子の『不幸』はどうにもならない事が分かってしまった。

    もはや、何か別の道を見つけるしかない。

    そうして――





    ――――上条刀夜は、オカルトに出会った。





    713 = 672 :

    「……」

    刀夜は、そっと傍らにあるトートバッグの中を見た。

    ビーチボールなどを持ってくるために使ったそれの中には、
    変哲な人形――イタリアで、ある親切な人々からもらったオカルトの物品の一つだ。

    馬鹿馬鹿しいと、分かっている。

    こんな、どうしようもない事をしても、意味がない事は。

    しかし、それでも。

    上条刀夜という、一人の父親は縋りたかった。

    息子を救うかもしれない、ある可能性に。

    そのためには、何を犠牲にしても構わないと考えていた。

    「………………」

    男は、また地平線に視線を移す。





    ――――『絶望』からの救いは、まだ遠い。





    714 = 672 :








    さて。時が進み、民宿の玄関前。

    そこで、二階から降りてきた上条と一方通行を待っていたのは――

    「問一、この人物は誰か?」

    またまた変な恰好の魔術師だった。

    ノコギリやハンマーを携えているそいつは、まだ小さな少女だったが、神裂のように大胆な露出をしている。

    そんな彼女に、先に下に来ていた土御門が簡潔に紹介する。

    「何の関係もない一般人。ちょいと協力してもらったりするけど」

    「こちら、ミーシャ=クロイツェフです」

    例のロシア成教です、と神裂に言われ、一方通行はとりあえず手を差し出す。

    「……一方通行だ」

    「……」

    小柄な少女はコクリと小さく頷き、差し出された手を握り返す。

    とても小さな手だった。

    本当に、殺人犯を撃退したのかと思わせるほどに。


    715 = 672 :

    そうして握手が終わると、神裂が小さく咳ばらいをした。

    「さて、クロイツェフ。例の火野ですが、細かい居場所が判明しました。よろしければ、同行を願いたいのですが」

    手を離し、自分への声にミーシャは振り向くと、

    「問一、情報の信憑性は確かか?」

    それは、一方通行の知る年頃の少女らしさのない、無感情な声だった。

    「もちろん。説明は道中でさせてもらうにゃー」

    「……解一、ならば同行する」

    土御門は軽く頷き、

    「んじゃ、タクシーを近くに待たしてあるから、そっちに」

    コクン、とミーシャは頷き返して黙々と歩きだす。

    土御門と神裂はチラリとこっちに目をやると、

    「じゃな、カミやん、一方」

    「それでは」

    そうして、魔術師三人はぞろぞろと戦場へと向かう。

    「気をつけてな。あ、あと家壊すなよな!」

    彼らの背中を、一方通行達は最後まで見送った。

    「……さて」

    上条が呟き、こちらを向く。

    ゆったりとした調子で、彼は確認した。

    「父さん、浜辺だよな」

    「……だろォな」

    答えると、上条は父親がいるであろう方へ首を動かす。

    今彼はどんな表情なのか、一方通行には分からない。

    「さっさと行って、無実を証明してやろう」

    若干ながら急ぎ足で、上条は海へと進んだ。

    「……あァ」

    力ある声に、一方通行も強い口調で返し、遅れて歩き始めた。

    事件解決のため、能力者と魔術師は、それぞれの道を進み出した。


    716 = 672 :

    以上で、今回は終了します。
    とりあえず、生存報告はちゃんとさせていただきます。
    だいぶ遅れてすみませんでした。それでは、またいつか。

    718 :

    >>1乙パァアアアンッ!!

    719 :

    >>1乙!
    鈴科百合子wwwデルタ+1のシーンはなんかなごむ

    720 :

    ここのKJさんって記憶残ってたっけ?なくなってる?

    721 :

    今回の話読めば無くなってるってすぐ分かるだろ……

    722 :

    >>1乙腹パンペロペロ
    刀夜さんいい親父過ぎて切ない
    腹パンの文章読みやすくて好き

    723 :

    すごーい乙

    724 :

    腹パンさんのssはレベル高いからな。頑張って続けて欲しいぜ。

    725 :

    少なくとも2巻までの時点では出来事的にはほぼ原作通りだったはず
    3巻から木原くンとアイテムが味方だったり冷蔵庫が出たりとかだいぶ原作と違う展開になった

    その件に関して「一方さんがいる意味がない」ってケチつけてた人がいたが
    「原作で上条さんが独り占めしてた主人公補正を二人で半分こしたらこうなった」って聞いて納得してしまった

    726 :

    え?別場所でも書いてるのか?

    727 = 725 :

    >>726
    別スレで電磁通行書いてる

    728 = 726 :

    スレタイkwsk

    729 :

    >>728
    美琴「ねぇ……いつになったら、アンタは許されてくれるの?」 一方通行「…………」
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303142164/

    730 = 724 :

    腹パンさんのssはレベル高いからな。頑張って続けて欲しいぜ。

    731 :

    SSは2つまでにして濃密なSSを書いてくれれば文句言わねぇ!
    ところで、腹パンしたいんだけど出遅れた
    誰に腹パンすればいいんだ俺は

    732 :

    俺にしろよ
    全部受け止めてやる

    733 = 732 :

    俺にしろよ
    全部受け止めてやる

    734 :

    >>732 >>733

    大事なことだもんな!

    735 :

    「木ぃ原くううぅううん!」が早くも楽しみ
    ただあの展開どうなるんだろ

    736 :

    おいおい>>1よ…
    そろそろ腹パンが必要か?

    737 :

    待ち遠しい…

    738 :

    来ないかな~
    期待

    739 :

    舞ってる

    たまに腹パン

    740 :

    刀夜さん視点から見たら上条さんがものすごく可哀想に見える。
    親からしてみれば息子がこんな事になってたら、スゲー辛いよな。

    742 :

    >>1

    黒パン食べながら舞っている…

    743 :

    (子の)パン(ツ)食べながら舞っている

    744 :

    来て

    745 :

    腹パンしないの?

    746 :

    腹パンダ

    747 :

    そして誰もいなくなった

    748 :

    そろそろ 2ヶ月たつな


    これはもうテレズマ使った腹パンしかないな

    749 :

    これはもうパンダメントですの

    750 :

    全力でブチかますぞ…

    オラァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


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